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女性の健康 27分で読める 194回

【甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症】違い・共通点・受診の目安をわかりやすく解説

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「最近ドキドキして汗が止まらない」「逆に一日中だるくて寒がりになった」――こうした体の変化が続くと、「更年期かな?」「ストレスのせい?」と思ってしまいがちです。しかし、その背景に甲状腺ホルモンの異常(甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症)が隠れていることも少なくありません1,11。

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甲状腺は、喉ぼとけの下にある蝶のような形をした小さな臓器です。ここから分泌される甲状腺ホルモンは、全身の代謝や体温、心臓の働き、気分、妊娠・出産など、私たちの生活に欠かせない役割を担っています1,10,11。このホルモンが多すぎる状態が「甲状腺機能亢進症(いわゆる『甲状腺の働きすぎ』)」、逆に少なすぎる状態が「甲状腺機能低下症(『甲状腺の働き不足』)」です。

どちらの病気も、放置すると心臓病や妊娠・出産への影響、意識障害などにつながるおそれがありますが、適切な診断と治療を受ければ、多くの方が日常生活を問題なく送ることができます1,3,4,12。

この記事では、日本の専門学会や公的機関の資料、日本および海外のレビュー論文などをもとに、甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症の違いと共通点、原因、症状、検査・治療、日常生活の工夫、受診のタイミングについて、できるだけわかりやすく解説します。「自分や家族が当てはまるかも?」と感じている方が、次の一歩を考えやすくなるような内容を目指しています。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事の内容は、以下のような一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。

  • 日本の公的機関・学会:日本内分泌学会「一般の皆様へ」ページ、厚生労働省関連資料、協会けんぽの啓発資料、日本甲状腺学会の診断ガイドラインなどを中心に参照しています1,2,3,5,10,11,12。
  • 国内医薬品医療機器総合機構(PMDA)などの資料:薬剤による甲状腺機能異常に関する患者向け文書を参考に、安全性情報を補足しています4。
  • 海外の査読付き論文・レビュー:甲状腺機能低下症に関する総説論文や大規模レビュー(JAMA、Nature Reviews Disease Primers など)を参考に、国際的な知見もあわせて整理しています6,7。

AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。

私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。

要点まとめ

  • 甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンが「多すぎる」状態で、動悸、体重減少、汗かき、手の震え、イライラなど体が常にフル回転しているような症状が出やすくなります2,5,11,12。
  • 甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンが「足りない」状態で、だるさ、寒がり、体重増加、むくみ、便秘、抑うつ気分など、体も心もスローペースになるような症状が目立ちます1,3,4,6,7。
  • どちらも多くは自己免疫性の病気(バセドウ病・橋本病)が原因で、日本では特に女性に多くみられます1,3,5,10,12。
  • 血液検査(TSH、FT4、FT3など)で比較的正確に診断でき、多くの人は飲み薬を中心とした治療でコントロールが可能です2,3,6,9,10,11。
  • 甲状腺機能亢進症の治療中や甲状腺炎の経過で、一時的に「亢進」から「低下」、あるいはその逆に移行することもあります。そのため、定期的な血液検査でのフォローが重要です2,4,11,13。
  • 放置すると心臓病、骨粗しょう症、妊娠・出産への影響、意識障害など重大な合併症につながることがあるため、「なんとなく不調」が長く続く場合には、早めの受診が安心につながります1,3,5,6,7,10,11。

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第1部:甲状腺と甲状腺ホルモンの基本、日常生活との関わり

最初に、甲状腺がどこにあり、どのような働きをしているのかを理解しておくと、甲状腺機能亢進症・低下症の症状の意味が見えやすくなります。「なんとなく体調が悪い」状態との違いを整理するうえでも重要なステップです。

1.1. 甲状腺と甲状腺ホルモンの役割

甲状腺は、喉ぼとけのすぐ下、気管の前面にある、縦数センチ・横数センチの蝶が羽を広げたような形の臓器です。重さはおおよそ20〜30gと、とても小さいのですが、ここから分泌される甲状腺ホルモン(T4・T3)は、全身の細胞の新陳代謝をコントロールしています1,10,11。

甲状腺ホルモンは、心臓の拍動、体温、エネルギー消費、腸の動き、皮膚や髪の状態、気分や集中力、コレステロールの代謝など、体のあらゆる機能に関わります1,6,7,10。簡単にいうと、「体全体のエンジンの回転数を調整するホルモン」とイメージすると分かりやすいかもしれません。

甲状腺ホルモンの量は、脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって細かく調節されています。血液中の甲状腺ホルモンが不足するとTSHが増え、逆に多すぎるとTSHが減る、というフィードバック機構が働いています2,3,10,11。

1.2. 甲状腺機能亢進症と低下症の「方向性の違い」

甲状腺ホルモンのバランスが崩れると、次のような2つの方向に症状が現れます。

  • 甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう):甲状腺ホルモンが多すぎる状態。代謝が過剰になり、動悸、汗かき、体重減少、手の震え、不眠、イライラ、下痢などが出やすくなります2,5,11,12。
  • 甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう):甲状腺ホルモンが不足している状態。代謝が落ちて、だるさ、寒がり、体重増加、むくみ、便秘、皮膚の乾燥、抑うつ気分などが出やすくなります1,3,4,6,7。

どちらも「なんとなく調子が悪い」「疲れが取れない」といった漠然とした症状から始まることも多く、更年期障害やうつ病、過労などと混同されやすい点が共通しています1,3,6,7。

1.3. 悪化させてしまうNG習慣と日常で気づけるサイン

甲状腺の病気そのものは生活習慣だけで起こるわけではありませんが、次のような行動があると症状に気づきにくく、発見が遅れることがあります。

  • 「忙しいから仕方ない」と不調を放置する:長時間労働や家事・育児の負担が続くと、疲れや動悸、眠れないといった症状をすべてストレスのせいだと考えてしまいがちです。
  • 自己判断でサプリやダイエットを繰り返す:過度なダイエットや過剰なヨウ素摂取(昆布やサプリ等)は、甲状腺の働きに影響することがあります10。
  • 市販薬やエナジードリンクで「ごまかす」:眠気を覚ますドリンクやカフェインの大量摂取、自己判断での薬の飲み方は、症状を隠してしまうことがあります。

一方で、次のようなサインが複数当てはまる場合は、甲状腺を疑ってみる価値があります。

表1:甲状腺の不調を疑うセルフチェック例
こんな症状・状況はありませんか? 考えられる背景
ダイエットしていないのに急に体重が減ってきた/脈が速くドキドキする 甲状腺機能亢進症による代謝亢進、心血管系への負担 など2,5,11,12
よく眠っているのに日中ずっとだるく、寒がりで体重が増えてきた 甲状腺機能低下症による代謝低下、むくみ など1,3,4,6,7
以前より髪や肌が乾燥しやすくなり、便秘や気分の落ち込みが続いている 甲状腺機能低下症や更年期、うつ病などとの鑑別が必要な状態1,3,7,8
首の前側が腫れていると言われた、鏡で見ると喉のあたりがふくらんでいる 甲状腺腫(びまん性、結節性)など甲状腺疾患全般の可能性3,5,10,12

第2部:甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症の原因 — 自己免疫・ホルモンバランス・ライフステージ

生活習慣を見直しても改善しない場合、背景には自己免疫の異常やホルモンバランスの変化、薬剤の影響、妊娠・出産など、身体の内側の問題が隠れていることがあります。

2.1. 主な原因:バセドウ病と橋本病

日本でよくみられる甲状腺機能の異常には、次のような自己免疫性の病気が関わっています。

  • バセドウ病(Graves病):自己抗体が甲状腺を刺激し続けることで、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。甲状腺機能亢進症の代表的な原因で、動悸、体重減少、汗かき、手の震え、眼球突出などが特徴です2,5,11,12。
  • 慢性甲状腺炎(橋本病):自己免疫反応によって甲状腺が徐々に傷つき、長期的に甲状腺ホルモンが不足していく病気です。甲状腺機能低下症の主な原因で、特に女性や中高年に多くみられます1,3,4,10,12。

どちらも「自分の免疫が自分の甲状腺を攻撃してしまう」自己免疫疾患であり、遺伝的な素因や環境要因(感染、ストレス、喫煙など)が複雑に関わっていると考えられています5,6,7,10,12。

2.2. その他の原因:薬剤、妊娠、甲状腺炎など

自己免疫疾患以外にも、甲状腺機能異常を引き起こす要因があります。

  • 薬剤による影響:抗不整脈薬のアミオダロンやリチウム、一部の免疫チェックポイント阻害薬などは、甲状腺機能亢進症・低下症のいずれも引き起こすことがあると報告されています4,6,7。
  • 破壊性甲状腺炎:ウイルス感染や出産後に起こることがあり、炎症によって甲状腺の中のホルモンが一時的に漏れ出すことで一時的な機能亢進症がまず現れ、その後甲状腺ホルモンが枯渇して機能低下症へと移行する経過をとる場合があります4,11,13。
  • 妊娠・出産と甲状腺:妊娠中は甲状腺ホルモンやTSHの基準値が変化し、出産後には「産後甲状腺炎」が起こることがあります。妊娠前から甲状腺疾患がある場合は、産科と連携した管理が重要です1,3,6,7。
  • ヨウ素の過不足:甲状腺ホルモンの原料であるヨウ素は、海藻類に多く含まれます。日本では一般的にヨウ素は十分に摂取されていますが、特定の薬剤やサプリで極端に過剰になると、甲状腺機能異常を引き起こすことがあります10。

2.3. 性別・年齢とリスク:特に女性に多い

甲状腺の病気は、男女どちらにも起こりますが、女性に多いことが知られています。橋本病やバセドウ病は、女性に特に多く、妊娠・出産、更年期といったライフステージの変化とも重なりやすいため、「更年期の不調」と見分けがつきにくいこともあります1,3,5,10,12。

また、高齢者では症状が目立ちにくい場合もあり、単に「年のせい」と思われて見逃されることもあります。例えば、甲状腺機能低下症の高齢者は、典型的な寒がりや体重増加よりも、物忘れや抑うつ気分、心不全の悪化などが前面に出ることがあります3,6,7。

第3部:甲状腺機能亢進症・低下症の症状・診断・「両方になる」ケース

ここでは、甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症の具体的な症状の違いと共通点、診断の流れ、「一人の人が亢進症と低下症の両方を経験する」ケースについて解説します。

3.1. 症状の違いと共通点

両者の症状は、「代謝の方向性」が正反対になるため、次のような特徴があります。

表2:甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症の代表的な症状
項目 甲状腺機能亢進症(ホルモンが多すぎる) 甲状腺機能低下症(ホルモンが足りない)
全身状態 疲れやすいが落ち着きがなく、じっとしていられない感じ 全体的にだるく、常にスローモーションのような感覚
体重 食欲があるのに体重が減る 食事量が変わらないのに体重が増える、むくむ
心臓・脈 動悸、脈が速い、不整脈、息切れ2,5,11,12 脈が遅くなる、心不全の悪化につながることも1,3,6,7
体温・汗 暑がり、汗かき、寝汗が多い 寒がり、冷え性、体温が低め
消化器 軟便・下痢が続きやすい 便秘がちになる1,3,11,14
精神・神経 イライラ、不安、眠れない、落ち着かない 抑うつ気分、無気力、物忘れ、集中力低下1,3,6,8
皮膚・髪 汗が多く、皮膚が湿り気を帯びることも 皮膚の乾燥、脱毛、かさつき1,3
その他 手指の震え、眼球突出(月単位で進行)など5,11,12 声がかすれる、顔や手足のむくみ、眠気が強い1,3,4

一方で、いずれの病気でも「なんとなく疲れやすい」「性欲が落ちている」「筋力が落ちた」といった共通の症状もあり、自分で違いを見分けるのは簡単ではありません1,3,6,7,10。

3.2. 診断の流れ:血液検査が中心

甲状腺機能亢進症・低下症が疑われる場合、診断の基本は血液検査です。

  • TSH(甲状腺刺激ホルモン):甲状腺ホルモンの「指令役」。TSHが高くFT4が低いときは甲状腺機能低下症、TSHが低くFT4・FT3が高いときは甲状腺機能亢進症が疑われます2,3,6,9,10,11。
  • FT4・FT3(遊離サイロキシン・トリヨードサイロニン):血液中で実際に働いている甲状腺ホルモンの量を反映します3,6,7,10。
  • 自己抗体(抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体、TSH受容体抗体など):橋本病やバセドウ病の診断の参考になります2,3,5,11,12。

必要に応じて、甲状腺エコー検査やアイソトープ検査(放射性ヨード摂取率)などが追加され、甲状腺の大きさ・形、炎症の有無、結節(しこり)の有無などを確認します2,3,5,10,11,12。

3.3. 「甲状腺機能亢進症と低下症の両方になる」ことはある?

一見正反対に見える2つの病気ですが、次のような場合に同じ人が「亢進」と「低下」の両方を経験することがあります。

  • ① バセドウ病治療中の行き来
    抗甲状腺薬(チアマゾールなど)で治療していると、薬が効きすぎて一時的に甲状腺機能低下症の状態になることがあります。その場合、薬の量を調整したり、一時的に甲状腺ホルモン薬を併用したりしながらバランスをとります2,4,13。
  • ② 破壊性甲状腺炎での一時的な変動
    出産後甲状腺炎などでは、最初に甲状腺内のホルモンが流れ出して甲状腺機能亢進症の状態になり、その後ホルモンが枯渇して甲状腺機能低下症へと移行することがあります4,11,13。
  • ③ 橋本病とバセドウ病の抗体が共存するケース
    非常にまれですが、同じ人に橋本病とバセドウ病の両方の性質がみられ、長い経過の中で亢進と低下を繰り返すことが報告されています3,6,7。

このように、「亢進症と低下症はまったく別の病気」ではなく、甲状腺をめぐる一連の病態の「両端」と考えることもできます。そのため、症状が落ち着いた後も、主治医の指示に従って定期的に血液検査を受けることが大切です。

第4部:今日から始める生活の工夫と治療のポイント

甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症は、医療機関での治療が中心となりますが、日常生活の工夫によって症状のつらさを軽減し、合併症を予防することも大切です。

4.1. 標準的な治療の考え方

  • 甲状腺機能亢進症の治療
    バセドウ病が原因の場合、抗甲状腺薬(チアマゾール、プロピルチオウラシルなど)による薬物療法、放射性ヨウ素治療、手術療法などから、年齢や病状、妊娠希望の有無などを踏まえて選択します2,3,5,11,12。動悸や震えが強い場合は、β遮断薬で症状を和らげることもあります。
  • 甲状腺機能低下症の治療
    不足している甲状腺ホルモンを、レボチロキシン(チラージンSなど)のホルモン補充療法で補うのが基本です。少量から開始し、TSH・FT4の値を確認しながら適切な量に調整していきます1,3,4,6,7。
  • 検査とフォローアップ
    一般に、薬の開始・変更後は6〜8週間ごとにTSH・FT4を確認し、その後は年1回程度のフォローを続けることが推奨されています3,6,7。高齢者や心臓病のある方では、より慎重な調整が必要です。
表3:改善アクションプランの例
ステップ アクション 具体例
Level 1:今日からできること 体調と脈・体重を記録する 毎朝・毎晩の脈拍、体重、気になる症状(動悸・だるさなど)をメモする。診察時に見せると診断の助けになります。
Level 2:今週から始めたいこと 睡眠と食事のリズムを整える 毎日ほぼ同じ時間に寝起きし、極端な夜更かしや寝だめを避ける。過度なダイエットや暴飲暴食を控える。
Level 3:長期的に続けたいこと 主治医との連携と検査の継続 自己判断で薬を中止したり量を変えたりせず、指示どおりに内服する。年1回の血液検査を習慣化する。

4.2. 食事とヨウ素のポイント

食事だけで甲状腺の病気を治すことはできませんが、次のようなポイントを意識することで、治療の助けになる場合があります。

  • 日本人はヨウ素は「十分〜やや多め」になりやすい
    昆布、わかめ、ひじきなどの海藻はヨウ素が豊富です。普通の和食であれば問題ありませんが、サプリや昆布だしの大量摂取は避けた方が安全です10。
  • 甲状腺機能低下症の方
    バランスのよい食事(魚、豆類、全粒穀物、野菜、果物、乳製品など)を心がけ、体重やコレステロールの管理に役立てます。過度なカロリー制限や極端な糖質制限は、かえって疲労感を強めることがあります1,3,6,7。
  • 甲状腺機能亢進症の方
    代謝が高まり体重が減りやすいため、十分なエネルギーとタンパク質をとることが大切です。カフェインやアルコール、辛い料理などは動悸や不眠を悪化させることがあるため、症状に応じて控えめにします2,5,11,12。
  • サプリメントの自己判断は避ける
    「甲状腺によい」とうたうサプリの中にはヨウ素を多く含むものや、エビデンスの乏しい成分が入っているものもあります。服用前に必ず主治医や薬剤師に相談しましょう。

4.3. 妊娠・出産を考えている方の注意点

甲状腺ホルモンは、妊娠の成立や胎児の成長にとても重要な役割を持っており、甲状腺機能亢進症・低下症のいずれも、放置すると流産や早産、妊娠高血圧症候群などのリスクが高まるとされています1,3,6,7。

  • 妊娠を希望している場合や妊娠が判明した場合は、早めに主治医と産科に相談し、薬の種類や量の調整を行います。
  • 甲状腺機能低下症でレボチロキシンを内服中の方は、妊娠初期に必要量が増えることが多く、TSHを目安に用量を調整します1,3,6,7。
  • 出産後は、産後甲状腺炎など甲状腺のトラブルが起こりやすい時期でもあり、「産後うつ」と症状が重なる部分もあるため、気になる症状があれば早めに相談することが大切です1,3,6,7,11。

第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?

最後に、「どのタイミングで」「どの診療科に」相談すればよいのか、また診察の際に役立つポイントを整理します。

5.1. すぐに受診を検討すべき危険なサイン

  • 安静にしていても動悸や息切れが強い、胸の痛みや圧迫感がある(心臓への負担の可能性)
  • 急激な体重減少や体重増加、強いむくみ、息苦しさが続く
  • 意識がもうろうとする、反応が鈍い、極端な眠気が続く(粘液水腫性昏睡などの危険な状態の可能性)1,3,4,6,7
  • 発熱や強い首の痛みを伴う甲状腺の腫れ(急性甲状腺炎などの可能性)
  • 妊娠中・産後で、動悸や体重変化、気分の落ち込みなどが急激に悪化している

これらの症状がある場合は、早めに内科・内分泌代謝内科・甲状腺専門外来などを受診し、必要に応じて救急外来や119番通報も検討してください。

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

  • まず相談しやすいのは一般内科・かかりつけ医
    「なんとなく疲れやすい」「体重が急に変わった」という段階では、まず一般内科やかかりつけ医を受診し、甲状腺機能検査(TSH・FT4・FT3など)を依頼するのが現実的です1,3,10,13。
  • 専門的な検査・治療が必要な場合は内分泌代謝内科・甲状腺専門外来
    検査の結果、甲状腺機能亢進症・低下症が疑われる場合は、内分泌代謝内科や甲状腺専門外来への紹介を受けて、長期的な管理を行います2,3,5,11,12,13。
  • 婦人科・産科との連携
    妊娠・出産と関係する場合は、産科・婦人科との連携も重要です。

5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安

  • 症状のメモ:いつから・どのような症状が・どのくらいの頻度で起こるかを書き出しておくと、診察がスムーズになります。
  • 脈拍・体重・体温の記録:数週間分のデータがあれば、病状の評価に役立ちます。
  • お薬手帳・サプリのリスト:現在飲んでいる薬やサプリは、甲状腺機能に影響するものがないか確認するためにも必ず持参しましょう4,6,7。
  • 費用の目安:保険診療の場合、初診料+採血(TSH、FT4、FT3、自己抗体など)で数千円程度から始まり、以後の再診・フォローアップではもう少し少ない費用となることが多いとされています(検査内容によって変動します)。

よくある質問

Q1: 甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症は、どちらの方が「危険」なのですか?

A1: どちらも放置すると危険ですが、「どちらがより危険」と単純に比べることはできません。甲状腺機能亢進症では、動悸や不整脈、心不全、骨粗しょう症、甲状腺クリーゼ(命に関わる甲状腺中毒症の悪化)が問題になります2,5,11,12。一方、甲状腺機能低下症では、粘液水腫性昏睡、心血管疾患のリスク増加、妊娠・出産への影響などが問題になります1,3,4,6,7。

大切なのは、「自分が今どちらの状態に近いのか」を早めに知り、医療機関で適切な治療を受けることです。

Q2: 1人の人が、甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症の両方になることは本当にあるのですか?

A2: はい、あります。特にバセドウ病の治療中に抗甲状腺薬が効きすぎると、一時的に甲状腺機能低下症の状態になることがあります2,4,13。また、産後甲状腺炎などの破壊性甲状腺炎では、一時的な甲状腺機能亢進症の後に甲状腺機能低下症へ移行することがあります4,11,13。

まれに橋本病とバセドウ病の抗体が共存し、長い経過の中で亢進と低下を繰り返すケースも報告されています3,6,7。いずれの場合も、主治医の指示に従って定期的に血液検査を受けることが重要です。

Q3: 甲状腺機能低下症では、食事でヨウ素をたくさんとった方がいいですか?

A3: 日本では、海藻をよく食べる食文化があるため、多くの場合ヨウ素はすでに「十分〜やや多め」に摂取されています10。甲状腺機能低下症の多くは橋本病などの自己免疫が原因であり、ヨウ素を増やすだけで改善するものではありません1,3,10,12。

むしろ、昆布だしやヨウ素サプリを大量に摂取すると、かえって甲状腺機能に悪影響を与えることがあるため注意が必要です。ヨウ素摂取について不安がある場合は、主治医や栄養士に相談してください。

Q4: 甲状腺の薬は一度飲み始めると一生やめられませんか?

A4: 病気の種類や重症度によって異なります。橋本病による甲状腺機能低下症では、甲状腺の機能が戻らないため、レボチロキシンを長期的に内服する必要があるケースが少なくありません1,3,4,6,7。一方、バセドウ病では一定期間(通常1〜2年程度)の薬物療法で寛解し、薬を減量・中止できる場合もあります2,5,11,12。

重要なのは自己判断で中止しないことです。主治医と相談しながら、症状と検査結果に応じて適切なタイミングで調整していきましょう。

Q5: 更年期障害やうつ病と甲状腺の病気はどう見分ければよいですか?

A5: 更年期障害やうつ病と、甲状腺機能亢進症・低下症の症状は重なっている部分が多く、症状だけで見分けるのは困難です1,3,6,7,8。例えば、だるさや気分の落ち込み、睡眠の質の低下、体重変化などはどちらでも起こり得ます。

そのため、「年齢的に更年期かな」「仕事のストレスかな」と感じたとしても、一度血液検査でTSH・FT4などを確認することが勧められます。甲状腺の異常が見つからない場合でも、その情報は更年期障害やうつ病の評価に役立ちます。

Q6: 甲状腺の病気があっても、妊娠・出産はできますか?

A6: 適切にコントロールされていれば、多くの方が妊娠・出産を経験しています1,3,6,7。重要なのは、妊娠前から甲状腺機能をできるだけ安定させ、妊娠中も定期的に検査をしながら薬の量を調整することです。

甲状腺機能低下症を放置すると、流産や早産、妊娠高血圧症候群、胎児の発育への影響などが報告されているため、「もしかして?」と思った段階で早めに主治医と産科に相談すると安心です1,3,6,7。

Q7: 健康診断でTSHだけ少し高い(または低い)と言われました。すぐ治療が必要ですか?

A7: TSHだけが軽度に異常でFT4が正常な場合は、いわゆる「潜在性(サブクリニカル)甲状腺機能異常」と呼ばれる状態かもしれません3,6,7。この段階では、すぐに治療を始めずに定期的に経過観察を行うことも多いとされています。

年齢や症状、自己抗体の有無、心臓病や妊娠希望の有無などによって対応が変わるため、検査結果を持って専門医に相談し、自分に合った方針を一緒に決めていくことが大切です。

Q8: 「自然療法」やサプリだけで甲状腺の病気を治すことはできますか?

A8: 現時点で、サプリや「自然療法」だけで甲状腺機能亢進症・低下症を安全かつ確実に治せるという科学的な証拠はありません1,3,6,7。自己免疫やホルモンの異常が関わる病気であるため、医師の管理のもとでの薬物療法が基本となります。

もちろん、バランスのよい食事や十分な睡眠、適度な運動は、治療の効果を支え、体力や気分の回復に役立ちます。ただし、薬をやめてしまったり、独自の療法だけに頼ったりすると、かえって症状が悪化する危険があります。

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結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症は、一見正反対の病気に見えますが、どちらも甲状腺ホルモンのバランスが崩れることで起こる身近な病気です。日本では、特に女性に多く、ストレスや更年期、うつ病、単なる「疲れ」と混同されやすいという共通点があります1,3,5,10,12。

「なんとなく調子が悪いだけ」「忙しいから仕方ない」とがまんしているうちに、心臓や骨、妊娠・出産、メンタルヘルスへの影響が進んでしまうこともあります。しかし、血液検査で比較的簡単に診断でき、多くの方は適切な治療によって普段どおりの生活に戻ることが可能です1,2,3,5,6,7,11,12。

もしこの記事を読みながら、「自分や家族が当てはまるかも」と感じたら、まずはかかりつけ医や一般内科で甲状腺機能検査を相談するところから始めてみてください。「違っていたらどうしよう」と心配する必要はありません。結果が正常であればそれも安心材料になり、別の原因を探す手がかりにもなります。

あなたの不調は、決して「気のせい」でも「怠け」でもありません。一人で抱え込まず、信頼できる医療機関や周囲の人に相談しながら、少しずつ、自分に合ったペースで体と向き合っていきましょう。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。本記事では、日本内分泌学会、日本甲状腺学会、PMDA、協会けんぽなどの日本の一次情報源と、海外のレビュー論文・ガイドラインを組み合わせて、甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症に関する情報を整理しました1,2,3,4,5,6,7,10,11,12,13。

原稿の作成にあたっては、最新のAI技術を活用して文献の検索や要約、構成案の作成を行い、そのうえでJHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。

ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。

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参考文献

  1. 日本内分泌学会. 甲状腺機能低下症|一般の皆様へ. 2019年更新. https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=38(最終アクセス日:2025-11-30)

  2. 日本内分泌学会. 甲状腺中毒症|一般の皆様へ. 2019年更新. https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=37(最終アクセス日:2025-11-30)

  3. 日本甲状腺学会. 甲状腺疾患診断ガイドライン(2024). 日本甲状腺学会公式サイト. https://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.html(最終アクセス日:2025-11-30)

  4. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). A. 患者の皆様へ 甲状腺機能低下症. https://www.pmda.go.jp/files/000245307.pdf(最終アクセス日:2025-11-30)

  5. 全国健康保険協会 高知支部. 甲状腺疾患. https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kochi/20140325001/201706074422.pdf(最終アクセス日:2025-11-30)

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  9. 人間ドックのこころ(東京). FT3/FT4/TSH(血液)|甲状腺の検査|各検査を知る. https://www.dock-tokyo.jp/results/thyroid/ft3-ft4.html(最終アクセス日:2025-11-30)

  10. 日本赤十字社岐阜赤十字病院. 甲状腺機能亢進症(バセドウ病、グレーブス病). https://www.gifu-med.jrc.or.jp/thyroid/internal/hyperthyroidism.html(最終アクセス日:2025-11-30)

  11. Cloud Doctor. 甲状腺中毒症・甲状腺機能亢進症/甲状腺機能低下症/慢性甲状腺炎(橋本病). https://cloud-dr.jp/medical-navi/disease/1612/, https://cloud-dr.jp/medical-navi/disease/1622/, https://cloud-dr.jp/medical-navi/disease/1606/(最終アクセス日:2025-11-30)

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Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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