精液検査の完全ガイド:費用、保険適用、WHO基準値、場所の選び方まで徹底解説
妊娠準備

精液検査の完全ガイド:費用、保険適用、WHO基準値、場所の選び方まで徹底解説

不妊は女性だけの問題だと思われがちですが、その認識は正確ではありません。世界保健機関(WHO)や日本メンズヘルス医学会の報告によると、不妊に悩むカップルの原因の約半分(48%〜50%)には男性側にも何らかの要因が関わっていることが示されています1011。この事実を踏まえると、妊活は女性だけでなく、カップルが二人三脚で取り組むべき課題であることがわかります。男性にとって、その第一歩となるのが「精液検査」です。これは男性の妊孕性(にんようせい、妊娠させる力)を評価するための最も基本的で重要な検査であり、身体的な負担が少なく、多くの貴重な情報を提供してくれます。この記事では、JAPANESEHEALTH.ORG編集部が、最新の科学的知見と日本の医療事情に基づき、精液検査の目的から具体的な費用、保険適用の有無、信頼できる検査場所の選び方、そして結果の解釈まで、あなたが抱えるであろうあらゆる疑問や不安に答えるための包括的な情報を提供します。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性を含むリストです。

  • 世界保健機関(WHO): この記事における精液検査の基準値や手順に関する指針は、WHOが発行した「ヒト精液検査・処理マニュアル第6版(2021年)」に基づいています16。これは、世界中の検査室で用いられる国際標準です。
  • 日本生殖医学会(JSRM): 日本国内における精液検査の推奨事項や、結果が思わしくなかった場合の次のステップ(泌尿器科専門医への相談など)に関する記述は、日本の生殖医療をリードする本学会の公式見解やガイドラインを参考にしています2021
  • 厚生労働省(MHLW)および国内調査: 日本における男性不妊の現状、原因の統計(例:造精機能障害が82.4%を占めるなど)、および標準的な検査の種類に関する情報は、厚生労働省の報告書や関連学会による全国調査に基づいています1222
  • 国内の専門家および臨床データ: ライフスタイルの改善に関する具体的なアドバイスや治療法に関する記述は、石川智基医師のような日本の男性不妊治療の第一人者の見解を引用しています24。また、費用に関する情報は、国内の専門クリニックが公開している実際の料金体系を基に作成されています2829

要点まとめ

  • 不妊の原因の約半分は男性側にもあり、精液検査は男性ができる基本的かつ重要な第一歩です。
  • 現在の世界基準はWHOが2021年に発表した第6版であり、以前の基準とは一部数値が異なります。
  • 検査費用は、不妊症の診断目的であれば保険適用、自己判断のチェック(ブライダルチェック等)であれば自費診療となり、5,000円から数万円まで幅があります。
  • 東京都など一部の自治体では、不妊検査費用に対する助成金制度(例:最大5万円)があり、活用できる場合があります。
  • 検査場所は、不妊治療専門クリニック、泌尿器科、産婦人科などがあり、カップルの状況に応じて選ぶことが推奨されます。
  • 検査結果は体調やストレスで変動するため、一度の結果が悪くても再検査や専門医への相談が重要です。

精液検査とは?何を調べるための検査なのか

精液検査は、男性の生殖能力、すなわち「妊孕性(にんようせい)」を客観的な数値で評価するための基本的な検査です。採取した精液を顕微鏡で分析し、精子の数、運動能力、形状などを調べることで、自然妊娠の可能性を判断する上での重要な手がかりを得ることができます32。痛みや身体的負担を伴わない非侵襲的な検査でありながら、男性不妊の原因を探る上で不可欠なプロセスと位置づけられています。

検査の目的:男性の妊孕性(にんようせい)を評価する

この検査の主目的は、精液中に十分な数・質・運動能力を持つ精子が存在するかどうかを明らかにすることです。もし問題が見つかれば、その原因をさらに詳しく調べるための次のステップへと進むことができます。逆に、検査結果が基準値内であれば、男性側に大きな問題がない可能性が高いと判断でき、カップルは次の妊活ステップに安心して進むことができます。多くの男性が検査に対して心理的な抵抗を感じることがありますが、これはパートナーと共に未来を築くための、責任ある前向きな行動と言えるでしょう1

主な検査項目:WHOが定める基準

精液検査では、国際的な基準に基づいていくつかの主要な項目が評価されます。世界保健機関(WHO)が定めるこれらの項目には、主に以下のものが含まれます7

  • 精液量 (Semen volume): 一回の射精で放出される精液の全体量。
  • 精子濃度 (Sperm concentration): 精液1ミリリットルあたりに含まれる精子の数。
  • 総精子数 (Total sperm number): 一回の射精に含まれる精子の総数。
  • 精子運動率 (Sperm motility): 全精子のうち、元気に動いている精子の割合。
  • 前進運動率 (Progressive motility): 前に進む力を持つ精子の割合。
  • 精子正常形態率 (Normal morphology): 形が正常な精子の割合。

これらの数値は、精子が卵子までたどり着き、受精する能力を総合的に評価するために用いられます。各項目の詳細な基準値については、次章で詳しく解説します。


【最新】WHO第6版(2021年)精液検査の基準値

精液検査の結果を評価する際には、世界保健機関(WHO)が策定した国際的な基準値が用いられます。2021年に11年ぶりに改訂された「ヒト精液検査・処理マニュアル第6版」では、最新の研究データを基に新たな基準値(下限基準値)が設定されました16。これは「この数値を下回ると自然妊娠が難しくなる可能性がある」という目安であり、絶対的な不妊を意味するものではありません。ご自身の結果を理解するために、まずは最新の基準値を確認しましょう。

WHO 精液検査 下限基準値(第6版, 2021年)
指標(項目) 下限基準値 (Lower Reference Limit)
精液量 (Semen Volume) 1.4 mL
総精子数 (Total Sperm Count) 39×10⁶ / 射精1回あたり (3900万匹)
精子濃度 (Sperm Concentration) 16×10⁶ / mL (1600万匹/mL)
総運動率 (Total Motility) 42%
前進運動率 (Progressive Motility) 30%
生存率 (Vitality) 54%
正常形態率 (Normal Forms) 4%

出典: World Health Organization laboratory manual for the examination and processing of human semen, 6th edition (2021) のデータを基にJAPANESEHEALTH.ORGが作成1626

各数値が意味すること:あなたの結果をどう読み解くか

  • 精液量と精子濃度・総精子数: これらは「量」に関する指標です。数が多ければ多いほど、卵子に到達できる精子の数も増えるため、妊娠の可能性が高まります。
  • 運動率(総運動率・前進運動率): これは精子の「質」や「元気さ」を示します。特に、まっすぐ前に進む力(前進運動率)は、精子が膣から卵管へと長い道のりを旅するために不可欠な能力です。率が低いと、精子が卵子の元へたどり着くのが難しくなります。
  • 生存率: 射精された精子のうち、生きている精子の割合です。運動していない精子が死んでいるのか、ただ休んでいるだけなのかを判断するために重要です。
  • 正常形態率: これは精子の「形」に関する指標です。頭部、中間部、尾部のすべてが整った形の精子が、正常に卵子に侵入し受精する能力が高いとされています。基準値が4%と低く設定されていることに驚くかもしれませんが、これは正常な男性でも奇形精子の割合が非常に高いことを意味します。

重要な注意点: これらの数値は、あくまで集団データから得られた統計的な目安です。基準値を一つでも下回ったからといって、必ずしも自然妊娠が不可能というわけではありません。逆に、すべての数値をクリアしていても、他の要因で妊娠に至らないケースもあります。結果の解釈は、必ず専門の医師に相談することが不可欠です。また、精液の状態は、その日の体調、ストレス、睡眠時間などによって大きく変動するため、一度の検査だけで最終的な判断を下すことはせず、必要に応じて再検査を行うことが一般的です20


検査の全プロセス:予約から結果説明までの流れ

精液検査を受けると決めたものの、具体的にどのような流れで進むのか分からず、不安を感じる方も多いでしょう。ここでは、予約から結果説明までの一般的なプロセスをステップごとに詳しく解説します。事前に流れを理解しておくことで、心理的なハードルを下げることができます。

ステップ1:禁欲期間(2〜7日間が推奨)

正確な検査結果を得るために、精液を採取する前に一定期間、射精を控える「禁欲期間」が必要です。WHOおよび日本生殖医学会(JSRM)は、2日から7日間の禁欲期間を推奨しています1620。期間が短すぎると精子の数や濃度が低く出ることがあり、逆に長すぎると運動率が低下したり、古い精子が増えたりする可能性があります。クリニックを予約する際に、最適な禁欲期間について指示がある場合が多いので、それに従いましょう。

ステップ2:精液の採取(院内採取 vs 自宅採取)

精液の採取方法には、クリニック内に設けられた採精室で行う「院内採取」と、自宅で採取して持参する「自宅採取」の2つの選択肢があります。

  • 院内採取: クリニック内にプライバシーが確保された専用の部屋(採精室)で、マスターベーションによって精液を採取します。温度変化や運搬時間による精子の質の劣化を防げるため、最も正確な結果が得られる方法とされています4。実際に検査を体験した人の話によると、「多くのクリニックでは、他人の目を気にすることなくリラックスできるよう、防音の個室が用意されており、中には漫画喫茶の個室のように快適な空間作りを心掛けている場所もある」とのことで、利用者の心理的負担を軽減する工夫がされています1
  • 自宅採取: 自宅という慣れた環境でリラックスして採取できるのが最大の利点です。ただし、採取後は精液が温度変化にさらされないよう注意し、クリニックから指定された時間内(通常は1時間〜2時間以内)に提出する必要があります。運搬中の温度管理や時間が結果に影響を与える可能性があるため、正確性の面では院内採取に劣る場合があります。

どちらの方法が適しているかは、クリニックの方針や個人の状況によって異なりますので、予約時に確認しましょう。

ステップ3:検査と結果説明

精液が提出されると、臨床検査技師が顕微鏡を用いて詳しく分析します。結果は通常、即日(約1時間後)に判明することが多いです7。医師はWHOの基準値と照らし合わせながら、結果の各項目について詳しく説明してくれます。この時、疑問や不安に思うことがあれば、遠慮なく質問しましょう。前述の通り、精液の状態は変動しやすいため、もし結果が基準値を下回った場合でも、すぐに深刻に考える必要はありません。医師の判断により、生活習慣の改善を試みた上で、後日再検査を行うことが一般的です20


精液検査の費用:保険適用と自費診療のすべて

精液検査を検討する上で、費用は最も気になる点の一つでしょう。費用体系は「保険が適用されるか否か」で大きく変わります。ここでは、保険適用の条件から自費診療の場合の料金相場、さらには利用できる助成金制度まで、お金に関する情報を網羅的に解説します。

保険は使える?基本的な考え方

精液検査に公的医療保険が適用されるかどうかは、検査を受ける目的によって決まります。

  • 保険適用される場合: カップルが1年以上(女性が35歳以上の場合は半年以上)通常の性生活を送っているにもかかわらず妊娠せず、医師が「不妊症」の診断を下し、その原因を調べるために精液検査を行う場合、保険が適用されます。この場合、自己負担額は通常3割となります。
  • 保険適用されない場合(自費診療):
    • 結婚を控えたカップルが行う「ブライダルチェック」の一環として受ける場合34
    • 明確な不妊症の診断が下される前に、将来のために自分の妊孕性を知りたいという「予防的」な目的で受ける場合。
    • パートナーがいない男性が、自身の健康状態を確認するために受ける場合。

    これらのケースは、病気の治療ではなく任意検査と見なされるため、全額自己負担の「自費診療」となります。

費用相場:検査内容別の料金目安(自費)

自費診療の場合、料金はクリニックや検査内容によって大きく異なります。以下は一般的な料金の目安です。

自費診療における精液検査の費用目安
検査の種類 費用の目安(自費) 主な内容と注意点
基本的な精液検査 5,000円 ~ 15,000円 WHOの主要項目(量、濃度、運動率、形態率など)を調べる基本的な検査。
詳細な精液検査 20,000円 ~ 45,000円 基本検査に加え、精子のDNA損傷度(DFI検査)など、より専門的な項目を含む場合。
男性向けブライダルチェック 30,000円 ~ 80,000円 精液検査に加え、HIV、梅毒、クラミジアなどの性感染症検査や風疹抗体検査などをセットにしたパッケージ。

出典: S-Set Clinic, 恵比寿つじクリニック, 福岡泌尿器・リプロクリニックなどの公開情報を基にJAPANESEHEALTH.ORGが作成282936。料金はあくまで参考であり、詳細は各医療機関にご確認ください。

助成金制度の活用(例:東京都の不妊検査等助成事業)

不妊治療にかかる経済的負担を軽減するため、国や地方自治体が助成金制度を設けている場合があります。特に注目すべきは、東京都が実施している「不妊検査等助成事業」です19。この制度では、保険医療機関で受けた不妊検査および一般不妊治療にかかった費用について、夫婦一組あたり最大5万円までの助成を受けることができます437。精液検査もこの対象に含まれるため、都内在住の対象カップルは積極的に活用を検討すべきです。お住まいの市区町村でも同様の制度がないか、公式ウェブサイトなどで確認してみましょう。


どこで検査を受ける?専門クリニックの選び方

いざ検査を受けようと決めても、「どこに行けばいいのか?」という新たな疑問が生まれます。精液検査は、不妊治療専門クリニック、泌尿器科、産婦人科など、さまざまな医療機関で受けることができます。それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況や目的に合った場所を選ぶことが重要です。

検査場所の種類と特徴
施設の種類 どのような人におすすめか メリット デメリット
不妊治療専門クリニック パートナーと共に不妊の原因を調べ、治療までを一貫して検討したいカップル。 ・婦人科と連携しており、夫婦同時に検査・治療を進めやすい。
・最新の生殖補助医療(ART)に関する情報が豊富。
・費用が比較的高くなる傾向がある。
・男性不妊に関する専門的な外科手術には対応していない場合がある。
泌尿器科(男性不妊専門) 男性側の原因を徹底的に調べたい方。精液検査の結果が悪かった方。 ・男性生殖器の構造や機能に関する深い専門知識を持つ。
・精索静脈瘤などの外科的治療にも対応可能。
・パートナー(女性)の検査結果と照らし合わせるには、婦人科との連携が別途必要になる。
産婦人科 まずパートナー(女性)が検査を受けており、その流れで男性も検査を受けたい場合。 ・女性にとって受診のハードルが低い。
・カップルにとっての最初の相談窓口として一般的。
・男性不妊に関する専門性は高くない場合が多く、異常が見つかった際は専門医を紹介されることになる。

出典: 日本生殖医学会(JSRM)の公開情報などを参考にJAPANESEHEALTH.ORGが作成2038

選び方のポイント: もし、あなたがパートナーと共に妊活を始めたばかりで、全体像を把握したいのであれば、不妊治療専門クリニックが最もスムーズな選択肢となるでしょう。一方で、すでに精液検査で何らかの異常を指摘されている場合や、より男性側の要因を深く掘り下げたい場合は、男性不妊を専門とする泌尿器科を受診することが強く推奨されます。


もし結果が基準値を下回ったら?次のステップと治療法

精液検査の結果がWHOの基準値を下回った場合、多くの男性は大きなショックと不安を感じるかもしれません。しかし、それは決して「妊娠できない」という最終宣告ではありません。重要なのは、パニックにならず、正しい知識を持って次のステップに進むことです。

まずは再検査と専門医への相談

前述の通り、精液の状態は日々変動します。たった一度の検査結果で確定的な診断を下すことはできません。まずは気持ちを落ち着け、一定期間を空けて再検査を受けることが基本です。それでも結果が改善しない場合は、男性不妊の治療を専門とする泌尿器科の医師に相談することが極めて重要です。日本生殖医学会のガイドラインでも、重度の男性不妊が疑われるケースでは、泌尿器科医による診察が強く推奨(推奨度A)されています21。専門医は、超音波検査やホルモン検査などを通じて、その原因(例:精索静脈瘤、ホルモン異常、閉塞など)を特定し、最適な治療方針を提案してくれます。

ライフスタイルの見直しで改善できること

精子の状態は、日々の生活習慣に大きく影響されます。専門的な治療と並行して、自分自身で取り組める改善策も多くあります。日本の男性不妊治療の第一人者である石川智基医師は、以下のような生活習慣の改善が精子の質向上に繋がる可能性があると指摘しています24

  • 禁煙: 喫煙は精子のDNAを損傷させる主要な原因の一つです。
  • 長時間のサウナや長風呂を避ける: 精巣は熱に弱いため、高温の環境は避けるべきです。
  • バランスの取れた食事: 抗酸化物質を多く含む野菜や果物を積極的に摂取しましょう。
  • 適度な運動: 肥満は精子の質を低下させる要因になります。
  • 禁欲期間を長くしすぎない: 射精の頻度を適度に保つこと(週に3〜4回程度が目安とされることもある)で、新鮮な精子を維持できます。
  • ストレス管理: 過度なストレスはホルモンバランスを乱し、精子の産生に悪影響を及ぼす可能性があります。

専門的な治療法:泌尿器科での選択肢

生活習慣の改善だけでは解決が難しい場合や、特定の原因が見つかった場合には、より専門的な治療が必要となります。代表的な治療法には以下のようなものがあります。

  • 薬物療法: ホルモン異常が原因の場合、ホルモン剤を用いて精子の産生を促します。
  • 手術療法: 精索静脈瘤など、物理的な原因がある場合には手術によって改善を図ります。
  • 生殖補助医療 (ART): 精子の数が著しく少ない、または運動率が極端に低い場合でも、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)といった高度な技術を用いて受精させることが可能です。無精子症(精液中に精子が全くいない状態)と診断された場合でも、精巣から直接精子を回収する手術(精巣内精子回収法:TESE、特に顕微鏡下で行うmicro-TESE)によって、子どもを授かる道が開かれています2324

現代の医療技術は、かつては妊娠が難しいとされた多くのケースで希望をもたらしています。諦めずに専門医と相談することが大切です。


【妊活の選択肢】ブライダルチェックとは?

近年、結婚や本格的な妊活を始める前のカップルが、お互いの健康状態を確認するために受ける「ブライダルチェック」が日本でも一般的になってきました14。これは将来の家族計画を円滑に進めるための、非常に賢明で責任ある行動です。男性向けのブライダルチェックでは、精液検査が中心的な役割を果たします。

男性向けブライダルチェックに含まれる主な検査項目は以下の通りです1431

  1. 精液検査: 自身の妊孕性の基本状態を把握します。
  2. 性感染症検査: HIV、梅毒、クラミジア、淋病などを調べます。これらの感染症は不妊の原因となるだけでなく、パートナーや将来の赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があります。
  3. 風疹抗体検査: 妊娠初期に女性が風疹に感染すると、赤ちゃんに深刻な障害(先天性風疹症候群)が起こる危険性があります。男性も抗体を持っておくことで、パートナーへの感染を防ぐことができます。

ブライダルチェックは、問題の早期発見に繋がるだけでなく、カップルが性と生殖に関する健康についてオープンに話し合う良い機会にもなります。費用は自費診療となりますが、未来への投資と考える価値は十分にあるでしょう。


よくある質問

Q1: 薄毛治療薬(AGA治療薬)を服用していますが、精液検査に影響はありますか?

はい、影響が出る可能性があります。一部のAGA治療薬(フィナステリドやデュタステリドなど)は、精子濃度や運動率の低下、精液量の減少といった副作用が報告されています39。これらの影響は薬の服用を中止すれば回復することがほとんどですが、妊活中や精液検査を予定している場合は、必ず事前に処方医や検査を受けるクリニックの医師に相談してください。自己判断で服用を中止することは避けるべきです。

Q2: 年齢は精子の質に影響しますか?

はい、影響します。女性ほど急激ではありませんが、男性も年齢を重ねるにつれて精子の質は徐々に低下する傾向にあります。特に35歳を過ぎたあたりから、精子の運動率や正常形態率の低下、さらには精子のDNA損傷率の上昇が見られることが研究で示されています18。年齢が上がるほど、パートナーを妊娠させるまでに時間がかかる可能性があり、流産率や子どもの特定の疾患のリスクもわずかに高まると言われています。そのため、将来子どもを望むのであれば、年齢も考慮に入れた上で早めに検査を受けることが推奨されます。

Q3: なぜ検査のたびに結果の数値が違うのですか?

精液の状態は非常にデリケートで、常に一定ではありません。その日の体調、精神的なストレス、睡眠不足、飲酒、風邪をひいているかどうかなど、様々な要因によって精子の数や運動率は大きく変動します20。言わば、血液検査の血糖値が食事によって変わるのと同じです。そのため、一度の検査結果だけで一喜一憂する必要はありません。通常、2〜3回検査を行い、その平均的な状態で評価するのが一般的です。もし一度目の結果が悪くても、生活習慣を整えて再検査すると、数値が基準値内に改善することも珍しくありません。


結論

精液検査は、不妊の原因を探り、カップルが未来の家族計画を立てる上で、避けては通れない、そして非常に価値のあるステップです。この記事を通して、検査が決して特別なものでも、怖いものでもなく、むしろ男性が主体的に自身の健康と向き合うための前向きな行動であることがご理解いただけたかと思います。不妊の原因の約半分は男性にも関わるという事実を真摯に受け止め、検査を受けることへの心理的なハードルを取り払いましょう。

最新のWHO基準を理解し、費用や保険適用、助成金制度といった現実的な情報を手に入れ、自分たちの状況に最適な検査場所を選ぶ知識は、あなたとパートナーを力強くサポートします。たとえ結果が思わしくなかったとしても、現代の医療には生活習慣の改善から高度な生殖補助医療まで、数多くの選択肢が存在します。最も大切なのは、一人で悩まず、パートナーとオープンに話し合い、信頼できる専門医に相談することです。この記事で得た知識を羅針盤として、ぜひ勇気ある一歩を踏み出してください。

免責事項この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言を構成するものではありません。健康上の懸念がある場合や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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