【科学的根拠に基づく】子宮頸部ポリープのすべて:原因、症状から最新治療、妊娠への影響までを徹底解説
女性の健康

【科学的根拠に基づく】子宮頸部ポリープのすべて:原因、症状から最新治療、妊娠への影響までを徹底解説

婦人科検診で「子宮頸部ポリープ」を指摘され、ご不安な気持ちでこのページに辿り着いた方も多いのではないでしょうか。あるいは、不正出血などの症状から、この病気について調べているのかもしれません。子宮頸部ポリープは非常に一般的な婦人科疾患であり、そのほとんどは良性です。しかし、「ポリープ」という言葉から「がんではないか」という心配や、治療に関する疑問、将来の妊娠への影響など、多くの不安がつきものです。この記事は、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が、国内外の最新の研究報告や診療ガイドラインに基づき、子宮頸部ポリープに関するあらゆる疑問に答えるために作成したものです。定義や原因といった基本的な知識から、具体的な症状、正確な診断方法、悪性である可能性、最新の治療法、そして妊娠との関連性まで、皆様が知りたい情報を網羅的かつ正確に解説します。この記事が、皆様の不安を和らげ、ご自身の健康状態を正しく理解し、適切な医療機関での対話に臨むための一助となることを心より願っております。


この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている、最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下に、本稿で提示される医学的指導の根拠となった主要な情報源とその関連性を示します。

  • 日本産科婦人科学会 (JSOG) / 日本産婦人科医会 (JAOG) 診療ガイドライン: この記事におけるポリープの管理方針、特に症状のある症例や細胞診異常を伴う場合の切除推奨に関する指針は、日本の主要な産婦人科団体が発行する診療ガイドラインに基づいています12
  • StatPearls, PubMed等の国際的研究データベース: ポリープの疫学データ、悪性化の統計的確率、および国際的な治療アプローチに関する記述は、StatPearlsやPubMedに掲載されている査読済み論文やシステマティックレビューを情報源としています34
  • MSDマニュアル プロフェッショナル版: ポリープの基本的な定義、症状、診断に関する情報は、世界中の医療専門家が利用する信頼性の高い医学参考書であるMSDマニュアルを参照しています5

要点まとめ

  • 子宮頸部ポリープは、子宮の入り口(子宮頸管)にできるキノコ状の良性のできもので、成人女性の2~5%に見られる一般的な状態です5
  • 多くは無症状ですが、最も一般的な症状は「不正出血」で、特に性交後や婦人科診察後に出血しやすいです6
  • ポリープが悪性(がん)である確率は極めて低く、研究報告によれば0.1%~0.5%程度です78。しかし、確定診断のためには切除して病理検査を行うことが標準的です。
  • 治療は、外来で数分で終わる簡単な切除術が一般的で、痛みはほとんどなく、麻酔も通常は不要です9
  • 妊娠中のポリープ管理は慎重な判断を要し、不妊との関連では子宮頸部ポリープ自体より、合併しうる子宮内膜ポリープの方が重要です10

第1部:子宮頸部ポリープの基礎知識 ― 正しい理解への第一歩

このセクションでは、「子宮頸部ポリープとは何か?」という根本的な問いに答え、正確な知識の土台を築きます。これは、読者が自身の状態を理解し、今後の情報を正しく解釈するための重要なステップです。

1.1. 定義、分類、そして見た目の特徴

子宮頸部ポリープは、子宮の入り口である子宮頸管の表面、またはその内部から発生する、多くの場合良性の増殖物(腫瘍)と定義されます5。組織学的には、頸管の腺組織が局所的に過剰に増殖したものです11。これは、婦人科領域で最も一般的に見られる良性腫瘍の一つです。

分類:発生場所による違い

ポリープは発生する場所によって主に2つの種類に分けられ、それぞれ好発する年齢層が異なるため、臨床的な評価において重要な意味を持ちます。

  • 頸管内ポリープ (Endocervical Polyps): 最も一般的なタイプで、子宮頸管内部の腺組織から発生します。主に閉経前の女性に見られ、典型的には赤く柔らかいキノコのような形をしています12
  • 頸管外ポリープ (Ectocervical Polyps): こちらは比較的まれで、子宮頸部の外側の表面(腟部)の細胞から発生します。閉経後の女性に多く見られます3

この分類、特に閉経前後の状態との関連は、悪性リスクを評価する上で重要な臨床的視点を提供します。頸管外ポリープが閉経後の女性に多いという事実は、この年齢層の女性の悪性リスクがわずかに高いことと関連して考慮されるべき要素です。

形態的特徴(形、大きさ、色)

ポリープの物理的な特徴は多様であり、これが症状や治療法に影響を与えます。

  • 大きさ: ポリープの大きさは、米粒大(2~3mm)の小さなものから、小指以上、ときには親指大(1~3cm)になるものまで様々です12。まれに3cmを超え、10cmに達して腟の外にまで突出する例も報告されています3
  • 形と色: 通常は赤みがかったピンク色をしていますが、血流の状態や炎症の有無によって紫色や白灰色に見えることもあります5。単独で発生することもあれば、複数個できる場合もあります3
  • 構造: 多くのポリープは「茎(けい)」と呼ばれる細い根元で子宮頸部に付着しており、この茎は細長いこともあれば、短く太いこともあります4

1.2. 疫学:どのような人に見られやすいか

子宮頸部ポリープは一般的な疾患で、多くの成人女性が経験する可能性があります。

  • 発生頻度: 成人女性の約2~5%に見られると推定されています5。子宮頸部にできる良性腫瘍としては最も頻度が高いものです11
  • 好発しやすい方:
    • 年齢: 30代から50代の女性、特に40代に最も多く見られます12
    • 出産経験(経産婦): 妊娠・出産を経験した女性に、より多く見られる傾向があります3。日本のある病院の統計データでも、30代の経産婦に多いことが示されています13

出産経験と30代~50代という好発年齢層が強く関連している事実は、女性ホルモン、特にエストロゲンの影響が原因である可能性を強く示唆しています。多くの医学情報源が、原因の一つとして「女性ホルモン」や「エストロゲン濃度」を挙げており9、疫学データはこの仮説を裏付ける重要な証拠となっています。

1.3. 原因と特定されている危険因子

子宮頸部ポリープは非常に一般的であるにもかかわらず、その明確な原因はまだ完全には解明されていません。

  • 主要な原因: 正確な原因は、はっきりと分かっていません9
  • 有力な仮説:
    1. 慢性的な炎症: 子宮頸部の長期にわたる炎症が、細胞の過剰な増殖を引き起こすという説が有力です5
    2. 女性ホルモンの影響: 高濃度のエストロゲンに対する異常な反応がポリープ形成を促すという仮説も強力です3。これは、閉経前の女性に多いという疫学データとも一致します。
    3. 感染症: 性感染症を含む様々な感染症が関連因子として考えられています6
    4. 子宮頸部血管のうっ血: ポリープ形成の別の機序として提案されています3
  • 再発: 子宮頸部ポリープは、切除後も再発する可能性が高いことが知られています14

「原因が不明」と聞くと不安に思われるかもしれませんが、これは医学研究が活発に行われている分野であることを意味します。現在のところ、炎症、ホルモン、感染といった要因が複雑に絡み合って発生すると考えられており、これらの知識が診断や治療に役立てられています。

第2部:臨床症状と診断プロセス

このセクションでは、患者様が直接経験する症状や、医療機関で行われる診断の流れについて詳しく解説します。「どのような症状が出るのか」「どのように診断されるのか」といった疑問にお答えします。

2.1. 症状:無症状から不正出血まで

子宮頸部ポリープの症状は個人差が大きく、全く症状がない場合から、不快な症状を伴う場合まで様々です。

  • 大多数は無症状: 約3分の2のケースでは症状がなく、婦人科の定期検診や子宮がん検診(Papテスト)の際に偶然発見されます3
  • 最も一般的な症状:不正出血: 症状がある場合、最も多いのが不正出血です5
    • 接触出血: 性交後の出血は、非常に典型的な兆候です6。その他、激しい運動や排便時、婦人科の診察後など、物理的な刺激によって出血することがあります。
    • 月経期以外の出血: 生理ではない時期に少量の出血が見られます11
    • 過多月経: 月経の出血量が通常より多くなることがあります15
    • 閉経後の出血: 閉経後に見られるいかなる性器出血も、速やかな医療機関の受診が必要な重要なサインです15
  • その他の症状:
    • おりものの異常: おりものの量が増えたり、血液が混じった茶褐色になったりすることがあります9。ポリープが感染を起こすと、膿のようなおりものが出ることもあります5
  • 痛みについて: 通常、子宮頸部ポリープが痛みを引き起こすことはほとんどありません6

なぜ出血しやすいのか?

ポリープの組織は非常にもろく、血管が豊富に含まれているため、わずかな刺激でも傷つきやすく、出血しやすい状態にあります6。また、ポリープが大きくなると、先端部分への血流が不足して組織が壊死し、特に刺激がなくても自然に出血することがあります6。このメカニズムを理解することが、症状の進行を把握し、早期治療の重要性を認識する上で役立ちます。

2.2. 診断への道のり:最初の診察から確定診断まで

子宮頸部ポリープの診断プロセスは、通常、婦人科の診療室で完結するシンプルで迅速なものです。

  1. 初期診断(視診): 診断は多くの場合、腟鏡(クスコ)を用いた内診の際に、医師が目で見て行います5。ポリープは子宮頸管の入り口から突き出ているのが容易に確認できます。
  2. 子宮がん検診の役割: ポリープは定期的な子宮がん検診(細胞診)の際に発見されることも多いです9。ただし、子宮がん検診の主目的はがん細胞の有無を調べることであり、ポリープそのものを診断する検査ではありません。
  3. 鑑別診断のための画像検査: 経腟超音波検査(エコー検査)は、子宮内膜ポリープや、子宮の中から垂れ下がってきた筋腫など、他の似たような疾患と区別するために用いられます16
  4. 確定診断(病理組織検査): 最終的かつ確定的な診断は、ポリープを切除した後、その組織を専門家が顕微鏡で調べる「病理組織検査」によってのみ下されます9。これは、そのポリープが完全に良性であることを確認し、ごくまれに存在する悪性や前がん状態の可能性を排除するために不可欠なステップです。

婦人科診療における重要な原則は、「目で見ただけでは、その組織の性質を100%断定することはできない」という点です。この原則があるからこそ、見た目が「正常」に見えるポリープであっても、切除と病理検査が標準的な医療として推奨されるのです。

2.3. 鑑別診断:似ている他の病気との見分け方

視診だけでは、良性の子宮頸部ポリープと、より深刻な他の病変とを完全に見分けることは困難な場合があります15。そのため、以下の疾患との鑑別が重要になります。

  • 子宮内膜ポリープ: 最も重要な鑑別対象です。子宮の内部(内膜)から発生しますが、茎が伸びて子宮頸部から外に突き出てくることがあり、子宮頸部ポリープとそっくりに見えることがあります。不妊との関連性や悪性リスクの観点から、異なる対応が求められます6
  • 粘膜下筋腫分娩: 子宮筋腫の一種で、茎を持って子宮内腔から頸管や腟内に脱出したものです17
  • 子宮頸がん・前がん状態: まれではありますが、ポリープ状の形態をとるがんも存在します15

以下の表は、子宮頸部ポリープと子宮内膜ポリープの主な違いをまとめたものです。

特徴 子宮頸部ポリープ 子宮内膜ポリープ
発生場所 子宮頸管 子宮内膜(子宮体部)
主な症状 不正出血(特に接触時)、多くは無症状 不正出血、過多月経、不妊
不妊への影響 通常は軽微。巨大な場合は影響の可能性も。 受精卵の着床を妨げる原因となり、不妊と密接に関連する。
悪性化リスク 極めて低い (約0.1-0.5%) 低いが、頸部ポリープよりは高い。特に閉経後や大きいもので注意が必要。
主な治療法 外来での単純切除 子宮鏡下手術

第3部:悪性度の問題 ― リスクの評価と病理学的分析

このセクションでは、患者様が最も懸念される「がんでないか?」という問いに、統計的根拠に基づいて客観的かつ丁寧にお答えします。

3.1. 悪性化率に関する統計的分析

最大の朗報は、子宮頸部ポリープの圧倒的多数が良性であるという事実です5。しかし、客観的なリスク評価のためには、具体的な統計数値を理解することが重要です。

  • 具体的な悪性化率: 複数の研究報告がありますが、いずれも非常に低い数値を示しています。
    • 0.1%: 2,246例を対象としたある研究で報告された数値です7
    • 0.2% – 0.4%: ある病理学の教科書で引用されている数値です8
    • 0.1% – 0.6%: 最近の総説論文で引用されている範囲です11
    • 0.2% – 1.5%: より広い範囲としてStatPearlsで言及されており、閉経後の患者でリスクがより高くなることが注記されています4
  • 前がん状態(異形成)のリスク: がんそのものではなくても、将来がんになる可能性のある「前がん状態」の細胞が見つかるリスクも低いながら存在します。ある研究では、その割合は約0.5%と報告されています18

これらのデータを総合すると、子宮頸部ポリープががんである確率は、高く見積もっても200分の1(0.5%)以下、多くの場合は1000分の1(0.1%)に近い、極めて低いものと言えます。閉経後の女性ではリスクがわずかに上昇するため、より確実な診断のための切除・病理検査が推奨されます。

3.2. 病理組織検査:最終的な答え

統計的なリスクがいかに低くとも、ポリープの性質を100%確実に診断する唯一の方法は、病理組織検査です3。これは診断の「ゴールドスタンダード」とされています。

  • 検査プロセス: 切除されたポリープは検査室に送られ、専門家が顕微鏡で詳細に観察し、異常な細胞が存在しないかを確認します14
  • 結果判明までの期間: 結果は通常、約10日から2週間で判明します6

検査結果を待つ期間は、ご不安に感じられることでしょう。しかし、これは正確な診断を下すための標準的なプロセスであり、結果が良性である可能性が圧倒的に高いことを心に留めてお過ごしください。

第4部:包括的な治療戦略と管理

このセクションでは、「どのように治療するのか」という具体的な行動計画について詳しく解説します。「子宮頸部ポリープ 治療」や「子宮頸部ポリープ 手術」といった検索をされている方の疑問に直接お答えします。

4.1. 無症状ポリープの管理:経過観察 vs. 積極的切除

症状のないポリープをどう扱うかについては、臨床的な判断が分かれる領域です。

  • 経過観察という選択肢: ポリープが小さく、不正出血などの症状がなく、子宮がん検診の結果も正常であれば、定期的に様子を見る「経過観察」も有効な選択肢の一つです14。国際的な一部のガイドラインでは、無症状のポリープをルーチンに切除することを強く支持する根拠は乏しいとされています11
  • 積極的切除という選択肢: 日本の多くの臨床現場では、無症状であっても切除が推奨される傾向にあります19。その理由は以下の通りです。
    1. 確定診断: 切除は、ごくわずかな悪性の可能性を完全に排除する唯一の方法です18
    2. 将来の症状予防: 現在は無症状でも、将来的に出血などの症状を引き起こす可能性があるため、早期に切除する方が良いという考え方です18
    3. 患者の安心感: 「ポリープがある」という状態が続くことへの心理的な負担を解消するため、切除を希望される患者様も多くいらっしゃいます11
    4. 妊娠希望: 妊娠を希望されている場合は、事前に切除しておくことが推奨されます20

どちらのアプローチが絶対的に正しいということはなく、患者様一人ひとりの状況、価値観、そして医師の臨床的判断を総合して、最適な方針が決定されます。

4.2. ポリープ切除術の詳細

ほとんどのポリープ切除は、入院の必要がなく、外来の診察室内で数分で完了する簡単な処置です14

  • 麻酔と痛み: 一般的に、麻酔は使用しません5。痛みもほとんどないか、ごくわずかです。処置自体は数分で終了します9
  • 主な切除技術:
    • 捻除術(ねんじょじゅつ): 茎が細いポリープに対して行われる最も一般的な方法です。鉗子(かんし)という器具でポリープの根元を掴み、ねじり切ります5
    • 電気メスによる切除: 茎が太い場合や出血しやすい場合に用いられます。電気の熱で焼き切るため、止血効果が高いのが特徴です9。これはLEEP(ループ電気外科的切除術)と呼ばれることもあります21
    • レーザーメスによる切除: 大きなポリープや切除が難しい場合の選択肢です19
    • 子宮鏡下手術: ポリープが非常に大きい、根元が頸管の奥深くにある、または子宮内膜ポリープの合併が疑われる場合に行われます。カメラを子宮内に挿入し、モニターで確認しながら切除します15

4.3. 術後のケア、回復、そして費用について

処置後の過ごし方を理解することは、スムーズな回復のために非常に重要です。

  • 術後の出血: 処置後、数日間は少量の出血や茶褐色のおりものが続くのが一般的です6。出血量が多い、または長期間続く場合は、医療機関に相談してください。
  • 生活上の注意点:
    • 入浴: シャワーは当日から可能です。湯船に浸かる入浴は、出血がほとんどなくなれば可能ですが、長湯は避けた方が賢明です9
    • 性交渉: 出血が完全になくなるまで(通常1週間程度)は控えてください14
    • 仕事: 通常、翌日から普段通りの仕事が可能です6
  • 費用(日本国内の場合): この処置は健康保険が適用されます22。自己負担割合が3割の場合、切除術と病理検査を合わせて、費用は概ね7,500円から10,000円程度が目安です14。施設によっては、手術のみで3,500円程度の場合もあります23

4.4. 再発の可能性と管理

子宮頸部ポリープは、残念ながら再発しやすい性質があります14。もし再発した場合は、再度切除することが一般的です。最初のポリープが良性と確認されていれば、臨床状況に応じて、再度の病理検査は省略されることもあります22。いずれにせよ、定期的な婦人科検診を続けることが重要です24

第5部:特殊な状況と合併疾患

このセクションでは、標準的なケース以外の、より複雑なシナリオについて解説し、疾患への包括的な理解を深めます。

5.1. 妊娠中の子宮頸部ポリープ

妊娠中にポリープが見つかった場合の管理は、医学界でも意見が分かれる複雑な問題です15

  • 経過観察を支持する考え方: 妊娠中の切除は、子宮を刺激し、出血や、まれに流産・破水を引き起こすリスクがあるため15、多くの医師は出産後まで待つことを選択します。
  • 切除を支持する考え方: ポリープが感染源となり、絨毛膜羊膜炎などを引き起こして早産の原因となる可能性や、ポリープからの出血が他の深刻な産科的異常による出血と見分けがつかず、不要な不安や検査につながる可能性があるため、切除が考慮されることもあります3
  • 意思決定: 最終的な方針は、ポリープの大きさや症状、妊娠週数などを考慮し、患者様と医師が慎重に話し合って決定されます15

特筆すべき点として、日本のある研究では、妊娠中に見られる特殊な「脱落膜ポリープ」は、通常の「頸管内ポリープ」と比較して、切除後の流産や早産のリスクが有意に高いことが報告されています25。これは、妊娠中のポリープ管理において、ポリープの種類が重要なリスク評価因子であることを示唆する高度な臨床的知見です。

5.2. 不妊への影響と子宮内膜ポリープとの関連

ポリープと妊娠のしやすさ(妊孕性)との関連は、多くの女性にとって大きな関心事です。

  • 子宮頸部ポリープの影響: 一般的に、子宮頸部ポリープが不妊の直接的な原因となることはまれです9。ただし、非常に大きなポリープが物理的に精子の通過を妨げる可能性は理論的に考えられます24
  • 子宮内膜ポリープの影響: 対照的に、子宮内膜ポリープは不妊症の原因としてよく知られています24。これは、受精卵が子宮内膜に着床するのを妨げるためです24。不妊治療中の方には、切除が強く推奨されます。
  • 合併の可能性: 子宮頸部ポリープと子宮内膜ポリープは同時に存在することがあります。ある研究では、子宮頸部ポリープを持つ患者の最大25%に子宮内膜ポリープも認められたと報告されています3。また、子宮筋腫や子宮腺筋症といった他の良性疾患との関連も指摘されています26

このため、不妊に悩む女性に子宮頸部ポリープが見つかった場合、臨床的な焦点は、合併しうる子宮内膜ポリープの有無を調査することへと広がります。超音波検査や子宮鏡検査による子宮内腔の評価が重要なステップとなります。

第6部:患者様のための行動計画

最後のセクションでは、これまでのすべての情報を集約し、患者様が次にとるべき行動を明確にするための具体的な指針を提供します。

6.1. いつ医療機関を受診すべきか

以下の症状に気づいた場合は、ためらわずに婦人科を受診してください。

  • 月経期間外のあらゆる出血
  • 性交渉後のあらゆる出血
  • 閉経後のあらゆる出血
  • 普段と比べて明らかに月経量が多い場合
  • おりものの色や臭い、性状に異常を感じる場合21

6.2. 医師に尋ねるべき質問リスト

診察の際に、以下の質問リストを活用することで、ご自身の状態についてより深く理解し、意思決定に参加することができます。

  • 「私のポリープは、どのくらいの大きさで、どこにありますか?」
  • 「見た目の特徴から、何か気になる点はありますか?」
  • 「すぐに切除することを勧めますか、それとも経過観察ですか?その理由は何ですか?」
  • 「もし切除する場合、どのような方法で行いますか?」
  • 「病理検査の結果は、どのようにして知ることができますか?」
  • 「私は妊娠を計画していますが、今回の件は計画にどう影響しますか?」
  • 「(不妊の懸念がある場合)超音波検査で子宮内膜ポリープの可能性も確認すべきでしょうか?」

結論

子宮頸部ポリープは、多くの女性が経験する可能性のある非常に一般的な良性疾患です。そのほとんどは無症状であり、がんである可能性は極めて低いものです。しかし、不正出血などの症状を引き起こすことや、ごくまれに悪性の可能性が潜んでいることから、婦人科での正確な診断と適切な管理が重要となります。治療は外来での簡単な処置で完了することが多く、身体的・経済的負担も比較的小さいと言えます。この記事を通じて、子宮頸部ポリープに関する正しい知識が広まり、皆様が抱える不安が少しでも軽減されることを願っています。最も大切なことは、気になる症状があれば放置せず、専門家である婦人科医に相談し、定期的な検診を受けることです。皆様の健康を心よりお祈り申し上げます。

免責事項
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康に関する懸念や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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