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皮膚科疾患 36分で読める 8回

褥瘡(床ずれ)とは?好発部位と家庭でできる予防・対処法

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結論: 褥瘡(床ずれ)は、寝たきりや車椅子生活などで同じ部位が長時間圧迫されることで皮膚とその下の組織への血流が途絶え、組織が損傷を受けてできるキズです[5]。できやすい場所は仙骨部・尾骨部・坐骨部・大転子部・踵部など骨が突き出している部分で、日本褥瘡学会は圧迫に加えて「ずれ」と「栄養不足」も大きく関係していると説明しています[2]。

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寝たきりでできる床ずれ、心配ですよね。いつ頃から気になっていますか?
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同学会が「危険信号」として挙げているのは、皮膚が赤くなって時間が経っても色が戻らない、皮膚がむけた、赤い部分の下が硬い、かさぶたに高熱を伴う、急に動かなくなった、食事や水分の量が減った、といった変化です[2]。これらのサインが1つでもあれば、自己判断で様子を見ず、訪問看護師やかかりつけ医にすぐ相談してください。この記事では、家族や介護者が今日からできる体位変換・スキンケア・栄養の工夫と、医療者だけが使う専門的な重症度評価(DESIGN-R®)との違いを、公的機関・学会の一次資料に基づいて整理します。

要点まとめ(20秒で確認)

  • 褥瘡ができやすいのは、仰臥位では仙骨部・尾骨部・踵部・肩甲骨部、側臥位では大転子部、座位では坐骨部・尾骨部です[4][2]
  • 体位変換の目安は、医療機関の資料では「最低2時間ごと」とされますが、粘弾性フォームマットレスや上敷二層式エアマットレスを使用している場合は日本褥瘡学会が4時間まで間隔を広げてもよいとしています[8][3]
  • 「DESIGN-R®」は同学会が開発した、医療者が床ずれの重症度を記録・共有するための専門的な物差しであり、家庭で自己採点するための道具ではありません[1]
  • 皮膚の下が硬い・赤みが消えない・かさぶたと高熱・急な意識の変化などのサインがあれば、様子を見ず訪問看護師やかかりつけ医にすぐ連絡してください[2]
  • 昭和大学病院褥瘡ケアセンターによれば、骨の出っ張りに使う「円座(ドーナツ型クッション)」やできた床ずれへのマッサージは、かえって血流を悪くするため避けるべきとされています[8]

編集方針: JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会・査読論文と照合して作成。最終確認は人の目。医師・看護師による個別の診断・処置の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点)。本記事で使用している出典は末尾の参考文献に番号付きで示しており、どの記述がどの資料に基づくかをたどれるようにしています。

自宅でできるリスクの目安「OH(大浦・堀田)スケール」

同学会が在宅向けパンフレットで紹介している簡易チェックです[2]。これは「褥瘡ができやすい状態かどうか」を見積もる予測ツールであり、後の章で説明する「できてしまった褥瘡の重さを測るDESIGN-R®」とは目的も使う人も異なります。気になる場合は、自己判断で終わらせず訪問看護師やかかりつけ医に結果を伝えて相談してください。

質問 状態 点数
①自分でベッド上や車椅子で寝返り・移動ができるか できる 0点
どちらでもない 1.5点
動けない 3点
②お尻の骨(仙骨)の出っ張り具合 正常 0点
軽度・中等度 1.5点
高度 3点
③足の甲やすね、背中などのむくみ ない 0点
ある 3点
④関節が硬くなって手足を伸ばしにくいか ない 0点
ある 1点

出典:同学会 在宅医療委員会「床ずれ(褥瘡)予防パンフレット」[2]

同学会のパンフレットによれば、合計点は0点=リスクなし、1〜3点=軽度リスク、4〜6点=中等度リスク、7〜10点=高度リスクの目安になるとされています[2]。さらに、リスク判定の結果を体圧分散マットレスの選択(軽度リスクにはウレタン系、高度リスクにはコンピューター制御の高機能型が向くなど)にも活用できるとしています[2](具体的な製品名はここでは扱いません。用具選びは訪問看護師や福祉用具専門相談員に相談してください)。

褥瘡(床ずれ)とは? 体の中で何が起きているのか

国立大学法人東京科学大学の形成・美容外科は、褥瘡は一般には「床ずれ」と呼ばれ、同じ言葉だと説明しています(読み方は「じょくそう」)[6]。同大学は、床ずれについて「主に身体の骨が突出した部位に『きず』を生じたもので、昔から『床ずれ』とも呼ばれ寝たきりの方によくみられます」としています[6]。MSDマニュアル家庭版は、褥瘡(床ずれ)を「長時間の圧迫により皮膚に十分な血液が流れなくなることで生じる皮膚の損傷」と定義し、「圧迫に加えて、皮膚を引っ張る力、摩擦、湿気などの要因が組み合わさって発生する場合が多く、特に骨のある部分の皮膚でその傾向が強くみられます」としています[5]。

日本褥瘡学会の在宅向けパンフレットは、床ずれの発生原因を「圧迫」「ずれ」「栄養」の3つに整理しています[2]。寝たきりで自分で寝返りが打てなくなると、同じ場所が長時間圧迫され続け、骨の飛び出した部分とベッドの間で血液の流れが閉ざされ、皮膚とその下の組織が一緒に壊死して大きく深い床ずれができるとされています[2]。昭和大学病院褥瘡ケアセンターの解説は、この圧迫について「一般的に70〜100mmHgの圧力が2時間以上加わると、圧迫部位に虚血性変化が起こるといわれている」とし、骨突出部位にこのような圧迫が加わることが床ずれ発生の一番の原因になるとしています[8]。

もう一つの要因である「ずれ」について、同学会のパンフレットは、電動ベッドで頭側を挙げたあとに体が下にずり落ちるようなとき、腰や背中にずれの力がかかり、こすれた皮膚やその下の組織が水平方向に強く引っ張られて傷むため、弱い圧力でも床ずれができてしまうと説明しています[2]。同学会はさらに、車椅子の形が体に合っていなかったり、姿勢が崩れたまま長時間座っていたりすると、仙骨部・尾骨部や踵部にずれによる床ずれができやすいとしています[2]。

3つ目の要因である栄養について、同学会のパンフレットは「食べる量が少なくなると、脂肪や筋肉が減って骨が飛び出してきます。骨が飛び出した部分にはより強い圧迫やずれが掛かるため、床ずれがおきやすくなります」と述べ、「栄養が足りないと自然修復力が働かなくなって床ずれの発生につながる」としています[2]。傷んだ組織が新しい組織に置き換わるときにはたんぱく質が材料として使われるため、たんぱく質が不足すると修復が進みにくくなると説明しています[2]。この栄養の話は、後の章でもう一度取り上げます。

図:JHO編集部が作成

MSDマニュアル家庭版は、床ずれの危険因子として、65歳以上であること、運動不足、便や尿など刺激物への皮膚の長時間の接触、栄養不足や糖尿病・末梢動脈疾患・静脈不全症などの病気、神経の損傷による感覚障害を挙げています[5]。厚労省が定める床ずれ対策の診療計画書の様式にも、危険因子の確認欄があります。同様式は、「自力体位変換ができるか」「座位姿勢の保持・除圧ができるか」「病的骨突出」「関節拘縮」「栄養状態低下」「皮膚の湿潤(多汗・尿失禁・便失禁)」「浮腫」のいずれか1つでも当てはまれば、看護計画を立てて対応することとしています[4]。同じ厚労省の様式は、特にリスクが高い状態(床ずれハイリスク項目)として、ベッド上安静、ショック状態、重度の末梢循環不全、麻薬等の鎮痛・鎮静剤の持続的な使用が必要な状態、6時間以上の手術(全身麻酔下・特殊体位)、強度の下痢の持続、極度な皮膚の脆弱、床ずれの多発と再発を挙げています[4]。これらは主に医療・介護の現場で使われる評価項目ですが、家庭で「うちは当てはまる項目が多いかもしれない」と気づく手がかりとしても役立ちます。

今の血圧・脈拍を確かめる

数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。

身長と体重からBMIも調べる

これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。

どこにできやすい? 体位ごとの好発部位

床ずれは、体重で圧迫される骨の出っ張った部分にできやすく、体位(姿勢)によってできやすい場所が変わります。厚労省の床ずれ対策に関する様式は、床ずれの好発部位として「仙骨部、坐骨部、尾骨部、腸骨部、大転子部、踵部」を挙げています[4]。これは体位を問わない代表的な部位のリストで、実際にどこに圧力が集中するかは、あおむけ・横向き・座位のどの姿勢を長く取っているかによって変わります。

体位 できやすい部位 出典・備考
仰臥位(あおむけ) 仙骨部・尾骨部・踵部・肩甲骨部(背中) 国立大学法人東京科学大学は仰臥位の好発部位として背中(肩甲骨)・お尻(仙骨)・踵を挙げています[6]。日本褥瘡学会のパンフレットも、痩せて骨が出っ張った仙骨部・尾骨部や踵部に床ずれができやすいとしています[2]
側臥位(横向き) 大転子部(太もも付け根の外側の骨の出っ張り) 別府重度障害者センターの資料は、体を約30度傾ける「半側臥位」について「大転子部や仙骨部への圧迫を防止できるため、側臥位としては理想的な姿勢です」と述べており、逆にいえば通常の側臥位では大転子部や仙骨部に圧迫が集中しやすいことを示しています[7]。昭和大学病院褥瘡ケアセンターも、側臥位の基本は30度とされ、体圧を殿筋(お尻の筋肉)で支えて分散させるとしています[8]
座位(座った姿勢) 坐骨部・尾骨部 同学会のパンフレットは、脊髄が障害を受けて下半身が麻痺した方などで、座ったときに骨盤を支える坐骨が飛び出し、この場所に高い圧力がかかると説明しています[2]。同センターも、長時間の座位姿勢によって坐骨部や尾骨部に床ずれが発生しやすいとしています[8]

出典:厚労省「褥瘡対策に関する診療計画書」様式[4]/東京科学大学形成・美容外科[6]/同学会パンフレット[2]/同センター[7]/同センター[8]

同学会のパンフレットは、床ずれの起こりやすい場所について「骨が飛び出していて、体の下になる場所にできやすいのが床ずれです」と述べ、あおむけ・座位・横向きのそれぞれの姿勢で圧力がかかる場所に注意を向けるよう呼びかけています[2]。上の表に挙げた部位以外にも、体格や骨の出っ張り方によっては別の場所に圧力が集中することがあります。同センターの資料は、上記の部位を中心に、皮膚の色や硬さの変化がないかを1日に複数回、目や手で確認する習慣をつけるよう勧めています[7]。

また、関節が硬くなって動かしにくくなる「関節拘縮」がある場合は、通常の好発部位以外にも注意が必要です。同センターは、拘縮によって関節周囲の骨突出が高度になり、胸椎の後弯が強くなった円背(背中が丸まった状態)の寝たきり高齢者では、通常の好発部位でなくても拘縮のある部位はその人にとっての好発部位になるとしています[8]。同センターは、その具体例として膝・肘・下腿部・脊椎、前腕部と上腕部・後上腕部と前胸部が密着する部分、指の間などを挙げています[8]。関節が硬くこわばっている家族がいる場合は、こうした「その人だけの好発部位」があることも意識してください。

重症度はどう判断する? ステージとDESIGN-R®の考え方

床ずれの重さを表す考え方の1つが、傷の深さによる「ステージ」分類です。国立大学法人東京科学大学は、床ずれの深さについて、1度は皮膚の紅斑と硬結、2度は真皮レベルの浅い潰瘍、3度は皮下組織に及ぶ潰瘍、4度は筋肉を通過し骨に達する深い潰瘍としています[6]。別府重度障害者センターの資料も同様の考え方で、ステージⅠを「発赤のみ。皮膚の損傷はないが、指で押しても赤味が残っている状態」としています[7]。同センターの資料は、ステージⅡを「水疱または真皮に至るびらんが皮下組織にまで達した状態」、ステージⅢを「皮下組織に至る創(ポケット)ができた状態」、ステージⅣを「筋肉、骨に至る創(ポケット)が進行し、骨に至る空洞ができた状態」とし、「まずは、ステージⅠの段階のように皮膚が赤くなったら褥瘡の始まりです」と述べています[7]。

ここで大切な注意点があります。日本褥瘡学会は、床ずれの重症度を分類し治癒過程を数量化するための専門的な物差しとして「DESIGN-R®」を開発しています[1]。同学会によれば、DESIGN-R®は2002年に発表された「DESIGN」を元に、2008年に重み付けを加えて公表されたもので、Depth(深さ)・Exudate(滲出液)・Size(大きさ)・Inflammation/Infection(炎症/感染)・Granulation(肉芽組織)・Necrotic tissue(壊死組織)・Pocket(ポケット)の7項目からなるとしています[1]。同学会によれば、これは医療・介護の現場で医師や看護師が床ずれの状態を評価・記録し、治療方針や経過を共有するための専門的な評価スケールです[1]。2013年の診療報酬改定では入院基本料における床ずれの状態評価にDESIGN-R®が用いられることになったとされ[1]、同学会はこれが医療機関の床ずれ対策の実施状況を確認する目的とも結びついているとしています[1]。

同学会のDESIGN-R®資料が示す深さ(Depth)の項目1つを見ても、d0(皮膚損傷・発赤なし)、d1(持続する発赤)、D2(真皮までの損傷)、D3(皮下組織までの損傷)、D4(皮下組織を超える損傷)、D5(関節腔、体腔に至る損傷)、DTI(深部損傷褥瘡疑い)、U(壊死組織で覆われ深さの判定が不能)といった、専門的な判定基準が並びます[1]。同学会は、深部損傷褥瘡(DTI)疑いの判定には、視診・触診に加えて発生経緯や血液検査、画像診断などの補助データも用いるとしています[1]。家庭で見た目だけから判定できる性質のものではありません。ご家族や介護者がこのDESIGN-R®の表を見て自分で点数をつけようとする必要はありません。皮膚の変化に気づいたら、後の章で説明する連絡すべきサインに当てはまるかどうかを確認し、判定そのものは医療者に任せてください。

海外では、日本のステージ分類やDESIGN-R®とは別に、米国のNPIAP(National Pressure Injury Advisory Panel、旧称NPUAP)とヨーロッパのEPUAPが共同で定める分類指針が広く使われています。NPIAPの分類指針は、床ずれ(pressure injury)を「骨突出部や医療機器などに関連して生じる、皮膚とその下の軟部組織の限局的な損傷」と定義しています[10]。同指針は、重症度をStage 1(消退しない発赤があるが皮膚は健常)、Stage 2(真皮が露出する部分層の皮膚欠損)、Stage 3(全層の皮膚欠損)、Stage 4(全層の皮膚・組織欠損で筋・腱・骨などが露出)、Unstageable(壊死組織などに覆われ深さが確認できない状態)、Deep Tissue Pressure Injury(持続する暗赤色・紫色などの変色)に分類しています[10]。

おおまかな段階 日本のステージの考え方 NPIAP(米国)のステージ
ごく初期 ステージⅠ:発赤のみ。皮膚の損傷はないが指で押しても赤みが残る[7] Stage 1:Non-blanchable erythema of intact skin(皮膚は健常だが消退しない発赤がある)(NPIAP指針)[10]
浅い傷 ステージⅡ:水疱または真皮に至るびらん[7] Stage 2:Partial-thickness skin loss with exposed dermis(真皮が露出する部分層の皮膚欠損)(NPIAP指針)[10]
皮下組織に及ぶ ステージⅢ:皮下組織に至る創(ポケットを伴うこともある)[7] Stage 3:Full-thickness skin loss(全層の皮膚欠損)(NPIAP指針)[10]
骨・筋肉に達する ステージⅣ:筋肉、骨に至る空洞ができた状態[7] Stage 4:Full-thickness skin and tissue loss(筋・腱・骨などが露出する全層の皮膚・組織欠損)(NPIAP指針)[10]

出典:同センター資料[7]/NPIAP Pressure Injury Stages[10](原文は英語。日本語部分はJHO編集部による要約訳です)

この表は、日本と米国それぞれの資料が段階をどう説明しているかを、大まかな重さの目安として並べたものです。同学会のDESIGN-R®とNPIAPの指針は「浅い発赤から深い骨露出まで段階的に重くなる」という考え方は共通していますが[1][10]、記号の付け方(ステージⅠ〜Ⅳとd0〜D5、Stage 1〜4)や、DESIGN-R®のように深さ以外の6項目を加えて点数化する仕組みの有無など、それぞれ独自の体系を持つ別の物差しです。一方の記号をもう一方に単純に読み替えられるわけではないため、家庭で自己判定に使うのではなく、「日本にも海外にも、専門家が使う段階分けの物差しがある」という理解にとどめ、実際の重症度判定は医療者に委ねてください。

「ポケット」とは何か、なぜ注意が必要か

「ポケット」という言葉は、Google検索でもよく調べられている床ずれ用語の1つです。日本皮膚科学会のガイドラインは、ポケットについて「皮膚欠損部より広い創腔をポケットと称する」とし、「ポケットを覆う体壁を被壁または被蓋と呼ぶ」としています[9]。つまり、皮膚の表面に見えているキズの入り口よりも、その奥(皮下)に空洞が広がっている状態を指します。別府重度障害者センターの資料も、ステージⅢを「皮下組織に至る創(ポケット)ができた状態」、ステージⅣを「筋肉、骨に至る創(ポケット)が進行し、骨に至る空洞ができた状態」としており[7]、ポケットはある程度進行した床ずれでみられる状態として説明されています。

日本褥瘡学会のDESIGN-R®では、ポケットの広さも点数化の対象になっています。同学会の資料によれば、床ずれ潰瘍面とポケットを含めた外形を描いて長径と短径を測定し、そこから床ずれそのものの大きさを差し引いた数値をp0(ポケットなし)からP24(36平方センチメートル以上)まで分類するとしています[1]。測定にあたって「毎回同一体位で測定する」「ポケット部に鑷子や綿棒を挿入し、ポケットの開口範囲を確認する」といった手順を示しています[1]。器具をポケットの中に挿入して範囲を確認するこの測定は、医療者が専門知識と器具を使って行うものであり、家庭で同じことを試すのは危険です。日本皮膚科学会のガイドラインも、ポケットの深部には壊死組織が残存しやすく、ポケット切開などの処置が検討されるとしており[9]、これも医療機関で行われる専門的な処置です。

家庭でできることは、傷の入り口よりも周囲の皮膚の下が広く柔らかく感じられる、あるいは傷の縁の下に指が入ってしまうような感触があるといった変化に気づいたら、自分で確かめようとしたり処置をしたりせず、次の章で説明する連絡先にできるだけ早く相談することです。日本皮膚科学会のガイドラインが示すとおり、ポケットがあるかどうかの判断自体、専門的な診察が必要になります[9]。

家庭でできる予防① 体位変換と体圧分散

床ずれ予防の基本は、同じ場所への圧迫を長く続けないことです。昭和大学病院褥瘡ケアセンターは、「同一部位に対する長時間の圧迫を避けるために、原則として最低2時間ごとに体位変換を行う」とし、「骨突出が重度の場合はより頻回に行うことが必要になる場合もある」としています[8]。MSDマニュアル家庭版も、「寝たきりの患者は少なくとも2時間毎に体の向きを変え」、「車いす生活の人は、1時間毎に体位を変えるべき」としています[5]。

一方で、日本褥瘡学会は、体位変換の時間間隔について「基本的に2時間を超えない範囲で行います」としたうえで[3]、「粘弾性フォームマットレスや上敷二層式エアマットレスなどを使用する場合、体位変換の間隔は4時間を超えない範囲で行ってもよいとされています」としています[3](褥瘡予防・管理ガイドライン第3版CQ9.2、推奨度C1)。ここで注意が必要なのは、4時間まで間隔を広げてよいのは体圧分散マットレスなら何でもよいわけではなく、同学会が名指ししているのはこの2種類の寝具だという点です。エアーマットレスやウレタンフォームマットレスなど、他の体圧分散用具を使っている場合にそのまま4時間まで広げてよいかどうかは、今回参照した資料には明記されていませんでした。つまり、「2時間ごと」という数字は、体圧分散マットレスを使っていない場合を想定した基本の目安であり、粘弾性フォームマットレスや上敷二層式エアマットレスを使用している場合に限って間隔を広げられる場合がある、というのが実際の姿です。ご自宅で使っている用具がこの2種類に当てはまるかどうか分からない場合や、それ以外の用具を使っている場合は、自己判断で間隔を広げず、訪問看護師やケアマネジャーに確認することをおすすめします。

同センターは、体位変換のポジショニングについて、姿勢ごとに次のような工夫を挙げています[8]。

場面 ポイント
仰臥位 クッションは身体と身体の隙間、身体とベッドとの隙間ができないよう、使用箇所に応じた適切な大きさのものを挿入する
側臥位 基本は30度。体圧を殿筋(お尻の筋肉)で支えて分散させる。ただし骨突出の状況は人によって異なるため、骨突出部位が圧迫されていないか確認する
踵部 面積が小さく圧力が高くなりやすく、血行障害の影響も受けやすい。下腿全体にクッションを使い、踵がベッドにつかないように少し持ち上げる
頭側挙上(ベッドの背上げ)時 上半身の体重が殿部にかかりやすく、特に尾骨部の床ずれリスクが高まる。角度は30度以内が理想。挙上後は必ず「背抜き」(背中とシーツの間のずれを解除する動作)を行う
座位 坐骨部や尾骨部に圧力が集中しやすいため、1回の座位時間は原則1時間以内が望ましく、その間も15〜30分ごとに上半身を持ち上げる「プッシュアップ」で圧を逃がす

出典:同センター「褥瘡発生予防ケア」(昭和学士会誌)[8]

体圧分散のための用具についても触れておきます。同センターは、主な体圧分散マットレスとして、骨突出部位への受圧の持続時間を短くする「エアーマットレス」と、身体との接触面積を広げて骨突出部位の圧を減らす「ウレタンフォームマットレス」を挙げています[8](具体的な製品名や販売元は本記事では扱いません。用具の選び方は訪問看護師や福祉用具専門相談員に相談してください)。前の章で説明した「体位変換の間隔を4時間まで広げてよい」という話に出てくる「粘弾性フォームマットレス」は、このウレタンフォームマットレスと同じものとは限りません。お使いの用具がどちらに当たるかは、自己判断せず訪問看護師や福祉用具専門相談員に確認してください。同学会のパンフレットも、寝たきりで動けない方やリスクが高い方には高機能型マットレスが、比較的動ける方には寝返りを打ちやすい軽症用のマットレスが向くとしています[2]。

ここで、家庭で誤って使われがちな用具について、はっきりさせておきたい注意点があります。同センターは、「円座の使用は禁忌」とし、「仰臥位時は仙骨部や踵部、座位時は殿部に円座を使用しようとする例がある。しかし、円座は接触部位の皮膚が引っ張られ、圧迫により骨突出部位の虚血を起こすため、原則として使用は避けるようにする」と明確に述べています[8]。ドーナツ型の円座クッションは、一見すると患部を浮かせて圧迫を避けられるように見えますが、実際には周囲の組織を強く圧迫し、血流をかえって悪くしてしまうということです。ご自宅にこうした円座クッションがある場合は、床ずれ予防・ケアの目的では使わないようにしてください。

同センターの資料は、骨突出部の皮膚に対するマッサージについても、「皮膚への摩擦刺激・ずれを与えるため禁忌である」としています[8]。赤くなった部分をさすったりもんだりすると血行が良くなりそうに感じるかもしれませんが、床ずれができやすい部位や既にできてしまった部位に対しては、逆効果になるとされています。同学会のパンフレットも、赤くなった部分は「こすらないようにしましょう」と呼びかけています[2]。

家庭でできる予防② 皮膚の観察とスキンケア、失禁のケア

床ずれ予防でもっとも大切なことの1つが、皮膚の変化を早期に発見することです。別府重度障害者センターの資料は、「褥瘡予防で最も大切なことは、皮膚の変化を早期に発見、対処することです」とし、「1日2回程度、褥瘡のできやすい所をチェックする習慣を付けましょう」と述べています[7]。同センターの資料は、自分で確認できない場合は介助者に見てもらい、スマートフォンの写真機能などで撮影して比較する方法も紹介しています[7]。前の章の表で挙げた好発部位(仙骨部・尾骨部・踵部・肩甲骨部・大転子部・坐骨部など)を中心に、皮膚の色や硬さの変化がないか、日課として確認することをおすすめします。

皮膚を清潔で乾燥した状態に保つことも重要です。MSDマニュアル家庭版は、皮膚を「清潔で乾燥した状態を保つようにします。洗浄した皮膚は穏やかにたたいて乾かすようにします」としています[5]。昭和大学病院褥瘡ケアセンターも、皮膚の洗浄について「弱酸性の石鹸や洗浄剤を使用する。これは、皮膚と同じ弱酸性により、皮膚への刺激が抑えられるためである」と説明しています[8]。ゴシゴシとこすり洗いをするのではなく、優しく洗い、押さえるように水分をふき取ることが大切だといえます。

尿失禁や便失禁があると、皮膚が湿った状態になり、床ずれのリスクが高まります。同センターの資料は、「尿失禁や便失禁で汚染され、湿った状態の皮膚には細菌が付着しているので、わずかな傷でもすぐに悪化してしまいます」と注意を促しています[7]。日本褥瘡学会のパンフレットは、おむつ交換の際の注意点として、「おむつ交換の時に尿取りパッドを引っ張って取り出すと、強い摩擦とずれが仙骨部や尾骨部にかかります。おむつを緩めてから交換しましょう」としています[2]。また、「排尿後長時間おむつを着けていると、皮膚はふやけて弱くなります」とし、「排尿パターンを知って排尿量に合わせたおむつにして、かつ排尿後はなるべく早くに交換するようにしましょう」と述べています[2]。厚労省の床ずれ対策の様式でも、「皮膚の湿潤(多汗、尿失禁、便失禁)」は床ずれの危険因子の1つとして確認項目に含まれています[4]。

ずれを防ぐ工夫としては、同学会のパンフレットが、滑りやすいシートやグローブといった福祉用具を使って体の下のずれを取り除く方法や、体位保持クッションを使って安楽な姿勢を保つ方法を紹介しています[2]。座る際には、座面の高さ、肘掛けの高さ、背中のカーブなどが体に合ったものを選ぶことで、姿勢が崩れにくくなり、ずれも起きにくくなるとしています[2]。

家庭でできる予防③ 栄養

栄養は、床ずれができることを防ぐだけでなく、できてしまった床ずれの治りにも関わります。日本褥瘡学会のパンフレットは、「褥瘡予防の栄養管理の基本は、低栄養の回避、改善です」としています[3]。同学会の在宅向けパンフレットは、「私たちの身体の組織はたんぱく質でできていますが、圧迫やずれで傷んだ組織が修復される時には、傷んだ組織は新しい組織に置き換わります。この時たんぱく質が合成されて新しい組織となります」とし、「食事は十分量食べていると安心せず、肉や魚、大豆製品、たまご、乳製品などたんぱく質食品を摂っているか、不足していないか注意しましょう」と呼びかけています[2]。同学会は「日頃から十分なエネルギーと十分なたんぱく質を摂っておくことが大切です」ともまとめています[2]。

MSDマニュアル家庭版も、「床ずれの治りを早め、新たな床ずれができるのを予防するには、十分な栄養を摂取することが大切です。タンパク質を豊富に含むバランスの取れた食事が推奨されます」としています[5]。厚労省の床ずれ対策の様式でも、「栄養状態低下」は床ずれの危険因子として確認する項目の1つに位置づけられています[4]。

具体的に1日何グラムのたんぱく質を摂るべきか、といった量的な目安について、今回参照した資料には明確な数値の記載は見当たりませんでした。必要な栄養量は、本人の体格・活動量・持病(腎臓病など、たんぱく質の摂取量に注意が必要な病気)によって大きく異なるため、自己判断で極端に増減させるのではなく、かかりつけ医や管理栄養士に相談しながら決めることをおすすめします。食欲が落ちている、体重が減ってきたと感じる場合は、床ずれの有無にかかわらず、早めに相談してください。

寝たきりを防ぐ・活動性を保つ工夫

床ずれ予防のもう1つの視点は、できるだけ寝たきりの状態そのものを防ぐことです。日本褥瘡学会のパンフレットは、「寝たきりになると床ずれができやすくなります。できるだけ寝たきりにならないよう、日頃から心掛けましょう」とし、毎日少しずつでも散歩をしたり、椅子からの立ち上がり運動をしたり、ラジオ体操やテレビ体操をしたりする習慣を続けることの大切さを述べています[2]。同学会は、立ち上がり運動について「立ち上がる時に4つゆっくり数え、座る時も4つ数える程度に、ゆっくりと行うことが大切です。早く行うと膝痛の原因となります」とし、目安として連続10〜30回を1日3回程度としています[2]。すでに寝たきりに近い状態の場合は、訪問リハビリを受け、家の中でできる運動法を教えてもらうことも選択肢になるとされています[2]。

ただし、運動と栄養はセットで考える必要があります。同学会のパンフレットは、「食事量が少ないのに強い運動をすると、かえって筋肉が減ってしまうので、たんぱく質とエネルギーを十分に摂りながら運動を行うことが大切です」と注意を促しています[2]。食べる量を増やさずに栄養を摂る工夫が必要な場合は、管理栄養士に相談することも勧められています[2]。

そして、同学会のパンフレットは、予防対策全般について重要な注意を添えています。同学会は「床ずれ予防対策は自己流でやっても効果がないことが多く、場合によってはかえって床ずれをできやすくする可能性もあります」とし、対策にあたっては身近な訪問看護師に連絡して相談するようすすめています[2]。円座やマッサージの例からもわかるように、「良かれと思って」行う自己流のケアが、かえって床ずれを悪化させることがあります。少しでも迷ったら、我流で続けず専門職に相談することが、遠回りに見えて実は近道です。

受診の目安——すぐに医療者へ連絡すべきサイン

次のサインが1つでもあれば、様子を見ず、訪問看護師やかかりつけ医にすぐに連絡してください。日本褥瘡学会の在宅向けパンフレットが「危険信号が出ています」として挙げているものです[2]。

  • お尻などのベッドや車椅子に接する部分の皮膚が赤くなり、時間が経っても赤みが消えない
  • お尻などのベッドや車椅子に接する部分の皮膚がむけた
  • 赤い部分や皮膚のむけた部分をつまんだら、皮膚の下が硬くなっている
  • お尻などにかさぶたができた
  • お尻などにかさぶたができて、痛がる
  • お尻などにかさぶたがあり、高熱が出てきた
  • ここ数日で急に動かなくなってきた
  • ここ2〜3日、食べる量が減ってきた
  • ここ1〜2日、水分を摂らなくなって、おしっこの量が減った
  • 意識がボーっとしている

同学会は、これらは「床ずれができている、あるいは床ずれができやすい状態」であり、身体の状態としては危険信号が出ているとして、すぐに訪問看護師やかかりつけ医に診てもらうよう呼びかけています[2]。

上のリストに加えて、傷そのものの状態についても知っておくとよいサインがあります。MSDマニュアル家庭版は、床ずれの感染について、「床ずれの周りが赤くなったり、熱を帯びたり、痛みが悪化したりします。発熱を伴うこともあります」としています[5]。同学会のDESIGN-R®資料でも、炎症/感染の項目のうち、より重い状態として「局所の明らかな感染徴候あり(炎症徴候、膿、悪臭など)を伴う」場合が挙げられ、軽い炎症の段階では「局所の炎症徴候あり(創周囲の発赤・腫脹・熱感、疼痛)」とされています[1]。つまり、傷の周囲が赤く腫れて熱を持ち痛みが強くなる、膿が出る、いやなにおいがする、といった変化は感染を疑うサインとして、同学会の医療者向け評価基準でも重視されている項目です。

皮膚の色そのものが急に変わった場合にも注意が必要です。同学会のDESIGN-R®資料は、「深部損傷褥瘡(DTI)疑い」を判定基準の1つに含めており、同学会は深部損傷褥瘡が疑われる場合には医師への報告が必要だとしています[1]。NPIAPの指針も、Deep Tissue Pressure Injuryについて「持続する、消退しない暗赤色・栗色・紫色の変色」と説明し、痛みや温度の変化が皮膚の色の変化より先に現れることが多いとしています[10]。皮膚の表面はまださほど傷んでいないように見えても、実際にはその下でより深刻な損傷が進んでいることがあるということです。表面上の見た目が軽そうでも、皮膚の色が急に赤黒く・紫色に変わった、傷が急に深くなったように感じる、といった変化があれば、自己判断で「たいしたことはない」と決めつけず、すぐに相談してください。

前の章で説明した「ポケット」についても、日本皮膚科学会のガイドラインが示すように、傷の入り口よりも下に空洞が広がっているように感じられる場合は、自分で確かめようとせず、医療者に伝えて診察を受けてください[9]。

受診・訪問看護に伝えるためのメモ(印刷してお使いください)

皮膚の変化に気づいたときは、次の項目を書き出しておくと、訪問看護師やかかりつけ医に正確に伝えることができます。

  • いつから気づいたか、部位はどこか(仙骨部・尾骨部・踵部・大転子部・坐骨部など)
  • 皮膚の色(赤み・紫や黒っぽい変色など)と、時間が経っても消えるかどうか
  • 皮膚の下の硬さ、皮膚がむけていないか
  • かさぶたの有無、におい・浸出液・膿の有無
  • 発熱の有無、体温
  • ここ数日の食事量・水分量・おしっこの量の変化
  • ここ数日の活動性・意識の変化
  • ふだんの体位変換の頻度、使用しているマットレスやクッションの種類
  • 持病、服用中の薬(血をさらさらにする薬・ステロイドなど)
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「軟膏」や処置について——家庭でしてよいこと・いけないこと

「軟膏」は、このテーマでよく検索されるキーワードの1つです。結論からいうと、本記事では特定の外用薬の名前や、塗る量・回数といった具体的な使い方は扱いません。日本皮膚科学会のガイドラインによれば、床ずれの治療で使われる外用薬は、傷の深さ・滲出液の量・感染の有無・肉芽組織の状態など、細かい状態に応じて医師が選び、経過とともに変更していくものとされています[9]。市販薬や、以前処方された別の傷用の軟膏を自己判断で塗ることは、かえって治りを妨げたり、状態を悪化させたりする可能性があるため、避けてください。床ずれに気づいたら、まずは前の章で説明したサインを確認したうえで、訪問看護師やかかりつけ医に相談し、処置の方法を指示してもらうことが基本です。

家庭でできることと、医療者に任せるべきことの線引きを、ここで改めて整理します。

家庭でできること 医療者に任せるべきこと
体位変換・ポジショニング、体圧分散用具の使用 外用薬・ドレッシング材の選択と処方[9]
皮膚の観察(1日2回程度)と記録[7] ポケットの深さ・範囲の確認(器具を用いた測定)[1]
弱酸性の洗浄剤を使った優しい皮膚の洗浄[8] 壊死組織の除去(デブリードマン)[9]
おむつ・失禁のケア(早めの交換、こすらない)[2] 感染が疑われる場合の全身状態の評価・治療[9]
たんぱく質を意識した食事の工夫[2] DESIGN-R®などによる重症度評価[1]

出典:日本褥瘡学会パンフレット[2]/同学会DESIGN-R®資料[1]/日本皮膚科学会ガイドライン[9]/別府重度障害者センター[7]/昭和大学病院褥瘡ケアセンター[8]

すでに述べたとおり、円座クッションの使用や、赤くなった部分のマッサージは、良かれと思って行われがちですが、同センターが「禁忌」としている行為です[8]。同じように、市販の消毒薬をむやみに使う、自己判断でかさぶたを取り除こうとする、といった行為も避けてください。同学会のパンフレットが呼びかけるとおり、床ずれのケアに関する迷いは些細なことに思えても、訪問看護師や在宅医に電話や訪問時に相談する習慣をつけることが、遠回りのようで結果的に一番の近道です[2]。

関連する体の状態も知っておく

寝たきりの方のケアでは、床ずれ以外にも皮膚のトラブルが起こりやすくなります。おむつの中で尿や便に長時間触れることで生じる皮膚炎は、床ずれとは原因が異なりますが、皮膚が弱った状態になることで床ずれのリスクを高める要因にもなります。皮膚が赤くなる・かゆがるなどの様子がある場合は、皮膚炎や湿疹・皮膚炎についての記事もあわせて参考にしてください。もともとアトピー性皮膚炎があるなど、皮膚のバリア機能が弱い方は、床ずれのリスクも高くなりやすいと考えられるため、日頃のスキンケアがいっそう大切になります。

また、尿失禁があると、湿った皮膚の状態が続き、床ずれのリスクが上がることは前の章で説明したとおりです。高齢者の尿失禁への対応を見直すことは、床ずれ予防にとっても意味のあるケアです。床ずれそのものについて、圧迫による皮膚障害が起こる仕組みや日本国内の状況をより詳しく知りたい方は、床ずれ:圧迫による皮膚障害の科学的根拠に基づく予防と管理の記事もあわせてご覧ください。

今回参照した資料の範囲では、家庭での栄養摂取について「1日あたり何グラムのたんぱく質・エネルギーを摂るべきか」という具体的な数値の記載は見当たりませんでした。必要量は個人差が大きいため、かかりつけ医・管理栄養士に確認することをおすすめします。また、体位変換の間隔について、日本褥瘡学会は基本を「2時間ごと」とし、粘弾性フォームマットレスや上敷二層式エアマットレスを使用している場合に限り「4時間まで」広げてもよいとしていますが、この2種類以外の体圧分散用具(エアーマットレスやウレタンフォームマットレスなど)を使用している場合にも同じように間隔を広げてよいかどうかは、今回参照した資料の中には明記が見当たりませんでした。骨の出っ張り具合や皮膚の状態によっても適切な間隔は変わるため、実際の間隔は、本人の状態や使用している用具に応じて、訪問看護師など専門職と相談しながら決めることが望ましいと考えられます。

よくある質問

「褥瘡」と「床ずれ」は同じ意味ですか?読み方は?
同じ意味です。「褥瘡」は「じょくそう」と読み、医療・介護の現場でよく使われる言葉です。「床ずれ」は同じ状態を指す一般的な呼び方で、国立大学法人東京科学大学も床ずれについて「昔から『床ずれ』とも呼ばれ寝たきりの方によくみられます」と説明しています[6]。この記事ではどちらの言葉も同じ意味で使っています。
床ずれはどこにできやすいですか?
体位によって異なります。厚労省の様式は、代表的な好発部位として仙骨部・坐骨部・尾骨部・腸骨部・大転子部・踵部を挙げています[4]。同大学と日本褥瘡学会によれば、仰臥位(あおむけ)では仙骨部・尾骨部・踵部・肩甲骨部、側臥位(横向き)では大転子部、座位では坐骨部・尾骨部にできやすいとされています[6][2]。くわしくは本記事の「どこにできやすい?」の章をご覧ください。
床ずれの「ステージ」とは何ですか?
傷の深さによる段階分けです。別府重度障害者センターの資料は、おおまかにステージⅠは皮膚の発赤のみ、ステージⅡは真皮に至る浅い傷、ステージⅢは皮下組織に至る傷、ステージⅣは筋肉や骨に達する深い傷としています[7]。同学会は、これに加えてDESIGN-R®というより詳しい評価スケールを医療者向けに定めています[1]。
「ポケット」とはどういう意味ですか?
皮膚の表面に見えているキズの入り口よりも、その下(皮下)に広い空洞ができている状態です。日本皮膚科学会は「皮膚欠損部より広い創腔をポケットと称する」としています[9]。ある程度進行した床ずれでみられる状態で、確認や処置には専門的な器具と知識が必要なため、家庭で自分で確かめようとしないでください。
床ずれについて相談できる学会や公的な情報源はありますか?
同学会が在宅向けのパンフレットや予防に関する情報をウェブサイトで公開しています[2][3]。ただし同学会は個別の患者の相談窓口ではないため、実際の症状については、まず訪問看護師やかかりつけ医、あるいはかかりつけ医から紹介される皮膚科・形成外科などに相談してください。
床ずれの治療はどんなことをしますか?家でできることはありますか?
日本皮膚科学会のガイドラインによれば、医療機関では壊死組織の除去、感染の管理、状態に応じた外用薬やドレッシング材の使用などが行われます[9]。同学会によれば、家庭でできるのは、体位変換や体圧分散用具の使用、皮膚の観察と優しい洗浄、失禁のケア、栄養面の工夫などの予防的なケアが中心です[2]。すでにできてしまった床ずれの処置は、自己判断で行わず医療者の指示に従ってください。
軟膏は自分で選んで塗ってもいいですか?
おすすめしません。日本皮膚科学会のガイドラインによれば、床ずれの外用薬は、傷の深さや滲出液の量、感染の有無などに応じて医師が選ぶものとされています[9]。市販薬や以前使った別の薬を自己判断で塗ると、かえって治りを妨げることがあります。皮膚の変化に気づいたら、まず訪問看護師やかかりつけ医に相談してください。
円座(ドーナツ型クッション)を使うのは良い方法ですか?
おすすめしません。昭和大学病院褥瘡ケアセンターは「円座の使用は禁忌」とし、円座は接触部位の皮膚を引っ張り、周囲の骨突出部位の血流を悪くするとしています[8]。体圧分散が必要な場合は、円座ではなく、専門職に相談したうえで体の状態に合ったマットレスやクッションを選んでください。
体位変換は何時間おきに行えばいいですか?
同センターとMSDマニュアルは、基本の目安として「2時間ごと」を挙げています[8][5]。ただし、日本褥瘡学会は、粘弾性フォームマットレスや上敷二層式エアマットレスを使用している場合に限り、間隔を4時間まで広げてもよいとしています[3]。この2種類以外の体圧分散用具を使っている場合にも同じように広げてよいかは、今回参照した資料には明記がありませんでした。適切な間隔は本人の状態や使用している用具によって異なるため、自己判断で間隔を広げず、訪問看護師などの専門職に相談して決めることをおすすめします。
一度できた床ずれは完全に治りますか?
同学会のパンフレットは、床ずれについて「しっかり治療すれば治るキズ」としつつ、「治療開始が遅れると治るのに時間がかかる」「数年かけてやっと治ることもある」ともしています[2]。同学会は、感染を起こして命に関わることもある一方、原因を知って適切に対応すれば治るキズだとも述べています[2]。早期発見・早期対応が、治療期間を左右する大きな要素だといえます。

参考文献

  1. 日本褥瘡学会「DESIGN-R®2020 褥瘡経過評価用」 https://jspu.org/medical/books/docs/design-r2020_doc.pdf
  2. 日本褥瘡学会 在宅医療委員会「床ずれ(褥瘡)予防パンフレット」2018年 https://www.jspu.org/medical/books/docs/tokozure_yobo_pamphlet.pdf
  3. 日本褥瘡学会「褥瘡の予防について」 https://www.jspu.org/general/prevention/
  4. 厚生労働省「褥瘡対策に関する診療計画書」等の様式(別紙3・別紙16) https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/5-2-2.pdf
  5. MSDマニュアル家庭版「床ずれ」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/17-皮膚の病気/床ずれ/床ずれ
  6. 東京科学大学 形成・美容外科「褥瘡」 https://www.tmd.ac.jp/med/plas/field/decubi.html
  7. 別府重度障害者センター(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)「在宅生活ハンドブックNo.4 自宅での褥瘡予防と発症時の対処法」2021年 https://www.rehab.go.jp/beppu/book/pdf/livinghome_no4.pdf
  8. 浅田恵子(昭和大学病院褥瘡ケアセンター)「褥瘡発生予防ケア」昭和学士会誌 第74巻第2号(2014) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshowaunivsoc/74/2/74_115/_pdf/-char/ja
  9. 日本皮膚科学会「創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)―2 褥瘡診療ガイドライン(第3版)」 https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/zyokusou2023.pdf
  10. National Pressure Injury Advisory Panel「NPIAP Pressure Injury Stages」 https://cdn.ymaws.com/npiap.com/resource/resmgr/online_store/npiap_pressure_injury_stages.pdf

更新日:2026年7月26日。本記事の内容に誤りや古い情報があるとお気づきの際は、お知らせください。事実を確認のうえ訂正いたします。

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Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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