はじめに
こんにちは、JHO編集部です。健康を維持するうえで、骨格の健康や姿勢を意識することは極めて重要です。その中でも、脊椎側弯症(せきついそくわんしょう)という背骨のゆがみに関する知識を身につけておくことは、早期発見と対策を講じるうえで大いに役立ちます。脊椎のゆがみは年齢や生活習慣を問わず起こりうる問題であり、とくに成長期の10歳から15歳ごろの子どもでは進行しやすいことが知られています。本記事では、脊椎側弯症のさまざまなタイプと特徴、そしてそれぞれに対してどのような治療やケアが考えられるかをわかりやすく解説します。お子さまの健康が気になる保護者の方はもちろん、成人や高齢の方でも参考になる内容です。ぜひ最後までお読みいただき、ご自身やご家族の健康管理にお役立てください。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
専門家への相談
この記事では、修士号取得者・医師・講師 グエン・フー・ドゥック・ミン(Nguyễn Hữu Đức Minh)の見解を参考にしています。グエン・フー・ドゥック・ミン氏はベトナムの医師であり、整形外科の専門家として広く知られています。彼はデイケアクリニック&スパ(DayCare Clinic & Spa)で教鞭をとっており、その豊富な知識と経験をもとに本記事の内容を構成しました。
もっとも、脊椎側弯症の診断や治療方針は個々の症例によって大きく異なります。ここで紹介する情報はあくまで一般的な知識や考え方であり、実際の治療は必ず医師などの専門家に相談のうえで決定してください。
脊椎側弯症の主なタイプ
脊椎側弯症には、原因や発症時期によりいくつかの異なるタイプがあります。主に先天性、特発性、構造的な問題に起因するもの、あるいは神経や筋肉の異常から生じるものなど、多岐にわたる分類が存在します。本章では、それぞれのタイプを詳しくご紹介します。
1. 先天性脊椎側弯症
先天性脊椎側弯症は、胎児期の発達過程で脊椎の骨に形成不全が起こり、出生時から明らかな変形を伴うタイプです。一般的には1万人に1人の割合で発生するといわれ、比較的まれな病態です。原因としては、脊椎の骨が完全に形成されなかったり、一部が欠損したりすることが挙げられます。症状の程度は軽度から重度までさまざまで、重症度や進行度合いに応じて治療法が変わります。
- 早期診断と介入が極めて重要
生まれた直後から脊椎の異常が確認されるケースもあり、軽度な場合は経過観察のみで十分なこともあります。しかし、重度の場合は外科的介入が求められるケースがあります。成長期に入るまでに適切な治療を行うことで、脊椎の将来的な発育を大きく改善できる可能性があります。
たとえば、生後数か月の赤ちゃんの脊椎に顕著な変形が見られる場合、すぐに整形外科専門医の診断を受けることが望ましいです。適切な治療方針を早期に立てることで、成長に伴うさらなるゆがみを抑えることができます。
2. 特発性側弯症
特発性側弯症は、脊椎側弯症全体のおよそ80%を占める、最も一般的なタイプです。主に10歳から18歳の成長期の若年層に多く見られますが、原因は明確には解明されていません。
- 思春期に急激に進行しやすい
思春期は骨の成長が著しい時期であるため、脊椎が「S」字型や「C」字型に曲がりやすく、気づかないうちに変形が進むことがあります。学校の健康診断で最初に指摘されるケースも多く、ここで早期に気づくことが進行を抑えるための鍵となります。 - コルセットや理学療法が中心
軽度~中等度の場合は、コルセットを装着して変形を抑えたり、理学療法で姿勢や筋力を補正したりする治療が主流です。重度になると、外科的手術が検討される場合もあります。
たとえば、学校の検診で「背骨が曲がっている可能性がある」と言われたら、早めに整形外科を受診するのが望ましいです。この段階でコルセットや運動療法などを開始することで、将来的な進行を抑えられるケースが少なくありません。
3. シュエルマン病(キフォーシス)
シュエルマン病(Scheuermann’s Kyphosis)は、成長期の若年層に発症しやすい脊椎の異常で、単なる猫背や姿勢の悪さと異なり、自然には矯正しにくい構造的な変形を特徴とします。脊椎を構成する椎体がくさび形に変形することで、背中が強く丸くなる(いわゆるキフォーシス)傾向が強まります。通常は12歳から15歳の間に発症しやすいとされます。
- 姿勢矯正器具やリハビリが有効
早期で軽度な段階では、姿勢矯正器具(装具)や理学療法を組み合わせた治療が行われ、重度の場合は手術が検討されます。長時間の座位や前屈みの姿勢をとると背中に痛みが出やすいのも特徴です。
たとえば、ふだんから背中の張りや痛みを訴えたり、猫背が強く気になるような場合は、専門医に相談してシュエルマン病を疑う必要があります。日常生活での姿勢管理や運動指導を続けることで、痛みの軽減や進行防止が期待できます。
4. 神経筋性脊椎側弯症
神経筋性脊椎側弯症は、脳性まひや脊髄損傷など神経・筋肉の異常が原因で起こるタイプの側弯症です。このタイプは変形の進行速度が速く、患者さんの生活や機能に大きく影響を及ぼします。
- リハビリや手術による集中的な治療が必要
神経・筋の異常が背景にあるため、一般的なコルセットや単純な理学療法だけで進行を抑制するのが難しい場合が多く、重度の場合は手術を考慮するケースも少なくありません。 - 多職種連携が重要
リハビリテーション科、整形外科、神経内科など、多くの専門家がチームを組んでサポートすることが求められます。筋力や可動域を維持・向上させるための理学療法、痛みの管理、さらに日常生活動作のアシストなど、幅広い支援が必要になります。
たとえば、筋力低下が進んで車いすでの生活が中心となっている方は、クッションの選び方や座位バランスを保つ工夫、二次的に生じる皮膚トラブルの予防など、日常のケアに細心の注意が必要です。
5. 症候性脊椎側弯症
症候性脊椎側弯症は、ほかの基礎疾患や症候群(たとえばマルファン症候群やエーラーズ・ダンロス症候群など)に伴って発症するタイプです。原因となる病態や合併症が多岐にわたるため、患者一人ひとりに合わせた個別の治療計画が必要です。
- 合併症との総合的なマネジメント
たとえばエーラーズ・ダンロス症候群は、関節や皮膚の結合組織に異常が起こりやすいことが知られています。こうした背景から、脊椎の側弯が進みやすい場合もあり、ほかの症状との兼ね合いを考慮した対応が求められます。 - 生活の質向上を重視
症候群自体が引き起こすさまざまな問題(関節の過可動性など)と併発しやすいため、痛みや姿勢の乱れを軽減しつつ、長期的な生活の質を保つことが重要な目的となります。
たとえば、基礎疾患による関節痛や疲労感、筋力低下が顕著な場合には、脊椎だけを治療するのではなく、複数の診療科やリハビリ専門家の協力を得ながら進めることが望まれます。
6. 変性脊椎側弯症
変性脊椎側弯症は、中年以降、特に高齢期に見られるタイプで、加齢に伴う椎間板の劣化や骨の変性が原因となって起こります。進行性の若年型側弯症とは異なり、慢性的な痛みや姿勢の変化を伴うことが多く、日常生活への影響が大きいのが特徴です。
- 高齢者では約60~70%に兆候がみられるとも
一部の文献では、60歳以上の高齢者の68%ほどに何らかの脊椎側弯症状があるという報告もあります。加齢による骨粗しょう症や椎間板のすり減りが進むと、背中や腰の痛みが強くなるほか、歩行や立ち上がりが困難になる場合があります。 - 物理療法や痛みの管理を中心に
軽度の場合は物理療法や運動指導、生活習慣の改善により痛みと変形をコントロールすることを目指しますが、痛みが強かったり神経を圧迫している重度のケースでは手術を行う場合もあります。
たとえば、日常的に腰のこわばりや痛みを感じる高齢者の方が、階段の昇降や長時間の歩行に不安を訴える場合、変性脊椎側弯症が疑われます。早期に整形外科などを受診し、リハビリや運動の指導、薬物療法などで痛みや日常生活動作を総合的にサポートしていくことが肝心です。
変性脊椎側弯症に関する新しい研究例
近年、変性脊椎側弯症の有病率に関する系統的レビューが進んでいます。たとえば、2021年にTang XらがJournal of Orthopaedic Surgery and Researchで発表した系統的レビュー(DOI: 10.1186/s13018-021-02382-y)では、中国の高齢者を対象とした複数の研究を解析した結果、脊椎の変性による側弯症は男女ともに年齢とともに有意に増加する傾向が報告されています。こうした研究は高齢者における変性脊椎側弯症の正確な実態把握に寄与し、適切な予防や治療指針の整備につながると考えられます。ただし、各研究によってサンプルの人種や生活環境、定義の違いなどの変数があるため、日本国内への完全な当てはめには注意が必要です。しかし、高齢者人口が多い日本でも参考になる知見であり、日々の生活習慣や適切なリハビリテーションの導入が極めて重要であることが示唆されています。
脊椎側弯症の一般的な症状
脊椎側弯症の症状は、進行度やタイプによって異なりますが、以下のようなサインに注目することで早期に気づきやすくなります。
- 左右非対称な肩の高さ
鏡や写真で見ると、片方の肩がもう片方よりも明らかに高い場合があります。成長期の子どもでこうした左右差があれば、特発性側弯症を疑うきっかけになります。 - 背骨が直線ではない
正面から見た背骨が「S」字型や「C」字型になっている場合、脊椎側弯症の可能性があります。前屈したときに背中の形を観察すると、曲がり具合がよりはっきり分かることが多いです。 - 一方の肩甲骨の突出
前屈や軽く腰を曲げたとき、一方の肩甲骨だけが突き出て見えることがあります。これは背中や腰の筋肉のバランスが崩れ、脊椎が変形しているサインかもしれません。 - 左右非対称な骨盤の高さ
腰の高さや骨盤の位置が左右で異なり、歩行や立ち座りのときに違和感や痛みを伴う場合があります。腰痛をきっかけに発覚することも多く、成人以降の側弯症を見つける手がかりになります。 - 背中が丸く見える
いわゆる「猫背」が顕著になり、背中の丸みが大きい場合、キフォーシスなどの脊椎の湾曲異常を示唆します。長時間座っているときなどに背中の痛みや疲労感が増すのが特徴です。
成人で重度の場合の追加症状
- 腰痛やこわばり
朝起きたときや長時間同じ姿勢で過ごしたあとなどに、腰のこわばりや痛みを強く感じることがあります。 - 筋肉痛や筋力低下
脊椎のゆがみにより周囲の筋肉に過度な負荷がかかり、背筋や腰部の筋肉を中心に痛みや疲労を感じやすくなります。また、長期的には筋力低下が進むこともあります。 - 神経圧迫による痛みやしびれ
変形した脊椎が神経を圧迫し、腰や下肢にしびれや痛みを引き起こす場合があります。進行すると歩行が困難になり、生活に支障を来す恐れがあります。 - 運動機能の喪失
重度では階段の昇り降りが難しくなったり、長距離を歩けなくなったりと、日常的な動作に大きな制限が出ます。 - 疲労感や呼吸困難
背骨の変形により肺の容積が制限され、呼吸が浅くなりやすくなるケースもあります。とくに運動時や長時間の活動後に息切れや疲労を感じやすくなることがあります。
症状に応じた治療方法
脊椎側弯症の治療は、症状の進行度や患者さんの年齢、基礎疾患の有無などによって大きく異なります。
- 薬物療法
痛みや炎症を抑えるための鎮痛薬や消炎鎮痛薬を使用する場合があります。特に慢性的な痛みがある高齢者には、痛みをうまくコントロールすることが生活の質(QOL)の維持に重要です。 - 理学療法
筋力強化や柔軟性の向上、姿勢改善を目的とした運動療法が中心です。特発性側弯症の初期対応や、神経筋性側弯症などのリハビリにも広く用いられます。 - 非薬物療法(マッサージ、整体、鍼灸など)
日常的なケアや、痛み・筋緊張の緩和を目的に取り入れられることがあります。ただし、あくまで症状軽減の補助的手段であり、医師の診察や理学療法と併用して行うのが望ましいです。 - コルセット
特発性側弯症の10代前半や、キフォーシス(シュエルマン病)などで姿勢をサポートするために装着されることが多いです。変形の進行を抑える効果が期待できます。 - 手術
重度の変形や神経圧迫などが見られる場合、外科的矯正と固定が検討されます。人工骨や金属のインプラントを用いて脊椎を正しい位置に近づける手術が行われます。特に神経筋性脊椎側弯症では、進行をくい止めるために手術が必要になるケースが比較的多いです。
たとえば、初期の軽度なケースでは理学療法と姿勢改善を組み合わせることで進行を防ぐことが期待できます。しかし、変形が大きく、痛みや神経症状が強い場合にはコルセットや外科的手術が視野に入ります。早期発見・早期治療が予後に大きく関係するため、「少し背骨が曲がっているかも」と感じた段階でも専門家に相談することが望ましいです。
結論と提言
脊椎側弯症は、多様なタイプと症状を有する複雑な骨格の問題です。子どものころは特発性側弯症が多く、早期発見により進行を最小限に抑えられる場合が少なくありません。成人や高齢者では変性による側弯症が増え、慢性的な痛みや日常生活動作への支障が問題となるケースが多く見られます。
- 早期発見と専門家への相談を
背骨のわずかなゆがみや肩の高さの左右差など、気になる兆候がある場合は、迷わず整形外科などの専門医を受診しましょう。特に成長期の子どもは進行のスピードが速い可能性があるので、学校検診や日常観察で異常に気づいたら放置しないことが大切です。 - 個々の背景に合わせた治療選択
患者の年齢、基礎疾患の有無、脊椎の歪みの程度によって治療の組み合わせは変わります。コルセット、理学療法、運動療法、痛みのコントロール、手術など、さまざまなオプションを慎重に選択していくことが重要です。 - 生活習慣や姿勢の見直しも重要
通院や手術に限らず、日頃の姿勢や生活習慣の改善が長期的な予防・軽減効果をもたらします。適切な運動や体操を取り入れたり、デスクワーク時の座り方を工夫したりすることで、脊椎への負担を軽減できます。
たとえば、子どもの背中にごくわずかな歪みを見つけたら、早めに医師の診察を受け、必要であればコルセットや理学療法などを取り入れることで、将来的な重症化を防げる可能性があります。成人や高齢の方でも、痛みや姿勢の悪化に「年のせい」とあきらめず、医療機関で検査を受けることで、より良い生活の質を保つための道が開けるかもしれません。
重要な注意点
本記事で取り上げた情報は一般的な健康情報であり、個別の症例すべてに当てはまるとは限りません。また、本記事は医療資格を持つ専門家による個別診断の代替とはなりえません。実際の治療や診断は必ず医師などの専門家の判断を仰いでください。
参考文献
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- Degenerative Scoliosis アクセス日: 28/12/2021
- Tang X ら (2021) “The prevalence of degenerative scoliosis among Chinese populations: a systematic review and meta-analysis,” Journal of Orthopaedic Surgery and Research, 16(1):717, doi: 10.1186/s13018-021-02382-y
本記事は、脊椎側弯症に関する代表的な知見を紹介することで、読者の皆様の理解を深めることを目的としています。もしご自身やご家族に気になる症状がある場合は、早期に専門医に相談し、適切な治療や予防措置をとるようにしましょう。日常生活での姿勢や運動も、長期的な健康維持に大きな影響を与えます。どうぞお大事になさってください。