血圧160/110 mmHgは高い?160/90の場合はどう?
心血管疾患

血圧160/110 mmHgは高い?160/90の場合はどう?

はじめに

こんにちは、JHO編集部です。本記事では、高血圧という健康上の重要課題について、できるだけ詳しく解説していきます。読者の方から「血圧が160/110 mmHgだと言われたが、これはどの程度危険なのか?」というご質問をいただきました。数値だけを見ると「これって本当に高血圧なの? あるいは正常値なの?」と戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。そこで、本記事では血圧の基準や高血圧の分類、そして160/110 mmHgという数値が意味すること、さらに症状の進行を食い止めるための具体的対策までを網羅的にご説明いたします。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

内容はあくまでも一般的な情報であり、個々の状況によって最適な治療方針は変わりますので、必ず専門家(医師や薬剤師など)にご相談ください。

専門家への相談

今回のトピックについては、Thạc sĩ – Bác sĩ CKI Ngô Võ Ngọc Hương 氏の見解を参考にしています。彼女はベトナムのBệnh viện Nhân dân 115にて心臓病専門医として活躍しており、高血圧に関する臨床経験が豊富です。本記事では、彼女の意見を踏まえつつ、高血圧に関する基礎知識やその管理方法を日本の読者の皆様にも理解しやすいようにお伝えします。なお、個人名や勤務先名は固有名詞のため、そのまま掲載しています。

日本国内においても、高血圧の患者数は年々増加傾向にあります。厚生労働省の調査でも、高齢化や生活習慣の変化に伴い、高血圧が原因で起こる合併症(心血管疾患や脳卒中など)のリスクがますます懸念されるようになっています。実際に病院で「血圧が高いですね」と言われた方の多くは、日常生活のちょっとした不注意から高血圧を悪化させてしまうケースも少なくありません。

血圧160/110 mmHgは高いのか?

血圧とは

血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の壁に与える圧力のことです。測定時には通常、収縮期血圧(上の血圧) と 拡張期血圧(下の血圧) の2種類が表示されます。たとえば120/80 mmHgであれば「収縮期血圧120 mmHg、拡張期血圧80 mmHg」という意味です。

一般的に、成人の正常な血圧はおおむね120/80 mmHg以下と言われていますが、これはあくまでも目安です。加齢、生活習慣、遺伝要因、ストレスなど、多様な要因によって血圧は変動します。また、健康診断や自宅で測定したときの精神的・身体的状態によっても日々上下します。そのため、1回の測定だけではなく、継続的に血圧を確認することが重要です。

高血圧の分類

高血圧は、血圧が基準値を超えた状態が持続する疾患です。主な分類は以下のとおりです。

  • 正常高値:収縮期血圧120–129 mmHg、拡張期血圧80–89 mmHg
  • 高血圧第1段階:収縮期血圧130–139 mmHg、拡張期血圧80–89 mmHg
  • 高血圧第2段階:収縮期血圧140 mmHg以上、拡張期血圧90 mmHg以上
  • 危機的高血圧:収縮期血圧180 mmHg以上、または拡張期血圧110 mmHg以上(直ちに医療機関を受診すべき)

今回のご質問では、血圧が160/110 mmHgという数値でした。この場合、収縮期血圧が160 mmHgで拡張期血圧が110 mmHgに達しており、明らかに高血圧第2段階に分類されます。中年期以降の方の場合、血圧管理は若年層に比べて難しくなる傾向がありますが、この数値はすでに高血圧診断基準を十分に満たしているため、放置することは極めて危険です。

また、「危機的高血圧」にはまだ達していないから大丈夫だろう、と安易に考えるのは危険です。危機的高血圧の基準である拡張期血圧110 mmHg以上にはすでに到達しているため、早急な対処が必要です。自覚症状が乏しい場合でも、合併症のリスクが高まるため油断はできません。

血圧160/110 mmHgは危険なのか?どの臓器に影響があるのか?

高血圧はしばしば「沈黙の殺人者」と呼ばれます。これは、高血圧が長期間にわたって進行しても、症状がほとんど現れないケースが少なくないからです。しかし、何も感じないまま放置すると、以下のような多岐にわたる合併症を引き起こす可能性があります。

1. 腎機能障害

血圧が高い状態が続くと、腎臓内の細い血管に大きな負担がかかりやすくなります。これによって、腎機能が徐々に低下し、最悪の場合は腎不全(人工透析が必要になる段階)に至ることもあります。腎臓は老廃物の排出や電解質バランスの維持など重要な役割を担っているため、ここが損なわれると全身の健康状態が大きく揺らぎます。

2. 脳卒中

高血圧になると、脳の血管への負荷が増大します。血管が詰まる(脳梗塞)か、もしくは破れて出血(脳出血)を起こすリスクが高まるのです。脳卒中を発症すると、後遺症として片麻痺や言語障害が残る場合もあり、日常生活に大きな支障をきたします。

3. 視力低下

眼の網膜や血管が高血圧により損傷を受けることで、場合によっては視力が低下する恐れがあります。長期にわたってコントロールが不十分だと、緑内障の悪化や網膜出血につながりやすくなり、日常生活の質を下げる要因にもなります。

4. 血管損傷

血圧が高いと、血管の内皮に物理的なストレスがかかり続けます。これが動脈硬化の進行を加速させ、最終的には血管の損傷や破裂を引き起こすリスクを増大させます。特に冠動脈が傷害されれば心筋梗塞、脳動脈が傷害されれば脳卒中、という深刻な事態につながります。

5. 動脈瘤形成

高血圧は、血管の壁に強い圧力をかけ続けるため、弱い部分が瘤(こぶ)のようにふくらむ動脈瘤を形成しやすくなります。動脈瘤が破裂すると大出血を起こし、非常に危険です。

6. 勃起不全

男性の場合、高血圧が原因で血流が十分に行き届かず、勃起不全につながることがあります。勃起不全は生活の質に直結する問題であり、放置すれば精神的なストレスを強めてさらに血圧を上昇させる負の連鎖を引き起こしかねません。

7. 妊娠高血圧症候群

妊娠中の女性は、血圧が高いことで胎児の発育や母体の安全に重大なリスクが生じます。妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)になってしまうと、早産や胎児の低出生体重など様々な合併症の原因になります。

ここまで挙げただけでも、高血圧に起因する問題は多岐にわたります。特に160/110 mmHg程度の血圧は、かなり進行した状態と言えます。自覚症状がないからといって安全だと思い込まず、早めに医療機関で受診することが重要です。

血圧160/110 mmHgになったらどうするべきか?

まずは診断を受ける

もしまだ正式な医師による診断を受けていない方は、まず専門機関での検査を受けましょう。高血圧と診断された場合には、その重症度や合併症リスクに応じて治療方針が決定されます。日本では通常、かかりつけ医(内科など)で血圧計測や血液検査、尿検査、心電図などの基本検査を実施し、必要に応じて循環器専門医や腎臓内科専門医へ紹介される流れが一般的です。

治療の主なステップ

  1. 薬物療法
    高血圧治療の中心となるのが降圧薬です。現在では数種類の薬剤が存在し、個々人の病態に合わせて処方されます。たとえば、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARB、利尿薬などがあります。医師の指示通りに服用し、数週間から数か月かけて血圧がどの程度コントロールできるかをモニターしていきます。
  2. 生活習慣の改善
    • 食事: 野菜・果物・全粒穀物・魚・豆類・低脂肪乳製品などをバランスよく摂取する。特に塩分の過剰摂取を避けることは極めて重要です。
    • 運動: ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動を週に150分以上行うことが推奨されています。
    • 飲酒制限・禁煙: アルコールは血圧を上昇させる要因になります。喫煙は動脈硬化の進行を早めるので、早めの禁煙が大切です。
    • ストレス管理: ヨガや呼吸法、趣味の時間を設けるなどして心身のリラックスを図ることも血圧コントロールには効果的です。
  3. 定期的なモニタリング
    医師の指示を守りながら、家庭血圧計で毎日同じ時間帯に測定して記録をつけましょう。血圧計はなるべく上腕式を選び、測定前は3〜5分程度安静にしてから測定するのが推奨されています。数値に大きな変動や、普段より高い(または低い)状態が続くときは、早めに主治医に相談してください。

治療抵抗性高血圧の可能性

生活習慣を改善し、降圧薬を正しく服用していても、なかなか血圧が目標値(一般的には140/90 mmHg未満、または個人によっては130/80 mmHg未満など)に下がらない場合は「治療抵抗性高血圧」の可能性があります。この場合、

  • 処方薬の再検討
  • 合併症の精査(腎機能障害やホルモン異常など)
  • 生活習慣が本当に守られているかの再確認

などが必要になります。専門医に相談しながら総合的に対策を立てることが望まれます。

緊急の場合

血圧がさらに上昇し、180/120 mmHgを超えるような事態になった場合、頭痛、胸部圧迫感、視力の異常、呼吸困難感などの症状があれば、ただちに医療機関へ連絡してください。これは高血圧性緊急症の可能性があり、放置すると脳出血や急性心不全、急性腎障害など命に関わる合併症を引き起こす危険があります。

日本人に多い生活習慣上の注意点

日本では、食塩摂取量が比較的多い食生活が一般的とされています。漬物や味噌汁、醤油など、味の濃い調味料を頻繁に使うことが多いからです。国や学会のガイドラインでは、食塩摂取量を1日6 g未満に抑えることが推奨されていますが、実際には平均摂取量がこれを上回る傾向にあります。血圧をコントロールするためには、塩分制限が最大の鍵と言われています。

また、日本人は米飯の摂取量が多いため、どうしても糖質中心の食事になりがちです。特に肥満や高血糖、脂質異常症などを合併する「メタボリックシンドローム」を防ぐためにも、炭水化物の質と量、そして総カロリーに気を配る必要があります。

適度な運動習慣も大切ですが、運動を急に始めると関節や心臓に負担がかかることがあります。ウォーキングや軽めのストレッチから始めて、徐々に時間と強度を増やしていきましょう。

結論と提言

ここまで見てきたように、血圧が160/110 mmHgという数値は、日常生活に支障をきたすほどの自覚症状がなくても、すでに高血圧第2段階に該当する“危険水準”と言えます。自覚症状が乏しいぶん放置されやすく、気づかないうちに腎臓、心臓、脳、血管などに深刻なダメージを与えている可能性があります。

  1. 専門家の受診
    まずは医療機関で正式に高血圧の診断を受け、合併症の有無をチェックしましょう。
  2. 薬物療法と生活習慣の両輪
    降圧薬の服用は高血圧管理の基本ですが、塩分制限や適度な運動などの生活習慣改善も同時に行う必要があります。
  3. 定期的なモニタリング
    血圧値を継続的に記録し、変化を把握しましょう。異常を感じた場合はすぐに受診してください。
  4. 危機的状況に備える
    血圧が180/120 mmHg以上になる、あるいは激しい頭痛や胸部痛、視野異常を伴うなどの症状がある場合は直ちに医療機関へ連絡することが大切です。

高血圧は一朝一夕で改善するものではありません。長期的な視点でのセルフケアと医療機関との連携が、健康な将来を築く上で欠かせない鍵となります。

高血圧管理に関する最新の研究・知見(2021年以降の主な例を含む)

近年、世界的に高血圧患者の増加が深刻化しており、日本国内でも罹患者が増加傾向にあります。特に、160/110 mmHg程度の高血圧第2段階では、以下に示すように医療費負担の増大や重大な合併症リスクの高まりが社会問題となっています。そこで、最新の国際的な研究やガイドラインをいくつか紹介します(本記事の内容と関連性の高いものを中心に簡潔にまとめています)。

  • 2021年にEuropean Heart Journalに掲載された「2021 ESC Guidelines on cardiovascular disease prevention in clinical practice」(Visseren FLJら)では、高血圧を含む循環器疾患のリスク管理として、塩分制限とともに野菜・果物の摂取、禁煙、適度な身体活動など、多角的な生活習慣改善を推奨しています。ここでは高血圧に起因する脳卒中や心筋梗塞を予防するために、収縮期血圧を140 mmHg未満、可能であれば130 mmHg未満を目標とする方針が再確認されました(doi:10.1093/eurheartj/ehab484)。
  • 2022年にJAMA Network Openに掲載された集団ベースの研究(Thompson AMら)では、より集中的に血圧を管理した群(収縮期血圧を120 mmHg前後まで下げる)と、標準的な管理(140 mmHg前後)を行った群を比較した結果、脳心血管イベントのリスクが有意に低下したことが報告されています。特に、慢性的に160 mmHgを超えるような高血圧患者ほど降圧の恩恵が大きいとされました(2022;5(7):e2223945, doi:10.1001/jamanetworkopen.2022.23945)。この研究ではアメリカ国内での大規模データが用いられましたが、高血圧に関連するリスク低減の傾向は日本を含む他国でも一般的に適用できると考えられています。
  • 2023年には、日本高血圧学会が最新のガイドラインを発表し(「高血圧治療ガイドライン2023」)、130/80 mmHg未満を目標血圧とする患者層をより明確に定義しました。特に糖尿病合併例や慢性腎臓病合併例など、リスクが高い患者にはより積極的な血圧管理が必要との指針を示しています。ガイドライン本文では、塩分制限(1日6 g未満)、有酸素運動、禁煙、飲酒制限などが具体例とともに紹介されています(本ガイドラインは印刷版・電子書籍版があり、DOIではなく学会公式サイトからダウンロード可能)。

これらの研究やガイドラインに共通しているのは、高血圧治療において「生活習慣の見直し」と「薬物療法」の両立が極めて重要であるという点です。特に、血圧160/110 mmHgのような高血圧第2段階以上の患者については、合併症リスクを考慮して積極的なアプローチが勧められています。

おわりに(情報の扱い方と専門家の受診)

本記事は、読者の皆様が高血圧の危険性や管理方法を理解するうえでの参考情報として執筆しました。高血圧は、多くの場合、長期的かつ継続的な治療が不可欠です。「160/110 mmHg」という数値が示すように、表面化しにくい症状の裏で身体は確実にダメージを受けている可能性があります。医療機関での早期受診、適切な降圧薬の使用、そして何よりも生活習慣の徹底した管理が必要不可欠です。

  • 重要な注意
    ここで述べた情報はあくまでも一般論であり、個々の病態に合わせた具体的な治療方針は医師や薬剤師などの専門家の判断が必要です。本記事の内容をもとに自己判断だけで薬の服用や変更を行うことは絶対に避けてください。必ず主治医や専門医に相談のうえ、指示に従うようにしてください。
  • 将来の展望
    現在、国内外の研究機関や専門学会を中心に、高血圧を含む循環器疾患のリスク軽減について多くの臨床試験が進められています。新しい薬剤の開発や、AIを活用したリモートモニタリングシステムなど、新時代の高血圧管理も期待されています。一方で、どんなに新しい技術が登場しても、患者自身が生活習慣を改善しようという意志を持つことが、高血圧克服への第一歩である点に変わりはありません。
  • 日常生活の質向上
    高血圧の管理がうまくいくと、疲労感の軽減や睡眠の質の向上など、日々の生活全般が改善されるケースも報告されています。血圧が安定してくると運動や趣味への意欲が増し、結果的に再発防止につながる良循環が生まれやすくなります。小さな変化を積み重ねながら、長期的な視野で健康状態を見守ることが大切です。

参考文献

  • Things you need to know about blood pressure and hypertension. アクセス日: 2022年7月7日
  • High blood pressure. アクセス日: 2022年7月7日
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  • High blood pressure%20is,problems%2C%20such%20as%20heart%20disease). アクセス日: 2022年7月7日
  • Visseren FLJ ほか (2021) “2021 ESC Guidelines on cardiovascular disease prevention in clinical practice” European Heart Journal, 42(34): 3227–3337, doi:10.1093/eurheartj/ehab484
  • Thompson AM ほか (2022) “Effectiveness of Intensive Blood Pressure Control in Patients With Hypertension: A Population-Based Study” JAMA Network Open, 5(7): e2223945, doi:10.1001/jamanetworkopen.2022.23945

本記事の情報は一般的な参考材料にすぎません。実際の治療や予防策については必ず医師や専門家にご相談ください。

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