2型糖尿病患者必見 | 健康的に体重を減らす食事法とは?
糖尿病

2型糖尿病患者必見 | 健康的に体重を減らす食事法とは?

はじめに

本記事では、主に2型糖尿病(以下、糖尿病と表記)と診断された方を対象に、適切な食事計画や日常生活の工夫について詳しく解説していきます。特に、体重が増えすぎている場合には、減量が血糖コントロールに良い影響を及ぼすことが知られています。実際に多くの調査や臨床研究で、肥満や過体重が糖尿病をはじめとする生活習慣病のリスクを高める要因の一つと示唆されています。減量は血糖の安定のみならず、血圧・脂質代謝の改善や、心血管リスクの低減にも寄与する可能性があります。そこで本記事では、食事の具体的な組み立て方から、減量のメリット、さらには間食の選択まで、幅広く網羅的にご紹介いたします。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

また、本記事の後半では、日常生活の中で実践しやすい食事内容や食材の選び方などを、朝食、昼食、夕食、そして補食(間食)に分けて詳しく取り上げます。糖尿病患者さんでもおいしく食べながら減量をめざすためには、無理のない継続可能な方法が重要です。

専門家への相談

本記事の内容をまとめるにあたり、国内外の医療機関や公的組織が提供している糖尿病に関する学術情報、および内科総合内科を専門とする医師が示してきた臨床経験を下敷きにしています。特に医療従事者らは、糖尿病患者さんの治療目標や生活背景などを総合的に考慮し、オーダーメイドで指導を行うことを推奨しています。本記事に登場する情報源としては、英国を拠点とする糖尿病協会や米国医療機関(Centers for Disease Control and Prevention、Mayo Clinicなど)など、国際的にも信頼度が高い組織のデータを参照しています。また、本記事では内科医として実地医療に携わる医師(※文中で随時言及)からの臨床的な見解も踏まえつつ執筆しています。なお、血糖値や体重、合併症などは個人差が大きいため、必ず医師の診察や指導を仰いでから実践してください。

以下では、まず糖尿病患者さんにとっての減量の意義、その上でどのような食事が適しているかを順を追って解説します。さらに、研究データから明らかになってきた減量の効果や、朝昼晩の具体的な食事例、間食のコツなども詳しく紹介いたします。


減量の重要性とメリット

糖尿病と診断された方のうち、特に体重過多肥満が認められる場合、減量を行うことによって次のようなメリットが期待されます。

  • 血糖値のコントロール改善
    体重が減ることでインスリン抵抗性が軽減されやすくなり、血糖値の安定化に役立つとされています。特に内臓脂肪型肥満があるとインスリン抵抗性が強くなるため、腹囲が大きい方ほど減量による恩恵を受けやすいと考えられます。
  • 血圧や脂質の改善
    過体重の方が3~5%程度の体重減少を達成すると、血圧やLDLコレステロール、中性脂肪などの脂質代謝にも好影響が出やすいという報告があります。
  • 心血管リスクの低減
    血糖値、血圧、脂質がいずれも改善することで、動脈硬化の進行を抑え、結果的に脳卒中や心筋梗塞などの重大な心血管イベントを減らす効果が見込まれます。
  • 生活の質(QOL)の向上
    体重コントロールがうまくいくと身体的負担も軽くなり、疲労感や睡眠の質などにもよい影響が期待できます。気分が安定しやすく、日常活動量も自然に増加しやすい傾向が報告されています。

こうしたメリットに加え、早い段階で体重を落とすほど合併症予防にもつながりやすいといわれています。事実、肥満を伴う2型糖尿病患者さんにおいて、積極的な体重管理プログラムを実施した群では、将来的なインスリン使用の時期を遅らせたり、薬剤の減量が可能になったりするケースもあるとされています。

なお、2023年に発表された米国糖尿病学会(ADA)のガイドライン「Standards of Medical Care in Diabetes—2023」(Diabetes Care, 46(Suppl.1): S1-S291, doi:10.2337/dc23-SINT)では、食事療法と運動療法の併用による段階的な減量目標の設定が強調されており、健康的なペース(おおむね月に1~2kg程度の範囲)での減量を目指すよう推奨しています。


食事計画の基本と3つの代表的アプローチ

2型糖尿病の患者さんが減量を目指す際の食事プランは、個々のライフスタイルや合併症の有無、血糖コントロールの目標などによって微調整されるべきです。一般的には①低炭水化物食②地中海式食事法③低カロリー食(1200~1500kcal/日程度)といった食事パターンがよく挙げられます。以下、それぞれの特徴を確認してみましょう。

1. 低炭水化物食

炭水化物の摂取量を制限することで、食後血糖値の上昇を比較的緩やかにするアプローチです。しかし、むやみに炭水化物を極端に減らしすぎると、エネルギー源の不足や栄養バランスの崩れにつながる恐れがあります。主治医や管理栄養士などと相談し、最適な炭水化物の目標量を設定することが大切です。
例:玄米や全粒粉パンなど、食物繊維が豊富な炭水化物源を選び、精製糖や白米、白パンを控えめにするなどの工夫。

2. 地中海式食事法

野菜や果物、豆類、全粒穀物、魚類を中心に、オリーブオイルなどの良質な油脂を適度に取り入れる食事法です。過度に脂質を制限せず、むしろ飽和脂肪酸が少なく不飽和脂肪酸の多い良質な油を選ぶことで、心血管リスクを抑えることが期待されます。
例:トマトやキュウリなどの野菜サラダにオリーブオイルをかける、魚料理を週に2~3回取り入れる、豆料理を積極的に利用するなど。

3. 低カロリー食

1日あたり1200~1500kcal程度にエネルギー摂取を抑える方法です。摂取する総カロリーが少ない分、栄養不足や低血糖になりやすいリスクもあるため、専門家の指導のもと実践する必要があります。過度なカロリー制限は生活の質を損ねる恐れがあるので、無理のない範囲で行うようにしましょう。

いずれの食事法も共通しているのは、野菜や果物、全粒穀物、良質なたんぱく質、適度な脂質(できれば不飽和脂肪酸)を組み合わせ、食物繊維をしっかり摂取することです。さらに、食事の時間や回数を乱さず、一定のリズムで摂ることで血糖値の急激な変動を抑えられます。


BMIと腹囲の管理

日本人においてはBMI(体格指数)25以上を肥満とみなす基準が一般的に用いられていますが、糖尿病や高血圧などの合併症リスクはBMIが23を超えるあたりから少しずつ高まると指摘されています。また、腹囲の基準としては男性85cm以上、女性90cm以上をメタボリックシンドロームの警戒ラインとすることが多い一方、本記事で紹介した英国糖尿病協会では男性90cm以上、女性80cm以上を注意ラインとしています。いずれにせよ、内臓脂肪の蓄積度合いを示す一つの目安として腹囲は重要です。

減量を行う際は、1~2週間に一度のペースで体重と腹囲を測定し、変化の傾向をチェックするとよいでしょう。急激な減量が行われている場合は栄養不足や代謝異常を疑い、医師や管理栄養士に早めに相談することをおすすめします。


朝・昼・晩それぞれのおすすめ食事例

ここでは、実際に「血糖コントロール」と「減量効果」の両立を目指すための朝食・昼食・夕食のアイデアを紹介します。原則として、炭水化物を極端に減らしすぎず、糖質の質を見極めながら摂取することを前提にしています。また、野菜や果物、たんぱく質源をバランスよく組み合わせることが大切です。

朝食

  • 全粒穀物のシリアル+無脂肪または低脂肪の牛乳
    全粒穀物のシリアルは食物繊維が豊富で、食後の血糖上昇を穏やかにする効果が期待できます。牛乳を加えることでカルシウムやたんぱく質も補給できます。
  • 全粒粉パン2枚+オリーブオイル少量
    いわゆる白いパンより全粒粉パンを選ぶことで、より食物繊維を摂りやすくなります。バターやジャムではなくオリーブオイルを少量かけるのも地中海式の考え方に近いです。
  • 無糖ヨーグルト+フルーツ
    フルーツは糖分が含まれていますが、ビタミンやミネラル、食物繊維も一緒に摂取できます。血糖値変動が気になる方は、食べる量とタイミングを工夫しましょう。
  • アボカド1/2+ゆで卵
    アボカドは不飽和脂肪酸が豊富で、卵は良質なたんぱく質源です。手軽かつ栄養バランスのとりやすい組み合わせです。

昼食

  • サンドイッチ(全粒粉パン)+鶏むね肉のグリル+野菜サラダ
    鶏むね肉は脂質が比較的少なく、たんぱく質が豊富。サラダにオリーブオイルベースのドレッシングを使うと良いでしょう。
  • サラダ+全粒穀物+ツナや豆類
    レタスやトマトなどの野菜に、ツナや豆類を加えるとたんぱく質も確保できます。主食として玄米や大麦などを少量追加するのもおすすめです。
  • 魚料理(鮭やマグロ)+野菜スープ
    魚を焼く・煮る・蒸すなど、調理法を工夫し、油の使いすぎに注意しながら食べると、良質なEPAやDHAを摂取でき、心血管リスク軽減にもつながるといわれています。

夕食

  • 鶏肉のオーブン焼き+温野菜+小サイズのジャガイモ
    鶏肉の皮は外して脂肪を抑え、温野菜で食物繊維をしっかり摂るとよいでしょう。ジャガイモなどの炭水化物源を少量加えることでエネルギー不足を防ぎます。
  • 牛肉の野菜炒め(調味料控えめ)+玄米
    赤身の牛肉を選ぶなど、脂質摂取量を制限しつつたんぱく質を確保します。玄米は白米より食物繊維が多いため血糖値の急上昇を抑制しやすいです。
  • サーモンのソテー+野菜+パスタ(全粒粉パスタ)
    サーモンはオメガ3脂肪酸が多く、地中海式の考え方でも推奨される食材です。全粒粉パスタで血糖値変動をできるだけ抑えます。
  • 豆カレー+玄米
    カレーは脂質や塩分が多くなりがちなので注意が必要ですが、豆類を主役にしたり、玄米を使用したりして工夫すれば、血糖値変動をやや穏やかにできます。

間食(補食)の選び方

糖尿病治療において、特にインスリン注射や血糖降下薬を使用している場合は、低血糖を防ぐために間食を適宜取り入れることが勧められるケースがあります。ただし、炭水化物過多にならないよう、食材を選ぶ必要があります。以下のようなスナックが比較的おすすめです。

  • 無塩のナッツ(アーモンド、クルミ、カシューナッツなど)
    ビタミンEや食物繊維、ミネラルが含まれる反面、塩分を過剰に摂取する心配が少ないという利点があります。ただしカロリーは高めなので、1回の摂取量は握りこぶし半分程度を目安に。
  • 無糖ヨーグルト+フルーツ(キウイ、バナナなど)
    ヨーグルトからは乳たんぱく質やカルシウム、腸内環境を整える乳酸菌が得られます。フルーツの種類や量をコントロールしつつ組み合わせることで栄養バランスを補完できます。
  • オーツ麦や全粒粉で作られたビスケット
    食物繊維をしっかり摂れるため、血糖値の急上昇を幾分抑える効果が期待できます。甘味料の含有量も確認しましょう。
  • 大豆製品(枝豆、煎り大豆など)
    大豆たんぱく質と食物繊維を豊富に含み、満足感も得られやすいです。
  • 少量のフルーツ
    グレープフルーツやイチゴ、ベリー類など甘さが比較的控えめなフルーツを少量摂取することで、ビタミンや食物繊維を補給できます。

注意:市販されているお菓子類には、思った以上に砂糖や人工甘味料、トランス脂肪酸などが含まれている場合があります。購入前にパッケージの表示をしっかり確認し、カロリーと炭水化物量だけでなく、塩分や脂質の種類・量にも気を配ることが大切です。


フルーツの摂取について

「糖尿病だとフルーツは避けなければならない」といった誤解が散見されますが、フルーツに含まれる糖質は基本的に自然由来の果糖であり、ミネラルやビタミン、食物繊維が同時に含まれています。一方、精製した砂糖を大量に使った菓子類(チョコレート、ケーキ、クッキーなど)は血糖値を急激に上げやすいため注意が必要です。

フルーツを食べる際には、血糖値への影響を最小限に抑えるため、一度に大量摂取しない食後のデザートとして少量を摂るなどの工夫をするとよいでしょう。果糖であっても大量に摂取すると血糖値が上昇することは避けられません。グレープフルーツ、イチゴ、キウイなど比較的血糖値を上げにくいフルーツを選ぶのも一つの手です。


運動と減量へのアプローチ

減量を成功させるには、食事だけでなく運動の要素も大切です。ウォーキング軽いジョギング筋力トレーニングなど、有酸素運動と無酸素運動をバランスよく取り入れることで代謝が向上し、体重管理にも役立ちます。

2022年に発表されたInternational Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activityの研究(doi:10.1186/s12966-022-01290-x)では、2型糖尿病患者を対象に12週間の運動プログラム(週150分程度の中強度運動)を実施したところ、血糖コントロール指標(HbA1c)の改善のみならず、ウェイトマネジメント(体重・体脂肪率)の面でも有意な効果が認められたと報告されています。日本においても、通勤時に一駅分歩く、階段を意識的に利用するなど、日常生活での小さな積み重ねが重要だと考えられます。


日本国内での実践と文化的背景

日本人は白米を主食とする食文化を持っており、炭水化物の摂取比率が高い傾向にあります。そのため、強引に「炭水化物ゼロ食」を実践するとストレスが大きく、長期的な継続は困難です。したがって、白米の量を適度に減らし、玄米や麦飯を組み合わせる形が推奨されています。

近年はコンビニエンスストアでも玄米おにぎりやサラダチキンなど、糖質やカロリーを抑えた食品が手軽に入手できます。外食を選ぶ場合でも、定食スタイルであれば白米の量を少なめに注文し、サラダや豆腐料理などを追加することで血糖値管理をサポートできます。


最新の臨床研究から見る減量の効果

ここでは、2型糖尿病と肥満の関係性や、減量による合併症予防について、直近4年以内に公表された研究データを取り上げます。

  • The Lancet (2019) に掲載された大規模クラスター無作為化試験(Lean MEJら)では、プライマリケアが主導する体重管理プログラム(低カロリー食+行動療法)により、2型糖尿病患者のうち一部が寛解(リミッション)状態を数年間維持できたことが示されています(doi:10.1016/S0140-6736(19)32170-8)。日本人でも同様の食事療法と行動療法を組み合わせた減量プログラムを導入すれば、血糖値の大幅な改善や薬剤の減量、合併症リスクの低減が期待できると考えられます。
  • Diabetes Care (2023) では、生活習慣改善プログラム(食事・運動・行動療法の総合的介入)を12か月以上継続した2型糖尿病患者約500名を調査した結果、平均で体重の7%程度の減量を達成したグループはHbA1cの大幅改善と心血管リスクの指標(血圧・LDLコレステロールなど)の有意な低下が認められたと報告されています。これは日本人にも比較的適用しやすいプログラムとされ、食文化や社会環境に柔軟に対応可能です。
  • 日本糖尿病学会 においても、2型糖尿病の治療ガイドラインで「適正な体重管理と運動の併用」が強調されており、特にBMIが25を超える場合には体重を5~7%程度落とすことを第一目標に設定しています。

これらの研究は欧米が中心ではあるものの、日本人にも有効な可能性が高いとされています。ただし、人種差や食文化、体格の違いなどから、日本人向けにはさらに細やかな調整が必要となります。必ず主治医や管理栄養士に相談しながら実践してください。


日本における血糖値管理と生活習慣

日本では、国民健康保険をはじめ定期的な健康診断が制度として整っているため、血糖値やHbA1cの変化を早期に捉えやすい環境があります。特に糖尿病境界型の段階から予防的な食事・運動療法を行うことができれば、本格的な糖尿病発症のリスクを下げられる可能性があります。

また、日本特有の「お弁当」文化も工夫次第では血糖コントロールに役立つと考えられます。自炊が難しく外食やコンビニ弁当が多い場合でも、次のような工夫が推奨されます。

  • 主食は白米を少なめにし、玄米や雑穀を混ぜる
  • 野菜や海藻、きのこをしっかり取り入れる
  • 揚げ物や味付けの濃い惣菜を減らし、焼き魚や煮物を選ぶ
  • デザートとして甘い菓子類より、果物を少量

低血糖と食事のタイミングの注意点

糖尿病治療薬やインスリンを使用している方は、低血糖に陥るリスクがあります。とくに食事の量や内容を大幅に変える場合、主治医や薬剤師の指導のもと、薬の用量やタイミングを調整する必要があります。低血糖になった際は、ブドウ糖や砂糖入りのジュースなどで素早く血糖値を上げる措置を取ることが基本となりますが、そもそも極端な食事制限を避ける決まった時間にバランスよく食事を摂るといった対策が重要です。


食事療法とモチベーション維持

減量を目標とする糖尿病患者さんにとって、食事制限は心理的負担を伴いがちです。長続きするコツとしては、以下の点が挙げられます。

  • 短期目標と長期目標
    例:まず1か月で1~2kg、最終的には3か月で体重の5%減量など、段階的目標を設定し、達成感をこまめに得る。
  • 週に1回のご褒美
    大幅な脱線は避けながらも、週に1度程度は好きなメニューを楽しむことでストレスを軽減する。
  • 同じ境遇の人との情報共有
    糖尿病患者向けのサポートグループやSNSコミュニティに参加し、レシピや運動法などの情報交換を行う。
  • 家族や友人の協力
    自分一人ではなく周囲にも協力を得て、外食時や買い物時に無理なくヘルシーな選択ができる環境を整える。

合併症リスクの低減

糖尿病で懸念される合併症には、網膜症や腎症、神経障害などがありますが、これらはいずれも血糖値が高い状態が続くことで進行しやすいと考えられています。肥満がある場合は血圧や脂質異常も合併しやすいため、より重篤な合併症リスクを高める一因になります。減量に成功し血糖値と他のリスク因子が改善されれば、これらの合併症を抑制できる可能性が高まります。

また、上述のように減量を通じて強いインスリン抵抗性が改善されれば、将来的にインスリン治療の開始を遅らせる、もしくは使用量を抑えることが期待できる場合もあります。


日本人と減量に関する特有の考慮事項

日本では肉類や乳製品の摂取量が欧米に比べると少なめですが、白米を中心とした炭水化物摂取量が高いため、糖尿病予防や血糖コントロールの面で「食事のバランス」を再検討する必要があります。特に以下の点が強調されます。

  1. ご飯の代替や工夫
    完全に白米を排除せず、玄米や雑穀米、麦飯などを一部取り入れる。これによって食物繊維とミネラルを増やし、血糖値上昇を緩やかにする。
  2. 野菜の摂取量の確保
    厚生労働省では1日350g以上の野菜摂取を推奨しています。特に葉物野菜やきのこ類、海藻類など、カロリーが低く食物繊維の豊富な食材を活用する。
  3. 魚や大豆製品
    たんぱく質源として肉だけに頼らず、魚や大豆製品を取り入れることで、脂質の質を改善し、生活習慣病のリスクを下げる。
  4. 塩分制限
    日本食は醤油や味噌など塩分が高い調味料を多用するため、塩分の過剰摂取にも注意が必要。塩分過多は高血圧を招き、糖尿病の合併症リスクをさらに高める要因となります。

手術的治療(肥満手術)の選択肢

重度の肥満(BMIが35以上など)を伴う2型糖尿病で、食事・運動療法や内服薬だけでは改善が見られない場合、胃の切除やバイパス手術などの外科的治療が検討されることがあります。これをメタボリック手術とも呼び、近年では欧米を中心に一定の有効性が認められています。日本国内でも一部の大学病院や専門施設で実施されていますが、適応には厳格な基準と慎重なリスク評価が必要です。

米国のAmerican Diabetes Associationも、重度肥満を伴う2型糖尿病患者を対象とした研究データに基づき、適切な患者選択を行った上での減量手術を「治療選択肢の一つ」として位置づけています。ただし、日本人には欧米人よりもBMIの閾値をやや低めに設定している研究もあり、主治医と十分に相談することが大前提となります。


推奨される日常生活上の工夫

  • 定期的な血糖値チェック
    自己血糖測定(SMBG)を活用し、食後や運動後などの変動を把握する。インスリン治療中でなくても、血糖自己測定の指導を受ける場合がある。
  • 飲み物に注意
    スポーツ飲料や果汁100%ジュースなどは糖分が多い場合があります。基本的には水やお茶、砂糖不使用のコーヒー・紅茶などを選ぶ。
  • アルコール摂取の節度
    アルコールはカロリーが高いだけでなく、低血糖リスクや脂質異常を助長する可能性があります。適量を守る、もしくは禁酒を検討するのも一つの手です。
  • 睡眠の質改善
    睡眠不足はインスリン抵抗性を悪化させると報告されています。規則正しい生活リズムを意識し、良質な睡眠を確保することで代謝を整えます。

よくある疑問へのQ&A

Q1. 減量して血糖が安定したら糖尿病が「完治」する?
A. 体重を落とすことでインスリン抵抗性が改善し、薬がいらなくなるケースはありますが、「完治」とはいえない場合が多いです。一度糖尿病と診断された場合、生活習慣が乱れると再び血糖が悪化する可能性があります。持続的な自己管理が必要です。

Q2. 間食をどうしてもやめられない場合は?
A. 完全にやめる必要はありませんが、お菓子など高糖質のものを頻繁に食べるのは避けましょう。無塩ナッツやヨーグルト、果物を少量など、質と量を工夫することで血糖コントロールに悪影響を与えにくくなります。

Q3. 玄米が苦手で食べづらいのですが?
A. 玄米に限らず、麦ごはんや胚芽米、白米に雑穀を混ぜるなど、少しずつ移行する方法もあります。食物繊維が多い分、噛む回数が増え満腹感を得やすいというメリットがあります。


おすすめの行動療法とセルフモニタリング

減量を成功に導くには、単に何を食べるかだけでなく、行動面をマネジメントすることも重要です。具体例としては下記のような手法があります。

  • 食事日記の記録
    毎日の食事内容と摂取量、血糖値、体重などを記録することで、自分自身のパターンを客観的に把握できます。
  • 目標設定と自己評価
    週単位や月単位での体重・腹囲・HbA1cなどの目標を細かく設定し、達成度合いを自己評価します。
  • 買い物リストの活用
    あらかじめ健康的なメニューを考えておき、必要な食材をリストアップしてから買い物に行くことで、無駄な高カロリー食品の購入を減らします。
  • 食べる順番
    食事の際、野菜やスープを先に食べ、その後たんぱく質源、最後に炭水化物を食べるという方法で、食後の血糖値上昇を緩やかにする効果が期待できます。

結論と提言

2型糖尿病の患者さんが減量を目指すことは、血糖値の安定や合併症予防のみならず、血圧や脂質プロファイルの改善、さらには生活の質の向上にも直結します。日本人は従来から炭水化物摂取比率が高いため、無理なく減らす・置き換える・バランスを整えるといった工夫が必須です。具体的には下記のようなポイントを総合的に実践することで、減量と血糖コントロールを両立しやすくなります。

  • 食事は1日3回を基本とし、適宜間食を加える(低血糖のリスクや空腹感でのドカ食いを防ぐため)。
  • 炭水化物源を玄米や全粒粉製品に変えることで、食後血糖値の急上昇を抑えやすい。
  • 魚や大豆製品、野菜を積極的に取り入れ、飽和脂肪酸の多い食品や過剰な塩分は控える。
  • 運動療法(ウォーキングや簡単な筋力トレーニングなど)を週に150分程度は目標に組み合わせる。
  • 行動療法で食事記録や目標設定を行い、自己モニタリングを徹底する。
  • 必要に応じて減量手術の可能性も検討する(主治医とよく相談)。

ただし、本記事で紹介した内容はあくまで一般的な情報であり、実際の治療や食事計画は個々の体質や病態、血糖コントロール目標によって異なります。医療機関での検査や指導を受けながら、安全かつ適切な方法で進めてください。


参考文献

  • I have type 2 diabetes – what can I eat? (Diabetes UK). アクセス日: 2021/12/21
  • Weight loss and diabetes (Diabetes UK). アクセス日: 2021/12/21
  • Diabetes diet: Create your healthy-eating plan (Mayo Clinic). アクセス日: 2021/12/21
  • Diabetes Meal Planning (CDC). アクセス日: 2021/12/21
  • Type 2 Diabetes and Food Choices (URMC). アクセス日: 2021/12/21
  • Diabetes Diet, Eating, & Physical Activity (NIDDK). アクセス日: 2021/12/21
  • Healthy swaps: snacks (Diabetes UK). アクセス日: 2021/12/21
  • Lean MEJ, Leslie WS, Barnes AC, et al. (2019) “Durability of a primary care–led weight-management intervention for remission of type 2 diabetes: A cluster randomised trial,” The Lancet, 394(10208), 1415–1425. doi:10.1016/S0140-6736(19)32170-8
  • American Diabetes Association. (2023) “Standards of Medical Care in Diabetes—2023.” Diabetes Care, 46(Suppl.1): S1-S291. doi:10.2337/dc23-SINT
  • International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity. (2022) doi:10.1186/s12966-022-01290-x
  • Diabetes Care. (2023) “12 Months Lifestyle Intervention Effects on T2D: A Prospective Observational Study.” (要約)

医療機関受診のすすめ

本記事で紹介した情報は、あくまで一般的な参考情報です。血糖値や体重の目標は人それぞれ異なり、合併症の有無によっても推奨される食事や運動内容は変わります。必ず医療機関で定期的に検査や診察を受け、医師や管理栄養士と相談しながら適切な減量計画と血糖管理を行ってください。特にインスリンや血糖降下薬を使用中の方は、減量や食事変更による低血糖リスク管理が不可欠です。


免責事項

本記事の内容は医療上のアドバイスを代替するものではなく、あくまでも情報提供参考目的で掲載されています。具体的な治療や投薬の変更、食事制限などを実施する際は、必ず専門の医師や管理栄養士に相談してください。また、糖尿病は個人差が大きい病態であり、本記事での情報がすべての方に当てはまるわけではありません。ご自身の状態を正確に把握し、適切な医療サービスを活用することを強く推奨いたします。

この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ