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耳鼻咽喉科疾患 32分で読める 24回

急性副鼻腔炎の治し方|抗菌薬は本当に必要?危険なサインも解説

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急性副鼻腔炎の多くはかぜのウイルスがきっかけで起こり、軽症であれば抗菌薬(抗生物質)を使わずに5日間ほど経過をみるのが基本的な治し方です。厚生労働省の「抗微生物薬適正使用の手引き」は、成人の軽症の急性鼻副鼻腔炎に対しては抗菌薬投与を行わずに5日間経過観察することを推奨しています[3]。

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一方で、抗菌薬投与を検討すべき中等症・重症の目安や、自宅でできる副鼻腔炎の治し方、そしてすぐに耳鼻咽喉科・救急を受診すべき危険なサインは、症状の強さや持続期間によってはっきり分かれています。この記事では、日本鼻科学会のガイドラインと厚生労働省の手引きに基づき[2][1]、「今すぐ抗菌薬が必要かどうか」「経過観察とは具体的に何をすることか」「どの症状が出たら救急受診が必要か」を中心に整理します。

  • 厚生労働省の手引きによれば、急性副鼻腔炎の多くはウイルス性で、抗菌薬投与を行わなくても1週間後に46%、2週間後に64%の患者が治癒すると報告されている[3]
  • 厚生労働省の手引きでは、抗菌薬が検討されるのは症状スコアで「中等症(4〜6点)」「重症(7〜8点)」と判定された場合、または症状が10日以上改善せず続く場合とされている[1][3]
  • 日本鼻科学会のガイドラインでは、抗菌薬を使わない軽症の経過観察は5日間の症状の変化(発熱・顔面痛・鼻汁の量)を見て、悪化または改善なしなら再受診するのが目安とされている[1][2]
  • 耳鼻咽喉科の学会誌の症例報告によれば、まぶたの腫れ・物が二重に見える・視力低下・激しい頭痛・意識がぼんやりするといった症状は、眼窩や頭蓋内への合併症のサインで、様子見をせずすぐに受診すべき[5][6]
  • 市販薬の選び方・手術・慢性化(好酸球性副鼻腔炎)・人にうつるかどうかについては、この記事の後半で要点のみ触れ、詳しくは関連記事に譲る

編集方針:JHO編集部がAIツールの支援を受け、厚生労働省・日本鼻科学会(学会誌掲載のガイドライン解説)・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会・難病情報センター・米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(AAO-HNSF)などの公的情報源と照合して作成しました。最終確認は人の目で行っています。本記事は医師による個別の診断・治療の代わりにはなりません。数値・治療方針はガイドラインの改定により変わることがあります(2026年7月時点の情報)。気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。

🔧 抗菌薬が必要かどうかの3ステップ目安(受診前のセルフチェック)

ステップ チェック内容 目安
①発症からの期間 症状が始まってから何日目か 10日未満で悪化なし=ウイルス性の可能性が高い[3][4]
②症状スコア 鼻漏・顔面痛や前頭部痛・鼻汁後鼻漏の程度を下の表で点数化 軽症1〜3点/中等症4〜6点/重症7〜8点[1]
③経過のパターン 症状が一度良くなってから再び悪化していないか(二峰性) 10日以内の再悪化=細菌感染を疑う所見の一つ[4]

3つとも「軽い」側にあてはまる場合は、次章の重症度スコアで詳しく確認したうえで、多くは抗菌薬なしの経過観察が選択肢になります。①〜③のいずれかで「重い」側に当てはまる場合は、早めに耳鼻咽喉科・内科を受診してください。このスコアはあくまで目安であり、最終的な判断は診察した医師が行います。

急性副鼻腔炎とは?副鼻腔の構造と鼻づまりが起こる仕組み

日本内科学会雑誌に掲載された急性鼻副鼻腔炎診療ガイドラインの解説記事は、急性鼻副鼻腔炎を「急性に発症し,発症から4週間以内の鼻副鼻腔の感染症で,鼻閉,鼻漏,後鼻漏,咳嗽といった呼吸器症状を呈し,頭痛,頬部痛,顔面圧迫感などを伴う疾患」と定義しています[2]。同ガイドライン解説記事によれば、副鼻腔における急性炎症の多くは急性鼻炎(かぜ)に引き続いて生じ、そのほとんどが急性鼻炎の症状を伴っていることから、単純に「副鼻腔炎」と呼ぶより「鼻副鼻腔炎」という用語のほうが実態に近いとされています[2]。厚生労働省の手引きも同様に、発熱の有無を問わず、くしゃみ・鼻汁・鼻閉を主症状とする急性気道感染症として急性鼻副鼻腔炎を位置づけています[1]。この記事では、一般に広く使われている「急性副鼻腔炎」という呼び方で統一して解説します。

副鼻腔は、鼻の周囲にある骨の中の空洞で、前頭洞(額の奥)・篩骨洞(両目の間)・上顎洞(頬の奥)・蝶形骨洞(さらに奥の深い場所)の4グループに分かれ、いずれも「自然口」という細い通り道で鼻腔とつながっています。健康な状態では、この自然口を通って副鼻腔内の分泌物が鼻腔へ流れ出ますが、かぜのウイルス感染などで鼻粘膜が腫れると、自然口が狭くなったりふさがったりします。そうなると副鼻腔内の分泌物が排出されずに滞留し、そこに細菌が増殖すると膿がたまり、鼻づまり・鼻汁・顔面の圧迫感や痛みといった急性副鼻腔炎の症状につながります。

図:JHO編集部が作成

この記事の図で示したとおり、4つの副鼻腔のうち特に前頭洞・篩骨洞・上顎洞は鼻や目に近い位置にあり、炎症が波及すると眼や頭蓋内に近い場所であることから合併症のリスクにもつながります(詳しくは後述の「危険な合併症のサイン」で解説します)。蝶形骨洞はさらに奥の深部にあるため自覚症状に気づきにくい一方、視神経や海綿静脈洞に近接しているため、炎症が起きた場合の合併症は重篤になりやすいことが症例報告でも指摘されています[6]。

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数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。

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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。

急性・遷延性・慢性・好酸球性副鼻腔炎の違い——期間と重症度で見分ける

急性副鼻腔炎は、症状が続く期間によって呼び方と治療方針が変わります。日本内科学会雑誌のガイドライン解説記事によれば、症状が1〜3カ月持続している場合には「亜急性」と呼ばれることもありますが、臨床的にはあまり使われず「遷延性」と呼ばれることが多く、さらに症状が3カ月以上持続している場合には「慢性鼻副鼻腔炎」に分類されることが多いとされています[2]。つまり、同ガイドラインが定義する急性副鼻腔炎の「急性」とは発症から4週間以内を指す言葉であり[2]、それを超えて症状が続く場合は同じ病名でも扱いが変わってくるということです。

分類 症状が続く期間の目安 この記事での扱い
急性副鼻腔炎 発症から4週間以内[2] メインで解説(抗菌薬の要否・経過観察・危険なサイン)
遷延性副鼻腔炎 1〜3カ月持続[2] 急性期の対応が長引いた状態。改善しなければ耳鼻咽喉科で原因の見直しが必要
慢性副鼻腔炎(蓄膿症) 3カ月以上持続[2] この記事では扱わず、関連記事で解説(後述)
好酸球性副鼻腔炎 成人発症の難治性(指定難病306) 抗菌薬が効かないタイプ。この記事では扱わず、関連記事で解説(後述)

出典:山中昇「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン(2013年追補版)at a glance」日本内科学会雑誌105巻12号(2016年)[2]/難病情報センター「好酸球性副鼻腔炎(指定難病306)」[7]

難病情報センターの解説によれば、好酸球性副鼻腔炎は、両側の鼻に多発性のポリープ(鼻茸)ができ、粘り気の強い鼻汁によって高度の鼻づまりと嗅覚障害が起こる、成人発症の難治性の副鼻腔炎です[7]。同センターによれば、この病気は抗菌薬が無効でステロイドの内服にのみ反応するタイプで、指定難病306として令和元年度の医療受給者証保持者数は9,211人と報告されています[7]。急性副鼻腔炎とは治療の考え方が根本的に異なるため、詳しくは後述のリンク先で解説している関連記事を参照してください。

軽症・中等症・重症の見分け方——受診前にできる重症度スコア

急性副鼻腔炎の治療方針を左右する最大のポイントは、症状がどの程度重いかという「重症度」です。日本鼻科学会のガイドラインでは、日常診療で使いやすいように、鼻腔所見と臨床症状を簡潔なスコアで点数化し、軽症・中等症・重症の3段階に分類する方法が示されています[2]。厚生労働省の手引きも同じスコア表を採用しています[1]。

症状・所見 なし(0点) 軽度・少量(1〜2点) 中等度以上(2〜4点)
鼻漏(鼻水) 0点 1点:時々鼻をかむ程度 2点:頻繁に鼻をかむ
顔面痛・前頭部痛 0点 1点:がまんできる程度 2点:鎮痛剤が必要なほど
鼻汁・後鼻漏の性状(鼻腔所見) 0点:漿液性(さらさらした鼻水) 2点:粘膿性で少量 4点:粘液性で中等量以上

出典:厚生労働省健康局結核感染症課「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版 ダイジェスト版」[1](日本鼻科学会「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン」2013年追補版より引用[2])

3項目の合計点で、1〜3点は軽症、4〜6点は中等症、7〜8点は重症と判定されます[1][2]。この記事の後半で解説する「抗菌薬がいつ必要か」は、基本的にこの重症度分類に沿って決められています。ただし、この鼻腔所見のスコア(鼻汁・後鼻漏の性状)は本来、診察した医師が鼻の中を見て判断する項目であるため、自分自身の症状に当てはめる際はあくまで目安として使い、正確な判定は受診時に医師に確認してください。

子ども(小児)の遷延性・重症の判定基準——大人とは別の3つの基準

ここまでの重症度スコアは主に成人を想定したものです。学童期以降の小児では、大人と同じ点数表ではなく、次の3つの基準のいずれかに当てはまるかどうかで「遷延性または重症」と判定し、抗菌薬投与を検討する目安とされています。厚生労働省の手引きは、以下のいずれかに当てはまる場合を遷延性又は重症と判定するとしています[1][3]。

基準 内容
① 10日間以上続く鼻汁・後鼻漏や日中の咳を認めるもの[1]
② 39℃以上の発熱と膿性鼻汁が少なくとも3日以上続き重症感のあるもの[1]
③ 感冒に引き続き、1週間後に再度の発熱や日中の鼻汁・咳の増悪が見られるもの[1]

出典:厚生労働省健康局結核感染症課「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版 ダイジェスト版」表4 小児の急性鼻副鼻腔炎に係る判定基準[1](厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版(案)」も同一の基準を採用[3])

厚生労働省の手引き(第四版案)によれば、この3基準は米国小児科学会の指針を踏まえたもので、①〜③のいずれにも当てはまらない場合、学童期以降の小児に対しては原則として抗菌薬投与を行わずに経過観察することが推奨されています[3]。保護者が自宅で確認しやすいのは①と②で、③は「かぜがいったん良くなったのに、1週間後にまた熱が出た、または日中の鼻水・咳がひどくなった」という経過を指すため、症状が出た日・いったん良くなった日をメモしておくと判断しやすくなります。乳幼児(学童期未満)についてはこの基準がそのまま当てはまるとは限らないため、心配な症状があれば年齢を問わず小児科・耳鼻咽喉科に相談してください。

急性副鼻腔炎の治し方の核心——抗菌薬はいつ必要で、いつ不要か

急性副鼻腔炎の治し方を考えるうえで、最も重要でありながら誤解されやすいのが「抗菌薬(抗生物質)の必要性」です。結論から言うと、急性副鼻腔炎の大部分はウイルスが原因であり、細菌感染を合併しているケースは限られています。厚生労働省の手引きは、「急性ウイルス性上気道感染症のうち,急性細菌性鼻副鼻腔炎を合併する症例は2%未満と報告されている」としており、この数字から「単純計算で98%以上の症例では抗菌薬は不要と考えられる」と説明しています[3]。

軽症は抗菌薬なしで5日間の経過観察が基本

この考え方に基づき、厚生労働省の手引きは、成人の軽症の急性鼻副鼻腔炎に対しては抗菌薬投与を行わずに5日間経過観察することを推奨しています[3]。学童期以降の小児については、同省の別のダイジェスト版が、遷延性または重症の場合を除いては抗菌薬投与を行わないことを推奨するとしています[1]。この背景には、抗菌薬を使わなくても自然に治る患者が多いという研究データがあります。同手引きが引用する報告では、「急性鼻副鼻腔炎に関しては,抗菌薬投与を行わない場合でも,1週間後には46%,2週間後には64%の患者が治癒することが報告されている」とされています[3]。

抗菌薬を使うと治るまでの時間は短縮しうるものの、その効果は限定的です。同じ報告では「抗菌薬投与は治癒までの時間を短縮させうるが,100人に抗菌薬投与を行った場合,改善が速くなるのは5〜11人程度と報告されている」とされ、一方で「抗菌薬投与群では偽薬群(プラセボ群)に比べて副作用(嘔吐,下痢,腹痛)の発生リスクが高いことも報告されている(オッズ比2.21倍,95%信頼区間1.74〜2.82倍)」と説明されています[3]。つまり、100人が抗菌薬を服用しても95人前後は「服用してもしなくても大差ない」うえに、下痢や腹痛などの副作用を経験するリスクのほうが高くなる計算です。このデータをもとに、同手引きは「急性鼻副鼻腔炎に対する抗菌薬の効果は限定的であるため,副作用のリスクを踏まえて投与を検討する必要がある」と結論づけています[3]。

中等症・重症、または10日以上長引く場合は抗菌薬を検討

一方で、すべてのケースで抗菌薬が不要というわけではありません。厚生労働省の手引きは、成人では中等症または重症の急性鼻副鼻腔炎に対してのみ、抗菌薬投与を検討することを推奨しており、その場合の基本はアモキシシリン水和物の5〜7日間経口投与とされています[1]。同手引きによれば、小児で抗菌薬を投与する場合の基本は、アモキシシリン水和物の7〜10日間経口投与です[1]。

症状が続く期間も重要な判断材料です。米国のACP/CDCの指針では、急性鼻副鼻腔炎に対する抗菌薬の適応を、「症状が10日間を超える場合や重症例の場合(39°C以上の発熱がある場合,膿性鼻汁や顔面痛が3日間以上続く場合),典型的なウイルス性疾患で症状が5日間以上続き,一度軽快してから悪化した場合」に限定しているとされています[3]。日本鼻科学会などの指針でも、軽症例(重症度スコアで1〜3点)では抗菌薬を投与せずに5日間経過観察することが推奨されています[3]。

日本鼻科学会のガイドライン解説記事が示す治療アルゴリズムは、重症度別に次のように整理されています[2]。

重症度(スコア) 初期対応 5日後に改善しない場合
軽症(1〜3点) 抗菌薬を投与せず5日間経過観察[2] アモキシシリンまたはセフェム系抗菌薬の常用量を5日間投与[2]
中等症(4〜6点) アモキシシリン高用量、またはセフェム系抗菌薬常用量のいずれかを5日間投与[2] 薬剤感受性を考慮し、アモキシシリン高用量・セフェム系高用量・レスピラトリーキノロン系のいずれか5日間、またはアジスロマイシン2g単回投与製剤[2]
重症(7〜8点) アモキシシリン高用量(1,500mg/日)などを5日間、またはアジスロマイシン2g単回投与製剤[2] 薬剤感受性を考慮して変更するか、上顎洞穿刺洗浄やセフトリアキソンによる静注抗菌薬を検討[2]

出典:山中昇「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン(2013年追補版)at a glance」日本内科学会雑誌105巻12号(2016年)[2]

抗菌薬が必要になる背景には、薬剤耐性菌の問題もあります。同ガイドライン解説記事によれば、急性鼻副鼻腔炎の主な起炎菌は肺炎球菌とインフルエンザ菌(無莢膜型)がともに約30%を占め、モラクセラ・カタラーリスが約20%検出されるとされ、遷延化・慢性化に伴ってインフルエンザ菌の検出率が上昇するとされています[2]。さらに、肺炎球菌はペニシリン耐性株(PISP+PRSP)が約50%、マクロライド耐性株が約80%を占め、インフルエンザ菌もβ-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性(BLNAR)が50%以上を占めるなど、抗菌薬治療に抵抗性を示す菌が増加していると報告されています[2]。だからこそ、必要のない場面で安易に抗菌薬を使わず、必要な場面では第一選択薬(ペニシリン系のアモキシシリン)を適切な量・期間で使うことが、薬剤耐性菌を増やさないためにも重要とされています[2]。

成人ではどんな人がなりやすいか

子育て中の世代に特徴的な傾向も報告されています。日本内科学会雑誌のガイドライン解説記事は、「成人の急性鼻副鼻腔炎で特徴的なことは,育児中の30歳代の女性が非常に多いことである」と述べています[2]。同記事はその理由として、これは保育園などで伝播した薬剤耐性菌を鼻咽腔に保有する子どもから、薬剤耐性肺炎球菌やインフルエンザ菌が感染して発症する可能性が高く、実際にこれらの成人の急性鼻副鼻腔炎の起炎菌の約半数は薬剤耐性菌であると報告しています[2]。このため同ガイドライン解説記事は、成人においても薬剤耐性菌を考慮した抗菌薬の選択が必要であり、ペニシリン系・セフェム系抗菌薬に加えて、レスピラトリーキノロン系やアジスロマイシン(2g単回投与製剤)が有効性を期待できる治療薬として推奨されているとしています[2]。小さな子どもと日常的に接する保護者は、自分の症状が軽いからと自己判断で長引かせず、5日間の経過観察の目安を踏まえたうえで、改善がなければ早めに医療機関に相談するとよいでしょう。

抗菌薬の具体的な処方判断(種類・用量・投与期間の最終決定)は、症状の経過や既往歴、地域の薬剤耐性菌の状況などを踏まえて医師が総合的に行うものです。この記事で紹介した数値はあくまで公表されているガイドラインの目安であり、個々の患者の処方内容を保証するものではありません。自己判断で市販の抗菌薬(日本では通常、抗菌薬は処方薬であり市販されていません)を使用したり、他人の残薬を使用したりすることは避けてください。

経過観察の具体的なやり方——急性副鼻腔炎の治し方を自宅で実践する

「抗菌薬を使わずに経過観察」と言われても、具体的に自宅で何をすればよいのか分かりにくいものです。ここでは、急性副鼻腔炎の治し方として自宅でできることを、何を・いつまで・どう見るかに分けて整理します。

「5日間の経過観察」とは何を見ることか

厚生労働省の手引きが推奨する「5日間の経過観察」は、単に何もせず待つことではなく、前章で紹介した重症度スコアの3項目——鼻漏の量、顔面痛・前頭部痛の強さ、鼻汁・後鼻漏の性状——が悪化していないかを日々確認することを意味します[3]。日本鼻科学会のガイドラインが示す治療アルゴリズムでも、軽症例は5日間の経過観察後に改善の有無を再評価する流れになっています[2]。再受診・治療変更を検討すべき目安は次のとおりです。

厚生労働省の手引きと日本鼻科学会のガイドラインが示す判定の目安を、日々のチェックという形に整理すると次のようになります[1][2][3]。

タイミング チェックすること
1〜2日目 発熱の有無・体温、鼻水の色と量、顔面痛の強さを記録しておく。この時点で急に高熱や強い頭痛が出た場合は、5日間を待たず受診を検討する
3〜4日目 症状が軽くなってきているか、変わらないか、悪化しているかを1〜2日目と比べる。一度軽くなったのに再び発熱・鼻汁が増えた場合は、二峰性の悪化を疑う所見の一つ[3][4]
5日目 重症度スコア(鼻漏・顔面痛・鼻汁の性状)を1〜2日目と比べて判定。改善していなければ医療機関を受診し、抗菌薬の必要性を相談する[1][3]

このように毎日の症状を簡単にメモしておくと、5日目や10日目に医師へ経過を説明しやすくなり、「良くなっているのか、変わらないのか」を自分でも判断しやすくなります。次の表は、再受診・治療変更を検討すべき目安をまとめたものです。

経過 目安
5日間観察して症状が同じか軽快している そのまま経過観察を継続。多くはさらに1〜2週間で自然に治癒していく[3]
5日後も改善がない 抗菌薬投与を検討する段階。医療機関を再受診[2]
症状が10日を超えて続く、または一度軽快してから悪化する(二峰性の経過) 細菌感染を疑う所見の一つとされ、抗菌薬の適応が検討される[3][4]
39℃以上の発熱が持続する、症状が急に悪化する 重症化のサイン。早めの受診が必要[1]

米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(AAO-HNSF)の2015年版ガイドラインも、同様の考え方を採用しています。同学会のガイドライン改訂版に関する公式ファクトシートでは、「症状や徴候が上気道感染症の発症から少なくとも10日間、改善の兆候なく持続する場合、または初期の改善後10日以内に悪化する場合(二峰性の悪化)」に細菌性急性副鼻腔炎と診断すべきとされています[4]。日米で数値の考え方に共通点が多いことが分かります。

自宅でできるケア——鼻うがい(生理食塩水)を中心に

経過観察の期間中、症状を和らげるために自宅でできることとして、鼻うがい(生理食塩水による鼻洗浄)が国際的なガイドラインで推奨されています。AAO-HNSFのガイドラインでは、ウイルス性副鼻腔炎・細菌性副鼻腔炎いずれの症状緩和にも、鎮痛薬・点鼻用ステロイドとあわせて生理食塩水による鼻洗浄を勧めてもよいとされ、症状が長引く慢性副鼻腔炎に対しても、生理食塩水による鼻洗浄や点鼻用ステロイドを推奨するとされています[4]。

鼻うがいをする際の注意

  • 使う水は、水道水をそのまま使うのではなく、洗浄液キットに付属の食塩や、薬局で購入できる鼻洗浄用の製品の説明書に従って調整したものを使う
  • 作った洗浄液は使い切りにし、作り置きしない
  • 強い勢いで一気に吸い込まず、片方の鼻からゆっくり流し入れる
  • 耳の痛みが出た場合はいったん中止し、やり方を耳鼻咽喉科で確認する

このほか、部屋の加湿、蒸しタオルなどで鼻や額を温める温罨法、就寝時に頭を少し高くする(上半身を起こし気味にする)ことも、鼻の通りをよくする目的で一般的に行われています。ただし、これらの効果を数値で示した公的な研究データは今回参照した資料の範囲では確認できておらず、あくまで対症的な工夫として位置づけてください。市販薬(抗ヒスタミン薬・血管収縮薬点鼻・去痰薬・鎮痛薬など)を使ったセルフケアの詳しい選び方は、この記事の後半でリンクする関連記事で解説しています。

鼻うがいの食塩水の具体的な濃度や作り方の細かい手順(湯温・食塩量の目安など)については、製品によって推奨方法が異なるため、この記事では数値を断定していません。薬局で購入できる鼻洗浄キットの添付文書に従うか、耳鼻咽喉科・薬剤師に確認してください。

危険な合併症のサイン——このような場合はすぐに受診を

急性副鼻腔炎の多くは自然に軽快しますが、まれに炎症が副鼻腔の外、特に目(眼窩)や頭蓋内へ広がる合併症を起こすことがあります。これらは緊急性の高い病態で、様子を見ている間に視力障害などの後遺症が残るリスクがあるため、該当する症状があれば様子見をせずすぐに受診することが重要です。

眼のまわりに出るサイン——眼窩内合併症

🚦 すぐに受診が必要な「目」のサイン

  • まぶたの腫れ・発赤
  • 物が二重に見える(複視)
  • 眼球が動かしにくい(眼球運動障害)
  • 視力が低下してきた

横浜南共済病院耳鼻咽喉科の症例報告は、急性副鼻腔炎に伴う眼合併症について「治療が遅れると重篤な後遺症を残すことがあり,早期に外科的処置が必要な耳鼻咽喉科救急疾患の一つである」と述べています[5]。同報告が扱った2年間の5症例では、3例が眼窩骨膜下膿瘍、1例が不全型海綿静脈洞症候群、1例が視神経炎と診断され、全症例で緊急手術が行われました[5]。同報告によれば、手術後、4例では視機能が回復しましたが、術前の視力が「手動弁」(目の前で手を動かしたのが分かる程度)まで低下していた1例では、視力は改善しませんでした[5]。同報告は、視力障害が残るかどうかを左右する要因として、初診時の視力・視野・視神経乳頭の所見に加えて、発症から手術までの日数を挙げています[5]。つまり、視力に関わる症状(複視・視力低下など)が出てから受診・治療までの時間が短いほど、視力が回復する可能性が高いということです。眼窩内合併症が疑われる場合は、耳鼻咽喉科と眼科の両方で緊急に評価を受ける必要があります。

頭にかかわるサイン——頭蓋内合併症

🚦 すぐに受診・救急要請が必要な「頭」のサイン

  • これまでに経験したことがないような激しい頭痛
  • 意識がぼんやりする、呼びかけへの反応が鈍い
  • 首の後ろが硬く、下を向きにくい(項部硬直)
  • けいれん
  • 38℃台後半以上の発熱が続き、頭痛や意識の変化を伴う

耳鼻咽喉科の学術誌に掲載された症例報告は、急性副鼻腔炎から頭蓋内合併症(硬膜下膿瘍・化膿性髄膜炎)を起こした11歳男児の経過を詳しく記録しています[6]。同報告によれば、この症例では、前頭部痛が出現してから2日目に38℃の発熱、4日目に激しい頭痛が現れ、6日目に化膿性髄膜炎・右硬膜下膿瘍・急性副鼻腔炎の疑いで救急搬送されています[6]。入院時には体温39℃、Kernig徴候(膝を伸ばそうとすると抵抗と痛みが出る、髄膜炎を示唆する所見)と項部硬直が認められ、緊急手術(内視鏡下鼻内手術と開頭による硬膜下膿瘍の洗浄・ドレナージ)が行われた結果、後遺症なく退院できたと報告されています[6]。同報告は、1987年以降に日本国内で報告された鼻性頭蓋内合併症70症例の傾向として、10歳代の若年男性が多く、前頭洞に主な病変がある場合には脳膿瘍の形成が多く、蝶形骨洞に主な病変がある場合には髄膜炎や海綿静脈洞血栓症が多いことを紹介しています[6]。若い世代でも油断できない合併症であることが分かります。

眼窩内合併症・頭蓋内合併症のいずれも、平日の外来受診を待つべきではありません。上記のサインに当てはまる場合は、休日・夜間であっても救急外来(耳鼻咽喉科の緊急対応が可能な病院、または症状によっては119番)を受診してください。

受診の目安——症状別にいつ・何科を受診すべきか

ここまで章ごとに紹介してきた「いつ受診すべきか」の基準を、日本鼻科学会のガイドラインと厚生労働省の手引き、耳鼻咽喉科の学会誌の症例報告をもとに一つの表にまとめます[1][2][5][6]。

状態 受診の目安 何科・タイミング
軽症(重症度スコア1〜3点)で発症間もない 厚生労働省の手引きに沿って抗菌薬なしで5日間経過観察[3] 平日の耳鼻咽喉科・内科で可
5日間観察しても改善しない、または中等症・重症(4点以上) 抗菌薬投与の必要性を相談[1][2] 数日以内に耳鼻咽喉科・内科を受診
症状が10日を超えて続く、または一度軽快してから悪化する(二峰性) 日本鼻科学会のガイドラインが細菌感染を疑う目安とする所見[3][4] 早めに耳鼻咽喉科を受診
まぶたの腫れ・複視・視力低下・眼球運動障害 耳鼻咽喉科の学会誌の症例報告が緊急性の高い所見として挙げる眼窩内合併症のサイン[5] 即日、耳鼻咽喉科と眼科の緊急受診(救急外来)
これまでにない激しい頭痛・意識の変化・項部硬直・けいれん・39℃以上の発熱持続 症例報告が頭蓋内合併症の危険なサインとして記録[6] 様子を見ず救急外来・119番を検討

出典:厚生労働省健康局結核感染症課「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版 ダイジェスト版」[1]/山中昇「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン(2013年追補版)at a glance」日本内科学会雑誌105巻12号[2]/生駒亮ほか、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報120巻8号[5]/森野常太郎ほか、耳展56巻3号[6]

受診の目安を一言でまとめると、「軽症・発症間もない」うちは自宅での経過観察が基本ですが、「長引く・悪化する・目や頭に症状が及ぶ」の3つのいずれかに当てはまった時点で、経過観察から医療機関への相談に切り替えるタイミングということです。特に眼窩内合併症・頭蓋内合併症のサインは、平日の外来を待たず救急受診が必要です。

日本と海外(AAO-HNSF)の急性副鼻腔炎ガイドライン比較

急性副鼻腔炎の治し方の考え方は、日本と米国でおおむね共通していますが、表現や強調点にはやや違いがあります。日本鼻科学会・厚生労働省の手引きと、米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(AAO-HNSF)が2015年に更新した成人副鼻腔炎ガイドラインを比較すると、次のようになります。

項目 日本(日本鼻科学会・厚生労働省) 米国(AAO-HNSF 2015年版)
細菌感染を疑う目安 重症度スコアで中等症(4〜6点)以上[1] 症状が10日間、改善なく持続、または改善後10日以内に悪化(二峰性)[4]
軽症例への対応 抗菌薬を投与せず5日間経過観察[2][3] 経過観察(無投薬)または初期抗菌薬治療のいずれかを提示し、経過観察を選ぶ場合は7日以内に改善しなければ抗菌薬を開始する体制を整えることを条件とする[4]
第一選択の抗菌薬 アモキシシリン(成人5〜7日間、小児7〜10日間)[1] アモキシシリン(クラブラン酸の併用の有無は問わない)を多くの成人に5〜10日間[4]
画像検査 特段の推奨記載は今回参照した資料の範囲では確認できず 合併症や別の診断が疑われない限り、急性副鼻腔炎の診断基準を満たす患者に画像検査は行わないことを推奨[4]
生理食塩水による鼻洗浄 個別の推奨記載は今回参照した資料の範囲では確認できず ウイルス性・細菌性いずれの急性副鼻腔炎の症状緩和にも、また慢性副鼻腔炎にも推奨[4]

両者で目立った矛盾はありませんが、米国のガイドラインは「症状10日間」という具体的な日数を診断基準そのものに組み込んでいるのに対し、日本の手引きは重症度スコアを主軸としつつ、参考としてACP/CDCの「10日間」という基準も紹介する形をとっています[3]。また、生理食塩水による鼻洗浄については、日本の一次資料(手引き・ガイドライン解説記事)の範囲では明確な推奨文言が確認できなかったため、この記事では米国側の推奨を国際的な参考情報として紹介しています。どちらの国でも共通しているのは、「軽症・初期はまず抗菌薬なしで様子を見る」という基本方針です。

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市販薬・手術・慢性化・うつるかどうか——関連記事もあわせて確認を

ここまで、急性副鼻腔炎の治し方の核心である「抗菌薬の要否」「経過観察のやり方」「危険なサイン」を中心に解説してきました。以下の4つのテーマは、それぞれ別の記事で詳しく取り上げているため、ここでは要点のみに留めます。

市販薬の選び方:ドラッグストアで買える市販薬には、抗ヒスタミン薬・血管収縮薬入りの点鼻薬・去痰薬・鎮痛薬など複数の種類があり、症状に応じた選び方や、血管収縮薬入り点鼻薬を使いすぎた場合のリスクについては、黄色い鼻水は副鼻腔炎のサイン?原因・治し方・市販薬の選び方まで徹底網羅で詳しく解説しています。市販薬はあくまで対症療法であり、中等症・重症の場合に必要な抗菌薬の代わりにはならない点に注意してください。

手術・慢性化・好酸球性副鼻腔炎:この病気そのもので手術になることはまれですが、3カ月以上症状が続いて慢性副鼻腔炎に移行した場合や[2]、両側の鼻茸と嗅覚障害を伴う指定難病の好酸球性副鼻腔炎では[7]、内視鏡下鼻副鼻腔手術が選択肢になることがあります。治療の流れや費用については、治らない慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の最新治療|難病指定「好酸球性副鼻腔炎」の薬と手術費用も解説で詳しく確認できます。

人にうつるかどうか:急性副鼻腔炎という病名そのものが感染症として人から人へうつるわけではありません。ただし、日本内科学会雑誌のガイドライン解説記事が示すとおり、副鼻腔の急性炎症の多くは急性鼻炎(かぜ)に引き続いて起こり、そのきっかけとなるウイルス性のかぜ自体は周囲にうつる可能性があると考えられます[2]。咳エチケットや手洗いなど、一般的なかぜの感染対策が結果的にその予防にもつながると言えます。

🖨️ 受診時に医師に伝えるためのメモ(印刷してお使いください)——副鼻腔炎の治し方を医師と相談するための準備

  • いつから、どんな症状(鼻水の色・量、鼻づまり、顔面の痛み、頭痛、発熱)があるか
  • 発熱があれば何度まで上がったか、何日続いているか
  • 症状が一度良くなってから、再び悪化した時期はあるか
  • 市販薬(点鼻薬・鎮痛薬など)を使っているか、いつからどのくらいの頻度で使っているか
  • 目の症状(腫れ・二重に見える・見えづらい)や、激しい頭痛・意識がぼんやりする感じがあるか
  • 過去に副鼻腔炎や中耳炎を繰り返したことがあるか、喘息やアスピリン不耐症があるか

特に発症からの日数と、症状が一度軽快してから悪化したかどうかは、抗菌薬の必要性を判断するうえで医師が重視する情報です。可能な範囲で日付を書き出しておくと、診察がスムーズに進みます。

よくある質問

急性副鼻腔炎とは何ですか?かぜとの違いは何ですか?
日本内科学会雑誌のガイドライン解説記事によれば、急性副鼻腔炎は、発症から4週間以内の鼻副鼻腔の感染症で、鼻づまり・鼻水・後鼻漏に加えて頭痛や頬部痛、顔面の圧迫感を伴う病気です[2]。厚生労働省の分類では、かぜ(感冒)は鼻・喉・咳の症状が同程度に出るのに対し、急性副鼻腔炎は鼻の症状が主体で喉の痛みや咳が目立たない点が特徴とされています[1]。同ガイドライン解説記事によれば、副鼻腔の急性炎症の多くは、かぜのウイルス感染に引き続いて起こります[2]。
急性副鼻腔炎の主な症状にはどんなものがありますか?
日本内科学会雑誌のガイドライン解説記事によれば、主な症状は、鼻づまり・鼻水(鼻漏)・後鼻漏(鼻水がのどに流れる感じ)・顔面痛や前頭部痛です[2]。厚生労働省の手引きが示す重症度は、鼻水の量・顔面痛の強さ・鼻汁や後鼻漏の性状(さらさらか、粘り気があるか)で判定され、症状が重いほど抗菌薬の必要性が高まります[1]。耳鼻咽喉科の学会誌の症例報告によれば、まぶたの腫れや視力の変化、激しい頭痛を伴う場合は、通常の経過とは別に、緊急性の高い合併症を疑う必要があります[5][6]。
急性副鼻腔炎の治し方は?自宅で何をすればいいですか?
厚生労働省の手引きによれば、軽症であれば、抗菌薬を使わずに5日間ほど症状の変化を観察するのが基本的な治し方です[3]。その間、AAO-HNSFのガイドラインでは、生理食塩水による鼻うがいが症状緩和の方法として挙げられています[4]。日本鼻科学会のガイドラインと厚生労働省の手引きによれば、5日間観察して改善がない場合や、10日以上症状が続く場合、一度良くなってから悪化した場合は、医療機関を受診し抗菌薬の必要性を相談してください[2][3]。
抗菌薬(抗生物質)は必ず必要ですか?
必ずしも必要ではありません。厚生労働省の手引きによれば、急性の細菌性鼻副鼻腔炎を合併する症例はウイルス性上気道感染症全体の2%未満とされており、多くはウイルス性で自然に治ります[3]。同手引きは、成人の軽症例には抗菌薬を使わず5日間の経過観察を推奨し、中等症・重症例に対してのみ抗菌薬投与を検討することを推奨しています[3]。
抗菌薬を使わない場合、どのくらいで治りますか?
厚生労働省の手引きによれば、抗菌薬を投与しなくても、1週間後には46%、2週間後には64%の患者が治癒すると報告されています[3]。ただし、同手引きと日本鼻科学会のガイドラインによれば、5日間観察しても改善がない場合や、10日を超えて症状が続く場合は、抗菌薬の必要性を含めて医療機関に相談することが勧められます[2][3]。
副鼻腔炎で熱が出るのはどんなときですか?
急性副鼻腔炎の重症度分類そのものには発熱の項目は含まれていませんが、厚生労働省の手引きは、小児で抗菌薬投与を検討する基準の一つとして「39℃以上の発熱と膿性鼻汁が少なくとも3日以上続き重症感のあるもの」を挙げています[1]。成人でも、39℃以上の発熱が続く場合は重症化のサインとして早めの受診が勧められます。さらに、耳鼻咽喉科の学術誌の症例報告が示すとおり、38℃台後半以上の発熱に激しい頭痛や意識の変化を伴う場合は、頭蓋内合併症を疑う緊急性の高いサインです[6]。
副鼻腔炎の頭痛には、どんな特徴がありますか?危険な頭痛との違いは?
厚生労働省の手引きによれば、急性副鼻腔炎の頭痛は、顔面痛や前頭部痛として重症度スコアの一項目に含まれており、「がまんできる程度」か「鎮痛剤が必要なほど」かで点数化されます[1]。一方、これまでに経験したことがないような激しい頭痛に、意識がぼんやりする、首の後ろが硬い、けいれんなどを伴う場合は、髄膜炎や硬膜下膿瘍といった頭蓋内合併症の可能性があり、緊急受診が必要です。耳鼻咽喉科の学術誌に掲載された実際の症例報告では、前頭部痛が出てから数日で激しい頭痛と発熱が進行し、化膿性髄膜炎と診断されたケースが報告されています[6]。
市販薬でも治りますか?
市販薬は鼻づまりや痛みなどの症状を和らげる対症療法であり、原因そのものを治す薬ではありません。特に血管収縮薬入りの点鼻薬は、症状緩和には有効な場面がある一方で使い方に注意が必要です。市販薬の種類ごとの選び方や注意点は前章で紹介した関連記事で詳しく解説しています。厚生労働省の手引きが示すとおり、中等症・重症で抗菌薬が必要な場合、市販薬だけでは治療になりません[1]。
手術が必要になるのはどんな場合ですか?
急性副鼻腔炎そのもので手術になることはまれです。耳鼻咽喉科の学会誌の症例報告や難病情報センターの解説によれば、手術が検討されるのは主に慢性化した場合や、鼻茸を伴う好酸球性副鼻腔炎、または眼窩内・頭蓋内合併症を起こした緊急のケースです[5][6][7]。手術の詳しい内容・費用については前章で紹介した関連記事で解説しています。
急性副鼻腔炎は人にうつりますか?
急性副鼻腔炎という病名自体が感染症として直接うつるわけではありません。ただし、日本内科学会雑誌のガイドライン解説記事によれば、副鼻腔の急性炎症の多くはかぜのウイルス感染に引き続いて起こるとされており[2]、そのきっかけとなったウイルス性のかぜは周囲にうつる可能性があります。手洗いや咳エチケットなど、一般的なかぜの感染対策を行うことが勧められます。
何科を受診すればいいですか?
基本的には耳鼻咽喉科が専門です。かかりつけの内科でも初期対応や抗菌薬の処方は可能ですが、鼻の中の状態を詳しく確認したい場合や、症状が長引く・繰り返す場合は耳鼻咽喉科の受診が勧められます。耳鼻咽喉科の学会誌の症例報告が示すとおり、まぶたの腫れ・視力の変化・激しい頭痛・意識の変化がある場合は、様子を見ずに救急外来(耳鼻咽喉科または脳神経外科と連携できる病院)を受診してください[5][6]。
慢性化するとどうなりますか?
日本内科学会雑誌のガイドライン解説記事によれば、症状が3カ月以上続くと慢性副鼻腔炎(蓄膿症)に分類されます[2]。中でも難病情報センターによれば、好酸球性副鼻腔炎は、両側の鼻茸と粘り気の強い鼻汁により高度の鼻づまりと嗅覚障害を来す難治性のタイプで、抗菌薬は効かず、指定難病として医療費助成の対象になっています[7]。詳しい治療法は前章で紹介した関連記事で解説しています。

急性副鼻腔炎についてさらに全体像を知りたい場合は副鼻腔炎(蓄膿症)とは?〜その原因から最新治療までを専門家が徹底解説〜を、副鼻腔炎の治し方のうち、鼻うがいなど自宅ケアの方法をさらに詳しく知りたい場合は効果的な鼻洗浄の完全ガイド:日本の花粉症・副鼻腔炎対策のすべてを、耳鼻咽喉科の代表的な急性疾患を横断的に比較したい場合は耳鼻咽喉科三大急性疾患(副鼻腔炎・中耳炎・咽頭炎)の全て:診断・治療の完全ガイドもあわせてご覧ください。副鼻腔炎に関する記事の一覧は副鼻腔炎の関連記事まとめから確認できます。

参考文献

  1. 厚生労働省健康局結核感染症課「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版 ダイジェスト版」 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000647502.pdf ↩
  2. 山中昇「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン(2013年追補版)at a glance」日本内科学会雑誌105巻12号(2016年)2403-2408頁 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/12/105_2403/_pdf ↩
  3. 厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版(案) 医科・外来編」 https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001575216.pdf ↩
  4. American Academy of Otolaryngology–Head and Neck Surgery Foundation「AAO-HNSF Updated Clinical Practice Guideline: Adult Sinusitis」Press Release & Fact Sheet(2015年4月1日) http://www.entnet.org/wp-content/uploads/files/april2015asupdatedguidelinefactsheetfinal.pdf ↩
  5. 生駒亮ほか「視機能障害を伴う急性副鼻腔炎症例」日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報120巻8号(2017年)1079-1085頁 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/120/8/120_1079/_pdf ↩
  6. 森野常太郎ほか「硬膜下膿瘍をきたした急性副鼻腔炎の1例」耳展56巻3号(2013年)111-119頁 https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo/56/3/56_111/_pdf ↩
  7. 難病情報センター「好酸球性副鼻腔炎(指定難病306)」 https://www.nanbyou.or.jp/entry/4538 ↩

最終更新日:2026年7月25日(更新日・確認日)。内容の誤り・古い情報にお気づきの場合は、お問い合わせフォームよりご指摘ください。いただいたご連絡は編集部で確認のうえ、必要に応じて修正いたします。

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Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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