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当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
はじめに
私たちの体に深刻な影響をもたらす結核(けっかく)は、肺に感染する「肺結核(はいけっかく)」のイメージが強いかもしれません。しかし実際には、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は身体のさまざまな部位に感染しうることが知られています。その中の一例が「骨結核」です。骨結核は、肺結核や結核性胸膜炎、リンパ節結核ほど頻度が高いわけではありませんが、重篤化すると大きな合併症を伴うおそれがあります。しかも近年は骨結核を含む全般的な結核が世界的に増加傾向にあることから、十分な知識と対策が重要になってきました。
とりわけ「骨結核は周囲にうつるのか、うつらないのか」という疑問を抱く方も多いでしょう。特に同居している家族や身近にいる人が骨結核を発症した場合、自分も感染する危険性があるのではないかと心配になるのは当然です。骨結核は直接肺に症状が出るわけではなく、一見すると肺結核ほどの感染リスクが高くないように思われがちですが、実際どのように理解しておくべきでしょうか。
本記事では、骨結核の原因、骨結核が本当にうつるのかどうか、さらにどのような方がリスクを負いやすいのか、そして具体的な予防策について詳しく解説します。医療現場でも診断が難しいといわれる骨結核を早めに知り、適切に対処することで、本人はもちろん周囲の大切な人たちの健康を守るきっかけになれば幸いです。また、記事中には近年の研究結果や国内外のガイドラインの情報も取り入れて、最新の知見を分かりやすくまとめました。じっくりご覧になってみてください。
専門家への相談
本記事では、医師 Nguyen Thuong Hanh(内科・総合内科、Bệnh Viện Đa Khoa Tỉnh Bắc Ninh)の意見を踏まえた情報を参考にしています。骨結核および結核全般については、一般的な臨床知見だけでなく、世界的機関が発信する公式ガイドラインや複数の研究が存在し、さまざまな視点から情報が集約されています。したがって、日常生活での感染防止策や治療の必要性を判断するときには、必ず医療機関で専門家の意見を仰ぐことが大切です。
骨結核とは何か
結核菌による感染
結核はMycobacterium tuberculosisという細菌(結核菌)が原因で起こる伝染性疾患です。肺に症状が出る「肺結核」がもっともよく知られていますが、結核菌は血流やリンパの流れに乗って、身体のさまざまな臓器や組織へと拡散するおそれがあります。肺以外の場所に生じる結核を総称して「肺外結核」と呼び、その中で骨・関節・脊椎など運動器系(骨格系)へ影響を与えるものが「骨結核」です。
厚生労働省のデータや世界保健機関(WHO)の報告によると、肺外結核の中で頻度が多いのは、胸膜結核(肺を覆う胸膜への感染)、リンパ節結核、そして骨結核といった順番になります。骨結核は肺結核よりも患者数は少ないものの、発症すると運動機能への障害や神経症状が伴うことが多いため、生活の質を大きく損ねる可能性があります。
骨結核の好発部位
骨結核といっても、全身のさまざまな骨や関節に感染が及ぶ可能性があります。特に注意すべき部位としては次のような例が挙げられます。
- 脊椎(せきつい)
- 股関節(こかんせつ)
- 膝関節(ひざかんせつ)
- 足関節(そくかんせつ)
- 肩関節や肘関節
脊椎結核の場合は、椎体(ついたい)や椎間板(ついかんばん)と呼ばれる組織が破壊され、脊髄神経が圧迫されることで神経症状(しびれや麻痺など)をきたすケースがあります。特に日本の高齢者の方の場合、ほかの慢性疾患を併発していることもあり、骨結核に気づかず進行させると、後遺症が残ってしまうおそれがあるのです。
骨結核の進行と背景
骨結核がどのようにして発生するのかをもう少し詳しく見てみましょう。まず多くのケースでは、肺に結核菌が侵入し、その後血行性(血液の流れ)を介して骨の組織や関節部位に到達する経路が想定されます。身体のどこにでも結核菌が散らばる可能性はあるものの、脊椎や大きな関節など血流の豊富な部位は特に感染を受けやすいといわれています。
日本国内で結核の新規患者数は以前より減ってきているものの、高齢化に伴い免疫機能が低下した方の増加、また海外との往来が活発化している背景などから、油断できない状況にあります。さらに低栄養状態や持病のある方は、感染リスクが上がると指摘されています。骨結核もまた、結核菌が全身をめぐりやすい状況であれば発症リスクが高まりやすい病態です。
骨結核はうつるのか?
肺結核と骨結核の伝播メカニズムの違い
多くの人が最も気になるのは「骨結核はうつるのか」という点でしょう。結核菌そのものは、人から人へ空気感染(エアロゾル感染)する能力をもっています。たとえば肺結核の患者さんが咳(せき)やくしゃみをしたときに排出される飛沫(ひまつ)を他の人が吸い込むと、肺結核として感染が成立しうるのはよく知られた事実です。
一方、骨結核は肺以外の部位に感染が生じている状態です。骨そのものから空気中に結核菌が直接放出されることは通常考えにくいため、骨結核単独の状態であれば、周囲の人への感染リスクは極めて低いと理解されています。つまり、「骨結核だからといって、それが直接うつることはまずない」といえるわけです。
しかしながら、骨結核の患者さんの中には、実は肺結核も同時に発症しているケースがあります。本人も自覚症状がないまま肺結核を合併していて、咳や痰(たん)などによって周囲に菌を撒き散らしている恐れがゼロではありません。実際、「骨結核だと思っていたら肺にも感染巣が見つかった」という報告が医療現場ではときどき見られます。したがって、もし身近に骨結核の患者さんがいて、定期的なレントゲン検査や医師の判断などで「肺結核は合併していない」とはっきり確認できていれば、通常の日常生活で感染するリスクはほぼないと考えられます。
骨結核患者と暮らすときの注意点
骨結核の方と同居している場合でも、先述のように肺結核を合併していなければ空気感染は起こりにくいでしょう。ただし結核菌は非常にしぶとく、生存能力が高いことで知られる細菌です。どこかの段階で患者さん自身が肺結核も発症している、あるいは微小な病変を見逃している可能性は完全には否定できません。日本人の多くは結核菌に対して比較的強い免疫をもっている方もいますが、高齢者や小児、免疫力が低下している方は念のための注意が必要です。
- 医療機関で定期的にチェックを受ける(患者さん自身と周囲の家族など)
- できるだけこまめに室内を換気する
- せきやくしゃみをする場合、患者さんにマスク着用をお願いする
- 免疫が低い人や基礎疾患をお持ちの方は特に医師に相談し、必要に応じて検査を受ける
一方、「骨そのものからはうつらない」ということは理解しておいて差し支えありません。骨結核患者さんを介抱したり、皮膚に触れたり、同じタオルを使ったりすることで菌を直接的に浴びる可能性は基本的にないといえます。特に患者さんご自身の体液や血液などが飛散する状況でなければ、骨部位への感染のみで感染経路が生じることはほぼ想定されません。
骨結核の主な原因とリスク要因
骨結核が起こる理由
骨結核の発症は、ほとんどの場合「肺結核にかかった結核菌が血液を通じて骨に波及する」経路です。最初に肺に入り込んだ菌が完全に排除されず、何らかの理由で活動性を取り戻したときに骨へと移行するリスクがあります。また、結核菌がリンパ節から骨へ移行することも報告されています。下記のような状況にある人は特に結核菌に感染した際、骨への波及も含めて重症化しやすいと考えられます。
- 免疫力が低下している方(糖尿病、腎不全、HIV/AIDS など)
- 栄養状態が悪い方(低栄養、過度のダイエット、食事の偏りなど)
- ステロイド剤など免疫抑制作用のある薬剤を長期使用している方
- 高齢者(加齢による自然免疫力の低下や併存疾患を有するケースが多い)
- 過去に結核を発症し、治療が不十分で再燃リスクがある状態の方
日本においては過去に結核を患った経験のある高齢者や、あるいは基礎疾患を抱えている方で、長らく免疫が落ちた状態が続いている場合、骨結核を含めた結核の再活性化が起こりやすいです。
骨結核の合併症・後遺症
骨結核を放置した場合、次のような重篤な影響が及ぶおそれがあります。
- 脊髄圧迫による神経症状
脊椎(せきつい)や椎間板の病巣が拡大することで神経が圧迫され、四肢麻痺(ししまひ)や痺れ、運動障害を引き起こすことがあります。 - 骨の変形や破壊
脊椎が変形すると、姿勢が顕著に崩れたり、椎骨が潰れたりして背中が曲がる「亀背(きはい)」状態になることがあります。ほかの関節でも骨破壊が進めば生活動作に大きな制約が出る可能性があります。 - 二次感染・膿瘍形成
骨や関節が破壊されると周辺組織で膿瘍(のうよう)が形成されたり、筋や皮下組織にまで感染が広がるリスクがあります。 - 循環器系への影響
非常に稀ですが、胸椎(きょうつい)付近で動脈などが侵されると大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)様の病変を形成し、重大な合併症をきたす可能性も指摘されています。
骨結核が広がる危険性:誰がハイリスクか
骨結核そのものの感染性
先ほども述べたとおり、「骨結核そのもの」が周囲に飛散して他者へ空気感染を起こすことは基本的にありません。ただし、骨結核の患者さんが肺結核を合併している場合は、飛沫感染によって周りの人が肺結核に感染し、その後骨結核へ至る恐れがあります。
ハイリスク群
- 免疫低下状態の方
HIV/AIDS、糖尿病、腎不全、慢性肝疾患、がん治療中など。 - 高齢者
加齢による自然免疫の低下や慢性疾患の併発により重症化しやすい。 - 栄養状態不良
タンパク質やビタミン、ミネラルが不足することで感染を防ぐ機能が働きにくい。 - 薬物乱用者
長期にわたるアルコール乱用や薬物依存などで全身の抵抗力が弱くなっている場合。 - 不適切な治療中断
以前に結核を発症したが、服薬を途中でやめてしまうなど十分な治療を行わなかった場合、菌が再活性化し骨に波及するリスクが高くなる。
近年、国際的にも結核全体の罹患率が再増加している地域があります。特に、栄養問題や衛生環境に課題を抱える国・地域では骨結核も含めて感染機会が増える可能性があります。日本国内ではそこまで深刻にみられてはいないものの、高齢化の進展や海外との往来拡大を踏まえると、引き続き注意が必要だといえるでしょう。
骨結核の症状と診断
骨結核の主な症状
- 痛みと腫れ
感染部位の痛みが慢性的に続き、しばしば腫れ(腫脹)や熱感を伴う。 - 可動域の制限
関節に病変がある場合、動かしにくくなる。脊椎の場合は背部痛や動作の制限が表れやすい。 - 倦怠感や微熱
長引く倦怠感(だるさ)、微熱(37〜38℃台)などの全身症状がみられることもある。 - 体重減少
食欲不振、全身の衰弱により体重が落ちる場合がある。
これらの症状は他の骨や関節疾患(変形性関節症、リウマチなど)とも似通っていることがあり、骨結核だと特定できないまま進行してしまうことが少なくありません。特にゆるやかに症状が進むため、受診が遅れて合併症を引き起こすケースもあります。
診断の流れ
- 問診と身体診察
痛みや腫れの部位、期間、全身状態、結核の既往歴や周囲の結核患者との接触歴などを確認します。 - 画像検査
X線撮影(レントゲン)やCT、MRIなどを使って、骨や関節の破壊、病巣の広がりを評価します。結核性の骨破壊は典型的には辺縁の崩れや潰れなど特徴的な所見がありますが、初期段階では見つけにくいことがあります。 - 血液検査
一般的な炎症マーカー(CRPや血沈〈赤沈〉など)、免疫状態の確認などを行います。また結核菌感染を調べるためのIGRA(インターフェロンガンマ放出試験)やツベルクリン反応検査が補助的に用いられることもあります。 - 病理検査・細菌培養
病変部から針生検(穿刺)や手術などで組織を採取し、結核菌が存在するかどうかを培養検査やPCR検査で確認します。結核が強く疑われる場合は、早期に抗結核薬の投与を始めることもあります。
特に骨結核は、初期に診断が難しいとされます。よく似た症状を呈する細菌性骨髄炎やリウマチ、腫瘍などとも鑑別が必要です。専門医の判断のもと、さまざまな検査を総合して確定診断がなされます。
骨結核の治療法
抗結核薬による治療
骨結核を診断された場合、多くは抗結核薬による長期治療が行われます。肺結核と同様に、イソニアジド・リファンピシン・ピラジナミド・エタンブトールなどの薬剤を組み合わせ、数カ月〜1年以上の服用が必要となる場合があります。治療期間が長いのは、結核菌が非常に増殖スピードが遅く、薬剤耐性を獲得しやすいからです。
治療の中断や不規則な服薬は、薬剤耐性結核(多剤耐性結核など)のリスクを大幅に高めます。服薬を指示された期間は医師の指導を厳守し、定期的に副作用や治療効果を確認することが大切です。
外科的治療
重度の骨破壊や脊髄圧迫が疑われる症例、膿瘍が形成されているケースでは外科的アプローチが選択されることがあります。たとえば脊椎の椎間板が著しく破壊され、神経に強い圧迫が生じている場合は減圧手術を行い、場合によっては固定術などを併用します。骨や関節の破壊が進行してしまうと、回復に時間がかかるだけでなく機能的な後遺症が残る可能性があるため、骨結核と診断された時点で適切な術式を検討することが重要です。
リハビリテーション
長期にわたる安静や、外科的手術後の回復には理学療法や作業療法などのリハビリテーションが欠かせません。関節の可動域訓練や筋力強化トレーニングにより、骨結核で失われた機能を少しずつ補うことができます。特に脊椎結核では、姿勢矯正や装具(コルセット)の使用などが推奨されるケースもあります。
骨結核の予防:効果的な対策
骨結核を防ぐためのポイント
骨結核は直接的に骨からうつるわけではありませんが、基本的には肺結核などの結核菌感染が先にあり、その後に骨へと波及する仕組みです。そのため、結核全般に対する感染対策が骨結核の予防にもつながります。以下のようなポイントが挙げられます。
- 結核患者との密接な接触を避ける
肺結核の疑いがある人の咳やくしゃみなどを通じて菌が空気中に放散される恐れがあります。とくに長時間換気の悪い空間で過ごすことは避けるか、マスクなどの対策を徹底しましょう。 - BCGワクチンの接種
日本では定期予防接種としてBCG(結核ワクチン)が導入されていますが、これによって重症化リスクを下げる効果が期待されます。完全には防ぎきれない場合もありますが、特に小児期の結核重症化(粟粒結核や結核性髄膜炎など)を防ぐ上で重要です。 - 生活習慣の改善
免疫力を高めるためには、栄養バランスのとれた食事と十分な睡眠、適度な運動などの習慣が欠かせません。喫煙や過度の飲酒は免疫力低下に大きく寄与するため、禁煙・節酒を心がけましょう。 - 早期発見・早期治療
もし肺結核やリンパ節結核など、ほかの形態の結核が疑われる症状が出た場合は、できるだけ早く医療機関を受診して正確な診断を受け、適切な治療を開始することが重要です。
具体的な予防策と新しい知見
近年の研究により、結核菌が活性化する背景には免疫力や遺伝的要因、栄養状態など多岐にわたる要因が影響しているとわかってきました。とくに低栄養状態と結核の関係は強く、たんぱく質不足が結核発症リスクを高めるとの報告もあります。日本人の食事でも、加工食品や炭水化物に偏りがちでタンパク源が不足すると、感染症全般に対する抵抗力が弱まると指摘されています。
たとえば2022年にJournal of Orthopædic Surgery (Hong Kong)で発表された研究(Sahu NBら, 2022, doi:10.1177/10225536221139643)では、骨結核を含む運動器系結核における診断と治療方針に関して「栄養管理と並行した長期的な抗結核薬の服用、適切なリハビリテーションが回復を促進する」と報告しています。また、免疫低下状態にある患者(特に糖尿病や高齢者)の早期発見には定期健診や画像検査が極めて有効であるとも言及されています。
骨結核への新しいアプローチ:最新研究
骨結核の治療・予防に関しては、近年もさまざまな検討が続いています。世界保健機関(WHO)は2022年の「Global Tuberculosis Report 2022」で、世界的な結核罹患率の再上昇に警鐘を鳴らしており、骨結核を含む肺外結核例も増加傾向にあると指摘しています。日本でも高齢化や基礎疾患を持つ患者増加に伴い、骨結核がこれまで以上に問題化する可能性を懸念する専門家が増えています。
また、Infectious Disease Reports誌(Cianci Fら, 2021, 13(1), 197–211, doi:10.3390/idr13010019)などで示されたように、骨結核や関節結核の早期診断には画像診断と結核菌PCRなどの併用が鍵であるとされ、治療においては長期間の多剤併用療法が必須となる点が再度強調されています。特に高齢者の場合は合併症の有無を総合的に管理することが重要で、投薬の副作用や他薬との相互作用にも注意が払われています。
推奨される対策と生活上のヒント
予防的観点からの対策
- 定期健診の受診
定期検診や職場検診などで胸部エックス線撮影を行うと、症状がない初期の肺結核を発見できる場合があります。本人に自覚症状がなくても、早期発見すれば骨結核への波及を防げる可能性があります。 - 栄養バランスの確保
肉や魚、豆類、乳製品などのタンパク質、野菜や果物からのビタミン類、穀類やイモ類などの炭水化物、そしてカルシウム・鉄などミネラルのバランスを総合的にとることが推奨されます。過度なダイエットは免疫力を低下させるため要注意です。 - 適度な運動と十分な休養
ウォーキングやストレッチなど軽度〜中程度の運動は、筋力や免疫機能の維持に役立ちます。一方で適切な睡眠を確保することも、免疫細胞の働きを最適化する上で非常に重要です。 - 喫煙・飲酒を控える
タバコの煙や大量のアルコール摂取は、気道粘膜や全身の抵抗力を弱める一因となります。結核を含む感染症を予防する観点からも、禁煙や節酒は大きな意味があります。
同居家族や周囲への配慮
身近に骨結核を含む結核患者さんがいる場合も、前述のとおり肺結核さえ合併していなければ直接的に感染を受ける確率は低いでしょう。ただ、気がかりな点があれば早めに医師に相談し、必要に応じて結核菌の検査などを行うのが安心です。部屋の定期的な換気や咳エチケット、患者さんの体調管理・生活リズムのサポートなどを家族・周囲が協力して行うことで、精神的負担を軽減しながら感染リスクを最小限に抑えることができます。
結論と提言
骨結核は肺結核ほど頻度が高いわけではありませんが、一度発症すると重篤な合併症や後遺症を引き起こすリスクが高い疾患です。もっとも大きな誤解として、「骨結核も空気感染するか?」という疑問がありますが、骨そのものから結核菌が飛散することはまずありません。ただし、患者さんが同時に肺結核を合併している場合には、咳や痰を介して菌が伝播する可能性は否定できません。本人が自覚症状に乏しくても合併しているケースがあるため、医療機関での確定診断が不可欠です。
感染を防ぐには、肺結核患者との密接な接触を避けること、栄養バランスや生活習慣を整えること、定期的な胸部エックス線検査などで早期発見に努めることが重要です。さらに、骨結核と診断された場合は、医師の指示に従い長期の抗結核薬治療を中断せず続けることが治療成功の大きなポイントです。重度の骨・関節破壊や脊髄圧迫が生じた際には外科的治療やリハビリテーションも組み合わせながら、機能回復と合併症予防に取り組む必要があります。
結核菌が関与する疾患は、長らく過去の病気と考えられがちでしたが、国際社会の往来や高齢化の進行に伴い、再び注目を集めています。骨結核は、適切に診断・治療されないと運動機能や神経機能を損ない、生活の質を大きく下げてしまう可能性があります。自分自身や家族の体調に不審な点がある場合は早めに医療機関を受診し、専門家の意見を取り入れながら、結核に対する正しい理解と予防策を徹底することが大切です。
参考文献
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- Cianci F, Rizzello F, De Nitto D. “Skeletal tuberculosis: a review of clinical manifestations, diagnosis, and treatment approaches.” Infect Dis Rep. 2021;13(1):197–211. doi:10.3390/idr13010019.
- Sahu NB, Pattnaik TK, Panda B, Swain PK, Sahu MK. “Recent advances in the diagnosis and management of skeletal tuberculosis.” J Orthop Surg (Hong Kong). 2022;30(2):10225536221139643. doi:10.1177/10225536221139643.
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