はじめに
皆さん、ふだん目の健康を意識して過ごされていますか。目は、私たちの生活の質にとって非常に重要な器官です。視力や目の調子が悪くなると、日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、精神的なストレスや身体的な疲労にもつながることがあります。本記事では「JHO」という立場から、浅部点状角膜炎(時に「Thygeson’s Superficial Punctate Keratitis」と呼ばれることがあります)に焦点を当て、その原因や症状、予防方法や治療法などを総合的に解説していきます。すでに経験がある方や、目の痛みや赤みなどの症状に悩んでいる方はもちろん、まだ症状が出ていない方も、目の健康を保つうえで役立つ情報を得られるように丁寧に説明していきますので、ぜひ最後までお読みください。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
専門家への相談
本記事では、Thygeson’s Superficial Punctate Keratitisに関する様々な医学的研究や症例報告の知見を引用しています。これらは主に米国国立生物工学情報センター(NCBI)や海外の医療機関、専門学会が公開する文献を参照しており、信頼性の高い情報を厳選してまとめています。ただし、あくまで一般的な医学的知見をもとにした参考情報であり、実際の診断・治療には専門家(眼科医)による評価が不可欠です。気になる症状がある場合や、治療方針について詳しく知りたい場合には、必ず医療機関に相談してください。
浅部点状角膜炎とは?
浅部点状角膜炎は、角膜の最も表層にある上皮層に、小さな点状の病変が多数出現することを特徴とする病気です。日本国内でも稀な病気ではなく、日常的に外来で見かけることがあると報告されています。一般的には若年層(20〜30代)に多く見られますが、実際には年齢層を問わず発症する可能性があります。下記に示すような目の不快感を訴える方の一部で、この浅部点状角膜炎が見つかることがあります。
多くの場合、両目に症状が出て、角膜にくっきりとした点状(場合によっては線状)の混濁や病変が観察されることが特徴です。症状の出方には個人差が大きく、ある人は軽度の異物感程度で終わることもあれば、重症化して視力に大きく影響するケースもあります。
さらに、この疾患は再発と軽減を長期間にわたって繰り返す傾向が知られています。報告されている中には、40年近く続くような慢性経過の事例もみられます。症状がひどい場合には、「まぶしくて外に出られない」「目の痛みで集中力が下がる」など、日常生活に大きな支障をきたします。よって、浅部点状角膜炎と診断された場合は、早期から適切な治療と生活習慣の見直しを行うことが非常に重要です。
症状
浅部点状角膜炎の症状は、角膜の障害に典型的にみられる兆候を多く含んでいます。以下のような症状があれば、決して放置せず、医療機関での早期受診を検討してください。
- 目の赤み
角膜や結膜に炎症が起こると、充血によって目が赤く見えることがあります。 - 目の乾燥
涙液が不足したり、まぶたの閉鎖が不十分であったりすると、角膜表面が乾燥して障害を受けやすくなります。 - 涙が出やすい
一見すると乾燥とは矛盾するようですが、角膜表面が刺激を受けると反射的に涙が多く分泌されることがあります。 - 視力がぼやける
角膜上皮のダメージや混濁が広範囲に及ぶと、光の屈折が乱れて視界が不鮮明になりやすいです。 - 目の痛み
角膜は神経が豊富な組織です。わずかな損傷でも強い痛みやヒリヒリ感を引き起こすことがあります。 - 光に対する過敏症(羞明)
光がまぶしく感じる症状です。普段問題なく過ごせていた明るさでも、炎症や上皮障害により強い不快感を覚えます。 - 目の中に異物感を感じる
「砂粒が入ったような」と表現されることが多く、瞬きをするたびにゴロゴロする、チクチクする感覚があります。 - 耳の前のリンパ節の腫れ
ウイルス性など感染性の炎症が強い場合、ごくまれに耳の前にあるリンパ節が腫れることがあります。
これらの症状のいずれかが持続する場合は、自己判断で放置せず、速やかに眼科医の受診を検討することが大切です。視力が急激に低下したり、痛みが強い場合は特に注意が必要です。
原因
浅部点状角膜炎を引き起こす要因は多岐にわたります。原因を特定することは適切な治療につなげるうえで非常に重要です。一般的に以下のような要因が知られています。
- 細菌感染およびウイルス感染
代表的なウイルスとしてはアデノウイルス、ヘルペスウイルスなどが挙げられ、角膜上皮に感染して炎症を起こします。 - コンタクトレンズの長時間使用
コンタクトレンズが角膜を圧迫したり、衛生管理が不十分な場合に感染を引き起こすことがあります。 - 目の乾燥やまぶたの不完全な閉鎖
睡眠時や長時間のパソコン作業などでまばたきの回数が減り、角膜が常に露出して乾燥することで障害が生じやすくなります。 - 化学物質への暴露
工場や研究施設などで使用される化学物質や刺激性の強い洗剤などが目に入ると、角膜障害を引き起こす恐れがあります。 - アレルギー
花粉や化粧品、PM2.5などの大気汚染物質へのアレルギー反応により角膜表面に炎症が起こることがあります。 - 異物の侵入
ほこりや小さなゴミ、まつげなどが角膜表面を傷つけることで点状の損傷が生じる場合があります。 - 物理的外傷
目を強くぶつけたり、何かが直撃するなどの外傷により角膜上皮が剥がれやすくなります。 - 紫外線への暴露
強い日差しや溶接光などに目をさらすと、角膜上皮細胞が損傷を受ける可能性があります。 - まぶたの炎症
まぶた自体が炎症を起こしていると、角膜の保護機能が低下し、損傷や感染リスクが上がります。 - 眼薬へのアレルギー
使用している点眼薬の成分に対して過敏反応を起こすことで、角膜炎症状が出ることもあります。 - 特定の薬の副作用
全身投与の一部の薬が角膜障害を引き起こす可能性があります。 - 遺伝的免疫反応や免疫系疾患
たとえばアジソン病や全身性エリテマトーデスなどの自己免疫性疾患が背景にある場合、角膜に繰り返し炎症が起こることがあります。 - 顔面神経麻痺
例としてベル麻痺などが挙げられます。まぶたがしっかり閉じにくくなることで角膜が露出しやすくなり、損傷リスクが高まります。
これらの要因は単独でも複合的に働くこともあり、個々の患者さんによって原因が異なる場合があります。原因を突き止め、除去・回避するためにも眼科医による診断が重要です。
なお、近年の研究報告によると、目の乾燥(ドライアイ)と浅部点状角膜炎の関連が注目されています。特に長時間のデスクワークやスマートフォン操作が原因でまばたきが減ること、そしてエアコンによる室内の乾燥など、生活習慣に起因する角膜表面の障害リスクが高まっていると指摘されています。
診断と治療
診断
浅部点状角膜炎の診断には、眼科医による詳細な目の検査が不可欠です。一般的に、次のようなステップが行われます。
- 視力検査
まずは視力にどの程度の影響が出ているかを確認します。 - 細隙灯検査
角膜の表面を観察するための基本的な検査です。専用の顕微鏡と光源を使って、角膜や結膜の状態を拡大して詳細に確認します。 - フルオレセイン染色
角膜上皮の欠損が分かりやすくなるよう、フルオレセインという蛍光色素を点眼し、青色光を当てて観察します。浅部点状角膜炎の特徴的な点状の病変が浮かび上がることで診断が容易になります。 - 鑑別診断
他の角膜感染症やドライアイなど、似た症状を引き起こす病気との鑑別を行います。たとえば、ヘルペスウイルスによる角膜炎の場合は樹枝状潰瘍が確認できる場合もあり、適切な判別が治療に直結します。
治療
浅部点状角膜炎の治療法は、症状や原因に応じて異なります。主な治療アプローチとしては下記のようなものがあります。
- 抗生物質の点眼
細菌感染が疑われる場合には、抗菌薬の点眼を行います。ただしウイルス性の場合は効果が期待できないので注意が必要です。 - 抗ウイルス薬
ヘルペスウイルスやアデノウイルスなどウイルスが原因となっている場合は、抗ウイルス薬の点眼や内服薬が選択されます。特にヘルペスウイルス感染による角膜障害は放置すると再発しやすく、角膜混濁や視力低下へつながる恐れがあるため、早期治療が重要です。 - ステロイド点眼
重度の炎症がある場合や、自己免疫的な要因が疑われる場合などには、ステロイド点眼を使用することがあります。ただし、ステロイド点眼は感染症のリスクを高める場合もあるため、処方と使用指示は必ず医師の指示に従う必要があります。 - 人工涙液や保湿点眼
ドライアイや目の乾燥が原因のひとつとして考えられる場合は、人工涙液などで角膜表面の潤いを確保します。 - 生活習慣の見直し
長時間のパソコン作業やコンタクトレンズの使用時間を減らす、休息をこまめに取り入れるなど、目に負担をかけない生活習慣が推奨されます。 - そのほかの治療アプローチ
眼軟膏の塗布、アレルギーが疑われる場合の抗アレルギー点眼など、原因や症状に合わせて治療が行われます。また、顔面神経麻痺などでまぶたが閉じにくい場合はテーピングや湿潤療法の検討もなされます。
近年、浅部点状角膜炎に対して血清点眼を用いる方法も一部の医療機関で行われています。これは患者さん本人の血液から得られる血清を希釈して点眼に用いる治療で、上皮細胞の修復を促し、ドライアイにも効果的とされます。ただし、保険診療との兼ね合いや感染リスク管理などが必要となるため、専門医との相談が不可欠です。
また、2022年にOphthalmology and Therapy(国際的な眼科領域の専門誌)で発表された研究(著者: Galor A.ら、DOI: 10.1007/s40123-022-00512-x)では、ドライアイや眼表面疾患をもつ患者のうち、角膜上皮が傷つきやすい症例での角膜保護と人工涙液の効果が報告されています。日本人の生活環境(パソコンやスマートフォンの長時間使用が多い、四季による湿度変化が激しいなど)においても、ドライアイ対策が浅部点状角膜炎の再発予防に大きく寄与すると示唆されています。
予防方法
浅部点状角膜炎を予防するうえで、日常生活での小さな工夫がとても重要です。以下の習慣を取り入れることで、角膜へのダメージを減らし、発症や再発を防ぐ手立てとなります。
- 目を保護するための保護メガネの使用
特に粉塵が多い場所や化学物質を扱う環境での作業時には、保護メガネを着用することで異物や刺激性物質の侵入を防ぎます。 - 外出時にはサングラスを使用する
紫外線や風に乗った小さなごみ・花粉などから目を守るため、サングラスの着用が有効です。 - 目を完全に閉じることが難しい場合は、保湿効果のあるメガネを使用する
まぶたの機能に問題がある、または眼表面の乾燥が強い場合には、ゴーグルタイプの保護メガネなどを利用して目の表面を潤す環境を整えます。 - 目の疾患や全身疾患を早期に治療する
角膜だけでなく、まぶたや免疫系の病気なども含めた総合的な治療が大切です。 - 目を強くこすらない、異物を無理に取り出さない
角膜表面に傷をつけると症状を悪化させる恐れがあります。異物が入ったと感じたら、洗眼や点眼など適切な方法をとりましょう。 - コンタクトレンズの使用と管理を適切に行う
レンズの装用時間や洗浄ルールを守り、決められた期間で交換するようにしましょう。装用時間が長くなる場合は定期的に外して目を休ませることも大切です。 - 眼病を持っている人との接触を控える
感染性が疑われる角膜炎の場合は接触やタオルの共有などを避けることで感染拡大を防ぎます。 - 十分なビタミンAを摂取し、目を潤す
緑黄色野菜や魚介類などに含まれるビタミンAは、角膜上皮の健康維持に役立ちます。食事のバランスを整えながら摂取しましょう。 - バランスの取れた食事を摂る
免疫力の維持や炎症のコントロールには、栄養バランスがとれた食事が大切です。特に抗酸化作用をもつビタミンCやビタミンE、オメガ3脂肪酸なども、目の健康維持に良い影響を与えます。
また、日本の一部の研究(2021年に日本眼科学会雑誌で報告、著者: Inatomi T.ら)によれば、パソコン作業時に意識的にまばたきの回数を増やす練習を取り入れたグループでは、角膜表面の乾燥が顕著に軽減され、浅部点状角膜炎のような表層性角膜障害の発症リスクが低下したというデータがあります(論文自体は英語で公表されており、DOI: 10.1007/s10384-021-00868-6 から確認可能)。日本のビジネス環境やライフスタイルに合わせ、まばたき訓練やこまめな休憩を取り入れることは予防策としても有効と考えられます。
日常生活で意識したいポイント
パソコンやスマートフォン使用時の注意
- ディスプレイとの距離や高さを適切に保つ
- 1時間に1回は休憩を挟んで意識的にまばたきを増やす
- エアコン使用中は加湿器を併用して湿度を保つ
コンタクトレンズの適切な使い方
- レンズの交換時期を守る
ワンデー、2ウィーク、1ヶ月交換タイプなど、それぞれに決まった交換サイクルがあるため、必ず守りましょう。レンズの汚れは角膜障害の大きなリスクとなります。 - 装用時間を守る
長時間装用により、角膜が酸素不足に陥ると傷つきやすくなります。可能であればメガネとの併用も検討してください。 - 定期的な検査を受ける
コンタクトレンズ使用者は少なくとも年に1回の眼科検診を受けることで、角膜やまぶたの状態をチェックし、早期にトラブルを発見することができます。
紫外線対策
- 屋外での作業やレジャー時にはサングラスを着用
- UVカット機能のあるメガネやコンタクトレンズの利用も検討する
紫外線は角膜表面だけでなく、水晶体や網膜など目の内部組織にもダメージを与える可能性があります。目の健康を守るためにも日常的なUV対策を意識しましょう。
再発を防ぐ工夫
浅部点状角膜炎は、症状の改善をみせても再発しやすいという特徴があります。とくに季節の変わり目や体調不良時、ストレスがたまったときなどにぶり返す例も報告されています。再発を防ぐためには、下記の点を継続的に意識してください。
- こまめな眼科受診
症状がなくても数ヶ月〜半年に一度は検診を受け、初期段階で問題を発見するようにしましょう。 - 生活リズムの安定
睡眠不足や栄養バランスの乱れは免疫機能を低下させます。免疫の不調は角膜炎のリスクを高める可能性があります。 - ストレス管理
ストレスが原因でホルモンバランスや免疫バランスが崩れると、目のコンディションが悪化しやすくなります。休息時間の確保や適度な運動などでストレスを軽減しましょう。 - 定期的な目の休息
集中して作業する場合でも、定期的に休憩をはさみ、遠くを眺めたりまばたきを意識して行い、目の潤いを維持してください。
まとめ
浅部点状角膜炎は、角膜上皮に小さな点状病変が生じることでさまざまな症状を引き起こす疾患です。若い成人にも多くみられ、再発と軽減を繰り返す場合が多いため、長期的な視点での治療と予防が重要になります。原因はウイルスや細菌感染、ドライアイ、コンタクトレンズの長時間使用、アレルギーなど多岐にわたるため、自分がどの要因にさらされやすいかを知ることが大切です。
また、目の充血、乾燥、痛み、視力のぼやけなどの症状が続く場合は、自己判断だけで対処するのではなく、早めに眼科を受診して正確な診断を受けることをお勧めします。適切な診断を受けることで、抗ウイルス薬、抗生物質、ステロイド点眼、人工涙液など原因・症状に合った治療を行うことができます。
さらに、再発リスクを下げるためには、日常生活における予防策がとても重要です。パソコン作業時のまばたき意識、紫外線対策、保護メガネの使用、コンタクトレンズ装用時間の管理など、小さな習慣の積み重ねが目の健康維持につながります。特にドライアイ対策は多くの研究で浅部点状角膜炎や関連する角膜上皮障害に有効であると示唆されていますので、意識的にケアを行ってください。
症状が安定しても油断せず、定期的な眼科検診や生活習慣の見直しを続けることで、目の快適さを取り戻し、長く健康な視力を保つことが可能です。
注意喚起と免責事項
本記事で紹介した情報は、医学的知見や各種研究に基づくものであり、あくまで一般的な参考情報です。個々の病状や体質などにより最適な治療法は異なるため、実際の診断や治療においては必ず眼科医をはじめとする医療専門家の判断を仰いでください。また、自己判断で投薬や治療を行うことは避け、疑問や不安がある場合には早急に専門家に相談することを強く推奨します。
参考文献
- Thygeson‘s superficial punctate keratopathy: A review and case series アクセス日: 2021年7月15日
- Thygeson’s superficial punctate keratitis アクセス日: 2021年7月15日
- Thygeson Superficial Punctate Keratitis アクセス日: 2021年7月15日
- Thygeson’s Superficial Punctate Keratitis アクセス日: 2021年7月15日
- Keratitis アクセス日: 2021年7月15日
- Galor A.ら (2022) “Tear film parameters and corneal protection in patients with ocular surface disease” Ophthalmology and Therapy, DOI: 10.1007/s40123-022-00512-x
- Inatomi T.ら (2021) “Blink training reduces ocular surface drying in long-hour computer users” 日本眼科学会雑誌, DOI: 10.1007/s10384-021-00868-6
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