【心拍数の正しい測り方】安静時・運動時の正常値と受診の目安をわかりやすく解説
心血管疾患

【心拍数の正しい測り方】安静時・運動時の正常値と受診の目安をわかりやすく解説

最近は、スマートウォッチやフィットネストラッカーで24時間心拍数をチェックできるようになり、「安静時でも心拍数が高い気がする」「運動中に数字がぐっと上がって怖くなる」といった不安を抱える方が増えています。特に、グラフやアラート機能で数字の変化を目にすると、「これは正常なのか、それとも病気のサインなのか」が気になってしまいます。

一方で、「脈がゆっくりだけれど運動しているから大丈夫?」「子どもの心拍数が大人より速いのは普通?」「高齢の家族の脈が不規則で心配」など、年齢や体質、持病によって気になるポイントも人それぞれです。なかには、不安があるのに忙しさや『大したことはないだろう』という思いから、誰にも相談できず一人で悩んでいる方も少なくありません。

本記事では、心拍数(脈拍)の基本的な仕組みから、安静時・運動時の目安となる値、正しい測り方、日常生活で気をつけたいポイント、そして医療機関を受診したほうが良いサインまでを、できるだけ専門用語を避けて丁寧に解説します。また、日本の公的機関や専門学会、海外の信頼できるガイドライン・論文をもとに、心拍数と健康リスクとの関係についても触れていきます12456

「自分や家族の心拍数は、このまま様子を見ていてよいのか」「どの程度から受診を考えるべきなのか」「日常生活でできる工夫は何か」といった疑問に、一つひとつ寄り添いながら説明していきます。最後まで読むことで、心拍数の数字に振り回されるのではなく、「自分の体のサインを冷静に受け止め、必要な行動を選べる」状態を目指しましょう。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事は、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が中心となり、厚生労働省の資料、日本循環器学会などの専門学会、地方自治体や公的研究機関の情報、米国心臓協会(American Heart Association)やメイヨークリニックなど海外の信頼できる情報源をもとに作成しました12456

具体的には、以下のような一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら原稿を整えています。

  • 厚生労働省・自治体・公的研究機関:健康づくりのための身体活動・運動ガイドや、各種健康情報サイト、統計資料など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています13
  • 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:日本循環器学会の心血管リハビリテーション関連ガイドラインや、心拍数と心血管リスクに関する研究、海外の心拍数に関するレビュー論文などをもとに要点を整理しています56
  • 教育機関・医療機関・NPOによる一次資料:高齢者の運動指導やウォーキング指導における心拍数の使い方など、日常生活で応用しやすい実務的な情報として利用します23

AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。

私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。

要点まとめ

  • 心拍数とは、1分間に心臓が拍動する回数のことで、健康な成人の安静時心拍数はおおむね60〜100回/分の範囲とされています246
  • 正しい安静時心拍数を知るためには、座るか横になって静かに休んだ状態で、手首や首の動脈に指を当てて15秒または30秒数え、4倍または2倍して1分間あたりの回数を計算する方法が推奨されます3
  • 運動時の心拍数は年齢や体力によって適切な範囲が異なりますが、「最大心拍数(220−年齢)」や「目標心拍数(最大心拍数の50〜70%など)」を目安に、息が上がりすぎない範囲で運動することが勧められています15
  • 安静時でも100回/分を大きく超える、40回/分を大きく下回る、脈が極端に不規則である、胸痛や強い息切れ・めまい・失神を伴う場合は、深刻な不整脈や心疾患などが隠れている可能性があり、早めの受診が重要です56
  • カフェインやアルコール、喫煙、ストレス、睡眠不足、脱水など、日常のちょっとした要因でも心拍数は大きく変動します。生活習慣を少しずつ整えることで、安静時心拍数が落ち着き、体調が安定するケースも多くあります12
  • ウェアラブル端末の心拍数表示は便利ですが、すべてが完全に正確というわけではありません。特に手首の動きが大きい運動や皮膚の状態によって誤差が生じることがあり、気になる場合は手で脈を測る方法や医療機関での検査と組み合わせて判断することが大切です6

第1部:心拍数の基本と日常生活の見直し

最初のステップとして、心拍数の仕組みと、日常生活の中で心拍数を変化させる要因について整理しておきましょう。いきなり「何かの病気かもしれない」と考える前に、睡眠・ストレス・カフェイン摂取・喫煙・運動不足など、多くの人に当てはまりやすいポイントを振り返ることで、自分の状態を客観的に理解しやすくなります。

1.1. 心拍数の基本的なメカニズム

心拍数とは、1分間に心臓が拍動する回数です。心臓は、全身に血液を送り出すポンプの役割をしており、体を動かしていないときにはゆっくりと規則正しく動き、運動をしたり緊張したりすると速くなります。イメージとしては、自転車をこぐスピードに応じてタイヤの回転数が変わるように、身体の必要に応じて心臓の拍動回数が増えたり減ったりしている状態です。

健康な成人の安静時心拍数は、一般的に1分間に60〜100回程度とされています246。ただし、この範囲はあくまで目安であり、トレーニングをしている人では50回前後とやや低めでも問題ないことがあります。一方で、安静時でも100回/分を超える状態が続く場合や、40回/分を大きく下回る場合は、原因を確認したほうがよい場合があります46

心拍数は、年齢・体格・性別・体温・感情・薬の影響など、多くの要因で変動します。子どもは代謝が活発なため大人よりも心拍数が速く、高齢者ではややゆっくりめになる傾向があります。また、不安や緊張、痛み、発熱などでも一時的に心拍数が上がることがあり、これらは体が状況に対応するための生理的な反応です46

1.2. 心拍数を乱れさせやすいNG習慣

心拍数は、生活のちょっとした習慣によっても大きく影響を受けます。ここでは、心拍数を不必要に上げたり、安静時心拍数を高い状態に保ってしまう代表的なNG習慣を整理します。

  • カフェインの摂りすぎ:コーヒー、エナジードリンク、濃い緑茶、コーラなどのカフェインは、交感神経を刺激して心拍数を上げる作用があります。特に夕方以降の大量摂取は、寝つきの悪さや浅い睡眠にもつながり、結果として翌日の心拍数や体調に影響することがあります。
  • アルコールの飲みすぎ:お酒を飲むと一時的に血管が拡張し、心臓はそれを補うために拍動数を増やします。深酒を繰り返すと、夜間の不整脈や動悸を感じやすくなることも知られています。
  • 喫煙:ニコチンには心拍数や血圧を上昇させる作用があり、喫煙直後に脈が速くなるだけでなく、慢性的に心血管系への負担を高めます。
  • 睡眠不足・不規則な生活:睡眠の質が悪いと、日中の交感神経優位な状態が続きやすく、安静時心拍数が高めになったり、ちょっとしたストレスで動悸を感じやすくなります。
  • 急激な運動や無理なダイエット:急に激しい運動を始めたり、極端な食事制限をすると、体がストレス状態になり、心拍数や血圧が不安定になりやすくなります1

こうした習慣は、「少しくらいなら大丈夫」と思って続けてしまいがちですが、積み重なることで安静時心拍数の高値や動悸の自覚につながることがあります。すべてを一度に変える必要はありませんが、心拍数が気になる場合は、カフェインやアルコールの量を少し減らしてみる、喫煙本数を減らす、睡眠時間を30分でも長く確保するなど、小さな一歩から始めてみることが大切です。

1.3. 安静時心拍数の正しい測り方

心拍数について考えるとき、まず大切なのが「正しく測れているかどうか」です。ウェアラブル端末の数字だけに頼るのではなく、手で脈を測る方法も知っておくと、自分の体の状態をより正確に把握できます。

日本の自治体や健康情報サイトでは、安静時心拍数の測り方として、以下のような方法が紹介されています3

  • 測るタイミング:朝、起床後にトイレを済ませ、椅子に座るかベッドに横になって数分間ゆっくり休んでから測ると、より安定した安静時心拍数がわかります。夜であれば、入浴や飲酒、喫煙の直後は避け、落ち着いた状態で測りましょう。
  • 測る場所:一般的には、手首の親指側(橈骨動脈)か、首の横(頸動脈)に、人差し指と中指(必要なら薬指も)を軽く当て、脈の「トク、トク」と打つ感触を確認します。強く押しすぎず、わずかに押さえるイメージです。
  • カウントの方法:時計やスマートフォンのタイマーで15秒または30秒を計り、その間に感じた脈の回数を数えます。15秒であれば4倍、30秒であれば2倍して、1分間あたりの心拍数(回/分)を求めます。例えば、15秒で20回なら20×4=80回/分です。
  • 複数回測って平均をとる:1回だけでなく、続けて2〜3回測り、平均値をとるとより安定した値になります。測るたびに大きく値が異なる場合は、測り方が安定していないか、リズムが不規則になっている可能性もあるため、様子を観察しましょう。

ウェアラブル端末の心拍数は、光を使って血流の変化を検知する方式(光学式センサー)が多く、手首の動きや装着位置、肌の状態によって誤差が生じることがあります6。数字が気になるときや、脈が飛ぶような感覚があるときは、手で脈を測る方法も併用すると安心です。

表1:心拍数セルフチェックリスト
こんな症状・状況はありませんか? 考えられる主な背景・原因カテゴリ
安静にしているのに、いつ測っても100回/分前後かそれ以上になる ストレス・睡眠不足・カフェイン、甲状腺機能亢進症、不整脈、貧血など
階段を少し上がっただけで息切れと動悸が強く、不安になる 運動不足による体力低下、肥満、貧血、心不全や心臓弁膜症などの心疾患
脈が急に飛ぶ・抜ける・一瞬止まるように感じることがある 期外収縮などの不整脈、カフェイン・アルコール・ストレスの影響
椅子から立ち上がったとき、急にドキドキして目の前が暗くなる 起立性低血圧、自律神経の乱れ、脱水、貧血など
安静時の脈が40回/分前後とかなり遅く、めまいやふらつきを感じる 洞不全症候群などの徐脈性不整脈、薬の影響、スポーツ心臓との区別が必要な状態
夜間に突然胸が苦しくなり、激しい動悸で目が覚める 発作性上室性頻拍、心房細動発作、睡眠時無呼吸症候群など

第2部:身体の内部要因 — 栄養・ホルモン・隠れた不調

生活習慣を見直しても心拍数が高い・低い・不規則といった状態が続く場合、その背景には栄養不足やホルモンバランスの乱れ、慢性的な病気など、身体の内側の問題が関わっていることがあります。この章では、特に見落とされがちな内部要因について整理します。

2.1. 【特に女性】ライフステージとホルモンバランス

女性の身体は、月経・妊娠・出産・授乳・更年期といったライフステージごとに大きく変化します。その過程で、ホルモンバランスや循環血液量、自律神経の働きが変わり、心拍数にも影響を与えることがあります。

例えば、妊娠中は胎児に血液を送る必要があるため、循環血液量が増え、心拍数も通常よりやや高くなる傾向があります。また、更年期にはエストロゲンの減少に伴い、ほてりや発汗、動悸が起こりやすくなります。これらは必ずしも「危険な不整脈」というわけではありませんが、生活への影響が大きい場合には婦人科や循環器内科で相談することが大切です。

月経周期に伴う貧血(鉄欠乏性貧血)も、心拍数に影響する代表的な要因です。血液中のヘモグロビンが不足すると、体は酸素を全身に運ぶために心拍数を増やして補おうとします。その結果、「階段での息切れ」や「立ちくらみ」とともに安静時心拍数が高めになることがあります。

2.2. 栄養不足・隠れた欠乏状態

人間ドックの解説では、心拍数は血圧と同じくらい重要な循環器疾患の指標とされており、安静時心拍数の高さは心血管リスクと関連することが報告されています5。一方で、心拍数の異常の背景に、鉄・ビタミンB群・マグネシウムなどの栄養不足が隠れていることもあります。

  • 鉄欠乏性貧血:ヘモグロビンが不足すると酸素運搬能力が低下し、心臓は拍動数を増やして補おうとします。その結果、安静時でも脈が速く、階段や坂道で強い息切れを感じやすくなります。
  • ビタミンB1・B12・葉酸の不足:エネルギー代謝や血液の産生に関わるビタミンが不足すると、だるさや動悸、しびれなどの症状が出ることがあります。
  • マグネシウム・カリウムのバランス異常:これらの電解質は心筋の興奮と収縮に重要な役割を果たしており、不足や過剰があると不整脈のリスクが高まる場合があります。

極端なダイエットや偏った食事で栄養バランスが崩れていると、心拍数の異常を含むさまざまな不調が現れやすくなります。気になる場合は、自己判断でサプリメントを多量に摂るのではなく、まず食生活を見直し、必要に応じて医療機関や栄養相談などを利用しましょう。

2.3. 甲状腺・自律神経・慢性疾患との関係

安静時心拍数の異常の背景として、甲状腺ホルモンや自律神経の異常、糖尿病・高血圧・心不全などの慢性疾患が隠れていることがあります。

  • 甲状腺機能亢進症:甲状腺ホルモンが過剰になると、新陳代謝が過度に高まり、安静時でも心拍数が速くなったり、動悸・発汗・体重減少などが見られることがあります。
  • 甲状腺機能低下症:逆にホルモンが不足すると、心拍数が遅くなり、疲れやすさ、むくみ、体重増加などが現れることがあります。
  • 自律神経の乱れ:ストレスや不規則な生活、過労などで交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、突然の動悸や脈の乱れ、立ちくらみなどが起こることがあります。
  • 心不全・虚血性心疾患・高血圧:心臓のポンプ機能が低下したり、心臓の血管が狭くなっていると、少しの負荷で心拍数が上がりやすくなり、息切れやむくみ、胸の痛みなどを伴うことがあります5

これらの疾患は、血液検査や心電図、心エコーなどの検査によって原因を特定していきます。安静時心拍数の異常が続く場合や、他の症状を伴う場合には、早めに医療機関で相談することが重要です。

第3部:専門的な診断が必要な疾患

セルフケアや生活習慣の調整だけでは改善が見込めない場合、あるいは危険なサインを伴う場合には、不整脈や心疾患など、専門的な診断が必要な疾患の可能性を考える必要があります。この章では、心拍数の異常と関連する代表的な疾患の一部を紹介します。

3.1. 頻脈性不整脈(心拍が速くなるタイプ)

頻脈性不整脈とは、安静にしているにもかかわらず心拍数が異常に速くなるタイプの不整脈です。米国心臓協会は、一般的に安静時心拍数が100回/分を超える状態を「頻脈(tachycardia)」と説明しています47。代表的なタイプとして、発作性上室性頻拍や心房細動、心室頻拍などがあります。

  • 発作性上室性頻拍:突然心拍数が150〜200回/分以上に跳ね上がり、強い動悸や胸部不快感、不安感などを引き起こします。発作は数分〜数時間で自然におさまることもありますが、頻回に起こる場合や長く続く場合は治療が必要です。
  • 心房細動:心房が細かく震えるように不規則に動く不整脈で、脈が「バラバラ」で速くなったり遅くなったりします。動悸や息切れを自覚することもありますが、全く症状がないまま進行することもあり、脳梗塞のリスクと関連が深い不整脈として知られています。
  • 心室頻拍:心室が非常に速く規則的に動く不整脈で、意識消失や突然死の原因となることもある重篤な状態です。胸痛・強い息切れ・意識が遠のく感覚などを伴う場合は、すぐに119番通報を含む緊急対応が必要です。

3.2. 徐脈性不整脈(心拍が遅くなるタイプ)

徐脈性不整脈とは、安静時の心拍数が異常に遅くなるタイプの不整脈です。一般的に、安静時心拍数が50回/分未満を徐脈と呼ぶことが多く、40回/分を大きく下回る場合や、めまい・ふらつき・失神を伴う場合は注意が必要です5

  • 洞不全症候群:心臓のペースメーカーの役割を果たす洞結節の働きが弱くなり、脈が極端に遅くなったり一時的に止まったりする状態です。高齢者に多く、失神や転倒の原因となることがあります。
  • 房室ブロック:心房から心室へ電気信号が伝わりにくくなることで、心拍数が遅くなったり、脈が抜けたように感じる状態です。進行すると、ペースメーカー治療が必要になることもあります。

スポーツ選手や持久力の高い人では、トレーニングの結果として安静時心拍数が40〜50回/分程度まで低くなることがあり、症状がなければ生理的な範囲内と考えられるケースもあります。しかし、「自分は運動習慣がないのに脈が遅い」「めまいや失神を伴う」といった場合には、必ず専門医に相談してください。

3.3. その他の背景疾患

心拍数の異常は、不整脈以外の病気のサインとして現れることもあります。

  • 心不全:心臓のポンプ機能が低下し、十分な血液を送り出せなくなる状態です。少しの運動でも強い息切れやむくみ、体重増加(むくみによる)などを伴い、安静時心拍数も高めになることがあります5
  • 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞など):心臓の血管が狭くなったり詰まったりする病気で、胸の締めつけ感や痛み、冷や汗などを伴うことがあります。発作時には心拍数が上がることもあれば、ショック状態で血圧や脈が低くなることもあります。
  • 肺の病気(肺塞栓症・重度の喘息発作など):血液に十分な酸素が取り込めなくなると、体は心拍数を上げることで酸素運搬を補おうとします。急激な息苦しさや胸痛、片側の脚のむくみなどを伴う場合は、緊急性が高い可能性があります。

これらの疾患は、自己判断で経過を見るのではなく、早期に医療機関で評価を受けることが重要です。特に、「これまで感じたことのないような強い胸痛や息切れ」「突然の意識消失」「顔面や手足の麻痺を伴う症状」がある場合は、ためらわず119番に連絡してください。

第4部:今日から始める改善アクションプラン

心拍数の数字だけを見ると不安になりがちですが、多くの場合、生活習慣や運動習慣を少しずつ整えることで、安静時心拍数が落ち着き、動悸の頻度が減ることがあります。ここでは、「今夜から」「今週から」「数カ月〜長期的に」と、時間軸に沿って実践しやすいアクションプランを整理します125

表2:心拍数改善アクションプラン
ステップ アクション 具体例
Level 1:今夜からできること 刺激を減らし、リラックスする 就寝前2〜3時間のカフェイン摂取を控える、スマホやPCの使用を1時間早く切り上げる、ぬるめの入浴やストレッチで体と心を落ち着かせる など
Level 2:今週から始めること 軽い有酸素運動を取り入れる 1日20〜30分のウォーキングを週に3〜5回行う。会話ができる程度のやや息が弾む強さで歩き、目標心拍数(最大心拍数の50〜70%程度)を目安にする15
Level 3:1〜3カ月かけて整えること 体重管理と食生活の改善 塩分や動物性脂肪を控え、野菜・魚・豆類を中心とした食事に少しずつシフトする。体重が減ることで心臓への負担が軽くなり、安静時心拍数が下がることがあります。
Level 4:長期的に続けたいこと ストレスマネジメントと睡眠の質の向上 残業のしすぎを避ける、休憩時間を意識的にとる、マインドフルネスや呼吸法を取り入れる、毎日ほぼ同じ時間に寝起きするなど、自律神経のバランスを整える習慣を身につける。

運動を行う際は、「急に始めない」「急にやめない」ことも重要です。厚生労働省の身体活動・運動ガイドでは、ウォームアップとクールダウンを含めて、心拍数の急激な変化を避けることが推奨されています1。運動中に胸痛・強い息切れ・めまい・冷や汗などの異常を感じた場合は、すぐに中止し、必要に応じて医療機関を受診してください。

第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?

心拍数の異常が気になったとき、「この程度で受診してもいいのか」「どの診療科に行けばよいのか」と迷う方は少なくありません。この章では、受診を検討すべき危険なサイン、症状に応じた診療科の選び方、診察時に役立つ準備について解説します。

5.1. 受診を検討すべき危険なサイン

  • 安静時にも心拍数が100回/分を大きく超える状態が続き、胸痛・強い息切れ・冷や汗・吐き気などを伴う。
  • 安静時の心拍数が40回/分を大きく下回り、めまい・ふらつき・意識が遠のく感じ・失神がある。
  • 脈が極端に不規則で、「ドクドク」「ドクン…スー…ドクドク」といった乱れを自覚し、それが何度も繰り返される。
  • 階段や少しの坂道で強い息切れや胸の圧迫感があり、数分休んでも改善しにくい。
  • 突然の片側の手足の麻痺・ろれつが回らない・顔のゆがみなど、脳梗塞を疑う症状と同時に心拍数の異常を感じる。

これらの症状がある場合は、自己判断で様子を見るのではなく、早めに医療機関を受診してください。特に、胸の強い痛み・息ができないほどの呼吸困難・意識がもうろうとするなどの症状が突然現れた場合は、迷わず119番に連絡し、救急搬送を依頼することが重要です。

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

  • まず相談しやすいのはかかりつけ医・一般内科:軽い動悸や安静時心拍数の軽度の異常であれば、まずは地域のかかりつけ医や一般内科で相談し、必要に応じて専門の循環器内科などを紹介してもらう方法があります。
  • 心臓の病気が心配な場合は循環器内科:持続する動悸・息切れ・胸痛・高血圧・脂質異常症などがある場合は、心電図や心エコーを含めた評価が可能な循環器内科が適しています。
  • ホルモンや甲状腺が気になる場合は内分泌内科・甲状腺外来:体重変化・発汗異常・手の震えなどを伴う場合には、甲状腺機能を含めた評価が必要になることがあります。
  • めまい・失神を繰り返す場合:循環器内科に加え、神経内科や脳神経外科の受診が勧められるケースもあります。受診先に迷う場合は、地域の医療相談窓口や保健所などに相談する方法もあります。

5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安

  • 心拍数・血圧の記録:自宅や職場で測った心拍数・血圧の記録(日時・状況・値)をメモしておくと、診察時に大変役立ちます。スマートウォッチのデータをスクリーンショットして持参するのもよい方法です。
  • 症状日誌:動悸・胸痛・めまいなどの症状がいつ、どのくらいの時間続いたか、何をしていたときかなどを簡単にメモしておくと、原因の絞り込みに役立ちます。
  • お薬手帳・服用中のサプリメントの情報:一部の薬やサプリメントには心拍数に影響を与えるものがあり、医師が全体像を把握するために重要です。
  • 費用の目安:日本の公的医療保険を利用した場合、一般的な外来受診・心電図検査・採血などは、自己負担3割で数千円〜1万円前後になることが多いとされています。詳しい費用は医療機関ごとに異なるため、事前に問い合わせると安心です。

不安な症状があっても、「忙しくて時間がない」「大したことではなさそう」と受診を先延ばしにしてしまう方は少なくありません。しかし、心拍数の異常の中には、早期発見・早期治療がその後の予後に大きく影響するものもあります。気になるサインがある場合は、「少し早いかな」と感じる段階でも相談してみることをおすすめします。

よくある質問

Q1: 健康な大人の安静時心拍数はどのくらいが正常ですか?

A1: 一般的に、健康な成人の安静時心拍数は1分間に60〜100回程度とされています246。ただし、トレーニングを積んだスポーツ選手などでは50回前後でも問題ない場合があります。一方で、安静時に100回/分を大きく超える状態が続く、あるいは40回/分を大きく下回りめまいやふらつきがある場合は、医療機関での確認をおすすめします。

Q2: ウェアラブル端末と自分で測った脈拍の数値が違うのはなぜですか?

A2: ウェアラブル端末は、手首の血流の変化を光で検出して心拍数を推定する仕組みが多く、手首の動き・装着位置・肌の状態・周囲の光などの影響で誤差が生じることがあります6。一方、指先で脈を測る方法は、一定時間内に感じた拍動を直接数えるため、測り方が安定していれば比較的正確です。数値が大きく違う場合は、静かに座った状態で再測定し、それでも気になるときは医療機関で相談してください。

Q3: 運動中の心拍数はどのくらいまで上がっても大丈夫ですか?

A3: 運動中の適切な心拍数は、年齢や体力、持病の有無によって異なります。一般的には、「最大心拍数(220−年齢)」を目安として、その50〜70%程度の範囲を中等度の有酸素運動の目標とする方法があります1515。例えば40歳の方なら、最大心拍数はおおよそ180回/分で、その50〜70%は90〜126回/分が目安です。ただし、心疾患や高血圧、糖尿病などの持病がある方は、必ず主治医と相談のうえで運動強度を決めてください。

Q4: 寝ているときの心拍数がとても低いのですが大丈夫でしょうか?

A4: 睡眠中は副交感神経が優位になり、日中より心拍数が低くなるのが一般的です。特に若い方や運動習慣のある方では、睡眠中に40〜50回/分程度まで下がることもあります。ただし、睡眠中に呼吸が止まる・いびきが大きい・日中の強い眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群などの可能性もあるため、専門医への相談が勧められます。

Q5: 子どもの心拍数が大人より速いのは普通ですか?

A5: 子どもは代謝が活発で、体が成長している途中のため、大人より心拍数が速いのが一般的です。年齢によって正常範囲は異なりますが、乳幼児では1分間に100〜140回、小児では80〜120回程度など、大人より高めの値が目安とされます。ただし、急なぐったり感・顔色不良・呼吸の苦しさなどを伴う場合は、ためらわず小児科や救急外来を受診してください。

Q6: 心拍数が少し高めでも、運動をしても大丈夫でしょうか?

A6: 軽度に高めの心拍数であっても、原因が生活習慣やストレスによるもので、重い心疾患が否定されていれば、医師の指示のもとで適度な運動を行うことが勧められるケースが多くあります15。ただし、胸痛・強い息切れ・めまい・失神などの症状がある場合や、安静時に著明な頻脈が続く場合は、運動を続ける前に必ず医療機関で確認してください。

Q7: 脈がときどき飛ぶ感じがします。すぐに受診したほうがいいですか?

A7: 「脈が飛ぶ」「一瞬止まるように感じる」といった症状は、期外収縮と呼ばれる比較的よく見られる不整脈であることも少なくありません。一方で、頻度が多い場合や、胸痛・息切れ・めまい・失神を伴う場合には、心房細動やその他の不整脈が隠れている可能性もあります。症状が続く場合や不安が強い場合は、心電図検査などが可能な医療機関で相談してください。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

心拍数は、血圧と同じように、私たちの心臓と全身の状態を映し出す大切なサインです。安静時心拍数が60〜100回/分という目安の範囲内であっても、生活習慣やストレス、体調によって大きく揺れ動くことがありますし、範囲から外れていても必ずしも病気とは限りません。

大切なのは、「数字だけを見て不安になる」のではなく、自分の年齢・体力・生活状況・症状の有無とあわせて心拍数を考えることです。そして、危険なサインがある場合にはためらわず医療機関を受診すること、そうでない場合でも、睡眠・食事・運動・ストレスケアといった生活の土台を少しずつ整えていくことが重要です。

Japanese Health(JHO)編集部は、公的機関や専門学会の情報に基づき、日本で暮らす一人ひとりが、自分の健康状態を冷静に見つめ、必要なときに適切なサポートにつながれるような情報提供を目指しています。本記事が、心拍数にまつわる不安を少しでも軽くし、「自分の体と向き合うきっかけ」となれば幸いです。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

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本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。

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参考文献

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  9. 日本人間ドック・予防医療学会. 判定区分表に関するQ&A【心臓】. https://www.ningen-dock.jp/ningendock/wp-content/uploads/2025/05/548640603204de9158a15ab792233e67.pdf(最終アクセス日:2025-11-25)

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