【医師監修】メソセラピー後の正しいケア完全ガイド|ダウンタイムを最短にし、効果を最大化する科学的アプローチ
皮膚科疾患

【医師監修】メソセラピー後の正しいケア完全ガイド|ダウンタイムを最短にし、効果を最大化する科学的アプローチ

メソセラピーは、美容医療の中でも人気の高い治療法ですが、その効果を最大限に引き出し、安全性を確保するためには、施術後のケアが極めて重要です。多くの方が施術そのものに注目しがちですが、実際には「ダウンタイム」と呼ばれる回復期間中の過ごし方が、最終的な結果と満足度を大きく左右します。本稿は、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会が、国内外の科学的根拠と日本の規制当局の指針に基づき、メソセラピー後の包括的なケア方法を解説するものです。医学文献では、不適切なケアや予期せぬ反応による様々な合併症が報告されており1、正しい知識を持つことが、ご自身の身を守るための最も効果的な手段となります。


この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用された最高品質の医学的証拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的ガイダンスへの直接的な関連性を含むリストです。

  • 厚生労働省: 日本における未承認医薬品の法的地位、インフォームド・コンセントの重要性、および副作用被害救済制度に関する指針は、厚生労働省の公式文書に基づいています2
  • Journal of Cosmetic Dermatology (Kutlubay Z, et al., 2018): メソセラピーに伴う一般的な副作用から稀な合併症まで、幅広いリスクに関する議論は、この系統的レビューに基づいています1
  • Journal of Cosmetic Dermatology (Lee JH, et al., 2024): 特にエクソソーム製剤に関連する重篤なリスク(皮膚壊死など)に関する警告は、この最新の症例報告に基づいています3
  • Annales de Dermatologie et de Vénéréologie (Senet P, et al., 2013): 血管系の合併症であるニコラウ症候群のリスクについては、この症例報告が参照されています4

要点まとめ

  • メソセラピー後のケアは、治療効果を最大化し、ダウンタイムを短縮するための治療プロセスの重要な一部です。
  • 基本的なケア(冷却、保湿、紫外線対策)と並行して、薬剤の種類(例:ジュベルック、エクソソーム)に応じた特別な注意が必要です。
  • 腫れや内出血は一般的な症状ですが、感染症や血管閉塞を示唆する「危険なサイン」を知り、異常を感じたら直ちに医療機関に連絡することが不可欠です。
  • 日本国内では多くのメソセラピー製剤が「未承認医薬品」であり、副作用が発生した場合に国の救済制度の対象外となる可能性があることを理解しておくべきです。

メソセラピー後のケアが「結果」と「安全性」を決める理由

メソセラピー後のケアは、単なる「おまけ」ではありません。それは治療プロセスそのものに組み込まれた、不可欠なステップです。適切なケアを実践することで、炎症を速やかに抑え、不快なダウンタイムを最小限に留めるだけでなく、注入された有効成分がその効果を最大限に発揮するための最適な体内環境を整えることができます。逆に、ケアを怠ると、軽微な腫れや内出血が長引くだけでなく、色素沈着や感染症、さらには稀ではありますが皮膚壊死といった重篤な合併症のリスクを高める可能性があります1。この記事では、科学的根拠に基づき、安全かつ効果的な回復を遂げるための完全な指針を提供します。


第1部:基本のケアプラン:すべてのメソセラピーに共通する最初の1週間

施術後の最初の1週間は、肌が最もデリケートで影響を受けやすい時期です。この期間のケアは、主に「炎症の抑制」と「感染の予防」に焦点を当てます。

施術直後(〜48時間)の絶対ルール:炎症反応を最小限に抑える

この急性期は、体を「鎮静モード」に保つことが重要です。以下のルールは、腫れ、赤み、内出血を最小限に抑えるために不可欠です。

  • 血行を促進する活動の回避: 科学的観点から、体温の上昇や血圧の上昇は、傷ついた微細な血管からのさらなる出血や体液の漏出を促し、腫れや内出血を悪化させます5。そのため、施術後少なくとも24〜48時間は、以下の活動を避けてください。
    • 長時間の入浴やサウナ
    • 激しい運動やトレーニング
    • アルコールの摂取6
  • 物理的刺激と細菌からの保護: 施術部位の皮膚バリアは一時的に損なわれています。手で触れたり、こすったり、マッサージしたりすることは、細菌感染のリスクを高め、炎症を助長する可能性があります。また、施術当日のメイクアップは、穿刺孔から化粧品の成分や細菌が侵入する可能性があるため、避けるべきです7

施術後3日目〜7日目のスキンケア戦略:回復を加速させる

この時期には、初期の炎症が落ち着き始めるため、ケアの焦点を「保護」から「積極的な回復支援」へと移行させます。

  • 紫外線対策の徹底: これは、炎症後色素沈着(PIH)を防ぐために最も重要なステップです。施術後の皮膚は紫外線に対して非常に敏感になっており、日光にさらされるとメラニンが過剰に生成され、シミや黒ずみが長期間残る原因となります8。屋内にいる場合でも、広域スペクトルの日焼け止め(SPF30以上)を使用することが強く推奨されます。
  • 保湿と皮膚バリア機能の回復: 乾燥は皮膚の回復を遅らせ、さらなる刺激を引き起こす可能性があります。低刺激性の保湿剤を使用し、肌の水分を保ち、バリア機能の修復を助けることが重要です。
表1:施術後1週間のスキンケア成分「推奨」と「禁止」
分類 成分例 理由
禁止 🚫 レチノイド(ビタミンA)、高濃度ビタミンC、AHA、BHA、物理的スクラブ、アルコール(エタノール)含有製品 敏感になった肌に強い刺激を与え、炎症や乾燥を悪化させる可能性があるため。
推奨 ✅ ヒアルロン酸、セラミド、パンテノール(ビタミンB5)、ナイアシンアミド(低濃度) 優れた保湿効果で肌に水分を供給し、炎症を鎮め、損傷した皮膚バリアの修復をサポートするため9

第2部:症状別セルフケアと危険なサインの見分け方

ダウンタイム中の一般的な症状と、注意すべき異常のサインを明確に区別することが、安心して回復期間を過ごすための鍵です。

一般的なダウンタイム症状(赤み・腫れ・内出血)の正しい対処法

これらの症状は、体の正常な治癒反応の一部です。適切な対処法を知ることで、不快感を和らげ、回復を早めることができます。

  • 冷却: 施術後24〜48時間は、清潔なタオルで包んだ保冷剤を1回10〜15分程度、断続的に当てることで血管が収縮し、腫れ、痛み、内出血を軽減する効果が期待できます10
  • 安静と水分補給: 十分な休息と水分摂取は、体の代謝をサポートし、炎症産物の排出を促します7
  • 頭部を高くして寝る: 特に顔の施術後、就寝時に枕を少し高くすると、重力の影響で翌朝の腫れが軽減されることがあります。

【重要】これは危険信号?医療機関へすぐに連絡すべき症状

以下の症状は、単なるダウンタイムではなく、合併症の可能性を示唆しています。ためらわずに施術を受けた医療機関に連絡してください。

  • 3日以上経過しても悪化する、または改善の兆しがない激しい腫れ、赤み、痛み
  • 感染の兆候: 発熱、悪寒、施術部位の熱感や灼熱感、膿の排出11
  • アレルギー反応: 広範囲に広がる発疹や蕁麻疹、呼吸困難、顔や喉の腫れ。
  • 皮膚の色の異常な変化: 施術部位の皮膚が網目状の紫斑、蒼白、または黒っぽく変色し、激しい痛みを伴う場合。これは血管閉塞(例:ニコラウ症候群)という重篤な合併症のサインである可能性があります43

第3部:【科学的根拠に基づく深掘り】メソセラピーの稀だが重篤なリスク

JHO編集委員会は、透明性の高い情報提供が患者の安全に不可欠であると考えています。商業的な医療情報サイトでは語られることの少ない、稀ではあるものの重大なリスクについて、医学文献に基づき解説します。

  • 異物性肉芽腫: これは、体内に注入された物質に対して免疫系が慢性的な炎症反応を起こし、皮膚の下に硬いしこりを形成する状態です。数ヶ月から数年後に発症することもあります。2023年の報告では、本来は外用薬であるトラネキサム酸を不適切に注射したことが原因で肉芽腫が発生した事例が記録されています12
  • 皮膚壊死: 極めて稀ですが、注入物が血管を詰まらせる(塞栓)、あるいは製剤そのものが細胞に対して直接的な毒性を持つ場合に発生し得ます。2024年には、品質が不明な凍結乾燥エクソソーム製品の注射後に皮膚壊死を発症した症例が報告されており、新しい治療法や標準化されていない製品の潜在的危険性を示しています3
  • 感染症: 皮膚バリアを破壊するあらゆる手技には、感染のリスクが伴います。特に、無菌操作が徹底されていない環境での施術は、深刻な細菌感染症を引き起こす可能性があります1

第4部:【日本国内の常識】安全な治療を受けるための法的知識とチェックリスト

安全な美容医療を受けるためには、技術的な側面だけでなく、日本国内の法的な背景を理解することが非常に重要です。これは、ご自身を守るための知識武装となります。

「未承認医薬品」についての理解

日本国内で美容医療に用いられるメソセラピー製剤の多くは、日本の医薬品医療機器等法(薬機法)における承認を得ていない「未承認医薬品」に該当します。これは、必ずしもその製品が危険であるという意味ではありませんが、日本の規制当局による有効性と安全性の公式な審査を経ていないことを意味します2

法的な帰結:副作用被害救済制度の適用外

最も重要な点は、厚生労働省の指針によれば、未承認医薬品を使用して重篤な健康被害(副作用)が生じた場合、公的な補償制度である「医薬品副作用被害救済制度」の対象とはならないことです2。つまり、万が一の事態が発生した際、治療費や障害年金などの公的な救済を受けることができません。このリスクについては、施術前に医師から十分な説明を受け、理解した上で同意(インフォームド・コンセント)することが法律で義務付けられています。

表2:治療前に医師に確認すべき安全チェックリスト
確認項目 質問の例
製品の承認状況 「これから使用する薬剤は、日本で承認されていますか?未承認の場合、その理由と、どのような経路で輸入されたものですか?」
リスクと救済制度 「考えられるすべての副作用と、万が一重篤な副作用が起きた場合に医薬品副作用被害救済制度の対象外となることについて、説明していただけますか?」
医師の専門性 「先生は、日本美容外科学会(JSAPS)や日本メソセラピー研究会(JRSM)などの専門学会に所属されていますか?」1314
緊急時対応 「もし夜間や休日に異常を感じた場合、どのように連絡すればよいですか?」

第5部:【応用編】薬剤別・目的別ケアの特別注意点

メソセラピーと一括りに言っても、使用される薬剤の作用機序は様々です。ここでは、特に人気の高い薬剤に特化したケアの注意点を解説します。

Juvelook(ジュベルック)/Lenisna(レニスナ) (PDLLA) の場合

これらの製剤の主成分であるPDLLA(ポリDL乳酸)は、ヒアルロン酸のように単に物理的なボリュームを出すのではなく、自身のコラーゲン産生を長期間にわたって刺激することで効果を発揮します。そのため、施術後数週間は、新しいコラーゲン線維の足場が形成される重要な時期です。この期間に施術部位を強くマッサージすると、薬剤の均一な分布やコラーゲン構造の形成に影響を与える可能性があります。マッサージの要否については、必ず施術した医師の指示に厳密に従ってください15

エクソソーム注射の場合

エクソソーム療法は再生医療の一環として注目されていますが、その市場はまだ新しく、製造プロセスや純度、安全性の基準が十分に標準化されていないのが現状です。前述の通り、品質が保証されていない製品の使用による皮膚壊死の報告もあります3。治療を受ける際には、クリニックが信頼できる供給元からの製品を使用しており、製品の品質分析証明書(Certificate of Analysis)などを提示できるか確認することが賢明です。

PDRN (リジュランなど) の場合

PDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)は、サケのDNAから抽出された成分で、強力な創傷治癒促進作用と抗炎症作用が特徴です。PDRNが活性化させる皮膚の再生プロセスにとって最適な環境を作るため、施術後のケアは特に保湿と紫外線対策に重点を置くべきです。

脂肪溶解注射の場合

脂肪溶解注射後は、破壊された脂肪細胞や炎症性物質を体外へ効率的に排出させることが重要です。急性期の症状(腫れや痛み)が落ち着いた後、十分な水分を摂取し、ウォーキングなどの軽い運動でリンパの流れを促進することが、回復と効果の発現を助けます10


よくある質問(FAQ)

施術後、いつからメイクができますか?

ほとんどの医療機関では、施術後少なくとも24時間はメイクを避けるよう指導しています。これは、注射による微細な傷が完全に閉じるまでの時間を確保し、細菌感染のリスクを最小限に抑えるためです16

施術後の飲酒はなぜダメなのですか?

アルコールには血管を拡張させる作用があります。これにより血流が増加し、施術部位の腫れや内出血を悪化させる可能性があります。また、アルコールは利尿作用により体内の水分を奪い、皮膚の乾燥を招くため、肌の回復プロセスを遅らせる一因となります6

皮むけが起きたらどうすればいいですか?

皮むけは、肌のターンオーバーが促進され、古い角質が剥がれ落ちる正常な反応の一部です。無理に剥がしたり、スクラブでこすったりすることは絶対に避けてください。下にある新しいデリケートな皮膚を傷つけてしまいます。徹底した保湿と紫外線対策で、新しい皮膚を保護することに専念しましょう。

結論:美肌への投資を成功させるために

メソセラピーは、正しく理解し、賢く活用すれば、肌の悩みを解決する強力なツールとなり得ます。その成功は、施術そのものだけでなく、ご自身の術後ケアへの取り組みにかかっています。本稿で提供した情報を活用し、美肌への投資を最大限に価値あるものにしてください。最後に、重要な3つのポイントを再確認します。

  1. 正しいケアが鍵: 清潔、保湿、紫外線対策、そして生活習慣の注意点を守ることが、効果を最大化し、ダウンタイムを最小化する最善の方法です。
  2. リスクの理解: 華やかな効果だけでなく、一般的な副作用から稀な合併症まで、すべての可能性を理解した上で、治療に臨むことが賢明な判断につながります。
  3. 賢明な選択: 信頼できる医療機関と医師を選び、日本の法的背景を理解した上で安全チェックリストを活用して質問することが、ご自身の健康と投資を守る最良の自己防衛策です。

最終的には、担当の医師と密に連携し、ご自身の肌の状態に合わせた個別のアドバイスを受けることが最も重要です。

免責事項この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. Kutlubay Z, et al. Complications of Mesotherapy: A Systematic Review. J Cosmet Dermatol. 2018. doi: 10.1111/jocd.12857. PMID: 31444843.
  2. 厚生労働省. 美容医療サービス等の自由診療におけるインフォームド・コンセントの取扱い等について. 2024. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001198689.pdf
  3. Lee JH, et al. Skin necrosis after intradermal injection of lyophilized exosome: A case report and a review of the literature. J Cosmet Dermatol. 2024. doi: 10.1111/jocd.16223. PMID: 38327119.
  4. Senet P, et al. [A rare side effect of mesotherapy: Nicolau syndrome]. Ann Dermatol Venereol. 2013. doi: 10.1016/j.annder.2013.04.099. PMID: 24206808.
  5. AGAメソセラピーの副作用とリスク|施術後の注意点も解説. AGAメディカルケアクリニック. 2025年7月24日閲覧. Available from: https://agacare.clinic/column/mesotherapy/mesotherapy-disadvantages/
  6. 薄毛治療におけるメソセラピーとは?効果・回数・注意点などを解説!. CLINIC FOR. 2025年7月24日閲覧. Available from: https://www.clinicfor.life/telemedicine/aga/treatment/a-111/
  7. Mesotherapy Aftercare. Innate Beauty. 2025年7月24日閲覧. Available from: https://innatebeauty.com/mesotherapy-aftercare/
  8. The Best Aftercare Tips for Mesotherapy Patients in Midland, TX. Permian Basin Med Spa. 2025年7月24日閲覧. Available from: https://permianbasinmedspa.com/how-to-maintain-results-after-mesotherapy/
  9. ダーマペンのダウンタイムは何日間?施術後の過ごし方や注意点を紹介. 品川美容外科. 2025年7月24日閲覧. Available from: https://www.shinagawa.com/article/topics/1003
  10. 脂肪溶解注射の術後は腫れるもの?副作用や腫れたときの対処法、ダウンタイムについて解説. 共立美容外科. 2025年7月24日閲覧. Available from: https://www.kyoritsu-biyo.com/column/slim/fat-melting/
  11. AGAメソセラピー(育毛メソセラピー)とは?効果や副作用、治療…. IC CLINIC. 2025年7月24日閲覧. Available from: https://ic-clinic.com/treatment/aga-mesotherapy/
  12. Han X, et al. Mesotherapy-induced foreign body-type granulomas caused by unauthorized use of topical tranexamic acid. J Cosmet Dermatol. 2023. doi: 10.1111/jocd.15725. PMID: 37010214.
  13. 一般社団法人 日本美容外科学会 JSAPS. 2025年7月24日閲覧. Available from: https://www.jsaps.com/
  14. 日本メソセラピー研究会 – JRSM Official Website. 2025年7月24日閲覧. Available from: https://jrsm.gr.jp/
  15. ジュベルックのダウンタイムはどれくらい?施術方法の違いによる差やアフターケアのやり方を解説. W CLINIC. 2025年7月24日閲覧. Available from: https://wclinic-osaka.jp/fukuoka/fukuoka-dr-column/7715/
  16. Post-Treatment Care Guide for PRP and Mesotherapy. Esencan International Hospital. 2025年7月24日閲覧. Available from: https://esencanhastanesi.com.tr/en/post-treatment-care-guide-for-prp-and-mesotherapy-recommendations-for-the-face-neck-and-decollete-areas.html/
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