糸リフト(スレッドリフト)でたるみ改善は本当?仕組み・効果・リスクと受診の目安
この記事でわかること
目次
- Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
- 要点まとめ
- 第1部:顔のたるみの基本と日常生活の見直し
- 1.1. 顔のたるみが起こる基本的なメカニズム
- 1.2. たるみを悪化させやすいNG習慣
- 第2部:身体の内部要因 — コラーゲン・ホルモン・加齢変化と糸リフトの位置づけ
- 2.1. 【特に女性】ライフステージとホルモンバランスの変化
- 2.2. コラーゲンの減少と糸リフトの「コラーゲン誘導効果」
- 2.3. 筋肉・骨格の変化と他の治療との組み合わせ
- 第3部:糸リフトの実際 — 施術の流れ・効果・合併症
- 3.1. 糸リフトとはどんな治療か?基本の流れ
- 3.2. どのくらい上がる?効果の程度と持続期間
- 3.3. ダウンタイムとよくある一時的な症状
- 3.4. 合併症とリスク — 知っておきたい「まれだが重い」トラブル
- 第4部:今日からできるたるみ対策と糸リフトとの付き合い方
- 第5部:糸リフトを検討するときの受診の目安と医療機関の選び方
- 5.1. 受診を検討すべきサインと、すぐに相談したい危険な症状
- 5.2. どの診療科・どのような医療機関に相談するか
- 5.3. カウンセリングで確認したいポイントと、診察時に持参すると役立つもの
- よくある質問
- 結論:糸リフトを選ぶ前に知っておきたいこと
- この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
- 参考文献
年齢とともに、ほほやフェイスライン、あご下のたるみが目立ってきて、「写真に写る自分の輪郭が昔と違う」「マスクを外すと老けて見える」と感じている方は少なくありません。とはいえ、切開を伴うフェイスリフト手術には抵抗があり、「なるべくダウンタイムが短く、仕事や育児を続けながらできる若返り治療はないのか」と悩む方も多いでしょう。
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その選択肢のひとつとして近年注目されているのが、いわゆる「糸リフト」「スレッドリフト」と呼ばれる治療です。皮膚の下にトゲ(コグ)付きの細い糸を通してたるみを引き上げる方法で、施術直後からリフトアップ効果を実感しやすく、さらに糸が溶けていく過程でコラーゲンが増えることでハリ感の向上も期待できるとされています1,7。
一方で、日本皮膚科学会などの美容医療診療指針では、糸リフトの効果には限界があり、合併症のリスクもゼロではないことが報告されています1。内出血や腫れといった一時的な副作用だけでなく、ごくまれですが感染や神経障害など、より重い合併症の報告もあります1,3,5,6。
本記事では、糸リフトの仕組み・期待できる効果・持続期間だけでなく、国内外のガイドラインや論文に基づくリスク・合併症、どのような人に向いているか、受診先の選び方やカウンセリングで確認したいポイントを、生活者目線で丁寧に解説します。自己判断で治療を決めるのではなく、「自分に本当に必要か」を考えるための材料としてお読みください。
Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。本記事では、糸リフト(スレッドリフト)に関する最新の国内外の知見をもとに情報をまとめました。
本記事の内容は、以下のような一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。
- 厚生労働省・自治体・公的研究機関・学会:日本皮膚科学会などがまとめた美容医療診療指針や、医療安全に関する報告書など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています1。
- 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:美容皮膚科・形成外科領域の学会誌や、糸リフトの長期的な効果・合併症を検討した臨床研究・文献レビューなど、科学的に検証されたエビデンスをもとに要点を整理しています2,3,4,5,6。
- 教育機関・医療機関・国際的な公的団体:症状の背景説明や、海外での一般的な位置づけを把握するために、国際的な専門学会や患者向け情報ページも参考にしています7。
AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。
私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。
要点まとめ
- 糸リフト(スレッドリフト)は、皮膚の下に吸収性または非吸収性の糸を通してたるみを引き上げつつ、コラーゲン産生を促す「切らないリフトアップ治療」です1,7。
- 施術直後からフェイスラインやほほのリフトアップ効果を感じやすい一方、その程度は外科的フェイスリフトほど強くはなく、持続期間も一般に1〜2年程度とされています(糸の種類や本数、個人差により変動)1,2,4。
- 内出血・腫れ・痛み・皮膚の凹み(ディンプル)・糸の触知といった一時的なトラブルは比較的よくみられ、まれに感染、肉芽腫、神経障害、血管損傷などの重い合併症も報告されています1,3,5,6。
- たるみが軽度〜中等度で、まだ皮膚の弾力がある30〜60代前半の方では、上手に用いれば「少し若々しく・自然に整える」目的で選択肢になり得ますが、誰にでも適しているわけではありません1,3,9。
- 糸リフトは日本では原則として保険適用外の自由診療であり、費用は全額自己負担です。施術前にリスクとメリット、代替手段(HIFU、高周波、外科的フェイスリフトなど)を含めて丁寧な説明を受けることが重要です1,7,8。
- 術後に強い痛みや腫れの悪化、膿・発熱、急な顔面の左右差やしびれなどが出た場合は、速やかに施術を受けた医療機関、もしくは救急対応可能な医療機関に相談する必要があります1,3,5。
「糸リフトは本当に効くの?」「どのくらい持つの?」「こわい合併症はないの?」といった不安を抱えながらも、誰にも相談できずに一人で検索を繰り返している方も多いのではないでしょうか。
本記事では、まずは顔のたるみが起こる仕組みや、生活習慣・加齢・ホルモン変化などの身近な要因から整理し、そのうえで、糸リフトという治療がどの位置づけにあるのかを段階的に解説していきます。
「まずはスキンケアや生活習慣の見直しで様子を見るべきか」「HIFUや高周波などメスを使わない機器治療から試すべきか」「糸リフトを検討してよい状態なのか」「すでにたるみが強く、外科的手術を優先すべきか」など、自分の状況に合わせて考えやすいように整理することを目指しています。
必要に応じて、関連する総合ガイドや、詳細解説記事など、JHO内の関連記事も参考にしながら、「いつどこで誰に相談するか」を具体的にイメージしていきましょう。
この記事を読み進めることで、「糸リフトを含むさまざまな選択肢の中で、自分にとって最も納得できる方法は何か」をじっくり考えるきっかけになれば幸いです。
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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
第1部:顔のたるみの基本と日常生活の見直し
糸リフトの是非を考える前に、「そもそもなぜたるみが起こるのか」「日常生活でどこまで改善できるのか」を理解しておくことが大切です。ここでは、顔のたるみの仕組みと、セルフケアで見直しやすいポイントを整理します。
1.1. 顔のたるみが起こる基本的なメカニズム
顔の輪郭は、皮膚・皮下脂肪・筋肉・靭帯・骨格が層になって支えることで保たれています。加齢とともに、表皮や真皮ではコラーゲンやエラスチンが減少し、皮膚そのもののハリが低下します。また、ほほの脂肪(頬脂肪体や皮下脂肪)が重力の影響を受けて下に移動し、フェイスラインからあご下にかけてボリュームが落ちていきます。
さらに、顔の骨格自体も少しずつ痩せたり、靭帯がゆるんだりすることで、皮膚や脂肪を支える「土台」が弱くなります。その結果、ほうれい線が深くなったり、マリオネットライン(口角からあごに向かう線)が目立ったり、二重あごが強調されたりします。このような変化が重なったものが「たるみ」として見えているのです1,3。
糸リフトは、この「下に落ちてきた組織」を物理的に持ち上げると同時に、糸まわりのコラーゲン産生を促すことで、たるみを一時的に補正する治療です。ただし、土台そのものの加齢変化を完全に止めることはできないため、「永続的な若返り」ではなく、「数年単位のマイルドな補正」と考えるのが現実的です1,2。
1.2. たるみを悪化させやすいNG習慣
同じ年齢でもたるみの出方には個人差があります。その背景には、遺伝だけでなく、日常の癖や生活習慣も大きく関わっています。以下のような習慣は、たるみを目立たせやすい要因になり得ます。
- 紫外線対策をほとんどしていない:真皮のコラーゲンやエラスチンは、紫外線により分解されやすくなります。日焼け止めを塗らない・帽子や日傘を使わない生活は、シワやたるみを早める要因になります。
- 喫煙習慣がある:喫煙は末梢血管の収縮や酸化ストレスを通じて、皮膚の老化を加速させることが知られています。肌のハリ低下や黄ぐすみ、毛穴の開きなどと一緒に、たるみも目立ちやすくなります。
- 睡眠不足や慢性的なストレス:睡眠中に分泌されるホルモンや修復機構が十分に働かないと、皮膚の回復力が落ち、たるみだけでなくくすみやクマも悪化しやすくなります。
- 急激な体重変動:短期間でのダイエット・リバウンドを繰り返すと、皮膚の伸び縮みが追いつかず、顔や首まわりのたるみとして残りやすくなります。
- 頬杖やうつ伏せ寝など、顔に偏った圧力をかける癖:片側の頬だけ常に圧迫されると、左右差やシワ・たるみの偏りの一因になることがあります。
糸リフトを検討する方の多くは、すでにこうした習慣の一部を長年続けてきたケースが少なくありません。施術の前後を問わず、紫外線対策・禁煙・十分な睡眠・バランスのよい食事といった基本的な生活習慣の見直しは、どの美肌治療よりも大切な土台になります。
| こんな症状・状況はありませんか? | 考えられる主な背景・原因カテゴリ |
|---|---|
| 最近、フェイスラインがぼやけて二重あごが目立つようになった | 体重増加、姿勢の悪さ、スマホ・PC使用時のうつむき姿勢など |
| 屋外での日焼け止めをほとんど塗っておらず、シミやくすみも増えてきた | 紫外線による光老化、コラーゲンの分解促進 |
| 睡眠時間が不規則で、朝起きたときのむくみがなかなか引かない | 寝不足や生活リズムの乱れ、塩分過多、飲酒習慣 |
| ダイエットとリバウンドを繰り返し、ほほがしぼんで見える | 急激な体重変動による皮膚の余り・たるみ |
第2部:身体の内部要因 — コラーゲン・ホルモン・加齢変化と糸リフトの位置づけ
生活習慣を見直しても、加齢やホルモンの変化によるたるみを完全に止めることはできません。ここでは、特に女性に多いライフステージごとの変化や、コラーゲン量・筋肉量の低下と糸リフトの関係について解説します。
2.1. 【特に女性】ライフステージとホルモンバランスの変化
女性の顔のたるみは、エストロゲンという女性ホルモンの変化とも深く関係しています。エストロゲンにはコラーゲンの合成を促す働きがあり、閉経前後にこのホルモン量が急激に低下することで、皮膚のハリや弾力が落ちやすくなります。40代以降に急にほほのボリュームダウンやフェイスラインの崩れを感じる人が多いのは、このためです。
また、妊娠・出産・授乳期には生活リズムが乱れやすく、睡眠不足・栄養バランスの偏り・ストレスが重なり、肌全体のコンディションが崩れやすくなります。若い世代でも、仕事・家事・育児を同時にこなす中で、セルフケアに時間を割けない方は少なくありません。
糸リフトは、こうしたホルモン変化そのものを直接コントロールする治療ではありませんが、たるみや輪郭の変化が気になるタイミング(30〜50代)と重なることが多いため、「ライフステージに伴う見た目の変化を、どこまで受け入れ、どこから医療の力を借りるか」を考えるきっかけになります。
2.2. コラーゲンの減少と糸リフトの「コラーゲン誘導効果」
糸リフトでよく説明されるポイントの一つが、「糸のまわりに新しいコラーゲンがつくられ、肌のハリが出る」というメカニズムです。ポリジオキサノン(PDO)やポリ乳酸などの素材でできた糸を皮下に挿入すると、体はそれを異物として認識し、周囲に線維性の組織を形成します。この反応の一部として、コラーゲンが増えることが報告されています2,4,5。
2017年に報告された非吸収性糸の長期効果を検討した研究では、術後1年目に一度若返り効果が弱まるものの、その後もある程度のリフトアップ効果が持続したとされています2。また、PDO糸の数とリフト効果・患者満足度の関係を検討したランダム化比較試験では、糸の本数が増えるほどリフト量は大きくなるものの、合併症リスクも増え得ることが示唆されています4。
ただし、こうした研究は症例数が限られており、糸の種類や挿入方法も多様です。「何本入れれば何年間確実に持つ」といったような、万人に当てはまる明確な答えは現時点ではありません。日本の美容医療診療指針でも、「どのような糸を、どの層に、何本入れるのが最適かという点については、統一したコンセンサスは得られていない」とされています1。
2.3. 筋肉・骨格の変化と他の治療との組み合わせ
たるみの背景には、皮膚だけでなく、骨格の萎縮や筋肉のバランスの変化も関わっています。例えば、長年の歯ぎしり・食いしばりで咬筋(あごの筋肉)が発達している場合、エラ部分が張って見え、フェイスラインが四角く見えることがあります。このようなケースでは、糸リフトだけよりも、ボツリヌス毒素注射(筋肉の緊張を和らげる注射)を併用した方が輪郭全体としてのバランスが良くなることもあります。
逆に、極端に頬がこけているタイプの方に過度な糸リフトを行うと、リフトされる部分とボリューム不足の部分のコントラストが強くなり、かえって不自然に見える可能性もあります。その場合は、ヒアルロン酸によるボリューム補正や脂肪注入など、別の治療と慎重に組み合わせる必要があります1,3。
このように、「糸リフトだけで全ての悩みを解決する」のではなく、自分の顔立ちの特徴や加齢変化のパターンを理解し、必要に応じて他の選択肢も検討することが、安全で満足度の高い治療につながります。
第3部:糸リフトの実際 — 施術の流れ・効果・合併症
ここからは、糸リフトそのものについてもう少し具体的に見ていきます。施術の流れやダウンタイム、期待できる効果の大きさと持続期間、そして最も重要な合併症リスクについて整理します。
3.1. 糸リフトとはどんな治療か?基本の流れ
糸リフトは、吸収性あるいは非吸収性の細い糸に小さなトゲ(コグ)や円錐状の突起をつけた特殊な糸を、皮膚の下(皮下組織やSMASと呼ばれる層)に挿入し、たるみを物理的に引き上げる治療です1,7。一般的な流れは次のようになります。
- カウンセリング・診察:気になる部位やこれまでの治療歴、持病や内服薬、アレルギーの有無などを確認し、糸リフトが適しているかどうかを検討します。
- マーキング:鏡で顔を確認しながら、糸を通す方向・数・入口の位置などを皮膚の上に書き込みます。
- 麻酔:局所麻酔や麻酔クリームなどを用いて、施術中の痛みを抑えます。
- 糸の挿入・固定:カニューレ(先端の丸い細い管)や針を用いて糸を挿入し、予定した位置で引き上げて固定します。
- 仕上がり確認:左右差や引き上げ具合を確認し、必要に応じて微調整を行います。
施術そのものにかかる時間は、糸の本数や部位にもよりますが、おおよそ30〜60分程度とされることが多く、カウンセリングや準備を含めても数時間で終了する「日帰り治療」に位置づけられます7,9。
3.2. どのくらい上がる?効果の程度と持続期間
糸リフトは、「外科的フェイスリフトほどの劇的な変化はないが、たるみを少し持ち上げて輪郭をすっきりさせる」という、中等度の効果が期待される治療です。フェイスラインやほほの中顔面、マリオネットライン周りのたるみなどでリフトアップ効果を感じやすい一方、首の強いたるみや、非常に皮膚が余っている場合には効果が限定的になることがあります1,3,7。
持続期間については、糸の素材や太さ、挿入された層、患者さんの年齢や肌質によって大きく異なりますが、多くの報告では「1〜2年程度」を目安としているものが多く、一部の研究では数年にわたる改善を報告しているものもあります1,2,4。ただし、時間の経過とともに加齢は進行するため、初回施術時よりも全体として老化が進んでいくことを考えると、「以前より老けていない」という意味での維持効果と、「常に若々しいまま」という印象は区別して考える必要があります。
また、糸の本数を増やせば引き上げ効果を大きくできる可能性はありますが、同時に内出血や違和感、左右差などのリスクも増えると考えられており、「ただ本数を増やせばよい」というものではありません1,4,6。
3.3. ダウンタイムとよくある一時的な症状
糸リフトのダウンタイムは、切開を伴う手術と比べると短いとされていますが、一時的な症状がまったくないわけではありません。文献や報告を総合すると、以下のような症状が一定の頻度でみられます1,3,5,6。
- 腫れ・むくみ:施術当日〜数日がピークで、1〜2週間ほどかけて落ち着いていくことが多い。
- 内出血(青あざ):針やカニューレを通した部分に生じることがあり、メイクで隠せる程度から、数センチ程度のあざまで個人差がある。吸収には1〜2週間程度かかることが一般的。
- 突っ張り感・違和感:口を大きく開けたときや笑ったときに、引きつれたような感覚を覚えることがあるが、多くは数週間で軽減していく。
- 痛み・圧痛:鈍い痛みや触れたときの痛みが数日〜1週間ほど続くことがあり、必要に応じて鎮痛薬でコントロールされる。
- 皮膚の一時的なくぼみ(ディンプル):糸が強く引き上げられている部分で小さなくぼみが生じることがあり、多くは時間とともに目立たなくなっていく。
仕事や家事・育児への影響を最小限にするためには、「むくみや内出血が目立ちやすい数日〜1週間」をあらかじめイメージしてスケジュールを組んでおくことが大切です。大事な予定(結婚式の列席や写真撮影など)がある場合は、十分な余裕をもって日程を調整しましょう。
3.4. 合併症とリスク — 知っておきたい「まれだが重い」トラブル
日本皮膚科学会の美容医療診療指針や国際的な文献レビューでは、糸リフトに関連する合併症として、次のようなものが報告されています1,3,5,6。
- 感染:糸の挿入口から細菌が入り、赤み・腫れ・痛み・膿などが出現する。重症化すると糸の抜去や抗菌薬投与が必要になる場合がある。
- 肉芽腫・しこり:体が糸を異物として強く反応し、硬いしこりが残ることがある。長期的に残る場合は除去術などが検討される。
- 糸の露出・突出:皮膚の表面近くに糸が出てきてしまうトラブル。局所麻酔下で切除・抜去が必要になることがある。
- 神経障害:顔面神経への刺激や損傷により、一時的な表情筋の動かしにくさやしびれが出ることが報告されています。ごくまれに長く残るケースもあるとされています。
- 血管損傷・皮膚壊死:血管を損傷した場合、広い範囲の内出血や、まれに皮膚壊死に至る重い合併症が報告されています。
- 左右差・不自然な仕上がり:腫れの出方や糸の張力の違いなどにより、左右のバランスが崩れたり、笑ったときにだけ不自然に引きつれるといった見た目の問題が出ることがあります。
近年の文献レビューでは、内出血や腫れなどの軽度な合併症は全体の一〜数割程度、感染や糸露出などのより重い合併症は数%以下にとどまるとする報告もありますが3,5,6、症例数や糸の種類が異なる研究を単純に比較することはできません。「リスクはゼロではない」という前提で、納得できるまで説明を受けることが重要です。
術後に「急に顔の片側だけ動かしにくくなった」「強い痛みや熱感を伴う赤み・腫れが広がってきた」「膿が出てきた」「急な視力障害や激しい頭痛がある」といった症状が出た場合は、迷わず施術を受けた医療機関、あるいは救急対応可能な医療機関に相談してください。
第4部:今日からできるたるみ対策と糸リフトとの付き合い方
糸リフトはあくまで選択肢の一つであり、「やるか・やらないか」の二択ではありません。ここでは、今日からできるセルフケアから、機器治療・糸リフト・外科的手術まで、段階的なアクションプランのイメージを紹介します。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今夜からできること | 生活習慣とスキンケアの見直し | 紫外線対策(毎朝の日焼け止め)/十分な睡眠と規則正しい生活/保湿中心のシンプルスキンケア/顔を強くこするクレンジングをやめる など |
| Level 2:数週間〜数か月かけて取り組むこと | 体重・姿勢・筋肉バランスの調整 | 無理のない運動で体重を管理/ストレッチや簡単な筋トレで姿勢を改善/歯ぎしりや食いしばりが強い場合は歯科で相談 など |
| Level 3:美容医療によるサポート(非侵襲〜低侵襲) | 機器治療や注入治療の検討 | HIFU(集束超音波)や高周波による引き締め/ヒアルロン酸やボツリヌス毒素注射による輪郭・表情の調整など(いずれもリスクと費用の説明を受けたうえで選択) |
| Level 4:糸リフトの検討 | たるみの程度やライフスタイルに合わせて検討 | 30〜60代でたるみが中等度/切開手術は避けたいが、ある程度の引き上げ効果を短期間で得たい場合に、リスクとメリットを比較しながら検討 |
| Level 5:外科的フェイスリフトなど | 強いたるみや根本的な若返りを希望する場合 | 皮膚の余りが大きい・首のたるみが強いなどの場合は、形成外科や美容外科で切開を伴う手術を選択肢として検討することもある(ダウンタイム・リスク・費用は大きくなる) |
どのレベルから始めるかは、年齢やたるみの程度、仕事や家庭の事情、費用負担の許容範囲などによって変わります。「本当はLevel 1と2だけでも満足できるのに、周りがやっているからと焦ってLevel 4や5に進んでしまう」といったことが起こらないよう、自分の価値観を大切にしながら選択することが何より重要です。
また、一度糸リフトを行ったからといって、それ以降ずっと同じペースで繰り返さなければならないわけではありません。加齢の進み方や顔立ちの変化を見ながら、「一定期間はセルフケア中心に戻す」「別の治療に切り替える」といった柔軟な考え方も十分にあり得ます。
第5部:糸リフトを検討するときの受診の目安と医療機関の選び方
糸リフトは、施術者の技量や経験、使用する糸の種類やデザインによって結果が大きく変わる治療です。ここでは、「いつ相談すべきか」「どの診療科を選べばよいか」「カウンセリングで確認したいポイント」について整理します。
5.1. 受診を検討すべきサインと、すぐに相談したい危険な症状
- 美容目的での相談の目安
- 鏡を見るたびにフェイスラインや二重あごが気になり、自信を失ってしまう。
- 写真やオンライン会議の映り方に強いストレスを感じ、生活の質が下がっている。
- セルフケアだけでは変化を感じにくく、機器治療や注入治療も含めて選択肢を知りたい。
- すぐに医療機関に相談したい危険な症状(術後)
- 施術部位が急に強く腫れ、熱を持ち、強い痛みや膿が出ている。
- 顔の片側だけが動かしにくくなった、しびれが急に出てきた。
- 視力の低下や激しい頭痛、吐き気など、全身状態の悪化を伴う症状がある。
上記のような症状がある場合は、「様子を見る」よりも、できるだけ早く施術を受けた医療機関、あるいは救急対応可能な医療機関に連絡してください。日本の美容医療に関する調査でも、重篤な合併症は頻度こそ低いものの、発生した場合の影響は大きいことが指摘されています1,3。
5.2. どの診療科・どのような医療機関に相談するか
- 美容皮膚科・美容外科・形成外科:糸リフトを含む美容医療全般を扱うクリニックや病院です。顔のたるみ治療全体の中で、機器治療・注入治療・糸リフト・外科的手術などを比較しながら相談できるところを選ぶと、自分に合った選択をしやすくなります。
- 一般皮膚科:糸リフト自体は行っていなくても、皮膚トラブルや合併症が疑われる場合の相談窓口として頼りになる場合があります。
- かかりつけ医・総合内科:急な体調不良や全身症状を伴う場合には、まず身近な医療機関で相談し、必要に応じて専門科を紹介してもらうのも一つの方法です。
糸リフトは日本では原則として保険適用外の自由診療であり、費用はクリニックごとに異なります7,8,10。価格だけで選ぶのではなく、これまでの症例数や合併症対応の体制、使用している糸の種類(国内承認の有無を含む)や、事前の説明の丁寧さなどを総合的に見て選ぶことが大切です。
5.3. カウンセリングで確認したいポイントと、診察時に持参すると役立つもの
- カウンセリングで確認したいこと
- 自分のたるみの原因や程度に対して、糸リフトがどの程度有効か、現実的な効果のイメージ。
- 別の選択肢(HIFU、高周波治療、注入治療、外科的フェイスリフトなど)と比べたメリット・デメリット。
- 予想されるダウンタイム(何日くらい腫れや内出血が続きそうか)。
- 考えられる合併症と、その頻度、トラブルが起きた場合の対応方法。
- 費用総額と、将来繰り返す可能性がある場合の長期的な費用見込み。
- 診察時に持参すると役立つもの
- これまでの治療歴や現在の内服薬・サプリメントの一覧、お薬手帳。
- 気になる部分がわかりやすい写真(過去の写真があれば「変化の程度」を共有しやすくなります)。
- 普段の生活リズムや仕事のスケジュールがわかるメモ(ダウンタイムの計画に役立ちます)。
カウンセリングで「質問しにくい」「急かされている」と感じた場合は、その場ですぐに決めず、一度持ち帰って検討したり、別の医療機関でセカンドオピニオンを受けることも立派な選択肢です。自分のペースで納得して決められる環境を大切にしましょう。
よくある質問
Q1: 糸リフトの効果はどのくらい持続しますか?
A1: 一般的には、吸収性糸による糸リフトのリフトアップ効果は1〜2年程度を目安と説明されることが多いです1,2,4。糸自体は数か月〜1年ほどかけて徐々に溶けますが、その過程で周囲に線維性の組織が形成され、コラーゲンの増加によるハリ感が一定期間持続すると報告されています2,4,5。
ただし、加齢そのものは刻々と進むため、「完全に若返った状態がそのまま続く」という意味ではなく、「何もしなかった場合よりもたるみの進行を一時的に緩やかにする」と捉える方が現実的です。持続期間は年齢・肌質・生活習慣・糸の種類や本数によっても変わるため、具体的な見込みは施術者に確認しましょう。
Q2: 糸リフトは痛いですか?仕事はいつからできますか?
A2: 施術中は局所麻酔などを使用するため、「針を刺すときのチクッとした痛み」や、糸を通す際の圧迫感・違和感を除けば、強い痛みを感じにくいことが多いとされています1,7,9。ただし、痛みの感じ方には個人差があり、緊張や不安が強い場合は痛みを感じやすくなることもあります。
仕事復帰のタイミングは、仕事内容や人前に出る機会の多さによっても異なりますが、デスクワーク中心であれば数日〜1週間程度で復帰しているケースが多いとされています。一方、人と近い距離で接する仕事や、顔の表情が重要な接客業の場合は、内出血やむくみが目立ちにくくなるまで1〜2週間ほど余裕を見ておくと安心です。
Q3: 糸リフトは何回まで受けても大丈夫ですか?
A3: 糸リフトを何回までという明確な上限回数は決まっていませんが、同じ部位に短い間隔で何度も糸を重ねると、皮膚の下に糸や線維性組織が増え、硬さや凹凸が残りやすくなる可能性があります1,3,5。また、施術のたびに内出血や腫れなどの軽度な合併症リスクも生じます。
研究報告の中には、一定の間隔をあけて複数回の糸リフトを行った場合の効果を示したものもありますが2,4、個々の症例にそのまま当てはめることはできません。再施術を検討する場合は、前回の糸の位置や残存状況を含め、担当医とよく相談することが重要です。
Q4: 糸リフトと外科的フェイスリフトの違いは何ですか?
A4: 外科的フェイスリフトは、耳の前後などを切開し、皮膚とその下の筋膜(SMAS)を広い範囲で引き上げて固定する手術です。広い範囲のたるみをしっかり改善できる一方、全身状態やダウンタイム、費用の面で負担が大きくなります。
一方、糸リフトは「切らない」ことが特徴で、限られた範囲のたるみを比較的短時間で持ち上げることができますが、効果の大きさ・持続期間ともにフェイスリフトほど強くはありません1,7。あくまで「軽〜中等度のたるみをマイルドに改善する治療」として位置づけられており、重度のたるみには外科的手術が検討されることもあります。
Q5: 糸は体の中に残っても大丈夫なのでしょうか?
A5: 吸収性糸(PDOなど)の場合、体内で徐々に分解され、数か月〜1年ほどかけて吸収されるとされています2,4,5。非吸収性糸の場合は長期的に体内に残りますが、研究によっては数年後にもリフトアップ効果が維持されていると報告されているものもあります2。
いずれの場合も、異物である以上、肉芽腫や感染などの合併症リスクはゼロではありません1,3,5,6。国内外の文献では、適切な手技で行えば重篤な合併症はまれとされていますが、トラブルが起きた場合には糸の除去や追加治療が必要になることもあるため、術前の説明をよく聞き、不安な点は遠慮なく質問しましょう。
Q6: 糸リフトは20代や30代前半でも受ける意味がありますか?
A6: 20代〜30代前半では、まだ皮膚の弾力が保たれている一方で、フェイスラインのもたつきや輪郭のもやっとした印象を気にして糸リフトを希望するケースも増えています。しかし、日本の美容医療診療指針では、糸リフトを含む美容医療は「リスクとベネフィットを十分に説明したうえで、慎重に適応を判断すべき治療」とされています1。
若い世代では、まずは体重管理や生活習慣の見直し、機器による軽い引き締め治療などで十分満足できる場合も多いため、「本当に糸リフトが必要か」「将来的に繰り返す前提でよいか」を含めて、担当医とよく相談することをおすすめします。
Q7: 糸リフトの費用はどのくらいですか?保険は使えますか?
A7: 糸リフトは美容目的の治療と位置づけられており、日本では原則として公的医療保険の適用外(自由診療)です7,8,10。費用はクリニックや使用する糸の種類、本数によって大きく異なりますが、数本で数十万円程度になることも少なくありません。
同じ「糸リフト」という名称でも、使われている糸の種類やデザイン、施術範囲が大きく異なるため、価格だけで比較するのではなく、「自分の悩みに合っているか」「合併症が起きたときの対応まで含めて納得できるか」を基準に選ぶことが重要です。
結論:糸リフトを選ぶ前に知っておきたいこと
糸リフト(スレッドリフト)は、「切らずにたるみを引き上げたい」「仕事を休みにくい」「少しでも若々しい印象を取り戻したい」といったニーズに応える選択肢の一つです。施術直後からフェイスラインの変化を感じやすく、適切に行われた場合には、1〜2年程度のハリ感やリフトアップ効果が期待できると報告されています1,2,4。
一方で、日本の美容医療診療指針や国際的な文献では、糸リフトは「合併症の多くは一時的で軽度だが、まれに重い合併症も起こり得る」「どの糸をどのように用いるのが最適かについては、まだ十分なエビデンスが揃っていない」治療であることも指摘されています1,3,5,6。また、たるみが非常に強い場合や、首の広範なたるみには効果が限られるなど、適応にも限界があります。
大切なのは、「糸リフトをすべきかどうか」ではなく、「自分の価値観や生活状況に照らして、本当に納得できる選択かどうか」を一緒に考えてくれる医療者と出会うことです。生活習慣や姿勢、スキンケアの見直しだけで満足できるケースもあれば、機器治療や注入治療との組み合わせで十分な効果を得られるケースもあります。
もし糸リフトを検討している場合は、複数の医療機関で話を聞いて比較したり、リスクや合併症への備えを含めて丁寧に説明してくれるクリニックを選ぶなど、「情報に基づいた選択(インフォームド・チョイス)」を大切にしてください。本記事が、その第一歩としてお役に立てば幸いです。
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参考文献
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日本皮膚科学会ほか. 美容医療診療指針 第2版(シワ・タルミ、スレッドリフトに関する項目を含む). 2022年改訂. 日本皮膚科学会. https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/biyo2v.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)
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Fukaya M. Long-term effect of the insoluble thread-lifting technique. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2017;10:449-455. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5697446/(最終アクセス日:2025-11-26)
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Niu Z et al. Complications Following Facial Thread-Lifting: A Retrospective Study and Literature Review. J Stomatol Oral Maxillofac Surg. 2020. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S209669112100039X(最終アクセス日:2025-11-26)
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Germani M et al. Is More Always Better? A Randomized Comparative Evaluation of the Number of PDO Threads on Facial Tissue Displacement and Patient Satisfaction. 2025. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11997779/(最終アクセス日:2025-11-26)
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Complications after polydioxanone threads (PDO) for facial lifting – a literature review. 2024. https://www.researchgate.net/publication/379979874_Complications_after_polydioxanone_threads_PDO_for_facial_lifting_-_a_literature_review(最終アクセス日:2025-11-26)
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A meta-analysis of complications of thread lifting. medRxiv. 2025. https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2025.03.10.25323087v1.full-text(最終アクセス日:2025-11-26)
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American Society of Plastic Surgeons. Thread Lift. https://www.plasticsurgery.org/cosmetic-procedures/thread-lift(最終アクセス日:2025-11-26)
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自由が丘クリニックほか. 糸リフトに関する自由診療としての位置づけ・費用情報(各院公式サイト). (個別URLは本文中参照)(最終アクセス日:2025-11-26)
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湘南美容外科ほか. 糸リフトが向いている人の特徴や症例解説(各院公式サイト). (個別URLは本文中参照)(最終アクセス日:2025-11-26)
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