この記事の科学的根拠
この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用された、最高品質の医学的証拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源の一部と、提示された医学的ガイダンスとの直接的な関連性を示したものです。
- APEX-IUD研究: 本記事における過多月経、若年、肥満、出産回数といったIUD脱出のリスク要因に関する記述は、米国の大規模コホート研究であるAPEX-IUD研究の結果に基づいています34。
- 日本産科婦人科学会 (JSOG) / 厚生労働省 (MHLW): IUD装着後の定期検診の重要性や、避妊法選択に関する一般的な指針は、JSOGやMHLWの公式ガイドラインや文書で強調されている推奨事項を反映しています15。
- Human Reproduction誌の研究: IUD脱出の既往歴が再発リスクを3倍以上に高めるという具体的なデータは、学術雑誌「Human Reproduction」に掲載された多施設共同症例対照研究から引用されています6。
- 各種システマティックレビュー: 月経カップの使用がIUD脱出のリスクを高める可能性についての言及は、複数の研究を統合・分析したシステマティックレビューに基づいています7。
要点まとめ
- IUDのずれを示す危険なサインには、「突然の激しい腹痛や腰痛」「安定していた経血量の急増」「器具の糸の長さの変化」などがあります。
- ずれが疑われる場合は、慌てずに自己判断で器具に触れず、直ちにコンドームなど他の避妊法を併用し、速やかに婦人科を受診することが不可欠です。
- 診断は超音波検査が「標準的な方法」とされ、器具の正確な位置を確認できます。自己判断での位置修正は極めて危険です。
- 過多月経、24歳以下の若年、肥満、出産回数が多いこと、過去の脱出歴などが、科学的に証明された脱出のリスク要因です。
- 定期的な自己チェックと、婦人科での超音波検査を含む年1回の定期検診が、IUDの安全性と効果を維持するための最善策です。
これらは要注意!避妊リングのずれ・脱出を示す5つの危険なサイン
異常の兆候を早期に発見することは、避妊効果とご自身の健康を維持するために極めて重要です。以下に、避妊リングが最適な位置からずれたり、脱出したりしている可能性を示す5つの主要な警告サインを挙げます。これらの症状のいずれかに気づいた場合は、直ちに婦人科医に連絡することが重要です。
異常で強い痛み
説明: この痛みは、装着後数日間に見られる軽い収縮感や鈍痛とは明らかに異なります。下腹部や背中に突然現れる、激しい痛み、持続する、あるいは時間とともに悪化する痛みが特徴です8。もう一つの重要な警告サインは、性交中または性交後に起こる鋭い痛みや激しい不快感です9。一部の症例では、超音波検査で明らかなずれが確認されなくても、夜中に目が覚めるほどの激しい腰痛を報告する使用者もおり、これは痛みの症状の複雑さと、医師による評価の必要性を示唆しています10。
出血の急な変化
説明: これは最も信頼性の高い兆候の一つで、特にミレーナのようなホルモン付加IUSの使用者にとって重要です。月経量が大幅に減少し、非常に少なくなるか、あるいは完全に停止した後(ミレーナの一般的で望ましい効果の一つ11)、突然、装着前のような量に経血が戻る場合です9。また、最初の数ヶ月に見られる点状出血とは異なり、月経期間外に起こる大量の異常出血も、医学的検査が必要な警告サインです12。
除去糸の感覚の変化
説明: 指を膣に入れて自己チェックを行った際に、器具の糸が異常に長く感じられたり、著しく短くなったり、最悪の場合、いつもの位置で糸が見つからなかったりすることがあります13。これは有用な自己チェック法ですが、優しく慎重に行う必要があります。
性交時の違和感や痛み
説明: あなた自身またはパートナーが、性交中に痛みやひっかかり、明らかな不快感を感じる場合です。特に、パートナーがペニスの先端が硬いものに当たったり、糸で痛みを感じたりする場合は、器具が子宮内の正常な位置より低い位置に下降しているサインかもしれません12。性交中に生じるいかなる異常な感覚も、慎重に検討する必要があります9。
リングが膣内にある感覚・物理的な脱出
説明: まれではありますが、一部の使用者は避妊器具の硬いプラスチック部分を膣内の非常に低い位置に感じたり、あるいは器具が完全に体外に排出されたりすることがあります。これは通常、子宮頸管がより開き、子宮の収縮が強くなる月経中に起こりやすいです14。器具の「ずれ」や「脱出」を示唆するいかなる症状も、直ちに医師の診察を受ける正当な理由となります12。
それは「ずれ」のサイン?それとも「正常な副作用」?見分け方のポイント
IUD使用者が不安を感じる主な原因の一つは、初期段階における「正常な」副作用と、器具のずれを示す「危険な」サインとの間に重複があることです。軽い出血や痛みは、体が器具の存在に適応する過程で一般的に見られる現象です。しかし、同様の症状でも、その強さや特徴が異なれば、警告サインである可能性があります。この違いを区別することで、不必要な心配を減らし、本当に医療的援助が必要な時を認識することができます。以下の比較表は、ご自身の症状を客観的に比較・評価するための明確な枠組みを提供するように設計されています。
症状 | 通常の副作用(通常3~6ヶ月で軽減) | ずれ・脱出の警告サイン(直ちに受診が必要) |
---|---|---|
出血 | 装着後数ヶ月間の点状出血、不正出血、または軽い過長月経。出血量は少なく、茶色や薄いピンク色で、体が器具に慣れるにつれて時間とともに減少する傾向があります15。 | 突然の大量出血、または月経が安定したり減少したりした後に、装着前のような量に急に戻ること12。 |
痛み | 月経痛に似た、下腹部や背中の軽い収縮感や鈍痛。この痛みは通常、装着後数日間現れ、徐々に軽減します。通常の鎮痛剤によく反応します16。 | 激しい、突然の、軽減しない持続的な痛み、または性交時の鋭い痛みや奥深くの痛み。この痛みは日常生活を中断させるほど強いことがあります8。 |
除去糸 | 自己チェック時に、子宮頸管のいつもの位置で糸を感じることができ、その長さに大きな変化はありません。 | 糸が明らかに長く感じられる(器具が下降している可能性)、著しく短くなっている、または全く見つからない13。 |
おりもの | 装着後数日間、膣分泌物(おりもの)がわずかに増加することがありますが、不快な臭いや異常な色はありません16。 | 不快な臭いのある分泌物、異常な色(黄色、緑色)、発熱や下腹部痛を伴う場合。これは重篤な感染症である骨盤内炎症性疾患(PID)の兆候である可能性があります12。 |
「ずれたかも?」と思ったら。落ち着いて取るべき4つのステップ
一つまたは複数の警告サインに気づき、避妊リングがずれたかもしれないと疑い始めたとき、最も重要なのは冷静かつ系統的に行動することです。パニックになっても問題は解決しません。ご自身の安全を確保し、効果的に状況に対処するために、以下の4つのステップに従ってください。
ステップ1:まずは落ち着いて、自己判断で動かない
まず、深呼吸をして落ち着きましょう。器具のずれや脱出が、直ちに生命を脅かすような緊急事態になることは稀です。このステップで最も重要なのは、「してはいけないこと」を認識することです。
この行為は多くの理由から極めて危険です。糸を引っ張ることで、器具がさらに不適切な位置に移動したり、子宮内膜を傷つけたり、最悪の場合は子宮壁を穿孔(せんこう)させたりする可能性があります。さらに、自己判断での介入は状況を複雑にし、医師が安全に器具を取り出す際の妨げとなることがあります12。診断と処置は医療専門家に任せましょう。
ステップ2:すぐに他の避妊法を併用する
原則として、器具の位置に何らかの疑いがある場合は、その避妊効果はもはや保証されないと考えるべきです。IUDは、子宮の底部にある正しい位置にあって初めて最適な効果を発揮します12。そのため、直ちにコンドームなどの他の避妊法を併用してください。医師の診察を受け、器具が正しい位置にあり効果的に機能していることが確認されるまで、あるいは新しい避妊法を開始するまで、性交のたびにコンドームを使用する必要があります13。これは望まない妊娠を防ぐための必須のステップです。
ステップ3:すぐに婦人科に連絡・受診する
ためらわずに、器具を装着したクリニック、または信頼できる婦人科にすぐに電話してください。電話の際は、医療スタッフに状況を明確に説明しましょう。診察を効果的に進めるため、以下の情報を事前に準備しておくと良いでしょう8:
- 具体的な症状:「月経痛とは違う、激しい下腹部痛があります」「経血量が急に装着前の量に戻りました」など、具体的に何が起きているかを説明します。
- 始まった時期:これらの症状はいつから始まりましたか?
- 糸に関する情報:最後に糸をチェックして正常だと感じたのはいつですか?現在はどのように変化を感じますか?
明確な情報提供は、クリニックが緊急性を評価し、できるだけ早い予約を取る助けになります。
ステップ4:クリニックでの診察の流れ
診察のプロセスを理解しておくことで、不安を和らげることができます。クリニックでは、医師は以下の手順で診察を進めます。
- 問診:医師が症状や健康歴について詳しく質問します。
- 内診:子宮頸部を診察し、糸の位置を確認しようとすることがあります。
- 超音波検査:これが最も重要で、「標準的な診断法」とされています。医師は超音波プローブ(通常は経膣超音波)を用いて子宮の鮮明な画像を取得します。これにより、避妊器具の正確な位置、つまり子宮底部に正しくあるか、低い位置にずれているか、あるいはすでに脱出してしまったかを正確に判断できます17。
超音波検査の結果に基づき、医師はあなたと次の選択肢について話し合います。これには、器具を取り出して新しいものを再装着することや、よりあなたに適した別の避妊法への切り替えなどが含まれます。
なぜ避妊リングは ずれるの?科学的根拠に基づくリスク要因の徹底解剖
避妊リングのずれや脱出は、偶然に起こるわけではありません。大規模な科学的研究により、このリスクを高めるいくつかの要因が特定されています。これらのリスク要因を理解することは、不安を煽るためではなく、特にリスクが高いグループに属する場合に、あなたと医師が適切なフォローアップと管理計画を立てるのに役立ちます。このセクションでは、なぜ避妊リングがずれる可能性があるのかを、科学的根拠に基づいて深く掘り下げていきます。
以下の表は、特に米国のAPEX-IUD研究という大規模コホート研究をはじめとする臨床研究で特定された主なリスク要因をまとめたものです。
リスク要因 | 影響度と科学的説明 | 主要な科学的根拠 |
---|---|---|
過多月経 | 最も強力なリスク要因とされています。月経量が多い既往歴のある女性は、脱出リスクが著しく高くなります。月経中に血の塊を排出するための子宮の強い収縮が、意図せずIUDを最適な位置から押し出してしまうことが原因と考えられています。 | APEX-IUD Study3, 4 |
年齢 | 特に24歳以下の若年女性で、脱出リスクが統計的に有意に高くなります。これは、若い女性の子宮が小さいことや、収縮がより強く敏感であることが原因である可能性があります。 | APEX-IUD Study4, Human Reproduction6 |
肥満指数(BMI) | 過体重または肥満と診断された人は、脱出リスクが高い傾向があります。仮説としては、肥満に関連する全身性の炎症状態が高いことや、体格のために最初から子宮底部の正しい位置に器具を設置する際の技術的な困難が挙げられます。 | APEX-IUD Study3 |
出産回数 | 4回以上出産した女性(parity ≥ 4)で脱出リスクが最も高くなります。これは、複数回の妊娠後の子宮の形状や筋緊張の変化に関連している可能性があります。 | APEX-IUD Study4 |
月経カップの使用 | 月経カップの使用が脱出リスクを高める可能性を示唆するいくつかの証拠があります。メカニズムとしては、カップを不適切に取り外す際に生じる真空圧(吸引を解除するために軽くつまむ代わりにまっすぐ引き抜く)、またはカップを取り出す際に誤って器具の糸を挟んでしまうことが考えられます。 | Systematic Reviews7, 18 |
IUD脱出の既往歴 | 一度脱出した経験があると、次回の装着時に再び脱出するリスクは著しく高くなります。学術誌「Human Reproduction」の研究では、脱出の既往歴がIUDの失敗リスクを3倍以上に高めることが示されています。 | Human Reproduction6 |
装着時期 | 出産直後(0〜3日以内)に装着した場合、脱出リスクが最も高くなります。そのため、このリスクを減らすために、通常は子宮が完全に回復するまで(少なくとも産後6週間)待ってから装着することが推奨されます5。 | Postpartum Study19 |
過多月経のパラドックス
特に注意すべき点として、「過多月経のパラドックス」が挙げられます。ミレーナのようなホルモン付加IUSは、避妊法としてだけでなく、過多月経や月経困難症の治療法としても認可され、広く使用されています9。皮肉なことに、その治療対象である過多月経自体が、器具脱出の最大のリスク要因なのです4。これは、過多月経の人がミレーナを使用してはならないという意味ではありません。むしろ、多くの人にとって、これは依然として優れた選択肢です。しかし、このパラドックスは、装着前の十分なカウンセリングと、その後の定期検診の遵守の重要性を強調しています。もしあなたが過多月経の治療のためにミレーナを使用している場合、あなたと医師は最初の数ヶ月間、特に脱出の兆候に警戒し、超音波で器具の位置を定期的に確認する必要があります。
ずれないための自己管理:正しい糸のチェック方法と定期検診の重要性
主体的な管理は、IUDを安全かつ効果的に使用するための鍵です。これには、器具の糸を正確に自己チェックすることと、婦人科医との定期的な検診スケジュールを守ることの二つの主要な要素が含まれます。
自分でできる、優しい糸のチェック方法
月に一度、器具の糸を自己チェックすることで、異常な変化を早期に発見することができます。この目的は診断ではなく、糸の存在を確認し、大きな変化がないかを感じ取ることです。
- 準備:感染予防のため、必ず石鹸と水で手をきれいに洗うことから始めます。
- 楽な姿勢を見つける:最適な姿勢は、しゃがむか、片足を便器や浴槽の縁に乗せることです。この姿勢は膣内の距離を縮め、子宮頸管に届きやすくします。
- 優しく行う:一本の指(通常は人差し指か中指)を膣の奥深くまで入れ、子宮頸管に触れるまで進めます。子宮頸管は、鼻の先に触れたときのような、硬くて少し丸い感触がします。
- 感じ取る、引っ張らない:子宮頸管の中央から、1本か2本の細い糸を感じることができるはずです。指で優しくそれらをなでるように触れてください。目的は単に「ああ、まだそこにあるな」と確認することです。繰り返しますが、絶対に糸を引っ張ったり、強く弾いたり、位置を変えようとしたりしないでください。
- 習慣にする:チェックするのに最適な時期は、毎月、月経が終わった直後です。この時期は子宮頸管が少し低い位置にあるためです。
もし糸が見つからなくても、すぐにパニックになる必要はありません。時々、糸が子宮頸管の周りに自然に巻き上がってしまい、感じにくくなることがあります。このような場合は、より信頼性の高い方法である超音波検査で確認してもらうために、クリニックに連絡してください。
なぜ定期検診が不可欠なのか
自己チェックでは糸の存在は確認できても、子宮内での正確な位置までは確認できません。これを可能にするのは超音波検査だけです。したがって、定期的な検診スケジュールを守ることが非常に重要です。
日本のほとんどの婦人科クリニックで推奨されている標準的なスケジュールは以下の通りです1720:
- 装着後1ヶ月
- 装着後3ヶ月
- 装着後6ヶ月
- その後は1年に1回
これらの検診では、医師はあなたが経験している症状について質問し、最も重要なこととして、器具が「標準的な位置」である子宮の最上部にあることを確認するために超音波検査を行います17。厚生労働省や日本産科婦人科学会の公式な指針も、IUDの位置やその他の健康問題をチェックするための定期的な再診の重要性を強調しています521。これは、この避妊法の効果と長期的な安全性を保証するための最善の保護策です。
日本におけるIUDの現状:知っておくべき事実と賢い選択のために
IUDの使用に関して賢明かつ自信を持った選択をするためには、コミュニティの認識、実際のユーザー体験、費用に関する規制など、日本における具体的な背景を理解することが重要です。
使用状況と認識
他の先進国と比較して、日本におけるIUD/IUSのような近代的で効果の高い避妊法の使用率は依然として比較的低いのが現状です。ある統計によると、避妊を行っている人の中でのIUD/IUSの使用率は約1.0%に過ぎません22。その代わり、コンドームが依然として最も一般的な方法です。この状況は、多くの複雑な歴史的・文化的要因に根ざしています。過去には、日本政府がIUDの認可に長期間ためらった時期があり、医療界の一部には介入的な避妊法に対してかなり保守的な態度がありました23。これが、コミュニティにおけるIUDに対するためらいや情報不足の認識を助長する一因となりました。
障壁を乗り越える:実際の経験とアドバイス
日本の女性が直面する可能性のある実際の課題を認識することは非常に重要です。オンラインのフォーラムでの議論からは、一部の女性がIUDの装着を希望した際に困難に直面したことがうかがえます。医師に断られたり、ピルへの変更を説得されたり、痛みの懸念を軽視されたりすることがあるようです24。このような経験はあなた一人ではないと知ることは、自己肯定感を高める助けになるかもしれません。さらに重要なのは、それが知識を身につけ、自分自身の健康の擁護者となる必要性を強調していることです。以下に、主体性を高めるためのいくつかのアドバイスを挙げます。
- 医師に会う前の準備:クリニックに行く前に、質問を書き出し、症状や希望を記録しておきましょう。準備されたリストがあれば、問題を明確かつ自信を持って伝えることができます。
- 適切なクリニックを探す:IUDを装着した人からの評価が高いクリニックを調べて選びましょう。時には、女性医師や女性の健康に特化したクリニックの方が、よりオープンで共感的な態度を示してくれることがあります。
- セカンドオピニオンを求めることを恐れない:話を聞いてもらえない、あるいは懸念が適切に対処されていないと感じた場合、別の医師を探す権利があなたにはあります。あなたの健康が最優先です。
費用と保険適用
費用を理解することは、計画を立てる上で重要な部分です。日本では、IUD/IUSの支払いは使用目的によって大きく異なります。
- 保険適用:過多月経や重度の月経困難症の治療など、医療目的でIUS(ミレーナなど)を使用する場合、費用は国民健康保険の一部負担となります。この場合、自己負担額は約10,000円から12,000円程度になることがあります25。
- 自由診療:避妊目的のみでIUD/IUSを使用する場合、全額自己負担となります。価格はクリニックによって異なりますが、40,000円から60,000円以上になることもあります24。
初期費用は高く見えるかもしれませんが、使用期間全体(最大5年間)で考えると、IUDは最も費用対効果の高い避妊法の一つであることが多いです。
よくある質問
Q1: リングがずれると危険ですか?
A: 通常、リングがずれること自体が直ちに生命を脅かすことはありません。しかし、二つの主要な結果を懸念する必要があります。第一に、避妊効果が失われるか著しく低下し、意図しない妊娠のリスクにさらされます。第二に、持続的な下腹部痛や不正出血などの合併症を引き起こす可能性があります。非常に稀なケースですが、ずれが子宮穿孔に関連することがあります。これはリングが子宮壁を突き破って腹腔内に入る重篤な状態で、リングを取り出すために外科的介入が必要となります15。
Q2: リングがずれた場合、妊娠する可能性はどれくらいですか?
A: リングが最適な位置からずれると、妊娠のリスクは著しく上昇します。IUDの避妊効果は、子宮底部での正確な位置に依存します。もしリングを装着中に妊娠した場合、認識すべき別のリスクがあります。それは、IUDを使用していない人と比較して、子宮外妊娠のリスクが高くなることです。子宮外妊娠は危険な状態ですので、月経が遅れ、妊娠の兆候がある場合は、診断と迅速な処置のために直ちに医師の診察を受ける必要があります12。
Q3: リングがずれてしまった場合、医師はどのような処置をしますか?
A: 超音波検査でリングの位置を確認した後、医師はあなたと次のステップについて話し合います。通常、リングが著しくずれている場合は、それを取り出すのが最善の選択です。位置を調整しようとすることは一般的に推奨されません。具体的な状況とあなたの希望に応じて、医師は同日中に(古いリングを取り出した後)新しいリングを装着するか、他の避妊法の選択肢について助言します。
Q4: 一度脱出した後も、IUDを使い続けることはできますか?
A: 可能ですが、これは医師と慎重に話し合うべき決定です。一度リングが脱出した経験がある場合、その後の装着で再び脱出するリスクは、未経験者に比べて高くなることを知っておく必要があります。ある科学的研究では、脱出の既往歴がIUDの失敗リスクを3倍以上に高めることが示されています6。医師は利益とリスクをあなたと一緒に検討し、もしあなたがIUDの使用を続けることを決めた場合は、より厳格なフォローアップスケジュールを提案するかもしれません。
Q5: リングの脱出率はどれくらいですか?
結論
避妊リングIUDは、多くの女性にとって優れた避妊の選択肢であり、高い効果と長期的な利便性をもたらします。しかし、肯定的で安全な経験を得るためには、異常のサインに関する知識を身につけることが不可欠です。以下の要点を心に留めておいてください。
- 明確な区別:通常の副作用(最初の数ヶ月の軽い痛みや点状出血)と、リングのずれを示す真の警告サインとを区別する方法を学びましょう。「突然」「激しい」「持続的」「以前との違い」が重要なキーワードです。
- 主要な警告サイン:激しい腹痛や腰痛、安定していた経血量の急増、そして糸の長さの感覚の変化は、医師に連絡する必要がある最も重要な信号の三つです。
- 正しい行動:疑いがある場合は、冷静さを保ち、絶対に自己判断でリングに介入せず、すぐに予備の避妊法を使用し、できるだけ早く婦人科の予約を取ってください。
あなたの体はあなただけのものです。そして、それをあなた以上に理解している人はいません。体が送る信号に耳を傾けることを学びましょう。医学的な助言を求めることを、決してためらったり、迷惑だと感じたりしないでください。あなたの安心と健康は常に最優先事項です。主体的に経過を観察し、自己チェックを行い、定期検診のスケジュールを守ることで、あなたは自分自身の生殖に関する健康を最善の方法で管理し、賢明な選択を行い、受けるに値する医療サポートを得る力を手にしているのです。
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