糖尿病と高血圧の食事療法とは?減塩とDASH食を徹底解説
この記事でわかること
目次
糖尿病と高血圧の食事療法とは何か。両方をかかえる場合の食事療法は、大きく分けて「減塩」と「DASH食」の2つが柱になります。厚生労働省のe-ヘルスネットでは、ナトリウム(食塩相当量)の目標量は18歳以上の男性で1日7.5g未満、女性で6.5g未満とされていますが、糖尿病があり高血圧を合併している場合はさらに1日6g未満への制限が必要になることがあります[1]。PMC掲載の研究では、DASH食単独で収縮期血圧が最大11.0mmHg低下したという報告もあります[3]。
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健診で両方の数値を指摘され、「糖尿病の食事療法と高血圧の食事療法、両方言われたけれど何から始めればいいか分からない」という方に向けて、この記事では厚生労働省の公的資料と査読済み医学論文だけを根拠に、減塩の具体的な目標値、DASH食の考え方、糖尿病の食事療法との共通点、外食・加工食品での注意点までを整理しています。断定できない部分は「分かっていない」とはっきり書いており、数字はすべて出典を示しています。今日からできる小さな一歩を見つける手がかりとして活用し、無理のないペースで続けていただければ幸いです。
要点まとめ
- 厚生労働省の資料では、ナトリウムの目標量は成人男性7.5g未満・女性6.5g未満とされているが、糖尿病×高血圧の合併時は1日6g未満への制限が必要になることがある[1]
- DASH食は、野菜・果物・乳製品を積極的に取り入れ、カリウム・カルシウム・マグネシウム・食物繊維を多く摂る食事法として紹介されている[1]
- PMC掲載の研究では、DASH食単独で収縮期血圧が最大11.0mmHg、減塩単独で6.0mmHg低下したという報告がある[3]
- 糖尿病の食事療法では、適正エネルギー量の維持と、食物繊維の多い食品を積極的に摂ることが基本とされている[2]
- 糖尿病と高血圧の食事療法は多くの部分で共通しており、別々に取り組む必要はない
編集方針: JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会・査読論文と照合して作成。最終確認は人の目。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点)。最終更新日:2026年7月19日。記載内容に誤りや古い情報にお気づきの場合は、サイト内のお問い合わせ窓口までご連絡いただけますと幸いです。
柱1:減塩 — 具体的な目標値とコツ
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、ナトリウム(食塩相当量)の目標量は18歳以上の男性で1日7.5g未満、女性で6.5g未満とされていますが、実際の摂取量はこの目標を約3gほど上回っているのが現状だと報告されています[1]。糖尿病があり高血圧も合併している場合は、この一般的な目標よりもさらに厳しい1日6g未満への制限が必要になることがあります。
減塩というと「薄味に我慢する」というイメージが強いですが、実践しやすい具体的な工夫があります。厚生労働省の資料では「めん類の汁やスープを飲まずに残すと2〜3g減塩することができます」とされており[1]、これだけでも大きな効果があります[1]。また、「味を確かめながら調味料を少しずつ使用する」ことや、「酢や香辛料を活用する」ことで、塩分を減らしながらも料理の満足感を保つ工夫ができるとされています[1]。
今の血圧・脈拍を確かめる
数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
身長と体重からBMIも調べる
血圧手帳(この端末に保存)
これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
柱2:DASH食 — 血圧を下げる食事パターン
DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)は、高血圧を改善するために開発された食事法です。カリウムに加えて、カルシウムやマグネシウム、食物繊維、不飽和脂肪酸を積極的に摂ることが特徴とされています。厚生労働省の資料でも、「野菜や果物にはカリウムというミネラルが多く含まれています」とされ、牛乳・乳製品やお茶(抽出液)などにもカリウムが含まれるとされており、1日350g以上の野菜摂取が推奨されています[1]。
PMC掲載のレビューでは、ブラジルで行われた研究で、DASH食を実践した群は対照群と比べて収縮期血圧が11.0mmHg低下したと報告されています。また、別の研究(イラン)でも収縮期血圧が10.5mmHg低下したと報告されており、減塩単独の効果(ある研究で6.0mmHg低下)と比べても、DASH食の効果は大きい可能性が示されています[3]。ただし、同じレビューでは、DASH食群でも尿中ナトリウム排泄量が有意に減少していたという指摘があり、DASH食の効果の一部が、食事パターンの変化そのものだけでなく、結果的な減塩によるものである可能性も示唆されています[3]。
| 介入 | 報告されている収縮期血圧の変化 | 出典 |
|---|---|---|
| DASH食(ブラジルの研究) | -11.0mmHg | PMC掲載レビュー[3] |
| DASH食(イランの研究) | -10.5mmHg | PMC掲載レビュー[3] |
| 減塩単独(ある研究) | -6.0mmHg | PMC掲載レビュー[3] |
| ナトリウム目標量(成人男性) | 1日7.5g未満 | 厚生労働省[1] |
| ナトリウム目標量(成人女性) | 1日6.5g未満 | 厚生労働省[1] |
出典:DASH食と減塩の効果に関するレビュー(PMC掲載)[3]/厚生労働省 e-ヘルスネット「栄養・食生活と高血圧」[1]
ここで重要な注意点があります。PMC掲載のレビューは、DASH食と減塩を「同時に」組み合わせた場合の効果を検証した研究は、糖尿病患者を対象にしたものとしては見当たらなかったとしています[3]。つまり、DASH食と減塩を両方実践すればさらに大きな効果が得られるという期待は自然なものですが、糖尿病患者を対象にその相乗効果を厳密に検証した研究はまだ十分ではないというのが実情です。とはいえ、それぞれの介入が個別に血圧を下げる効果を持つことは示されているため、両方に取り組むこと自体は理にかなっています。
柱3:糖尿病と高血圧の食事療法の共通点
糖尿病の食事療法の基本は、「適切な量のエネルギーを摂り、適正な体重を維持すること」とされています[2]。エネルギー摂取量は年齢・目標体重・活動量に応じて決められ、過剰摂取は高血糖につながるため注意が必要とされています。この「適正エネルギー量を守る」という考え方は、高血圧対策としての減量とも共通しており、糖尿病と高血圧を別々の食事療法として考える必要はありません。
栄養バランスの面では、主食・主菜・副菜を組み合わせることが推奨されており、特に食物繊維については「血糖値の急激な上昇を抑える働きがあります」とされ、玄米や野菜など食物繊維が豊富な食品の積極的な摂取が勧められています[2]。この食物繊維の役割は、DASH食が重視する要素とも重なっており、PMC掲載のレビューでも、食物繊維によるインスリン感受性の改善が、DASH食の血圧を下げる効果の一因として指摘されています[3]。つまり、野菜・食物繊維を意識した食事は、血糖コントロールと血圧管理の両方に効く、一石二鳥の対策だといえます。
食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があり、それぞれ異なる働きを持っています。水溶性食物繊維(海藻・オクラ・きのこ類などに多い)は、糖の吸収を緩やかにし、食後血糖値の急上昇を抑える働きがあるとされています。一方、不溶性食物繊維(野菜・豆類・穀類の外皮などに多い)は、腸内環境を整え、便通を改善する働きがあるとされています。どちらか一方に偏るのではなく、両方をバランスよく摂ることが、血糖コントロールと消化器の健康の両面で望ましいと考えられます。
玄米や雑穀米、全粒粉のパンなど、精製度の低い炭水化物を選ぶことも、食物繊維の摂取量を自然に増やす方法の1つです。白米を玄米に完全に置き換えることが難しい場合は、白米と玄米を混ぜて炊く、あるいは押し麦や雑穀を加えるといった、無理のない範囲での置き換えから始めることができます。急激な食習慣の変更は続けにくいため、少しずつ慣らしていくアプローチが現実的です。家族の好みや調理の手間も考慮しながら、無理のないペースで取り入れていくことが継続の鍵になります。
柱4:糖尿病と高血圧の食事療法における食べ方の工夫
何を食べるかだけでなく、どう食べるかも重要です。厚生労働省の資料では、「1日3食を基本とし、時間を決めて規則正しく」摂取することが重要だとされています[2]。また、「ゆっくりと時間をかけて食べること」が勧められており、「まとめ食いを避けることで、血糖値の急上昇や高血糖の持続を防ぐことができる」とされています[2]。
早食いや不規則な食事は、血糖値の急激な変動を招きやすく、結果として食欲のコントロールが難しくなり、体重増加や血圧上昇にもつながりやすいと考えられます。忙しい生活の中でも、決まった時間に3食をとる、よく噛んでゆっくり食べるといった基本的な習慣を意識することが、薬物療法と並ぶ、あるいはそれ以上に重要な土台になります。
食べる順番についても、工夫の余地があります。野菜や汁物から先に食べ、その後に主菜、最後に主食(ご飯・パンなど)を食べる「食べる順番」の工夫は、血糖値の急上昇を抑える効果が期待できる方法として広く知られています。食物繊維を先に摂ることで、後から入ってくる糖質の吸収がゆるやかになるという考え方です。すべての食事でこの順番を厳密に守る必要はありませんが、意識するだけでも血糖値の変動を緩やかにする助けになります。
また、就寝直前の食事は、血糖値が高いまま眠りにつくことになりやすく、翌朝の血糖値にも影響を与える可能性があります。夕食から就寝までに、できれば2〜3時間程度の間隔を空けることが望ましいとされています。仕事の都合などでどうしても夕食が遅くなる場合は、量を控えめにする、消化の良いものを選ぶといった工夫で調整することができます。あらかじめ夕方に軽い補食を摂っておき、帰宅後の夕食量を減らすという工夫も、遅い時間の食事を避けられない方には有効です。
すぐに医療機関を受診すべきサイン
- 急激な食事制限・断食後に、めまい・冷や汗・意識がもうろうとする(低血糖の可能性)
- 血圧が180/120mmHgを超えるなど、著しく高い数値が出た場合
- むくみ・尿の異常が続く(腎症進行のサイン)
- 食事療法を大きく変えた直後に、体調の急激な変化がある
- 自己判断で極端な糖質制限・塩分制限を始め、体調不良を感じる場合
特に、糖尿病治療薬(インスリンやSU薬など)を使用している方が急に食事量を減らすと、低血糖を起こす危険があります。食事療法を大きく変更する際は、自己判断で始めず、必ず主治医・管理栄養士に相談してください。インターネットや書籍で見た極端な糖質制限・断食法などを自己流で試みることは、短期的には体重や血糖値に変化が見られても、栄養バランスの崩れや筋肉量の減少、リバウンドなど、長期的にはかえって不利益になることがあります。
糖尿病と高血圧の食事療法の受診の目安 — 誰に相談すればいい?
糖尿病と高血圧の食事療法を具体的にどう進めればよいか迷う場合は、医師だけでなく管理栄養士への相談も有効な選択肢です。多くの医療機関では、糖尿病・高血圧の患者向けに栄養指導を行っており、個々の生活スタイルや好みに合わせた具体的な献立の提案を受けられます。自己流の情報だけに頼らず、専門家のアドバイスを受けることで、無理なく続けられる食事療法を見つけやすくなります。栄養指導は多くの場合、健康保険の適用対象となることがあり、費用面でも利用しやすい制度が整っています。「わざわざ相談するほどでもない」と考えず、糖尿病や高血圧の診断を受けた早い段階で一度相談しておくことが、その後の食習慣の土台作りに役立ちます。数回にわたって継続的に相談できる場合もあるため、1回きりで終わらせず、生活の変化に合わせて定期的に見直す機会として活用することもおすすめです。
| 状況 | 相談先の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 食事療法の具体的な進め方が分からない | 管理栄養士(栄養指導) | 多くの医療機関で実施 |
| 低血糖症状が出た | すぐに糖分を摂り、主治医に相談 | 糖尿病治療薬使用中は特に注意 |
| 血圧が急激に変化した | 糖尿病内科・循環器内科 | 薬の調整が必要な場合がある |
| 極端な食事制限を検討している | 自己判断せず主治医に確認 | 栄養不足・リバウンドのリスク |
出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病の食事」[2]
1日の食事バランスの目安
具体的にどのくらいの量を食べればよいか、目安となる基準を知っておくと実践しやすくなります。厚生労働省の資料では、糖尿病の食事療法においてエネルギー摂取量は年齢・目標体重・活動量に応じて個別に決定されるべきものとされており、一律の基準値があるわけではありません[2]。ただし、主食・主菜・副菜をバランスよく組み合わせるという基本的な枠組みは、多くの人に共通して当てはまる考え方です。
| 項目 | 目安となる基準 | 出典 |
|---|---|---|
| ナトリウム目標量(成人男性) | 1日7.5g未満 | 厚生労働省[1] |
| ナトリウム目標量(成人女性) | 1日6.5g未満 | 厚生労働省[1] |
| 糖尿病×高血圧合併時の目安 | 1日6g未満 | 一般的な臨床目安[1] |
| 野菜摂取量の目安 | 1日350g以上 | 厚生労働省[1] |
| 麺類の汁を残した場合の減塩効果 | 2〜3g減塩 | 厚生労働省[1] |
出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「栄養・食生活と高血圧」[1]/「糖尿病の食事」[2]
これらの数値はあくまで一般的な目安であり、腎機能や他の合併症の有無によって、個々に調整が必要な場合があります。特にナトリウムの制限は、腎機能によってはさらに厳しい管理が必要になることもあれば、逆に高齢者などでは過度な制限がかえって食欲低下や低栄養を招くこともあるため、必ず主治医・管理栄養士と相談しながら自分に合った基準を確認することが重要です。
外食・加工食品での注意点
減塩を意識していても、外食や加工食品には見えにくい塩分が多く含まれていることがあります。漬物、干物、練り製品(かまぼこ・ちくわなど)、インスタント食品、加工肉(ハム・ソーセージ)などは、家庭での調理よりも塩分濃度が高くなりがちです。外食時には、ラーメンやうどんの汁を残す、ソース・ドレッシングを別添えにしてもらうといった工夫が、日々の減塩の積み重ねに役立ちます。
また、栄養成分表示を確認する習慣も有効です。多くの加工食品にはナトリウム量(または食塩相当量)が表示されているため、購入時に確認することで、1日の塩分摂取量を把握しやすくなります。すべてを自炊でまかなうのは現実的でない場合も多いため、外食・中食を選ぶ際にも、できる範囲で低塩分のメニューを選ぶ意識を持つことが大切です。
コンビニエンスストアやスーパーの惣菜を利用する機会が多い方は、単品よりも定食スタイル(主食・主菜・副菜がそろったもの)を選ぶことで、栄養バランスを取りやすくなります。パンやおにぎりだけで食事を済ませる、丼物ばかりを選ぶといった食べ方は、炭水化物に偏りやすく、野菜や食物繊維の摂取が不足しがちです。サラダや野菜の惣菜を1品追加するだけでも、栄養バランスは大きく改善します。冷凍野菜やカット野菜を常備しておくと、忙しいときでも手軽に野菜を追加できるため、続けやすい工夫の1つになります。
外食チェーンやコンビニの中には、栄養成分やアレルギー情報を公開しているところも増えています。よく利用する店舗のメニュー表やウェブサイトで、ナトリウム量やカロリーを事前に確認しておく習慣をつけると、店頭で慌てて選ぶよりも、落ち着いて自分に合ったメニューを選びやすくなります。
飲酒・間食との付き合い方
食事療法を考えるうえで、忘れられがちなのがアルコールと間食です。過度な飲酒は血圧を上げる要因として知られており、糖尿病がある人にとっては、アルコール自体のカロリーに加え、おつまみによる塩分・脂質の摂り過ぎも問題になりやすいポイントです。主治医から特に禁酒を指示されていない限り、飲酒量を完全にゼロにする必要はない場合が多いですが、適量を意識し、おつまみの塩分にも注意を払うことが勧められます。おつまみを選ぶ際は、揚げ物や塩辛いものよりも、枝豆や冷奴、刺身、蒸し野菜など、比較的塩分・脂質が控えめなものを選ぶ工夫が役立ちます。
間食についても、間食を「絶対にダメ」と一律に禁止して考えるのではなく、内容とタイミングを工夫することが現実的です。甘い菓子や清涼飲料水を習慣的に摂る代わりに、素焼きのナッツやヨーグルトなど、血糖値への影響が比較的緩やかで、DASH食が重視するカルシウムなどの栄養素も摂れる選択肢に置き換えることが1つの工夫になります。完全に断つことがストレスになり、かえって継続を難しくすることもあるため、「置き換え」という発想を持つことが長続きのコツです。何を我慢するかではなく、何に置き換えられるかを考える習慣が、無理なく食習慣を変えていくうえで役立ちます。
運動との組み合わせでさらに効果的に
食事療法は単独でも一定の効果がありますが、運動習慣と組み合わせることで、血糖・血圧の両方に対する効果がさらに高まると考えられています。厚生労働省の資料でも、糖尿病の予防・管理において運動が重要な要素として位置づけられており、食事だけでなく身体活動量にも目を向けることが勧められています[2]。
特別に激しい運動をする必要はなく、食後の軽い散歩を習慣にするだけでも、食後の血糖値の急上昇を緩やかにする効果が期待できるとされています。減塩・DASH食による食事面の対策と、日常的な身体活動を組み合わせることで、それぞれを単独で行うよりも大きな効果が得られる可能性があります。無理のない範囲で、食事と運動の両方に少しずつ取り組んでいくことが、長期的な血糖・血圧管理の鍵になります。
運動を始める前には、心臓や血管に大きな負担がかかる可能性がある場合、事前に主治医に相談することが望ましいとされています。特に、血圧のコントロールが不十分な状態や、糖尿病の合併症(網膜症・腎症・神経障害など)がすでに進行している場合は、適した運動の種類や強度が異なることがあります。「運動は体に良いはず」と自己判断で急に激しい運動を始めるのではなく、自分の体の状態に合った運動を選ぶことが安全につながります。ウォーキングなど、負担の少ない運動から始め、体調を見ながら少しずつ強度を上げていくことが基本です。
無理なく続けるためのポイント
減塩やDASH食は、一時的に頑張るものではなく、長期的に続けていく生活習慣です。厳格なルールを自分に課しすぎると、かえって続かなくなったり、ストレスから反動で食べ過ぎてしまったりすることがあります。まずは「めん類の汁を残す」「野菜を1品追加する」など、1つか2つの小さな工夫から始め、慣れてきたら少しずつ範囲を広げていくアプローチが現実的です[1]。
家族と食事を共にする場合は、家族全体で薄味に慣れていくことも効果的です。糖尿病・高血圧の危険因子の多くは生活習慣に由来するため、本人だけでなく家族も同じような食習慣を共有していることが少なくありません。家族ぐるみで取り組むことで、本人の負担も減り、継続しやすくなるというメリットがあります。
継続のためのもう1つのポイントは、完璧を目指さないことです。旅行や外食、行事など、普段の食習慣を崩さざるを得ない場面は誰にでもあります。1回の食事で塩分や糖質を摂りすぎたからといって、そこで食事療法自体を諦めてしまう必要はありません。翌日以降の食事で少し調整する、といった柔軟な考え方を持つことが、長期的に見て継続率を高めることにつながります。「今日は仕方ない、明日から戻そう」という姿勢の方が、「絶対に守らなければ」という完璧主義よりも、結果的に長続きしやすいことが多いです。食事療法は短期間で終わるものではなく、何年、何十年と付き合っていくものだからこそ、多少のブレを許容しながら、大きな方向性を維持し続けることの方が重要だといえます。
記録をつけることも、継続のための有効な手段です。毎食の内容をすべて細かく記録する必要はありませんが、週に数回、写真を撮っておくだけでも、後から振り返ったときに自分の食習慣の傾向が見えてきます。栄養指導の際にこうした記録を持参すると、管理栄養士からより具体的なアドバイスを受けやすくなります。最近ではスマートフォンの食事記録アプリを活用する方も増えており、写真を撮るだけでおおよそのカロリーや塩分量を推定してくれるものもあります。こうしたツールを上手に活用することで、記録の手間を減らしながら、自分の食習慣を客観的に把握しやすくなります。ただし、アプリの推定値はあくまで目安であり、実際の食材や調理法によって誤差が生じることもあるため、過信せず、大まかな傾向をつかむための補助的な道具として活用するのがよいでしょう。
調理法を変えるだけでできる工夫
同じ食材でも、調理法を工夫するだけで塩分・脂質の摂取量を大きく変えることができます。焼く・蒸す・茹でるといった調理法は、揚げる・炒めるといった調理法と比べて、余分な油を使わずに済むため、カロリーコントロールの面でも有利です。だし(かつお節・昆布・煮干しなど)をしっかり効かせることで、塩分を減らしても物足りなさを感じにくくなるという工夫も、日本の家庭料理では取り入れやすい方法です。
また、汁物は具だくさんにすることで、同じ量の汁でも塩分濃度を薄めながら満足感を得ることができます。味噌汁を毎食飲む習慣がある方は、具材を増やして汁の量自体を減らす、あるいは低塩の味噌を活用するといった工夫も有効です。こうした小さな調理の工夫の積み重ねが、日々の減塩において大きな意味を持ちます。冷蔵庫や冷凍庫を活用し、だしをまとめて作り置きしておくと、忙しい日でも手軽に薄味の料理を用意しやすくなります。毎回一から丁寧に調理する必要はなく、続けやすい範囲で工夫を取り入れることが大切です。
調味料の選び方
市販の調味料の中には、同じような味付けでもナトリウム含有量が大きく異なるものがあります。醤油・味噌・ソースなどは、減塩タイプの製品を選ぶことで、普段の調理方法を大きく変えずに塩分摂取量を減らすことができます。ただし、減塩調味料は通常の調味料よりも風味が薄く感じられることがあるため、酸味(酢・柑橘類)や香辛料(唐辛子・胡椒・生姜・にんにくなど)、香味野菜(ねぎ・しそ・みょうがなど)を組み合わせることで、物足りなさを補う工夫が役立ちます。だしの旨味を活かすことも、塩分を減らしながら満足感を保つうえで効果的な方法です。かつお節・昆布・煮干しなどからとった天然だしは、化学調味料に頼らずとも十分な風味を料理に与えてくれます。
ドレッシングやめんつゆ、市販のソース類にも、意外に多くの塩分が含まれていることがあります。栄養成分表示でナトリウム量(または食塩相当量)を確認する習慣をつけることで、自分がどの調味料から多くの塩分を摂っているかを把握しやすくなります。特定の調味料を完全にやめる必要はなく、量を意識して使うことが現実的な対策です。市販の「めんつゆ」「たれ」「ドレッシング」の中にも、ナトリウム量を抑えた減塩タイプの製品が増えているため、普段使っている製品を減塩タイプに置き換えるだけでも、無理なく塩分摂取量を減らすことができます。買い物の際に、いつもの製品と減塩タイプの成分表示を見比べてみる習慣をつけると、思っている以上に差があることに気づくこともあります。
他の生活習慣病との関わり
糖尿病と高血圧の食事療法は、脂質異常症の食事療法とも多くの部分で重なります。飽和脂肪酸を控え、不飽和脂肪酸(魚の油、オリーブオイルなど)を意識的に摂ることは、血糖・血圧・脂質のすべてに良い影響を与えると考えられています。糖尿病の管理全般については当サイトの糖尿病管理 完全ガイド、皮膚に現れる糖尿病のサインについては環状肉芽腫と糖尿病の関連、糖尿病全般については糖尿病のまとめページもご覧ください。
栄養指導・受診時にメモして持っていくと役立つこと
- 直近1週間で食べたものの記録(できれば写真)
- 外食・中食の頻度
- 普段よく使う調味料の種類
- アルコール摂取の頻度・量
- 間食・甘い飲み物の習慣
- これまで試して続かなかった食事制限とその理由
DASH食と減塩を組み合わせた場合の効果について、糖尿病患者を対象にした厳密な検証研究は、今回参照したレビューの範囲では十分に見当たりませんでした[3]。それぞれの介入が単独で血圧を下げる効果を持つことは示されていますが、両方を組み合わせた場合に単純な足し算以上の効果が得られるかどうかは、現時点では明確な結論が出ていません。また、日本人の糖尿病患者を対象にした、DASH食の効果を検証した大規模な研究データも、今回参照した範囲では十分に見つかりませんでした。「分かっていること」と「まだ分かっていないこと」を分けて伝えることが、食事療法という長く付き合っていくテーマと向き合ううえで欠かせない姿勢だと考えています。将来、より大規模で日本人を対象にした研究が進むことで、こうした疑問がさらに明らかになっていくことが期待されます。
よくある質問
1日の塩分はどれくらいまでにすればいいですか?
DASH食は具体的に何を食べればいいですか?
減塩とDASH食、どちらが効果的ですか?
外食が多い場合はどうすればいいですか?
急に厳しい食事制限をしても大丈夫ですか?
ゆっくり食べることにどんな意味がありますか?
家族の協力は必要ですか?
参考文献
- 「栄養・食生活と高血圧」e-ヘルスネット(厚生労働省)健康日本21アクション支援システム https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-02-002.html
- 「糖尿病の食事」e-ヘルスネット(厚生労働省)健康日本21アクション支援システム https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-02-004.html
- “The Effects of the DASH Diet and Sodium Reduction on Blood Pressure in Persons With Diabetes.” PMC7810162, PubMed Central https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7810162/
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