アミラーゼが高い原因と対処法|膵臓・唾液腺・受診の目安
この記事でわかること
目次
結論から言うと、日本膵臓学会やJCCLSの資料によれば、アミラーゼが基準値(44~132U/L)を超えて高いと言われても、多くは膵臓や唾液腺のちょっとした変化か、治療の要らない「体質」によるものです[2][4]。日本膵臓学会によれば、アミラーゼは膵臓と唾液腺の両方でつくられる消化酵素で、どちらに由来する上昇かによって心配の度合いは大きく変わります[2]。
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ただし、MSDマニュアル家庭版によれば、上腹部から背中に突き抜けるような激しい痛みと嘔吐がある場合は急性膵炎の可能性があり、すぐに医療機関を受診する必要があります[6]。そして日本膵臓学会のガイドラインによれば、そうした激しい腹痛があるのにアミラーゼの数値が正常なこともあるため、「数値が正常だから安心」とは言い切れない点にも注意が必要です[3]。
要点まとめ
- JCCLSの共用基準範囲は多くの施設で44~132U/Lだが、測定法により施設ごとに差がある[4][5]
- 長崎大学病院検査部の資料によると、アミラーゼは唾液腺と膵臓から分泌され、とくに膵臓から分泌されたものはP-アミラーゼと呼ばれ、別の基準範囲(7〜50 IU/L)が設けられている[5]
- 日本呼吸器学会雑誌の症例報告によれば、「マクロアミラーゼ血症」という、値は高いが病的意味のない体質的な状態がある[9]
- MSDマニュアル家庭版によれば、上腹部から背中への激しい痛み+嘔吐は急性膵炎の危険サイン。すぐ受診が必要[6]
- 日本膵臓学会のガイドラインによれば、激しい腹痛があるのにアミラーゼが正常な場合もあるため、症状があれば数値だけで自己判断しない[3]
編集方針:JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会・査読論文と照合して作成。最終確認は人の目。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点)。
アミラーゼとは?膵臓と唾液腺、二つの出どころのしくみ
日本膵臓学会によれば、アミラーゼは、デンプン(炭水化物)を分解する消化酵素で、主に膵臓と唾液腺の2か所でつくられています[2]。一般社団法人日本膵臓学会は、血液検査の膵酵素について「アミラーゼは、デンプンを分解する酵素で、膵臓と唾液腺(だえきせん)でつくられています。アミラーゼを分泌する膵臓や唾液腺に障害が起こって詰まったときは、血液中や尿の中にもアミラーゼがもれ出てきます」と説明しています[2]。つまり、血液検査でアミラーゼが測られているのは、本来は消化管の中に流れていくはずの酵素が、何らかの理由で血液中にあふれ出しているサインだからです。
日本膵臓学会によると、膵臓の内部には「腺房(せんぼう)」と呼ばれる細胞の集まりがあり、ここで消化酵素がつくられます[1]。MSDマニュアル家庭版によると、「アミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなどの消化酵素は、腺房の細胞から分泌されて膵管に流れこみ」、「膵管はファーター膨大部のところで総胆管と合流し、ここから十二指腸へ流れていき」ます[8]。さらに重要な点として、「正常な場合、消化酵素は不活性の状態で分泌され」、「酵素は消化管に到達したときだけ、活性化され」るとも述べています[8]。つまり健康な状態では、アミラーゼは膵管を通って十二指腸に届き、そこで初めて働き始める仕組みになっています。
JCCLSの共用基準範囲を採用する長崎大学病院検査部の資料によれば、もう一方の出どころである唾液腺も、耳の下や顎の下にある腺組織で、食べ物を口の中で消化し始めるためにアミラーゼを分泌します[5]。同資料は、アミラーゼについて「消化酵素のひとつで、唾液腺と膵臓から分泌されます。特に膵臓から分泌されたものをP-アミラーゼと呼びます。唾液腺や膵臓が障害されたり、分泌が妨げられると血液中の濃度が上昇します」と説明しています[5]。同資料は続けて、P-アミラーゼについて「膵炎や耳下腺炎などで増加します」としています[5]。つまり血液中のアミラーゼが高い場合、膵臓側の問題なのか唾液腺側の問題なのかを見分けることが、原因を絞り込む最初の一歩になります。上腹部から背中にかけての痛みが中心であれば膵臓側、耳の下や顎の下の腫れ・痛みが中心であれば唾液腺側の問題である可能性が高くなると考えられますが、症状が乏しいまま数値だけが高いケースも少なくないため、痛みの有無だけで自己判断せず、採血で膵由来のP-アミラーゼの値もあわせて確認してもらうことが確実な方法です[5]。
日本膵臓学会によれば、膵臓は、消化酵素をつくる腺房のほかに、血糖値を調整するホルモンをつくる「ランゲルハンス島」という部分も持つ臓器です[1]。日本膵臓学会は膵臓の働きについて「膵臓は2つの重要な機能を有する臓器です。1つは外分泌機能、もう1つは内分泌機能と呼ばれています」と説明しています。外分泌機能では「腺房(せんぼう)細胞とよばれる多数の細胞」が膵液(消化酵素)をつくり、内分泌機能では「ランゲルハンス(氏)島(膵島)と呼ばれる島状の部分」がインスリンなどのホルモンをつくるとされています[1]。アミラーゼの数値そのものは消化酵素側(外分泌機能)の話であり、血糖値をつくるホルモン側(内分泌機能)とは別の細胞が担当している、という点は、後述する糖尿病との関係を考えるうえでも押さえておきたいポイントです。
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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
アミラーゼの基準値 — 施設によって数字が違う理由
アミラーゼの基準範囲は、日本臨床検査標準協議会(JCCLS)が公表している「共用基準範囲」で44~132U/Lとされています[4]。この共用基準範囲は、日本臨床検査医学会・日本臨床化学会など複数の学会でつくる基準範囲共用化委員会が全国の検査データをもとにまとめたもので、多くの医療機関がこの範囲を採用しています[4]。長崎大学病院検査部の患者向け資料も同じ44~132U/Lを基準範囲として掲載しており、あわせて膵臓由来のP-アミラーゼの基準範囲を7~50IU/Lとしています[5]。
| 検査項目 | 基準範囲の目安 | 単位 | 主な由来 |
|---|---|---|---|
| 血清アミラーゼ(AMY・総アミラーゼ) | 44~132 | U/L | 膵臓+唾液腺(両方を合算した値)[4] |
| 膵型アミラーゼ(P-アミラーゼ) | 7~50 | IU/L | 主に膵臓[5] |
出典:日本臨床検査標準協議会(JCCLS)「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲」2022/10/01版[4]/長崎大学病院検査部「検査結果をより良く理解していただくために」[5]
ここで注意したいのは、JCCLSの共用基準範囲を採用する長崎大学病院検査部の資料も述べている通り、「44~132U/L」という数字はあくまで多くの施設が採用している目安だという点です。JCCLS自身、基準範囲は「その設定や利用において施設ごとに様々な方法が採用されている」とし、施設固有の基準範囲のほか、試薬メーカーの推奨値や外部委託先の値などに基づく設定もあると説明しています[4]。測定に使う試薬や機器によって数値の出方が変わることがあるため、実際に受け取った検査結果の用紙に印字されている基準範囲(その施設の基準値)と照らし合わせることが大切です。数字だけを他院の基準値やインターネットの情報と比べて一喜一憂するのではなく、「自分の結果用紙に書かれている基準範囲との比較」を基本にすることが安全な読み方だと考えられます。
健診などで肝臓の数値(AST・ALTなど)と一緒にアミラーゼが測定されることもあります。肝臓側の数値の読み方について詳しく知りたい場合は、【肝臓の検査】B型肝炎や脂肪肝を早期に見つけるための基礎知識と受診の目安もあわせて確認すると、健診結果の全体像をつかみやすくなります。
なぜ高くなる?膵臓由来と唾液腺由来、主な原因
高アミラーゼ血症の原因は膵臓の病気だけではありません。日本膵臓学会がまとめる急性膵炎診療ガイドラインには「高アミラーゼ血症をきたす疾患」の一覧表が掲載されており、膵疾患・唾液腺疾患・消化管疾患・婦人科疾患・膵以外の腫瘍性病変・その他に分類されています[3]。同ガイドラインは、急性膵炎の診断で血中アミラーゼが問題となる理由について、「膵疾患以外でも異常高値がみられることが多い点である。このため、診断の特異度がしばしば低く報告されている」と述べています[3]。つまりアミラーゼが高いという結果一つだけでは、膵臓の病気だと決めつけることはできません。
「その他」に分類される原因の中には、腎臓の機能低下(腎不全)も含まれています[3]。アミラーゼは通常、腎臓を通って尿中に排泄されていきますが、腎臓の働きが落ちると排泄が滞り、血液中に留まりやすくなると考えられます。マクロアミラーゼ血症で血中アミラーゼが高くなる理由(腎臓から排泄されにくくなる)と似た仕組みですが、原因はまったく別のものです。同ガイドラインが示す「その他」の分類には、アシドーシス(ケトン性・非ケトン性)や妊娠、頭部外傷、一部の薬剤なども挙げられています[3]。ケトン性アシドーシスの代表例が糖尿病性ケトアシドーシスで、この関係については後述します。
| 分類 | 主な原因の例 |
|---|---|
| 膵臓の病気 | 膵炎(急性・慢性)、膵炎の合併症(膵仮性嚢胞・膵膿瘍)、外傷(手術・ERCPを含む)、膵管閉塞、膵腫瘍など[3] |
| 唾液腺の病気 | 感染(流行性耳下腺炎=おたふくかぜなど)、外傷(手術を含む)、放射線照射、導管狭窄など[3] |
| 消化管・婦人科の病気(一部抜粋) | 消化性潰瘍の穿通・穿孔、腸管の穿通・穿孔、虫垂炎、肝疾患、子宮外妊娠の破裂、卵巣嚢胞、骨盤感染など[3] |
| その他(一部抜粋) | マクロアミラーゼ血症、腎不全・腎移植、アシドーシス、妊娠、薬剤性、術後、食思不振(神経性食思不振を含む)など[3] |
出典:日本膵臓学会「急性膵炎診療ガイドライン」高アミラーゼ血症をきたす疾患の一覧より一部抜粋(原表にはこのほか「膵以外の腫瘍性病変」の分類もあります)[3]
この一覧からわかるように、急性膵炎のきっかけとして頻度が高いのは胆石です。MSDマニュアル家庭版は「胆石は急性膵炎症例の原因のうち40~70%を占めています」と述べています[6]。同マニュアルによると、胆石が膵管と胆管の合流部(オッディ括約筋)に詰まって膵液の流れが止まり、それが続くと「酵素が膵臓内に蓄積して、膵臓の細胞を消化し始めてしまい、重度の炎症を引き起こします」と説明されています[6]。胆石にまつわる基礎知識をあわせて知りたい場合は【胆石とパイナップル】民間療法の真実と安全な対処法をやさしく解説も参考になります。もう一つ頻度が高いのは飲酒で、「飲酒は急性膵炎症例の原因のうち25~35%を占めています」とされています[6]。ただし「飲酒の頻度が高い人で急性膵炎を発症する割合は10%未満であり、このことから膵炎を発症するにはさらなる誘因や他の要因が必要であることが示唆されます」とも述べられており、飲酒歴があるだけで即座に膵炎が起きるわけではないと考えられます[6]。
また、膵臓のすぐそばを胆管(肝臓でつくられた胆汁を十二指腸へ運ぶ管)が通っているため、膵臓の病気と胆道(胆管・胆のう)の病気は互いに影響し合うことがあります[2]。日本膵臓学会は「胆汁の通り道である胆管は膵臓の近くを走るため、膵炎や膵がんになると胆管がつまり、ALP、γ‐GTPなどの胆道系酵素やビリルビンの上昇が起こることがあります。このような結果が出たときは、胆道の病気だけでなく膵臓の異常も疑う必要があります」と説明しています[2]。胆管がつまって黄疸が出る仕組みについては閉塞性黄疸(胆汁うっ滞による黄疸)とは?原因・症状・治療と日常生活で気をつけたいポイントで解説しています。腹痛の場所によっては肋骨まわりの痛みと紛らわしいこともあり、【肋骨を押すと痛い】考えられる原因と受診の目安・セルフケアも痛みの場所を整理するのに役立ちます。
アミラーゼだけでなくリパーゼも測ることがある理由
実際の診療では、アミラーゼだけでなく「リパーゼ」という別の膵酵素も一緒に測定されることがあります。MSDマニュアル家庭版によれば、リパーゼも膵臓でつくられる消化酵素で、アミラーゼが炭水化物を分解するのに対して、リパーゼは脂肪を分解する働きを担っています[8]。日本膵臓学会の急性膵炎診療ガイドラインには、膵酵素の種類ごとに感度・特異度を比較した表が掲載されています[3]。
| 膵酵素 | 感度の目安 | 特異度の目安 |
|---|---|---|
| リパーゼ | 82~100% | 82~100% |
| 総アミラーゼ(血中アミラーゼ) | 67~100% | 85~98% |
| 膵アミラーゼ(P-アミラーゼ) | 67~100% | 83~98% |
出典:日本膵臓学会「急性膵炎診療ガイドライン」より一部改変[3]
同ガイドラインは、血中リパーゼの測定が難しい施設について「血中リパーゼの測定が困難な場合は、血中アミラーゼ(膵アミラーゼ)を測定する」ことを推奨度Aの対応として挙げており、あわせて「感度、特異度から血中リパーゼが血中アミラーゼを凌駕するといわれている」とも述べています[3]。つまり、精度という点ではリパーゼの方がやや優れていると考えられている一方、アミラーゼは長年にわたり幅広い医療機関で測定できる実用的な検査として使われ続けてきたと理解できます。健診結果でアミラーゼのみが測定され、リパーゼの記載がないこと自体は珍しいことではありません。
尿中のアミラーゼについても触れておきます。同ガイドラインによると、「尿中アミラーゼは、かつて急性膵炎の診断に高い感度を示すことが報告された」ものの、「現在のところ、血中アミラーゼや他の血中膵酵素と比較検討した結果、尿中アミラーゼに優位性はないと報告されている」とされています[3]。尿への排出量をクレアチニン・クリアランスとの比率で評価する「ACCR(アミラーゼ・クレアチニン・クリアランス比)」という指標も提案されましたが、ガイドラインは「その後の追試によって、ACCRも決して特異度は高いといえず、急性膵炎の診断に対する有用性は限定的とされている」とも述べています[3]。健診結果に尿中アミラーゼの記載があっても、その数値単独で一喜一憂する必要はないと考えられます。
「体質」と言われることがある — マクロアミラーゼ血症とは
健診でアミラーゼが高いと指摘され、詳しく調べても膵臓にも唾液腺にも異常がない場合、「マクロアミラーゼ血症」という状態が見つかることがあります。日本呼吸器学会雑誌に掲載された症例報告によれば、これはアミラーゼが免疫グロブリンなどの大きなタンパク質と結合して巨大な分子になり、腎臓から尿へ排泄されにくくなるために、血液中のアミラーゼ濃度が高いまま留まってしまう状態です[9]。同報告は、「マクロアミラーゼ血症とは,アミラーゼが免疫グロブリンと結合しているため巨大分子となり,腎臓からの排泄が低下するため高アミラーゼ血症を呈する病態である」と説明しています[9]。
頻度についても同じ報告に記載があり、「頻度は,高アミラーゼ血症の0.5〜2.5%で,持続性アミラーゼ血症の約20%に認める」とされています[9]。つまり、原因がはっきりしないままアミラーゼの高い状態が続いている人の一部は、このマクロアミラーゼ血症である可能性があります。同報告はさらに、この状態について「臨床的に病的意義は少ないと考えられてきた」と述べており[9]、多くの場合は治療の対象にはならない良性の体質的な変化だと理解されています。
マクロアミラーゼ血症かどうかを見分ける手がかりの一つが、尿中のアミラーゼの動きです。分子が大きいために腎臓を通過しにくいという性質上、血液中のアミラーゼは高いのに尿中のアミラーゼは正常か低めになる傾向があるとされています。長崎大学病院検査部の資料では、総アミラーゼとは別に膵由来のP-アミラーゼにも独自の基準範囲(7〜50 IU/L)が設けられており、由来を切り分ける手がかりになります[5]。日本膵臓学会は、血液検査で膵酵素が高値を示したときは膵臓の病気の疑いがあるとし、腹部超音波・CT・MRI(MRCP)などの画像検査で膵臓を調べるとしています[2]。ここで大切なのは、「体質だから様子を見ていい」と自己判断するのではなく、まず医師の診察でマクロアミラーゼ血症の可能性を含めて確認してもらうことです。腹痛などの症状が伴わない単独の数値異常であれば、この体質的な原因である可能性も十分に考えられますが、最終的な判断は検査を担当した医師に委ねるべきだと考えられます。
マクロアミラーゼ血症であることがわかった場合、日常生活で特別な制限をする必要は基本的にないとされています。前述の症例報告のように、実際にはマクロアミラーゼ血症とは別の病気(同報告では肺の感染症)で受診した際に、検査の過程でたまたま高アミラーゼ血症が見つかり、詳しく調べた結果としてマクロアミラーゼ血症と判明することもあります[9]。つまりマクロアミラーゼ血症そのものは無症状で経過することが多く、健診の血液検査で偶然発見されるケースが少なくないと考えられます。一度マクロアミラーゼ血症と診断されている場合は、その後の健診でアミラーゼが高く出ても、過去の診断結果を担当医に伝えておくと、同じ検査を繰り返さずに済むことがあります。検査結果の記録は保管しておくとよいでしょう。
糖尿病・下痢・体重減少が気になる方へ
「アミラーゼが高い」と「糖尿病」がどう関係するのか気になっている方もいると思います。日本膵臓学会によれば、まず押さえておきたいのは、血糖値を調整するホルモン(インスリンなど)をつくる細胞と、アミラーゼをつくる細胞は、同じ膵臓の中でも別々の場所にあるという点です[1]。前述の通り、消化酵素は「腺房」、ホルモンは「ランゲルハンス島」でつくられます[1]。そのため、アミラーゼが少し高いというだけで直接「糖尿病になる」ということにはなりません。実際、MSDマニュアル家庭版は膵臓について「膵臓は上腹部にある臓器で、消化液とホルモンのインスリンをつくります」としたうえで、「膵臓のホルモン(特にインスリン)をつくる部分は、急性膵炎に侵されない傾向があります」と述べています[6]。つまり急性膵炎で膵臓に炎症が起きても、多くの場合はインスリンをつくる部分までは傷つかず、急性膵炎そのものが直接の原因で糖尿病になることは多くないと考えられます。
ただし、膵臓全体に炎症が進んで両方の細胞が損傷を受けると、話は変わってきます。日本膵臓学会は「膵臓が悪くなるとインスリンの分泌や作用が低下するため、糖尿病を引き起こし、血糖値が上昇します」と述べたうえで、「新しく糖尿病と診断された場合や持病の糖尿病の状態が急に悪くなった場合は、膵炎や膵がんが発症していることもありますので、医師に相談してください」と呼びかけています[2]。つまり、アミラーゼの数値そのものより、「急に血糖値のコントロールが悪くなった」という変化のほうが、膵臓の病気を疑うきっかけとして重視されていると考えられます。糖尿病の検査を受けるタイミングについては糖尿病検査はいつ受ける?基準数値2024で詳しく解説しています。
逆方向の関係、つまり糖尿病の急性合併症(糖尿病性ケトアシドーシス)のときにアミラーゼが上がることがある、という報告もあります。国内の症例研究では、糖尿病性ケトアシドーシス10回のうち3回で高アミラーゼ血症がみられ、「上昇分のアミラーゼ活性値は3例とも唾液腺型アミラーゼで占められていた」と報告されています[10]。同研究では「上昇したアミラーゼは3日以内に正常に復した」こと、「高アミラーゼ血症の有無と消化器症状、その他の臨床症状との間には関連性を認めなかった」ことも示されています[10]。この報告は限られた症例数によるものであり、すべての糖尿病性ケトアシドーシスに当てはまるとは言い切れませんが、少なくとも「糖尿病の急変時に一時的にアミラーゼが上がることがあり、それは必ずしも膵炎を意味しない」という一つの手がかりにはなると考えられます。
下痢や体重減少が気になる場合は、膵臓の「外分泌機能」が落ちていないかという視点も参考になります。MSDマニュアル家庭版は慢性膵炎について、「食べものの消化が不十分だと吸収がうまくいかず(吸収不良)、異常な悪臭のある脂ぎった便(脂肪便)が大量に出ることがあります」、「食べものの吸収が不十分に終わると、低栄養、ビタミン欠乏症、および体重減少にもつながります」と説明しています[7]。ただしMSDマニュアル家庭版は、慢性膵炎が進んで消化酵素をつくる細胞そのものが壊れてしまうと、「アミラーゼとリパーゼ(膵臓で生産される2種類の酵素)の濃度上昇が示されることがあります」とする一方で、血液検査は「慢性膵炎の診断では急性膵炎の場合ほど有用ではありません」とも述べています[7]。つまり、下痢・脂肪便・体重減少が続いている場合、アミラーゼの数値だけでは慢性膵炎の有無を判断しきれず、便の検査や画像検査など別の検査が必要になると考えられます。さらにMSDマニュアル家庭版は、慢性膵炎が進行すると「インスリンを分泌する膵臓の細胞が破壊されて、徐々に糖尿病に発展することがあります」とも述べており[7]、下痢・体重減少・血糖値の変化が同時に起きている場合は、まとめて医師に伝えることが望ましいと考えられます。
受診の目安 — 今すぐ受診が必要なサイン
次のサインがあるときは、様子を見ずにすぐ医療機関(症状が強い場合は救急)を受診してください。
- 上腹部の重度の腹痛。MSDマニュアル家庭版は「急性膵炎を起こした人のほぼ全員で、上腹部に重度の腹痛が生じます。約50%の人で、この痛みは背中まで突き抜けます」と述べています[6]
- 突き刺すような激しい痛みが数日間続く。同マニュアルは「原因が何であれ、その後は突き刺すような激しい痛みが重度のまま残り、数日間持続することがあります」としています[6]
- 吐き気・嘔吐を伴う。MSDマニュアル家庭版は「ほとんどの場合、吐き気を感じて嘔吐し、ときには、吐くものがなくなっても吐き気が続きます」としています[6]
- 顔色が悪い・脈が速い・呼吸が浅く速い・体温が上昇するなど、全身の具合が悪化しているとき
- 血圧が下がり、立ち上がったときにふらつく・立ちくらみがするとき。MSDマニュアル家庭版は「血圧は通常低く、立ち上がったときに低下する傾向があり、立ちくらみを起こします」と述べています[6]
- 白眼の部分が黄色くなってきたとき(黄疸のサインの可能性)
⚠ アミラーゼの数値が正常でも、上記の症状があれば安心はできません。日本膵臓学会のガイドラインは、血中アミラーゼの感度が下がる要因として「アルコール性急性膵炎では、特に慢性膵炎を背景とする場合、血中アミラーゼが上昇しないことが多い」ことを挙げています[3]。同ガイドラインはまた、「血中アミラーゼは、他の膵酵素に比べて、発症後速やかに低下し、異常高値が持続する期間が短いため、発症から来院までの期間が長いと正常化していることがある」ことも挙げています[3]。MSDマニュアル家庭版も、過去に膵炎の発作を繰り返している場合について「膵臓の大部分が破壊されて酵素を分泌する細胞が少なくなりすぎたために、これらの酵素の濃度は大きくは上昇しないことがあります」と述べています[6]。つまり、激しい腹痛があるのにアミラーゼが基準範囲内だったとしても、それだけで急性膵炎の可能性を否定することはできないと考えられます。症状が強いときは、数値の結果を待たずに受診することが大切です。
受診が遅れると、まれにですが重い合併症につながることもあります。MSDマニュアル家庭版は急性膵炎の主な合併症として「膵仮性嚢胞」「壊死性膵炎」「膵臓の感染症」「臓器不全」の4つを挙げています[6]。同マニュアルによると、重度の急性膵炎で壊死性膵炎が起こると「膵臓の一部が壊死することがあり、体液が腹腔に流れ出し、血液量が減少して大幅な血圧低下を起こし、ショック状態と臓器不全が生じることがあります」とされ、「重症の急性膵炎は生命を脅かします」とも述べられています[6]。こうした重い経過をたどる前に医療機関を受診することが、何より大切だと考えられます。
救急外来を受診した場合、まず問診と腹部の診察が行われ、そのうえで血液検査(アミラーゼ・リパーゼなど)と画像検査(腹部超音波検査やCT検査など)が組み合わせて行われるのが一般的です。MSDマニュアル家庭版によれば「診察では、腹部に圧痛があることや、腹壁の筋肉がときに硬いことが、しばしば判明します」とされ、「単独で急性膵炎の診断を証明できる血液検査はありませんが、特定の検査から急性膵炎が疑われます」ともされています[6]。つまり血液検査の結果だけで即座に診断が確定するわけではなく、症状・診察所見・画像検査を総合して医師が判断する、という点も知っておくと、受診時の説明を理解しやすくなります。
再検査と言われたら — 何科を受診し、どんな検査をする?
健診でアミラーゼの「要再検査」「要精密検査」の判定を受けた場合、多くは消化器内科での再検査が案内されます。症状がなく数値がわずかに基準範囲を超えている程度であれば、緊急性は高くないことが多いですが、医師の診察を受けたうえで方針を決めることが望ましいと考えられます。再検査では、総アミラーゼだけでなく膵由来のP-アミラーゼの値もあわせて見ることで由来を切り分けやすくなります[5]。日本膵臓学会は、膵酵素が高値のときは腹部超音波・CT・MRI(MRCP)などの画像検査で膵臓を評価するとしています[2]。
再検査のタイミングを考えるうえでは、アミラーゼの数値が急性膵炎のときにどう推移するかを知っておくと役立ちます。MSDマニュアル家庭版は、「膵臓で生産される2つの酵素、すなわちアミラーゼとリパーゼの血中濃度は、通常は急性膵炎の発症初日に上昇しますが、その後3~7日で正常レベルに戻ります」と述べています[6]。健診で一度だけ高い数値が出た場合、体調を崩していた時期の一時的な変化だった可能性も考えられますが、自己判断で終わらせず、指示された時期に再検査を受けて数値の変化を確認することが基本です。逆に、何か月も高い状態が続いている「持続性の高アミラーゼ血症」の場合は、一時的な変化ではなく、マクロアミラーゼ血症のような体質的な原因や、慢性的な膵臓・唾液腺の状態を調べる方向で検査が進むことが多いと考えられます。
| 状況 | 受診先・検査の目安 |
|---|---|
| 症状はなく、健診で高値を指摘された | まず内科・消化器内科で再検査(膵由来のP-アミラーゼの値もあわせて確認)[5] |
| 腹痛(特に上腹部から背中)を伴う | 消化器内科。症状が強い場合は救急を受診[6] |
| 顔や耳の下・顎の下が腫れて痛い | 耳鼻咽喉科・口腔外科(唾液腺の病気が疑われる)[5] |
| 再検査で膵由来のP-アミラーゼが高い | 日本膵臓学会は、血液検査で膵酵素が高値のときは腹部超音波・CT・MRI(MRCP)などの画像検査で膵臓を詳しく調べるとしています[2] |
| 血糖値のコントロールが急に悪化した | 内科で膵臓の状態もあわせて相談[2] |
出典:日本膵臓学会「膵臓の検査Q&A(血液検査)」[2]/MSDマニュアル家庭版「急性膵炎」[6]/長崎大学病院検査部資料[5]
診察をスムーズに進めるために、受診前に次の点を整理しておくと役立ちます。
・アミラーゼの数値が高いと言われた日と、その時の数値・基準範囲(検査結果用紙を持参)
・腹痛の有無、ある場合は痛みの場所・強さ・いつから続いているか・背中への広がりの有無
・吐き気・嘔吐・発熱の有無
・お酒を飲む頻度と量、過去に膵炎・胆石と言われたことがあるか
・顔や耳の下・顎の下の腫れの有無
・下痢や便の状態の変化、体重の変化
・糖尿病の診断歴、最近の血糖値コントロールの変化
・現在服用している薬(お薬手帳)
消化器の病気全般について幅広く調べたい場合は、消化器疾患のカテゴリーページもあわせてご覧ください。関連する病気の解説がまとまっています。
今回参照した資料の範囲では、日本人におけるマクロアミラーゼ血症の一般的な有病率や、健診でアミラーゼ高値を指摘された人のうちどのくらいの割合が最終的に治療の必要な病気だったかという国内の統計的なデータは見当たりませんでした。また、糖尿病性ケトアシドーシスとアミラーゼの関係について引用した報告は、10回の発作を対象とした小規模な症例研究であり、より大規模な研究で同じ傾向が確認されているかどうかについては、今回の調査では十分な根拠はまだ確認できていません。数値の解釈は個々の症状や既往歴によって変わるため、実際の判断は担当医にご確認ください。
よくある質問
マクロアミラーゼ血症と言われたら治療が必要ですか?
健診の「要再検査」と「要精密検査」で意味は違いますか?
ストレスでアミラーゼは上がりますか?
体重が減ってきたのも気になります。関係はありますか?
子どものおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)でもアミラーゼは調べますか?
尿検査のアミラーゼも一緒に見た方がいいですか?
妊娠中にアミラーゼが高いと言われました。心配ですか?
薬を飲んでいるとアミラーゼが上がることはありますか?
参考文献
- 一般社団法人日本膵臓学会「膵臓の位置・機能」(膵臓について Q&A) https://www.suizou.org/citizen/qa/qa01-1.htm
- 一般社団法人日本膵臓学会「血液検査」(膵臓の検査 Q&A) https://www.suizou.org/citizen/qa/qa03-1.htm
- 一般社団法人日本膵臓学会「急性膵炎診療ガイドライン2010(第3版)」 https://www.suizou.org/APCGL2010/APCGL2010.pdf
- 日本臨床検査標準協議会(JCCLS)基準範囲共用化委員会編「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲」2022/10/01版 https://www.jccls.org/wp-content/uploads/2022/10/kijyunhani20221031.pdf
- 長崎大学病院検査部「検査結果をより良く理解していただくために」(共用基準範囲採用第4版) https://www.mh.nagasaki-u.ac.jp/kensa/patients/data/pamphlet_4th.pdf
- MSDマニュアル家庭版「急性膵炎」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/03-消化器系の病気/膵炎/急性膵炎
- MSDマニュアル家庭版「慢性膵炎」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/03-消化器系の病気/膵炎/慢性膵炎
- MSDマニュアル家庭版「膵臓」(消化器系の生物学) https://msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/03-消化器系の病気/消化器系の生物学/膵臓
- 日本呼吸器学会雑誌42巻6号(2004年)症例報告「原発性マクロアミラーゼ血症に合併したMycobacterium abscessusによる非結核性抗酸菌症の1症例」 https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/042060519j.pdf
- J-STAGE「糖尿病性ケトアシドーシスにおけるアミラーゼ活性値の推移」糖尿病23巻2号 https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo1958/23/2/23_2_119/_pdf/-char/ja
更新日:2026年7月26日。本記事の内容に誤りや古い情報があると思われる場合は、編集部までお知らせください。
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