ステロイド性骨粗鬆症とは?喘息治療中に知りたい骨折リスク
この記事でわかること
目次
喘息治療で使うステロイド薬、特に経口ステロイド薬を3ヶ月以上使い続けると、骨がもろくなる「ステロイド性骨粗鬆症」を発症するリスクが上がります。[1]日本骨代謝学会のガイドラインでは、既存骨折の有無・年齢・ステロイド投与量・骨密度の4項目でリスクを点数化し、合計3点以上で薬物治療の対象になるとしています[1]。大田健氏のレビュー(日本内科学会雑誌)が紹介するJGLによれば、吸入ステロイド薬(ICS)は経口薬に比べて全身に届く量がはるかに少なく、喘息治療の基本薬として推奨されていますが[2]、高用量を長期間使う場合は自己判断で中止せず主治医に相談してください。
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要点まとめ
- 日本骨代謝学会の資料によれば、ステロイド性骨粗鬆症は続発性骨粗鬆症の中で最も頻度の高い原因とされています[1]。
- 日本骨代謝学会のガイドラインでは、骨形成の抑制(骨芽細胞の増殖抑制・アポトーシス促進)と骨吸収の亢進(破骨細胞の活性化)が同時に起こる点が特徴だとされています[1]。
- 日本骨代謝学会のガイドラインでは、既存骨折・65歳以上・PSL換算7.5mg/日以上・骨密度YAM70%未満のいずれか1つだけでも薬物治療開始の基準に達します[1]。
- 大田健氏のレビュー(日本内科学会雑誌)が紹介するJGLが示すように、吸入ステロイド薬(ICS)は経口ステロイド薬に比べて全身への影響が少ない量で使われますが、骨密度への影響について確立した数値基準はありません[2]。
- 日本骨代謝学会のガイドラインによれば、ステロイド治療を始めてから数ヶ月以内に骨密度が急速に低下するとされ、早期からの評価が重要です[1]。
編集方針:JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会・査読論文と照合して作成。最終確認は人の目。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点の資料に基づく)。
🔧 自己チェック:あなたのステロイド性骨粗鬆症リスク要因
| 該当する項目 | 意味 |
|---|---|
| 既存の脆弱性骨折がある | それだけで薬物治療の対象になりうる、最大級の危険因子です[1] |
| 65歳以上である | 単独で薬物治療開始の基準に達する項目の一つです[1] |
| プレドニゾロン換算7.5mg/日以上を服用中 | 同じく単独で基準に達する量です[1] |
| 腰椎骨密度がYAM70%未満 | 原発性骨粗鬆症と同じ基準で、単独で治療対象になります[1] |
上記4項目はいずれか1つに該当するだけでもガイドラインの薬物治療開始基準(スコア3点以上)に達すると整理されています[1]。ただし実際の点数化には他の要因の組み合わせも関わるため、最終判断は主治医が行います。
ステロイド性骨粗鬆症とは?ステロイドが骨を弱くする仕組み
ステロイド性骨粗鬆症とは、喘息や関節リウマチなどの治療で使われる糖質コルチコイド(グルココルチコイド)によって骨がもろくなり、骨折しやすくなる状態を指します。骨粗鬆症は原因によって、加齢や閉経が主因の「原発性骨粗鬆症」と、薬剤や病気が原因の「続発性骨粗鬆症」に分けられますが、日本骨代謝学会理事長へのインタビュー記事では、ステロイド性骨粗鬆症はステロイドの副作用として最も頻度が高い疾患であると同時に、続発性骨粗鬆症の代表とされています[4]。同記事によれば、国内における正確な患者数は把握されていないものの、約200万人と推定されており、2004年に初めてガイドラインが発表されました[4]。PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の資料によれば、米国では骨粗鬆症患者2,000万人のうち20%がステロイド性であり、ステロイドを長期使用している患者の約半数に骨折が生じると推定されています[1]。骨粗しょう症全般の危険性や合併症、予防策についても、あわせて知っておくと理解が深まります。
骨は生涯を通じて「骨形成(新しい骨を作る)」と「骨吸収(古い骨を壊す)」を繰り返しながら一定の骨量を保っています。この2つの働きのバランスが、ステロイドによって同時に崩れることがステロイド性骨粗鬆症の中心的な仕組みだと考えられています。日本骨代謝学会のガイドラインが示すように、具体的には、骨を作る細胞である骨芽細胞や骨細胞の増殖が抑制され、アポトーシス(細胞の自然死)が促進されて骨形成が抑えられる一方、骨を壊す細胞である破骨細胞の働きが活性化して骨吸収が高まるという、二重の負荷がかかる点が特徴です[1]。日本内分泌学会の解説でも、ステロイド性骨粗鬆症は骨密度が保たれていても原発性骨粗鬆症に比べて骨折しやすく、骨密度の低下よりも骨強度そのものの低下に伴う骨折リスクの増加が特徴だと説明されています[3]。同ガイドラインでは、この機序により、ステロイド性骨粗鬆症では骨密度の低下が始まる前の段階からすでに骨折リスクが上昇し始めるとされ、骨密度の数値だけでは危険性を測りきれない場合があると指摘されています[1]。
ステロイド治療を受けているかどうかにかかわらず、基礎疾患そのものがすでに骨粗鬆症のリスクを高めている場合もあります。関節リウマチのように、疾患そのものが独立した骨折危険因子になりうる基礎疾患を持つ人は、ステロイド治療を受けていない場合でも一般人口より骨粗鬆症の頻度が高い傾向があるとされます。ただし、閉経後の関節リウマチ患者と閉経後女性全体との有病率を具体的な数値で比較した記載は、今回参照したTier 0/1資料には見当たりませんでした。喘息そのものが骨代謝に直接影響するという確立した知見も今回参照した資料には見当たりませんでしたが、喘息治療で用いられるステロイド薬の種類・量・期間が骨への影響を左右する主な要因だと考えられます。
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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
ステロイド性骨粗鬆症の危険因子スコア — 日本骨代謝学会のガイドライン
日本骨代謝学会のガイドライン改訂委員会は、国内の複数のコホート研究を解析し、既存骨折・年齢・ステロイド投与量・骨密度という4つの危険因子を組み合わせたスコア方式を策定しました。日本骨代謝学会のガイドライン改訂委員会によれば、これは世界的に見ても類を見ない方式だとされています[1]。同委員会は、骨折歴やこれらの因子を点数化し、合計スコアが3点以上になった時点で薬物治療の対象とする、という考え方を示しています[1]。
| 危険因子 | ガイドラインでの扱い | 備考 |
|---|---|---|
| 既存の脆弱性骨折 | 2年間の縦断研究の解析で、新規骨折の最大の危険因子であることが明らかにされています | 単独で薬物治療開始基準に達する[1] |
| 骨密度 | 骨折がない場合、YAM(若年成人平均値)80%未満を危険因子とする | 原発性骨粗鬆症のカットオフ値YAM70%より10%高い水準[1] |
| ステロイド投与量 | 骨折がなく骨密度もYAM80%以上の場合、1日平均PSL換算5mg以上が危険因子 | 投与量が多いほどスコア・骨折リスクが上がるとされる[1] |
| 年齢 | 65歳以上は骨折リスクが高い項目としてガイドラインに盛り込まれている | 50歳未満はスコア0だが、骨折リスクがゼロという意味ではない[1] |
出典:PMDA「重篤副作用疾患別対応マニュアル 骨粗鬆症」[1]/日本内分泌学会「ステロイド性骨粗鬆症|一般の皆様へ」[3]
日本内分泌学会の解説では、この4因子スコア方式が二段階の基準として整理されています。ステロイドを3ヶ月以上服用または服用予定の患者では、①既存骨折がある、②65歳以上、③プレドニン換算1日7.5mg以上服用、④骨密度がYAM70%未満——のいずれか1つに該当すれば薬物治療をすべきとされます[3]。さらに、50歳以上65歳未満・プレドニン換算1日5mg以上7.5mg未満・骨密度YAM70%以上80%未満のいずれか2項目を満たす場合も薬物治療が勧められるとされています[3]。つまり骨密度測定ができない状況でも、年齢や服用量、骨折歴だけで治療開始の判断ができるように設計されている点が、このガイドラインの実務的な特徴だと言えます。また、ステロイド治療の開始からまだ3ヶ月経っていなくても、今後も継続使用が見込まれる場合は、ステロイド治療と同時に一次予防を始めるという考え方も示されています[1]。日本内分泌学会の解説では、プレドニゾロン換算7.5mg/日を服用している場合、脊椎骨折の相対危険度は5倍になると報告されています[3]。
| 基準の段階 | 該当条件 | 判定 |
|---|---|---|
| 基準①(いずれか1つで治療対象) | 既存骨折あり/65歳以上/PSL換算7.5mg/日以上/骨密度YAM70%未満 | 薬物治療をすべき[3] |
| 基準②(いずれか2つ該当で治療対象) | 50〜65歳未満/PSL換算5〜7.5mg/日未満/骨密度YAM70〜80%未満 | 薬物治療が勧められる[3] |
出典:日本内分泌学会「ステロイド性骨粗鬆症|一般の皆様へ」[3]
骨折リスクの立ち上がりについては、ステロイド治療を開始してから3ヶ月時点でかなり高まり、3〜6ヶ月の使用でピークを迎えると報告されています[4]。一般に高齢者ほど骨折リスクの立ち上がりが早いと経験的に指摘されており、若年者ではステロイドを中止すると骨密度が回復しやすい一方、高齢者では回復しにくいとも指摘されています。ただし年齢層ごとの回復速度を具体的な数値で比較した記載は、今回参照したTier 0/1資料には見当たりませんでした。
受診の目安 — すぐに受診が必要なサイン
- ステロイド治療中に、思い当たる強い衝撃がないのに背中や腰に急な痛みが出た(脊椎の圧迫骨折の可能性)[1]
- 身長が以前より明らかに縮んだ、背中が丸くなってきたと感じる
- 転倒後に手首・股関節・腕の付け根などに強い痛みと腫れがある
- ステロイドを長期間使用しているのに骨密度検査を一度も受けたことがない
これらに当てはまる場合は、自己判断でステロイドの量を変えず、まず処方医または整形外科・骨粗鬆症外来に相談することが勧められます。
吸入ステロイド薬(ICS)は骨粗鬆症の原因になるのか
喘息治療の中心的な薬である吸入ステロイド薬(ICS)について、大田健氏によるレビュー(日本内科学会雑誌)が紹介する日本アレルギー学会の喘息予防・管理ガイドライン(JGL)では、治療ステップ1の軽症段階から低用量のICSを推奨しており、ICSの投与量は低用量・中用量・高用量に分類されています[2]。同レビューによれば、ステップが上がるにつれてICSの用量も中〜高用量へと引き上げられ、それでもコントロールが不十分な場合に他の薬剤を追加する設計になっています[2]。
一方で経口ステロイド薬については、同レビューが紹介するJGLの内容として「経口ステロイド薬は短期間の間欠的投与を原則とする。短期間の間欠投与でもコントロールが得られない場合は必要最小量を維持量とする」という考え方が示されています[2]。つまり喘息治療の設計そのものが、全身への影響が大きい経口ステロイドの長期連用を避け、局所作用が中心のICSを基本薬とする方向で組み立てられていると言えます。ガイドラインの記載からは、ICSを高用量へ増量することが副作用などの理由で難しいと医師が判断した場合に中用量ICSへの薬剤併用を選ぶ、という運用も読み取れ、ICSの用量設定において副作用面への配慮がなされていることがうかがえます[2]。
ただし、大田健氏のレビュー(日本内科学会雑誌)で紹介されているJGLの内容を確認した限り、ICSの使用量と骨密度低下の関係を具体的な数値基準で示した記載は見当たりませんでした[2]。一般に医療現場では、ICSは経口ステロイドに比べて全身に到達する量が少なく、通常量の使用であれば骨密度への影響は限定的だと考えられていますが、これはあくまで一般的な理解であり、明確な基準は確立されていません。高用量のICSを長期間使用する場合や、他の全身性ステロイド治療を併用している場合には、骨密度への影響について見解が分かれており、現時点で確定的な結論はありません。ステロイド性骨粗鬆症の管理ガイドライン自体も、経口・注射などの全身性ステロイドを主な対象として設計されたものであり[1]、ICS単独使用者への当てはめ方については主治医の判断に委ねられる部分が大きいと考えられます。
ステロイド性骨粗鬆症のリスクが高い人の特徴
これまでの内容を踏まえると、次のような人はステロイド性骨粗鬆症のリスクが相対的に高いと整理できます。
- 経口・注射などの全身性ステロイドを高用量(目安としてPSL換算7.5mg/日以上)で使用している人[1]
- すでに脆弱性骨折の既往がある人[1]
- 65歳以上の高齢者[1]
- 閉経後の女性(もともと原発性骨粗鬆症のリスクも重なりやすい)
- ステロイド治療の期間が長期にわたる、または今後も長期使用が見込まれる人[1]
- 関節リウマチなど、疾患自体が独立した骨折危険因子とされる基礎疾患を持つ人[1]
特に、喘息のコントロールが悪く急性増悪(発作)を繰り返して経口ステロイドの短期集中投与(バースト療法)を頻回に受けている人は、1回あたりは短期間でも、生涯を通じた累積投与量が増えていく可能性があると考えられます。ステロイド治療開始後の骨量減少は治療初期に急激に進み、その後は年単位でみると緩やかな減少率に落ち着くと考えられていますが[4]、具体的な減少率(%)を明示した記載は今回参照したTier 0/1資料には見当たりませんでした。頻回の短期集中投与を繰り返す場合の累積的な影響についても、具体的な検証結果は見当たりませんでした。日本内分泌学会の解説でも、骨量の減少はステロイド内服後3〜6ヶ月以内に急激に進行し、特に椎体や大腿骨頸部で進行が顕著で、閉経後骨粗鬆症に比べて進行が極めて早いと説明されています[3]。日本内分泌学会の解説では、骨量のみならず骨の微細構造そのものも低下するため、骨量の低下がまだ軽度な段階でも、日常生活の中でのちょっとした動作で骨折してしまう「脆弱性骨折」を起こしやすくなるとされています[3]。同学会の解説では、BMI(体格指数)が低い、疾患活動性が高い、高齢、長期臥床、身体機能の障害、閉経、他の臓器の障害などの要因が重なると、骨粗鬆化がさらに進みやすくなるとも指摘されています[3]。
喘息の患者に当てはめて考えると、重症喘息でステロイドの全身投与(内服・注射)が繰り返し必要になっている人ほど、これらの促進因子が重なりやすい可能性があります。例えば、重症の喘息発作で長期の臥床を経験した場合や、ステロイドの副作用として知られる体重の変化がBMIに影響した場合などは、単純な服用量の合計だけでなく、その他の因子も含めて主治医と一緒に評価することが望ましいと考えられます。逆に言えば、同じ量のステロイドを使っていても、年齢や活動量、他の病気の有無によって実際の骨折リスクには個人差があるということでもあり、「自分は数値上は基準未満だから大丈夫」と単純に判断せず、総合的な評価を受けることが重要です。
日本骨代謝学会ガイドラインとFRAX(世界の骨折リスク評価)の違い
骨折リスクを評価する国際的な手法として、世界保健機関(WHO)の骨折リスク評価ツールであるFRAXが知られていますが、日本骨代謝学会のガイドライン改訂委員会は、ステロイド性骨粗鬆症の薬物治療介入基準としてFRAXを採用しないことを決定しています[4]。日本骨代謝学会のガイドライン改訂委員会が挙げる理由は、次の4点です[4]。
| FRAXを採用しなかった理由 | 内容 |
|---|---|
| ①対象年齢の制約 | 閉経前女性や40歳未満の男性が評価対象に含まれない |
| ②投与量・期間への非対応 | 副腎皮質ステロイドの投与量や投与期間の違いに対応していない |
| ③既往歴のみの反映 | FRAXの算出には副腎皮質ステロイド療法の既往の有無しか含まれない |
| ④評価対象の骨折の違い | FRAXは主に非椎体骨折と臨床椎体骨折の予測に有用だが、ステロイド性骨粗鬆症では自覚症状のない形態椎体骨折も重要とされる |
出典:日本骨代謝学会理事長インタビュー「ステロイド性骨粗鬆症の新ガイドラインを作成」日経メディカル[4]
この違いは、日本のガイドラインが独自に国内コホートを解析して策定した経緯によるものであり、海外のFRAXベースの考え方と、どちらが優れているかを単純に比較できるものではないと考えられます。国によって評価ツールが異なるという事実そのものが、骨折リスク評価の分野でまだ国際的なコンセンサスが完全には確立していないことを示していると言えるでしょう。日本で診療を受ける場合は、海外文献でFRAXの数値だけを調べて自己判断するのではなく、国内の4因子スコア方式に基づいて主治医が評価している内容を確認することが実務的には重要だと考えられます。
なお、米国リウマチ学会(ACR)は2010年に独自の管理と治療に関する勧告を公表しており、その中で骨折リスクの評価方法の1つとしてFRAXを追加しています[4]。日本骨代謝学会の2014年度改訂版ガイドラインは、これら海外の動きも踏まえたうえで、日本人のコホート研究に基づく独自のスコア方式を採用する形で策定されたという経緯があります[4]。海外と日本でアプローチの立て付けそのものが異なるため、海外の記事や論文で見た基準値をそのまま日本の診療に当てはめることは避け、日本国内の基準で評価してもらうことが望ましいと考えられます。
薬物治療 — 推奨される薬とその位置づけ
日本骨代謝学会のガイドラインでは、推奨度A(第一選択薬)としてアレンドロネートとリセドロネートの2つのビスホスホネート製剤のみが位置づけられています[7]。同ガイドラインでは、推奨度Bは、第一選択薬が禁忌である場合や早期に不耐用となった場合、あるいは第一選択薬の効果が不十分な場合に使う代替薬という位置づけです[1]。推奨度Cは、日本骨代謝学会のガイドラインにおいて現時点で推奨するだけの有効性データが不足している薬剤とされています[1]。日本内分泌学会の解説では、アレンドロネート・リセドロネートが何らかの理由で使用できない場合の代替薬として、遺伝子組み換えテリパラチド、イバンドロネート、アルファカルシドール、カルシトリオールが挙げられています[3]。
ビスホスホネート製剤は破骨細胞をターゲットにした骨吸収抑制薬で、国内外のガイドラインで第一選択薬とされています。PMDAの資料でも、アレンドロネート・リセドロネートは無作為化比較対照試験において腰椎および大腿骨近位部の骨密度減少を抑制し、椎体骨折を有意に抑制することが明らかとなっていると整理されています[1]。PMDAの添付文書では、服薬にあたって朝起床時に水約180mLとともに服用し、服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けるといった服薬規定が示されています[5]。これらの規定は、薬の吸収率(バイオアベイラビリティ)が低いことによるものとされています[5]。
ステロイド性骨粗鬆症と原発性骨粗鬆症の違い
「骨粗鬆症」とひとくくりにされがちですが、原因によって評価基準や対応の考え方が異なります。両者の違いを整理すると次のようになります。
| 比較項目 | 原発性骨粗鬆症 | ステロイド性骨粗鬆症(続発性) |
|---|---|---|
| 主な原因 | 加齢・閉経に伴う自然経過 | 糖質コルチコイド(ステロイド)治療 |
| 国内推定患者数 | 複数の疫学調査があるが数値は資料により異なる | 正確な患者数は不明だが約200万人と推定される[4] |
| 骨密度の危険因子カットオフ | YAM70%未満 | 骨折がない場合はYAM80%未満が危険因子とされる[1] |
| 骨量減少の速度 | 年1〜2%程度とされることが多い | 治療開始直後の数ヶ月で急激に進行し、その後は緩やかになる[3][4] |
| 骨折リスクとの関係 | 骨密度低下とほぼ並行して骨折リスクが上昇 | 骨密度が下がりきる前から骨折リスクが上昇し始めるとされる[1] |
出典:日本骨代謝学会理事長インタビュー「ステロイド性骨粗鬆症の新ガイドラインを作成」[4]/日本内分泌学会「ステロイド性骨粗鬆症|一般の皆様へ」[3]
骨密度検査(DXA)はどのくらいの頻度で受けるべきか
ステロイド治療を長期間受けている場合、骨密度の推移を追うことが管理の基本になります。ガイドライン改訂の背景では、ステロイド処方医によって骨密度測定が必ずしも行われていない実態が過去のガイドラインの遵守率の低さ(20%台)につながっていたと指摘されており[1]、そのため骨密度測定ができない場合でもスコア計算だけで治療開始を判断できる設計になっています[1]。この経緯からも、可能な限り早期に骨密度検査(DXA法による腰椎・大腿骨近位部の測定)を受け、その後も定期的に測定を継続することが望ましいと考えられます。日本骨代謝学会のガイドラインが示すようにステロイド開始直後は骨量減少が最も急激な時期であるため[1]、治療開始時点でのベースライン測定と、その後の経過観察が特に重要になると考えられます。PMDAの資料では、スコアが3点未満で経過観察となる場合でも、6ヶ月〜1年ごとの胸腰椎単純X線撮影と骨密度測定が推奨されています[1]。日本内分泌学会の解説では、ステロイド性骨粗鬆症の評価方法として、腰痛や身長低下といった脆弱性骨折を疑わせる経過についての問診、胸腰椎のX線検査、そして腰椎・大腿骨頸部の骨密度測定が挙げられています[3]。特に身長が以前より縮んでいないか、背中が丸くなっていないかという変化は、無症状の圧迫骨折(いつの間にか骨折)を早期に見つけるための手がかりになると考えられます。骨密度の測定部位についても、日本骨代謝学会の資料によれば関節リウマチの患者では腰椎よりも大腿骨近位部の骨密度低下が顕著だという報告があるため[1]、腰椎だけでなく大腿骨側もあわせて評価することが望ましいと考えられます。骨密度が軽度に下がり始めた段階(骨量減少)についても知っておくと、早期の変化に気づきやすくなります。
骨密度検査そのものだけでなく、検査を受けるタイミングの逃しやすさも実務上の課題として指摘されています。ガイドライン改訂委員会の分析によれば、過去のガイドラインの遵守率が20%台にとどまっていた背景には、ステロイドを処方する医師の専門科によっては骨密度測定の設備がその場になかったり、骨粗鬆症の管理が診療科をまたいで後回しになりやすいといった構造的な事情があったと考えられます[1]。喘息の場合も、日々の治療の主眼は気道の炎症コントロールに置かれがちで、骨の健康状態の確認が後回しになりやすい可能性があります。ステロイドを長期に使う可能性がある治療方針が決まった時点で、呼吸器内科・アレルギー科の主治医から整形外科や骨代謝の専門外来へ紹介してもらう、あるいは自分から「骨密度を測ってほしい」と伝えてみることも、見落としを防ぐ現実的な工夫の一つだと考えられます。
喘息治療におけるICS単独使用時の骨密度モニタリングの必要性については、今回参照したTier 0/1資料には明確な記載が見当たりませんでした。この点は主治医と相談のうえ、個々の状況に応じて判断することが推奨されます。
最終更新日:2026年7月17日。本記事は公的機関・学会の公開資料をもとに編集部が作成しています。内容に誤りや古い情報にお気づきの場合は、お手数ですがお問い合わせフォームよりご指摘いただけますと幸いです。順次確認し訂正いたします。
日常生活でできる骨を守る工夫
| 場面 | 心がけたいこと |
|---|---|
| 食事 | カルシウムを意識的に摂る(乳製品・小魚・緑黄色野菜など)。ビタミンDを含む食品(魚類・きのこ類)もあわせて摂る[6] |
| 日光 | ビタミンDは日光を浴びることで体内でも作られるため、無理のない範囲での外出も一助になると考えられます |
| 運動 | 体重がかかる運動(ウォーキングなど)は骨に適度な刺激を与えると考えられていますが、既存骨折がある場合は転倒・骨折のリスクを避けるため主治医に相談してから始めることが望ましいです |
| 禁煙・節酒 | 喫煙および過度の飲酒は骨密度に悪影響を及ぼす生活習慣要因として一般に知られています |
| 転倒予防 | 自宅の段差・滑りやすい床・照明の暗さなどを見直すことは、骨折そのものを避けるうえで骨密度の改善と同じくらい重要だと考えられます |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準」では、成人のカルシウム推奨量やビタミンDの目安量が年代別・性別に示されており[6]、日々の食事量の目安を確認する参考になります。あわせて、骨粗しょう症のよくある5つの症状と効果的な予防もあわせてご覧ください。これらの生活習慣の工夫は薬物治療の代わりになるものではなく、あくまで薬物治療と並行して行う補助的な対策と位置づけられます。すでにガイドラインの基準に該当している場合は、生活習慣の改善だけで様子を見るのではなく、早めに専門医に相談することが勧められます[1]。日本内分泌学会の解説でも、日常生活での注意点として、喫煙や過剰なアルコール摂取といった骨粗鬆症の危険因子となる生活習慣の改善、薬剤についての正しい理解、ビタミンDやカルシウムの補充、普段からの運動や歩行習慣、荷重運動、転倒予防、脊椎骨折後のコルセット着用などが挙げられています[3]。
特に転倒予防は見落とされがちですが、骨密度がある程度保たれていても、転倒そのものを防げなければ骨折を避けることはできません。日本内分泌学会の解説にあるように、ステロイド性骨粗鬆症では骨密度の低下よりも骨強度の低下が骨折リスクに直結しやすいとされているため[3]、「骨密度の数値がそこまで悪くないから大丈夫」と考えず、日々の生活の中での転倒リスクそのものを減らす視点が重要になります。具体的には、廊下や浴室に手すりを設置する、滑りやすいスリッパを避ける、夜間にトイレへ行くときのために足元灯を用意するといった工夫が考えられます。また、喘息の症状が悪化して息切れが強い時期は、ふらつきによる転倒リスクも上がりやすいため、体調が不安定な時期はより一層の注意が必要だと考えられます。
🖨️ 受診時に伝えたいことチェックリスト(印刷してお使いください)
- 喘息治療で使っているステロイド薬の種類(吸入・内服・注射)と量、使用期間
- これまでに経口ステロイドの短期集中投与(発作時のバースト療法)を受けた回数とおおよその時期
- 骨折の既往があるか(いつ、どこを)
- 身長が若い頃から縮んでいないか
- 骨密度検査(DXA)を受けたことがあるか、あればいつの結果か
- 閉経の有無・時期(女性の場合)
- 喫煙・飲酒の習慣
- 今回の受診で確認したいこと(例:骨密度検査は必要か、ビスホスホネート製剤は開始すべきか)
よくある質問
吸入ステロイド薬だけを使っている場合でも骨粗鬆症の検査は必要ですか?
ステロイド性骨粗鬆症は薬をやめれば治りますか?
ステロイド性骨粗鬆症の薬物治療は何から始めますか?
骨密度がまだ正常範囲でも治療を始めることはありますか?
FRAXで骨折リスクを計算すればステロイド性骨粗鬆症も評価できますか?
喘息の発作でステロイドの点滴や内服を短期間だけ使った場合もリスクになりますか?
関節リウマチも持っている場合、骨粗鬆症のリスクはさらに上がりますか?
ビスホスホネート製剤にはどんな服薬上の注意がありますか?
妊娠を考えている場合、ステロイド性骨粗鬆症の薬は使えますか?
参考文献
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「重篤副作用疾患別対応マニュアル 骨粗鬆症」(平成21年5月/平成30年6月改定)https://www.pmda.go.jp/files/000224759.pdf ↩
- 大田健「日本と世界のガイドライン」日本内科学会雑誌102巻6号(2013年)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/6/102_1333/_pdf ↩
- 日本内分泌学会「ステロイド性骨粗鬆症|一般の皆様へ」https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=52 ↩
- 日本骨代謝学会理事長 田中良哉氏インタビュー「ステロイド性骨粗鬆症の新ガイドラインを作成」日経メディカル(産業医科大学第1内科学講座 掲載資料、2014年4月18日)https://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/1nai/pdf/4pt_osteoporosis_steroid.pdf ↩
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)添付文書「ボナロン錠35mg(アレンドロン酸ナトリウム水和物)」https://www.pmda.go.jp/drugs/2006/P200600034/63015300_21800AMZ10364_B100_1.pdf ↩
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf ↩
- 鹿児島市医師会病院薬剤部「くすりひとくちメモ:ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン2014年改訂版」鹿児島市医報(2015年)http://city.kagoshima.med.or.jp/kasiihp/busyo/yakuzaibu/kusurihitokuchi/pdf/H27-07.pdf ↩
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