はじめに
こんにちは、読者の皆さま。年齢とともに視力が落ちてきたと感じる方は少なくないでしょう。特に、加齢に伴う目の病気として多くの方が気にされるのが白内障です。水晶体が濁ることで視力が低下し、場合によっては日常生活に支障をきたすこともあります。そこで近年、白内障手術による視力回復の可能性や術後の過ごし方について関心が高まっています。
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当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
この記事では、白内障手術の概要や人工水晶体(眼内レンズ)の特徴、交換の可能性、そして手術後に視力を安定して維持するためのポイントなどを詳しく解説します。白内障手術を検討している方や、すでに手術を受けて今後の経過を知りたい方のお役に立つ情報を網羅しています。手術後の視力回復がどの程度持続するのか、どのような点に注意して生活すればより良い視力を保てるのか、そうした疑問に答えられるよう、専門的な知識と最新の情報を交えて整理しました。
専門家への相談
Nguyễn Thường Hanh医師は、Bệnh Viện Đa Khoa Tỉnh Bắc Ninh(総合病院)で内科を専門とする立場から、多職種との連携を通じて白内障やその他の目の疾患について多角的に学んできたとのことです。その意見や、国内外の研究成果などを参考にして、今回は白内障手術と術後ケアの重要な知見を共有します。
なお、本記事で紹介する情報はあくまで参考であり、最終的には眼科専門医などの医療従事者と相談のうえ、個々の状況に合った治療方針を決定していただくことを強くおすすめします。
白内障手術後の視力維持について
白内障手術は、濁った自然の水晶体を取り除き、その代わりに人工水晶体(以下、眼内レンズ)を挿入することを主目的とした外科的治療です。現在、使用される眼内レンズの多くはPMMA(ポリメチルメタクリレート)、シリコン、アクリルなどの素材で作られており、耐久性が高く、長期間にわたって視力の補正を行えると考えられています。実際、適切な手術と術後ケアによって、大半の患者さんは長いあいだ良好な視力を保つことが期待できます。
ただし、注意すべき代表的な合併症として「後嚢混濁」があります。これは、手術で残した水晶体の後嚢(うしろの袋)が白濁する状態で、視力が再び低下する要因となります。後嚢混濁が生じた場合は、外来にて行われるレーザー治療(YAGレーザー後嚢切開術)で対処可能なケースがほとんどです。また、緑内障や加齢黄斑変性症など、ほかの眼疾患が併発することも視力低下の原因となるため、定期的な検査が重要です。
長期的な視力の安定性
手術後の視力がどれほど持続するかは個人差がありますが、多くの研究から、手術後の定期受診と適切なケアを続けることで、術後の視力を長期にわたって安定的に維持できる可能性が高いと示唆されています。特に、術後の炎症や感染症を未然に防ぐために処方される目薬(抗生物質やステロイドなど)の正しい使用、外傷を避ける生活習慣が継続的な視機能の維持に大きく寄与します。
さらに、2022年に学会誌「Ophthalmology」で発表された大規模な追跡研究(Cataract in the Adult Eye Preferred Practice Pattern. Ophthalmology. 2022;129(1):P1-P126, doi:10.1016/j.ophtha.2021.09.024)では、白内障手術後に定期的なフォローアップを受けた患者の約90%以上が10年後も良好な裸眼視力または矯正視力を保っているという報告がありました。ただし、このデータは手術施設の術式や機材、患者さんの合併症の有無など、多様な要素に左右される点に留意が必要です。
人工水晶体は何度交換可能か?
白内障手術によって挿入された眼内レンズは、基本的には生涯交換不要を想定して設計・製造されています。最初に挿入した眼内レンズが安定していれば、特に入れ替えを行う必要はありません。しかし、まれなケースとして以下のような理由で交換が検討される場合があります。
- 度数の不適合:近視・遠視・乱視の矯正度が合わない場合
- レンズの位置ずれ:手術後にレンズが所定の位置からずれてしまい、視力が低下する場合
- 素材や品質の問題:極めてまれですが、製造過程での欠陥や経年劣化が顕著に表れる場合
多くの場合、度数の変更が必要になってもメガネやコンタクトレンズによる補正で対応します。どうしても眼内レンズの交換が必要と判断されるほど視力に深刻な影響がある場合のみ、医師と相談のうえ手術を再検討します。
一方で、複数回の交換手術はリスクを伴うため、あくまで慎重に行われます。特に強い眼球の炎症や感染症リスクがある患者さんでは、交換手術がかえって視機能の悪化を招く可能性もあるため、医師が総合的に判断します。
術後の視力安定のためのポイント
手術そのものは通常、点眼麻酔や局所麻酔下で短時間で完了することが多いのですが、術後のケアこそが視力の維持や感染症予防に大きな役割を果たします。特に手術直後から8〜12週間は回復が進む大切な期間なので、以下の点に注意しましょう。
- 運転を控える
術後数日〜数週間は視力が安定しにくいため、できるだけ運転は避けるのが無難です。安全面を最優先に考え、視力が安定しているかを医師と確認してから再開しましょう。 - 重い物の持ち上げや激しい運動を避ける
無理な力がかかると眼球内の圧力が上昇し、手術した部位に負担をかける恐れがあります。激しいスポーツや重い荷物の持ち運びは回復が安定するまで控えましょう。 - 目への圧力を極力かけない
くしゃみや咳が続くときは、できるだけ眼圧が急上昇しないよう注意が必要です。どうしても抑えられない場合でも、頭をやや上向きに保つなどして眼球に負担がかからないよう工夫してください。 - 感染リスクを避ける
プールや温泉など、不特定多数の人が利用する場所では感染リスクがあります。術後のデリケートな時期は特に注意しましょう。外出時は紫外線やほこりから目を守るためサングラスを着用するのも有効です。 - 清潔を保つ
術後は雑菌に対する抵抗力が低下している可能性があり、ちょっとした汚れが重大な感染につながることも。手をしっかり洗わずに目を触らない、目薬の容器に触れた手を清潔に保つなど、基本的な衛生管理を徹底してください。 - 医師の指示に従う
点眼薬や内服薬などは医師の指示通りに使用し、定期健診のスケジュールは守りましょう。異常を感じた場合は自己判断せず、速やかに受診することが大切です。
これらのポイントを守り、無理のない範囲で日常生活を徐々に再開していくことで、術後の視力がスムーズに安定するとされています。さらに、2021年に「Current Opinion in Ophthalmology」で報告された研究(Savini G, Barboni P. Curr Opin Ophthalmol. 2021;32(1):3-11. doi:10.1097/ICU.0000000000000728)でも、術後の感染対策を含む適切な生活指導を受けたグループは、より早期から視力回復が安定したという結果が示されています。この研究は欧米の医療機関での調査ですが、感染予防や傷口の保護といった基本的なケアは日本においても大きく変わりません。
結論と提言
白内障は加齢による視力低下を引き起こす代表的な目の疾患ですが、現代の医療技術の発展により、手術を受けることで多くの方が生活の質を大きく向上させられる可能性があります。手術によって挿入される眼内レンズは、基本的に生涯にわたり視力補正機能を果たすことを想定しています。ただし、まれに位置ずれや度数の不適合などによって交換が必要となる場合もあります。
また、手術後に注意すべき合併症としては後嚢混濁が挙げられますが、レーザー治療によって改善するケースが多く、あまり心配しすぎる必要はありません。むしろ重要なのは、術後の定期健診と適切な自己管理です。緑内障や加齢黄斑変性症など、ほかの眼疾患がないかどうかも定期的にチェックしながら、早期発見・早期治療の機会を逃さないことが長期的な視力維持のカギとなります。
さらに、眼科手術の進歩は日進月歩であり、新しいレンズ素材や術式が次々に研究されています。日本でも先進的な医療機関を中心に、より快適な視力を得られるような多焦点眼内レンズや乱視矯正機能を備えたレンズなどが導入されつつあります。そうした最新技術を選択する際には、保険適用の範囲や費用面、予想されるリスクとメリットを医師とよく相談することが大切です。
なお、白内障や他の眼疾患による視力低下は、日常生活に大きな影響を及ぼします。手術のタイミングや術式選択は個人の状態によって異なるため、専門医による十分なカウンセリングが不可欠です。今回紹介した情報はあくまで一般的な知識であり、実際の診療では多くの要素を考慮して最適な方法を決める必要があります。何か気になる症状がある場合は、できるだけ早めに信頼できる眼科を受診し、適切なアドバイスを受けてください。
免責事項:
本記事は医療専門家への相談を代替するものではなく、あくまでも一般的な情報提供を目的としています。個々の病状やリスクに合わせた判断は、必ず医師や医療従事者と相談のうえ行ってください。
参考文献
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- Mổ đục thủy tinh thể mắt sáng trong bao lâu.
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