【産婦人科医監修】妊娠中のカンジダ症：不安を解消！安全な治療・赤ちゃんへの影響・予防策

Ⅰ. はじめに：妊娠中のカンジダ症、多くの妊婦さんの悩み

A. 妊娠中のカンジダ症とは？

1. カンジダ菌について：普段から体にいる常在菌

カンジダ菌は、私たちの皮膚、口の中、消化管、そして女性の膣内など、体のさまざまな場所に普段から存在している常在菌の一種です¹²²⁴²³。特に膣カンジダ症の原因となることが多いのは、カンジダ・アルビカンス（*Candida albicans*）という種類の真菌（カビの仲間）です。健康な状態では、膣内のデーデルライン桿菌（乳酸菌の一種）などの善玉菌がカンジダ菌の過度な増殖を抑え、バランスを保っています²²¹²。そのため、カンジダ菌が存在していること自体が問題なのではなく、何らかの原因でこのバランスが崩れ、カンジダ菌が異常に増殖した場合に症状が現れます。

2. 膣カンジダ症（外陰膣カンジダ症）：症状が現れた状態

膣カンジダ症（外陰膣カンジダ症とも呼ばれます）とは、前述のカンジダ菌が膣内や外陰部で異常に増殖し、かゆみ、おりものの変化といった不快な症状を引き起こしている状態を指します³¹⁴。妊娠中は特にかかりやすい疾患の一つとして知られています。

B. なぜ妊娠中はカンジダ症にかかりやすいの？

1. ホルモンバランスの変化：エストロゲンの影響

妊娠すると、女性ホルモンであるエストロゲン（卵胞ホルモン）の分泌量が大幅に増加します。このエストロゲンが、カンジダ症の発症に深く関わっています¹⁴²⁵⁶⁷。エストロゲンは、膣の細胞（上皮細胞）にグリコーゲンという物質を増やす働きがあります⁵⁶。このグリコーゲンはカンジダ菌にとって格好の栄養源となり、増殖を助けてしまうのです。また、妊娠中は膣内のpHバランスも変化しやすく、カンジダ菌が繁殖しやすい環境になりがちです⁶。

2. 免疫力の低下：赤ちゃんを守るための自然な変化

妊娠中は、お腹の赤ちゃんを異物として認識して攻撃しないように、母体の免疫機能が自然と抑制されます¹²⁷。これは、赤ちゃんを守るための体の正常な反応ですが、同時に母体はさまざまな感染症にかかりやすくなるという側面も持っています。カンジダ菌のような常在菌も、この免疫力の低下に乗じて増殖しやすくなるのです。

3. その他の要因：おりものの増加、デリケートゾーンの蒸れ、ストレスなど

妊娠中はおりものの量が増える傾向にあり、デリケートゾーンが湿った状態になりやすいです^1222141523。カンジダ菌は高温多湿な環境を好むため¹²²、おりものの増加や、通気性の悪い下着の着用による蒸れなどもカンジダ症の誘因となります。また、妊娠に伴う体調の変化や精神的なストレスも、免疫力に影響を与え、カンジダ症のリスクを高める可能性があります²。

C. 日本の妊婦さんの罹患状況：決して珍しくない悩み

膣カンジダ症は、日本の妊婦さんにとっても決して珍しい悩みではありません。報告によれば、妊婦さんのおよそ30%がカンジダ菌を保有しており、そのうち約10%が実際に症状を伴うカンジダ症を発症するとされています²³⁸¹⁶。妊娠していない女性の場合、カンジダ菌の保有率は約15%程度とされているため²³¹⁶、妊娠がいかにカンジダ症のリスクを高めるかがわかります。この数値は、多くの妊婦さんが直面しうる問題であり、決して特別なことではないことを示しています。もし症状があっても、一人で悩まずに医療機関に相談することが大切です。

Ⅱ. 妊娠中のカンジダ症：気になる症状とサイン

A. 主な症状：かゆみ、おりものの変化など

1. 外陰部のかゆみ・ヒリヒリ感・熱感

妊娠中のカンジダ症で最も多く見られ、また最もつらい症状の一つが、外陰部のかゆみです^1127891011。このかゆみは、軽いものから我慢できないほど強いものまで様々で、時にはヒリヒリとした刺激感や熱っぽさを伴うこともあります。夜間や体が温まった時にかゆみが強くなる傾向もあります。

2. おりものの異常：量、色、形状の変化

カンジダ症のもう一つの特徴的なサインは、おりものの変化です。具体的には以下のような変化が見られます：

• 量の増加：普段よりもおりものの量が明らかに増えます¹。
• 色の変化：白く濁ったり、クリーム色になったりします¹⁷⁸。
• 形状の変化：酒粕（さけかす）状、カッテージチーズ状、ヨーグルト状といった、ポロポロとした固まりや、ドロッとした白いおりものが特徴です¹⁷⁸⁹¹¹。
• 臭い：通常、カンジダ症のおりものには強い臭いはありません。あっても甘酸っぱいような、わずかな臭い程度で、細菌性膣症のような生臭い臭いとは異なります。

3. 性交痛・排尿痛

外陰部や膣の粘膜が炎症を起こしているため、性交時に痛みを感じることがあります（性交痛）¹¹¹。また、排尿時に尿がしみるように感じたり、痛みが出たりすることもあります（排尿痛）。これは、炎症を起こした敏感な部分に尿が触れることで刺激されるためです。

4. 外陰部の発赤・腫れ

カンジダ菌による炎症で、外陰部が赤くなったり、腫れたりすることもあります¹¹。強いかゆみから掻いてしまうことで、皮膚に小さな傷がつき、さらに炎症が悪化することもあります。

B. こんな症状はカンジダ症ではないかも？他の病気との違い

妊娠中のおりものの変化やかゆみは、必ずしもカンジダ症だけが原因とは限りません。他の感染症や皮膚トラブルの可能性もあるため、自己判断は禁物です。以下に、カンジダ症と間違えやすい代表的な疾患を挙げます。

• 細菌性膣症（Bacterial Vaginosis）：おりものが灰色っぽく、水っぽいのが特徴で、特に性交後に魚の生臭いような強い臭いがすることがあります⁷⁸⁹。かゆみはカンジダ症ほど強くないことが多いです。
• トリコモナス膣炎（Trichomoniasis）：泡状で黄緑色のおりものが見られ、強い悪臭を伴います⁷⁸。かゆみも非常に強いのが特徴です。性感染症の一つです。
• クラミジア感染症・淋菌感染症など：これら性感染症でもおりものの増加や下腹部痛などが起こることがありますが、おりものの性状はカンジダ症とは異なります⁷。無症状のことも多い疾患です。
• 接触皮膚炎・アレルギー：ナプキンや下着の素材、石鹸などが原因で、外陰部にかぶれやかゆみが起こることもあります。

これらの疾患は治療法が異なるため、正確な診断が非常に重要です。気になる症状があれば、必ず産婦人科医に相談しましょう⁷⁸²⁴。

C. 自己判断は禁物！早めに産婦人科医に相談を

「かゆいからカンジダ症だろう」「以前もらった薬が残っているから使おう」といった自己判断は、特に妊娠中においては非常に危険です。正しい診断は、医師による問診、内診、そしておりものの検査（顕微鏡検査や培養検査など）によって初めて可能になります^1237824。もしカンジダ症ではなかった場合、間違った治療を続けることで症状が悪化したり、他の重要な病気を見逃してしまったりする可能性があります。また、妊娠中に使用できる薬剤は限られているため、安全性の観点からも医師の指示に従うことが不可欠です。少しでも気になる症状があれば、ためらわずに早めに産婦人科医を受診してください。

Ⅲ. 妊娠中のカンジダ症、赤ちゃんへの影響は？本当に危険？

妊娠中にカンジダ症と診断されると、「お腹の赤ちゃんに何か影響があるのでは？」と心配になるのは当然のことです。ここでは、カンジダ症が赤ちゃんにどのような影響を及ぼす可能性があるのか、そしてそのリスクはどの程度のものなのかを解説します。

A. 胎児への直接的な影響：子宮内では基本的に安全

まず最も心配されるのが、お腹の中にいる胎児への直接的な影響でしょう。幸いなことに、母体がカンジダ症にかかっていても、胎盤を通じてカンジダ菌が胎児に感染し、直接的な悪影響を及ぼすことは通常ありません¹。胎盤は、多くの病原体から赤ちゃんを守るバリアの役割を果たしているためです。したがって、妊娠中にカンジダ症と診断されても、適切に治療しコントロールされていれば、胎児の発育自体に問題が生じることは稀です。

B. 出産時の産道感染リスク：新生児鵞口瘡（がこうそう）

1. 鵞口瘡とは？症状と治療法

妊娠中のカンジダ症で最も注意すべきなのは、出産時の赤ちゃんへの感染（産道感染）です。もし分娩時に母親の膣内にカンジда菌が多数存在していると、赤ちゃんが産道を通る際に菌に接触し、感染してしまう可能性があります^12126813。この結果、赤ちゃんが「新生児鵞口瘡（しんせいじがこうそう）」を発症することがあります。鵞口瘡は、赤ちゃんの口の中に白い苔のような斑点（ミルクかすに似ています）ができる病気で、舌や頬の内側、上あごなどに見られます。多くの場合、鵞口瘡は軽症で、赤ちゃん用の抗真菌薬（塗り薬やシロップなど）で比較的簡単に治療できます¹²¹²。しかし、症状が広がると哺乳時に痛みを伴い、哺乳量が減ってしまうこともあるため、早期の発見と治療が大切です。

2. 母親の乳頭カンジダ症への波及リスク

赤ちゃんが鵞口瘡になると、授乳を通じて母親の乳頭や乳輪にカンジダ菌が感染し、「乳頭カンジダ症」を引き起こすことがあります。乳頭カンジダ症になると、授乳中や授乳後に乳頭に灼けるような激しい痛みが生じたり、乳頭が赤く腫れたり、亀裂が入ったりすることがあります¹¹。この場合、母子双方の治療が必要となるため、注意が必要です。

C. まれなケース：早産や重篤な感染症のリスク

非常にまれではありますが、妊娠中のカンジダ症が重症化したり、治療が不十分だったりした場合に、早産のリスクがわずかに高まる可能性を示唆する報告があります²⁶¹⁶²⁵。これは、カンジダ菌による炎症が子宮頸管や卵膜に影響を及ぼし、前期破水や子宮収縮を引き起こすことが一因と考えられています。例えば、カンジダが羊膜絨毛膜炎（ようまくじゅうもうまくえん）という卵膜の炎症を引き起こすことも稀に報告されています²²⁵。また、特に低出生体重児（特に1500g未満）で生まれた赤ちゃんがカンジダ菌に感染した場合、全身性の重篤なカンジダ感染症（カンジダ血症など）に進行するリスクも報告されていますが、これも極めてまれなケースです²¹⁶¹⁷。
これらのリスクは非常に低いものの、ゼロではないことを理解し、カンジダ症の症状がある場合には速やかに適切な治療を受けることが、母子双方の健康を守るために重要です。

D. 妊婦さんの不安を和らげるために：正しい情報を知ることの重要性

妊娠中のカンジダ症について知ると、さまざまな不安が頭をよぎるかもしれません。しかし、大切なのは、いたずらに不安がるのではなく、正しい情報を知ることです。妊娠中のカンジダ症は多くの妊婦さんが経験するものであり、そのほとんどは局所治療で安全かつ効果的にコントロールできます。赤ちゃんへの深刻な影響も、早期発見・早期治療によって最小限に抑えることが可能です。不安な点や疑問点は一人で抱え込まず、健診の際などに産婦人科医や助産師に積極的に質問し、正しい情報を得て、安心してマタニティライフを送りましょう。

Ⅳ. 妊娠中のカンジダ症の診断と安全な治療法

妊娠中にカンジダ症が疑われる症状が出た場合、自己判断せずに必ず産婦人科医に相談することが重要です。医師は適切な診断を行い、妊娠中でも安全な治療法を選択します。

A. 産婦人科での診断方法

1. 問診と内診

まず、医師は症状（かゆみの程度、おりものの状態、いつから症状があるかなど）について詳しく問診します。その後、内診台で外陰部の状態を視診し、膣鏡（ちつきょう）という器具を使って膣内や子宮頸部の状態を観察します。この際、おりものの性状や量、炎症の程度などを確認します。

2. おりもの検査：顕微鏡検査、培養検査

診断を確定するため、おりものを少量採取し、検査を行います¹¹⁸。主な検査は以下の通りです。

• 顕微鏡検査（鏡検）：採取したおりものをスライドガラスに乗せ、顕微鏡でカンジダの菌糸や胞子を確認します。多くの場合、この検査で診断がつきます。
• 培養検査：顕微鏡検査でカンジダ菌が確認できない場合や、症状が繰り返し起こる場合、治療してもなかなか治らない場合などに行われます。採取したおりものを特殊な培地で培養し、カンジダ菌の種類を特定したり、どの薬剤が有効かを調べたりします（薬剤感受性検査）。

B. 妊娠中でも安心！安全な治療法の選択肢

妊娠中のカンジダ症治療では、胎児への安全性が最優先されます。そのため、使用できる薬剤や治療法には制限があります。

1. 基本は局所治療：膣錠と塗り薬（クリーム・軟膏）

妊娠中のカンジダ症治療の基本は、抗真菌薬の膣錠（膣内に入れる薬）や、外陰部のかゆみが強い場合には塗り薬（クリームや軟膏）を併用する局所治療です^{1212145671516111718192021}。これらの薬剤は、血中への吸収がごくわずかなため、胎児への影響はほとんどないとされています。 主な抗真菌薬の成分としては、クロトリマゾール、ミコナゾール、イソコナゾール、オキシコナゾールなどがあります^{22111819202627}。日本でよく処方される具体的な薬剤名としては、エンペシド膣錠、フロリードD膣坐剤、オキナゾール膣錠などが挙げられます^22182027。 治療期間は、通常6～7日間連続して膣錠を使用するタイプや、1回のみ使用する高用量のタイプ（例：オキナゾール600mg膣錠）などがあり、医師が症状や妊娠週数などを考慮して選択します^12121820。症状が途中で軽快しても、自己判断で治療を中止せず、医師に指示された期間、きちんと薬を使用し続けることが重要です¹³。

2. 経口抗真菌薬（飲み薬）の取り扱い：原則として妊娠中は避ける

フルコナゾールなどの経口抗真菌薬（飲み薬）は、効果が高い一方で、妊娠初期に使用した場合に胎児への影響（流産や先天奇形のリスクなど）が報告されているため、妊娠中は原則として使用を避けます^{146161718192021262829303132}。日本産科婦人科学会（JSOG）のガイドライン¹⁸や日本性感染症学会のガイドライン¹⁴¹⁷²¹、国立成育医療研究センター²⁰、米国のMayo Clinic¹⁹やCDC（疾病対策センター）²⁶なども同様の注意喚起をしています。ごくまれに、局所治療で効果が得られない重症例や再発を繰り返す症例で、妊娠中期以降に医師が慎重に判断した上で処方されることもありますが、その場合も利益とリスクを十分に比較検討した上での決定となります。

3. 膣洗浄：医師による処置

症状が強い場合やおりものが多い場合には、薬の効果を高めるために、医師が医療機関で膣内を洗浄する処置を行うことがあります¹²¹⁵。これにより、膣内のカンジダ菌やおりものを物理的に除去し、薬剤が浸透しやすくなります。これは医療行為であり、自己判断で自宅で膣内を深く洗浄する「膣洗浄（ビデなど）」とは異なりますので注意が必要です。

C. 市販薬（OTC医薬品）の使用はOK？

ドラッグストアなどで購入できるカンジダ症の市販薬（OTC医薬品）がありますが、妊娠中の使用は自己判断せず、必ず医師に相談してください²²²。市販薬の中には、医療用と同じ成分を含んでいるものもありますが、そもそも症状が本当にカンジダ症によるものなのか、またその薬が妊娠中に使用しても安全なのかどうかは、医師の診断なしには判断できません。多くの市販薬の添付文書にも「妊婦または妊娠していると思われる人は使用前に医師または薬剤師に相談すること」といった注意書きがあります²²。適切な診断と治療を受けるために、まずは産婦人科を受診しましょう。

D. 治療期間と治癒の確認

通常、膣錠や塗り薬による治療は1週間から2週間程度で症状が改善します^1231218。治療が終了し、かゆみやおりものの異常といった自覚症状がなくなれば治癒と判断されることが多いです。医師の指示に従い、治療後の再診を受けましょう。症状が完全に消失していれば、必ずしも再度の検査（顕微鏡検査や培養検査）は必要ないとされていますが、症状が残っていたり、再発を繰り返したりする場合には、再検査を行い、治療法を見直すこともあります¹⁸。

E. パートナーの治療は必要？

膣カンジダ症は、基本的には性感染症（STI）とは考えられていません。そのため、女性がカンジダ症と診断されても、パートナーの男性に症状（例えば、亀頭部のかゆみや赤みなど）がなければ、必ずしも一緒に治療を受ける必要はありません。ただし、男性パートナーに症状がある場合や、女性がカンジダ症を何度も繰り返す場合には、ピンポン感染（お互いに感染させあうこと）の可能性も考慮し、医師がパートナーの検査や治療を勧めることがあります。日本性感染症学会のガイドラインなどを参考に、医師とよく相談してください¹⁴。

Ⅴ. 妊娠中のカンジダ症：賢い予防策で再発を防ぐ

妊娠中のカンジダ症は治療によって改善しますが、再発しやすいという特徴もあります。日常生活でのちょっとした心がけで、カンジダ症の予防や再発防止に繋がることがあります。ここでは、賢い予防策について解説します。

A. 基本的なデリケートゾーンケア

1. 正しい洗い方：洗いすぎない、膣内まで洗わない

デリケートゾーンを清潔に保つことは大切ですが、洗いすぎは禁物です^123125238。石鹸でゴシゴシ洗ったり、膣の中まで洗浄したりすると、膣内の常在菌のバランスを崩し、かえってカンジダ菌が増殖しやすい環境を作ってしまいます。洗浄は外陰部のみにとどめ、弱酸性で低刺激のデリケートゾーン専用ソープを使用するか、ぬるま湯で優しく洗い流す程度で十分です。排尿・排便後は、前から後ろへ優しく拭き取り、菌が膣の方へ移行するのを防ぎましょう。

2. 通気性の良い下着の選択：コットン素材がおすすめ

カンジダ菌は湿った環境を好むため、デリケートゾーンを乾燥した状態に保つことが予防に繋がります。そのため、通気性が良く、吸湿性に優れたコットン（綿）素材の下着を選ぶのがおすすめです^{121214152381117}。ナイロンやポリエステルなどの化学繊維素材や、体を締め付けるようなきついガードル、スキニージーンズなどは、通気性が悪く蒸れやすいため、なるべく避けましょう。

3. おりものシート・ナプキンのこまめな交換

妊娠中はおおりものの量が増えるため、おりものシートやナプキンを使用する方も多いでしょう。これらを使用する際は、湿った状態が長時間続かないように、こまめに取り替えることが大切です^12127238。汚れたシートやナプキンを長時間つけたままにすると、カンジダ菌だけでなく、他の雑菌も繁殖しやすくなります。

4. 睡眠時の工夫：締め付けない寝間着、下着なしも選択肢

睡眠中は、体を締め付けないゆったりとしたパジャマやネグリジェを着用し、デリケートゾーンの通気性を確保しましょう。可能であれば、下着をつけずに寝ることも、蒸れを防ぐための一つの方法です。

B. 生活習慣の見直し

1. 食生活：糖分の摂取を控える、バランスの取れた食事

カンジダ菌は糖分を栄養源として増殖するため、甘いものや炭水化物の過剰な摂取は、カンジダ症の発症や再発のリスクを高める可能性があります^2122311。糖分の摂取は控えめにし、野菜や果物を多く取り入れたバランスの良い食事を心がけ、免疫力を高めることが大切です。ヨーグルトや納豆などの発酵食品に含まれる乳酸菌（プロバイオティクス）が、膣内環境の健康維持に役立つ可能性も指摘されていますが¹²²⁰、これだけでカンジダ症を予防・治療できるわけではないため、あくまで補助的なものとして考えましょう。

2. 十分な睡眠と休息、ストレス管理

過労や睡眠不足、精神的なストレスは免疫力を低下させ、カンジダ菌が増殖しやすい状態を招きます²¹²。妊娠中は特に心身ともにデリケートな時期ですので、十分な睡眠と休息をとり、リラックスできる時間を作るなどして、上手にストレスを管理することが大切です。

3. 適度な運動

適度な運動は血行を促進し、免疫力を高める効果が期待できます¹²。ウォーキングやマタニティヨガ、マタニティスイミングなど、妊娠中でも無理なく続けられる運動を取り入れ、体力維持とストレス解消に努めましょう。ただし、運動を始める前には必ず医師に相談してください。

C. その他注意点

1. 抗生物質の慎重な使用

風邪などで抗生物質を服用すると、病気の原因菌だけでなく、膣内の善玉菌であるデーデルライン桿菌も殺してしまい、膣内フローラのバランスが崩れてカンジダ菌が増殖しやすくなることがあります¹⁴¹⁵²³。妊娠中に抗生物質が必要な場合は、自己判断せず、必ず医師の指示に従って服用し、服用後にカンジダ症の症状が出た場合は速やかに相談しましょう。

2. 性行為に関する注意

カンジダ症は厳密には性感染症ではありませんが、性行為によってパートナーにカンジダ菌が移行したり、逆にパートナーからカンジダ菌をもらったりする可能性は否定できません。また、性行為による摩擦が膣粘膜を傷つけ、症状を悪化させることもあります。カンジダ症の治療中は、症状が改善するまで性行為を控えるのが望ましいでしょう^2121415。詳細は医師の指示に従ってください。

3. ホロトキシンなど天然成分の活用は？

一部で、ナマコに含まれるホロトキシンなどの天然成分がカンジダ菌に対して抗菌作用を持つといった情報が見られます¹⁶。しかし、これらの天然成分の製品が妊娠中のカンジダ症に対してどの程度の効果と安全性を持つのかについては、科学的な根拠がまだ十分とは言えません。新しい製品やサプリメントなどを試す前には、必ず産婦人科医に相談し、安全性を確認するようにしてください。

よくある質問

結論

妊娠中のカンジダ症は、多くの妊婦さんが経験しうる一般的な疾患ですが、正しい知識を持ち、適切に対処すれば決して怖いものではありません。不快な症状がある場合は自己判断せずに早めに産婦人科医を受診し、妊娠中でも安全な治療を受けることが大切です。また、日常生活でのデリケートゾーンのケアや生活習慣の見直しは、予防と再発防止に繋がります。この記事で得た情報が、皆さまの不安を少しでも和らげ、安心して健やかなマタニティライフを送るための一助となることを心より願っています。疑問や心配事があれば、いつでもかかりつけの医師や助産師に相談しましょう。
これらの治療選択肢についてさらに詳しく知りたい場合は、担当医師にご相談ください。