【科学的根拠に基づく】強直性脊椎炎(体軸性脊椎関節炎)の診断:初期症状から確定診断、医療費助成まで徹底解説
筋骨格系疾患

【科学的根拠に基づく】強直性脊椎炎(体軸性脊椎関節炎)の診断:初期症状から確定診断、医療費助成まで徹底解説

「3ヶ月以上続くその腰痛、ただの腰痛症ではないかもしれません」。もしあなたがこのような長く続く腰の痛みに悩まされているなら、それは強直性脊椎炎(Ankylosing Spondylitis、略してAS)または、より広い概念である体軸性脊椎関節炎(axial Spondyloarthritis、略してaxSpA)の初期症状である可能性があります。強直性脊椎炎は、主に仙腸関節(骨盤にある関節)や脊椎に炎症が起こる慢性の炎症性関節疾患です。この病気の大きな問題の一つは、診断の遅れです。ある報告によれば、症状が現れてから確定診断が下されるまでに平均で数年もの時間がかかることがあります1。この遅れは、回復不可能な構造的損傷のリスクを高めるため、早期に発見し、適切な治療を開始することが極めて重要です。本記事では、JHO(JAPANESEHEALTH.ORG)編集委員会が、日本における強直性脊椎炎の診断プロセスについて、初期症状の見分け方から専門的な検査、そして診断後の公的支援制度に至るまで、最新の科学的知見に基づき、段階的かつ包括的に解説します。


この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書に明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下に、提示される医学的ガイダンスに直接関連する実際の情報源のみを記載します。

  • 米国放射線医学会(American College of Radiology): この記事における画像診断(MRI、X線)の役割と限界に関するガイダンスは、同学会の適切性基準に基づいています1
  • 1984年改訂ニューヨーク基準: 日本における指定難病の医療費助成制度の認定に用いられる強直性脊椎炎の診断基準に関する記述は、この国際的な基準に基づいています2
  • ASAS(国際脊椎関節炎評価学会): 早期診断、特にX線で異常が見られない段階での診断(nr-axSpA)に関する解説は、ASASが策定した2009年の診断基準に基づいています3
  • 日本リウマチ学会: 脊椎関節炎全般に関する定義や症状の解説は、同学会が提供する情報に基づいています4
  • 厚生労働省: 日本国内の患者数、性別比、発症年齢、遺伝的要因(HLA-B27)などの疫学データは、厚生労働省の助成による研究班の報告に基づいています5

要点まとめ

  • 強直性脊椎炎の最も特徴的な初期症状は「炎症性腰背部痛」です。これは安静時に悪化し、運動によって改善するという特徴があります。
  • 診断の遅れが大きな問題となっており、早期発見が恒久的な関節損傷を防ぐ鍵となります。
  • 診断には、問診、身体診察、血液検査(CRP、HLA-B27)、画像検査(X線、MRI)が総合的に用いられます。特にMRIは早期診断に極めて重要です。
  • 診断基準には、主にX線所見を重視する「改訂ニューヨーク基準」と、MRIや臨床症状を重視し早期診断を可能にする「ASAS基準」があります。
  • 日本では、強直性脊椎炎は指定難病とされており、一定の基準を満たすことで医療費の助成を受けることができます。

強直性脊椎炎の警告サイン:初期症状を見分ける

このセクションの目的は、読者が自身の症状を一般的な問題と区別し、適切なタイミングで医療機関を受診できるよう支援することです。これは、患者さんの診断に至る旅の最初で最も重要なステップです。

中心的な症状:炎症性腰背部痛

これは強直性脊椎炎の最も特徴的で重要な手がかりです。信頼できる医学文献に基づき、炎症性腰背部痛の具体的な特徴を以下に詳述します1

  • 緩やかな発症: 痛みは特定の怪我によるものではなく、静かに始まります。通常、40〜45歳未満の若年層で発症することが多いです1
  • 慢性的: 痛みが3ヶ月以上続きます6
  • 運動で改善し、安静で悪化: これが一般的な機械的腰痛との決定的な違いです。痛みやこわばりは、夜間や早朝の起床時に最も強く、軽い運動や体操の後に著しく改善します7
  • 朝のこわばり: 朝、腰や臀部に30分以上続くこわばりを感じます3

その他の初期症状

腰痛以外にも、以下のような症状が早期に現れることがあります。

  • 末梢関節炎: 股関節、膝、足首、肩などの大きな関節に痛みや腫れが生じます。痛みはある関節から別の関節へと移動することがあります8
  • 付着部炎: 腱や靭帯が骨に付着する部分に痛みが生じます。最も一般的な部位は、かかと(アキレス腱炎)や足の裏(足底腱膜炎)です。
  • 全身症状: 原因不明の疲労感、微熱、体重減少なども、全身性の炎症状態を示すサインである可能性があります3

読者が症状を自己評価しやすくするために、以下の比較表は非常に有用なツールです。これは自己診断を目的とするものではなく、患者さんが「危険信号」に気づき、医師により正確な情報を提供することで、診断の遅れという問題を解決する一助となることを目指しています1

表1:炎症性腰背部痛(AS疑い)と機械的腰痛(一般的)の比較
特徴 炎症性腰背部痛(AS疑い) 機械的腰痛(一般的)
発症年齢 通常40-45歳未満1 全年齢。加齢と共に増加
発症様式 潜行性、緩やか1 通常、急性の労作後や外傷後
安静の効果 改善せず、悪化することもある6 改善、痛みが和らぐ
運動の効果 改善、痛みとこわばりが軽減7 痛みを悪化させることがある
痛みが最も強い時間帯 夜間と早朝9 日中や身体活動後
朝のこわばり 30分以上続く3 通常30分未満、または無し

強直性脊椎炎の診断:病院での道のり

このセクションでは、複雑な診断プロセスを解き明かし、患者さんが医療の旅を始める際の不安や不確実性を軽減することを目的としています。

ステップ1:問診と身体診察

診断プロセスは、詳細な問診と身体診察から始まります。

  • 問診: 医師は以下の点について重点的に質問します。
    • 腰痛の特性:いつ始まったか、どのくらい続くか、痛みを増減させる要因は何かなど3
    • 家族歴:家族に同様の疾患を持つ人がいるかどうか。
    • その他の関連症状:末梢関節の問題、眼の症状(ぶどう膜炎)、皮膚症状(乾癬)、または腸の症状(炎症性腸疾患 – IBD)など6
  • 身体診察: 医師は脊椎や胸郭の可動性を評価するための検査を行います。これらの検査について事前に理解しておくことで、患者さんは心の準備ができます。一般的な検査には以下のようなものがあります。
    • シューバーテスト (Schober test): 腰椎の柔軟性を評価するために、前屈時の腰椎の伸びを測定します2
    • 胸郭拡張差の測定: 最大吸気時と最大呼気時の胸囲の差を測定します2
    • 耳珠-壁距離の測定: 頸椎や胸椎上部の後弯(猫背)の程度を評価します10

ステップ2:血液検査 – 炎症と遺伝的要因を探る

血液検査は、体内の炎症状態と遺伝的素因に関する重要な手がかりを提供します。

  • 炎症マーカー: C反応性蛋白(CRP)と赤血球沈降速度(ESR)が一般的に測定されます。これらの数値が高い場合、体内で活動性の炎症が存在することを示唆します。ただし、これらはASに特異的なものではなく、他の多くの疾患でも上昇する可能性があります6
  • 遺伝的要因:HLA-B27: これは重要な検査ですが、誤解を避けるために慎重な説明が必要です。
    • 関連性: HLA-B27は、ASと非常に強い関連性を持つヒト白血球抗原の一種です。欧米のAS患者の約90%が陽性であるのに対し、日本人男性患者では約55-65%がHLA-B27陽性です5
    • 結果の解釈:
      • 陽性でも発症するとは限らない: 一般人口のごく一部(日本人では約0.3%)はHLA-B27遺伝子を持ちながら、生涯健康で発症しません11。親からこの遺伝子を受け継いだ場合でも、ASを発症する危険性は10%未満です。
      • 陰性でも病気を否定できない: HLA-B27遺伝子を持っていなくてもASを発症する可能性はあります。これは特に日本人女性患者に当てはまり、陽性率は約31.3%にとどまります5
    • 結論: HLA-B27検査は診断の全体像における価値ある一片ですが、唯一の決定要因ではなく、総合的な臨床的背景の中で解釈される必要があります。

ステップ3:画像検査 – 脊椎の内部を視る

画像検査は、ASの診断を確定するために不可欠なツールです。

  • X線(レントゲン)検査:
    • 役割: 通常、最初に行われる画像検査法であり、仙腸関節の構造的損傷(永続的なダメージ)を評価するために推奨されます1
    • 結果の読影: X線上の仙腸関節の所見は、グレード0(正常)から4(完全強直)に分類され、関節の損傷度を示します3
    • 限界: X線検査の最大の弱点は、後期段階の損傷しか検出できないことです。炎症による変化がX線写真上で明らかになるまでには、数年から10年以上かかることもあります1。したがって、初期段階での正常なX線結果はASを否定できず、これが診断遅延の主な原因の一つとなっています。
  • MRI(磁気共鳴画像)検査:
    • 役割: MRIは、ASの早期診断における「ゴールドスタンダード(最も信頼性の高い基準)」と見なされています。MRIの卓越した利点は、仙腸関節や脊椎における活動性の炎症(主に骨髄浮腫)を、X線で何らかの兆候が現れる何年も前に検出できる能力にあります1
    • MRI上の所見: 医師は、診断を下すために、活動性の炎症所見(骨髄浮腫など)と、早期の構造的損傷(骨びらん、硬化、脂肪沈着など)の両方を探します12

診断のパズルを組み合わせる:公式な診断基準

病歴、身体診察、血液検査、画像検査からすべての情報を収集した後、医師は国際的に承認された診断基準と照合し、最終的な結論を下します。これらの基準を理解することは、患者さんが医療プロセスへの信頼を深めるのに役立ちます。

1984年改訂ニューヨーク基準

これは何十年にもわたって使用されてきた古典的な基準であり、日本の指定難病医療費助成制度の認定基準としても用いられているため、依然として非常に重要です2

ASの確定診断には、以下の基準を満たす必要があります。

  • X線基準: 両側性のグレード2以上の仙腸関節炎、または片側性のグレード3〜4の仙腸関節炎3
  • かつ、以下の臨床基準の少なくとも1つ:
    • 3ヶ月以上続く腰痛とこわばりで、運動により改善するが安静では改善しない。
    • 前後および側方の両平面における腰椎の可動域制限。
    • 年齢および性別に応じた正常値と比較した胸郭拡張の制限3

診断の進化:2009年ASAS基準

ニューヨーク基準の早期診断における限界を認識し、国際脊椎関節炎評価学会(ASAS)は2009年に新しい診断基準を開発しました。この基準により、X線で明らかな損傷が見られるずっと前の段階で病気を診断することが可能になりました。この基準を紹介することは、ウェブサイトの専門性と最新性を示すものです。

ASAS基準は、3ヶ月以上続く腰痛を持つ45歳未満の患者に適用され、2つの nhánh(診断経路)に分かれています。

  • 画像診断経路: 画像検査(MRIまたはX線)で仙腸関節炎の証拠があり、かつ、脊椎関節炎(SpA)の特徴が他に少なくとも1つある。
  • 臨床診断経路: HLA-B27が陽性であり、かつ、SpAの特徴が他に少なくとも2つある。

役割: この基準は、症状は完全にあるもののX線写真が正常である病型、「X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-axSpA)」の診断に特に重要です1

以下の比較表は、これらの複雑な基準を簡素化し、それぞれの基準の役割と違いを明確にするのに役立ちます。

表2:主要な診断基準の概要
基準 1984年改訂ニューヨーク基準 2009年ASAS基準
主要な焦点 構造的損傷が既に存在するASの診断 axSpAの全スペクトラム(ASとnr-axSpAを含む)の早期診断
X線の役割 必須であり、主要な基準3 2つの画像診断法のうちの1つで、MRIで代替可能1
MRIの役割 基準に含まれていない 早期診断において中心的な役割を果たす(活動性炎症の検出)12
HLA-B27の役割 基準に含まれていない 臨床診断経路における主要な基準3
適用対象 主にX線で証拠のあるAS 慢性腰痛を持つ45歳未満で、axSpAが疑われる患者3

診断後:疾患活動性のモニタリング

診断が確定した後、治療効果を評価し、必要に応じて治療計画を調整するために、疾患活動性をモニタリングすることが非常に重要です。医師は、患者さんの症状や機能を数値化するために、標準化された評価尺度を使用します。

  • BASDAI (Bath Ankylosing Spondylitis Disease Activity Index): 患者さんが過去1週間の疾患活動性を自己評価するための6項目からなる質問票です。疲労、脊椎の痛み、末梢関節の痛み、圧痛、朝のこわばりの程度と持続時間が含まれます2。スコアが高いほど、疾患活動性が高いことを示します。日本の医療費助成制度の認定基準の一つとして、BASDAIスコアが4以上(かつCRPが1.5 mg/dL以上)であることが重要です2
  • BASMI (Bath Ankylosing Spondylitis Metrology Index): 医師が実施する5つの測定(背中の屈曲、側屈、首の回旋など)を通じて、客観的に脊椎の可動性を評価する尺度です2。スコアが高いほど、可動域の制限が大きいことを示します。BASMIスコアが5以上であることも助成認定基準の一つです2
  • ASDAS (Ankylosing Spondylitis Disease Activity Score): 患者さんの主観的な症状(BASDAIに類似)と客観的な炎症マーカー(CRPまたはESR)を組み合わせて、疾患活動性に関する単一のスコアを算出する、より現代的な尺度です10

鑑別診断:他の腰痛原因の除外

ASの診断プロセスでは、同様に慢性的な腰痛を引き起こす可能性のある他の疾患を除外するための慎重さが求められます。鑑別診断について議論することは、記事の網羅性と専門性を示すものです。考慮すべき疾患には以下が含まれます10

  • 椎間板ヘルニア: 痛みはしばしば神経の走行に沿って脚に放散し、安静によって軽減することが多いです。
  • 腰部脊柱管狭窄症: 「神経性間欠跛行」を引き起こします。これは、一定距離を歩くと脚に痛みやしびれが生じ、座ったり前かがみになったりすると軽減する症状です。
  • 変形性脊椎症: 多くは加齢に関連し、痛みは運動時に増悪し、安静時に軽減します。
  • 感染性脊椎炎: 通常、高熱、悪寒、および固定された部位の激しい痛みを伴います。
  • 線維筋痛症: 全身に広がる痛みが疲労感や特定の圧痛点とともに見られますが、検査や画像での炎症所見はありません。

専門情報:日本における強直性脊椎炎の実態

包括的な視点を提供するために、日本におけるこの疾患の具体的な背景を理解することは非常に重要です。厚生労働省が助成した疫学研究により、貴重なデータが提供されています5

  • 患者数: 日本には強直性脊椎炎(AS)の患者が約3,200人、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-axSpA)の患者が約800人いると推定されています5
  • 性別比: 男性に多く見られ、男女比は約3:1です13
  • 発症年齢: 男性の平均発症年齢は約28歳であるのに対し、女性はそれより遅く、約37歳で発症することが多いです13
  • HLA-B27陽性率: 日本人患者におけるHLA-B27の陽性率は約55.5%です13。注目すべきは、女性患者の陽性率(約31.3%)が男性患者(約64.1%)に比べて著しく低いことです5。この違いは、発症年齢が遅いことと相まって、女性における診断の困難さや遅れの一因となっている可能性があります。

診断後の支援:医療費助成制度と患者会について

診断は始まりに過ぎません。支援制度に関する実践的で有用な情報を提供することは、患者さんの全行程に対する深い配慮を示すものであり、信頼性の高い情報提供の証です。

指定難病医療費助成制度

日本では、強直性脊椎炎(AS)は「指定難病」として認定されており、患者さんは治療費の一部を国から助成してもらうことができます。

  • 対象者: 改訂ニューヨーク基準に基づき、強直性脊椎炎(AS)と確定診断された患者さんのみが対象です。X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-axSpA)の病型は、現在この制度の対象外です14
  • 助成の条件: 患者さんは、以下の重症度基準のうち少なくとも1つを満たす必要があります2
    • BASDAIスコアが4以上 かつ CRP濃度が1.5 mg/dL以上。
    • BASMIスコアが5以上。
    • X線画像で、連続する2つ以上の椎体間に強直(竹様脊柱 – bamboo spine)が見られる。
    • 治療に抵抗性の重度の末梢関節炎で、関節破壊を伴うもの。
    • 再発性、治療抵抗性、または視力低下をきたす急性前部ぶどう膜炎。
  • 「軽症高額」の場合: 上記の重症度基準を満たさない場合でも、ASの治療にかかる医療費総額(保険適用前)が月額33,330円を超える月が年間3回以上ある場合、助成の対象となる可能性があります15
  • 申請手続き: 患者さんはお住まいの地域の保健所に申請します。必要な書類には、申請書、難病指定医が記入した臨床調査個人票、身分証明書、健康保険証などが含まれます14

この複雑な行政手続きを以下の要約表で簡潔に説明します。

表3:ASに関する医療費助成制度クイックガイド
項目 詳細
制度名 指定難病医療費助成制度
対象者 強直性脊椎炎(AS)と確定診断された患者。nr-axSpAは対象外16
主な条件 重症度基準のいずれかを満たす、または「軽症高額」に該当する15
助成内容 自己負担割合が3割から2割に軽減。世帯の所得に応じた自己負担上限月額が設定される14
申請場所 地域の保健所17
主な書類 申請書、臨床調査個人票(難病指定医が記入)、保険証、所得証明書類など16

患者支援団体

同じ境遇にある人々と繋がることは、大きな精神的支えとなり得ます。日本では、「日本AS友の会」が最大かつ最も信頼できる患者支援団体です。記事ではこの会を紹介し、患者さんがウェブサイトにアクセスして情報を得たり、経験を共有したり、交流イベントに参加したりすることを推奨します18

よくある質問

HLA-B27が陽性だったら、強直性脊椎炎と確定しますか?

いいえ、確定しません。HLA-B27が陽性であっても、多くの人は生涯にわたって強直性脊椎炎を発症しません。日本人では一般人口の約0.3%が陽性ですが、健康な方がほとんどです11。この検査はあくまで診断の補助的な情報の一つであり、症状、診察所見、画像検査の結果と合わせて総合的に判断されます。

X線(レントゲン)検査で異常がない場合、強直性脊椎炎は否定されますか?

いいえ、否定されません。病気の初期段階では、X線写真に変化が現れるまで数年かかることがあり、これは診断の遅れの一因となっています1。X線で異常がなくても、特徴的な症状があり、MRI検査で仙腸関節に活動性の炎症(骨髄浮腫など)が見つかれば、「X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-axSpA)」と診断される可能性があります。

強直性脊椎炎(AS)と体軸性脊椎関節炎(axSpA)の違いは何ですか?

体軸性脊椎関節炎(axSpA)は、脊椎や仙腸関節に炎症を来す疾患群の総称です。このaxSpAは、X線検査で仙腸関節に明らかな構造的損傷が認められる「強直性脊椎炎(AS)」と、X線では異常がないもののMRIで炎症が見られる「X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-axSpA)」の2つに大別されます14。つまり、ASはaxSpAの一つの病型(進行した段階)と位置づけられています。

医療費の助成を受けるには、必ず重い症状が必要ですか?

必ずしもそうではありません。重症度基準(BASDAIやBASMIスコアなど)を満たさなくても、「軽症高額」という制度があります。これは、月々の医療費(保険適用前)が33,330円を超える月が年3回以上ある場合に、助成の対象となる可能性がある制度です15。高価な生物学的製剤などによる治療を受けている場合は、この制度に該当する可能性がありますので、主治医や保健所に相談することをお勧めします。

結論

強直性脊椎炎の診断は複雑な道のりかもしれませんが、正確な知識と情報を持つことで、患者さん自身が自己の健康管理における主体的なパートナーとなることができます。最も重要な鑑別点として繰り返し強調すべきは、炎症性腰背部痛の「運動で改善し、安静で悪化する」という特異な性質です。もしあなたやあなたの愛する人がこの記事で述べたような症状を経験しているならば、決してためらわないでください。リウマチ専門医の診察を受けることを強くお勧めします。早期診断と迅速な治療開始こそが、病気をコントロールし、永続的な損傷を防ぎ、将来の生活の質を守るための鍵なのです。より詳しい情報を得るために、日本リウマチ学会などの専門機関が提供する全国のリウマチ専門医を探すツールを活用することも有効です19

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康上の懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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