この記事の要点まとめ
- サッカロミセス・ブラウディは乳酸菌などの「細菌」ではなく、「酵母(真菌)」の一種であるユニークなプロバイオティクスです。
- 酵母であるため、細菌を標的とする抗生物質の影響を受けず、抗生物質服用中にも生きて腸まで届き効果を発揮できるという大きな利点があります。
- 最も強力な科学的根拠(エビデンス)があるのは「抗生物質関連下痢症(AAD)」の予防であり、リスクを約半分に低減することが大規模な研究で示されています。
- 小児の急性下痢症や旅行者下痢症の予防・緩和にも有効性が確認されています。
- 毒素の直接分解、腸のバリア機能強化、免疫調整など、多角的なメカニズムで腸の健康をサポートします。
- 健康な人には非常に安全ですが、免疫機能が著しく低下している方や中心静脈カテーテルを使用中の方は、重篤な感染症のリスクがあるため絶対に使用してはなりません。
サッカロミセス・ブラウディとは?乳酸菌やビフィズス菌との根本的な違い
プロバイオティクス酵母という独自の存在、サッカロミセス・ブラウディは、人体に有益な効果をもたらす生きた微生物、すなわち「プロバイオティクス」の一種です。しかし、その正体はヨーグルトや整腸剤で馴染み深い乳酸菌やビフィズス菌といった「細菌(Bacteria)」ではなく、「酵母(Yeast)」です3。生物学的には、酵母はキノコやカビと同じ「真菌(Fungi)」の仲間に分類されます。もちろん、サッカロミセス・ブラウディは人体に害を及ぼさない安全な非病原性酵母であり、特にパン酵母として知られるサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の亜種とされています5。
発見の物語:伝統的な知恵から生まれた科学
このユニークな酵母の発見は、約100年前に遡ります。1923年、フランスの微生物学者アンリ・ブーラール(Henri Boulard)博士は、当時コレラが流行していた東南アジアを調査していました。その中で博士は、現地の住民がライチやマンゴスチンの皮を噛むことで、コレラによる激しい下痢の症状を治療しているという伝統的な知恵に注目しました3。この民間療法に科学的な興味を抱いた彼は、果皮から有効成分を分離・培養することに成功します。これが、世界で初めてサッカロミセス・ブラウディが単離された瞬間でした6。その名は、発見者であるブーラール博士に敬意を表して名付けられました。
酵母 vs. 細菌:なぜその違いが重要なのか?
サッカロミセス・ブラウディが「酵母」であるという事実は、単なる生物学的な分類の違い以上の、極めて重要な意味を持ちます。
- 構造と大きさの違い: 酵母菌は、細胞核を持つ「真核生物」であり、約8〜10μmと、細胞核を持たない「原核生物」である細菌(約0.5〜1μm)に比べてサイズが大きく、構造も複雑です5。
- 最大の利点(生まれながらの抗生物質耐性): これが最も重要な違いです。サッカロミセス・ブラウディは酵母であるため、細菌を標的とするほとんどの抗菌薬(抗生物質)の影響を受けません4。これは人工的に作られた耐性ではなく、生物としての根本的な違いに由来する「天然の耐性」です。多くの細菌性プロバイオティクスは抗生物質によって死滅してしまいますが、サッカロミセス・ブラウディは抗生物質と同時に摂取しても生きたまま腸に届き、その働きを発揮することができます。この特性が、後述する「抗生物質関連下痢症(AAD)」の予防において絶大な効果を発揮する理由です。
「菌株」の特異性:すべてのブラウディが同じではない
プロバイオティクスの世界では、「菌株(strain)」レベルでの違いが効果を左右する、という考え方が常識です。これはサッカロミセス・ブラウディも例外ではありません。数ある菌株の中でも、特に多くの臨床研究でその有効性と安全性が検証されている代表的な菌株が「CNCM I-745」と「CNCM I-3799」です7。これらの菌株は、世界的な酵母メーカーによって厳格な品質管理のもと製造されており、多くの科学論文でその名が引用されています。信頼できる製品を選ぶ際には、こうした実績のある菌株が使用されているかを確認することが一つの指標となります。
【エビデンスレベル別】サッカロミセス・ブラウディに期待される科学的効果
健康に関する情報を評価する上で、「科学的根拠(エビデンス)」の質を見極めることは非常に重要です。一つの研究結果だけを鵜呑みにするのではなく、多くの質の高い研究によって裏付けられているかどうかが鍵となります。このセクションでは、E-E-A-Tの原則に基づき、サッカロミセス・ブラウディの効果をエビデンスの強さ別に分類して解説します。最も信頼性の高いメタアナリシス(複数の研究結果を統計的に統合・分析する手法)から順にご紹介します。
最も強いエビデンス:下痢症状の予防と緩和
サッカロミセス・ブラウディの有効性が最も確立されている分野は、様々な原因による下痢の管理です。
抗生物質関連下痢症(AAD)の予防
抗生物質は有害な細菌を殺す一方で、腸内の有益な細菌にもダメージを与え、腸内フローラのバランスを崩すことで下痢を引き起こすことがあります。これが抗生物質関連下痢症(AAD)です。サッカロミセス・ブラウディは、このAAD予防において極めて高いエビデンスを持っています。2010年にMcFarland博士らが発表した、27件のランダム化比較試験(対象者5,029人)を統合した大規模なメタアナリシスでは、サッカロミセス・ブラウディを摂取したグループは、プラセボ(偽薬)を摂取したグループに比べてAADを発症するリスクが53%も低いことが示されました(相対リスク = 0.47)89。小児を対象とした研究でもその効果は明らかです。2005年にKotowska博士らが行った二重盲検ランダム化比較試験では、抗生物質を服用した子供たちのうち、AADを発症した割合はプラセボ群で17.3%だったのに対し、サッカロミセス・ブラウディを併用した群ではわずか3.4%に抑えられました10。この強力な効果の背景には、前述の通り、サッカロミセス・ブラウディが酵母であるために抗生物質の影響を受けず、腸内で生き残って機能できるというユニークな特性があります4。
急性下痢症(特に小児)の期間短縮
ウイルスや細菌の感染による急性の下痢(急性胃腸炎)においても、サッカロミセス・ブラウディは症状の回復を早める効果が報告されています。Szajewska博士らによる2020年に更新されたメタアナリシスでは、サッカロミセス・ブラウディの摂取により、下痢の持続期間が平均で約1日(正確には1.06日)短縮されることが示されました11。同様に、入院期間も平均で0.85日短縮されるという結果が得られています。中国で行われた研究を対象とした別のメタアナリシスでも、下痢の期間が有意に短縮されただけでなく、炎症を引き起こす物質である炎症性サイトカイン(TNF-αおよびIL-8)のレベルを低下させるという、免疫への好影響も報告されています12。より具体的な研究例として、急性下痢症の子供を対象としたある試験では、サッカロミセス・ブラウディを摂取したグループは、プラセボ群に比べて下痢からの回復が29.5時間早かったと報告されています6。
旅行者下痢症の予防
慣れない環境や食事、水によって引き起こされる旅行者下痢症は、多くの旅行者を悩ませる問題です。複数のシステマティックレビュー(特定のテーマに関する論文を網羅的に収集・評価する研究)において、サッカロミセス・ブラウディはこの旅行者下痢症の予防に強く推奨されており、旅行の際の心強いお守りとなり得ます7。
有望なエビデンス:その他の消化器症状への応用
最も強いエビデンスが確立されている下痢以外にも、サッカロミセス・ブラウディは様々な消化器系の課題に対して有望な効果が期待されています。ただし、これらの領域はまだ研究途上であり、専門家との相談が不可欠です。
- 過敏性腸症候群(IBS): ストレスや腸内環境の乱れが関連するとされる過敏性腸症候群(IBS)、特に下痢型(IBS-D)の症状緩和に、サッカロミセス・ブラウディが有望である可能性が示唆されています8。実際に、IBSに悩む人々からの「症状が楽になった」という体験談も多く報告されており13、今後のさらなる研究が期待される分野です。
- Helicobacter pylori 除菌治療の副作用軽減: ピロリ菌(H. pylori)の除菌には、複数の抗生物質を組み合わせた強力な治療が行われますが、副作用として下痢などが起こりやすく、治療の継続を困難にすることがあります。研究によると、サッカロミセス・ブラウディはピロリ菌自体を殺すわけではありませんが、除菌治療に伴う下痢などの副作用を有意に軽減し、患者が治療を最後までやり遂げる(コンプライアンスを向上させる)のに役立つことが示されています14。
- クローン病: クローン病は、消化管に慢性の炎症を引き起こす炎症性腸疾患(IBD)の一つです。いくつかの有望な研究では、サッカロミセス・ブラウディがクローン病患者の腸管壁の透過性(いわゆる「リーキーガット」)を改善し、再燃率を低下させる可能性が報告されています8。ただし、これはあくまで専門医の管理下で行われるべき補助的なアプローチであり、自己判断での使用は避けるべきです。
- Clostridioides difficile 感染症(CDI)再発予防: CDIは、特に抗生物質の使用後に起こる重篤な腸炎で、再発しやすいという特徴があります。この点に関して、国際的なエビデンスと日本の診療ガイドラインの間には見解の相違があり、専門的な視点からの理解が重要です。
- 国際的なエビデンス: McFarland博士らによる2010年のシステマティックレビューをはじめ、多くの国際的な研究では、サッカロミセス・ブラウディがCDIの再発予防において、標準治療への補助療法として有望であることが示唆されています8。
- 日本の診療ガイドライン: 一方で、日本化学療法学会と日本感染症学会が共同で作成した「Clostridioides difficile 感染症診療ガイドライン 2022」では、現時点においてプロバイオティクス製剤をCDIの治療や再発予防に用いることを推奨する十分なエビデンスはない、という立場を取っています1516。
- この違いの理解: この見解の相違は、評価対象となった研究の違いや、国内外の医療環境、承認されている薬剤の状況などが影響していると考えられます。消費者としては、「海外では有望なエビデンスが蓄積されつつあるが、日本の公式な医療ガイドラインではまだ推奨されていない」という両方の事実を認識しておくことが、最も正確でバランスの取れた理解と言えるでしょう。
専門家が解説:サッカロミセス・ブラウディは体内でどう働くのか?
サッカロミセス・ブラウディがなぜこれほど多様な効果を発揮するのか。その秘密は、腸内で繰り広げられる多角的でインテリジェントな作用機序にあります。Kelesidis博士とPothoulakis博士らの研究によると17、その働きは、大きく3つのカテゴリーに分類できます:①腸管内での直接作用(Luminal Action)、②腸の細胞への栄養・保護作用(Trophic Action)、③粘膜を介した免疫・抗炎症作用(Mucosal Action)です。
腸管内での直接作用:病原菌との戦い
サッカロミセス・ブラウディは、腸の管腔内で病原菌やその毒素と直接戦います。
- 毒素の無力化(抗毒素作用): これが最も特徴的な働きの一つです。例えば、CDIの原因となるC. difficile菌は、毒素Aと毒素Bという強力な毒素を産生して腸壁を攻撃します。サッカロミセス・ブラウディは、54kDaセリンプロテアーゼという特殊な分解酵素を分泌します。この酵素は「分子のハサミ」のように働き、毒素AとBそのものを物理的に分解・無力化します17。さらに、大腸菌(E. coli)などが持つ内毒素(LPS)を不活化するホスファターゼという酵素も産生します14。
- 病原菌の付着阻害: 病原菌が腸で悪さをするには、まず腸の壁に付着する必要があります。サッカロミセス・ブラウディは、その大きな体の表面に病原性大腸菌(EPEC)などを付着させることで、病原菌が腸壁にたどり着くのを防ぐ「おとり(デコイ)」のような役割を果たします17。これにより、感染の成立そのものを妨げます。
腸の細胞を育み、守る作用
腸の健康は、腸壁を構成する細胞が健全であることが基本です。サッカロミセス・ブラウディは、これらの細胞を直接的にサポートします。
- 腸管バリア機能の強化: 腸の細胞同士は、「タイトジャンクション」と呼ばれるタンパク質によって固く結びついており、これが有害物質の侵入を防ぐバリアとなっています。このバリアが緩むと「リーキーガット(腸漏れ)」と呼ばれる状態になります。サッカロミセス・ブラウディは、タイトジャンクションを構成するZO-1などのタンパク質の働きを正常に保ち、腸管バリアを強化することが示されています17。
- 栄養素の消化吸収の促進: 消化管の健康を維持するためには、栄養素の効率的な吸収が不可欠です。サッカロミセス・ブラウディは、乳糖を分解するラクターゼやショ糖を分解するスクラーゼといった消化酵素の活性を高め、糖質などの栄養素の吸収を助ける働きがあります14。
免疫システムへのインテリジェントな介入
サッカロミセス・ブラウディの作用で最も高度なのが、腸の粘膜を介した免疫システムへの介入です。過剰な炎症を鎮め、正常な免疫応答をサポートします。
- 炎症の鎮静化(NF-κBとMAPK経路の制御): Pothoulakis博士の研究によれば、体内の過剰な炎症反応の多くは、NF-κBという「炎症のマスター・スイッチ」がオンになることで引き起こされます18。サッカロミセス・ブラウディは、このスイッチの「ロック」の役割を果たすIκBαというタンパク質の分解を防ぐことで、NF-κBスイッチがオンになるのをブロックします。同様に、MAPキナーゼ(MAPK)と呼ばれる別の炎症誘発シグナル伝達経路も抑制します14。その結果として、IL-8やTNF-αといった炎症性サイトカインの産生が減少し、炎症が鎮まります19。
- 腸管免疫の活性化: 腸の粘膜表面には、病原体の侵入を防ぐ最前線の抗体として「分泌型IgA(sIgA)」が存在します。サッカロミセス・ブラウディは、このsIgAの産生を促進し、腸管独自の免疫力を高めることが報告されています14。
日本国内での位置付けと選び方:ビオフェルミンやミヤリサンとの比較
サッカロミセス・ブラウディに興味を持った方が次に抱く疑問は、「日本の薬局でよく見るビオフェルミンやミヤリサンとはどう違うのか?」ということでしょう。このセクションでは、日本国内での法的な位置付けと、主要な国内整腸剤との違いを明確に解説します。
日本における法的な位置付け
まず理解しておくべき重要な点は、サッカロミセス・ブラウディは日本では「医薬品」ではなく、「食品」または「食品原料」として扱われているということです4。これが、医師が処方する医薬品としてではなく、主にiHerbなどの海外通販サイトを通じてサプリメントとして入手される理由です。一方、ビオフェルミンやミヤリサンなどは、効果効能が認められた「医薬品」や「指定医薬部外品」として販売されています20。この法的な違いは、製品の入手方法や表示できる効果に影響を与えます。
主要な国内整腸剤との比較
サッカロミセス・ブラウディのユニークな立ち位置を理解するために、代表的な国内整腸剤と比較してみましょう。以下の表は、それぞれの特徴をまとめたものです。
項目 | サッカロミセス・ブラウディ | ビオフェルミン(代表例) | ミヤリサン(酪酸菌) |
---|---|---|---|
種類 | 酵母(真菌) | 細菌(乳酸菌・ビフィズス菌) | 細菌(酪酸菌) |
主な菌株 | S. cerevisiae var. boulardii (例: CNCM I-745, I-3799)7 |
Bifidobacterium, Lactobacillus acidophilus, Enterococcus faecalisなど21 | Clostridium butyricum (宮入菌)22 |
作用機序の特徴 | 毒素分解、免疫調整、バリア機能強化など多機能な作用を持つ17 | 乳酸・酢酸を産生し、腸内pHを酸性に保ち悪玉菌を抑制する23 | 酪酸を産生し、大腸のエネルギー源となる。芽胞を形成する24 |
抗生物質への耐性 | 天然の耐性(酵母であるため)4 | 耐性株製剤あり(ビオフェルミンRなど)25 | 耐性あり(芽胞を形成するため)24 |
日本での分類 | 食品 | 医薬品・指定医薬部外品 | 医薬品・指定医薬部外品 |
比較からの考察
この表から、それぞれのプロバイオティクスが異なる強みを持っていることがわかります。ビオフェルミンは、日本人にとって最も馴染み深い整腸剤の一つで、日常的な腸内環境のバランス維持や、軽度の便秘・軟便の改善に適しています21。ミヤリサンの主成分である酪酸菌(宮入菌)は、硬い殻のような「芽胞」を形成するため、胃酸や抗生物質に強いという特徴があります22。サッカロミセス・ブラウディの独自性は、これらとは異なるアプローチにあります。細菌ではなく酵母であることによる「天然の抗生物質耐性」と、毒素分解や免疫調整といった「多機能な作用機序」が最大の強みです。結論として、どの製品が最適かは個人の目的によって異なります。日常的な腸内バランスの維持であればビオフェルミン、大腸のエネルギー補給や芽胞による安定性を重視するならミヤリサンが選択肢となります。一方で、抗生物質を服用する際の腸内フローラの保護、海外旅行時の下痢対策、あるいは従来のプロバイオティクスとは異なる作用機序を試したい場合には、サッカロミセス・ブラウディが非常に有力な選択肢となるでしょう。
安全な使い方ガイド:適切な摂取量、選び方、注意点
サッカロミセス・ブラウディの恩恵を最大限に、かつ安全に受けるためには、適切な製品を選び、正しい方法で摂取することが不可欠です。このセクションでは、専門的な観点からその具体的な方法を解説します。
適切な摂取量とCFU
臨床研究で効果が確認されている摂取量は、一般的に1日あたり250mgから1,000mgの範囲です4。これは、製品の菌数を示す単位であるCFU(Colony Forming Units、コロニー形成単位)に換算すると、1日あたり50億から200億CFUに相当します26。特に抗生物質関連下痢症の予防など、特定の目的で使用する場合には、比較的高用量が用いられる傾向にあります。製品を選ぶ際は、1カプセルあたり、または1日の推奨摂取量でこの範囲の菌数が確保できるかを確認しましょう。
信頼できる製品の選び方
日本国内ではサプリメントとして流通しているため、消費者が自ら良質な製品を見極める必要があります。海外製品を選ぶ際には、以下のポイントを確認することをお勧めします26。
- 菌株を確認する: ラベルを見て、「CNCM I-745」や「CNCM I-3799」といった、臨床研究で実績のある特定の菌株名が記載されているかを確認します7。単に「サッカロミセス・ブラウディ」としか書かれていない製品よりも、菌株レベルで品質を保証しているものの方が信頼性は高いと言えます。
- CFU数を確認する: 1回あたりの摂取で、臨床的に意味のある菌数(最低でも50億CFU以上)が摂取できるかを確認します。
- 添加物を確認する: 不必要な充填剤、着色料、アレルギー物質などが含まれていない、シンプルな成分構成の製品を選びましょう。多くの製品がベジタリアンやヴィーガン対応のカプセルを使用しています26。
- 信頼できるブランドを選ぶ: NOW Foods、Jarrow Formulas、Thorneなど、長年の販売実績があり、世界中の消費者から評価されているブランドは、品質管理の面で一つの目安となります26。
【極めて重要】安全性と注意点
サッカロミセス・ブラウディは、数十年にわたる使用実績があり、健康な人が適切に使用する限り、非常に安全性の高いプロバイオティクスであると考えられています4。しかし、その安全性を確保するためには、以下の極めて重要な注意点を必ず守る必要があります。
【警告】以下に該当する方はサッカロミセス・ブラウディを使用しないでください。
- 重度の免疫不全状態にある方: HIV感染症が進行している方、臓器移植後の方、強力な免疫抑制剤や化学療法を受けている方など、免疫機能が著しく低下している場合。
- 中心静脈カテーテルを留置している方: 首や胸、腕の太い血管からカテーテルを入れている場合。
- ICU(集中治療室)で治療中の重篤な患者: 全身状態が極めて悪い場合。
これらの特定の、非常に脆弱な状態にある患者において、ごく稀にサッカロミセス・ブラウディが血流に侵入し、真菌血症(ファンギミア)という重篤な感染症を引き起こしたという症例が報告されています13。これは一般的な使用者には当てはまらないリスクですが、安全性を最優先する観点から、絶対的な禁忌事項として認識しておく必要があります。また、上記以外でも、妊娠中・授乳中の方や、何らかの医薬品(特に抗真菌薬)を服用中の方は、使用前に必ず医師または薬剤師に相談してください13。
よくある質問
Q1: 抗生物質を飲んでいない健康な人が、日常的に摂取しても良いですか?
Q2: 子供でも使えますか?
Q3: ビオフェルミンやミヤリサンなどの乳酸菌製剤と一緒に飲んでも良いですか?
Q4: どのくらいの期間飲み続ければ効果が分かりますか?
結論:あなたの「腸活」にサッカロミセス・ブラウディは必要か?
本記事では、プロバイオティクス酵母「サッカロミセス・ブラウディ」について、その発見の歴史から、乳酸菌などとの根本的な違い、科学的エビデンスに基づく効果、体内で働く精緻なメカニズム、そして安全な活用法までを包括的に解説してきました。ここで、重要なポイントを改めて要約します。
- サッカロミセス・ブラウディは、一般的なプロバイオティクスである細菌ではなく、ユニークな「酵母」です。
- この生物学的な違いにより、抗生物質と併用しても効果を発揮できるという、他の多くのプロバイオティクスにはない強力な利点を持ちます。
- その効果は、抗生物質関連下痢症(AAD)や旅行者下痢症、小児の急性下痢症の予防・緩和において、最も質の高い科学的エビデンスによって裏付けられています。
- 作用機序は単一ではなく、病原性毒素の直接分解、腸管バリアの強化、そして過剰な炎症を鎮める免疫調整作用という、多角的なアプローチで腸の健康を守ります。
- 健康な人にとっては非常に安全ですが、重度の免疫不全状態にある方など、特定の条件下では使用してはならないという重要な禁忌事項があります。
では、あなたの「腸活」の旅路において、サッカロミセス・ブラウディは本当に必要なのでしょうか。その答えは、画一的なものではありません。この記事を通じて得た知識をもとに、ご自身の健康課題と照らし合わせてみてください。
「あなたは、風邪などで抗生物質を処方される機会が多いですか?」
「海外出張や旅行に頻繁に行きますか?」
「従来の乳酸菌やビフィズス菌とは異なるアプローチのプロバイオティクスを探していますか?」
もし、これらの問いに「はい」と答えるのであれば、サッカロミセス・ブラウディはあなたの健康戦略において、非常に価値のある選択肢となる可能性があります。最終的に、本記事は皆様が賢明な判断を下すための、信頼できる情報源となることを目指しています。しかし、この記事が医療専門家による診断や治療に取って代わるものではありません。最も重要で、最終的な行動指針は、「この記事で得た情報を基に、かかりつけの医師または薬剤師に相談し、ご自身の個別の健康状態にとってサッカロミセス・ブラウディが適切かどうかを判断してもらうこと」です。専門家との対話を通じて、皆様一人ひとりが「腸活迷子」から脱却し、科学的根拠に基づいた最適な健康管理を実現されることを心より願っています。
本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念がある場合や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。
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