B型肝炎
最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)
✦ 結論から言うと
B型肝炎は、成人になってから感染した場合は多くが自然に治りますが、出産時に母から子へ感染した場合はほとんどがウイルスキャリアとなり、将来の肝硬変・肝がんにつながるおそれがある病気です[4]。日本には持続感染者(キャリア)が110万〜120万人いると推定されており[2]、母子感染は出生後12時間以内のワクチンと免疫グロブリンの投与でほぼ防げます[4]。免疫を抑える治療や抗がん剤治療を受ける人はウイルスが再び増える「再活性化」の危険があり、事前の血液検査が欠かせません[5]。
| 原因 | B型肝炎ウイルス(HBV)の感染。血液・体液を介した感染と、出産時の母子感染(垂直感染)が主なルート[4] |
|---|---|
| 慢性化しやすさ | 乳幼児期の感染は将来キャリア化しやすく、成人期の感染は多くが自然に治る(自然経過は年齢と免疫状態で変わる)[5] |
| 主な症状 | 無症状のことが多いが、倦怠感・食欲不振・黄疸が出ることがある。まれに劇症肝炎に進む[5] |
| 受診の目安 | 妊娠中の検査でB型肝炎と分かった場合、免疫を抑える治療や抗がん剤治療の予定がある場合は、必ず肝臓専門医に相談[5] |
B型肝炎とは?HBVウイルスと感染経路(血液・体液・母子感染)の仕組み
B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)が肝臓の細胞に感染して起こる病気です。厚生労働省によれば、日本国内には持続感染者(キャリア)がB型で110万〜120万人存在すると推定されていますが、感染時期がはっきりしないことや自覚症状がないことが多いため、適切な時期に治療を受ける機会がなく、本人が気づかないうちに肝硬変や肝がんへ移行する感染者が多く存在することが問題となっています[2]。
感染経路は大きく分けて、血液や体液を介した感染(性行為感染・輸血や注射針の共有などの血液感染)と、出産時に母から子へうつる母子感染(垂直感染)の2つです。母子感染では、お母さんの陣痛が始まった時に赤ちゃんへの感染が起こると考えられており、HBe抗原陽性(ウイルス量が多い状態)の母から生まれた赤ちゃんは、そのほとんどがB型肝炎に感染します[4]。感染防止がうまくいかなかった赤ちゃんの血液にはウイルスが含まれており、体液にもウイルスが含まれている場合があるため、B型肝炎に免疫のない人が素手でさわる時には注意が必要とされています[4]。
世界保健機関(WHO)は、感染した年齢によって慢性化のしやすさが大きく異なることを示しています。成人になってからの感染で慢性化するのは5%未満である一方、乳幼児期に感染した場合は約95%が慢性化するとされ、母子感染対策が最重要とされる理由になっています[7]。
成人になってからの感染では、感染後早期に免疫応答が起こり、急性肝炎の後にウイルスが排除されて肝炎が鎮静化するのが一般的とされていますが、日本肝臓学会は、HBVゲノタイプA(欧米型・アジア型/アフリカ型)の増加により、近年は成人期の感染でも慢性肝炎に移行する症例が増えていると指摘しています[5]。B型肝炎ウイルスには複数の遺伝子型(ゲノタイプ)があり、日本国内での分布や臨床的な特徴には違いがあります。
| ゲノタイプ | 地域特異性 | 日本における臨床的特徴 |
|---|---|---|
| A | 欧米型(A2/Ae)・アジア型/アフリカ型(A1/Aa) | わが国において若年者間での水平感染に関与する。急性肝炎後にキャリア化しやすい[5] |
| B | アジア型(Ba)・日本型(B1/Bj) | 日本型Bjはほとんどが無症候性キャリアとしてその一生を終え、肝細胞がんの発症頻度は非常に低い。プレコアに変異の入った変異株に感染すると劇症肝炎の要因となりうる[5] |
| C | 東南アジア(Cs)・東アジア(Ce) | 肝細胞がんの発症リスクが高く、従来型インターフェロン治療に対して治療抵抗性である[5] |
出典:日本肝臓学会「B型肝炎治療ガイドライン(第4版・簡易版)」(2022年6月)[5]
急性B型肝炎と慢性B型肝炎(キャリア):何が違うのか
B型肝炎は「感染してすぐ症状が出て治るタイプ」と「症状がないまま長期間ウイルスを持ち続けるタイプ」があり、この違いは主に感染した年齢と免疫の反応で決まります。日本肝臓学会のガイドラインでは、持続感染者の自然経過を免疫寛容期・免疫応答期・低増殖期・寛解期の4期に分類しています[5]。
| 区分 | 感染した時期 | 経過の特徴 |
|---|---|---|
| 急性肝炎 | 主に成人になってからの感染 | 感染後早期に免疫応答が起こり、急性肝炎の後にウイルスが排除されることが多い。多くは自然軽快が期待できるため、原則として治療は不要とされる[5] |
| 免疫寛容期(無症候性キャリア) | 乳幼児期の感染 | HBe抗原陽性かつHBV DNAの増殖は活発だが、ALT値は正常で肝炎の活動性がほとんどない状態が長期間持続する[5] |
| 免疫応答期 | 成人に達した後 | HBVに対する免疫応答が活発化。HBe抗原の消失・HBe抗体の出現(セロコンバージョン)に伴いHBV DNAの増殖が抑制されると肝炎は鎮静化するが、長期化するとHBe抗原陽性慢性肝炎として肝病変が進展する[5] |
| 低増殖期(非活動性キャリア) | セロコンバージョン後 | 多くは肝炎が鎮静化するが、10〜20%の症例ではHBe抗原陰性の状態でHBVが再増殖し肝炎が再燃する(HBe抗原陰性慢性肝炎)[5] |
出典:日本肝臓学会「B型肝炎治療ガイドライン(第4版・簡易版)」(2022年6月)[5]
見分けるカギ:急性肝炎は数週間〜数か月で症状が現れて治るのに対し、キャリアは何年も自覚症状がないまま経過するため、血液検査(HBs抗原・HBe抗原・HBV DNA量)でしか区別できません。
急性B型肝炎は、感染症法に基づく届出の対象ですが、国立感染症研究所(現:国立健康危機管理研究機構)は、届出による報告数は年間165〜510例と極めて少ない一方で、実際の感染者数は年間1万〜1万1,000人程度と推定されており、報告数と実際の感染者数には大きな乖離があると指摘しています[1]。これは、急性B型肝炎の多くが無症状または軽症で経過し、医療機関を受診しないまま気づかれずに終わるケースが少なくないことを示しています。
症状:無症状が多い・倦怠感・黄疸、そして危険サインの劇症肝炎
B型肝炎は多くの場合、自覚症状に乏しく感染に気づきにくい病気です。厚生労働省は、肝炎ウイルスは感染しても自覚症状に乏しいことから感染に気付きにくく、適切な治療を行わないまま放置すると慢性化し、肝硬変や肝がんといったより重篤な病態に進行するおそれがあると注意を呼びかけています[2]。症状が出る場合は、倦怠感、食欲不振、吐き気、皮膚や白目が黄色くなる黄疸などがみられます。
まれに、急激に肝臓の機能が悪化する「劇症肝炎(急性肝不全)」に進むことがあります。日本肝臓学会のガイドラインでは、B型急性肝不全では急性感染によるものかキャリアの急性増悪によるものかにかかわらず、可及的速やかに核酸アナログ投与などの対応を検討すべきとされ、急性肝不全への悪化が危惧される症例では、急性肝炎ではプロトロンビン時間が40%以下になる前、キャリアの急性増悪では60%以下になる前を目安として、速やかに専門的な対応を行うことが示されています[5]。ウイルス量が多いHBs抗原陽性例では、核酸アナログの予防投与中であっても劇症肝炎による死亡例が報告されており、油断できない病態です[5]。
強い倦怠感・持続する嘔吐・黄疸の急な悪化・意識のもうろうなどがみられた場合は自己判断せず、速やかに肝臓専門医のいる医療機関を受診してください。
検査:HBs抗原・HBs抗体・HBe抗原・HBV-DNAで何が分かるか
B型肝炎の診断と経過観察には、複数の血液検査(HBVマーカー)が組み合わせて使われます。日本肝臓学会は、HBV DNA量を測定する際にはリアルタイムPCR法を使用することが望ましいとし、慢性B型肝炎の抗ウイルス治療ではHBV DNA量だけでなくHBs抗原量も定期的に測定し、治療の長期目標はHBs抗原の消失に置くべきとしています[5]。
| 検査項目 | 陽性が意味すること | 臨床的な位置づけ |
|---|---|---|
| HBs抗原 | 現在HBVに感染している(キャリアを含む) | 免疫抑制・化学療法前のスクリーニングで最初に確認する項目[5] |
| HBs抗体 | 過去の感染またはワクチン接種による免疫の獲得 | 単独陽性(HBs抗原・HBc抗体陰性)でも再活性化が報告されており、ワクチン接種歴が明らかな場合を除き注意が必要[5] |
| HBc抗体 | 過去にHBVに感染したことがある(既往感染) | HBs抗原陰性かつHBc抗体またはHBs抗体陽性は「既往感染者」に分類され、再活性化のリスクを評価する対象[5] |
| HBe抗原・HBe抗体 | ウイルスの増殖が活発かどうかの指標 | HBe抗原陽性からHBe抗体陽性への変化(セロコンバージョン)は病期の転換点[5] |
| HBV DNA量 | 血中のウイルス量 | 治療対象の判定基準の一つ。慢性肝炎の治療対象はALT31U/L以上かつHBV DNA量2,000 IU/mL(3.3 LogIU/mL)以上[5] |
出典:日本肝臓学会「B型肝炎治療ガイドライン(第4版・簡易版)」(2022年6月)[5]
検査はどこで受けられるでしょうか。厚生労働省は、全ての国民が少なくとも一回は肝炎ウイルス検査を受検する必要があると考えられるとしており、保健所および各自治体が委託する医療機関での無料検査、市町村の健康増進事業による検診、また肝炎医療ナビゲーションシステム(肝ナビ)で検索できる医療機関などで検査を受けることができます[2]。
治療:核酸アナログ・インターフェロン・治療の目標
B型慢性肝炎の抗ウイルス治療では、HBV DNA量だけでなくHBs抗原量も定期的に測定し、治療の長期目標はHBs抗原の消失に置くべきとされています[5]。自然経過の中でも、HBe抗原セロコンバージョンを経て一部の症例ではHBs抗原が消失しHBs抗体が出現して臨床的寛解に至ることがあり、これが治療でも目指すべき方向性の一つとされています[5]。ウイルスを完全に体内から排除することは現在の治療では難しく、ウイルスの活動を長期にわたって抑え込むことが現実的な目標です。治療薬は大きく2種類あります。
| 治療薬 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 核酸アナログ製剤(ETV・TDF・TAFなど) | 強力なHBV DNA増殖抑制作用があり、ほとんどの症例で抗ウイルス作用を発揮して肝炎を鎮静化させる。経口薬で治療が簡便、短期的な副作用も少ない[5] | 投与を中止すると再燃率が高いため長期継続投与が必要。長期投与で耐性変異株が出現する可能性がある[5] |
| ペグインターフェロン(Peg-IFN) | 核酸アナログとは異なる作用機序を持つ治療薬。両者の特性を理解した上で個々の病態に応じた方針を決める必要がある[5] | 核酸アナログとの単純な優劣比較はできないとされる[5] |
出典:日本肝臓学会「B型肝炎治療ガイドライン(第4版・簡易版)」(2022年6月)[5]
肝硬変では、代償性・非代償性にかかわらず、初回治療から核酸アナログが第一選択薬となり、中止は推奨されていません[5]。特に非代償性肝硬変では、ペグインターフェロンは禁忌とされる一方、核酸アナログは投与が可能とされています(ただし乳酸アシドーシスの報告があるため、注意深い経過観察が必要です)[5]。核酸アナログ製剤の投与中止後、HBV DNA量2,000 IU/mL(3.3 LogIU/mL)未満を維持することが、治療を再開せず経過観察を続ける上での指標の一つとされています[5]。B型肝硬変では、非代償性肝硬変となった段階で肝移植を治療選択肢として検討することもあるとされています[5]。
核酸アナログの選択では、耐性ウイルスが出現しやすいラミブジン(LAM)は長期投与での耐性出現率が高いため、現在は第一選択薬ではありません。エンテカビル(ETV)、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(TDF)、テノホビル アラフェナミドフマル酸塩(TAF)は、いずれも核酸アナログ製剤未使用例に対する成績が良好で耐性ウイルスの出現率も低いため、現在核酸アナログ製剤を使用する場合の第一選択薬とされています[5]。小児のB型肝炎患者に対する抗ウイルス治療では、ペグインターフェロンα-2aの48週間投与、もしくはETV・TDFの内服が推奨されています[5]。挙児希望者や妊娠中の女性に核酸アナログを投与する場合には、催奇形性のリスクを考慮した薬剤選択と専門医との相談が必要です[5]。
肝がんの発症予防の観点も治療方針に関わります。国立がん研究センターは、肝炎ウイルスが長期間体内に留まることにより、肝細胞で炎症と再生が繰り返されるうちに遺伝子の突然変異が積み重なり、慢性肝炎から肝硬変を経て肝がんになることが多く、肝がんの主な原因はB型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)への持続感染といわれていると説明しています[6]。
⚠ 核酸アナログによる治療を自己判断で中止すると、ウイルスが再増殖して急激な肝炎の悪化や劇症化を招くおそれがあります。核酸アナログの投与開始・中止は、必ず肝臓専門医と相談してください[5]。
B型肝炎ウイルスへの持続感染はキャリアの肝がんリスクを高める最大の要因ですが、それ以外の生活習慣もリスクに影響します。国立がん研究センターは、多量飲酒によるアルコール性肝障害、メタボリックシンドロームに起因する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に加えて、男性であること、高齢であること、喫煙、アフラトキシン(カビから発生する毒素の一種)への曝露なども肝がんのリスク因子として知られていると説明しています[6]。B型肝炎のキャリアであっても、飲酒を控え、禁煙し、体重を管理することは、肝臓への負担を減らすうえで意味があります。
予防:母子感染予防(出生時ワクチン+HBIG)とウイルス再活性化への警戒
◆ 母子感染予防 —— 出生後12時間以内が勝負
お母さんの陣痛が始まった時に赤ちゃんへの感染が起こると考えられているため、出産後できるだけ早い時期に赤ちゃんへ感染防止策をとる必要があります。生後12時間以内に感染防止策を始めることが望ましいとの答申が日本小児科学会、日本産婦人科学会、日本小児栄養消化器肝臓学会から出されています[4]。
出産直後にワクチンだけを打っても赤ちゃんへの感染は防ぐことができず、B型肝炎免疫グロブリン(HBIG)の注射が必須で、生後12時間以内に行うことが推奨されています。同時にB型肝炎ワクチンの接種も行います(以前の生後2か月からの開始ではありません)[4]。HBIGの接種を1回、HBワクチン接種を3回行うと、90%以上の赤ちゃんでB型肝炎の感染は防止できるとされ、防止できたかどうかは出産9〜12か月後に血液検査でHBs抗原の有無を確認して判定します[4](以前はHBe抗原陽性の母親の場合HBIGを2回接種していましたが、現在の対策では1回になっています[4])。
一方、母がHBキャリアでない赤ちゃんに対しては、2016年10月からB型肝炎ワクチンが定期接種となっており、対象は0歳児です。標準的な接種時期は1回目が生後2か月、2回目が生後3か月、3回目が生後7〜8か月で、1回あたり0.25mLを皮下に接種します[3]。世界保健機関(WHO)も、すべての赤ちゃんが出生後できるだけ早く(24時間以内に)B型肝炎ワクチンを接種すべきだとしており、これは乳幼児期の感染で慢性化率が約95%に達するという事実に基づく国際的な合意です[7]。
日本肝臓学会のガイドラインは、母子感染予防のもう一つの柱として、母親自身への核酸アナログ投与にも触れています。高HBV量(5.3 log IU/mL、200,000 IU/mL以上)の妊婦においては、出生直後からのHBIGとHBワクチン投与を完遂しても相対的に母子感染リスクが高いことから、妊娠28週から核酸アナログの予防投与を少なくとも出産時まで行うことが推奨されています[5]。この場合、薬剤耐性株の出現率が低く、妊娠中の投与において子宮内胎児死亡率・早産児発生率・新生児死亡率の上昇が報告されていないテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(TDF)が推奨されています[5]。核酸アナログを妊娠中に投与するかどうかは、必ず産婦人科医・肝臓専門医と相談の上で判断してください。
◆ ウイルス再活性化への警戒 —— 免疫抑制療法・化学療法の前に必ず検査を
HBV感染患者において、免疫抑制療法や化学療法によりHBVが再び増殖することを「HBV再活性化」と呼びます。HBV再活性化は、キャリアからの再活性化と、既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体またはHBs抗体陽性)からの再活性化(「de novo B型肝炎」と呼ばれる)に分類されます[5]。再活性化のリスクは、慢性活動性肝炎・非活動性キャリア・既往感染者の順に高いとされ、ウイルスの感染状態と免疫抑制の程度によってリスクの大きさが変わります[5]。HBV再活性化による肝炎は重症化しやすいだけでなく、肝炎の発症により原疾患の治療を困難にさせるため、発症そのものを阻止することが最も重要とされています[5]。
そのため、免疫抑制・化学療法を始める前には、HBs抗原検査、HBc抗体およびHBs抗体検査、HBV DNA定量検査を行い、HBV再活性化予防が必要な症例、要経過観察症例の絞り込みを行うことが推奨されています[5]。治療開始後は、リツキシマブなどを用いる強力な化学療法や造血幹細胞移植では治療中および治療終了後少なくとも12か月間、月1回のHBV DNAモニタリングが、通常の化学療法では1〜3か月ごとのモニタリングが、副腎皮質ステロイド薬などによる免疫抑制療法では開始後6か月間は月1回、以降は3か月ごとのモニタリングが目安とされています[5]。HBV DNA量が20 IU/mL(1.3 LogIU/mL)以上になった時点で、速やかに核酸アナログによる再活性化予防目的の投与を開始することが推奨されており、耐性ウイルスが生じにくく治療効果の高いエンテカビル(ETV)、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(TDF)、テノホビル アラフェナミドフマル酸塩(TAF)が挙げられています[5]。
⚠ 血液悪性疾患に対する強力な化学療法中あるいは終了後に、HBV再活性化により劇症化する症例も報告されています[5]。免疫を抑える薬や抗がん剤による治療を予定している方、リウマチなどの自己免疫疾患の治療を受ける方は、治療開始前に必ずHBs抗原・HBc抗体・HBs抗体の検査を受け、肝臓専門医に相談してください。すべての症例において、核酸アナログの投与開始ならびに終了にあたっても肝臓専門医にコンサルトすることが望ましいとされています[5]。
日常生活での注意点:周囲への配慮と定期検査
B型肝炎ウイルスは日常の会話・食事の共有・咳やくしゃみでは感染しません。感染防止がうまくいかなかった赤ちゃんの血液や体液にはウイルスが含まれている場合があるため、B型肝炎に免疫のない人(HBs抗体陰性)が血液や体液に素手でさわる時には注意が必要で、手に傷がある場合は絆創膏などで手当てをしておくことが勧められています[4]。B型肝炎に感染した人と接する機会の多い人は、HBワクチンを接種することが勧められており、免疫のない人でもワクチンを打つことで感染を防ぐことができます[4]。
キャリアの人は自覚症状がなくても、肝炎の活動性やHBV DNA量は年月とともに変化することがあるため、治療対象にならない場合でも定期的な血液検査・画像検査による経過観察が重要です。特に、ALTが軽度あるいは間欠的に上昇する症例、40歳以上でHBV DNA量が多い症例、血小板数が15万未満の症例、肝細胞がんの家族歴がある症例は発がんリスクが高いとされ、肝生検や非侵襲的な肝線維化評価などの追加検査が望ましいとされています[5]。慢性肝炎からHBs抗原が消失した例でも、肝細胞がん発症のリスクがあることを認識しておく必要があります[5]。
治療対象とならない場合でも、経過観察を基本とする症例のうち発がんリスクが高いと判断される場合は、定期的な画像検査による肝細胞がんのサーベイランスが必要とされています[5]。自分がどの病期にあり、どのくらいの頻度で検査を受けるべきかは、自己判断せず主治医・肝臓専門医の指示に従ってください。妊娠・出産の予定がある方、免疫を抑える治療や抗がん剤治療を控えている方は、その都度あらかじめ主治医にB型肝炎の既往・感染状況を伝えておくことが、母子感染予防や再活性化予防の出発点になります。
就職時の健康診断や人間ドックでB型肝炎に関する項目が含まれることがありますが、判定結果の見方が分からず不安になる人も少なくありません。HBs抗原・HBs抗体・HBc抗体のいずれが陽性かによって「現在感染しているキャリア」なのか「過去に感染して治った既往感染者」なのか「ワクチンで免疫がついた状態」なのかが変わるため、結果の意味が分からない場合は自己判断せず、結果を持って医療機関に相談することが勧められます[5]。
世界規模で見るB型肝炎:WHOの数字と日本の対策の関係
日本の対策は、世界保健機関(WHO)が示す世界規模のB型肝炎の実態を踏まえて設計されています。WHOによれば、2024年時点で世界には慢性B型肝炎に感染している人が2億4,000万人おり、新規感染は年間90万人と推定されています[7]。2024年のB型肝炎による死亡者数は推定110万人で、その多くは肝硬変と肝細胞がんによるものとされています[7]。また、5歳未満の子どもにおける慢性HBV感染の有病率は2024年時点で0.6%と推定されています[7]。
| 項目 | 日本(各学会・厚生労働省) | WHO(国際基準) |
|---|---|---|
| 出生後ワクチン開始の目安 | 母がキャリアの場合、生後12時間以内にHBIGとワクチンを同時接種[4] | すべての新生児に出生後24時間以内のワクチン接種を推奨[7] |
| 慢性化率(感染時期別) | 乳幼児期の感染は将来キャリア化しやすいと位置づけ[5] | 乳幼児期の感染で約95%、成人期の感染で5%未満が慢性化[7] |
| 持続感染者数の規模 | 国内の持続感染者はB型で110万〜120万人[2] | 世界の慢性感染者は2億4,000万人(2024年)[7] |
出典:厚生労働省「肝炎とは」[2]/肝炎情報センター「B型肝炎の母子感染について」[4]/日本肝臓学会「B型肝炎治療ガイドライン」[5]/WHO「Hepatitis B」Fact sheet[7]
日本の「生後12時間以内にHBIG+ワクチン」という対策は、WHOが示す「出生後24時間以内のワクチン接種」という国際基準よりもさらに早いタイミングでの対応を求めている点が特徴です。これは、HBe抗原陽性の母から生まれた赤ちゃんはそのほとんどが感染するという日本国内のデータを踏まえた、より踏み込んだ対策と言えます[4]。
医療費の目安
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
よくある質問(FAQ)
B型肝炎は完治しますか?
B型肝炎はどうやってうつりますか?
妊娠中にB型肝炎キャリアと分かったら、赤ちゃんへの感染は防げますか?
核酸アナログはいつまで飲み続ける必要がありますか?
抗がん剤治療の前にB型肝炎の検査が必要と言われました。なぜですか?
B型肝炎ウイルスに感染すると必ず肝硬変や肝がんになりますか?
症状がないのに検査を受ける意味はありますか?
B型肝炎ワクチンはいつ受けますか?
劇症肝炎とはどんな状態ですか?
妊娠中にウイルス量が多いと言われました。ワクチンとHBIGだけでは不十分なのでしょうか?
肝炎ウイルス検査はどこで受けられますか?
B型肝炎に関する記事一覧
記事一覧 9件
検査・数値 4
治療・薬 1
その他 4
個々の検査値の基準範囲や薬剤の詳細な投与量は、使用する検査機関・製剤・個人の病態によって異なる場合があります。今回参照した資料には、遺伝子型(ジェノタイプ)ごとの詳細な地域別罹患率や、成人のワクチン任意接種における具体的な費用負担の全国一律の基準までは記載が見当たりませんでした。個々の状況に応じた判断は、必ず肝臓専門医・かかりつけ医にご相談ください。妊娠中の検査で初めてB型肝炎キャリアと分かった場合や、これから免疫を抑える治療・抗がん剤治療を受ける場合も、不安なまま一人で抱え込まず、産婦人科・肝臓内科・血液内科など関係する診療科の間で情報を共有しながら進めることが、母子感染予防にもウイルス再活性化の予防にも役立ちます。かかりつけ医が肝臓の専門でない場合は、肝臓専門医への紹介を相談することも選択肢の一つです。
参考文献
- 国立感染症研究所(現:国立健康危機管理研究機構)「わが国における急性B型肝炎の現状」IASR id-info.jihs.go.jp
- 厚生労働省「肝炎とは」 mhlw.go.jp
- 厚生労働省「B型肝炎ワクチン」 mhlw.go.jp
- 肝炎情報センター「B型肝炎の母子感染について」 kanen.jihs.go.jp
- 日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会編「B型肝炎治療ガイドライン(第4版・簡易版)」2022年6月 jsh.or.jp
- 国立がん研究センター「肝がんの原因・症状について」 ncc.go.jp
- World Health Organization「Hepatitis B」Fact sheet, 2024 who.int
