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女性の健康 27分で読める 33回

多嚢胞性卵巣症候群の新基準|生理不順との見分け方と受診の目安

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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診断基準は、2024年に日本産科婦人科学会が17年ぶりに改定し、「月経周期異常」「多囊胞卵巣またはAMH高値」「アンドロゲン過剰症またはLH高値」の3項目をすべて満たすことが必要になりました[1]。これは、3項目のうち2項目を満たせば診断される国際基準よりも、対象を狭く絞り込む基準です[2]。

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ふつうの生理不順との境目としては、「生理が3か月以上来ない」「39日以上の周期が何度も続く」がひとつの目安になります[2]。このサインがあれば、様子を見ずに婦人科へ相談することが勧められます。

要点

  • 日本産科婦人科学会は2024年、17年ぶりにPCOSの診断基準を改定し、3項目すべてを満たす必要がある新基準としました[1][3]
  • 国際基準(ロッテルダム基準)は3項目のうち2項目でよく、日本の基準は国際基準よりも対象を狭く絞り込む構造です[2][6]
  • 同学会の全国調査によると、月経周期異常の内訳は希発月経が約6割ともっとも多く、無排卵周期症・第一度無月経が続きます[2]
  • 生理が3か月以上来ない、不正出血が続く、といったサインがあれば、様子を見ずに婦人科を受診することが勧められます[4]
  • PCOSでも妊娠は目指せ、治療の選択肢もありますが、治療の詳しい進め方は別記事でくわしく解説しています

この記事は、JHO編集部がAIツールの支援を受けながら、日本産科婦人科学会・日本生殖医学会・MSDマニュアルなど公的機関・学会の資料と照合して作成しました。最終確認は人の目で行っています。医師による個別の診断・治療方針の代わりにはなりません。数値や診断基準はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点の情報)。

受診前に整理しておきたいこと

  • 直近3〜6か月分の生理開始日(アプリの記録や手帳のメモで構いません)
  • 最後の生理から何日・何か月経っているか
  • 多毛・にきび・急な体重増加など、気になる体の変化が始まった時期
  • 妊娠を希望しているかどうか、いつ頃からを考えているか

これらを整理してから受診すると、日本産科婦人科学会の診断基準にある「月経周期異常」の判定がスムーズになります[1]。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?卵巣で何が起きているのか

多嚢胞性卵巣症候群は、卵巣の中にある小さな卵胞(卵子を包む袋)が数多く発育を始めるものの、そのほとんどが排卵まで育ちきらずに止まってしまう状態です。MSDマニュアルは、この病気を「典型的に無排卵または希発排卵,アンドロゲン過剰の徴候(例,男性型多毛症,ざ瘡),および卵巣内の多数の嚢胞を特徴とする臨床症候群」と説明しています[6]。卵巣そのものの病気というより、排卵やホルモンバランス全体の乱れとしてとらえられている点がポイントです。エストロゲンやアンドロゲンといった女性ホルモンの基本的な働きを先に押さえておくと、この先の説明が理解しやすくなります。なお、PCOSという病気の概念自体は昔からあり、両側の卵巣が多囊胞性に腫大し、肥満・男性化徴候・月経異常をともなう病態として報告されたのが始まりとされ、その後、卵巣の多囊胞性腫大・排卵障害・高アンドロゲン状態を特徴とするPCOSとして広く認識されるようになりました[2]。

なぜ卵胞が育ちきらずに止まってしまうのか、根本的な原因はまだ解明されていません。MSDマニュアルは「発生機序には環境因子と遺伝的因子が関与しているようである」としており[6]、単一の原因で説明できる病気ではないと考えられています。日本産科婦人科学会の報告でも、PCOSでは卵巣にある多数の小卵胞から慢性的にエストロゲンが分泌され続けることが、生理不順が起こる仕組みに関わっていると説明されています[2]。

体型については誤解が多いところです。MSDマニュアルは「PCOSの女性の最大半数では体重は正常で,一部の女性は低体重である」としており[6]、太っている人だけの病気ではありません。実際、日本産科婦人科学会が2020〜2022年に行った全国調査でも、PCOSと診断された患者のうちBMI25以上の肥満に該当したのは26.0%にとどまり、7割以上は肥満ではありませんでした[2]。また同じ調査は、日本のPCOS患者では欧米に比べて肥満や多毛の頻度が低い傾向があることも報告しており[2]、「PCOS=太った人の病気」というイメージだけで自分は違うと判断するのは危険です。

図:JHO編集部が作成

下の図は、健康な卵巣とPCOSの卵巣で、卵胞の育ち方がどう違うかを簡略化して示したものです。健康な卵巣では複数の卵胞の中から1個が主席卵胞として育ち、やがて排卵します。これに対し、日本産科婦人科学会の診断基準によれば、PCOSの卵巣では直径2〜9mm程度の小さな卵胞が数珠のように多数並んだまま、それ以上育たずに停止してしまいます[1]。日本産科婦人科学会の報告では、この小卵胞の多さが、超音波検査での「多囊胞卵巣」所見や、卵巣から分泌されるAMH(抗ミュラー管ホルモン)の高値として現れるとされています[2]。

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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。

日本の診断基準(2024年)— 3つの項目のすべてを満たす必要がある

日本産科婦人科学会は2024年、17年ぶりにPCOSの診断基準を改定しました[3]。新しい基準では、「月経周期異常」「多囊胞卵巣またはAMH高値」「アンドロゲン過剰症またはLH高値」の3項目をすべて満たすものを多囊胞性卵巣症候群とすると定められています[1]。具体的な判定方法を整理すると、以下のとおりです。

項目 判定の目安 備考
①月経周期異常 無月経・希発月経・無排卵周期症のいずれか 3項目のうち必須の1つ[1]
②多囊胞卵巣所見 片側の卵巣で直径2〜9mmの小卵胞が10個以上(超音波検査) AMH高値で代用することも可能[1]
②-代替 AMH高値 20〜29歳で4.0〜4.4ng/mL、30〜39歳で2.8〜3.1ng/mLを超える(測定機器により異なる) AMH単独ではPCOSと診断できず、測定は診断に必須ではない[1]
③アンドロゲン過剰症 血中総テストステロン高値、または多毛(modified Ferriman-Gallweyスコア6以上) LH高値で代用することも可能[1]
③-代替 LH高値 LH基礎値とLH/FSH比がともに高値(肥満例はLH/FSH比のみで可) 測定機器ごとに基準となる数値が示されている[1]

出典:日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会「多囊胞性卵巣症候群の診断基準」(2024年)[1]

月経周期異常の内訳をくわしく見ると、日本産科婦人科学会の全国調査(PCOS患者986例を解析)では、希発月経が59.9%ともっとも多く、次いで無排卵周期症が22.0%、第一度無月経が18.1%の順でした[2]。希発月経は生理周期が39日以上3か月未満のもの、第一度無月経は3か月以上生理が止まっている状態を指すと定義されています[2]。

分類 定義
頻発月経 生理周期が24日以下[2]
希発月経 生理周期が39日以上3か月未満[2]
無排卵周期症 排卵を伴わない生理様の周期。基礎体温などで判定[2]
第一度無月経 3か月以上生理が止まっているが、黄体ホルモンの投与で消退出血が起こる状態[2]

出典:日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会 全国症例調査報告(2024年)[2]

2007年の旧基準との違い — なぜ2024年に改定されたのか

日本独自のPCOS診断基準は、1993年に初めて作られ、2007年に一度改定されています[2]。なぜ海外の基準をそのまま使わず、日本独自の基準が必要だったのでしょうか。日本産科婦人科学会は、PCOSの症状の現れ方には人種差があり、日本人のPCOS患者は欧米の患者に比べて肥満や多毛の頻度が低いという特徴があるため、日本人の実態に合った基準が求められてきたと説明しています[2]。日本産科婦人科学会によると、2007年の改定から16年が経過し、国際的な診断基準との整合性など各所に修正を要する部分があると判断され、2024年に再び改定されました[3]。この改定の経緯を知っておくと、以前この病気について調べたことがある人ほど「前に読んだ内容と違う」という戸惑いを減らせます。

2007年の基準では、①月経異常、②多囊胞性卵巣、③血中男性ホルモン高値またはLH基礎値高値かつFSH基礎値正常、の3項目すべてを満たすことが必要とされていました[2]。日本産科婦人科学会の報告によれば、2024年の新基準との主な違いは次の4点です[2]。

変更点 2007年の基準 2024年の新基準
アンドロゲン過剰症の指標 血中男性ホルモンの数値のみ 血中総テストステロン、または多毛(mFGスコア6以上)を追加[2]
卵巣所見の判定 超音波によるAFC(卵胞数)のみ AFCに加えて、AMH(血液検査)でも代用可能に[2]
LH高値の基準 旧測定系にもとづくカットオフ値 現在の測定機器に合わせてカットオフ値を更新[2]
思春期の患者 成人と同じ基準しかなく判定が困難 「PCOS疑い」「PCOSリスク」の新しい条項を新設[2]

出典:日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会 診断基準改定報告(2024年)[2]

血中アンドロゲンの測定対象も変わりました。2007年基準では、テストステロン・遊離テストステロン・アンドロステンジオンのいずれかを測定してよいとされていましたが[2]、2024年基準では保険が適用される範囲や測定精度を踏まえ、総テストステロンのみに測定対象が絞られています[2]。以前に婦人科でPCOSに関する検査を受けたことがある人は、当時と今回とで検査項目が違うと感じるかもしれませんが、これはこうした基準改定によるものです。

AMH(抗ミュラー管ホルモン)が診断に使えるようになった背景も知っておくと理解が深まります。日本産科婦人科学会によると、AMHは卵巣の中の小さな卵胞から分泌されるホルモンで、2022年4月からは不妊症の患者に対して、卵巣刺激療法の方針を決めるための検査として保険適用になりました[2]。同学会の全国調査では、超音波で卵胞の数を数えるAFCという方法は、測定する人や機器によって数値にばらつきが出やすいのに対し、AMHは血液検査のため客観性に優れると報告されています[2]。ただし、AMHだけでPCOSかどうかを判断することはできず、あくまで3項目の判定を補助する位置づけです[1]。「AMHが高い=即PCOS」ではない点に注意してください。なお、AMHの値は年齢とともに低下していくため、日本産科婦人科学会は年齢層ごとに異なるカットオフ値を設定しています[1]。同じ数値でも20歳代と30歳代とでは評価が変わることがある、という点も知っておくとよいでしょう。

国際基準(ロッテルダム基準)との違い — 「一致」ではなく構造そのものが異なる

PCOSの診断基準は、日本と海外とで単に数値が違うだけでなく、判定のしくみ自体が異なります。ここは「両方とも同じ結論になる」と思い込むと誤解を招くところなので、それぞれを分けて紹介します。

MSDマニュアルは国際的な基準(2003年のロッテルダム基準をもとにしたもの)を紹介しており、「排卵障害による月経不順」「アンドロゲン過剰の臨床的または生化学的所見」「各卵巣当たり10個を超える卵胞(骨盤内超音波検査で検出される)」という3つの基準のうち、少なくとも2つを満たせば診断されるとしています[6]。つまり国際基準は「3つのうち2つ」で足りるのに対し、日本産科婦人科学会の基準は「3つすべて」を必須としており、同学会の報告によれば、日本の基準のほうが対象を狭く絞り込む構造になっています[2]。同学会自身も、この新診断基準で診断されたPCOSは基本的にロッテルダム基準も満たす一方で、「日本の診断基準におけるPCOSの概念は欧米の診断基準よりも概して狭く、診断基準の基本的構造と各項目の判定にも相違点がある」と述べています[2]。

超音波で数える卵胞の個数(AFC)のカットオフ値も異なります。日本産科婦人科学会は、日本人を対象にした症例調査の結果から、片側の卵巣で10個以上という従来からの基準を維持することにしました[2]。一方、国際基準(IEBG2018)は超音波機器の性能向上を理由に、片側20個以上へと引き上げられています[2]。2003年のロッテルダム基準ではもともと12個以上とされていましたが、その後の超音波診断装置の性能向上で小卵胞を検出しやすくなったことが、20個への引き上げの理由とされています[2]。同じ「多囊胞卵巣」という所見でも、日本の基準と国際基準とではカウントする個数の水準がそもそも違うということです。日本産科婦人科学会は、この違いが生まれる理由について、3項目すべてを必須とする日本の基準は各項目に高い「感度」(PCOSの人を見逃さない性質)を求めるのに対し、2項目でよい国際基準は各項目に高い「特異度」(PCOSでない人を誤って含めない性質)を求める、という基準の構造そのものの違いにあると説明しています[2]。

無月経の定義にも差があります。日本産科婦人科学会の報告は、「海外の無月経の基準は月経停止が3ヵ月以上と限らず、6ヵ月以上とするものがある」としたうえで、「米国産科婦人科学会は続発性無月経を6か月以上の月経停止としており、日本で第一度無月経と判定される症例の一部は米国では希発月経に分類される」と説明しています[2]。つまり、日本では「生理が3か月以上止まっている」ことがPCOSを疑う材料になりますが、米国の基準をそのまま当てはめると、その一部は「まだ希発月経の範囲内」とされてしまう可能性があるということです。

項目 日本(日本産科婦人科学会2024) 国際基準(ロッテルダム基準・IEBG)
診断に必要な項目数 3項目すべてを満たす必要がある[1] 3項目のうち2項目でよい[6]
多囊胞卵巣のAFCカットオフ 片側10個以上[2] 片側20個以上(IEBG2018以降)[2]
無月経の目安 3か月以上の月経停止[2] 米国産科婦人科学会は6か月以上の月経停止[2]
アンドロゲン過剰症の評価 総テストステロンまたは多毛(mFGスコア6以上)[1] 臨床的または生化学的所見全般[6]

出典:日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会報告[2]/MSDマニュアル プロフェッショナル版[6]

どちらが正しい・優れているという話ではなく、日本の産婦人科では日本の基準にもとづいて診断や治療方針が決められている、という点を知っておくと、海外の情報サイトを見て混乱することが減ります。研究目的で国際的な論文を参照する場合には両方の基準を意識する必要があるとも指摘されています[2]。

症状のサイン — 生理不順・多毛・にきび・体重の変化

MSDマニュアルによると、PCOSの症状は思春期から始まり、時間とともに目立ってくることが多いとされています[6]。日本産科婦人科学会の報告では、もっとも多いサインは生理周期の乱れで、先に紹介したとおり希発月経・無排卵周期症・第一度無月経のいずれかの形で現れます[2]。生理周期の乱れ自体について詳しく知りたい場合は、生理不順の記事もあわせてご覧ください。

同学会の報告によれば、アンドロゲン(男性ホルモン)が過剰になることで起こる症状としては、多毛(口の周り・あごまわり・胸・下腹部などに濃い毛が生えやすくなる)、にきび(尋常性痤瘡)、まれに声が低くなる・薄毛が進むといった変化が挙げられます[2]。同学会の全国調査では、これらの臨床的なアンドロゲン過剰症状のうち多毛がもっとも多く13.5%の患者にみられましたが、この頻度は欧米で報告されている約7割と比べて明らかに低いとされています[2]。東アジア系の人種ではアンドロゲンが過剰でも多毛が目立ちにくいことが以前から指摘されており[2]、「毛が濃くないからPCOSではない」とは言い切れない点に注意が必要です。

日本産科婦人科学会によると、多毛の程度はmodified Ferriman-Gallwey(mFG)スコアという視覚的な評価法で医師が判定します[2]。上唇・あご・胸・背中・下腹部など体の部位ごとに毛の濃さを点数化する方法で、美容目的の脱毛処置を受けている患者も多いことを踏まえ、自己評価シートを用いて処置前の状態を確認することも有用とされています[2]。ただし、この評価はあくまで医師が総合的に診断する際の材料の一つであり、自己判断でPCOSかどうかを決めるためのものではありません。

mFGスコアで評価される体の部位は、上唇・下顎・胸・上腕・下腹部・大腿など複数箇所に及びます[1]。日本産科婦人科学会は、産毛のような薄い毛ではなく、長さ5mm以上の色のついた毛を対象に評価すると説明しています[1]。国際基準(IEBG2018)はスコアの基準値を4〜6の範囲に設定することを推奨していますが、同学会は「安易に診断基準を緩めて疾患概念が曖昧なものとならないよう」、より厳しい6以上をカットオフ値として採用しています[2]。なお、にきび(尋常性痤瘡)や脱毛もアンドロゲン過剰症の参考所見として現れることがありますが、日本産科婦人科学会は、世界的に受け入れられた評価指標がにきびには存在しないこと、脱毛にはアンドロゲン過剰以外のさまざまな原因が関わり特異性が低いことから、現時点ではこの2つを診断基準そのものには採用していないと説明しています[2]。

そのほか、MSDマニュアルは体重増加、疲労感、気力減退、睡眠の問題(睡眠時無呼吸症候群を含む)、気分の変動、抑うつ、不安、頭痛なども症状として挙げています[6]。MSDマニュアルは、インスリン抵抗性によって腋窩や首の後ろの皮膚が厚く黒ずむ「黒色表皮腫」がみられることもあるとしており[6]、症状の出方には個人差が大きく、すべてがそろって現れるとは限らないと述べています[6]。

受診の目安 — 様子を見ずに婦人科に相談したいサイン

日本産科婦人科学会の診断基準・治療指針に沿うと、次のようなサインがあれば様子を見ずに婦人科へ相談することが勧められます[2][4]。

  • 生理が3か月以上来ていない(無月経、第一度無月経の目安)
  • 不正出血(生理以外のタイミングでの出血)が続いている
  • 超音波検査で子宮内膜の厚みが20mmを超えていると言われたことがある、または不正出血をくり返している
  • 生理不順に加えて、急な体重増加・強い多毛・にきびの悪化が同時に進んでいる
  • 妊娠を希望しているが、生理が不規則で排卵しているか分からない

同学会の治療指針は、子宮体がんはその9割に不正出血がみられると報告しており[4]、無症状の人に対する子宮内膜の定期スクリーニング検査は勧められていないとしています[4]。裏を返せば、不正出血や子宮内膜の異常な肥厚といったサインが出たときには、先延ばしにせず検査を受けることが大切だということです。

何科に相談すればいいか — 受診先と話しておきたいこと

PCOSが疑われる場合の相談先は婦人科(産婦人科)です。月経周期の異常や多毛といった症状は婦人科が扱う領域であり、ここまで見てきた診断基準もすべて日本産科婦人科学会が定めたものです[1](受診先については、JHO編集部が診断基準の所管学会から整理したものです)。妊娠を希望していて治療がなかなか進まない場合は、生殖医療を専門とする医師がいる施設に紹介されることもあります[7]。厚生労働省は、不妊症や不育症に悩む夫婦などを対象に、専門知識をもつ医師などが医学的な相談や心の悩みについての相談を受け付ける相談窓口の整備を進めており、こうした窓口を利用することもできます[9]。

思春期の場合は少し事情が異なります。日本産科婦人科学会は、学校検診をきっかけに肥満や耐糖能異常、糖尿病で小児科医が管理している症例の中にもPCOSと思われる症例が見られる一方、小児科医側のPCOSへの理解や産婦人科医との連携が十分とはいえない状況があると指摘しています[2]。娘の生理不順が心配な場合は、まずかかりつけの小児科で相談し、必要に応じて婦人科につないでもらう、という進め方でよいでしょう。思春期の生理不順がどこまで様子を見てよいかについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。

受診の際には、直近数か月の生理周期の記録、気になる症状が始まった時期、妊娠を希望する時期の見通しを伝えると、診断や治療方針の相談がスムーズになります。

初診でどんな検査をされるのか不安な人も多いと思いますが、日本産科婦人科学会の診断基準に沿うと、基本的には問診(生理周期・体重の変化・多毛やにきびの有無など)、血液検査(総テストステロン・LH・FSHなどのホルモン値)、経腟または経腹の超音波検査(卵巣の中の小卵胞の数を数える)の組み合わせで判断されます[1]。同学会の報告によれば、これらの内分泌検査は、排卵誘発薬や女性ホルモン薬など、ゴナドトロピンの分泌に影響を与えうる薬剤を直近1か月以上使っていない時期に行うことが望ましいとされています[2]。また、LH(黄体化ホルモン)はパルス状に分泌され血中の半減期も短いため、1回の採血だけでは高値を検出できないことがあり、同学会は月経または消退出血から10日目までの時期はLH高値の検出率が低いことに留意し、必要に応じて周期10日目以降に再検査を行うとしています[2]。1回の検査だけで「異常なし」と言われても、時期によっては再検査を提案されることがある、と知っておくと安心です。持病やアレルギー、現在飲んでいる薬がある場合は、あらかじめ伝えておくと診察がスムーズです。

生理不順や多毛の背景には、PCOS以外の病気が隠れていることもあります。MSDマニュアルは、PCOSの診断にあたって、甲状腺刺激ホルモン(TSH)やプロラクチンの測定などにより他の内分泌疾患を除外する検査が必要だとしており[6]、クッシング症候群を除外するために血清コルチゾールを測定することもあるとしています[6]。つまり、婦人科での検査は「PCOSかどうか」だけでなく、「似た症状を起こす他の病気ではないか」も同時に確認する意味があります。似た症状でも原因が違えば対応も変わるため、自己判断でPCOSだと決めつけず、検査を受けることが大切です。MSDマニュアルは、生理が止まっている場合の検査には妊娠検査も含まれるとしており[6]、生理不順の原因を幅広く確認したうえで、PCOSに当てはまるかどうかが判断されます。

思春期のPCOS — 早めに気づく意味

日本産科婦人科学会の報告によれば、思春期の女子は初経後しばらくの間は生理周期が不安定であることが多く、思春期女子の卵巣自体が多囊胞性に腫大していることも多いため、成人と同じ基準でPCOSを確定診断することはできません[2]。同学会によれば、実際に初経後最初の1年間では85%、3年経過後でも59%が無排卵周期であるとされています[2]。

そこで日本産科婦人科学会の2024年の新しい診断基準では、思春期(初経後8年、おおむね18歳未満)の患者について、卵巣所見やAMHを使わずに、月経周期異常とアンドロゲン過剰症またはLH高値の2項目をともに満たす場合を「PCOS疑い」、いずれか1項目のみを満たす場合を「PCOSリスク」とする、新しい条項が設けられました[1]。これは2007年の旧基準にはなかった項目で、今回の改定でもっとも大きく変わった点のひとつです[2]。

性成熟期の女性の5〜15%程度がPCOSとされ、その月経周期異常は思春期から発症して持続する特徴があるとされています[2]。思春期のうちからPCOS疑い例・リスク例を早めに拾い上げて経過をみていく意義について、日本産科婦人科学会の治療指針は、①月経異常を端緒とした子宮体がんの発症予防、②将来のメタボリック症候群・生活習慣病の発症リスク軽減、③高アンドロゲン症状への介入、④(現時点で合併し得る)抑うつ・不安障害への介入・支援の4点を挙げています[4]。同学会が引用する報告では、PCOSでは子宮体がんの発症率が2.7倍に増加するとされており[2]、月経周期異常を思春期のうちから見過ごさないことが、将来のリスクを見据えた対応につながるとされています。

日本産科婦人科学会が引用する海外の調査では、成人PCOSと診断された女性のうち、確定診断に至るまでに3名以上の専門家に相談し、2年以上の年数を要した患者が多数存在していたことが報告されています[2]。同学会によれば、思春期からの適切な経過観察は、こうした「診断までの長い道のり」や、診断の機会そのものを逃してしまうことを避ける狙いがあるとされています[2]。同学会は、初経3年後に月経周期の再評価を、初経開始8年後に超音波による卵巣形態の観察を行い、PCOSの診断に至るかどうかを確認していくことを提案しています[2]。「生理不順くらいで婦人科に行っていいのか」とためらう人も多いですが、思春期の生理周期異常は成年後も持続することが多いとされ[2]、早めに相談すること自体が、将来の選択肢を残すことにつながります。

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妊娠・治療の見通しと長期的なリスク — くわしくは専門記事で

日本産科婦人科学会の報告によると、PCOSは排卵障害による不妊の中でもっとも頻度の高い原因とされていますが[2]、これは「妊娠できない」という意味ではありません。同学会は2025年7月、2024年の新診断基準に沿った新しい治療指針を公表しており[4]、挙児希望の有無や肥満の有無によって、生活習慣の改善から排卵誘発薬、生殖補助医療まで段階的な治療の道筋が示されています[4]。

月経周期異常を放置すると、子宮内膜がエストロゲンにさらされ続けることで子宮体がんや子宮内膜増殖症のリスクが上がるとされ、同学会が引用するメタ解析では子宮体がんのオッズ比は7.08(95%信頼区間4.05〜12.38)と報告されています[4]。また、耐糖能異常を合併する割合も高く、やせ型でも75%、肥満のある患者では95%が合併するとされ[4]、体重の5〜10%の減量が排卵の再開や代謝の改善につながると報告されています[4]。肥満がある場合は、まず生活習慣の見直しが治療の出発点になります。

治療薬の種類や排卵誘発の具体的な流れ、費用の目安、心血管疾患や抑うつ・不安障害を含めた長期的なリスクへの対応など、治療についてさらにくわしくは、当サイトの別記事「専門家が解説:多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のリスクと治療」もあわせてご覧ください。妊娠のタイミングについて基礎から知りたい場合は、排卵日と妊娠のタイミングについての記事も参考になります。

受診の際に持参・記入すると役立つメモ

  • 直近3〜6か月の生理開始日と、周期がおおよそ何日おきか
  • 最後の生理から何日(または何か月)経過しているか
  • 多毛・にきび・急な体重変化など、気になる症状が始まった時期
  • 現在飲んでいる薬やサプリメントがあれば、その名前
  • 妊娠を希望しているか、希望する場合はいつ頃からか
  • 以前に婦人科でPCOSに関する検査や診断を受けたことがあるか(あれば時期も)

この記事は、日本産科婦人科学会・日本生殖医学会・MSDマニュアルなど公的な資料にもとづいて作成していますが、抗アンドロゲン薬の細かな使い分けや、生殖補助医療(体外受精など)の具体的な進め方など、より専門的で個別性の高い判断が必要な部分については、今回参照した資料の範囲では十分に扱いきれていません。実際の治療方針は、必ず担当医と相談のうえで決めてください。また、この記事は2024年の新しい診断基準を中心にまとめたものであり、治療の選択肢や長期的なリスクへの対応については、別記事とあわせて読むことでより理解が深まります。

よくある質問

多嚢胞性卵巣症候群はなんと読みますか?
「たのうほうせいらんそうしょうこうぐん」と読みます。MSDマニュアルによると、英語ではpolycystic ovary syndromeといい、その頭文字をとってPCOS(ピーシーオーエス)と呼ばれることが多い病名です[6]。
PCOSと「多嚢胞性卵巣症候群」は同じ病気ですか?
同じ病気です。PCOSはpolycystic ovary syndromeの略称で、日本では日本産科婦人科学会が「多囊胞性卵巣症候群」という病名で診断基準を定めています[1]。診察や資料によって「多嚢胞性」「多囊胞性」と表記が揺れることがありますが、指している病気は同じです。
診断基準はいつ、何が変わりましたか?
日本産科婦人科学会が2024年に17年ぶりに改定しました[3]。主な変更点は、アンドロゲン過剰症の指標に多毛が加わったこと、卵巣所見の判定にAFC(超音波)に加えてAMH(血液検査)が使えるようになったこと、LH高値のカットオフ値が最新の測定機器に合わせて更新されたこと、思春期向けの新しい条項ができたことの4点です[2]。
多嚢胞性卵巣症候群の原因は何ですか?
はっきりした原因はまだ解明されていません。MSDマニュアルは「発生機序には環境因子と遺伝的因子が関与しているようである」としています[6]。日本産科婦人科学会の報告によれば、卵巣の中で多数の小卵胞が育ちきらずに停止し、そこから慢性的にホルモンが分泌され続けることが、生理不順やアンドロゲン過剰の背景にあると考えられています[2]。
どんな症状が出ますか?
日本産科婦人科学会の報告では、生理周期の乱れ(希発月経・無排卵周期症・第一度無月経など)がもっとも多い症状です[2]。MSDマニュアルは、そのほか多毛やにきびなどアンドロゲン過剰による症状、体重の増えやすさ、まれに黒色表皮腫と呼ばれる皮膚の変化がみられることもあるとしています[6]。症状のそろい方には個人差があります。
生理不順はどのくらい続いたら受診したほうがいいですか?
日本産科婦人科学会の基準では、生理が3か月以上止まっている状態を「第一度無月経」としています[2]。3か月以上生理が来ていない場合や、39日以上の周期の乱れが何度も続く場合は、様子を見ずに婦人科に相談することが勧められます。生理痛が強い場合など、生理痛(月経困難症)の記事も参考にしてください。
太っていないとPCOSにはならないのですか?
そうではありません。MSDマニュアルは「PCOSの女性の最大半数では体重は正常で,一部の女性は低体重である」としています[6]。日本産科婦人科学会の全国調査でもPCOS患者の7割以上はBMI25未満の非肥満でした[2]。やせ型でも耐糖能異常を合併することがあり、体型だけで判断しないことが大切です[4]。
思春期の娘の生理不順が心配です。何歳から診断できますか?
日本産科婦人科学会の報告によれば、思春期のうちは卵巣の形態自体が変化しやすく、成人と同じ基準では確定診断ができません[2]。同学会の2024年の診断基準では、初経後8年未満の思春期の患者について「PCOS疑い」「PCOSリスク」という段階的な考え方が新設され、成人後(おおむね18歳以降)に卵巣所見を満たせば確定診断に至るとされています[2]。心配な場合は、まず小児科や婦人科に相談し、経過をみてもらうとよいでしょう。
3項目のうち2つしか当てはまりません。それでもPCOSの可能性はありますか?
日本産科婦人科学会の基準では、3項目すべてを満たさなければPCOSと確定診断されません[1]。ただし、国際基準(ロッテルダム基準)では3項目のうち2項目を満たせば診断されるため[6]、2項目しか当てはまらない場合でも、経過観察の対象になったり、別の原因を探る検査が続けられたりすることがあります。自己判断せず、婦人科で今の状態を確認してもらってください。
血液検査でAMHが高いと言われました。それだけでPCOSと分かりますか?
分かりません。日本産科婦人科学会は、AMHは卵巣所見の判定に使える項目のひとつにすぎず、AMH単独でPCOSと診断することはできないとしています[1]。診断には、月経周期異常・アンドロゲン過剰症またはLH高値もあわせた3項目すべてを満たす必要があります[1]。AMHが高いと言われた場合も、それだけで心配しすぎず、婦人科で総合的に判定してもらってください。
以前に別の基準でPCOSと言われたことがあります。今の基準でも変わりませんか?
2007年の基準と2024年の基準では、アンドロゲン過剰症の判定方法や卵巣所見の判定方法などが変わっています[2]。以前の検査結果だけでは今の基準に照らした判定はできないため、心配な場合や治療方針を見直したい場合は、現在の状態をあらためて婦人科で確認してもらうことが勧められます。
PCOSと診断されたら、治療や妊娠はどうなりますか?
妊娠は目指せます。日本産科婦人科学会の治療指針には、排卵誘発薬から生殖補助医療まで、妊娠を目指すための具体的な治療の道筋が示されています[4]。妊娠を希望しない場合も、生理周期を整えるホルモン療法や体重管理が中心になります[4]。治療薬の種類や具体的な進め方は、当サイトの別記事「専門家が解説:多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のリスクと治療」でくわしく解説しています。

参考文献

  1. 日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会「表1 多囊胞性卵巣症候群の診断基準」2024年 https://www.jsog.or.jp/news/pdf/PCOS2_20231204.pdf
  2. 日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会「多囊胞性卵巣症候群に関する全国症例調査の結果と本邦における新しい診断基準(2024)について」 https://www.jsog.or.jp/news/pdf/PCOS1_20231204.pdf
  3. 公益社団法人日本産科婦人科学会「多囊胞性卵巣症候群に関する全国症例調査の結果と本邦における新しい診断基準(2024)について」(お知らせ) https://www.jsog.or.jp/medical/5122/
  4. 日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会「本邦における多囊胞性卵巣症候群の治療指針(full version)」2025年 https://www.jsog.or.jp/news/pdf/PCOSshishin_20250717.pdf
  5. MSDマニュアル プロフェッショナル版「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-婦人科および産科/月経異常/多嚢胞性卵巣症候群-pcos
  6. 一般社団法人日本生殖医学会編「生殖医療ガイドライン(原案)」(こども家庭庁 すこやか親子21サイト掲載) https://sukoyaka21.cfa.go.jp(生殖医療ガイドライン原案PDF)
  7. 厚生労働省「不妊治療に関する取組」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/funin-01_00004.html

更新日:2026年7月26日
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Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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