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ニキビ

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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✦ 結論から言うと

ニキビ(尋常性痤瘡)は毛穴の詰まりとアクネ菌(Cutibacterium acnes)の増殖によって起こる慢性の炎症性疾患で、日本皮膚科学会のガイドラインでは思春期以降に発症する頻度の高い皮膚疾患として位置づけられています[1]。日本臨床皮膚科医会の全国調査では、中学卒業までにおよそ9割以上の人が何らかのニキビを経験すると報告されており、決して珍しい体質の問題ではありません[2]。一方で、痤瘡と紛らわしい酒皶(しゅさ)のように原因や治療方針が異なる疾患もあり、正しい見分け方を知ることが遠回りしない治療につながります[1]。片方の頬に炎症を伴う赤ニキビが6個以上ある中等症以上、または自己流のケアで改善せず瘢痕(ニキビ跡)が残り始めた場合は、早めに皮膚科を受診することが勧められています[1]。

原因 思春期以降の皮脂分泌増加・毛穴の角化異常・毛包内への皮脂の貯留・Cutibacterium acnesの増殖が重なって起こる[1]
主な症状 白ニキビ・黒ニキビ(面皰)、赤ニキビ(炎症性皮疹)、黄ニキビ(膿疱)、重症例では嚢腫・硬結、治った後の瘢痕[1]
受診の目安 片頬の炎症性皮疹が6個以上(中等症以上)、または市販薬で2〜3か月改善しない場合[1]

ニキビ(尋常性痤瘡)とは?定義と有病率

日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」では、尋常性痤瘡は「毛包脂腺系を反応の場とし,面皰(コメド)を初発疹とし,紅色丘疹,膿疱,さらには囊腫,硬結の形成も見られる慢性炎症性疾患で,炎症軽快後に瘢痕を生じることがある」と定義されています[1]。同ガイドラインは、日本国内の受診者は全体の1割程度にとどまる一方で、軽症の段階でも瘢痕を残しうることが示されており、「ニキビは青春のシンボル」として軽視されがちだが皮膚疾患としての認識が十分ではなかったと明記しています[1]。

日本臨床皮膚科医会学校保健委員会が小学6年生から大学生までを対象に行った調査では、平均発症年齢は男性13.3歳・女性12.7歳で、中学3年生での有病率が87.3%と最も高く、思春期を通じた生涯罹患率は95.8%以上と推定されています[2]。同調査では医療機関の受診率は16.2%で、1999年の調査時点の11.8%からは増えているものの、依然として多くの人が自己流のケアだけで済ませている実態も報告されています[2]。

ガイドラインはさらに、軽症であっても早期の治療により瘢痕を予防できるとするデータが示されていることに触れ、痤瘡患者の生活の質(QOL)が低下しやすいこと、中高生ではいじめの原因にもなりうることを課題として挙げています[1]。そのうえで、思春期以降の積極的な治療と炎症軽快後の維持療法が求められると位置づけています[1]。ガイドライン策定の背景には、美容皮膚科領域への関心の高まりに加え、皮膚科診療経験の乏しい医師によっても痤瘡診療が行われる現状があり、エビデンスに基づく標準的な治療法の選択基準を示すことで、痤瘡診療の混乱を未然に防ぎ治療レベルを底上げする狙いがあったと説明されています[1]。原因や悪化要因をさらに詳しく知りたい場合は「ニキビの原因を解説した記事」も参照してください。

ニキビの4つのタイプ
見た目の色でおおよその重症度がわかる
白ニキビ・黒ニキビは「面皰」、赤ニキビ・黄ニキビは「炎症性皮疹」に分類され、ガイドラインは炎症性皮疹の数で重症度を判定する[1]

出典:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」[1]/JHO編集部が作図

出典:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」[1]/日本臨床皮膚科医会学校保健委員会 疫学調査2018[2]

できる仕組み(毛穴の閉塞→アクネ菌→炎症)

日本皮膚科学会のガイドラインは、痤瘡ができる過程を毛包脂腺系(毛穴と皮脂腺のセット)を舞台にした一連の変化として説明しています[1]。まず思春期以降にホルモンの影響で皮脂腺の活動が活発になり、皮脂の分泌が増えます。次に毛包の出口付近(毛包漏斗部)の角化が進みすぎて毛穴の出口が狭くなり、皮脂が毛包内にたまりやすくなります。この段階は臨床的な皮疹がなくても痤瘡の皮疹の周りに存在することが知られており、ガイドラインは「微小面皰」と呼んで継続的な治療(維持療法)が必要な病態と位置づけています[1]。

皮脂がたまった毛穴の中で、皮膚に常在する好脂性・通性嫌気性の細菌であるCutibacterium acnes(旧称Propionibacterium acnes)が増殖すると、菌が起因菌となって炎症性皮疹が引き起こされます[1]。ガイドラインは、抗菌薬の長期使用によって薬剤耐性を持つCutibacterium acnesが出現することを懸念しており、抗菌薬の長期連用を避けることが急務だと述べています[1]。つまり「①皮脂の増加→②毛穴の詰まり(面皰)→③アクネ菌の増殖→④炎症(赤ニキビ・黄ニキビ)」という4段階を経て進行し、炎症が強いほど治った後に瘢痕が残りやすくなります[1]。

この4段階のうち、①と②の時点で治療を始めれば炎症性皮疹に進む前に食い止められるため、ガイドラインは面皰の段階からアダパレンなどの外用薬を使う根拠として、この仕組みを重視しています[1]。逆に、③のアクネ菌の増殖と④の炎症が進んでから治療を始めると、内服抗菌薬の併用が必要になる可能性が高くなり、治療期間も長引きやすくなります[1]。悪化要因としては、思春期のホルモンバランスの変化に加え、生活習慣や皮膚への刺激も関わりうるため、次の見出しで詳しく取り上げる日常ケアと合わせて理解することが重要です。

出典:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」[1]

ニキビの種類(白・黒・赤・黄・嚢腫)と重症度の見分け方

ガイドラインの定義に沿うと、ニキビの皮疹は大きく「面皰」と「炎症性皮疹」の2つに分かれます[1]。面皰は毛穴の出口がふさがった白ニキビ(閉鎖面皰)と、出口が開いて皮脂が酸化して黒く見える黒ニキビ(開放面皰)に分けられます[1]。炎症性皮疹は紅色丘疹(赤ニキビ)と膿疱(黄ニキビ)を含み、直径5mmを超える丘疹は結節と呼ばれます[1]。極めて重症な例では、強い炎症を伴う嚢腫や硬結がみられることもあります[1]。ガイドラインは炎症を伴う嚢腫・硬結について、内服抗菌薬を選択肢の一つとするほか(推奨度C1)、嚢腫内へのステロイド局所注射を推奨しています(推奨度B)[1]。この段階まで進むと自己流のケアだけで改善するのは難しく、瘢痕を残すリスクも高くなるため、早期の受診が特に重要になります[1]。

重症度については、皮膚科専門医有志で構成されたアクネ研究会が作成した重症度判定基準(Hayashi Nら、2008年)が使われており、片頬にみられる炎症性皮疹(赤ニキビ・黄ニキビ)の数で判定します[1]。この基準は日本皮膚科学会のガイドラインでも重症度分類として採用されています[1]。

片頬の炎症性皮疹数による重症度判定基準
重症度 片頬の炎症性皮疹数 目安となる状態
軽症 5個以下 面皰が中心で赤ニキビは少ない
中等症 6個以上20個以下 赤ニキビが目立ち始める・受診の目安
重症 21個以上50個以下 黄ニキビ・結節を伴うことがある
最重症 51個以上 嚢腫・硬結を伴うことがあり瘢痕リスクが高い

出典:アクネ研究会「痤瘡重症度判定基準」(尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023所収)[1]/日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」[1]

白ニキビ・黒ニキビをつぶしてよいかなど、面皰そのものの見分け方や対処法をより詳しく知りたい方は「白ニキビ・稗粒腫の見分け方の記事」、赤ニキビの原因別治療薬は「赤ニキビの治し方の記事」で個別に解説しています。

出典:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」[1]

酒皶(しゅさ)との見分け方

2023年の改訂でガイドライン名称は「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」に変更されました。これは酒皶が痤瘡に似た皮疹を示しながら、原因も治療方針も異なる病気として同じガイドラインの中で扱われるようになったためです[1]。ガイドラインは酒皶を「主として中高年の顔面に生じる原因不明の慢性炎症性疾患で、紅斑と毛細血管拡張、あるいは炎症性丘疹・膿疱を主体とする」病態と説明しています[1]。

項目 尋常性痤瘡(ニキビ) 酒皶(しゅさ)
好発年齢 思春期以降(10〜20代が中心)[2] 主に中高年[1]
面皰(白・黒ニキビ) ある[1] 伴わないのが特徴[1]
主な症状 面皰・赤ニキビ・黄ニキビ・瘢痕[1] 紅斑・毛細血管拡張・丘疹膿疱・鼻瘤[1]
悪化要因 皮脂分泌・毛穴の詰まり[1] 紫外線・気温の急激な変化・刺激物・アルコール[1]

見分けるカギ:面皰(白ニキビ・黒ニキビ)を伴わずに顔の中心が赤くなったり血管が透けて見えたりする場合は、ニキビではなく酒皶の可能性があるとガイドラインは位置づけています[1]。

出典:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」[1]

部位別のニキビ(顔・背中・お尻・頭皮)

ニキビは皮脂腺の発達した部位であればどこにでもできますが、部位によって環境が異なるため対処のポイントも変わります。顔以外では背中は衣類の摩擦や汗による蒸れが影響しやすい部位で、こすれや汗を放置すると悪化しやすいと考えられています[1]。背中ニキビの詳しい原因とセルフケアについては「背中ニキビの記事」で扱っています。お尻は皮脂腺だけでなく座った状態での摩擦や蒸れも関わるため、ニキビに似た毛包炎(細菌性の毛穴の炎症)との区別が必要になる場合があります。頭皮も皮脂腺が多い部位で、シャンプーのすすぎ残しなどが毛穴を詰まらせる一因になり得ます。いずれの部位でも、自己判断で長期間放置せず、広がる・膿む・痛みが強い場合は皮膚科での相談が推奨されます[1]。

顔の中でも、皮脂腺が多いTゾーン(額・鼻)は面皰ができやすく、頬やあご周りは炎症性皮疹に進みやすい傾向があるとされます。あご周りやフェイスラインは、成人女性でホルモンの影響を受けやすい部位としても知られています。ガイドラインは部位ごとに異なる治療推奨を設けているわけではなく、あくまで炎症性皮疹の重症度(片頬の個数)に応じて外用薬・内服薬を選ぶ枠組みを基本としています[1]。そのため、顔以外の部位にニキビに似た皮疹が広がっている場合でも、まずは面皰主体か炎症性皮疹主体かを見極めることが、セルフケアで様子を見るか受診するかの判断材料になります。

出典:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」[1]

治療の選択肢(外用薬・内服薬・保険適用)

日本皮膚科学会のガイドラインは、それぞれの臨床的疑問(CQ)に対して推奨度(A〜D)を付けて治療法を整理しています[1]。外用薬では、クリンダマイシン1%・過酸化ベンゾイル3%配合ゲルについて「炎症性皮疹(中等症から重症)に、クリンダマイシン1%/過酸化ベンゾイル3%配合ゲルを強く推奨する」(推奨度A)と明記されています[1]。同様にアダパレン0.1%/過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲルも「炎症性皮疹(中等症から重症)に…強く推奨する」(推奨度A)とされ、面皰に対してもアダパレン0.1%ゲル・過酸化ベンゾイル2.5%ゲルはそれぞれ単独で推奨度Aとなっています[1]。

主な治療の推奨度(日本皮膚科学会ガイドライン2023より抜粋)
分類 治療法 対象 推奨度
外用 クリンダマイシン1%/過酸化ベンゾイル3%配合ゲル 炎症性皮疹(中等症〜重症) A[1]
外用 アダパレン0.1%/過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲル 炎症性皮疹(中等症〜重症)・面皰 A[1]
外用 過酸化ベンゾイル2.5%ゲル単独 炎症性皮疹(軽症〜中等症)・面皰 A[1]
内服 ドキシサイクリン 炎症性皮疹 A[1]
内服 ミノサイクリン 炎症性皮疹 A*[1]
注射 嚢腫内へのステロイド局所注射 炎症を伴う嚢腫・硬結 B[1]
施術 ケミカルピーリング(グリコール酸等) 炎症性皮疹(保険適用外) C1〜C2[1]

出典:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」CQ1〜CQ29抜粋[1]

ガイドラインの治療アルゴリズムでは、急性炎症期(原則3か月まで)は重症度に応じて外用薬中心から内服抗菌薬の併用まで段階的に選び、炎症が軽快した後は再発予防のための「維持期」の治療(アダパレンや過酸化ベンゾイルの外用継続)に移行する設計になっています[1]。なお、クリンダマイシン外用の長期連用は薬剤耐性アクネ菌を招く可能性があるため、長期の維持療法としては推奨されていません[1]。保険診療で使える薬の値段や自己負担の目安は、下記の医療費の目安欄で確認できます。より詳しい治療の全体像は「治療の完全ガイド記事」で扱っています。

内服薬と外用薬の併用についても、ガイドラインは複数のCQで検討しています。アダパレン0.1%/過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲルと内服抗菌薬の併用は「炎症性皮疹(中等症から重症)に、アダパレン0.1%ゲルと内服抗菌薬の併用を強く推奨する」(推奨度A)とされ[1]、内服抗菌薬についてはドキシサイクリンが推奨度A、ミノサイクリンがA*、ロキシスロマイシンとファロペネムがBとされています[1]。なお、テトラサイクリン系(ドキシサイクリン・ミノサイクリン)は妊娠中・授乳中の方には制限があり、原則として使用できません[1]。妊娠中・授乳中の方、妊娠の可能性がある方は、内服薬を始める前に必ず医師に相談してください。一方で、最重症の炎症性皮疹に対するステロイド内服は推奨度C2にとどまり、ガイドラインは「最重症の炎症性皮疹に、ステロイド内服を推奨しない」としています[1]。また非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の内服・外用についても推奨されていません[1]。施術面では、標準治療が無効または実施できない場合に限り、グリコール酸やサリチル酸マクロゴールを用いたケミカルピーリングが選択肢の一つとされていますが、いずれも保険適用外であることに配慮する必要があるとされています[1]。青色光療法(ブルーライト)は炎症性皮疹(軽症から中等症)に推奨度C2、光線力学療法は機器や薬剤の課題に加え本邦での検討が不十分で保険適用もないことから推奨されていません[1]。

出典:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」[1]

日常ケアと予防(洗顔・保湿・食事・化粧)

ガイドラインは、痤瘡患者に対して「1日2回の洗顔を推奨する」としています(推奨度C1)[1]。洗顔料の選び方や正しい洗い方は「洗顔料の記事」で詳しく扱っています。またスキンケアについては、低刺激性のノンコメドジェニック(毛穴を詰まらせにくい)保湿化粧品の使用が選択肢の一つとして推奨されています(推奨度C1)[1]。女性のQOL(生活の質)改善を目的に、低刺激性の化粧品を選ぶことを前提としたメイクアップ指導も選択肢の一つとされています[1]。

食事については、ガイドラインは「痤瘡患者に特定の食べ物を一律に制限することは有効か」というCQに対し、「一律に制限することはしない」と結論づけています[1]。個々の患者の食事指導については、現時点では明確な食事指導を推奨していないものの、生活習慣と痤瘡経過との関連については十分に検討し対応することが望ましいとされています[1]。食べ物とニキビの関係をより詳しく知りたい場合は「食べ物との関係の記事」を参照してください。面皰(白ニキビ・黒ニキビ)を自分で押し出す「面皰圧出」は、正しい手技であれば選択肢の一つとして推奨されています(推奨度C1)が、無理な自己流の圧出はかえって炎症や瘢痕を招く恐れがあるため注意が必要です[1]。なお、面皰に対する外用抗菌薬の単独使用については「面皰に、外用抗菌薬を推奨しない」(推奨度C2)とされており、面皰にはアダパレンや過酸化ベンゾイルなど抗菌薬以外の外用薬が優先される点にも注意が必要です[1]。日焼け止めなどの紫外線対策も、炎症後の色素沈着を悪化させないという観点から、日常のスキンケアの一部として取り入れておくとよいでしょう。

そのほか、ガイドラインはアゼライン酸の外用(面皰・炎症性皮疹に選択肢の一つ、推奨度C1、保険適用外)、イオウ製剤の外用(推奨度C1)についても選択肢として整理しています[1]。ビタミンC外用については、以前の版では引用文献のエビデンスレベルが高く評価されていましたが、2023年の改訂で「炎症性皮疹、炎症後の紅斑にビタミンC外用を行ってもよいが、推奨はしない」(推奨度C1からC2へ変更)と見直されました[1]。ビタミンCの内服についても推奨度C2で、積極的な推奨はされていません[1]。他の治療が実施できない場合の漢方薬(荊芥連翹湯、清上防風湯、十味敗毒湯など)も選択肢の一つとして位置づけられていますが、いずれも積極的な推奨度ではありません[1]。

出典:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」[1]

ニキビ跡(瘢痕・色素沈着)を残さないために

ガイドラインは、炎症性皮疹やその他の皮疹が軽快した後に生じる皮膚の変化を「瘢痕」として定義しており、陥凹(萎縮性瘢痕・陥凹性瘢痕)、隆起(肥厚性瘢痕とケロイドを含む)、色素沈着からなる症状をまとめてこう呼んでいます[1]。極めて重症な例でみられる強い炎症を伴う嚢腫・硬結は、瘢痕を残しやすい病態として位置づけられています[1]。瘢痕への対応としては、肥厚性瘢痕へのステロイド局所注射(推奨度C1)、萎縮性瘢痕への充填剤注射(推奨度C2、保険適用外)、高濃度グリコール酸を用いたケミカルピーリング(推奨度C2、保険適用外)などが選択肢として挙げられていますが、いずれも「行ってもよいが推奨はしない」という位置づけにとどまり、外科的切除や冷凍凝固療法についても推奨はされていません[1]。

この点から、赤ニキビ・黄ニキビの炎症を長引かせないこと自体が最大の瘢痕予防になるとガイドラインの構成から読み取れます。瘢痕には大きく分けて、皮膚が凹む陥凹性瘢痕(クレーター状のもの)、盛り上がる肥厚性瘢痕・ケロイド、赤み・茶色みとして残る炎症後紅斑・炎症後色素沈着の3タイプがあり、ガイドラインの定義でもこれらは区別して整理されています[1]。炎症後の赤みや色素沈着は時間の経過とともに目立たなくなることが多い一方、陥凹性瘢痕は自然に元の状態へ戻りにくいため、炎症が強い段階での早期治療がより重要になります[1]。すでに瘢痕やニキビ跡ができてしまった場合の科学的な対処法の選び方は「ニキビ跡の記事」で詳しく扱っています。

出典:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」[1]

受診の目安:今すぐ皮膚科へ行くべきか、自宅で様子を見てよいか

目安 状態 対応
今すぐ相談 片頬の炎症性皮疹が21個以上(重症・最重症)、痛みの強い嚢腫・硬結がある[1] 皮膚科の受診を検討[1]
早めに相談 片頬の炎症性皮疹が6個以上(中等症)、市販薬で2〜3か月改善しない[1] 皮膚科での治療開始が推奨される目安[1]
自宅ケアの範囲 片頬の炎症性皮疹が5個以下(軽症)で面皰が中心[1] 1日2回の洗顔・保湿等のセルフケア[1]

ガイドラインが示すアクネ研究会の重症度判定基準(片頬の炎症性皮疹数)は、家庭でもセルフチェックの目安として使いやすい数字です[1]。特に中等症以上になると、外用薬だけでなく内服抗菌薬の併用が強く推奨される段階に入るため、自己判断で市販薬を使い続けるより早期の受診が結果的に治療期間の短縮や瘢痕予防につながります[1]。また、痛みを伴う嚢腫や硬結がある場合、皮膚が急に赤く腫れて発熱を伴う場合など、通常のニキビとは異なる強い炎症のサインがみられるときは、判定基準の個数にかかわらず早めに医療機関へ相談することが望ましいとされています[1]。

出典:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」[1]

日本と米国(AAD)のガイドライン比較

日本皮膚科学会のガイドラインは日本国内での医薬品の承認・保険適用の状況を踏まえて作成されており、本邦で未承認の薬剤については現時点での推奨を採用していないと明記しています[1]。一方、米国皮膚科学会(AAD)が2024年に公表したガイドラインでは、外用の過酸化ベンゾイル・外用レチノイド・外用抗菌薬・経口ドキシサイクリンを強い推奨(Strong recommendation)としているほか、重症または標準治療で改善しない痤瘡に対する経口イソトレチノインについても強い推奨としています[3]。

項目 日本(日本皮膚科学会 2023) 米国(AAD 2024)
過酸化ベンゾイル外用 強く推奨(A)[1] 強く推奨[3]
アダパレン等の外用レチノイド 強く推奨(A)[1] 強く推奨[3]
経口ドキシサイクリン 強く推奨(A)[1] 強く推奨[3]
経口イソトレチノイン ガイドラインの臨床的疑問(CQ)に含まれていない[1] 重症・難治例に強く推奨[3]
低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(低用量ピル) 選択肢の一つとして推奨(C1)[1] 条件付き推奨[3]

日本と米国で最もはっきり異なるのは経口イソトレチノインの扱いです。AADのガイドラインは重症痤瘡や標準治療に反応しない痤瘡に対して経口イソトレチノインを強く推奨していますが[3]、日本皮膚科学会の2023年版ガイドラインには経口イソトレチノインに関する臨床的疑問(CQ)自体が設けられていません[1]。これは日本国内での承認・流通状況の違いを反映したものであり、どちらが医学的に優れているかを判断するものではなく、日本国内で治療にあたる医師も知っておく価値のある国際的な差です。

もう一つの違いとして、AADのガイドラインは外用抗菌薬の単独使用よりも、耐性菌対策の観点から過酸化ベンゾイルとの併用を重視する方針を強調しています[3]。日本皮膚科学会のガイドラインも同様に、クリンダマイシン外用の長期連用による耐性アクネ菌の出現を懸念しており、この点では両国のガイドラインの方向性は一致しています[1]。つまり薬剤耐性対策という大きな方針は共通していながら、重症例で使える薬の選択肢の幅(特に経口イソトレチノインの有無)に差がある、というのが両ガイドラインを読み比べたときの実務的なポイントです。

出典:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」[1]/American Academy of Dermatology「Guidelines of care for the management of acne vulgaris」2024[3]

医療費の目安

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16


よくある質問(FAQ)

白ニキビと黒ニキビは何が違いますか?
どちらも毛穴が皮脂でふさがった「面皰」ですが、毛穴の出口が閉じているものが白ニキビ(閉鎖面皰)、開いて皮脂が酸化し黒く見えるものが黒ニキビ(開放面皰)です[1]。どちらもまだ炎症性皮疹ではなく、日本皮膚科学会のガイドラインではこの段階からアダパレンなどの外用薬で治療することが強く推奨されています[1]。
大人になってからできる「大人ニキビ」は思春期ニキビと違いますか?
ガイドライン上は年齢による病名の区別はなく、いずれも尋常性痤瘡として同じ枠組みで扱われます[1]。ただし成人女性の痤瘡に対しては、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(低用量ピル)などが他の治療で改善しない場合の選択肢の一つとして挙げられています[1]。ただし内服の抗菌薬(テトラサイクリン系)や低用量ピルは、妊娠中・授乳中の方には使用できない、または慎重投与となる場合があるため、必ず医師に相談のうえで判断してください。
ニキビは体質だから治療しても無駄ですか?
いいえ。日本臨床皮膚科医会の調査では思春期を通じてほとんどの人がニキビを経験すると報告されており特別な体質の問題ではなく[2]、日本皮膚科学会のガイドラインには複数の外用薬・内服薬が「強く推奨」される治療として整理されています[1]。
治療を始めてどのくらいで効果が出ますか?
ガイドラインが引用する臨床試験では、外用薬の効果判定に12週間(約3か月)の使用期間が設定されているものが複数あります[1]。ガイドラインも急性炎症期の治療期間を最大3か月をめどとし、その後は再発予防のための維持期の治療に移行する設計としています[1]。
市販薬と皮膚科の処方薬は何が違いますか?
日本皮膚科学会のガイドラインで強く推奨されているクリンダマイシン・過酸化ベンゾイル配合ゲルやアダパレン配合ゲルなど、中等症以上の炎症性皮疹に強い効果を示す薬の多くは医療機関での処方が必要です[1]。片頬の炎症性皮疹が6個を超える中等症以上は、自己判断で市販薬を使い続けるよりも受診が推奨される目安とされています[1]。
ニキビと酒皶(しゅさ)はどう見分けますか?
面皰(白ニキビ・黒ニキビ)を伴わずに顔の中心が赤くなったり血管が透けて見えたりする場合は酒皶の可能性があります[1]。酒皶は主に中高年に生じ、紫外線や気温の変化、刺激物、アルコールなどで悪化しやすい点も痤瘡と異なります[1]。
チョコレートや脂っこい食べ物はニキビの原因になりますか?
日本皮膚科学会のガイドラインは、特定の食べ物を一律に制限することは推奨していません[1]。ただし個々の患者の生活習慣と痤瘡の経過との関連については、十分に検討して対応することが望ましいとされています[1]。
ニキビ跡は自然に消えますか?
色素沈着は時間とともに薄くなることがありますが、陥凹性瘢痕やケロイドなどの瘢痕は自然には元に戻りにくく、ガイドラインでも治療の選択肢はあるものの推奨度の高い治療法は限られています[1]。炎症の強い赤ニキビ・黄ニキビの段階で治療を行い、炎症を長引かせないことが瘢痕予防につながります[1]。
洗顔は1日何回すればよいですか?
日本皮膚科学会のガイドラインは「1日2回の洗顔を推奨する」としています(推奨度C1)[1]。洗いすぎは皮膚のバリア機能を傷める可能性があるため、回数だけでなく洗い方にも注意が必要です。
面皰(白ニキビ・黒ニキビ)は自分でつぶしてもよいですか?
正しい手技による面皰圧出はガイドライン上も選択肢の一つとされています(推奨度C1)が[1]、自己流での無理な圧出はかえって炎症を悪化させ瘢痕につながる恐れがあるため、専門的な処置を受けることが望ましいとされています[1]。
日本と海外でニキビの治療方針は違いますか?
外用の過酸化ベンゾイルやアダパレン、内服のドキシサイクリンなど基本方針は日本と米国(AAD)で共通していますが[1][3]、重症例や標準治療で改善しない場合の経口イソトレチノインについては、AADのガイドラインが強く推奨する一方、日本皮膚科学会の2023年版ガイドラインには関連する臨床的疑問(CQ)自体が設けられていません[1][3]。

ニキビに関する記事一覧

記事一覧 157件

基礎知識・原因 8

症状・見分け方 3

食事・生活 18

治療・薬 69

合併症・リスク 7

その他 52

本記事で扱いきれない個別の薬剤の組み合わせや、施術の細かな適応については、今回参照したガイドライン・調査資料には詳細な記載が見当たりませんでした。気になる症状がある場合は、皮膚科での相談を検討してください。また、市販の外用薬や化粧品の個別の成分表示については、製品ごとに配合量や添加物が異なるため、本記事では踏み込んだ評価を行っていません。同様に、レーザー治療機器の機種ごとの効果差についても、ガイドラインは機種の特性を理解した上での実施を求めるにとどまり、本邦での検討が不十分であるとしており、特定機種を名指しで推奨する記載は見当たりませんでした[1]。

参考文献

  1. 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン策定委員会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」日本皮膚科学会雑誌133(3):407-450, 2023 dermatol.or.jp
  2. 谷崎英昭、林伸和ほか(日本臨床皮膚科医会学校保健委員会)「本邦における尋常性痤瘡のアンケートによる疫学的調査成績2018」日本皮膚科学会雑誌130(8):1811-1819, 2020 jstage.jst.go.jp
  3. American Academy of Dermatology (AAD). “Guidelines of care for the management of acne vulgaris.” J Am Acad Dermatol. 2024. jaad.org