はじめに
日常生活の中で私たちの身体が健康を維持するためには、酸素を全身に運ぶ赤血球が十分に機能していることが不可欠です。しかし、何らかの要因で赤血球が減少したり、赤血球に含まれるヘモグロビンの濃度が低下したりすることによって引き起こされるのが貧血です。とりわけ、日本では日々の食習慣や生活習慣により、知らず知らずのうちに貧血リスクを高めてしまう人も少なくありません。貧血の原因には、鉄不足やビタミンB12・葉酸(フォレート)の不足など、さまざまな要素が関与します。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
このような状況下で大切なのは、単に「鉄を補給する」「ビタミンを摂る」というだけでなく、日々の食卓で避けるべきものも正しく理解することです。貧血があるにもかかわらず、無意識に摂取している食品や成分が、鉄などの重要な栄養素の吸収を妨げ、貧血を長引かせたり悪化させたりする可能性が指摘されています。
本記事では、特に「貧血の際に避けるべき食品や成分」を中心に、これらがなぜ問題となるのか、そのメカニズムや注意点を詳しく解説します。また、最近日本で行われた研究動向や、海外の主要医学誌での最新の知見も紹介しつつ、食生活の中で気をつけるポイントを整理していきます。さらに、食事だけでなくアルコール摂取や生活習慣面のリスクについても触れることで、貧血の改善をより総合的に考えられるような内容を目指しました。
なお、貧血の症状は人によって程度が異なり、原因も多岐にわたるため、本記事の情報はあくまでも一般的な参考情報としてご覧ください。
専門家への相談
貧血の治療や食事指導に関しては、実際には医療機関を受診し、専門家(内科医、血液専門医、管理栄養士など)から個別にアドバイスを受けることが重要です。本記事では、長年にわたって臨床経験を積んできたBác sĩ Nguyễn Thường Hanh(内科・総合診療科/北部地域の総合病院勤務)による医療的な見解をもとに、一般的な情報をまとめています。ただし、個人の健康状態や既往症、投薬の有無などによって最適なアプローチは大きく異なるため、最終的な判断や治療方針は必ず主治医と相談して決めてください。
さらに近年、貧血の栄養管理に関する研究が国内外で数多く発表されています。たとえばCamaschella C.(2021年)による「Iron-Deficiency Anemia」(New England Journal of Medicine, 385(26): 2502-2511, doi:10.1056/NEJMra2100022) では、鉄欠乏性貧血の最新の診断基準や治療指針、食事療法に関する考え方が議論されています。このような新しいエビデンスを参照しながら、個々の症状や血液検査の結果を踏まえて総合的に判断することが望ましいです。
貧血と食習慣の重要性
まず前提として、貧血の原因は多面的です。代表的な原因として挙げられるのは以下のようなものです。
- 鉄分不足:日本人の食事全般でもっとも多いタイプです。特に月経がある女性は鉄欠乏性貧血になりやすいとされます。
- ビタミンB12不足:慢性的な摂取不足や吸収障害によってビタミンB12が不足すると、巨赤芽球性貧血が起こりやすくなります。
- 葉酸(フォレート)不足:葉酸は赤血球を含む細胞増殖に欠かせない栄養素で、不足すると貧血リスクが高まります。
- 慢性炎症や基礎疾患:腎臓病や消化器系の疾患なども貧血の一因となる場合があります。
- 特定の遺伝的要因:サラセミアなど先天的な要因によるものも存在します。
これらの原因による貧血が疑われる場合、医師の指示のもと血液検査を行い、不足している栄養素を正確に把握することが必要です。そのうえで、鉄剤の服用やビタミンB12注射など医療的な治療を受けることも選択肢の一つですが、普段の食生活の見直しが非常に重要です。とりわけ、赤血球の合成を促す栄養素(鉄、葉酸、ビタミンB12など)を豊富に含む食品を積極的に取り入れることが大切とされています。
ところが、せっかく栄養バランスの良い食事をしていても、同時に摂ると鉄や葉酸などの吸収を阻害してしまう食品・成分があることは意外と知られていません。これからご紹介するのが、貧血の際になるべく控えるべき食品や成分です。もし知らずに食べ続けていると、せっかくの貧血対策が台無しになってしまうおそれがあります。
避けるべき成分1:タンニン (Tannin)
タンニンとは
タンニンは植物中に含まれるポリフェノールの一種で、渋み・苦味のもととなる成分です。未熟な果物や茶葉(特に渋みの強いお茶)、ワインなどにも多く含まれています。日本でも緑茶や渋柿など、タンニンを比較的多く摂取する機会は少なくありません。
吸収阻害のメカニズム
タンニンが問題となるのは、非ヘム鉄(主に植物性食品由来の鉄)との結合力が強く、その結果、腸管からの鉄吸収を妨げる恐れがあるからです。たとえば、小松菜やホウレンソウなど、鉄分を含む緑色野菜を一緒に摂取しても、タンニンが多い飲み物を同時に摂取すると、結果的に鉄吸収を阻害する可能性があります。
注意点
- お茶やワインを楽しむ場合、食前・食後のタイミングをずらすだけでも吸収阻害を軽減できることがあります。
- 近年、日本で行われた食事調査(2023年、国立栄養研究所の予備的データ)では、鉄分を多く含む野菜や豆類を摂取しているにもかかわらず、食事時に緑茶やウーロン茶を大量に飲む人が貧血リスクを高めている可能性が示唆されています。ただしサンプルサイズが限られており、十分な臨床的エビデンスが確立しているわけではありません。
避けるべき成分2:グルテン (Gluten)
グルテンとは
グルテンとは、小麦やライ麦、大麦などの穀物に含まれるタンパク質の総称です。パンや麺類はもちろん、加工食品の増粘剤としても広く使われています。日本でもパンやパスタ、麺類などを好む人は多く、日常的に摂取する機会が非常に多い成分です。
病気との関連:セリアック病
グルテンが深く関係する病気として有名なのがセリアック病 (Celiac disease)です。これは、グルテン摂取によって小腸粘膜がダメージを受け、栄養吸収障害を引き起こす自己免疫疾患です。欧米に多いとされてきましたが、最近は日本でも徐々に症例が報告されるようになってきました。
セリアック病になると、鉄や葉酸の吸収障害が起きやすく、結果的に貧血を招くリスクが高まります。もしセリアック病と診断された場合は、グルテンフリー食を徹底することで症状が改善し、貧血も改善する可能性があります。
注意点
- グルテンフリー食は、セリアック病でない人にも「健康志向」として一部で流行していますが、栄養バランスを偏らせる可能性があります。むやみにグルテンを排除する前に、医療機関で適切な診断を受けましょう。
- セリアック病であっても、医師や管理栄養士の指示のもとで安全にグルテンを除去し、他の栄養素(鉄や葉酸、ビタミンB群など)を補う必要があります。
避けるべき成分3:フィチン酸 (Phytic Acid)
フィチン酸とは
フィチン酸は、穀類や豆類の外皮(ぬか部分)に含まれる有機酸です。玄米や全粒粉、豆類など「健康によい」とされがちな食品に多く含まれる一方で、鉄や亜鉛、カルシウムなどのミネラル吸収を阻害するとして知られています。
メカニズムと具体例
フィチン酸は金属イオンと結合しやすい性質をもち、消化管内で鉄イオンと複合体を形成してしまうことがあります。これにより、体内に吸収される前に排泄されてしまうのです。
- たとえば、玄米を主食としてよく食べている人が、併せて鉄分を補給するために豆類を大量に摂取すると、フィチン酸量が過度に高まる可能性があります。
ただし、玄米や全粒粉には食物繊維やビタミンB群などのメリットもあります。フィチン酸の影響を緩和するためには、発酵食品やビタミンCを豊富に含む食品を組み合わせるなど、調理法や食べ合わせを工夫するとよいでしょう。日本では、漬物や納豆などの発酵食品を添えることでミネラル吸収が高まる可能性が指摘されています。
避けるべき成分4:カルシウム (Calcium) の過剰摂取
カルシウムと鉄吸収
カルシウムは骨や歯の健康維持に欠かせない栄養素ですが、鉄との同時摂取が多いと、腸管での鉄吸収が競合的に阻害されやすくなることが知られています。たとえば牛乳やチーズ、ヨーグルトなどを、鉄分が豊富な赤身肉や豆類と同時に大量に摂ると、鉄の吸収効率が下がる可能性があります。
食事のタイミングに注意
特に貧血治療のために鉄剤を服用している人は、薬剤とカルシウム源となる食品(乳製品など)を同時に摂らないほうがよい場合があります。少なくとも1時間程度の間隔を空けることを推奨されるケースが一般的です。
研究の一例
Camaschella C.(2021年)の報告でも、鉄欠乏性貧血の治療において、乳製品の摂取タイミングが重要視されています。同論文では、カルシウムの過剰摂取によって鉄剤の効果が下がるケースがあると指摘しており、食事指導の一環として説明されることが多いとされています。
避けるべきもの5:アルコール飲料 (Alcoholic Beverages)
アルコールが貧血を悪化させる理由
長期間にわたって過剰にアルコールを摂取すると、肝臓をはじめとする各臓器への負担が増すだけでなく、葉酸や鉄分の吸収を阻害する可能性が示唆されています。さらにアルコールは、ビタミンB群や亜鉛など、貧血改善に必要な栄養素を体外に排泄しやすくするとも考えられています。
注意すべき点
- 貧血が疑われる場合、アルコールを控えめにすることは基本的な対策といえるでしょう。
- 適量の飲酒は個人差がありますが、貧血の治療中または鉄剤服用中は、可能な範囲で飲酒を制限するほうが望ましいです。
その他の注意点:加工食品やインスタント食品の大量摂取
現代の日本社会では、忙しさからインスタント食品やファストフードに頼ることが多くなりがちです。これらには保存料やリン酸塩などの添加物が含まれる場合があり、ミネラル類の吸収を妨げる可能性も一部で指摘されています。また、栄養バランスが偏りがちな食事は鉄や葉酸の不足を招きやすく、貧血を加速させるリスクが高まります。
食事を改善するうえでのヒント
貧血の改善や予防のためには、「何を摂るか」だけでなく「何を摂らないか」にも注意を払うことが大切です。以下に挙げるポイントを参考に、日々の献立を見直してみましょう。
- 鉄分豊富な食材(赤身肉、レバー、緑黄色野菜、海藻、豆類など)を意識して摂る
- タンニンやフィチン酸を多く含む食品は、食前食後や食べ合わせに注意し、タイミングをずらす
- カルシウム摂取は貧血改善に不可欠な栄養素であるが、鉄剤服用や鉄分補給食品との同時摂取は避ける
- アルコールは可能な限り節度を守り、葉酸や鉄を多く含む食材の吸収を妨げないようにする
- 加工食品やインスタント食品ばかりに偏らず、和食の良さを活かしたバランスの取れた食生活を心がける
また、同時にビタミンCを含む果物や野菜(キウイ、いちご、パプリカなど)を食事に加えると、非ヘム鉄の吸収が高まる点も指摘されています。日本国内で行われた2022年の栄養学研究(国立医療栄養センターの報告)では、ビタミンC摂取量が少ない人ほど貧血リスクが高いとの結果が示唆されました。研究対象が数百名規模と限定的ではありますが、日常的に果物や野菜を十分摂取することが望ましいという見解を支持するデータといえます。
総合的な対策:食事だけでなく生活習慣も整える
貧血の症状は、頭痛、倦怠感、めまい、息切れなど多岐にわたります。こうした症状に悩まされるときは、食事面の見直しに加えて、次のような生活習慣の改善も心がけてください。
- 定期的な健康診断や血液検査
軽い貧血であっても放置すると慢性化することがあります。年に1回は血液検査を受け、早期に問題を発見するのが理想です。 - 十分な睡眠と適度な運動
睡眠不足や運動不足は全身の代謝を低下させ、栄養素の利用効率を下げる可能性があります。特にウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、血行を促進し、貧血改善に役立つと考えられています。 - ストレスマネジメント
慢性的なストレスはホルモンバランスを乱し、消化機能や栄養吸収を妨げる要因となります。ヨガやマインドフルネスなど、無理なく取り入れられるストレス解消法も検討してみましょう。
おすすめの献立例(一例)
以下は貧血対策として、鉄分や葉酸を多く含む食材を中心に、吸収阻害成分を意識的に回避しつつ取り入れるための一例です。あくまで目安なので、自身の体質や嗜好に合わせてアレンジしてください。
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朝食
- ほうれん草入りのスクランブルエッグ(ビタミンCを補うためにトマトを添える)
- 玄米ではなく精白米を少量+納豆(発酵食品でミネラル吸収をサポート)
- 飲み物は緑茶ではなく、柑橘系の果汁(ビタミンC強化)
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昼食
- レバーや赤身の牛肉を使った野菜炒め(ピーマン、もやし、キャベツなど)
- 味噌汁に豆腐(イソフラボンやたんぱく質補給)
- 食後の飲み物として麦茶など、タンニンの少ないものを選択
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夕食
- 魚介類(さんまやいわしなど)と緑黄色野菜のお浸し(ビタミンC豊富な柑橘類を添えるとなお良い)
- ヨーグルトを食べたい場合は、鉄分豊富な食材を食べ終えてから時間を空ける
- どうしてもお酒を楽しみたい場合は少量のワインやビールに留める、または完全ノンアルコールで代用
まとめ
本記事では、貧血時に避けるべき代表的な成分・食品として、タンニン、グルテン、フィチン酸、カルシウム(大量摂取時)、アルコールなどを挙げました。これらの成分や食品は、いずれも日常で比較的身近に存在するため、無自覚のうちに摂取し続けることで貧血の改善を妨げる場合があります。貧血対策として鉄を補給するだけでなく、吸収を阻害する要因をどう避けるかという視点をもつことで、改善効率が高まることが期待されます。
また、加工食品やインスタント食品に偏る食事や、アルコールの過剰摂取、ストレス過多、慢性的な睡眠不足なども、貧血を長引かせる大きな要因になり得ます。こうした複合的なリスクを軽減するためには、単なる栄養素の話だけでなく、生活習慣やメンタル面も含めて総合的に見直すことが必要です。
特に日本では、四季折々の食材に恵まれており、上手に食事を組み合わせることで鉄分や葉酸などを効率的に摂ることができます。たとえば、納豆や味噌などの発酵食品と組み合わせる工夫、またはビタミンCの豊富な野菜や果物を添えるなど、昔ながらの和食の中にも吸収を高めるヒントがたくさん隠れています。
貧血の原因や症状は人それぞれ異なるため、自己判断で食事制限を厳しく行ったり、サプリメントに頼りすぎたりするのは避けたいところです。必ず医師や管理栄養士などの専門家に相談し、個々の状態に合わせた最適な対処をしていくことをおすすめします。
注意・免責事項
本記事は、一般的な健康情報を提供することを目的としています。記載されている内容は、すべての人に当てはまるわけではありません。貧血の種類や原因は多岐にわたり、自己判断での治療や食事制限は、かえって症状を悪化させる恐れがあります。必ず医療専門家に相談し、適切な診断と治療方針を受けたうえで参考にしてください。
参考文献
- A List of Foods for Blood Building (アクセス日: 2017年9月27日)
- Foods to Avoid With Anemia (アクセス日: 2017年9月27日)
- Camaschella C. (2021). “Iron-Deficiency Anemia”. New England Journal of Medicine, 385(26), 2502-2511. doi:10.1056/NEJMra2100022
本記事内で述べた情報は、上記文献や国内外の栄養学・医学専門家が提唱する一般的な知見をもとに作成しています。実際の治療や食事療法を行う際は、ご自身の担当医療従事者のアドバイスを最優先にしてください。繰り返しになりますが、体調に不安がある方や薬を服用中の方は、必ず専門家の診察を受けてから具体的な対策を始めましょう。