薬剤性腎障害とは?原因になる薬と症状・受診の目安を解説
この記事でわかること
目次
- 結論から言うと
- 要点まとめ
- 編集方針
- 薬剤性腎障害とは?体の中で何が起きているのか
- 腎前性・腎性が起こる仕組みをもう少し詳しく
- 特に注意したい薬剤とリスク——薬の種類ごとに見る仕組み
- 薬の種類ごとに見る注意点——一般の方向けにまとめられた説明
- どんな人が薬剤性腎障害になりやすいのか
- 見逃してはいけないサイン・受診の目安——すぐ医師・薬剤師に連絡すべきこと
- 病院で行われる検査——血清クレアチニン・尿検査
- 発症までの期間で見る分類——急性・亜急性・慢性
- 実際に報告された件数で見る——原因になりやすい薬
- 市販薬・お薬手帳——「自己判断で薬をやめない」がいちばん大切な理由
- 治療と見通し——早く気づけば回復することも多い
- 実際の症例で見る薬剤性腎障害——気づいて中止すれば回復した例
- 薬の副作用で入院するほどの被害を受けたとき——医薬品副作用被害救済制度
- 日常でできる予防——リスクが重なりやすい場面を知っておく
- よくある質問
- 参考文献
結論から言うと
薬剤性腎障害とは、治療のために使った薬が原因で腎臓の機能が低下することです。NSAIDs(痛み止め・解熱鎮痛薬)、一部の抗菌薬、レントゲン検査で使うヨード造影剤、一部の抗がん剤などで起こりうると報告されています[1]。
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高齢の方、脱水気味の方、もともと腎機能が低下している方、複数の薬を併用している方は特にリスクが高いと報告されています[1]。むくみ・尿量の減少・強いだるさが出たら、自己判断で薬をやめる前に、まず医師・薬剤師に連絡してください。
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要点まとめ
編集方針
本記事はJHO編集部がAIツールの支援を受け、厚生労働省・日本腎臓学会がまとめた「重篤副作用疾患別対応マニュアル」など公的機関の一次資料と照合して作成しました。最終確認は人の目で行っています。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点)。
薬剤性腎障害とは?体の中で何が起きているのか
薬剤性腎障害とは、治療のために服用・使用した医薬品が原因となって、腎臓の機能が急に、あるいは長い時間をかけて低下してしまう状態を指します。私たちが飲んだり注射したりした薬の多くは、最終的に腎臓を通って尿の中に排泄されます。そのため、体の他の部分に比べて腎臓に薬の成分が集まりやすく、負担がかかりやすいと報告されています[1]。
厚労省と日本腎臓学会がまとめたマニュアルでは、薬剤性の腎障害を「どこに原因があるか」という視点から、次の3つのタイプに分類しています[1]。腎臓のはたらき全般については腎臓の病気について詳しく知る(腎臓まとめ)もあわせてご覧ください。
まず腎前性は、腎臓そのものではなく、腎臓へ流れ込む血液の量が減ることで機能が落ちるタイプです。代表例はNSAIDs(解熱鎮痛薬)と高血圧治療薬(ACE阻害薬・ARB)と報告されています[1]。次に腎性は、腎臓の中の尿細管や糸球体そのものが、薬の毒性やアレルギー反応によって直接傷つくタイプで、抗菌薬・抗がん剤・造影剤などが代表例に挙げられています[1]。最後に腎後性は、できた尿が通る道(尿管など)がつまることで尿を体外に出せなくなるタイプで、一部の抗がん剤が尿酸の結晶を作り、尿の通り道をつまらせることがあると報告されています[1]。
また、どのように起こるかという視点では「アレルギー性」と「中毒性」の2種類にも分けられます。アレルギー性は体質によるところが大きく予測が難しいとされ、その代表が間質性腎炎です[2]。一方、中毒性はどんな薬でも大量に体にたまれば毒として働きうるという考え方で、薬そのものが腎臓を直接傷めるケースを指します[1]。腎臓は約100万個のネフロンという小さな器官の集まりでできており、血液から尿のもとをこし出す「糸球体」と、それを濃縮して実際の尿を作る「尿細管」に分けられます。薬剤性腎障害では、この糸球体と尿細管のどちらが主に障害されるかによっても「糸球体性」と「尿細管間質性」に分類されると報告されています[1]。
腎前性・腎性が起こる仕組みをもう少し詳しく
NSAIDsは、体の中でアラキドン酸という物質からプロスタグランジンという成分が作られる経路にある「シクロオキシゲナーゼ(COX)」という酵素の働きを抑えることで、痛みや熱を和らげます。ところがこのプロスタグランジンには腎臓の血管を広げるはたらきもあるため、NSAIDsでその産生が抑えられると、逆に腎臓の血管を収縮させる仕組みが優位になり、腎臓に流れ込む血液が減ってしまうことがあると報告されています[1]。これが腎前性の急性腎障害の主な仕組みです。
ACE阻害薬やARBは、腎臓から出ていく血管(輸出細動脈)の収縮を抑えることで血圧を下げ、腎臓の負担を減らす良い効果があると報告されています。しかし、もともと腎臓の血流が少ない方(腎動脈が狭くなっている方や脱水状態の方など)がこれらの薬を使うと、輸出細動脈の収縮が急に抑えられて腎臓内の血流バランスが崩れ、かえって急性腎障害を起こすことがあると報告されています[1]。
一方、アミノグリコシド系抗菌薬による腎障害は、中毒性の仕組みに分類されます。血液から糸球体でろ過されたアミノグリコシドは、尿細管の細胞に取り込まれて細胞内に蓄積し、一定の濃度を超えると細胞の中の構造(ライソゾーム)が壊れて尿細管そのものが障害される、と報告されています[1]。造影剤についても、尿細管に高濃度で流れ込むことで尿細管の細胞を直接傷めるほか、腎臓の血流低下を長時間引き起こすことが分かっていると報告されています[1]。
特に注意したい薬剤とリスク——薬の種類ごとに見る仕組み
すべての医薬品は薬剤性腎障害の原因となりうると報告されていますが[1]、厚労省・日本腎臓学会のマニュアルで繰り返し名前が挙がる薬の種類は限られています。次の表は、報告の多い薬の種類と、起こりやすい障害のタイプ、代表的な薬をまとめたものです。
| 薬の種類 | 起こりやすい障害 | 代表的な薬・成分 | 起こりやすい状況 |
|---|---|---|---|
| NSAIDs(解熱鎮痛薬) | 腎前性 | ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウムなど | 脱水、高齢、腎臓・心臓・肝臓に慢性の病気がある場合[1] |
| 高血圧治療薬(ACE阻害薬・ARB) | 腎前性 | マレイン酸エナラプリルなど | 服用後に血圧が急に下がったとき[1] |
| アミノグリコシド系抗菌薬 | 腎性(中毒性) | 硫酸ゲンタマイシン、硫酸アルベカシンなど | 長期間の投与、高齢・脱水・低栄養、腎機能に応じない投与量[1] |
| ヨード造影剤 | 腎性(中毒性) | 血管造影・CT検査で使う造影剤 | 脱水状態、すでに腎機能が低下している場合[1] |
| 抗がん剤(白金製剤) | 腎性(中毒性)・腎後性 | シスプラチンなど | 使用量が多い場合、脱水状態[1] |
| 抗菌薬・消化性潰瘍薬・解熱鎮痛薬・抗てんかん薬・痛風治療薬など | 腎性(アレルギー性=間質性腎炎) | 広範囲の医薬品 | 服用後2週間以内が多いが、1か月以上経ってからのこともある[2] |
| 鎮痛薬の長期連用・抗精神病薬・一部の漢方生薬(アリストロキア酸を含むもの)・抗がん剤 | 慢性の間質性腎炎 | 長期服用の経過の中で発症 | 数か月〜数年の長期服用[2] |
出典:厚生労働省・日本腎臓学会「重篤副作用疾患別対応マニュアル 急性腎障害(急性尿細管壊死)」[1]「間質性腎炎(尿細管間質性腎炎)」[2](いずれも平成30年6月改定)
薬の種類ごとに見る注意点——一般の方向けにまとめられた説明
厚労省・日本腎臓学会のマニュアルには、患者さん向けに、薬の種類ごとの注意点がやさしい言葉でまとめられています。それぞれの薬について、起こりうることと、気をつけたいサインを紹介します。
解熱鎮痛薬(NSAIDs):痛み止めや解熱剤によって腎臓に行く血液の量が急激に落ち、急性腎障害になることがあると報告されています。脱水、高齢、腎臓・心臓・肝臓などに慢性の病気がある方はリスクが高くなります。服用後に「むくみ」「尿量の減少」「倦怠感」「食欲不振」「吐き気・嘔吐」が見られたら、医師・薬剤師にすぐ連絡するか、速やかに診察を受けるよう、マニュアルの報告に案内されています[1]。
高血圧治療薬(ACE阻害薬・ARB):これらの降圧薬は腎臓の負担を取り、慢性腎臓病の進行を抑える良い効果がある一方、服用後に血圧が急速に下がって腎臓への血流が急激に落ち、急性腎障害になることがあると報告されています。同じく「むくみ」「尿量の減少」「倦怠感」「食欲不振」「吐き気・嘔吐」に注意し、定期的な血液・尿検査が必要だと報告されています[1]。
アミノグリコシド系抗菌薬:感染症治療のために使われる注射の抗菌薬で、腎臓(特に尿細管)に負担をかけ、機能が低下することがあると報告されています。使用量・使用間隔には十分注意が払われていますが、同様の症状が出た場合は医師・薬剤師への連絡と、定期的な血液・尿検査を行うよう報告に案内されています[1]。
ニューキノロン系抗菌薬:感染症治療に使われる抗菌薬で、同じく腎臓(特に尿細管)に負担をかけることがあるとされ、同様の症状に注意するよう報告に案内されています[1]。
ヨード造影剤:病気の診断に必要な検査で使われる薬で、全て腎臓から排泄されるため、腎臓(特に尿細管)に負担をかけ、場合により機能を低下させることがあると報告されています。すでに腎機能が低下している場合は使用量を少なくする必要があり、脱水状態では副作用が出やすいため、使用前後に十分な水分補給が行われると報告されています。検査後に「むくみ」「尿量の減少」「倦怠感」「食欲不振」「吐き気・嘔吐」「発疹」「発熱」が見られたら連絡するよう報告に案内されています[1]。
抗がん剤(特にシスプラチンなどの白金製剤):抗がん剤として大変有用な薬である一方、腎臓(特に尿細管)に大きな負担をかけ、使用量が多いと機能が急に低下することがあると報告されています。すでに腎機能が低下している場合は使用量を少なくし、使用前後に十分な水分補給を行うことで副作用を防ぐよう工夫されていると報告されています[1]。
アミノグリコシド系抗菌薬を使う場合、血液代用薬(デキストランなど)、ループ利尿薬(フロセミドなど)、バンコマイシンやアムホテリシンBといった他の抗菌薬、白金製剤の抗がん剤、シクロスポリン、ACE阻害薬、NSAIDsなどを併用すると、腎障害の発生頻度がさらに上がるため注意が必要と報告されています[1]。つまり、1種類の薬だけでなく、複数の薬を同時に使う「利尿薬との併用」や多剤併用そのものが、リスクを引き上げる要因になるということです。
ヨード造影剤については、検査前後に十分な補液(点滴による水分補給)を行うことがリスクを下げるために重要だとされ、脱水状態では副作用が出やすいと報告されています[1]。
どんな人が薬剤性腎障害になりやすいのか
厚労省・日本腎臓学会のマニュアルでは、どの原因薬による急性腎障害でも共通する危険因子として、高齢・もともとの腎機能低下・脱水・発熱などが挙げられています。中でも脱水の予防は、医療行為によってコントロールできる最大の要因だと報告されています[1]。
間質性腎炎についても、高齢者は複数の薬剤を服用している場合が多く、実際には薬剤による副作用だと気づきにくいという報告があります[2]。つまり「高齢であること」自体がリスクなのではなく、高齢に伴って起こりやすい脱水・腎機能低下・多剤併用が重なることが背景にあると理解できます。
患者側のリスク因子としては、高齢、もともと慢性腎不全がある、発熱、脱水、食事摂取量の減少、複数の医薬品の服用、肝不全などが挙げられており、どの薬が原因かによってリスク因子の重みは変わると報告されています[1]。一方、慢性の間質性腎炎では、患者側のリスク因子は「明らかではない」とされており、はっきりした傾向がまだ分かっていない部分もあります[2]。
なぜ「多剤併用」がリスクになるのでしょうか。理由は大きく2つあると報告されています。1つは、複数の薬を同時に使うことで、それぞれの薬が腎臓に与える負担が重なりやすくなること。もう1つは、薬同士の飲み合わせによって、片方の薬の血中濃度が予想以上に高くなったり、腎臓への負担が相乗的に強まったりすることです。たとえばアミノグリコシド系抗菌薬は、ループ利尿薬・バンコマイシンなどの他の抗菌薬・白金製剤の抗がん剤・シクロスポリン・ACE阻害薬・NSAIDsのいずれかと併用すると、腎障害の発生頻度がさらに上がると報告されています[1]。利尿薬は脱水を招きやすいという面でも、他の腎毒性のある薬と組み合わさったときのリスクを高める要因になりえます。お薬手帳を使って「今飲んでいる薬をすべて」医師・薬剤師に伝えることが、この重なりに気づいてもらう一番の近道です。
高齢者ほど多剤併用になりやすい背景には、複数の診療科・複数の医療機関にかかる機会が増えることがあります。近年は複数の医療機関にかかり多剤服用している場合があり、特に高齢者ではその傾向が強いため、まずは薬剤の副作用の可能性を疑い、お薬手帳などで服薬内容や開始時期を詳しく確認することが最も有効な診断法だと報告されています[2]。
見逃してはいけないサイン・受診の目安——すぐ医師・薬剤師に連絡すべきこと
次のような症状が薬を使い始めてから出た場合は、放置せず、ただちに医師・薬剤師に連絡してください。
症状の出方は原因薬によって異なり、数時間以内に発症することもあれば、数年経ってから発症することもあると報告されています[1]。間質性腎炎の場合は、原因と考えられる薬を服用後2週間以内に発症することが多いものの、1か月以上経ってから起こることもあると報告されています[2]。「薬を飲んで少し経ってから」でも油断せず、新しい症状に気づいたら薬のせいかもしれないと考えることが早期発見のコツだと報告されています[2]。
病院で行われる検査——血清クレアチニン・尿検査
薬剤性腎障害が疑われる場合、まず行われるのが血液検査と尿検査です。血清クレアチニンや尿素窒素(BUN)の上昇によって、腎機能の低下(高窒素血症)が確認されます[1]。国際的な腎臓病ガイドライン機構(KDIGO)の基準では、48時間以内に血清クレアチニン値が0.3mg/dL以上上昇する、血清クレアチニンが基礎値から7日以内に1.5倍以上上昇する、尿量が0.5mL/kg/時以下の状態が6時間以上続く——この3つのうち1つでも満たせば急性腎障害と診断されると報告されています[1]。急性腎障害の診断の考え方をさらに詳しく知りたい方は急性腎障害(AKI)の診断:国際的ガイドラインに基づく体系的アプローチと検査の指針もご覧ください。
尿検査では、尿中のナトリウム排泄分画(FENa)や腎不全指数(RFI)が、腎前性の腎不全と腎性の腎不全(急性尿細管壊死)を見分けるのに役立つと報告されています。腎性の場合は尿細管でのナトリウム再吸収がうまくいかなくなるため、これらの値が腎前性より高くなる傾向があると報告されています[1]。また、尿の中に白血球や好酸球が増えている場合は、間質性腎炎の存在を疑わせる所見と報告されています[1]。尿タンパクや尿の異常について詳しくは尿タンパク陽性と言われたら?腎臓のサインを読み解き、未来を守る完全ガイド、尿の色や泡立ちについては尿の濁り・色・泡の原因と対処法のすべて:正常な状態から危険なサインまで徹底解説もあわせてご覧ください。
アミノグリコシド系抗菌薬や造影剤など、腎臓への負担が大きいとされる薬を使うときは、必須の定期検査として血清クレアチニン・尿素窒素・一般尿検査に加え、尿中のN-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(NAG)や尿β2-ミクログロブリンなどを定期的に測定することが望ましいと報告されています[1]。慢性の間質性腎炎が疑われる場合、確定診断には腎生検が必要になるとされ、腹部超音波検査やCT検査で両側の腎臓が萎縮していることが分かる場合もあると報告されています[2]。
アミノグリコシド系抗菌薬を使う場合は、薬の血中濃度そのものを測る治療薬物モニタリング(TDM)も推奨されています。投与2回目の谷の値(トラフ値、次の投与直前の採血)とピーク濃度(投与終了後の採血)を測定し、初回の測定後は少なくとも1週間に1回のTDMを行うことが推奨されていると報告されています[1]。血液・尿検査に加えて、投与開始直後からこうしたモニタリングを行うことで、腎障害の出現に早く気づき、必要なら薬の投与を中止する判断につなげられると報告されています[1]。
なお、腎機能の低下が見つかったからといって、原因がすぐに薬だと決まるわけではありません。下痢・嘔吐・出血・やけどなどによる体液の減少、肝硬変やネフローゼ症候群・膵炎による循環血漿量の減少、心筋梗塞や不整脈による心拍出量の低下、敗血症やアナフィラキシーによる末梢血管の拡張、肝腎症候群による腎血管の収縮など、薬以外にも急性腎障害の原因は数多くあると報告されています。医師は血液検査や画像診断でこれらを除外したうえで、原因になっている薬を判断すると報告されています[1]。また、これらの疾患を持つ方は、NSAIDs・ACE阻害薬・ARBによる急性腎障害の危険因子でもあるため、使用にあたって慎重な判断が必要だと報告されています[1]。
発症までの期間で見る分類——急性・亜急性・慢性
薬剤にともなう腎障害は、薬を使い始めてから発症するまでの時間の経過によっても分類されています。厚労省・日本腎臓学会のマニュアルでは、急性(1〜7日)、亜急性(8〜90日)、慢性(90日以上)の3つに区分し、病態としては重なる部分も多いと報告されています[2]。
| 期間の分類 | 発症までの期間 | 特徴・代表例 |
|---|---|---|
| 急性 | 1〜7日 | NSAIDs、造影剤、シスプラチン、アミノグリコシドなどで使用開始後数日以内に起こりうる[1] |
| 亜急性 | 8〜90日 | 急性間質性腎炎は原因薬服用後2週間以内の発症が多いが、1か月以上のこともある[2] |
| 慢性 | 90日以上 | 鎮痛薬の長期連用、リチウム、一部の漢方生薬(アリストロキア酸を含むもの)などで長期服用の経過の中で発症[2] |
出典:厚生労働省・日本腎臓学会「重篤副作用疾患別対応マニュアル 間質性腎炎(尿細管間質性腎炎)」(平成30年6月改定)[2]
実際の症例報告として、高尿酸血症のために漢方生薬(漢ボウイ)を9か月間服用していた48歳男性が、高度の腎不全と診断され、腎生検の結果、服用していた漢方生薬が高濃度のアリストロキア酸を含んでいたことが分かったという報告があります[2]。この報告は、天然由来の生薬であっても、長期間服用すれば腎臓に大きな負担をかけうることを示す事例として紹介されています[2]。
実際に報告された件数で見る——原因になりやすい薬
PMDA(医薬品医療機器総合機構)の医薬品副作用データベース(JADER)を用いて、報告の多い推定原因医薬品を集計した資料が、マニュアルの参考資料として公開されています[1]。以下は平成28年度に「急性腎障害」として報告された件数の上位です(件数は延べ数であり、単純に薬の危険度を比較するものではないと注意書きがあります[1])。
| 医薬品名 | 報告件数(延べ) |
|---|---|
| バラシクロビル塩酸塩 | 126 |
| シスプラチン | 33 |
| エルデカルシトール | 16 |
| タゾバクタムナトリウム・ピペラシリンナトリウム | 14 |
| オムビタスビル水和物・パリタプレビル水和物・リトナビル | 12 |
| メトトレキサート | 11 |
| エダラボン | 11 |
| プレガバリン | 10 |
| アルファカルシドール | 10 |
| ロキソプロフェンナトリウム水和物 | 9 |
| レボフロキサシン水和物 | 9 |
| その他 | 380 |
| 合計 | 641 |
出典:厚生労働省・日本腎臓学会「重篤副作用疾患別対応マニュアル 急性腎障害(急性尿細管壊死)」参考1(平成28年度、平成30年3月集計)[1]
この報告件数には、抗ウイルス薬や抗がん剤、抗菌薬などが並んでおり、痛み止め(ロキソプロフェンナトリウムなど)も報告の上位に含まれる年度があると報告されています[1]。ただし、報告の多さは薬の販売量や使用頻度によっても変わるため、単純にどの薬が一番危険かを順位づけできるものではないと注意されています[1]。
市販薬・お薬手帳——「自己判断で薬をやめない」がいちばん大切な理由
ここまで見てきたように、薬剤性腎障害は特別な薬だけで起こるわけではなく、痛み止めのように身近な薬でも起こりうると報告されています。NSAIDsの代表例として挙げられているロキソプロフェンナトリウムやジクロフェナクナトリウムは[1]、同じ成分を含む市販の解熱鎮痛薬も薬局やドラッグストアで購入できます。とくにNSAIDsによる間質性腎炎は、高齢者が長期間(数か月から数年)にわたって薬に触れ続けたケースで起こることがあると報告されており[2]、「市販薬だから軽い」「痛み止めだから安全」と思い込まず、長期間にわたって毎日使うときは医師・薬剤師に相談することが勧められます。
もう一つ大切なのが「お薬手帳」です。間質性腎炎が疑われる場合、まず薬剤の副作用の可能性を疑い、お薬手帳などで服薬内容や開始時期を詳しく確認することが、最も有効な診断法の一つだと報告されています[2]。連絡の際にも、お薬手帳など服薬内容や期間が分かる記録を持参するよう、報告の中でお願いされています[2]。複数の医療機関にかかっている方ほど、お薬手帳で薬の重複や飲み合わせを一元管理しておくことの意味は大きいといえます。
そして最も強調しておきたいのは、むくみや尿量減少などの症状に気づいたときに、自己判断で薬を中止しないことです。薬剤性腎障害の治療の第一歩は原因となる薬の中止と報告されていますが[1]、どの薬を中止すべきか、代わりの治療をどうするかは、原因になっている病気の治療とのバランスも含めて医師が判断すべき事柄です。自己判断で急に薬をやめることで、もとの病気(感染症や高血圧など)が悪化するおそれもあります。気になる症状が出たら、まず医師・薬剤師に連絡し、指示を仰いでください。
治療と見通し——早く気づけば回復することも多い
治療の基本は、原因と考えられる医薬品の投与を中止することです[1]。そのうえで、水分・電解質のバランスを整え、必要に応じてカリウム制限食・塩分制限食などの栄養管理を行い、状態が進行する場合には透析療法が検討されると報告されています[1]。NSAIDsやACE阻害薬・ARBによる腎前性の急性腎障害では、一般に投薬中止から3〜6週間で腎機能が回復すると報告されていますが、発見が遅れた場合や腎機能低下が高度な場合には、完全には回復しないこともあると報告されています[1]。
間質性腎炎についても、早期であれば薬の服用を中止するだけで特別な治療をしなくても治ることがあるとされる一方、中等度以上の場合はステロイド薬が使われることがあり、慢性化した場合は腎機能の改善が難しいこともあると報告されています[2]。だからこそ「早期発見・早期対応」が繰り返し強調されているのです。
実際の症例で見る薬剤性腎障害——気づいて中止すれば回復した例
厚労省・日本腎臓学会のマニュアルには、実際に報告された典型的な症例の概要が紹介されています。ここでは、薬剤性腎障害がどのように気づかれ、どう対応されたのかをイメージしていただくために、その概要を紹介します(個人が特定されないよう、症例のポイントのみをまとめています)。
NSAIDsによる腎前性の急性腎障害の例:30代男性が、歯の痛み(齲歯痛)に対してジクロフェナクナトリウムを1日3錠、5日分処方されました。痛みのために食事や水分摂取が普段の3分の1以下に減ってしまい、内服開始3日後には全身のだるさと尿量の著しい減少が出現。受診時の血液検査では血清クレアチニンが2.30mg/dLまで上昇していました(1か月前は0.76mg/dL)。幸い痛みが治まり水分摂取が可能になったため、点滴と十分な水分・食事摂取の指導で経過を見たところ、2日後には症状が消え、投与中止1週間後には血清クレアチニンが0.82mg/dLまで正常化したと報告されています[1]。
アミノグリコシド系抗菌薬による腎性(中毒性)の急性腎障害の例:60代男性が、肺炎治療のためにアルベカシン硫酸塩(1日量400mg)の点滴を受けていました。投与開始15日目に投与量が半分に減量されましたが、その後も腎機能の低下が見られ、尿中β2-ミクログロブリンの上昇が確認されました。薬の投与を中止し十分な補液を行ったところ、腎機能は徐々に回復に向かったと報告されています[1]。
ニューキノロン系抗菌薬による急性腎障害の例:80代男性が急性胃腸炎の診断で塩酸シプロフロキサシンの内服を開始したところ、2日後に血清クレアチニンが0.9mg/dLから1.7mg/dLへ上昇。減量後も尿量が減り続けたため薬を中止したところ、中止7日後には血清クレアチニンが1.0mg/dLまで改善したと報告されています[1]。
ACE阻害薬による急性腎障害で、隠れた原因が見つかった例:3歳のときに腎腫瘍で左腎を摘出していた30代男性が、高血圧のために塩酸エナラプリル10mgの内服を開始しました。全身のだるさが続いたため14日目に自己判断で内服を中断しましたが、25日目に受診したときには血清尿素窒素135mg/dL、血清クレアチニン15.9mg/dL、血清カリウム6.7mEq/Lという重い腎不全の状態になっており、入院のうえ血液透析が必要になったと報告されています。その後の検査で、残っていた右の腎臓の動脈が狭くなっていたこと(腎動脈狭窄)が分かり、カテーテル治療(経皮経管的腎動脈形成術)を行ったところ、投与開始から65日後には血清クレアチニン1.2mg/dLまで改善したと報告されています[1]。この例は、片方の腎臓しかない方や、もともと腎臓の血管に狭窄がある方では、通常なら腎臓を守るはずのACE阻害薬・ARBが、逆に急性腎障害の引き金になりうることを示す報告として紹介されています。
これらの症例に共通しているのは、①原因と考えられる薬の中止、②十分な水分補給など全身管理、③その後の血液検査での回復確認、の3点です。一方でACE阻害薬の症例のように、体調不良に気づいて自己判断で薬をやめたものの、そのあと医療機関にすぐつながらず10日以上経ってから受診し、重い腎不全まで進行してしまった例もあります。「変だと感じたら、薬をやめるかどうかも含めて、できるだけ早く医師・薬剤師に連絡する」ことが、自己判断だけで済ませるより安全だと分かる報告です。
薬の副作用で入院するほどの被害を受けたとき——医薬品副作用被害救済制度
薬を正しく使ったにもかかわらず、副作用によって入院が必要になるほどの重い健康被害が生じた場合には、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)による「医薬品副作用被害救済制度」という公的な制度があり、医療費・医療手当・障害年金・遺族年金などの救済給付を受けられる場合があると報告されています[1][2]。薬剤性腎障害も、この制度の対象になりうる副作用の一つです。使っている薬の販売名や添付文書の内容を確認したいときは、PMDAの「医療用医薬品 情報検索」を使うことができると報告されています[3]。制度の詳しい相談窓口は、PMDAの救済制度相談窓口(フリーダイヤル)に設けられています[1]。
日常でできる予防——リスクが重なりやすい場面を知っておく
薬剤性腎障害を完全に防ぐ方法はありませんが、リスクが重なりやすい場面を知っておくことで、注意のタイミングを逃しにくくなります。
発熱・下痢・嘔吐などで体調が悪いとき:体調不良で食事や水分摂取が減っているときにNSAIDs(解熱鎮痛薬)を使うと、脱水と薬の作用が重なって腎前性の急性腎障害を起こしやすくなると報告されています[1]。熱や痛みがあっても水分がとれないときは、痛み止めを我慢して使うより先に、水分摂取が難しいこと自体を医師・薬剤師に伝えることが勧められます。
造影剤を使う検査を受けるとき:造影剤による腎障害の予防には、検査前後の生理食塩水輸液など十分な水分補給が重要な役割を果たすと報告されています[1]。すでに腎機能が低下している方、高齢の方はリスク因子になるとされており、不要な造影剤検査は行わず、造影剤の使用量も用量依存的に急性腎障害の発症頻度が変わることを踏まえて調整されると報告されています[1]。
新しい抗菌薬・抗がん剤による治療を始めるとき:アミノグリコシド系抗菌薬やシスプラチンなどの白金製剤による治療では、使用前からの適切な水分補給が急性腎障害の予防に大きな役割を果たすことが分かっていると報告されています[1]。治療の開始前に、今の腎機能を血液検査で確認しておくことも重要です。
複数の医療機関にかかっているとき:お薬手帳を1冊にまとめ、受診のたびに持参して、市販薬・サプリメント・漢方薬も含めて使っているものをすべて伝えることが、薬の重なりや飲み合わせによるリスクに気づいてもらう最も確実な方法だと報告されています[2]。
- 今使っている薬・市販薬・サプリメント・漢方薬をすべて(お薬手帳があれば一緒に持参)
- 症状(むくみ・尿量減少・だるさ・発疹・発熱など)がいつから出ているか
- 薬を飲み始めた日付、量、飲み方が変わったタイミング
- 水分をどのくらい摂れているか(下痢・嘔吐・発熱で減っていないか)
- もともと腎臓・心臓・肝臓の病気があるか、過去の血液検査の値
- 医師に聞きたいこと(この薬は続けてよいか/代わりの薬はあるか/次の検査はいつか)
薬剤ごとの発症頻度については、報告基準が研究によって異なり、正確な発症頻度が明らかではないものも多いと報告されています。とくに慢性の間質性腎炎については、本邦での正確な発症頻度は明らかではないと今回参照した資料に記載されていました[2]。今回参照した資料の範囲では、個々の薬剤同士の腎毒性を単純に比較できるだけのデータは見当たりませんでした。
よくある質問
薬剤性腎障害は治りますか?
ロキソニンなどの痛み止めを飲んだだけで腎臓は悪くなりますか?
市販の解熱鎮痛薬は毎日飲んでも大丈夫ですか?
造影剤検査を受けると必ず腎臓に影響しますか?
血液検査の何の数値を見ればわかりますか?
薬剤性腎障害になったら一生透析が必要ですか?
漢方薬でも腎臓に影響することがありますか?
薬を飲んで尿の量が減ったら、すぐ薬をやめていいですか?
お薬手帳は何のために必要なのですか?
利尿薬を飲んでいますが、他の薬との飲み合わせで注意することはありますか?
健康診断で「クレアチニンが高い」と指摘されました。薬のせいでしょうか?
参考文献
- 厚生労働省・日本腎臓学会マニュアル作成委員会「重篤副作用疾患別対応マニュアル 急性腎障害(急性尿細管壊死)」平成19年6月(平成30年6月改定) https://www.pmda.go.jp/files/000224769.pdf
- 厚生労働省・日本腎臓学会マニュアル作成委員会「重篤副作用疾患別対応マニュアル 間質性腎炎(尿細管間質性腎炎)」平成19年6月(平成30年6月改定) https://www.pmda.go.jp/files/000224770.pdf
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医療用医薬品 情報検索」(添付文書の確認に利用できます) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/
薬剤性腎障害は、原因になりうる薬の種類も、なりやすい人の条件も、これまでのマニュアルで具体的に示されています。心配な症状があるときは、自己判断せずに医師・薬剤師へ相談することが何より大切です。ふだんの腎臓の健康管理については、以下の関連記事もあわせてご覧ください。
更新日:2026年7月21日。本記事は厚生労働省・日本腎臓学会の公的資料をもとにJHO編集部が作成しました。内容に誤りや古い情報にお気づきの際はご連絡ください。
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本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。
