ALTが高い原因|脂肪肝・肝臓学会の基準と受診の目安
この記事でわかること
目次
結論から言うと、健康診断の肝機能検査でALTが高いと指摘された場合、いちばん多い原因は脂肪肝で、多くはすぐに命に関わるものではありません。ただし日本肝臓学会は「奈良宣言2023」で、ALTが30を超えていたら慢性肝臓病が隠れているかもしれないとして、かかりつけ医を受診するよう呼びかけています[1]。
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日本臨床検査専門医会によると、ALTは肝臓の細胞に多い酵素で、肝細胞が傷つくと血液中に漏れ出して数値が上がります[3]。日本肝臓学会は、原因は生活習慣に関わる脂肪肝が中心としつつ、ウイルス性肝炎やアルコール、薬剤、まれに自己免疫の病気が隠れていることもあると説明しています[1]。まずは数値と経過を落ち着いて確認し、この記事で「今の自分にあてはまるかどうか」を確かめてください。
要点まとめ
編集方針:JHO編集部がAIツールの支援を受け、厚生労働省・日本肝臓学会・日本消化器病学会・JCCLS(日本臨床検査標準協議会)・日本臨床検査専門医会・日本医師会・MSDマニュアルなど公的機関・学会の一次情報と照合して作成しました。最終確認は人の目で行っています。医師による個別の診断の代わりにはなりません。数値の基準や分類はガイドラインの改定により変わることがあります(2026年7月時点の情報にもとづいています)。
ALTとは?肝細胞から血液へ漏れ出す仕組み
ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ、GPTとも呼ばれます)は、体の中でアミノ酸をつくる働きをしている酵素の一つです[4]。健康診断でよく一緒に出てくるAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、GOT)も、日本臨床検査専門医会によれば働きは似ていますが含まれている場所が違うとされています[3]。
一般社団法人日本臨床検査専門医会は、ASTについて「心臓・肝臓・骨格筋に多く含まれています」とし、ALTについては「ほとんどが肝臓に含まれています」と説明しています[3]。公益社団法人日本医師会も、ASTは肝臓以外に心臓や骨格筋にも含まれているため、ASTとALTの数値を見比べることで障害を受けた部位が心臓なのか肝臓なのか、また筋肉などそれ以外の部位なのかを判断する手がかりになると説明しています[4]。
日本臨床検査専門医会によると、ALTもASTも、ふだんは肝臓の細胞(肝細胞)の中で働いており、細胞が健康なうちは血液中にほとんど出てきません[3]。同会によれば、脂肪肝や肝炎などで肝細胞が傷つくと、細胞の中身が血液中に漏れ出し、採血の数値として現れるとされています[3][4]。日本医師会は「ASTがALTよりも高いときは、肝硬変、肝臓がん、アルコール性肝炎、心筋梗塞などが疑われ、ALTがASTよりも高いときは、慢性肝炎、ウイルス性肝炎などが疑われます」と述べています[4]。ALTは他の臓器にあまり含まれていないため、ALTだけが目立って高いときは、肝臓そのものに原因がある可能性が比較的高いと考えられます[1]。
健診結果ではALT・ASTと並んで「γ-GTP(γ-GT)」もよく登場します。日本臨床検査専門医会は、γ-GTについて「腎臓、膵臓、肝臓に存在しており、胆石やがんなどによる胆汁分泌障害や肝細胞障害が生じた際に上昇します」とし、正常値の目安を成人男性10〜50U/L、成人女性10〜30U/Lとしています[12]。同会は「胆石やがんのみならず、アルコールや薬物にも反応しやすい値です」とも述べ、上昇の原因として飲酒、脂肪肝、抗てんかん薬・向精神薬・抗凝固薬・ステロイドなどの薬剤を挙げています[12]。つまりALT・ASTが肝細胞そのものの傷みを映すのに対し、γ-GTPは飲酒や胆道(胆汁の通り道)の状態にも敏感に反応する、性格の違う数値だといえます。
ASTとALTの数値の比(AST/ALT比)も、原因を考えるうえでの手がかりになります。MSDマニュアル プロフェッショナル版は「大半の肝疾患で,AST/ALT比は1未満」としたうえで、「アルコール関連肝疾患ではこの比が2を超えることが特徴的」と述べ、その理由としてALTの合成に必須でありながらアルコール使用症の患者では欠乏しがちなビタミンB6の一種(ピリドキサル‑5’‑リン酸)を挙げています[7]。ASTがALTよりも際立って高い場合は、脂肪肝以外にアルコールの影響も考えられるということです。
今の血圧・脈拍を確かめる
数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
身長と体重からBMIも調べる
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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
ALT・AST(肝機能)の基準値の見方 — JCCLS共用基準範囲と「奈良宣言」
健診結果に印字されている「基準値」は、実は病院や検査を行う施設によって少しずつ違います[2]。施設ごとに使う測定機器や、基準値を決める際に集めた健康な人のデータが異なるためです。この差を減らすため、日本臨床検査標準協議会(JCCLS)は全国調査のデータから「共用基準範囲」を定めています[2]。
| 検査項目 | 基準値の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| AST(GOT) | 13〜30 U/L | 心臓・肝臓・骨格筋などに含まれる[2] |
| ALT(GPT) | 男性 10〜42 U/L/女性 7〜23 U/L | ほとんどが肝細胞に含まれる[2] |
| γ-GTP(γ-GT) | 男性 10〜50 U/L/女性 10〜30 U/L | 飲酒や胆道の状態に反応しやすい[12] |
出典:AST・ALTは日本臨床検査標準協議会(JCCLS)「共用基準範囲」2022年10月31日版[2]/γ-GTPは日本臨床検査専門医会「γ-GT、ALP」[12]
この共用基準範囲は「健康な人を多数集めて測った、標準的な値の幅」であり、この範囲を少し超えたからといって、必ず病気があるという意味ではありません[2]。一方で日本肝臓学会は2023年、これとは別に「奈良宣言2023」を発表し、「健康診断などの血液検査で肝機能を示すALT値がもしも30を超えていたら、慢性肝臓病(CLD)が隠れているかもしれません」として、まずかかりつけ医を受診することを勧めています[1]。これは統計的な基準範囲ではなく、見逃しを防ぐために動き始める数字という位置づけです。一般社団法人日本臨床検査専門医会も、ALTについて「30U/L程度以上であれば、精査をすすめられることがあります」としており[3]、同会は300U/L以上を「パニック値」とし、至急大きな病院での入院精査が必要になるとしています[3]。健診用紙の肝機能の欄にある「基準値」上限が30より高い施設もあるため、数字だけを比べて安心・不安を判断せず、経過や他の検査結果とあわせてかかりつけ医に相談することが大切です。数値の細かい読み解き方は「ALT (GPT) 検査の完全ガイド:肝臓からのSOSを見逃さないための数値の意味、原因、および総合的対策」でも扱っています。
ALTが高くなる主な原因 — もっとも多いのは脂肪肝
ALTが高いと言われたとき、多くの人がまず気になるのが原因でしょう。日本肝臓学会の「奈良宣言2023」は、健診でALTが30を超えたときに考えられる主な原因を、次のような整理で示しています[1]。
| あてはまる状況 | 疑われる原因 |
|---|---|
| 肝炎ウイルス検査が陽性(HBs抗原やHCV抗体) | ウイルス性肝炎 |
| 脂質異常症・高血圧を合併/脂肪肝がある/血小板数20万/mm3未満/FIB-4 index 1.3以上 | 肝線維化を伴う脂肪肝 |
| 飲酒量が男性60g/日以上・女性40g/日以上で、ASTやγ-GTPも異常値 | アルコール性肝障害 |
| 上記にあてはまらない | 薬物性肝障害・自己免疫性肝疾患・原因不明の肝障害など |
出典:一般社団法人日本肝臓学会「奈良宣言2023」[1]
表の最後の行にある「薬物性肝障害・自己免疫性肝疾患・原因不明」も見逃せません。MSDマニュアル プロフェッショナル版は、アセトアミノフェンや抗結核薬、メトトレキサート、スタチン系薬剤、NSAIDsなど、多くの薬剤が症状を伴わない肝酵素値の上昇を高頻度で引き起こすとしつつ、「臨床的に有意な肝障害(例、黄疸、腹痛、そう痒)が生じることはまれである」とも述べています[9]。つまり、薬による軽度のALT上昇はめずらしくない一方で、はっきりした症状を伴う場合はより注意が必要ということです。自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎といった自己免疫の病気は頻度としては多くありませんが、奈良宣言でも原因の選択肢の一つとして挙げられており[1]、飲んでいる薬に心当たりがなく、脂肪肝やウイルス性肝炎、アルコールでも説明がつかない場合には、こうした原因も含めてかかりつけ医で調べてもらうことになります。
このうち、実際の頻度としてもっとも多いのが脂肪肝です[1]。日本消化器病学会・日本肝臓学会は、お酒をあまり飲んでいないのに肝臓に脂肪がたまる状態を「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼び、その多くは肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧を伴う「メタボリックシンドロームの肝臓病」と考えられていると説明しています[5]。「非アルコール性」とはいえ、まったくお酒を飲まない人だけでなく少量飲酒している人の脂肪肝も含まれます。1日あたり純エタノールとして男性30g以上、女性20g以上を毎日飲み続けるとアルコール性肝障害を起こすことがあるとされ、これより飲酒量が少ない人にみられる脂肪肝がNAFLDとされています[5]。この量は、ビールなら男性で1日あたり750mL(大瓶1本強)、日本酒なら1合半、ワインはグラス2杯半、ウイスキーではダブルで1杯半に相当するとされています[5]。奈良宣言2023が示すアルコール性肝障害の目安(男性60g/日以上・女性40g/日以上)は、これよりさらに多い飲酒量です[1]。より詳しい基礎知識は「脂肪肝」のページでも解説しています。
脂肪肝の中でも見通しは一様ではありません。日本消化器病学会・日本肝臓学会は、NAFLDのうち80〜90%は長い経過をみても脂肪肝のままで病気はほとんど進行せず、これを「NAFL(ナッフル)」と呼ぶとしています[5]。一方で残り10〜20%は徐々に悪化して、肝硬変に進行したり、なかには肝がんを発症したりすることもあり、この徐々に進行する肝臓病を「非アルコール性脂肪肝炎(NASH/ナッシュ)」と呼ぶとされています[5](進行した場合については「肝臓がん(肝細胞がん)」も参考にしてください)。ただし、この10〜20%という数字は長期間の経過を追った研究にもとづく傾向であり、すべての人に同じ経過をたどると決まっているわけではないと考えられます。
NAFLDかどうかは、非アルコール性で超音波検査やCT検査などの画像検査で脂肪肝の所見があり、他の肝臓の病気がないことを確認すれば診断できるとされています[5]。一方でNASHかどうかは、本来は肝臓の組織を調べる肝生検(針で肝臓の一部を採取して顕微鏡で観察する検査)をしないと確実には診断できませんが、近年は超音波やMRIで肝臓の硬さを測る「エラストグラフィ」という機械を使うことで、肝生検をせずに線維化のある脂肪肝を診断できる場合も増えているとされています[5]。健診でALTの異常や脂肪肝の所見を指摘されたら、まず肝臓の硬さ(線維化)を簡便な方法で評価してもらうことが勧められており、その目安として血小板数や、年齢・AST・ALT・血小板数から計算する「FIB-4 index」などのスコアリングシステムが使われています[5]。FIB-4 indexは「(年齢×AST)÷〔血小板数(×109/l)×√ALT〕」という式で計算され、血小板数20万/μL未満、線維化マーカーが基準値以上、スコアリングシステムが高値などのいずれかにあてはまり肝臓の硬さが進んでいる可能性がある場合には、専門の医療機関でより詳しい検査を受けることが勧められています[5]。
NAFLDはどのくらいの人にみられるのでしょうか。日本消化器病学会・日本肝臓学会は、NAFLDの有病率は日本では9〜30%と報告されており、患者数は全国で1,000万人以上いると考えられていると述べています[5]。NASHの有病率は3〜5%と推定され、日本における年齢分布は男性は中年層、女性は高齢層に多い傾向が報告されているとしています[5]。とくに肥満(ウエスト周囲径の増大)はNAFLD・NASHの強い危険因子であり、高血糖や脂質異常も主要な危険因子で、NAFLDの人がメタボリックシンドロームを合併している場合はNASHの可能性が高くなるとされています[5]。全国の肝硬変患者50,903人の原因を調査した2018年の報告では、約3/4はウイルス性肝炎が原因で、NASHが原因だったのは5.8%だったとされ、現時点でも肝硬変全体に占める割合ではウイルス性肝炎が多数を占めていることがうかがえます[5]。
症状の面では、日本消化器病学会・日本肝臓学会は「肝臓はよく“沈黙の臓器”といわれるように、多少の負担がかかってもすぐには症状があらわれません」と述べ、脂肪肝では自覚症状は何もない人がほとんどだとしています[5]。NAFLD・NASHはかなり病気が進行しない限りほとんど症状がないため、自覚症状だけで進行の程度を把握することはできないとされ、NASHが肝硬変まで進行すると、黄疸や足のむくみ、腹水がたまることによる腹部の膨満感などがあらわれることがあるとされています[5]。だるさを訴える人もいますが、これも肝臓に特有の症状ではないとされています[5]。「症状がないから大丈夫」とは限らないからこそ、健診でのALT高値は貴重な手がかりになります。
長期的な見通しについても、日本消化器病学会・日本肝臓学会は、NAFLDのなかでもNASHの患者は肝疾患の進行だけでなく心血管疾患や悪性疾患にかかる頻度が増えるため、一般の人に比べて経過が不良で死亡率が高いといわれていると述べています[5]。同ガイドが引用する研究(Gastroenterology誌、2005年)では、NAFLDと診断された人の生存率を一般の人と比べたところ、観察期間が長くなるほど差が開く傾向が示されたとされています[5]。ウイルス性の肝疾患と比べると、NASHから肝臓がんになる率はウイルス性より低い一方で、肝臓以外の心血管疾患や悪性疾患にも気を配る必要があるとされ、同ガイドは「NAFLD/NASHは肝臓だけでなく全身疾患の一部と捉え、もれのない経過観察をしていくことが重要」としています[5]。数値ひとつで将来が決まるわけではありませんが、脂肪肝を「よくある軽い所見」とだけ捉えず、生活習慣病全体のサインとして受け止めることが勧められています。
痩せているのにALTが高いのはなぜ?
そもそも脂肪肝は、なぜできるのでしょうか。日本消化器病学会・日本肝臓学会のガイドによると、食事でとった糖分は通常グリコーゲンとして肝臓に一時的に蓄えられますが、過剰な糖分は中性脂肪に変換されて肝臓にたまります[5]。食べ過ぎや運動不足で摂取カロリーが消費量を上回ると、肝臓で中性脂肪が多く作られて脂肪肝になり、さらに肥満の人では血糖値を下げるインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が生じて、これによっても肝臓で中性脂肪をたくさん作るよう促されるとされています[5]。ここまでは体重や食事量と関係の深い仕組みですが、同じ食事や運動をしていても太りやすい人とそうでない人がいるように、肝臓への脂肪のたまりやすさは体質によっても異なるとされています[5]。
「太っていないのにALTが高い」と言われて驚く方もいます。日本消化器病学会・日本肝臓学会は、肝臓への脂肪のたまりやすさには体質による個人差があり、脂肪肝になりやすい遺伝的な要因として「PNPLA3」などの遺伝子の型が関わっていることが分かってきたと説明しています[5]。さらに、詳しい仕組みはまだ分かっていないものの、腸内細菌や「サルコペニア(筋力、筋肉量の低下)」がNAFLD・NASHと関連することも報告されていると述べています[5]。つまり、体重や見た目だけでは肝臓への脂肪の蓄積は判断できないということです。
同ガイドでは反対に、BMI18.5未満のやせている方は過度なダイエットを控えるようにも呼びかけています[5]。無理な減量そのものが体調を崩す原因になり得るため、やせ型でALTが高い場合に自己判断で食事量を極端に減らすことは勧められません。
やせ型の人のALT高値が、すべて脂肪肝によるものとは限らない点にも注意が必要です。ウイルス性肝炎や自己免疫の病気、薬剤性肝障害など、肥満とは関係のない原因が隠れている可能性もあるため、前の章の表と合わせて原因を確認することが大切です[1]。
筋トレ・激しい運動とALT・ASTの関係
「筋トレをしたら数値が上がった」という声もよく聞かれます。日本臨床検査標準協議会(JCCLS)は、基準値を決めるための採血にあたり「採血前3日以内に通常でない強い運動・筋肉労作を控える」ことを条件としており、その理由として「LD、CK、ASTなどが強い運動による上昇がある」ためと説明しています[2]。つまり、強い筋トレのあとは、筋肉にも含まれるASTなどの数値が一時的に上がる場合があると、基準値づくりの土台となった資料でも扱われているということです。
一方でALTは、日本臨床検査専門医会や日本医師会が説明しているとおり、肝臓に多く含まれる酵素です[3][4]。ASTだけが上がっていてALTは正常という場合について、日本臨床検査専門医会は「かならずしも肝臓が悪いとは限りません。心臓や筋肉の疾患の可能性もあるため、他の検査結果を含めて注意が必要です」と述べています[3]。強い運動の直後はこのASTが優位に上がるパターンになりやすいと考えられますが、これは今回参照した資料から読み解ける範囲であり、運動だけが原因かどうかを自己判断するのではなく、次の項目もあわせて確認してください。
反対に、ASTとALTが両方とも高い場合には注意が必要です。日本臨床検査専門医会は「肝臓病などが疑われますので、早めに内科などを受診して精密検査を受けましょう」としており、運動だけでは説明がつかない可能性を示しています[3]。同会はその原因として、B型・C型肝炎ウイルスへの感染、アルコール、過栄養、まれに自己免疫の病気を挙げています[3]。健診の数日前に激しい運動をした心当たりがあるときは、そのことを受診時に伝えると、原因の見きわめに役立ちます。
見逃せないサイン — すぐに受診が必要なとき
ALTが高いだけで慌てる必要はない場合がほとんどですが、ごくまれに急いで受診すべきケースもあります。急性のウイルス性肝炎になると、ALT・ASTの上昇とあわせて体の症状が出ることがあります。MSDマニュアル家庭版は、主な症状として「食欲不振、全身のだるさ、吐き気と嘔吐、発熱、右上腹部の痛み」を挙げ、そのほか「黄疸(皮膚や白眼が黄色くなる)、尿の色が濃くなる、便が白くなる」といった症状が出ることもあるとしています[10]。MSDマニュアル プロフェッショナル版はさらに詳しく、前駆期には「著明な食欲不振,倦怠感,悪心および嘔吐などがあり,タバコをまずく感じるようになり」、その後「尿が暗色になり,続いて黄疸が起こる」段階に進むとしており、黄疸が悪化していく一方で「全身症状はしばしば消退し」「患者は気分がよくなる」こともあると述べています[8]。だるさなど全身の症状が軽くなったからといって、肝臓の状態がよくなったとは限らない点には注意が必要です。
すぐに医療機関を受診したほうがよいサイン
- 意識がもうろうとする、様子がおかしい、ぼんやりして受け答えが変になるなど、精神状態が急に変化した[10]
- 体が非常にだるい状態で、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)が急速に強くなっている[10]
- 原因がはっきりしない出血がある[11]
これらはMSDマニュアル家庭版が、まれですが急速に進む「劇症肝炎」の危険なサインとして挙げているものです[10]。劇症肝炎は数日から数週間で昏睡状態に陥ることもあり、肝移植が必要になる場合もあるとされています[10]。MSDマニュアル プロフェッショナル版は、劇症肝炎を疑うべき場合として「新たに発症した黄疸、精神状態の急激な変化、または原因不明の出血を伴って急速に発症した」場合を挙げています[11]。また同プロフェッショナル版は、ALTおよびASTが1000IU/Lを超える場合には、肝機能を評価するためPT/INRを測定するとしています[8]。また急性ウイルス性肝炎では、ASTおよびALTがしばしば400IU/L以上まで著しく上昇することが特徴とされています[8]。健診の数値がこうしたけた違いに高い場合や、上記のようなサインを伴う場合は、次の健診まで様子を見るのではなく、できるだけ早く医療機関を受診してください。
ALTが正常でも安心しきれない理由 — 肝炎ウイルス検査も検討を
ウイルス性肝炎は、A・B・C・D・E型などの肝炎ウイルスの感染によって起こる肝臓の病気です。厚生労働省によると、A型・E型肝炎ウイルスは主に食べ物を介して感染し、B型・C型・D型肝炎ウイルスは主に血液を介して感染するとされ、なかでもB型・C型肝炎ウイルスは感染すると慢性の肝臓病を引き起こす原因にもなるとされています[6]。肝炎になると肝臓の細胞が壊れて働きが悪くなり、倦怠感・食欲不振・吐き気・黄疸などの症状が出る人もいますが、厚生労働省は「全く症状が出ないことも少なくありません」とも述べています[6]。
日本肝臓学会は奈良宣言のリーフレットで、「肝機能の数値が基準内でも、肝炎が進行しているかもしれません」と述べ、肝臓は『沈黙の臓器』と呼ばれ、肝炎が進行していても自覚症状がないことが珍しくないと説明しています[1]。同リーフレットは、高齢になると病状の進行が早くなることや、場合によっては慢性肝炎から突然肝がんを発症することもあると注意を促しています[1]。厚生労働省も、肝炎ウイルスの持続感染がある場合について「全く自覚症状がなくても、肝機能検査で異常値を示すことがあります。また、検査の値が変動し、知らない間に病気が進行することがあります」と注意を呼びかけています[6]。
肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、血液検査(HBs抗原やHCV抗体の検査)を受けなければ分かりません[1]。厚生労働省は、これまで肝炎ウイルス検査を一度も受けたことがない人に対して「肝炎についての理解を深めるとともに、ご自分の身体の状態を知るために……必ず一度は受けるようにしましょう」と呼びかけています[6]。ALTの数値だけで「感染していないはず」と決めつけず、まだ一度も検査を受けたことがない方は、この機会に肝炎ウイルス検査も検討してください。より詳しい基礎知識は「【肝臓の検査】B型肝炎や脂肪肝を早期に見つけるための基礎知識と受診の目安」でも確認できます。
厚生労働省によると、肝炎ウイルス検査は保健所や医療機関で受けることができます[6]。もし肝炎ウイルスに感染していることが分かっても、B型・C型肝炎ウイルスは主に血液を介して感染するため、「ごく常識的な注意事項を守っていれば、日常生活において周囲の人への感染はほとんどありません」とされています[6]。具体的には、歯ブラシやカミソリなど血液が付く可能性のあるものを共用しない、血液や分泌物がついたものはしっかりくるんで捨てるか流水でよく洗い流す、外傷や鼻血はできるだけ自分で手当てし手当てする人は手袋を着ける、口の中に傷がある場合は乳幼児に口移しで食物を与えない、献血は行わない――の5点が挙げられています[6]。厚生労働省は、C型肝炎について治療の進歩により良好な経過が期待できるようになってきたとし、早期に適切な医療を受けることの大切さを強調しています[6]。
3つの「ALTの基準」を混同しない — 施設の基準値・奈良宣言・国際的な目安
肝機能検査の結果表を見比べると、同じALTでも施設によって数字の意味づけが違って見えることがあります。ここまでに出てきた「ALTの数字」は、実は性格の異なる3種類があり、それぞれ答えている問いが違います。混同すると数字の意味を取り違えてしまうため、整理しておきます。
| 数字 | ALTの目安 | この数字が答える問い |
|---|---|---|
| JCCLS共用基準範囲[2] | 男性10〜42 U/L・女性7〜23 U/L | 健康な人を集めて測ると、多くの人がどの範囲におさまるか |
| 奈良宣言2023の受診ライン[1] | 30を超えたら受診 | 慢性肝臓病の見逃しを防ぐために、いつ受診行動を起こすべきか |
| 国際的にみた「真の正常値」[7] | 男性29〜33 IU/L・女性19〜25 IU/L | 危険因子のない集団だけを選んで測ると、本来どのくらい低いか |
出典:JCCLS「共用基準範囲」2022年[2]/日本肝臓学会「奈良宣言2023」[1]/MSDマニュアル プロフェッショナル版「肝臓および胆嚢の臨床検査」[7]
MSDマニュアル プロフェッショナル版は「ALTの真の正常値は男性で29〜33IU/L、女性で19〜25IU/Lであり、多くの民間検査機関が報告している範囲よりも低い水準にある」と述べています[7]。これは危険因子のない集団だけを選んで測定した研究にもとづく数字で、JCCLSの共用基準範囲のように健診を受けた人全体から求めた統計的な参照区間とは、集団の選び方も算出方法も異なります。奈良宣言の「30」も、これらとは別に、慢性肝臓病を見逃さないために受診行動を起こす目安として日本肝臓学会が示した臨床的な数字です[1]。3つの数字はいずれも「これ以下なら安全」と言い切るためのものではなく、答えている問いが違うことを踏まえたうえで、数値の増加傾向や他の検査結果とあわせてかかりつけ医に相談することが大切です。
再検査までにできること
ALTが高い状態が一時的なものか、続いているのかは、再検査で確かめることになります。再検査を控えている場合、何をすればよいか迷う方も多いはずです。JCCLSが基準値を作成する際の採血条件では、「採血前3日以内に通常でない強い運動・筋肉労作を控える」ことに加え、「前夜の過労、過度のストレス、過度の飲食、飲酒を控える」こと、「採血前10時間以上絶食(飲水は制限せず)の後、午前7〜10時に、20分以上座位安静後に採血」することが条件とされていました[2]。座位安静が必要な理由についても、「長く立っていた状態で採血すると、血中の水や小分子物質が下肢の血管外に漏出し、大分子成分(蛋白等)の濃度が、座位に比し5〜10%高値となるため」と説明されています[2]。この条件は基準値づくりのための調査上のルールであり、再検査そのものの公式な注意事項として示されたものではありませんが、激しい運動や深酒、長時間の立位を控えて採血にのぞむと、生活習慣や採血時の状況による一時的な影響と、もともとの肝臓の状態を区別しやすくなると考えられます。
日本医師会は、日ごろの食生活の見直しとして、1日3食を規則正しくとり栄養バランスを考えること、アルコールを控えて週に数日は休肝日を設けることを勧めています[4]。脂肪肝が原因と考えられる場合には、日本消化器病学会・日本肝臓学会も、3食をきちんととり食べ過ぎに注意すること、動物性の油や果糖を多く含む清涼飲料水のとり過ぎを控えること、週3〜4回・30分以上の有酸素運動を行うことなどを勧めています[5]。ダイエットをうたった健康食品やサプリメント、漢方薬を自己判断で長期間使うことについては注意が必要だとされています[5]。肝臓をいたわる飲み物の選び方は「【脂肪肝の人はどんなお茶を飲めばいい?】肝臓にやさしいハーブティー8選と安全な付き合い方」でも紹介しています。
脂肪肝が原因のときの治療の中心は、あくまで生活習慣の改善です。日本消化器病学会・日本肝臓学会は、食事療法・運動療法による体重減少が肝機能や肝臓の組織像を改善することから推奨されているとし、具体的には7〜10%の減量によってNAFLD・NASHの改善が期待できるとしています[5]。減量だけで効果が十分にあらわれない場合には、抗酸化作用のある薬剤や糖尿病の薬など、NASHの患者に有効であることが示されている薬剤による治療が検討されることもありますが、同ガイドは「現時点でわが国ではNAFLD/NASHに有効な薬剤で保険適用されているものはありません」とも述べています[5]。薬による治療が必要かどうか、どの薬を選ぶかは、糖尿病・脂質異常症・高血圧など合併している生活習慣病の内容もふまえて専門医が判断します[5]。少量の飲酒の影響については諸説あり一定の見解は得られていないとされていますが、少量の飲酒でも肝硬変や発がんに関係している可能性が報告されているため、基本的には飲酒を控えるほうが望ましいとされています[5]。
受診のときに持っていくとよいメモ
- 健診結果(肝機能検査のALT・AST・γ-GTPなどの数値がわかるもの)
- いつの健診から数値が高いか、これまでの推移
- お酒を飲む頻度と量(種類・本数など)
- 現在飲んでいる薬・サプリメント・漢方薬(市販薬も含む)
- 採血の数日前に激しい運動をしたかどうか
- 体重の変化、糖尿病・高血圧・脂質異常症の有無
- 肝炎ウイルス検査を受けたことがあるかどうか
今回参照した資料の中には、「痩せている人のALT高値」そのものを単独のテーマとして扱った日本語の一次資料は見当たりませんでした。本記事では、日本消化器病学会・日本肝臓学会のNAFLD/NASHガイド2023にある遺伝的要因やサルコペニアとの関連についての記述をもとに構成しています[5]。筋トレとALT・ASTの関係についても、運動によるALT・ASTそのものの変化量を直接比較した学会発表資料は今回見つけられず、JCCLSの採血条件の記述と、ASTとALTの由来する臓器の違いから読み解ける範囲にとどめています[2][3]。個々の数値がどの原因にあてはまるかは、血液検査や画像検査を含めた医師の判断が必要です。また、今回参照した資料には「特定健診や人間ドックが独自に定めているALTの基準値の上限」を網羅的に一覧化した一次資料は見当たらなかったため、本記事では日本臨床検査専門医会が示すJCCLS共用基準範囲と、日本肝臓学会の奈良宣言2023の数字を中心に紹介しています[2][3][1]。お手元の健診結果に印字されている基準値の上限がこの記事の数字と異なっていても、誤りとは限りません。
よくある質問
ALTが高いと言われたら何科を受診すればいいですか?
更新日:2026年7月26日。本記事の内容に誤りや古い情報にお気づきの際は、JHO編集部までお知らせください。事実を確認のうえ訂正いたします。
参考文献
- 一般社団法人日本肝臓学会「奈良宣言2023」(第59回日本肝臓学会総会) https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/nara_sengen/leaflet.pdf
- 日本臨床検査標準協議会(JCCLS)「共用基準範囲」2022年10月31日版 https://www.jccls.org/wp-content/uploads/2022/10/kijyunhani20221031.pdf
- 一般社団法人日本臨床検査専門医会「肝酵素 AST(GOT)、ALT(GPT)」(ラボ No.536、2023年9月) https://jaclap.org/guests/guests-2504/
- 公益社団法人日本医師会「健康の森 AST、ALT」 https://www.med.or.jp/forest/check/kensa/got/index.html
- 日本消化器病学会・日本肝臓学会「NAFLD/NASHガイド2023 患者さんとご家族のために」 https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/disease/pdf/nafld_2023.pdf
- 厚生労働省「ウイルス肝炎について(一般向け)」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/04.html
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「肝臓および胆嚢の臨床検査」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/肝胆道疾患/肝胆道疾患の検査/肝臓および胆嚢の臨床検査
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「急性ウイルス性肝炎の概要」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/肝胆道疾患/肝炎/急性ウイルス性肝炎の概要
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「薬物により引き起こされる肝障害」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/肝胆道疾患/薬物と肝臓/薬物により引き起こされる肝障害
- MSDマニュアル家庭版「急性ウイルス性肝炎の概要」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/肝臓と胆嚢の病気/肝炎/急性ウイルス性肝炎の概要
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「劇症肝炎」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/肝胆道疾患/肝炎/劇症肝炎
- 一般社団法人日本臨床検査専門医会「γ-GT、ALP」(ラボ No.537、2023年10月) https://jaclap.org/guests/guests-2505/
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