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呼吸器疾患 37分で読める 11回

COPDの症状と増悪を防ぐ暮らし方|呼吸器学会ガイドライン

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COPDの症状は、坂道や階段での息切れ、長引く咳・痰から静かに始まります。慢性閉塞性肺疾患は元の状態には戻りませんが、悪化の速さは変えられます。その力が最も強いのが禁煙です[1]。

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日本呼吸器学会によると、40歳以上の約12人に1人、推定530万人以上がCOPDの患者と考えられていますが、実際に医療機関を受診している人は約38.2万人にとどまります[1]。長引く咳や痰、歩くと息が切れるといった症状に心当たりがあれば、年齢や喫煙歴に関わらず、まずは呼吸機能検査(スパイロメトリー)を受けられる医療機関に相談することが最初の一歩です。「もう何十年も吸ってきたから、いまさら禁煙しても遅い」という考え方は、命に関わる誤解です。禁煙は何歳から始めても意味があります。

要点まとめ

  • COPDの症状は坂道や階段での息切れ、長引く咳・痰から始まり、日本では40歳以上の約12人に1人、530万人以上が患者と考えられている[1]。
  • 治療の基本は禁煙。喫煙を続けると呼吸機能の悪化が加速するが、禁煙はどの年齢で始めても寿命を延ばす効果が報告されている[1][7]。
  • 増悪(急な悪化)を1回起こすたびに機能は元の水準まで戻りにくく、増悪をくり返す患者は死亡リスクが有意に上がる[3]。
  • 3学会合同のステートメントによれば、呼吸リハビリテーション・栄養管理・ワクチンは、薬だけでは届かない息切れと生活の質を改善する[5]。
  • 日本医師会等でつくる対策推進会議の資料によれば、安静にしていても息苦しい、唇や爪が紫色になる(チアノーゼ)、意識がもうろうとするときは、様子見をせずすぐに医療機関へ連絡する[10]。

編集方針
JHO編集部がAIツールの支援を受け、日本呼吸器学会・厚生労働省・国立がん研究センター・日本医師会などの公的情報源と照合して作成しました。最終確認は人の目で行っています。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点の公開情報にもとづく)。誤りや古い情報にお気づきの際は、記事末尾の窓口からお知らせください。事実を確認のうえ訂正します。

COPDとは? COPDの症状と、今日できること

日本呼吸器学会によると、COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、タバコの煙を主とする有害物質を長年吸い込むことなどが原因となり、肺の空気の通りが悪くなって、息切れ・咳・たんなどの症状を起こす病気です[1]。日本呼吸器学会は、症状が徐々に悪化するだけでなく、感染などをきっかけに増悪(急な悪化)を起こして緊急の治療や入院が必要になることがあると説明しています[1]。肺気腫(肺が壊れる変化)や慢性気管支炎(気管支の炎症が続く状態)によって空気の通り道が狭くなり、吐き出す息の勢いが落ちていく、というのがCOPDの基本的な仕組みです[1]。

最大の原因は喫煙で、日本呼吸器学会は喫煙者のおよそ15~20%が発症するとされていると述べています[1]。大気汚染や呼吸器感染症、職業上の粉じん曝露なども関与することがあるとされ、タバコを吸ったことがない人でも、周囲の人が吸う副流煙(受動喫煙)を吸うことがCOPDの原因になり得ると考えられています[12]。

COPDの症状としてまず現れやすいのが、歩行時や坂道・階段での息切れです。日本呼吸器学会の木洩れ陽2032プロジェクトの解説では、COPDの呼吸困難は日々の変動があるものの基本的に持続的・進行性で、早期には階段や坂道を上がるときに気づく程度でも、進行すると同年代の人と同じ速さで歩けなくなったり、軽い体動でも息苦しさが出るようになると説明されています[2]。あわせて、長引く咳やたん、風邪をひくと治りにくく繰り返しやすいといった症状も、COPDを疑うポイントとして挙げられています[1][2]。喫煙歴のある40歳以上の成人で、労作時の呼吸困難(息切れ)や慢性の咳・痰がある場合、COPDを疑うべきだと日本呼吸器学会は述べています[2]。

図:JHO編集部が作成

ゆっくり進行する病気のため、自分では気づきにくく、多くの人が診断や治療を受けていないのが現状だと日本呼吸器学会は指摘しています[1]。上の図は、喫煙を続けた場合と、途中で禁煙した場合とで、時間の経過とともに呼吸機能がどう変化していくかを示した概念図です。禁煙が早いほど到達点は高く保たれ、開始が遅くなっても、吸い続けるよりは傾きが緩やかになるという考え方は、環境再生保全機構の解説でも同様に示されています[12]。今日できることは、この症状に心当たりがあれば、呼吸機能検査(スパイロメトリー)を受けられる医療機関を予約することです。2023年の日本におけるCOPDの死亡者数は16,941人と報告されています[1]。日本呼吸器学会は、2032年までにCOPDによる死亡率を減らすことを目標に「木洩れ陽2032」プロジェクトを推進しており、自治体や医療機関と協力して、COPDの早期発見と治療の重要性を広めていると説明しています[1]。この記事で紹介している早期診断・増悪予防の考え方の多くも、このプロジェクトの一環としてまとめられた資料にもとづいています。

見逃されやすいのは、COPDが「風邪をきっかけに顔を出す」ことがある点です。日本呼吸器学会の資料では、上気道炎症状(いわゆる感冒・風邪)で受診した際に、それまで明らかでなかったCOPDの症状が顕在化することがしばしばあるとされ、具体的には喘鳴を訴える、労作時の呼吸困難を訴える・倦怠感が強い、風邪の回復に時間がかかる、風邪症状を繰り返す、といったパターンが挙げられています[2]。「ただの風邪が長引いているだけ」と自己判断せず、こうしたパターンをくり返している場合は、COPDのスクリーニング対象として意識しておくことが勧められます。日本呼吸器学会の同資料は、生活習慣病、特に心血管疾患を持つ人もCOPDのスクリーニング対象になるとしています[2]。

今の血圧・脈拍を確かめる

数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。

身長と体重からBMIも調べる

これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。

COPDの診断基準と重症度 — 気になったら何をするか

COPDの症状に心当たりがあっても、症状だけで確定診断はできません。日本呼吸器学会がまとめた診断の必要条件は、(1)長期の喫煙歴などの曝露因子があること、(2)気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーでFEV1/FVCが70%未満であること、(3)他の気流閉塞を来しうる疾患を除外すること、の3点です[2]。この呼吸機能検査を行わない限り、確定診断には至りません。健診などでこの異常を指摘された場合は、早めにかかりつけ医や呼吸器内科を受診するよう、日本呼吸器学会は勧めています[1]。

重症度のとらえ方の一つとして、日本COPD対策推進会議(日本医師会・日本呼吸器学会・日本呼吸ケア・リハビリテーション学会・結核予防会)の資料では、息切れの程度を目安にした分け方が示されています。

目安 息切れの程度 備考
軽症 坂道や階段のみで息切れがある 治療は息切れの改善を重視する[10]
中等症 平地を100m歩くだけで息切れがある
重症 衣服の着脱や軽度の日常労作も困難である

出典:日本COPD対策推進会議「COPD診療のエッセンス」(日本医師会・日本呼吸器学会・日本呼吸ケア・リハビリテーション学会・結核予防会編)[10]

あわせて、日本呼吸器学会と一般社団法人GOLD日本委員会は、40歳以上(特に50歳以上)で現喫煙・過去喫煙のある人がCOPDの可能性を確認できる問診票「COPD-PS」の活用を勧めています[2]。息切れをほとんどいつも感じる、風邪や肺の感染症のときだけでなく咳をしたときに粘液や痰が出る、といった項目に当てはまる人ほど点数が高くなる仕組みで、日本呼吸器学会によれば、あくまでスクリーニング(ふるい分け)であり、確定診断には呼吸機能検査が必要です[2]。日本呼吸器学会の同資料は、検査では胸部単純X線写真やCTも使われ、特にCTは気腫性病変や気道病変の描出にきわめて有用だとしています[2]。また、血液検査で調べる末梢血の好酸球は、気道の好酸球性炎症を反映する指標となる可能性が示唆されているものの、これだけでCOPDと診断できるものではないとされています[2]。

日本呼吸器学会は、併存症・合併症は診断と同時に、あるいは診断後早期に評価することが望ましいとしています[2]。同学会の資料では、COPD増悪に関連する因子として気管支拡張症・胃食道逆流症(GERD)・嚥下機能低下・後鼻漏や慢性気管支炎の症状、増悪の経過に影響する併存症として骨密度低下・虚血性心疾患、そして予後を悪化させる因子として心不全・心房細動・冠動脈疾患・肺線維症・肺がん・消化性潰瘍・食道がん・膵臓がん・肝硬変・糖尿病性神経障害・不安・貧血が挙げられています[2]。診断がついた時点で「肺だけ診てもらえば十分」と考えず、併存症のチェックまでセットで考えることが勧められます。

増悪(ぞうあく)を防ぐ — 慢性閉塞性肺疾患を悪化させない一番大切な理由

COPDの症状のうち、特に注意が必要なのが増悪です。日本呼吸器学会の定義では、COPDにおける増悪とは、息切れの増加、咳や痰の増加、胸部不快感・違和感の出現あるいは増強などを認め、安定期の治療の変更が必要となる状態のことです。ただし肺炎や心不全、気胸、肺血栓塞栓症など他の病気が先行する場合は除くとされています[3]。日本呼吸器学会の木洩れ陽2032プロジェクトは、COPD増悪は肺機能や身体活動の低下につながり、メンタルヘルスやQOL(生活の質)にも悪影響を及ぼし、将来の増悪リスクを高めるなど、COPD増悪の負のスパイラルがもたらされる可能性があると述べています[3]。つまり、増悪は「その場しのぎで治せば終わり」ではなく、一度起こすと次の増悪が起こりやすくなり、そのたびに呼吸機能が階段状に落ちていくと考えられています。

数字はその重みを裏づけています。日本呼吸器学会の資料では、1年間に増悪を3回以上起こしたCOPD患者は、増悪のない患者に比べて死亡リスクが4.3倍に増加すると報告されています[3]。また、COPD増悪後1〜5日で心筋梗塞のリスクが2.27倍、増悪後6〜10日で心筋梗塞リスクが1.74倍、脳卒中リスクが1.40倍に増加すると報告されています[3]。心血管疾患を併存しているCOPD患者では、日本呼吸器学会の同資料によれば、増悪から30日以内に心血管イベントを起こすリスクは、軽症も含めたあらゆる増悪の後で3.8倍、その中でも入院が必要になるほどの増悪の後ではさらに高く9.9倍に達するとされています[3]。つまり軽い増悪であっても心血管リスクをゼロにはできず、入院が必要なほどの増悪ではリスクがいっそう跳ね上がるということです。日本人のデータをまとめたEXACOS-CV Japanの解析では、中等度または重度のCOPD増悪後30日間における初回の重篤な心血管イベント(死亡を含む)のリスクは有意に増加し、その心血管イベントリスクが増悪前の水準まで戻るのに1年を要したと報告されています[4]。COPDによる心血管イベント増加のしくみには未解明の部分も多いとされていますが、現時点では炎症、低酸素血症、交感神経の緊張、肺の過膨張などが関与していると考えられています[4]。増悪は肺だけの問題ではなく、心臓や血管への負担が1年単位で尾を引くものだということです。

増悪のサインと、そのときにすること

  • 日本呼吸器学会の資料が挙げる増悪の徴候:息切れが急に強くなった、いつもより苦しい[3]
  • 日本医師会等でつくる日本COPD対策推進会議の資料が挙げる徴候:痰の量が増えた、色が変わった(膿性になった)[10]
  • 同資料が挙げる徴候:咳が増えた、風邪のような症状が出てきた[10]
  • 発熱がある

これらのサインに気づいたら、自己判断で吸入薬の回数や強さを変えるのではなく、早めにかかりつけ医・呼吸器内科へ連絡することが基本です。日本医師会等でつくる日本COPD対策推進会議の資料は、増悪では48時間以内の治療開始が望ましいとしています[10]。学会等でつくる同会議の資料はさらに、改善がみられない場合や、酸素飽和度(SpO2)が90%を下回る場合は、専門医への紹介が必要になるとしています[10]。

増悪を防ぐうえで有効とされているのが、感染対策とワクチンです。日本呼吸器学会は、手洗いやうがいを習慣づけ、インフルエンザ・肺炎球菌・新型コロナウイルス・RSウイルスに対するワクチンを受けておくことで、感染による増悪を予防すると説明しています[1]。日本呼吸器学会の木洩れ陽2032プロジェクトの資料でも、増悪予防の非薬物療法として禁煙指導とワクチン接種(肺炎球菌、インフルエンザ)が挙げられています[3]。あわせて、大気汚染や黄砂が多い日、急な気温変化がある日は、外出や屋外での運動を控えめにすることも、無理なく続けられる対策の一つと考えられます。

禁煙 — COPD対策の一丁目一番地

COPDの症状を和らげ、慢性閉塞性肺疾患の進行を遅らせるための対策の中で、最優先とされているのが禁煙です。COPDの治療の目的は、息切れやせきなどの症状を和らげ、病気の進行や増悪を防ぐことにあります。日本呼吸器学会は、喫煙を続けると呼吸機能の悪化が加速してしまうため、禁煙が治療の基本になると明言しています[1]。すでに壊れてしまった肺の組織そのものは元どおりにはなりませんが、その後の悪化のスピードは、禁煙によって確実に変えられます。

「もう歳だから禁煙しても意味がない」という考え方は誤りです。国立がん研究センターがWHOの資料をもとに作成した表では、禁煙する年齢が早いほど寿命の延びは大きいものの、遅くなっても効果があることが示されています。

禁煙した時期 喫煙を続けた人と比べたメリット
30歳頃 寿命が約10年長くなる
40歳頃 寿命が9年長くなる
50歳頃 寿命が6年長くなる
60歳頃 寿命が3年長くなる
生命に関わる疾患の発症後 心臓発作の発症後に禁煙すれば、次の心臓発作が起きる可能性を50%低下させるなど、迅速な効果がある

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「禁煙による健康への効果」(World Health Organization. A Guide for tobacco users to quit; 2014 をもとに作成)[7]

短期的な効果もあります。国立がん研究センターの解説では、禁煙してから1〜9カ月程度で咳や息切れが減り、1年で冠動脈性心疾患のリスクが喫煙者の約半分に低下すると報告されています[7]。35歳未満で禁煙すれば、たばこが原因で亡くなるリスクが下がることも報告されているとされ、禁煙は本人だけでなく、受動喫煙による周囲の人の健康への影響も減らせると説明されています[7]。

日本では、一定の条件を満たせば、禁煙治療を保険診療で受けることができます。国立がん研究センターによると、ニコチン依存症のスクリーニングテストでニコチン依存症と診断されること、35歳以上では喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上であること、直ちに禁煙を希望していること、という要件を満たす必要があります[6]。国立がん研究センターの同資料によれば、低年齢からの喫煙は依存症になりやすく、禁煙による将来の疾病予防の効果が大きいと期待されるため、35歳未満は喫煙本数や喫煙年数に関わらず治療を受けられるとされています[6]。国立がん研究センターの同資料はまた、未成年者や、加熱式たばこを使用している人も、要件を満たせば保険診療で禁煙治療を受けられるとしています[6]。同センターによれば、禁煙治療は12週間が基本で、その間に医師の診察を5回受ける流れだとされ[6]、5回の診察をすべて受けた人は、治療終了時で約75%、治療終了9カ月後でも約50%の人が禁煙に成功していると報告されています[6]。費用の目安は次のとおりです。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

自力での禁煙は、喫煙者の約3分の1が毎年試みているものの、1年以上の禁煙に成功できる人はわずか1〜3%にとどまるという報告もあり、専門的な支援を受けるほうが成功率は高いと考えられます[6]。国立がん研究センターの資料は、たばこ依存症の人が確実に禁煙するためには、禁煙にあたっての問題点の把握とアドバイスを受けることと、禁煙治療薬を使った薬物療法を組み合わせることが効果的だとしています[6]。近年は、通院の負担を減らす工夫も広がっています。同センターの解説では、2回目以降の診療は情報通信機器を用いた遠隔治療(オンライン診療)を選べる場合があり、日常的な診療でかかりつけ医が病歴や健康状態を把握できていれば、初回診療もオンラインで対応できる場合があるとされています[6]。同センターはさらに、デジタル機器を使った禁煙治療用アプリや呼気の一酸化炭素濃度を測るCOチェッカーも、保険診療の一部として使われるようになってきているとしており、通いにくさを理由に禁煙治療をあきらめる必要は薄れてきています[6]。

禁煙は本人の意志の強さだけの問題ではありません。国立がん研究センターは、たばこには依存性があり、禁煙するためには専門的な支援が必要だとしています[6]。「何度も禁煙に失敗している」という経験があっても、それは意志が弱いからではなく、ニコチン依存症という病気の性質だと理解し直すことが、次の一歩につながると考えられます。

禁煙のすすめや、禁煙後に一時的に咳や息苦しさが強く感じられる場合の考え方については、禁煙後の咳と息切れで詳しく解説しています。また、タバコが肺や呼吸器全体に与える影響については喫煙が肺と呼吸器に与える全影響もあわせてご覧ください。

呼吸リハビリテーションでできること

慢性閉塞性肺疾患と診断されると、「肺の機能が戻らないなら、リハビリをしても意味がない」と感じる人もいますが、それは誤解です。日本呼吸ケア・リハビリテーション学会・日本呼吸理学療法学会・日本呼吸器学会の3学会合同ステートメントは、呼吸リハビリテーションとは、呼吸器に関連した病気を持つ患者が、可能な限り疾患の進行を予防あるいは健康状態を回復・維持するため、医療者と協働的なパートナーシップのもとに疾患を自身で管理して自立できるよう生涯にわたり継続して支援していくための個別化された包括的介入であると、同学会ステートメントは定義しています[5]。目的はFEV1(1秒量)のような検査数値を上げることそのものではなく、息切れを軽くし、動ける範囲と生活の質を広げることにあります。

3学会のステートメントによれば、呼吸リハビリテーションのコアとなる構成要素は、運動療法、セルフマネジメント教育、栄養療法、心理社会的サポート、および導入前後・維持期(生活期)の定期的な評価です[5]。同学会ステートメントは、COPDの治療では、気管支拡張薬や酸素療法に運動療法を加えることで、単独の治療よりも呼吸困難の軽減作用と運動持続時間の延長が得られるとしています[5]。効果はCOPDで最も検証が進んでおり、軽症から最重症まで、いずれの病期でも得られると同学会ステートメントは報告しています[5]。

呼吸法の一つが、口すぼめ呼吸です。3学会のステートメントは、動的肺過膨張(息を吐ききれず肺に空気がたまっていく状態)を予防するための呼吸法として口すぼめ呼吸などの指導が行われると述べています[5]。具体的なやり方としては、鼻からゆっくり息を吸い、口をすぼめて(ろうそくの火を消さないように吹き消すイメージで)ゆっくり長く息を吐く、という手順が一般に紹介されています。環境再生保全機構のパンフレットでは、このほか、おなかを使ってゆっくり呼吸する腹式呼吸や、口をすぼめて肩を上げ下げしながらゆっくり呼吸する呼吸体操も、息苦しさをやわらげるのに役立つとされています[12]。同機構は、息切れが強いときほど、体を動かさなくなり、外出を避けがちになりますが、そうすると生活の楽しみが減り、気分も沈みやすくなるため、無理のない範囲で体を動かし続けることが大切だとしています[12]。

呼吸リハビリテーションは、原則としてチーム医療で行われます。医師、看護師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、薬剤師など専門職の協働により、必要に応じて患者を支える家族やボランティアも参加して実施されると3学会は説明しています[5]。3学会の同ステートメントによれば、プログラムの中では、運動療法を効率よく行うために体の状態を整えるコンディショニングと、着替えや入浴といった日常生活動作(ADL)を無理なくこなせるようにするADLトレーニングが並行して行われます[5]。運動療法の詳しいメニューやトレーニングの中止基準は個人差が大きいため、呼吸器内科や呼吸リハビリテーションを行っている医療機関に相談のうえで進めることが望ましいと考えられます。

「増悪で入院した直後にリハビリをする体力なんてない」と思われるかもしれませんが、3学会のステートメントは、COPD急性増悪後の呼吸リハビリテーションについて、運動耐容能、呼吸困難、健康関連QOLおよび再入院リスクに対する効果は確立していると述べています[5]。同学会ステートメントは一方で、急性期の効果としての生存率そのものを検証した報告はまだなく、今後の研究が必要だとしています[5]。増悪で入院した場合こそ、退院後にリハビリへつなげられるかどうかを、担当医と早めに相談しておく価値があります。

構成要素の一つであるセルフマネジメント教育も、単なる「知識の説明」ではありません。3学会のステートメントは、セルフマネジメント教育の目的を、患者が疾患に対する理解を深め、維持期(生活期)および増悪期におけるセルフマネジメントの能力を獲得し、患者と医療者が協働で疾患に取り組む姿勢を向上させることだと、同学会ステートメントは説明しています[5]。「先生に言われたことを守るだけ」ではなく、自分の症状の変化に気づき、増悪の芽を早めに拾って行動できるようになることが目標です。

栄養と体重管理 — やせは危険信号

「やせているほうが体に良さそう」というイメージは、慢性閉塞性肺疾患では必ずしも当てはまりません。環境再生保全機構の解説によると、COPD患者は体重が減ると生命予後が悪い(余命が短くなる)ことが報告されています[9]。環境再生保全機構の同解説は、日本人のCOPD患者にやせ型の人が多い理由として、肺がうまく換気できずに呼吸筋の仕事量が増えること、食事量の低下、胃腸の働きの低下、抑うつ状態、動かないことによる筋肉の萎縮、食事中の呼吸の乱れや誤えんによる食欲低下などを挙げ、さまざまな理由で栄養障害が起きているためだと同機構は説明しています[9]。

厄介なのは、この状態が悪循環をつくりやすいことです。環境再生保全機構は、栄養障害によってやせると呼吸筋や下肢筋の筋力が低下し、筋力が低下すると動くだけで息切れや倦怠感が増えて体を動かしたくなくなり、活動量が低下して家にとじこもりがちになり、さらに食欲が低下する、という「食欲が減る→やせる→息切れがする→動かなくなる→食欲が減る」という悪循環に陥らないようにすることが重要だと同機構は述べています[9]。この悪循環に早いうちから気づくことが、栄養管理の出発点になります。

対策としては、一度にたくさん食べようとせず、エネルギーとたんぱく質をしっかり摂れる食事を、少量ずつ回数を分けて摂ることが基本になると考えられています。環境再生保全機構のパンフレットでは、COPD患者には骨粗しょう症になる人も多いため、牛乳や小魚などカルシウムを多く含む食品や、呼吸に関わる筋力を維持するためのミネラルを意識して摂ることも勧められています[12]。栄養補給だけを単独で行っても効果は限定的で、運動療法とあわせて行うことが望ましいとされており、前章の呼吸リハビリテーションと栄養管理は切り離さずに考える必要があります。

具体的な工夫として、環境再生保全機構は、COPD患者が1日に必要なエネルギー量は安静時エネルギー消費量の約1.5倍と考えられており、健康な人よりも多くのエネルギーや栄養素が必要になるとしています[13]。同機構の実践編によれば、食事を抜いたり簡単にすませたりすると必要量が不足しやすいため、朝・昼・夕の1日3食を規則正しくとることが基本で、1回の食事量が食べられない場合は、食事回数を増やしたり、間食で栄養のあるものを補うことが勧められています[13]。環境再生保全機構の同資料はまた、主食・主菜・副菜をそろえ、たんぱく質・ビタミン・ミネラルをまんべんなくとることに加え、油を使った炒め物や揚げ物はエネルギー量を効率よく増やせる調理法として紹介しています[13]。水分については、痰を出しやすくする一方、食事中にとり過ぎると食事量そのものが減ってしまうため、タイミングを分けるといった工夫も同機構は紹介しています(心不全などで水分制限がある場合は主治医の指示を優先してください)[13]。

在宅酸素療法(HOT)との付き合い方

日本呼吸器学会によると、慢性閉塞性肺疾患が進行して体内の酸素が不足するようになった場合には、自宅で酸素を吸入する在宅酸素療法(HOT)が必要になることがあります[1]。HOTは、決められた時間・流量を守って正しく使えば、日常生活を続けながら安全に行える治療です。ただし、酸素そのものの性質に関わる、絶対に守らなければならない注意点があります。

火気は絶対に近づけない

厚生労働省は、酸素は燃焼を助ける性質が強いガスであるとしたうえで、高濃度の酸素を吸入中にたばこ等の火気を近づけると、チューブや衣服等に引火し、重度の火傷や住宅の火災の原因となると注意を呼びかけています[8]。厚生労働省は、そのうえで、酸素濃縮装置等の使用中は、装置の周囲2m以内には火気を置かないこと、特に酸素吸入中にはたばこを絶対に吸わないことを求めています[8]。

厚生労働省が2026年7月に更新した資料では、酸素濃縮装置等を使用中の患者が、喫煙等が原因と考えられる火災により死亡するなどの事故が繰り返し発生しているとして、平成15年から令和7年5月までに少なくとも死亡97件、重症12件が報告されており、その後も令和8年に入って死亡や重症の事例が続いていると公表されています[8]。厚生労働省の同資料によれば、原因は喫煙のほか漏電やストーブなど複数ありますが、たばこが繰り返し原因として挙げられている点は見過ごせません[8]。すでに禁煙できている人にとっても、在宅酸素療法を始めるタイミングは、家族や訪問してくれる人にもこのルールを共有し直す良い機会になります。

一方で、厚生労働省の同資料は、火気の取扱いに注意し、取扱説明書どおりに正しく使用すれば、酸素が原因でチューブや衣服等が燃えたり火災になることはないので、過度に恐れることなく、医師の指示どおりに酸素を吸入するよう呼びかけています[8]。禁煙とHOTのルールを守れば、旅行や外出も工夫しながら続けられると考えられており、恐れて閉じこもるのではなく、正しい距離感を知ることが大切です。

COPDに合併しやすい病気(併存症)

COPDの症状は呼吸器だけにとどまりません。COPDは肺だけの病気ではありません。日本呼吸器学会と日本心不全学会がまとめた資料は、COPDによる全身への影響として、全身性炎症、フレイル、サルコペニア、栄養障害、心血管疾患、胃食道逆流症(GERD)、骨粗鬆症、不安・抑うつ、糖尿病、貧血などの併存症があり、COPDの気流閉塞の程度にかかわらず、併存症の有無が増悪頻度の増加、身体活動制限、予後の悪化に影響を及ぼす可能性があると述べています[4]。

慢性閉塞性肺疾患と循環器の病気との関わりは特に深いとされています。日本呼吸器学会の資料によれば、喫煙歴のある循環器疾患患者を対象にした多施設観察研究では、循環器疾患患者の27%に気流閉塞が認められたと報告されています[4]。同資料が紹介する北海道コホート研究では、COPD患者の死因は全体で呼吸器疾患(呼吸不全・肺炎等)が40%、肺がんが21%、その他臓器のがんが16%、心血管疾患が11%であったと報告されています[4]。心血管疾患による死因は、気流閉塞が軽度・中等度の、COPDの発症早期の段階から多く認められたとも同資料はしています[4]。

関わりが指摘されている併存症 COPDとの関係
心血管疾患 循環器疾患患者の27%に気流閉塞が認められたとする報告があり、COPD増悪の後は心筋梗塞・脳卒中のリスクが一時的に上昇する[4]
骨粗鬆症 COPDの併存症として増悪頻度や予後に影響しうるとされる[4]
不安・抑うつ 全身性炎症や活動量低下との関連が指摘される併存症の一つ[4]
糖尿病 COPDの全身併存症の一つとして挙げられている[4]

出典:日本呼吸器学会・日本心不全学会「COPDと心血管疾患における診療実践ガイド」[4]

慢性閉塞性肺疾患は心不全との組み合わせも見過ごせません。日本循環器学会・日本心不全学会の2025年改訂版ガイドラインをもとにした資料では、心不全患者にCOPDが合併すると、左室駆出率(LVEF、心臓が血液を送り出す力の指標)の高低にかかわらず予後が悪くなるとされています[4]。同ガイドラインの資料によれば、LVEFが50%を超える、比較的心臓の収縮力が保たれたタイプの心不全(HFpEF)で入院した患者でも、COPDを合併している人はしていない人に比べて、死亡リスクや、死亡または心不全による再入院のリスクが高かったことが示されているとされています[4]。息切れの原因を「COPDのせい」と決めつけず、心臓の状態もあわせて確認してもらうことが、こうしたデータからも裏づけられます。

こうした併存症は、COPDの薬や呼吸リハビリテーションだけではカバーできません。日本医師会等でつくる日本COPD対策推進会議の資料でも、COPDの治療により息切れなどの症状を改善させて運動療法を行いやすくし、糖尿病などのコントロール改善を図るという、双方向の関係が意識されています[10]。COPDと診断されたら、呼吸器内科だけでなく、循環器・骨・こころの状態もあわせて確認してもらうという発想が重要だと考えられます。

睡眠薬・抗うつ薬を処方されるときの注意

見落とされやすいけれど命に関わる注意点があります。日本医師会等でつくる日本COPD対策推進会議の資料は、COPD患者の睡眠障害について、安易な睡眠薬の投与は呼吸抑制を起こし、低酸素血症を悪化させるとしています[10]。COPDでは夜間の息苦しさで眠れなくなる人が少なくありませんが、COPDがあることを伝えずに睡眠薬を処方されると、呼吸がさらに抑えられてしまう危険があります。同会議の学会等がまとめた資料はうつ病の治療についても、呼吸抑制のない薬剤を選ぶことの重要性を挙げています[10]。ここで伝えたいのは、薬をやめることでも、特定の薬を勧めることでもありません。睡眠薬や抗うつ薬を処方される可能性がある診療科(内科・精神科・心療内科・かかりつけ医など)を受診するときは、必ずCOPDがあることを医師に伝えてください、ということです。

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日本と国際(GOLD)の基準を比べる

COPDの診断や管理については、日本呼吸器学会のガイドラインのほかに、世界の専門家組織であるGlobal Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)が毎年報告書を更新しています。両者は別々の組織が別々に作成しているため、細部の推奨は必ずしも同じではありませんが、診断の入り口となる数値の考え方には共通点があります。

項目 日本呼吸器学会(COPDガイドライン第6版) GOLD(2026年版)
診断に必須の検査値 気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーでFEV1/FVCが70%未満であること[2] 気管支拡張薬吸入後のFEV1/FVCが0.7未満であることを、診断を確定するために必須の条件としている[11]
加熱式たばこの扱い 禁煙治療の枠組みで、加熱式たばこ使用者も要件を満たせば保険診療の対象になるとされる[6] 電子たばこ(vaping)については、禁煙補助具としての有効性・安全性を裏づける根拠は現時点で不十分としている[11]

出典:日本呼吸器学会・国立がん研究センター[2][6]/GOLD 2026 Report(goldcopd.org)[11]

診断基準の数値そのものは日本と国際的な基準で同じ考え方が使われていますが、加熱式たばこのように、日本の制度上の扱いと国際的な評価の視点が異なる論点もあります。どちらが正しい・間違っているという話ではなく、制度と科学的評価は別のレイヤーで動いていると理解しておくと、情報に振り回されにくくなります。

禁煙とワクチン接種については、日本呼吸器学会が増悪予防の非薬物療法として禁煙指導とワクチン接種(肺炎球菌、インフルエンザ)を挙げている一方[3]、GOLD 2026の報告書も、喫煙を続けているすべてのCOPD患者にとって禁煙は重要な介入だとしたうえで、インフルエンザワクチンの毎年の接種を、禁忌がない全年齢層に推奨し、COPDのような慢性疾患を持つ人には特に優先すべきだとしています[11]。両者がそれぞれ何を根拠にどこまで踏み込んで推奨しているかは資料によって濃淡があるため、本記事では「同じ」と単純化せず、日本側・国際側それぞれの記載をそのまま紹介する形にしています。

受診の目安 — この症状はすぐ医療機関へ

COPDの症状の中には、自宅で様子を見てよいものと、すぐに医療機関へ連絡すべきものがあります。日本医師会等でつくる日本COPD対策推進会議の資料は、入院での治療を検討すべき状態として、呼吸困難が高度であること、全身状態が不良であること、チアノーゼ(唇や爪が紫色になる)があること、意識障害があること、重篤な併存症があること、日常生活動作(ADL)が不良であること、むくみ(浮腫)があること、在宅酸素療法(HOT)をすでに使っていること、発症が急速であること、介護者がいないこと、酸素飽和度(SpO2)が90%未満であることなど、同会議の学会等がまとめた目安を挙げています[10]。

  • 学会等でつくる同会議の資料が挙げる目安:安静にしていても強い息切れが続く[10]
  • 同資料が挙げる目安:唇や爪が紫色っぽく見える(チアノーゼ)[10]
  • 同資料が挙げる目安:呼びかけへの反応が鈍い、意識がもうろうとする[10]
  • 会話がひとまとまりの文で続けられないほど苦しい
  • 胸の痛みを伴う

これらのサインが一つでもあれば、様子を見ずに医療機関へ連絡するか、状況によっては救急要請を検討してください。日本医師会等でつくる日本COPD対策推進会議の資料では、3日間治療しても改善がみられない場合や、SpO2が90%を下回る場合も、専門医への紹介が必要な目安とされています[10]。逆に、在宅で治療を続けられるかどうかの目安としては、発熱・食欲・睡眠などの症状が改善しているか、SpO2が93%を超えているかが、学会等がまとめた同資料では参考になるとされています[10]。数値だけで機械的に判断せず、「いつもと様子が違う」という家族や本人の感覚も、受診を決める大切な材料になります。

初診に持っていくメモ
息切れ・咳・たんが気になり始めたのはいつ頃からか/喫煙歴(現在の本数・年数、過去の喫煙歴も含む)/現在飲んでいる薬・使っている吸入薬/これまでにかかった肺の病気・入院歴/家族に呼吸器の病気の人がいるか/今の生活で一番困っていること(階段、坂道、家事、外出など)を、受診前にメモしておくと、限られた診察時間の中でも伝え漏れを防げます。日本呼吸器学会の資料も、活動性の制限・欠勤・経済的影響・家庭生活への影響・不安や抑うつなどの評価を、問診の重要なポイントとして挙げています[2]。「息切れのせいで、こういうことができなくなった」という生活面の変化を具体的に伝えることが、症状の重さを正確に共有する近道になります。

本記事は、日本呼吸器学会・厚生労働省・国立がん研究センター・日本医師会・GOLDなど、公的機関や学会が公開している情報をもとにまとめています。呼吸リハビリテーションの具体的な運動メニューや中止基準、栄養補給が必要かどうかの判断は個人差が大きく、今回参照した一般向け資料の範囲では、個々の患者に当てはめた詳細までは記載が見当たりませんでした。加熱式たばこについては、COPD発症リスクに関する長期的な追跡データはまだ限られていると考えられ、「紙巻たばこより安全」といった単純な結論を出すことは避けています。環境再生保全機構のパンフレットは、COPDになりやすい遺伝的な体質があるとしていますが、その素因はまだ特定されていません[12]。日本呼吸器学会の資料によれば、COPDによる心血管イベント増加の詳しいしくみについても、現時点では未知の部分が多いとされており[4]、今後の研究で見方が更新される可能性があります。本記事の数値・分類は、参照した資料が更新されればそれに合わせて見直しますが、公開時点の情報がすべての医療機関・すべての患者に一律に当てはまるとは限りません。個々の症状の解釈や治療方針は、必ず主治医と相談して決めてください。

よくある質問

ここでは、COPDの症状や治療について、実際によく寄せられる疑問にまとめて答えます。

COPDは治りますか
慢性閉塞性肺疾患そのものを元どおりに戻す治療は、現時点では確立されていません。COPDの症状を軽くすることと、病気そのものを治すことは、分けて考える必要があります。日本呼吸器学会によれば、禁煙・薬物療法・呼吸リハビリテーションなどを組み合わせることで、症状を和らげ、増悪を防ぎ、進行のスピードを緩やかにすることは十分に可能だとされています[1]。「治る・治らない」の二択ではなく、「悪化のスピードをどれだけ緩やかにできるか」で考えることが実情に近いと考えられます。
COPDかもしれないと思ったら何科を受診すればいいですか
COPDの症状に心当たりがある場合、まずは呼吸器内科の受診が基本です。かかりつけ医がいる場合は、そこで相談したうえで、呼吸機能検査(スパイロメトリー)ができる医療機関を紹介してもらう流れでも構いません。日本医師会等でつくる日本COPD対策推進会議の資料では、スパイロメトリーが実施できる場合は、原則としてかかりつけ医が診断と治療を行うとされています[10]。
COPDと診断されても運動していいですか
はい、多くの場合はむしろ勧められています。3学会合同ステートメント(日本呼吸ケア・リハビリテーション学会等)によれば、運動療法は呼吸リハビリテーションの中心的な構成要素の一つで、気管支拡張薬や酸素療法に運動療法を加えることで、呼吸困難の軽減や運動持続時間の延長が得られるとされています[5]。ただし、どの程度の強さ・頻度が適切かは病状によって異なるため、自己判断で始める前に、呼吸器内科や呼吸リハビリテーションを行っている医療機関に相談することをおすすめします。
家族はCOPDの患者に何ができますか
最も大きな支援は、本人が禁煙を続けられるよう環境を整えることです。家庭内での喫煙をやめる、受動喫煙の機会を減らすことに加えて、在宅酸素療法を使っている場合は、厚生労働省が求めるとおり、装置の周囲2m以内に火気を置かない・たばこを吸わないというルールを家族全員で共有することが欠かせません[8]。増悪のサイン(息切れの急な悪化、痰の変化、発熱など)を一緒に把握しておき、様子見せず早めに受診を促すことも重要な役割です。3学会のステートメントによれば、呼吸リハビリテーションは、必要に応じて家族やボランティアも参加して行われるとされており[5]、通院や運動の付き添い、食事の準備を通じて、栄養と体重管理をサポートすることも家族にできる具体的な支援の一つです。
加熱式たばこならCOPDになりませんか
「加熱式なら安全」と言い切れる根拠は、現時点では十分ではないと考えられます。国立がん研究センターの資料によれば、禁煙治療の枠組みでは、加熱式たばこの使用者も紙巻たばこと同様に、要件を満たせば保険診療で禁煙治療を受けられるとされており[6]、これは加熱式たばこも依存性や健康影響の観点で紙巻たばこに準じて扱われていることを示していると考えられます。GOLD 2026の報告書も、電子たばこの禁煙補助具としての有効性・安全性を裏づける根拠は現時点で不十分だとしています[11]。
禁煙は何歳からでも意味がありますか
はい。禁煙する年齢が早いほど効果は大きいとされていますが、国立がん研究センターの資料では、60歳頃に禁煙した場合でも、喫煙を続けた人と比べて寿命が3年長くなるという報告が紹介されています[7]。心臓発作を起こした後に禁煙した場合でも、次の発作のリスクを下げる迅速な効果があるとされ、「もう遅い」というタイミングはないと考えられます[7]。
在宅酸素療法(HOT)になったら外出できませんか
携帯用の酸素ボンベや小型の機器を使えば、外出自体は可能です。ただし、厚生労働省が呼びかけるとおり、火気の取扱いには常に注意が必要で、酸素濃縮装置等の周囲2m以内に火気を置かない、酸素吸入中はたばこを絶対に吸わないというルールは、外出先でも変わりません[8]。旅行や外出の可否、必要な準備については、主治医や機器の販売店に事前に相談することをおすすめします。
COPDと喘息はどう違いますか
どちらも息が苦しくなる病気ですが、日本医師会等でつくる日本COPD対策推進会議の資料によれば、喘息は発作的で症状の変動が大きいのに対し、COPDは進行性・持続性であることが多いとされています[10]。同資料は、両者の合併は50%以上という報告があり、合併すると増悪をくり返して治療が難しくなることが多いとも指摘しています[10]。喘鳴(ぜんめい、ゼイゼイという呼吸音)が気になる場合は、大人の喘鳴(ぜんめい)完全ガイドもあわせてご覧ください。
呼吸リハビリテーションはどこで、いつから始められますか
呼吸器内科や、呼吸リハビリテーションを実施している病院・クリニックで相談できます。3学会のステートメントでは、効果は軽症から最重症までいずれの病期でも得られるとされており[5]、症状が軽いうちに始めても遅すぎることはありません。同学会ステートメントによれば、COPD急性増悪で入院した場合も、入院中の早い段階から呼吸リハビリテーションを導入し、退院後の維持期まで継続することが望ましいとされています[5]。まずは主治医に「呼吸リハビリテーションを受けられる施設を紹介してほしい」と伝えるところから始めるとよいでしょう。
COPDの治療でネブライザーは必要ですか
ネブライザーは、霧状にした薬を直接気道に届ける吸入方法の一つで、COPDの治療で使われることがありますが、必ず全員に必要というわけではありません。使い方や保険適用の考え方については、ネブライザー治療のすべてで詳しく解説しています。自己判断で導入・中止せず、処方している医師に相談してください。
COPDの原因はタバコだけですか
最大の原因はタバコの煙ですが、それだけではありません。日本呼吸器学会は、大気汚染や呼吸器感染症、職業上の粉じん曝露などが影響することもあると説明しています[1]。タバコを吸ったことがない人でも、周囲の人が吸う副流煙(受動喫煙)を吸うことがCOPDの原因になり得ると考えられています[12]。息切れ(呼吸困難)そのものの原因は多岐にわたるため、息切れ(呼吸困難)の全貌もあわせてご覧ください。

参考文献

  1. 一般社団法人日本呼吸器学会「B-01 慢性閉塞性肺疾患(COPD)」市民のための医療コラム 呼吸器の病気 https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/b/b-01.html
  2. 一般社団法人日本呼吸器学会 閉塞性肺疾患学術部会木洩れ陽2032WG編「COPD早期診断の実践」2024年4月作成 https://www.jrs.or.jp/comore-by2032/file/STEP2_COPDshindan.pdf
  3. 一般社団法人日本呼吸器学会 閉塞性肺疾患学術部会木洩れ陽2032WG編「COPD増悪予防と管理の実践」2024年4月作成 https://www.jrs.or.jp/comore-by2032/file/STEP2_COPDyoubou.pdf
  4. 一般社団法人日本呼吸器学会 閉塞性肺疾患学術部会木洩れ陽WG企画作成/日本心不全学会作成協力「COPDと心血管疾患における診療実践ガイド」2025年8月作成 https://www.jrs.or.jp/comore-by2032/file/copd_guide.pdf
  5. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会/日本呼吸理学療法学会/日本呼吸器学会「呼吸リハビリテーションに関するステートメント」2018年 https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/file/rehabilitation_statement2018_v2.pdf
  6. 国立がん研究センター がん情報サービス「禁煙治療」 https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/smoking/tobacco05.html
  7. 国立がん研究センター がん情報サービス「禁煙による健康への効果」 https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/smoking/tobacco07.html
  8. 厚生労働省「在宅酸素療法における火気の取扱いについて」(令和8年7月7日更新) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000003m15_1.html
  9. 独立行政法人環境再生保全機構「COPDを知る」栄養療法【知識編】栄養療法が大切な理由 https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/nutrition/01.html
  10. 日本COPD対策推進会議(日本医師会・日本呼吸器学会・日本呼吸ケア・リハビリテーション学会・結核予防会編)「COPD診療のエッセンス」 https://www.med.or.jp/dl-med/nosmoke/copd_essence.pdf
  11. Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease「GOLD 2026 Report」 https://goldcopd.org/wp-content/uploads/2026/01/GOLD-REPORT-2026-v1.3-8Dec2025_WMV2.pdf
  12. 独立行政法人環境再生保全機構「ご存じですか?肺の生活習慣病 慢性閉塞性肺疾患~COPD~」 https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/01/pdf/dp013.pdf
  13. 独立行政法人環境再生保全機構「COPDを知る」栄養療法【実践編】食事を見直す https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/nutrition/03.html

更新日:2026年7月25日。本記事の内容に誤りや古い情報を見つけた場合は、記事冒頭の編集方針に記載の窓口までお知らせください。事実を確認のうえ訂正いたします。

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Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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