「なんとなく食欲がわかない」「すぐお腹がいっぱいになってしまう」「気づいたら体重がどんどん減っている」。大人になってからこうした状態が続くと、「年齢のせいかな」「仕事が忙しいだけ」と自分に言い聞かせてしまいがちです。しかし、長く続く食欲不振は、栄養不足や思わぬ病気のサインであることも少なくありません。
特に高齢者では、歯や口のトラブル、のみ込みにくさ、複数の薬の影響、ひとり暮らしの寂しさなどが重なって、知らないうちに低栄養や体力低下につながることが報告されています。放っておくと、転倒しやすくなったり、感染症にかかりやすくなったり、要介護状態が進むリスクも指摘されています。
一方で、ストレスや生活リズムの乱れなど、生活習慣を見直すことで改善が期待できる「軽い食欲不振」もあります。大切なのは、「どこまでが様子見でよい範囲で、どこからが受診のサインなのか」を知り、自分や家族の状態を冷静に振り返ることです。
本記事では、日本の公的機関や国内外の研究報告に基づき、大人の食欲不振について、原因・考えられる病気・セルフチェックのポイント・今日からできる対策・医療機関を受診する目安を、段階的にわかりやすく解説します。ご自身だけでなく、高齢の親御さんやパートナーの様子が気になる方も、ぜひ参考にしてみてください。
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- 厚生労働省・自治体・公的研究機関:健康日本21アクション支援システム、口腔機能・低栄養に関する解説、こころの健康づくりに関する情報など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています。
- 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:高齢者の低栄養や「加齢性食欲不振」に関するシステマティックレビュー、体重減少と機能低下の関連を検討したコホート研究など、科学的に検証されたエビデンスをもとに要点を整理しています。
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要点まとめ
- 大人の食欲不振は、「一時的な食欲のゆらぎ」と「病気や低栄養が背景にある状態」が混ざりやすく、数週間〜数カ月続く場合や体重減少を伴う場合には注意が必要です。
- 生活リズムの乱れ、睡眠不足、ストレス、過度なダイエット、アルコール・喫煙などの生活習慣は、食欲を大きくゆさぶる要因になります。まずは日常生活の見直しから始めましょう。
- 高齢者では、歯や入れ歯のトラブル、のみ込みにくさ(嚥下障害)、うつ病などのこころの不調、複数の薬の副作用、ひとり暮らしによる孤立感などが食欲低下と低栄養の大きな原因となります。
- 短期間での大きな体重減少(半年〜1年で5%以上の減少など)、原因不明の発熱や強いだるさ、胸やお腹の強い痛み、吐血・下血、のみ込みにくさ、急なもの忘れの悪化などは、早めの受診が必要な「赤信号」です。
- 自分でできる対策として、少量頻回の食事、食べやすい形への工夫、食事環境づくり、適度な運動や睡眠の改善、周囲と一緒に食べる工夫などがありますが、「無理に食べさせる」ことは避け、つらさが続く場合は医療機関に相談することが大切です。
- この記事の最後では、受診の目安や診療科の選び方、診察時に役立つメモの取り方も紹介します。自己判断で治療を中断したり、サプリメントだけに頼ったりせず、必要に応じて専門家の力を借りることを意識しましょう。
「食欲がないのは、単なる疲れなのか、それとも病気なのか」。はっきり線引きできず、一人で不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。特に家族の食が細くなってきたとき、「無理にでも食べさせた方がいいのか」「怒らない方がいいのか」と悩む声もよく聞かれます。
本記事では、まず第1部で生活習慣や環境など、身近な要因を整理し、第2部で栄養状態・ホルモン・持病など身体の内側の要因を解説します。さらに第3部では、専門的な診断が必要な病気の例を紹介し、第4部で今日から始められる具体的な改善アクションをまとめます。
必要に応じて、JapaneseHealth.org トップページや、JHO内の関連ガイドもあわせてご覧いただくことで、より広い視点から健康づくりのヒントを得ることができます。
この記事を読み進めることで、「自分や家族の食欲不振はどのタイプか」「今は生活を整える段階なのか、それとも医療機関に相談すべき段階なのか」を、落ち着いて整理できるようになることを目指しています。
第1部:大人の食欲不振の基本と日常生活の見直し
まずは、病気だけでなく、生活習慣や環境の変化によっても食欲が大きく揺れ動くという点を押さえておきましょう。特に、仕事や家事、育児に追われる世代では、「忙しさ」と「ストレス」が重なり、食欲の低下や食事パターンの乱れを引き起こしやすくなります。
1.1. 食欲の仕組みと「一時的な食欲低下」
食欲は、脳の視床下部という部分が中心となって、血糖値やホルモン、胃腸の動き、においや見た目などの情報を統合してコントロールしています。お腹がすくと、胃から「グレリン」と呼ばれるホルモンが分泌され、脳に「そろそろ食事の時間だよ」とサインを送ります。一方、お腹いっぱいになると、脂肪細胞から「レプチン」というホルモンが分泌され、「もう十分だよ」というサインが脳に届きます。
このバランスは、睡眠不足や生活リズムの乱れ、急激なダイエット、ストレス、アルコールなどの影響を受けやすく、「数日〜1週間程度の一時的な食欲低下」が起こることは珍しくありません。たとえば、期末の忙しい時期や引っ越し前後、身近な人のトラブルなど、大きなストレスが続くと、一時的に「食べる気がしない」という状態が出る場合があります。
一方で、「2週間以上、明らかに食事量が減っている」「体重が落ち続けている」「もともと好きだった食べ物にも手が伸びない」といった状態が続く場合は、単なる一時的なストレスではなく、体やこころの病気が関わっている可能性も考える必要があります。
1.2. 食欲を悪化させやすいNG習慣
日々の生活のなかには、「よく考えると食欲を落としやすい行動」がいくつもあります。自分の生活を振り返りながら、当てはまるものがないかチェックしてみましょう。
- 朝食を抜いて、1日2食+間食で済ませている:血糖値の上下動が大きくなり、空腹と満腹の感覚が乱れやすくなります。
- 夜遅くまでスマホやPCを見ている:ブルーライトや情報の刺激で自律神経が乱れ、睡眠の質が下がることで、翌日の食欲にも影響します。
- カフェインやアルコールの量が多い:コーヒーやエナジードリンク、アルコールをとりすぎると、胃の不快感や睡眠の質の低下につながり、結果的に食欲が落ちることがあります。
- 極端なダイエットや糖質制限をくり返している:短期間での食事制限を繰り返すと、体が「飢餓状態」に慣れてしまい、本来の空腹・満腹のサインがわかりにくくなることがあります。
- ひとりで黙々と食べることが多い:会話のない食事は味や香りに意識が向きにくく、「なんとなく食べてもおいしくない」という感覚につながりやすくなります。
これらの習慣は、すぐに病気につながるとは限りませんが、長く続けると食欲の調整機能をじわじわと弱らせてしまいます。「まずはここから整えてみる」という意味で、生活習慣の見直しは大切な一歩です。
| こんな症状・状況はありませんか? | 考えられる主な背景・原因カテゴリ |
|---|---|
| 平日は朝食を抜き、夜遅くにドカ食いしてしまうことが多い | 生活リズムの乱れ、血糖値の変動、自律神経の乱れ |
| 忙しくて食事の時間が不規則になり、常に軽い胃もたれがある | 消化器への負担、ストレス、食事内容の偏り |
| 一人で食べることが多く、食事が「義務」のように感じる | 社会的孤立感、気分の落ち込み、うつ状態のサインの可能性 |
| ダイエットとリバウンドを何度も繰り返しており、最近は空腹感自体がよくわからない | ホルモンバランスの乱れ、摂食行動のパターン化、摂食障害の入り口の可能性 |
| ストレスが強いときは食べられなくなり、落ち着くとまた食欲が戻る | ストレスによる自律神経の乱れ、ホルモンの変動 |
第2部:身体の内部要因 — 栄養・ホルモン・隠れた不調
生活習慣を整えても食欲不振が続く場合や、短期間で体重が大きく減っている場合は、体の内側に原因が隠れていることがあります。ここでは、特に注意したい栄養状態・ホルモン・持病・薬の影響などについて整理します。
2.1. 【特に女性】ライフステージとホルモンバランス
女性の体は、月経・妊娠・出産・授乳・更年期など、ライフステージごとに大きくホルモンバランスが変化します。そのなかで「食欲の変化」もよく見られる症状の一つです。
- 月経前・月経中:人によっては食欲が増える一方で、腹痛や頭痛、気分の落ち込みから食欲が落ちる方もいます。
- 妊娠初期:つわりによる吐き気やにおいの過敏さから、食べられるものが極端に限られることがあります。
- 産後・育児中:寝不足やストレス、ホルモンの変化が重なり、食欲が落ちる方もいれば、逆に間食が増える方もいます。
- 更年期:ホットフラッシュや動悸、不安感などの症状とともに、食欲低下や体重減少が起こる場合があります。
こうした変化の中でも、「短期間で体重が大きく落ちる」「食べる量が極端に減る」「気分の落ち込みや不安が強い」などの場合には、婦人科や心療内科などへの相談も検討しましょう。ホルモンだけで説明できない病気が隠れている場合もあるため、「全部年齢のせい」と決めつけないことが大切です。
2.2. 栄養不足・隠れた欠乏状態
「痩せているから=栄養不足」とは限りませんが、食欲不振が続くとタンパク質やビタミン、ミネラルなどが不足しやすくなります。特に高齢者では、食事量の減少や食べやすいものへの偏りから低栄養に陥ることが問題となっています。日本の調査では、65歳以上でBMIが20未満と推定される「低栄養傾向」の高齢者が一定数存在し、特に高齢になるほど割合が高くなると報告されています1。
低栄養になると、次のような症状が現れやすくなります。
- 疲れやすい、階段や少しの坂道で息切れがする
- 立ち上がるときに力が入りにくい、ふらつきやすい
- 風邪や感染症にかかりやすく、治りにくい
- 傷の治りが遅い
- 筋肉が落ち、体つきが細くなったように見える
高齢者の低栄養の背景には、味やにおいを感じにくくなること、噛む力・飲み込む力の低下、買い物・調理が難しくなること、独居や高齢者世帯で食事づくりの負担が大きくなることなど、さまざまな要因が重なっていると報告されています1,2。
2.3. 口腔・嚥下のトラブルと食欲不振
歯が抜けたままになっていたり、入れ歯が合っていなかったり、のみ込みにくさ(嚥下障害)があると、「痛いから」「むせるから」といった理由で食事量が減り、食欲そのものも落ちていきます。高齢者では、脳卒中や神経・筋の病気、加齢による嚥下機能の低下などが、食欲不振や低栄養の要因となることが指摘されています2,3。
口腔機能(噛む・飲み込む・味わうなど)が低下すると、ビタミンやミネラル、タンパク質、食物繊維などの摂取が不足し、逆に炭水化物やお菓子に偏りやすくなることが報告されています4。食事のバランスが崩れることで、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクが高まるだけでなく、体重や筋肉量も維持しにくくなります。
「食事中によくむせるようになった」「以前より時間をかけないと食べ終わらない」「硬いものを避けるようになった」といった変化がある場合は、歯科や歯科口腔外科、摂食嚥下に詳しい医療機関への相談も選択肢になります。
2.4. 持病や薬による食欲低下
食欲不振は、多くの病気で見られる「非特異的な症状」の一つです。たとえば、消化器の病気(胃炎・胃潰瘍・肝臓や胆のうの病気など)、心不全や腎臓病、慢性感染症、がん、甲状腺の病気などでも、食欲低下や体重減少が現れることがあります。また、高血圧や心臓病、うつ病などの治療薬の一部には、味覚の変化や吐き気、食欲低下を副作用として起こしうるものも知られています5,6。
高齢者では複数の薬を同時に服用していることが多く、「どの薬がどれくらい影響しているのか」が自分では判断しにくいこともあります。最近飲み始めた薬のあとから食欲が落ちたと感じる場合や、薬の数が多いと感じる場合には、自己判断で中止するのではなく、処方している医師や薬剤師に相談してみましょう。
第3部:専門的な診断が必要な疾患
食欲不振が「なんとなく」というレベルを超えて、体重減少や全身症状を伴う場合には、背景に病気が隠れている可能性を考える必要があります。ここでは、いくつか代表的な疾患グループを紹介します。あくまで一般的な情報であり、「この症状があるからこの病気」と決めつけることはできませんが、受診のきっかけとして参考にしてください。
3.1. 消化器の病気(胃・腸・肝臓・胆のうなど)
胃炎や胃潰瘍、逆流性食道炎、慢性膵炎、肝炎や肝硬変、胆石症など、消化器の病気では、胃もたれや胸やけ、吐き気、腹痛、下痢・便秘などとともに食欲低下がよく見られます。なかには胃がんや大腸がんなど、早期発見が重要な病気も含まれます。
「少し食べただけですぐお腹がいっぱいになる」「以前は平気だった量でも苦しくなる」「黒っぽい便が続く」「みぞおちの痛みや胸やけが夜間も続く」といった症状がある場合は、消化器内科への受診を検討しましょう。
3.2. うつ病などのこころの病気・摂食障害
うつ病では、「何をしても楽しくない」「気分が落ち込む」「意欲が出ない」といった心の症状に加えて、「眠れない・寝すぎてしまう」「食欲が出ない・食べすぎてしまう」など、身体の症状(身体症状)もよく見られます。日本の公的情報でも、うつ病の症状の一つとして食欲低下が挙げられています7。
また、摂食障害(拒食症・過食症など)では、「太ることへの強い恐怖」「体重や体型への強い不満」「食べたものを吐いてしまう」「下剤や利尿剤を乱用する」などの特徴があり、単なる「少食」「グルメ」とは異なる深刻な状態になることがあります8。体重が大きく減っているのに「まだ太っている」と感じる、食べ物のことが頭から離れない、といった場合には、専門的な支援が必要です。
3.3. 高齢者に多い「加齢性食欲不振」とフレイル
高齢になると、筋力の低下や活動量の減少、嗅覚・味覚の衰え、口腔機能や嚥下機能の低下、複数の病気や薬の影響、孤立感や喪失体験による心理的ストレスなど、さまざまな要因が重なり、「加齢性食欲不振」と呼ばれる状態に陥りやすいことが指摘されています2,5,9,10。
食欲不振と体重減少は、フレイル(加齢に伴う虚弱)の重要なサインでもあり、転倒や入院、死亡などのリスク上昇と関連することが報告されています9,10。特に、半年〜1年で5%以上の体重減少がある場合は、意図的なダイエットでない限り、医療機関で原因を調べることが推奨されています6。
高齢の家族が「最近よく食べ残すようになった」「好きだったものにも手をつけない」「お皿を小さいものに変えている」といった変化があれば、さりげなく体重や食事内容を確認し、必要に応じて受診を勧めてあげましょう。
第4部:今日から始める改善アクションプラン
すぐに病院へ行くべきサインがない場合でも、「様子を見ているうちにどんどん痩せてしまった」ということにならないよう、できる範囲で生活を整えていくことが大切です。ここでは、今日から取り入れやすいアクションを、レベル別に整理します。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今夜からできること | 食事の「雰囲気」と「食べやすさ」を整える | 食卓の照明を少し暖かい色にする、テレビやスマホを消して「食べること」に集中する、香りのよいメニュー(だしの香り、ハーブなど)を取り入れる、柔らかく飲み込みやすい形に調理する など |
| Level 1:少量頻回を意識する | 一度にたくさん食べようとせず、回数でカバーする | 1日3回+間食2回を目安に、少ない量をこまめにとる。3食のうち、食べやすい時間帯(朝・昼など)にエネルギーやタンパク質が多い食事を集中させる。 |
| Level 2:今週末からできること | 買い物や調理の負担を減らす工夫 | レトルトのスープや冷凍の野菜・魚を活用する、栄養バランスのよい宅配弁当やコンビニ惣菜を組み合わせる、家族と「作り置きの日」を決めて一緒に準備する など |
| Level 2:体を軽く動かす習慣づくり | 軽い運動でお腹を空かせる | 毎日10〜15分程度の散歩、家の中でできるストレッチや体操など、無理のない範囲で体を動かす。特に高齢者では、転倒しない環境づくりと、医師の許可の範囲内で行うことが重要。 |
| Level 3:中長期的に続けたいこと | 体重・食事・気分の記録をつける | 週に1〜2回、同じ条件で体重を測る。簡単なメモ帳やスマホアプリで、「食べられた量」「おいしく感じたメニュー」「その日の気分」を記録しておくと、変化に気づきやすく、受診時にも役立つ。 |
| Level 3:周囲に相談する・支援を依頼する | ひとりで抱え込まない | 家族や友人に「最近食欲がなくて心配」と伝えておく。高齢者の場合は、地域包括支援センターや訪問看護・栄養相談など、公的な支援窓口の情報もあらかじめ調べておく。 |
こうしたアクションは、すぐに劇的な変化をもたらすものではありませんが、「何もできていない」という不安を減らし、自分の状態を客観的に観察する助けになります。ただし、これらを続けても体重減少や強いだるさが続く場合には、「自分でがんばる段階」は終わりと考え、医療機関に相談することが大切です。
第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?
「どの程度で受診すべきか」がわからず、つい様子を見続けてしまう方も少なくありません。ここでは、受診を検討すべき危険なサインと、診療科の選び方、診察時に役立つ情報のまとめ方について整理します。
5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 半年〜1年のあいだに、意図しない体重減少が体重の5%以上ある(例:60kg→57kg以下など)
- 2週間以上、明らかに食事量が減っている・食べられない状態が続いている
- 発熱、強いだるさ、寝汗、咳、息切れなど、全身症状を伴う
- 胸の痛み、みぞおちの強い痛み、黒い便(タール便)、血の混じった便や嘔吐がある
- 食事中によくむせる、飲み込みにくい、食べ物が喉や胸につかえる感じがある
- 急に性格や行動が変わった、もの忘れが急に悪化した、表情が乏しくなった
- 強い憂うつ感や不安感が続き、「消えてしまいたい」と感じることがある
これらの症状がある場合には、できるだけ早く医療機関で相談しましょう。胸の強い痛みや突然の呼吸困難、意識がもうろうとしている、激しい腹痛など、命に関わる可能性がある症状が出た場合には、ためらわずに救急車(119番)を利用してください。
5.2. 症状に応じた診療科の選び方
- どの科に行けばよいかわからないとき:まずはかかりつけの内科(総合内科)で相談し、必要に応じて専門科へ紹介してもらう方法があります。
- 胃もたれ・胸やけ・腹痛・便通異常などが目立つ場合:消化器内科。
- のみ込みにくさ・むせ・食事に時間がかかるなどが目立つ場合:摂食嚥下に詳しい耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、歯科・歯科口腔外科など。
- 気分の落ち込み・意欲低下・不眠・不安など心の症状が強い場合:心療内科や精神科。
- 女性のホルモンバランスが気になる場合(更年期・月経異常など):婦人科。
高齢者の場合は、地域によっては高齢者医療や在宅医療に詳しい「総合診療科」や「老年科」などの専門外来がある場合もあります。自治体の相談窓口や地域包括支援センターで情報を得られることもあるため、活用してみてください。
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- 体重・食事・症状のメモ:いつ頃から食欲が落ちたか、体重がどのくらい変化したか、どんな症状があるかを、簡単でよいのでメモしておきましょう。
- お薬手帳:市販薬やサプリメントも含め、現在使っているものがわかるようにしておくと、薬の相互作用や副作用のチェックに役立ちます。
- 同伴者:高齢者や体調が不安定な方は、家族などの同伴があると、医師への説明や情報共有がスムーズになります。
診察料や血液検査、画像検査などの費用は、保険の種類や検査内容によって変わりますが、公的医療保険の自己負担が3割の場合、数千円〜1万円程度になることもあります。事前に医療機関のホームページや窓口で目安を確認しておくと安心です。費用面で不安がある場合は、遠慮せずに医療機関の相談窓口に質問してみましょう。
よくある質問
Q1: どのくらい食欲がない状態が続いたら、病院に行くべきですか?
個人差はありますが、「明らかに食事量が減った状態が2週間以上続く」「半年〜1年のあいだに意図しない体重減少が5%以上ある」といった場合は、一度医療機関で相談することが勧められています6。短期間でも、発熱や強いだるさ、胸やお腹の激しい痛み、吐血・下血、急なもの忘れの悪化などを伴う場合は、早めの受診を検討してください。
Q2: 高齢の親の食欲が落ちています。無理にでも食べさせた方がいいですか?
無理に量を増やそうとすると、かえって食事に対する嫌悪感を強めてしまうことがあります。まずは、食べやすい形に工夫したり、少量頻回で栄養をとれるようにする、歯や入れ歯、のみ込みにくさがないか確認するなど、「食べるハードル」を下げる工夫から始めてみましょう2,3,4。
それでも体重が減り続ける、疲れやすさやふらつきが目立つ、といった場合は、医療機関での評価が必要です。栄養状態の評価や、必要に応じた栄養補助食品の利用について、医師や管理栄養士と一緒に考えていくことが大切です。
Q3: ストレスで食欲がなくなることが多いのですが、病気でしょうか?
ストレスや睡眠不足が続くと、自律神経やホルモンのバランスが乱れ、食欲が増えたり減ったりしやすくなります11。ストレスの原因がはっきりしていて、一時的に食欲が落ちているだけであれば、休息や生活環境の調整で改善することも多いです。
しかし、「食欲が出ない状態が長く続く」「体重が減り続けている」「やる気が出ない・気分が落ち込む・眠れないといった症状も強い」場合には、うつ病などのこころの病気が関わっている可能性もあります7。無理に「気の持ちよう」と考えず、心療内科や精神科で相談してみることも選択肢の一つです。
Q4: 食欲がないのに、体重はあまり減っていません。それでも受診した方がいいですか?
体重が大きく変化していない場合でも、「食事が楽しめない」「以前より明らかに食べる量が減っている」「無理に食べている感じが続く」といった状態が長く続いている場合には、一度相談してみる価値があります。特に高齢者では、筋肉量が減って脂肪が増える「サルコペニア肥満」など、見た目の体重変化だけでは判断しにくい状態もあります5,9。
自分では「大したことはない」と感じていても、医療者から見ると重要なサインであることもあります。不安があれば、早めに相談しておく方が安心です。
Q5: サプリメントや栄養ドリンクだけで、食欲不振を乗り切っても大丈夫ですか?
市販の栄養ドリンクやサプリメントは、一時的な栄養補給の助けになることはありますが、「本来の原因」を解決してくれるわけではありません。また、成分によっては薬との飲み合わせに注意が必要なものもあります。自己判断で多量にとることは避けましょう。
特に高齢者や持病のある方、複数の薬を飲んでいる方は、かかりつけ医や薬剤師に相談したうえで利用するのが安心です。サプリメントに頼りきりになるのではなく、食事内容や生活習慣、必要に応じた医療機関での評価を組み合わせていくことが大切です。
Q6: 「年のせいだから仕方ない」と言う高齢の家族に、どう声をかければいいですか?
高齢者ご本人が「もう歳だから」とあきらめてしまっているケースは少なくありません。しかし、加齢による変化であっても、口腔ケアやのみ込みやすい食事の工夫、社会的なつながりづくりなどによって、食欲や生活の質を改善できる可能性はあります2,3,4。
まずは、「最近、どんなものなら食べやすい?」「一緒に食べられる日を作ろうか」など、責めるのではなく寄り添う声かけから始めてみてください。必要に応じて、地域包括支援センターや栄養相談の窓口など、第三者の力も借りながら、一緒に少しずつ環境を整えていくことが重要です。
Q7: 食欲がないときに、してはいけないことはありますか?
無理に大量に食べさせる、本人のペースを無視して「もっと食べなさい」と強く責める、急激なダイエットや自己判断での断食をする、といった行動は避けるべきです。これらは、食事への嫌悪感や摂食障害のリスクを高めてしまう可能性があります8。
また、「体重を測るのが怖いから」と現状を直視しないままでいると、気づかないうちに低栄養やフレイルが進んでしまうこともあります。こまめな体重測定や記録は、つらいときもありますが、早めに変化に気づくための大切なヒントになります。
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
大人の食欲不振は、「よくあること」と軽く見られがちですが、長く続く場合や体重減少を伴う場合には、低栄養や病気、こころの不調のサインであることも少なくありません。特に高齢者では、食欲不振がフレイル(虚弱)や要介護状態の入り口になることが知られており、早めに気づいて対応することが大切です2,5,9,10。
まずは、生活リズムや食事環境、ストレス状況、口腔やのみ込みの状態など、身近な部分から見直してみましょう。そのうえで、「これは自分だけでは判断が難しい」と感じたときや、不安なサインがあるときには、遠慮せずに医療機関や専門家に相談してみてください。あなたのからだとこころの状態を一緒に整理してくれるパートナーは、必ずどこかにいます。
Japanese Health(JHO)編集部は、今後も厚生労働省や日本の専門学会、世界保健機関(WHO)などの信頼できる情報に基づき、日常生活で役立つ健康・医療情報をわかりやすくお届けしていきます。この記事が、ご自身や大切な人の食欲不振と向き合う際の一つの手がかりになれば幸いです。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。
本記事の原稿は、最新の生成AI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。
ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。
記事内容に誤りや古い情報が含まれている可能性にお気づきの場合は、お手数ですが運営者情報ページ記載の連絡先までお知らせください。事実関係を確認のうえ、必要な訂正・更新を行います。
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