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血液疾患 33分で読める 6回

G6PD欠損症とは?溶血性貧血の原因と誘因・受診の目安

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結論:G6PD欠損症とは

G6PD欠損症は赤血球の酵素が生まれつき少ない体質で、ふだんは無症状のまま気づかれないことが多いものの、特定の薬・そら豆・感染症などが引き金になると数日以内に貧血と黄疸を伴う「溶血発作」を起こすことがある(小児慢性特定疾病情報センター)[1]。

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X染色体上の遺伝子変異が原因で、日本人での頻度は約0.1%と国際的にはかなり低いとされる一方(同センターの資料)[1]、地中海沿岸・アフリカ・東南アジアの出身者では頻度が高いことが知られている(NIH MedlinePlus Genetics)[5]。尿の色が急に濃くなる、白目や皮膚が黄色くなる、強いだるさが出た場合は、自己判断で様子を見ず速やかに医療機関を受診することが勧められている。

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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。

要点まとめ

  • G6PD欠損症はX連鎖性の遺伝性疾患で、発症のほとんどは男性である(センターの疾患概要)[1]。
  • 日本人の頻度は約0.1%とされ、地中海沿岸・アフリカ・東南アジアより低い(センターの資料)[1]。
  • 引き金は薬剤(抗マラリア薬・サルファ剤など)・そら豆・感染症・手術など(小児慢性特定疾病情報センター)[1]。
  • 症状は貧血・黄疸・濃色尿。急性溶血発作は数時間〜数日で進行することがある(NIHの資料)[5]。
  • 尿の色の急な変化や強い倦怠感が出たら、様子見をせず受診の目安として扱う。

編集方針: JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会・査読論文と照合して作成。最終確認は人の目。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点)。

受診前セルフチェック — 該当するものにチェックを入れて医師に伝える

  • □ 尿の色が急に濃い茶色・コーラ色になった
  • □ 白目や皮膚が黄色くなってきた
  • □ ここ数日以内に新しく薬(市販薬・漢方・サプリを含む)を使い始めた
  • □ ここ数日以内にそら豆を含む食品を食べた
  • □ 発熱・感染症にかかっている、またはかかった直後である
  • □ 血縁者にG6PD欠損症、または原因不明の貧血・黄疸の既往がある
  • □ 海外(地中海沿岸・アフリカ・中東・東南アジアなど)にルーツがある、または渡航予定がある

G6PD欠損症とは?溶血が起きる仕組み

G6PD欠損症(グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠乏症)は、赤血球酵素異常の中でもっとも頻度が高い疾患とされ、世界で4億人以上がG6PD遺伝子異常を有すると推定されている(同センターの資料)[1]。米国立衛生研究所(NIH)が運営するMedlinePlus Geneticsでも、この病気は赤血球に酸素を運ぶ働きに関わる遺伝性の病気であると説明されている[5]。

原因となるG6PD遺伝子はX染色体上にあり、X連鎖性劣性遺伝の形式をとるため、発症するのはほとんどがX染色体を1本しか持たない男性(ヘミ接合体)である(センターの疾患概要)[1]。米国立衛生研究所(NIH)のMedlinePlus Geneticsも、X染色体上の変異遺伝子が原因となる病気はX連鎖性と呼ばれ、男女で細胞1個あたりのX染色体の本数が異なることが発症のしかたに影響すると説明している[5]。女性は通常X染色体を2本持つため症状の出ない保因者にとどまることが多いが、小児慢性特定疾病情報センターの資料では、保因者女性でもG6PD活性にはばらつきがあり、約10%は女性でも発症例があると報告されている[1]。

赤血球の中でG6PDという酵素は、酸化ストレスから細胞を守るNADPHという物質を作る回路(ペントースリン酸経路)の要になっている。この酵素が生まれつき少ないと、赤血球が酸化ストレスにさらされたときにヘモグロビンが変性してHeinz小体という塊を作り、それを脾臓などの網内系が異物とみなして壊してしまう――これが溶血の仕組みであると、小児慢性特定疾病情報センターの疾患概要は説明している[1]。

同センターの資料によれば、これまでに17種類の酵素異常型が遺伝子レベルで原因解明されており、その多くはミスセンス変異だが、ナンセンス変異・塩基の欠失・塩基の挿入・異常なスプライシングによるものもあるとされる[1]。通常とは一次構造の異なる変異酵素が作られ、酵素活性が低下したり酵素分子が不安定になったりすることで赤血球の代謝が障害され、結果として溶血が起こると説明されている(センターの資料)[1]。どの変異型を持つかによって、ふだんの酵素活性の残り具合や、誘因に触れたときにどれくらい溶血が起こりやすいかが変わってくるとされる(小児慢性特定疾病情報センター)[1]。

年齢や体格、遺伝的な素因によって、同じ薬を使ったときの代謝のされ方にも個人差があるとされる(同センターの資料)[1]。そのため「以前は同じ薬を使っても平気だった」という経験があっても、体調や感染症の有無、薬の量によっては次回同じ結果になるとは限らない。

図:JHO編集部が作成

ふだんは赤血球の寿命がわずかに短い程度で無症状のことが多いが、酸化ストレスが強くかかる場面――薬剤の服用、感染症、手術、そら豆の摂取など――が重なると、短期間に大量の赤血球が壊れる急性溶血発作(hemolytic crisis)を起こすことがあると報告されている[1]。まれに、ヒトパルボウイルスB19感染などをきっかけに骨髄での赤血球産生自体が止まる無形成発作(aplastic crisis)を合併することもあるとされる[1]。慢性溶血や重症の新生児黄疸を示す例もあるが、一般的には酸化的ストレスによる急性溶血発作のほうが特徴的だと説明されている(センターの疾患概要)[1]。

重症度の分類 — WHOによる遺伝子変異の分類

G6PD欠損症は原因となる遺伝子変異によって、赤血球の酵素活性がどの程度残っているかが異なり、それに応じて溶血の起こりやすさも変わるとされる。世界保健機関(WHO)は1985年に策定した分類を長年用いてきたが、2022年に開催された技術協議の報告書では、変異型を活性の中央値に応じてA・B・C・Uの4区分に整理し直す改訂案が示されている[8]。

WHO分類(2022年改訂案) 酵素活性の中央値 溶血の特徴
クラスA 正常の20%未満 慢性の非球状赤血球性溶血性貧血(CNSHA)[8]
クラスB 正常の45%未満 薬剤・そら豆・感染などを引き金とする急性溶血[8]
クラスC 正常の60〜150% 溶血なし[8]
クラスU 不定 臨床的な意義が確定していない変異[8]

出典:世界保健機関(WHO)マラリア政策諮問グループ技術協議報告書「Technical consultation to review the classification of glucose-6-phosphate dehydrogenase (G6PD)」(2022年)[8]

同報告書は、この分類はあくまで遺伝子変異そのものを分類するためのものであり、個々の患者の重症度を直接分類する目的では使うべきではないと注意を促している[8]。また、活性が正常の45〜60%にあたる変異はこれまで報告されておらず、その範囲に該当する新しい変異が見つかった場合は、急性溶血を起こすと確認されるまでクラスUとして扱うとされている[8]。日本国内の診療で使われる分類や表現が、この2022年の改訂とどこまで統一されているかは、今回参照した資料の範囲では確認できなかった。

診断基準と検査 — 酵素活性測定と遺伝子検査

G6PD欠損症の確定診断は、症状や血液検査の所見から非球状溶血性貧血であることを確認したうえで、赤血球のG6PD酵素活性の低下をもって行うと、小児慢性特定疾病情報センターの診断の手引きに定められている[2]。あわせてG6PD遺伝子変異の同定という遺伝学的検査も診断項目に含まれている[2]。

検査・所見 内容 位置づけ
臨床症状 貧血/新生児黄疸の遷延・増強/溶血発作(薬剤や感染に誘発され貧血と黄疸が出現) 診断の手掛かりとなる3所見[2]
直接抗グロブリン試験 陰性であることを確認 自己免疫性溶血性貧血との鑑別[2]
浸透圧脆弱性試験 陰性であることを確認 遺伝性球状赤血球症との鑑別[2]
赤血球G6PD活性 低下を確認 確定診断の柱[2]
G6PD遺伝子変異の同定 変異の特定 確定診断・重症度評価の補助[2]

出典:小児慢性特定疾病情報センター「グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠乏症 診断の手引き」(文責:日本小児血液・がん学会、2014年10月6日更新)[2]

なお同センターの資料では、医療費助成の対象となる重症度の目安として、検査で血中ヘモグロビン値10.0g/dL以下、または赤血球数350万/μL以下の状態が、断続的な場合を含めておおむね6か月以上持続する場合という基準が示されている[2]。これは小児慢性特定疾病としての医療費助成の対象基準であり、すべての患者に一律に当てはまる重症度の分類ではない点に注意が必要である。

診断のうえで注意したいのは、急性溶血発作の最中は酵素活性が見かけ上正常に近い値まで戻ってしまうことがあるとされる点である。若い赤血球(網赤血球)はもともとG6PD活性が高いため、発作直後に活性の低い古い赤血球が壊れ尽くしたあとの血液を測定すると、実際より軽症に見える場合があるとされる(小児慢性特定疾病情報センターの診断の手引き)[2]。そのため、症状が落ち着いてから期間をおいて再検査を行う、あるいは遺伝子検査を組み合わせるといった判断が必要になることがある。

受診時に医師へ伝えると役立つ情報:①いつから貧血・黄疸・尿の色の変化に気づいたか ②直近で新しく使い始めた薬(市販薬・漢方を含む) ③そら豆を含む食品を食べたか ④血縁者にG6PD欠損症や原因不明の貧血・黄疸の既往がある人がいるか ⑤過去の健診での貧血指摘の有無 ⑥出身地・両親の出身地(頻度の高い地域かどうかの参考情報として)。

溶血発作の引き金 — 薬剤・そら豆・感染症

小児慢性特定疾病情報センターの資料によれば、溶血発作の誘因としては薬剤、感染、手術、そら豆などが知られている[1]。薬剤では抗マラリア薬、サルファ剤、スルホン剤、解熱鎮痛薬などが報告されており、近年ではインターフェロンによる発症例も増えているため注意が必要だとされる[1]。米国立衛生研究所(NIH)のMedlinePlus Geneticsも、溶血性貧血は細菌・ウイルス感染や一部の抗生物質・抗マラリア薬によって最も多く引き起こされ、そら豆を食べたりそら豆植物の花粉を吸い込んだりすることでも起こりうる(ファビズムと呼ばれる反応)と説明している[5]。

⛔ ここで挙げる薬剤名は、日本国内で承認されている医薬品の添付文書またはガイドで実際にG6PD欠乏患者への注意・禁忌が明記されているものに限っている。それ以外にも注意が必要な薬剤がある可能性があるため、リストは「これだけ避ければ安全」という完全な一覧ではない。

薬剤・分類 添付文書等での記載 出典
プリマキン(抗マラリア薬) 「グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症の患者に本剤を投与後、重篤な溶血性貧血が認められている」として警告欄・禁忌欄に明記 PMDA添付文書[3]
スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合剤(サルファ剤系抗菌薬) 患者向医薬品ガイドの「使ってはいけない人」欄に「グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G-6-PD)が欠乏している人」と明記 PMDA患者向医薬品ガイド[4]
そら豆(ファビズム) そら豆の摂取や花粉の吸入により溶血性貧血が誘発される反応として説明 NIH MedlinePlus Genetics[5]
感染症・手術・高熱 酸化ストレスの一因として、薬剤と並ぶ溶血発作の誘因に挙げられている 小児慢性特定疾病情報センター[1]

出典:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)公表の添付文書・患者向医薬品ガイド、小児慢性特定疾病情報センター、米国立衛生研究所(NIH)MedlinePlus Genetics[3][4][5]

プリマキンの添付文書には、G6PD欠損症の有病率が高い地域として、アフリカ、南ヨーロッパ、地中海地域、中東、東南アジア、およびオセアニアが挙げられており、これらの地域の出身者は投与前にとくに慎重な確認が必要だとされている(PMDA添付文書)[3]。また同添付文書は、国内ではG6PD検査用の診断薬が未承認であるため、実地医療の現場でG6PD欠損症の有無や程度を検査で確認することが難しいという事情にもふれ、そのぶん家族歴を含めた問診が重要になると説明している(PMDAの審査資料)[3]。

⚠ 自己判断で「これくらいなら大丈夫」と決めないでほしいこと

  • 他のサルファ剤系抗菌薬や抗マラリア薬など、ここに挙げていない薬剤にもG6PD欠乏患者への注意書きがある場合がある。新しい薬を処方・購入する際は、必ずG6PD欠損症であることを医師・薬剤師に伝える(PMDA)[3]。
  • 「少量なら平気」という体験談があっても、酸化ストレスへの反応には個人差・体調差があり、次も同じとは限らない(センターの資料)[1]。
  • 市販の解熱鎮痛薬・かぜ薬にも成分によって注意が必要な場合があるとされ、薬局で購入する際も体質を伝えることが勧められる(小児慢性特定疾病情報センター)[1]。

症状と受診の目安 — 黄疸・濃色尿・貧血

臨床症状としては、貧血の程度は異常酵素の性質により様々であるが、一般に貧血・黄疸は乳幼児期・小児期に気づかれ、その程度は遺伝性球状赤血球症より重いことが多いと、小児慢性特定疾病情報センターの疾患概要に記載されている[1]。米国立衛生研究所(NIH)のMedlinePlus Geneticsも、この種の溶血性貧血が皮膚や白目の黄変(黄疸)、濃い色の尿、疲労感、息切れ、頻脈につながると説明している[5]。

G6PD欠乏患者への使用に注意が必要とされるサルファ剤系抗菌薬の患者向医薬品ガイドは、溶血性貧血が起きたときの自覚症状として、「体がだるい、めまい、息切れ、白目が黄色くなる、皮膚が黄色くなる、尿の色が濃くなる」といった症状のいくつかが同じような時期にあらわれることが一般的だとし、こうした場合はただちに医師または薬剤師に相談するよう案内している(PMDA患者向医薬品ガイド)[4]。これはG6PD欠損症そのものの症状というより薬剤の重大な副作用としての説明だが、実際に起こる自覚症状の組み合わせとして、G6PD欠損症による溶血発作の目安にもそのまま当てはまる内容である。

すぐに受診が必要なサイン

  • 尿の色が急に濃い茶色・コーラ色になった(NIH MedlinePlus Genetics)[5]
  • 白目や皮膚が急に黄色くなってきた(黄疸)(NIHの資料)[5]
  • 強いだるさ・顔色の悪さ・動悸や息切れが急に出てきた(NIH MedlinePlus Genetics)[5]
  • 新しく薬を飲み始めた後、または感染症にかかった後にこれらの症状が出た(同センターの資料)[1]
  • 意識がぼんやりする、尿量が急に減った(急性腎不全を示唆する可能性がある)(センターの疾患概要)[1]

治療については、まず溶血発作を引き起こすリスクを避け、急性溶血発作をできる限り予防することが基本とされる(センターの資料)[1]。実際に急性溶血発作を起こした場合は、十分な補液を行って遊離ヘモグロビンの尿中への排泄を促し、急性腎不全に至ることを防ぐ治療が行われると説明されている(小児慢性特定疾病情報センター)[1]。脾臓摘出(脾摘)は溶血発作の予防にはならず、慢性溶血の多くは代償されていて重症貧血に至らないため適応にならないともされている(同センターの資料)[1]。慢性的に溶血がある場合には、代償性の赤血球造血を支えるため葉酸の補充療法が行われることがあると報告されている[1]。重症の急性溶血発作で貧血が急激に進んだ場合には、状態に応じて輸血が検討されることもあるとされるが、その要否は個々の状態によって医師が判断する。

検査・診断にかかる費用については健康保険が適用される場合がある。自己負担の目安は加入する保険制度や年齢、高額療養費制度の利用有無によって変わるため、一律の金額は示さない。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

なお、貧血によるふらつき・立ちくらみそのものは、G6PD欠損症以外の原因(鉄欠乏など)でも起こりうる。とくに学童期・思春期の立ちくらみについては思春期の貧血による立ちくらみ:科学的根拠に基づく原因、見分け方、そして包括的対策の完全ガイドで原因の見分け方を扱っているので、黄疸や尿の色の変化を伴わない場合は、そちらもあわせて参考にできる。

新生児の黄疸とG6PD欠損症

G6PD欠損症は新生児期の黄疸(新生児黄疸)の原因の一つになり得る。小児慢性特定疾病情報センターの診断の手引きでも、「新生児黄疸の遷延・増強」がこの病気を疑う臨床症状の一つとして挙げられている[2]。米国立衛生研究所(NIH)のMedlinePlus Geneticsも、この病気は新生児における軽度から重度の黄疸の重要な原因の一つになると説明している[5]。

新生児期の黄疸への検査・治療の要否は、G6PD欠損症の有無にかかわらず、黄疸の程度や経過を見ながら医療機関が個別に判断するものである。日本国内でも、家族にG6PD欠損症や原因不明の新生児黄疸・貧血の既往がある場合は、出生後の黄疸の経過を通常よりも注意深く観察する判断材料になり得るとされ、里帰り出産や転居などで家族歴の情報が担当医に伝わりにくいケースでは、母子健康手帳や事前の申し出を通じて自分から伝えることが勧められる。乳幼児期の貧血全般については子どもの貧血【2025年最新ガイドライン】原因・症状から食事・治療法まで小児科医が徹底解説で原因別に整理しているので、あわせて確認しておくとよい。

また、2022年のWHO技術協議の報告書は、改訂後のクラスB(活性が正常の45%未満)に該当する変異について、新生児黄疸と、薬剤・そら豆・感染などを引き金とする急性溶血の両方が起こりうると位置づけている[8]。新生児期に黄疸が長引く、あるいは通常より強く出る場合には、この病気も鑑別の一つとして担当医が考慮することがあるとされる。

日本と世界の頻度差 — なぜ地域でこれほど違うのか

小児慢性特定疾病情報センターの疾患概要では、「アフリカ、地中海沿岸、東南アジアでの頻度は高いが、日本人の頻度は約0.1%である」と明記されている[1]。同資料はまた、最近は国際結婚の増加を反映して日本での発症数も増えていると付け加えている[1]。

⛔ 地域ごとの数値は、調査年・調査対象・単位(人口10万対の年齢調整有病率か、遺伝子頻度かなど)が異なる別々の研究から引用しており、単純に一つの範囲へまとめることはできない。以下の表では、どの数値がどの研究・どの年のものかを個別に示す。

地域 指標 出典・年
日本 頻度 約0.1% 小児慢性特定疾病情報センター(2014年更新の資料に基づく記載)[1]
東アジア 年齢調整有病率 人口10万対4,629.34(約4.6%相当) 2021年の世界疾病負担(GBD)研究[6]
東南アジア 年齢調整有病率 人口10万対4,435.14(約4.4%相当) 2021年のGBD研究[6]
北アフリカ・中東 年齢調整有病率 人口10万対5,979.38(約6.0%相当) 2021年のGBD研究[6]
サハラ以南アフリカ中部 年齢調整有病率 人口10万対12,883.85(約12.9%相当) 2021年のGBD研究[6]
西欧 年齢調整有病率 人口10万対2,570.31(約2.6%相当) 2021年のGBD研究[6]
サウジアラビア東部州 遺伝子頻度の中央値予測 最大32.5% Howesらによる2012年の国際研究(PLoS Medicine誌)[7]

出典:小児慢性特定疾病情報センター[1]、2021年の世界疾病負担(GBD)研究[6]、Howesらの2012年の国際研究[7]/単位・調査年が異なるため地域間の数値は目安の比較として参照

この分布は歴史的にマラリアが流行してきた地域と重なるとされ、G6PD欠損症を持つ赤血球ではマラリア原虫が増殖しにくく、感染症への抵抗力として選択されてきたという考え方が研究で示されている[7]。米国立衛生研究所(NIH)のMedlinePlus Geneticsも、この病気はアフリカ・アジア・地中海・中東の一部でとくに頻度が高いと説明している[5]。プリマキンのPMDA添付文書も同様に、有病率が高い地域としてアフリカ、南ヨーロッパ、地中海地域、中東、東南アジア、オセアニアを挙げている[3]。日本のように罹患率が低い地域では、医療者側の意識も相対的に低くなりやすく、典型的な誘因(薬剤・そら豆など)に触れる機会があっても診断が遅れる可能性があるとされる。

日本と海外のガイドライン比較 — なぜ「軽症でも一律禁忌」なのか

抗マラリア薬プリマキンをめぐっては、G6PD欠損症の患者への対応が国・地域によって異なることが、PMDAの審査資料の中でも紹介されている。世界保健機関(WHO)の2010年のガイドラインは、軽度から中等度のG6PD欠損症のマラリア患者に対して、プリマキンを0.75mg/kg/週で8週間投与することを推奨しているとされる[3]。米国のCDCガイドライン(2013年)も、境界域のG6PD欠損症の患者を対象に、プリマキン45mg/週を8週間経口投与する用法を推奨しているとされる[3]。

ガイドライン・国 G6PD欠損症患者への対応 出典
WHOガイドライン(2010年) 軽度〜中等度のG6PD欠損症の患者に、プリマキン0.75mg/kg/週を8週間投与するよう推奨 PMDA審査報告書が引用[3]
CDCガイドライン(米国、2013年) 境界域のG6PD欠損症の患者に、プリマキン45mg/週を8週間経口投与するよう推奨 PMDA審査報告書が引用[3]
日本(PMDA承認時の判断) 国内ではG6PD検査用の診断薬が未承認で重症度の診断が実地医療では不可能なため、重症度を問わず全てのG6PD欠損症患者への投与を禁忌に設定 PMDA添付文書・審査報告書[3]

出典:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「プリマキン錠15mg「サノフィ」」添付文書・審査関連資料[3]

つまり海外の一部ガイドラインは、G6PD活性を検査で確認したうえで軽度〜中等度の患者に慎重投与する道を残しているのに対し、日本ではG6PD欠損症の重症度を検査で見分けるための診断薬自体が承認されていないという事情から、重症度を問わず一律に禁忌とする、より安全側に寄せた判断がとられているとされる[3]。この違いは、どちらの基準が優れているかという話ではなく、国内の検査体制の有無によって現実的にとれる対応が変わるという例として理解しておくとよい。海外で処方を受けた経験がある人が、日本の医療機関で「同じ薬は使えない」と言われて戸惑うことがあるのは、こうした背景によるところが大きい。

子どもへの薬剤投与と年齢をめぐる各国の考え方の違い

抗マラリア薬プリマキンを子どもに使う際の年齢の下限についても、国・ガイドラインによって考え方が分かれていることが、PMDAの審査資料からわかる。WHOガイドライン2010年版は、三日熱マラリアの根治治療のためにプリマキンを4歳未満の小児に投与すべきではないとしているのに対し[3]、WHOガイドライン2015年版では6か月未満の小児への投与を推奨しないという、より緩やかな基準に変わっているとされる[3]。一方でカナダのガイドライン(2009年および2014年)は、G6PD欠損症でない限りはどの年齢の小児にもプリマキンを投与し得るとしているとされ[3]、CDCガイドライン(2013年)およびフランスの寄生虫症治療の手引き(HCSP 2008)は、小児にはプリマキン30mg/日(または0.5mg/kg)を超えて投与すべきでないとしているとされる[3]。

PMDAの審査報告書は、こうした国・ガイドライン間での違いを踏まえ、小児への投与の年齢下限は一定でなく、推奨年齢の下限はいまだ確立されていないと整理したうえで、医療上のニーズがあることも考慮し、4歳未満の小児へ投与する場合は溶血に留意して頻回に血液検査を行うことが必要だとの考えを示している[3]。この経緯からもわかるとおり、「子どもだから」「大人だから」という理由だけで一律に安全・危険が決まるわけではなく、G6PD欠損症の有無そのものが年齢以上に重要な判断材料として扱われている(PMDA添付文書・審査資料)[3]。

外国にルーツを持つ方・海外在住・渡航者への注意

プリマキンなど一部の抗マラリア薬は、G6PD欠損症の患者に投与すると重篤な溶血性貧血が生じるおそれがあり、PMDAの添付文書では投与前に家族歴を含めた十分な問診を行うことが明記されている[3]。マラリア流行地域への渡航を予定していて、抗マラリア薬の処方を検討している場合は、G6PD欠損症の既往や家族歴、あるいは頻度の高い地域にルーツがあることを、渡航前の診療の段階で医師に伝えることが重要だとされる(PMDA添付文書)[3]。

日本在住の外国人・国際結婚家庭にとっても関係が深いテーマである。小児慢性特定疾病情報センターが「国際結婚の増加を反映して日本での発症数も増えている」と述べているとおり[1]、両親のどちらかが高頻度地域の出身である場合、子どもがG6PD欠損症を持つ可能性は、日本人だけの家系より相対的に高くなり得る。里帰り出産や転居で医療機関が変わる際は、母子健康手帳や母国での検査結果があれば持参し、担当医に家族歴とあわせて伝えることが望ましい。

また海外では新生児への日常的なG6PD検査を行っている国・地域もあるとされ、日本国内で出産・育児をする場合との検査体制の違いに戸惑う保護者もいる。検査の要否や方法は医療機関により異なるため、疑問があれば産科・小児科の担当医に確認するのが確実である。国内ではG6PD検査用の診断薬自体が未承認であるとPMDAの添付文書にも記載されており[3]、検査体制そのものが国によって異なりうる点は、あらかじめ知っておくとよい情報である。

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妊娠・出産とG6PD欠損症

妊娠中の女性がG6PD欠損症の保因者・患者である場合、通常の妊婦健診に加えて、貧血の評価や使用する薬剤の選択で配慮が必要になることがある。とくに感染症治療や解熱鎮痛の目的で使う薬剤の一部には、小児慢性特定疾病情報センターが挙げるサルファ剤・解熱鎮痛薬などG6PD欠乏患者で注意すべき分類が含まれるため[1]、妊娠中に新しい薬を使う際は、その都度医師・薬剤師に体質を伝えることが勧められる。妊娠中の栄養面での貧血対策全般は健やかな妊娠のための鉄分完全ガイド:食事から最新の医療ケアまでで扱っているが、G6PD欠損症がある場合は鉄剤そのものよりも、感染症治療薬などの選択のほうが注意点として重要になる。

母親自身がG6PD欠損症でなくても、赤ちゃんが欠損症を持って生まれる可能性はある。父親がX染色体を介して娘に変異を伝える経路や、母親が保因者で息子に伝わる経路など、遺伝形式はX連鎖性劣性遺伝の一般的なパターンに従うと説明されている(センターの疾患概要)[1]。家族に原因不明の貧血・黄疸・G6PD欠損症の既往がある場合は、出産予定の医療機関に事前に伝えておくと、生まれた赤ちゃんの黄疸の経過観察がより注意深く行われる可能性がある。

他の遺伝性溶血性貧血との違い

G6PD欠損症は「赤血球が壊れやすい」という点で他の遺伝性溶血性貧血と似ているが、原因となる異常の場所が異なる。小児慢性特定疾病情報センターの診断の手引きでは、G6PD欠損症を診断する過程で浸透圧脆弱性試験が陰性であることを確認し、遺伝性球状赤血球症を除外することが求められている[2]。遺伝性球状赤血球症は赤血球の膜そのものの異常が原因とされるのに対し、G6PD欠損症は赤血球内の酵素(NADPHを作る回路)の異常が原因である点が異なる。もっとも頻度が高い「貧血」全体で見ると鉄欠乏によるものが多く、子どもの鉄欠乏と貧血については子どもの鉄欠乏と貧血:発育への影響と保護者のための包括的ガイドで扱っている。血液検査で貧血の原因を鑑別する意義は、G6PD欠損症と鉄欠乏性貧血のどちらであっても変わらない。

また同手引きでは、自己免疫性溶血性貧血を除外するために直接抗グロブリン試験が陰性であることも診断の条件に含まれている(同診断の手引き)[2]。自己免疫性溶血性貧血は自分の免疫が赤血球を攻撃することで起こる後天的な病気とされ、生まれつきの酵素の量が原因となるG6PD欠損症とは成り立ちが異なる。同じ「貧血・黄疸」という症状であっても、原因によって注意すべき引き金や治療の考え方が変わるため、検査で原因を区別すること自体に意味があるとされる。

なお、サルファ剤系抗菌薬の患者向医薬品ガイドが挙げる重大な副作用の一覧には、G6PD欠損症とは別の原因で起こる再生不良性貧血・巨赤芽球性貧血・メトヘモグロビン血症・血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)・溶血性尿毒症症候群(HUS)なども並んでおり、それぞれ自覚症状が一部重なりつつも異なる背景を持つとされている(同ガイド)[4]。「体がだるい」「息切れがする」といった症状だけでは原因を区別できないことも多く、血液検査による鑑別が必要になる理由のひとつになっている。

日常生活の工夫 — 何をどこまで気をつければよいか

日常生活での注意点は、基本的には「誘因として知られているものに触れる場面で、体質をあらかじめ関係者に伝えておく」ことに集約される。小児慢性特定疾病情報センターが挙げる誘因は薬剤・感染・手術・そら豆であり[1]、これらに該当する場面を具体的に洗い出しておくと実践しやすい。

場面 伝えておくとよい相手 理由
病院・診療所を受診するとき 医師・薬剤師 抗マラリア薬・サルファ剤系抗菌薬などG6PD欠乏患者への注意がある薬剤を避けるため[3][4]
薬局での市販薬購入 薬剤師 解熱鎮痛薬などにも注意が必要な成分が含まれる場合があるとされるため[1]
学校・保育園の給食・行事食 担任・栄養士 そら豆を使った献立がある場合の情報共有のため[1]
海外渡航・マラリア流行地域への出張 渡航前診療の医師 抗マラリア薬の選択に影響するため[3]
手術・大きな処置の予定 執刀医・麻酔科医 手術も溶血発作の誘因の一つとされているため[1]

出典:小児慢性特定疾病情報センター[1]、PMDA添付文書・患者向医薬品ガイド[3][4]

感染症にかかったとき自体を完全に避けることは現実的ではないが、発熱や体調不良が続く場合には、自己判断で市販の解熱鎮痛薬を漫然と使い続けるのではなく、G6PD欠損症であることを伝えたうえで受診し、使ってよい薬を確認するという対応が、誘因を早期に管理する現実的な工夫になる。なお、鉄剤やサプリメントの誤飲による小児の鉄中毒はG6PD欠損症とは別の緊急事態であり、詳しくは小児の鉄中毒:症状・対処法から救急治療まで【医師が解説】で解説している。誤飲による急性の中毒と、体質による溶血発作は原因も対処も異なるため混同しないようにしたい。

医療機関のかかり方 — 何科を受診すればよいか

すでにG6PD欠損症と診断されている場合、日常の体調管理やかかりつけ医の相談先は小児科(子どもの場合)または血液内科・内科が中心になることが多い。小児慢性特定疾病情報センターの資料も、日本小児血液・がん学会が文責を担う疾患情報として整理されている[1]。診断がまだついていない状態で、原因不明の貧血・黄疸・濃色尿がある場合は、まず一般の小児科・内科を受診し、必要に応じて血液内科への紹介を受ける流れになることが多い。

海外渡航前の抗マラリア薬処方を検討している場合は、渡航前診療(トラベルクリニック)や感染症内科など、渡航医学に詳しい医療機関で、G6PD欠損症の既往・家族歴を伝えたうえで薬剤選択を相談することが勧められる(PMDAの審査資料)[3]。妊娠中の場合は産科の担当医と情報を共有し、必要に応じて内科・血液内科と連携してもらう形になることが一般的である。

遺伝相談・家族への説明

G6PD欠損症はX連鎖性劣性遺伝の形式をとるとされ(センターの資料)[1]、家族内で診断がついた場合、同じ母方の血縁にある男性(兄弟・おじ・いとこなど)が同じ変異を持つ可能性を考える手がかりになることがある。ただし、実際に誰が変異を持っているか、どの程度の重症度になるかは、遺伝子検査や酵素活性測定をしてみないと分からないとされる(センターの診断基準)[2]。

家族に説明する際は、「頻度の低い日本ではあまり知られていない体質だが、薬や食品との組み合わせで症状が出ることがある」という形で、誘因を避ける・新しい薬は必ず申告するという2点を具体的に伝えるとわかりやすいとされる。学校や保育園、祖父母など日常的に子どもの世話をする人にも、そら豆を含む給食・行事食がある場合や、発熱時に市販薬を使う場面があることを考えると、体質を共有しておく実益があると考えられる。

よくある質問

G6PD欠損症だと診断されたら、一生薬を制限されますか?
制限が必要なのは、G6PD欠乏患者への注意・禁忌がPMDAの添付文書などで明記されている一部の薬剤(抗マラリア薬の一部、サルファ剤系抗菌薬など)が中心であり[3][4]、すべての薬が使えなくなるわけではないとされる。新しい薬を処方・購入するたびに、G6PD欠損症であることを医師・薬剤師に伝えて確認してもらうことが基本になる。
そら豆さえ食べなければ大丈夫ですか?
そら豆(ファビズム)は代表的な誘因の一つだが、唯一の誘因ではない。小児慢性特定疾病情報センターは、薬剤・感染・手術なども誘因として挙げており[1]、そら豆を避けるだけでは十分でない場合がある。
日本人はほとんどかからない病気なのに、なぜ気にする必要があるのですか?
小児慢性特定疾病情報センターによれば日本人の頻度は約0.1%と低いが[1]、国際結婚の増加を背景に日本での発症数も増えているとされ[1]、頻度が低い地域だからこそ、症状が出たときに医療者・本人ともに疑いにくく、診断が遅れる可能性があるとされる。
症状が軽い場合、様子を見てもよいですか?
尿の色の急な変化や黄疸、強いだるさなど(NIH MedlinePlus Genetics)[5]で挙げた徴候がある場合は、自己判断で様子を見ず受診が勧められる。急性溶血発作は短期間で進行し、急性腎不全につながるおそれもあるとされるためである(小児慢性特定疾病情報センター)[1]。
G6PD欠損症の女性は症状が出ませんか?
女性のヘテロ接合体変異は通常、症状のない保因者にとどまることが多いが、小児慢性特定疾病情報センターは、保因者女性のG6PD活性には個人差があり、約10%は女性でも発症例があると説明している[1]。女性だから安心とは言い切れない。
脾臓を摘出すれば治りますか?
小児慢性特定疾病情報センターの資料では、脾臓摘出は溶血発作の予防にはならないとされ、慢性溶血の多くは代償されていて重症貧血に至らないため適応にはならないと説明されている[1]。
新生児の黄疸が強いとき、必ずG6PD検査をしますか?
米国立衛生研究所(NIH)のMedlinePlus Geneticsは、G6PD欠損症が新生児の軽度から重度の黄疸の重要な原因の一つになるとしているが(NIH MedlinePlus Genetics)[5]、どのような場合にG6PD活性の検査を行うかは医療機関や個々の状況によって判断が異なるため、実施の要否は担当医に確認するのが確実である。
海外旅行で抗マラリア薬を勧められましたが、G6PD欠損症でも飲めますか?
プリマキンなど一部の抗マラリア薬は、PMDAの添付文書でG6PD欠損症の患者への投与後に重篤な溶血性貧血が認められているとされ[3]、渡航前の問診でG6PD欠損症であることを必ず伝える必要がある。代替薬の選択も含め、渡航前に医師に相談することが勧められる。
子どもの頃に一度も溶血発作が起きていなければ、もう心配いりませんか?
誘因に触れなければ症状が出ないまま経過することもあるとされ(同センターの資料)[1]、発作の既往がないことが体質そのものの否定にはならない。誘因となる薬剤や食品に触れる場面(受診・渡航・食事など)では、そのつど体質を申告することが引き続き勧められる。
遺伝子変異のタイプによって重症度は決まっていますか?
2022年のWHO技術協議の報告書は、変異型ごとの酵素活性の中央値に基づく分類(クラスA・B・C・U)を示しているが、この分類は変異そのものの整理を目的としたものであり、個々の患者の重症度を直接分類する目的では使うべきではないと注意している[8]。
海外では抗マラリア薬をG6PD欠損症でも慎重投与できるのに、日本では一律禁忌なのはなぜですか?
WHOガイドライン2010年版やCDCガイドライン2013年版は、G6PD活性を検査で確認したうえで軽度〜中等度の患者に慎重投与する用法を示しているとされるが[3]、日本ではG6PD検査用の診断薬自体が未承認で、実地医療の現場で重症度を検査で見分けることが難しいという事情から、重症度を問わず一律に禁忌とする、より安全側に寄せた判断がとられているとされる(PMDA)[3]。
子どもの年齢によって、薬剤の危険性は変わりますか?
プリマキンについては、WHOガイドライン2010年版が4歳未満への投与を避けるべきとする一方、2015年版は6か月未満への投与を推奨しないとするなど、年齢の下限に関する考え方はガイドラインによって異なるとされる[3]。PMDAの審査資料は、年齢そのものより、G6PD欠損症の有無が投与判断のより重要な材料になるとの考えを示している[3]。

各地域の有病率の正確な経年変化や、日本国内での年齢別・地域別の詳細な発症統計、また国内の診療現場でWHOの2022年改訂分類がどこまで採用されているかについては、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。

参考文献

  1. 小児慢性特定疾病情報センター「グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠乏症 概要」(文責:日本小児血液・がん学会) https://www.shouman.jp/disease/details/09_08_016/
  2. 小児慢性特定疾病情報センター「グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠乏症 診断の手引き」(文責:日本小児血液・がん学会、2014年10月6日更新) https://www.shouman.jp/disease/instructions/09_08_016/
  3. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「プリマキン錠15mg「サノフィ」 添付文書」 https://www.pmda.go.jp/drugs/2016/P20160309001/780069000_2800AMX00403000_B100_1.pdf
  4. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「バクタ配合錠/バクタミニ配合錠/バクタ配合顆粒 患者向医薬品ガイド」(2026年6月更新) https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/guide/ph/343018_6290100D1088_2_00G.pdf
  5. National Institutes of Health(米国立衛生研究所)MedlinePlus Genetics「Glucose-6-phosphate dehydrogenase deficiency」 https://medlineplus.gov/genetics/condition/glucose-6-phosphate-dehydrogenase-deficiency/
  6. Global, regional, and national burden of glucose-6-phosphate dehydrogenase (G6PD) deficiency from 1990 to 2021: a systematic analysis of the global burden of disease study 2021(PMC) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12141281/
  7. Howes RE, et al. G6PD Deficiency Prevalence and Estimates of Affected Populations in Malaria Endemic Countries: A Geostatistical Model-Based Map. PLoS Medicine, 2012(PMC) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3496665/
  8. World Health Organization(世界保健機関)Malaria Policy Advisory Group「Technical consultation to review the classification of glucose-6-phosphate dehydrogenase (G6PD)」(2022年) https://cdn.who.int/media/docs/default-source/malaria/mpac-documentation/mpag-mar2022-session2-technical-consultation-g6pd-classification.pdf

更新日:2026年7月21日。この記事の内容に誤りや古い情報があるとお気づきの場合は、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。順次確認し、必要に応じて内容を更新いたします。

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Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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