のどに流れる後鼻漏の原因7つ|何科・治し方・受診の目安
この記事でわかること
目次
結論から言うと、喉の奥にいつも鼻水のようなものが張りついて感じられ、耳鼻咽喉科や内科で「のどには異常なし」と言われた場合、それは後鼻漏(こうびろう)とよばれる状態である可能性があります。[1]
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鳥取県医師会の相談室によれば、後鼻漏そのものは一つの病名ではなく、鼻の奥からのどへ鼻水が流れ落ちる状態を指す言葉で、その背景には副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎など複数の原因が隠れていることが多いとされています[2]。何年も「気のせいか」と我慢している方も少なくありませんが、原因を絞り込めば手を打てることがほとんどです。まずは何科を受診すべきか、どんなサインが出たらすぐに医療機関にかかるべきかを、このページで確認してください。
要点まとめ
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会などの情報によると、喉の奥に鼻水のようなものが流れる感覚が続く状態を後鼻漏といい、副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎など7つほどの原因が考えられます[3]。
- 鳥取県医師会の相談室によれば、喉だけを診ても分かりにくいことが多く、耳鼻咽喉科で鼻の中を内視鏡などで確認してもらう必要があります[2]。
- MSDマニュアルは、後鼻漏を慢性の咳の代表的な原因の一つに挙げており、長引く咳や頻繁な咳ばらいにつながることがあります[10]。
- 治療は原因ごとに異なり、鼻の症状だけを一時的に抑えるのではなく、原因そのものに対する治療が基本です[3]。
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が挙げる注意サインとして、鼻づまりや鼻血が数週間「片側だけ」続く、頬がしびれるといったサインがあれば、すぐに耳鼻咽喉科を受診してください[12]。
編集方針: JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会・大学病院・査読論文と照合して作成しています。最終確認は人の目で行っています。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点)。
まず3つ、自分に当てはまるものがないか確認してみましょう。
- くしゃみや、目・鼻のかゆみが強い → アレルギー性鼻炎が関係している可能性
- 頬や鼻の奥に痛み・圧迫感があり、鼻水がドロっとして色がついている → 副鼻腔炎が関係している可能性
- アレルギー検査では異常がないのに、寒暖差や香りなどの刺激で症状が出たり消えたりする → 血管運動性鼻炎や加齢による変化の可能性
あくまで見当をつけるための目安です。下の表で7つの原因とその見分け方をさらに詳しく整理しています。
後鼻漏とは?喉に流れる鼻水の正体としくみ
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会によると、鼻の中には「副鼻腔」とよばれる空間があり、鼻の粘膜は常に薄い粘液を作っています[3]。国際医療福祉大学市川総合病院の耳鼻咽喉科・頭頸部外科は、「鼻の奥よりノドへ鼻汁が落ちてくるものを後鼻漏と言い、ノドの炎症も起こすことがあります」と説明しています[1]。鼻水は本来、鼻の穴(鼻孔)から外に出るだけでなく、喉の後ろ側(後壁)にも常に少量流れており、健康な状態ではその量がごくわずかなため、無意識のうちに飲み込まれて気づきません。鳥取県医師会の相談室でも、「喉(のど)の奥の方に流れる状態を後鼻漏(こうびろう)といい、喉に鼻水が貯留して夜中など吐き出さなければならないことがあります」と回答されています[2]。つまり後鼻漏は、鼻水の「通り道」が変わる話ではなく、もともとある流れの「量」や「粘り気」が変化して、初めて自覚症状になるということです。
この記事のイラストのように、健康な状態では副鼻腔・鼻腔からのどへ流れる鼻水はごく少量ですが、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会などの情報によれば、副鼻腔やアレルギー性鼻炎などで鼻の粘膜に炎症が起こると、粘り気の強い鼻水が増え、のどの奥にたまってせき込みや違和感の原因になります[1][3]。
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後鼻漏を起こす7つの原因と見分け方
「後鼻漏の原因もいろいろありますが、主なものはアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎(蓄膿)などです」と鳥取県医師会の相談室は答えています[2]。ただし原因はこの二つだけではありません。下の表は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会や大学病院、学会誌などの情報をもとに、後鼻漏につながりうる代表的な原因と、自分で見当をつけるための手がかりを整理したものです。複数が同時に関わっていることもあり、この表だけで自己診断はできない点にご注意ください。
| 考えられる原因 | 見分ける手がかり | 備考 |
|---|---|---|
| 副鼻腔炎(急性・慢性・好酸球性) | 頬や鼻の奥の痛み・圧迫感、ドロっとした色のついた鼻水、嗅覚の低下が続く[3] | 好酸球性副鼻腔炎は喘息を合併しやすく、鼻茸(ポリープ)を伴うことが特徴とされます[3] |
| アレルギー性鼻炎 | くしゃみ、鼻や目のかゆみを伴いやすく、水っぽく透明な鼻水が出る[3] | ハウスダストやダニ、花粉など特定の物質への反応で起こるとされます[3] |
| 血管運動性鼻炎 | アレルギー検査では異常が出ないのに、寒暖差や香り・香辛料などの刺激で鼻づまりや鼻水が現れたり消えたりする[5] | くしゃみや鼻のかゆみは、他の鼻の症状ほど多くはないとされます[5] |
| 上咽頭炎(慢性) | 喉の違和感や痰がらみの咳が続き、内視鏡でのど(上咽頭)の粘膜に発赤・腫れが確認される[7] | 内視鏡でこすると出血する所見が診断の手がかりの一つとされています[7] |
| 胃食道逆流(GERD)との関連 | 声のかすれ、喉のつかえ感、げっぷが多いなど、他の原因が見当たらないときに検討されることがある[9] | 治療の効果はまだ確定していないとされ、今後の研究課題とされています[9] |
| 薬剤性(市販の点鼻薬の使いすぎ等) | 市販の鼻づまり用スプレーを何日も連続で使っている、やめると余計に鼻づまりがひどくなる[5] | 3日間を超える連続使用が引き金になるとされています[5] |
| 加齢による粘液の性状変化 | 60歳以降、アレルギー検査はすべて陰性なのに、水っぽい鼻水だけが続く[6] | 鼻の粘膜が加齢で萎縮し、加温機能が落ちることが関係すると考えられています[6] |
出典:国際医療福祉大学市川総合病院/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会/兵庫医科大学病院/MSDマニュアル家庭版/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会誌/日本消化器病学会ガイドライン(詳細は参考文献参照)[1][3][4][5][6][7][9]
副鼻腔炎について、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は「鼻づまり、粘性の鼻汁、頭重感、匂いがしないなどの症状が続く場合は要注意です。耳鼻咽喉科を受診してください」と述べています[3]。同学会はさらに、「近年では好酸球が局所に多く出現する好酸球性副鼻腔炎が増加傾向にあります」とし、「喘息を合併したり、匂いがしない、あるいはわかりにくいという症状があったり、鼻茸を伴うことが特徴です」としています[3]。兵庫医科大学病院も、好酸球性副鼻腔炎の主な症状として「においの低下(嗅覚障害)」「ねばねばとした鼻汁」「鼻づまり」「鼻汁がのどに流れる(後鼻漏)」「咳」を挙げ、「成人以降に発症する気管支喘息やアスピリン喘息(アスピリン不耐症)、薬剤アレルギーが合併していることも多く、内科への通院も必要になることがあります」と説明しています[4]。
血管運動性鼻炎については、MSDマニュアル家庭版が次のように説明しています。「血管運動性鼻炎は慢性鼻炎の一種です。アレルギーがあるようにはみえないにもかかわらず、鼻づまり、くしゃみ、鼻水といった一般的なアレルギー症状が出ます」としたうえで、「ほこりや花粉などの刺激物、香料、大気汚染、または香辛料の効いた食べものに対して、鼻が強く反応する人もいます。この病気は現れたり消えたりし、乾燥と冷気により悪化します」とMSDマニュアルは説明しています[5]。アレルギー検査を受けても原因物質が見つからないのに、こうした刺激で鼻の症状が出たり消えたりする場合は、このタイプが疑われます。市販の点鼻薬が原因になるケースについても、MSDマニュアル家庭版は「薬剤性鼻炎は、鼻づまりのリバウンドとも呼ばれ、鼻閉改善薬の鼻腔スプレーや点鼻薬(ステロイドスプレーではない)を使いすぎること(3日間の連続使用)によって引き起こされる重度の鼻づまりです」と述べています[5]。市販薬を「効かないから」と何日も使い続けている方は、まずこの可能性を疑ってみてください。
喉の違和感や痰がらみの咳が続くのに、喉を診ても異常が見つからない場合、上咽頭という鼻の一番奥の部分に慢性的な炎症が起きていることがあります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の会誌に掲載された総説では、この病気の診断基準について、日本口腔・咽頭科学会の委員会が「1) 1カ月以上続く薬物療法などで症状が改善しない慢性上咽頭炎を疑う症状がある.2) 鼻・副鼻腔,中・下咽頭,喉頭に器質的疾患がない.3) 内視鏡によって上咽頭炎症所見(粘膜の発赤,腫脹,または上咽頭由来の後鼻漏粘液付着)を認め,かつ上咽頭擦過によって出血を認める,の3項目全てを認めること」と提唱したと、同学会誌の総説は紹介しています[7]。この学会誌の総説で紹介されている診断基準そのものが、上咽頭由来の後鼻漏の粘液付着を内視鏡所見の一つとして挙げており、後鼻漏と慢性上咽頭炎が結びつけて論じられていることがうかがえます[7]。この診断基準づくりの背景には、新型コロナウイルス感染後遺症に対するこの治療法の有効性が注目され、2019年に日本口腔・咽頭科学会内に専門の検討委員会が設立されたという経緯があるとされています[7]。治療として行われる内視鏡下上咽頭擦過療法(EAT、いわゆるBスポット療法)については、同学会誌の報告によれば、粘膜をひきしめる作用や抗炎症・抗ウイルス作用、瀉血作用、迷走神経を刺激する作用という3つのしくみが提唱されており、複数の医療機関が参加した前向き試験によって有効性を示す客観的なデータが得られたと報告されています[7]。喉の違和感や痰がらみの咳が長く続き、耳鼻咽喉科で明確な原因が見つからないときに、この上咽頭炎という切り口があることを知っておくと、受診時に相談しやすくなります。
胃食道逆流(GERD)と後鼻漏の関係については、慎重な言い方が必要です。日本消化器病学会の「GERD診療ガイドライン2021」は、胃食道逆流が慢性的な咽喉頭の炎症や自覚症状(後鼻漏のような感覚を含む喉の違和感なども広く含まれます)の原因となることがあるかを検討したうえで、「GERは咽喉頭炎,咽喉頭症状の原因となることがあるが,咽喉頭炎や自覚症状に対するPPIや外科的GER防止手術の効果は確定していない」と、同ガイドラインは結論づけています[9]。つまり胃酸の逆流が喉の違和感に関わっている可能性は否定できないものの、それが後鼻漏という感覚そのものを直接引き起こすと言い切れる段階ではなく、治療で改善するとも限らないということです。他の原因が見当たらないときに耳鼻咽喉科や消化器内科で検討されることがある、という程度に理解しておくのが安全です。同ガイドラインは、その発症のしくみについても、胃酸やペプシンが直接のどの粘膜を傷つけるという考え方と、食道への逆流が神経を介して症状を引き起こすという考え方の二つが提唱されていると紹介しつつ、「現在本邦において、PPIや外科的GER防止手術の慢性咽喉頭炎に対する保険適用はない」ことも明記しています[9]。喉の違和感が続くからといって、自己判断で胃酸を抑える薬に頼るのではなく、まずは耳鼻咽喉科で鼻や上咽頭に原因がないかを確認することが優先されるべきだと考えられます。
最後に、60歳以降に目立つ「加齢による鼻漏」も見逃されがちな原因です。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の会誌に掲載された報告は、「高齢者の中には,ほかの鼻症状や感冒様の症状がなく,水性鼻漏のみを訴える場合がある.例えばアレルギー性鼻炎を思わせるくしゃみや鼻漏・後鼻漏,鼻閉などの症状は訴えない」としたうえで、そのしくみを「鼻腔内での加温機能の低下により,吸気は加温が不十分なまま吸入されるため鼻咽腔環境の温度を低下させる.いったん下気道に入った吸気は加温加湿されるが,呼気となって鼻咽腔を通過する際に呼気中の水分が鼻粘膜上で凝集し水滴となり水性鼻漏化する」と説明しています[6]。アレルギー検査をひととおり受けても原因がはっきりしない水っぽい鼻水が何年も続く場合、この加齢による変化が背景にあると考えられます[6]。同じ報告では、この状態を繰り返す患者の多くが複数の耳鼻咽喉科を転々と受診し、抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイド、抗菌薬などを長期間にわたって処方されても十分な効果が得られず、通院そのものをあきらめてしまう例が多いと指摘されています[6]。実際の診療例として、花粉症やぜんそく、アトピー性皮膚炎の既往がなく、吸入抗原の血液検査もすべて陰性だった60代女性が、いったん薬をすべて中止したうえで温めた生理食塩水による鼻洗浄を1日2〜3回、自宅で続けたところ、1か月後の受診時には症状の明らかな軽快を自覚していたという経過が報告されています[6]。加齢による鼻粘膜の萎縮そのものを元に戻す治療ではなく、鼻の中の温度を保つケアを続けることで症状と付き合っていく、という考え方が基本になります[6]。同報告では、マスクを着用して鼻から吸う空気を温めることや、足湯で全身の血流を促すことも、鼻粘膜の温度を保つ工夫として紹介されています[6]。
「喉は異常なし」と言われるのはなぜ?何を基準に何科を受診すべきか
後鼻漏で悩む方の多くが、まず内科や、喉だけを診察する診療科を受診し、「異常なし」と言われて戸惑った経験を持っています。これは診察が不十分だったからではなく、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会や学会誌の報告によれば、後鼻漏の原因の多くが鼻の奥や副鼻腔、あるいは上咽頭という、喉を覗き込むだけでは見えにくい場所で起きているためです[3][7]。副鼻腔炎は「鼻内視鏡やレントゲン、CT検査をしないと詳しい診断ができません」と日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は説明しており[3]、同学会誌の報告によれば、慢性上咽頭炎も内視鏡で上咽頭そのものを観察して初めて炎症所見が確認できるとされています[7]。喉の粘膜を見るだけの診察では、これらの変化を見つけることはできません。
受診の基準としてまず押さえておきたいのは、「何科に行くか」です。後鼻漏が疑われる場合、最初に選ぶべきは耳鼻咽喉科です。鳥取県医師会の相談室でも「まずは耳鼻咽喉科を受診し検査を受け、異常がないかどうか調べることをお勧めします」と回答されています[2]。耳鼻咽喉科であれば、鼻内視鏡で鼻の奥や上咽頭の状態を直接確認したり、必要に応じてCT検査で副鼻腔の炎症の有無を調べたりすることができます[3]。すでに内科や他の診療科で「異常なし」と言われている場合でも、耳鼻咽喉科を受診していなければ、後鼻漏の原因になりうる場所をまだ十分に調べていない可能性があります。
耳鼻咽喉科ではどんな検査をするのか
初めて耳鼻咽喉科を受診するときに、どんな検査をされるのか分からず不安に感じる方も多いはずです。ここでは日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会などの情報をもとに、代表的な検査の流れを整理しておきます。まず問診で、症状が始まった時期や鼻水の色・粘り気、片側だけか両側かなどを確認したうえで、細い内視鏡を鼻から入れて鼻の中や上咽頭の粘膜の状態を直接観察します[3][7]。副鼻腔炎が疑われる場合は、レントゲンやCT検査で副鼻腔の中に炎症がないかを調べます[3]。
好酸球性副鼻腔炎が疑われるときは、さらに踏み込んだ検査が行われます。兵庫医科大学病院は、「問診の後、内視鏡を用いて鼻汁と鼻茸の性状を確認します。副鼻腔CTでは篩骨洞(しこつどう)とよばれる副鼻腔を中心に陰影が存在していることが多く、すべての副鼻腔に陰影が充満していることもあります」としたうえで、「血液検査では、しばしば白血球の一種である好酸球が基準値よりも高い値となります。さらに、外来での鼻茸の生検、もしくは手術で採取した鼻茸の中に基準よりも多くの好酸球を認めれば、好酸球性副鼻腔炎の診断が確定します」と説明しています[4]。つまり、内視鏡・CT・血液検査・鼻茸の組織検査という複数の情報を組み合わせて初めて診断が確定するということです。喉だけを診る診察で「異常なし」と言われても、これらの検査を受けていなければ、後鼻漏の原因になりうる場所をまだ調べきれていない可能性があります。
後鼻漏を放置するとどうなる?長引く咳・口臭・睡眠への影響
後鼻漏そのものが命に関わることは多くありませんが、放置すると生活の質に関わるさまざまな影響が出ることがあります。まず多いのが咳です。喉にたまった鼻水が刺激となり、日中の咳ばらいだけでなく、横になったときに鼻水がさらに喉へ流れ込みやすくなるため、夜間の咳が悪化しやすいとされています。MSDマニュアルプロフェッショナル版も、慢性に続く咳の代表的な原因として後鼻漏を挙げており、頻繁な咳ばらいがその手がかりの一つになるとしています[10]。好酸球性副鼻腔炎のように、後鼻漏の原因そのものが気管支喘息を合併しやすいタイプもあります[4]。
長引く咳 — この所見があれば、後鼻漏だけを疑わず早めに受診を
MSDマニュアルプロフェッショナル版は、咳の原因を調べるうえで特に注意すべき所見(Red Flag)として、「以下の所見には特に注意が必要である:呼吸困難、喀血、体重減少、長く続く発熱、結核またはHIV感染の危険因子」を挙げています[10]。長引く咳の背景の多くは後鼻漏や喘息、胃食道逆流のようにありふれた原因ですが、息切れ、血の混じった痰(血痰)、原因不明の体重減少、長く続く発熱といった所見を伴う場合は、後鼻漏だけが原因と決めつけず、早めに医療機関を受診してください。
咳ばらいを繰り返すことで喉の粘膜が慢性的に刺激され、喉の痛みや違和感が続くこともあります。また、鼻水が喉の奥や口の中にとどまることで口臭の原因になったり、就寝中に鼻水が喉へ流れ込みやすくなることで、咳込みによって眠りが浅くなったりすることも考えられます。これらは多くの場合、後鼻漏の原因そのものを治療することで軽くなっていく症状であり、喉のスプレーや咳止めだけで対症療法を続けても、根本の原因が残っていれば繰り返しやすいという点は知っておく価値があります。
頻度は高くありませんが、原因が副鼻腔炎の場合、国際医療福祉大学市川総合病院の耳鼻咽喉科・頭頸部外科は「副鼻腔炎が悪化すると場合によっては眼の病気(眼窩蜂巣織炎、膿瘍)や頭の病気(脳膿瘍、髄膜炎)を起こすこともある怖い病気でもあります」と注意を促しています[1]。日常的にはあくまで咳や口臭、睡眠の質といった生活の質への影響が中心ですが、こうした重い合併症の可能性もゼロではないという点は、放置せず耳鼻咽喉科を受診する理由の一つになります。
原因別の治療の考え方と、鼻うがいの安全な行い方
後鼻漏の治療でもっとも大切なのは、「鼻水が喉に流れる」という症状だけを抑えようとするのではなく、その背景にある原因を特定し、原因に応じた治療を行うことです。鳥取県医師会の相談室も、「アレルギー性鼻炎では抗アレルギー薬、副鼻腔炎では抗菌薬などその原因によって適切な治療を行う必要があります」と述べています[2]。
| 原因 | 治療の主な方向性 |
|---|---|
| 副鼻腔炎(慢性) | 通常の半分量の抗菌薬を長期間服用するマクロライド少量長期療法やネブライザー療法。改善しない場合は内視鏡下の手術[3] |
| 好酸球性副鼻腔炎 | まず内視鏡手術で鼻茸を除去し、局所ステロイド治療を行う。改善しない場合は生物学的製剤を用いることもある[4] |
| アレルギー性鼻炎 | 原因物質を避けることに加え、抗アレルギー薬や点鼻薬、アレルゲン免疫療法(減感作療法)[3] |
| 血管運動性鼻炎 | 刺激物を避け、加湿を心がける。ステロイドや抗ヒスタミン薬の点鼻が用いられることがある一方、鼻閉改善薬のスプレー式点鼻薬は使うべきではないとされる[5] |
| 薬剤性鼻炎 | 原因となっている点鼻薬をやめ、生理食塩水の点鼻スプレーに切り替える[5] |
| 加齢による鼻漏 | 温めた(39〜40℃程度の)生理食塩水による鼻洗浄を1日2〜3回行うなど、鼻粘膜を温める工夫[6] |
出典:国際医療福祉大学市川総合病院/兵庫医科大学病院/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会/MSDマニュアル家庭版/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会誌[1][3][4][5][6]
薬による治療で改善しない慢性副鼻腔炎については、内視鏡を使った鼻内副鼻腔手術が選択肢になります。国際医療福祉大学市川総合病院の耳鼻咽喉科・頭頸部外科は、この手術について「鼻内と副鼻腔との交通を大きくつける事で膿をなくして副鼻腔内の病変を改善させる」ものだと説明しており、以前のように歯茎や眉毛を切開する方法とは異なり、内視鏡を使うことで鼻の生理機能を残した負担の少ない手術になっているとしています[1]。好酸球性副鼻腔炎のように再発しやすいタイプでは、手術のあとも定期的な通院と経過観察が必要になるとされています[1][4]。一方、アレルギー性鼻炎が主な原因であれば、原因物質を薄めた液を少しずつ注射して体を慣らしていくアレルゲン免疫療法(減感作療法)が、「もっとも根本的な治療法」として日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会に紹介されています[3]。注射の代わりに舌の下から薬剤を吸収させる舌下免疫療法という選択肢もあるとされています[3]。
どの原因であっても、しばしば選択肢に挙がるのが「鼻うがい」(生理食塩水による鼻洗浄)です。ただし、水の選び方には見落とされがちな注意点があります。米国疾病予防管理センター(CDC)は、鼻や副鼻腔を洗浄する際は、水道からそのまま出した水ではなく、蒸留水・滅菌水として販売されている水、または一度沸騰させてから十分に冷ました水を必ず使うよう呼びかけています[13]。沸騰させる場合は少なくとも1分間(標高の高い地域では3分間)沸かし続け、清潔で密閉できる容器に入れて保管することが推奨されています[13]。これは、水道水をそのまま鼻の奥まで入れると、まれに致命的な脳の感染症を起こすことがあるアメーバ(ネグレリア・フォーレリなど)が入り込むおそれがあるためとされています[13]。日本の水道水は一般に管理基準が厳しいとはいえ、鼻の奥という粘膜に直接触れる使い方をする以上、このCDCの呼びかけに従って水を選ぶほうが安全側に立てます。加齢による鼻漏に対して行われる温生食(39〜40℃に温めた生理食塩水)による鼻洗浄も、この安全な水を使うことが前提です[6]。
鼻うがいの効果そのものについては、誇張しない言い方が必要です。Cochrane(コクラン)による急性の風邪症状に対する生理食塩水鼻洗浄のシステマティックレビューは、「生理食塩水鼻洗浄は急性URTI(上気道感染症)の症状軽減に有益な可能性がある。しかし、対象試験の多くは非常に小規模で、バイアスのリスクが高いため、この知見の裏付けとなるエビデンスの信頼性は低くなっている」と結論づけています[14]。後鼻漏そのものへの効果を専門に調べた大規模な研究ではありませんが、症状緩和の一つの選択肢として、過度な期待をせずに取り入れるのが現実的だと考えられます[14]。
受診の目安 — このサインがあれば、様子見せずすぐに耳鼻咽喉科・頭頸部外科へ
後鼻漏の多くはアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など命に関わらない原因ですが、まれに鼻腔がん・副鼻腔がんのような病気が背景にあることもあります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、「鼻づまり▽鼻血(少量でも)▽頬のしびれ▽片側だけ涙が出る」という症状が数週間にわたって「片側だけ」に続く場合は要注意だとし、「痛みを伴わないため、『大丈夫だろう』と見過ごさないことが大切です」と呼びかけています[12]。
- 鼻づまりや鼻水、鼻血が数週間、左右どちらか片側だけに続いている[12]
- 頬にしびれがある、あるいは片側の目だけ涙が出る[12]
- 眼球が飛び出す、歯がぐらつく、口の中の上あご(口蓋)が腫れる、頬が腫れる、口が開けにくいといった症状が出てきた[12]
同学会は、上顎洞がんについて「初期の段階では症状が出にくいため、進行した状態で見つかることが多いのが特徴です」とも述べています[12]。国立がん研究センターの統計をもとにした同学会の発表では、2018年に新たに「鼻腔および中耳」のがんと診断された患者は778人、副鼻腔がんと診断された患者は1,193人で、がん患者全体約113万人の中ではまれな部類に入りますが、その大部分を占める上顎洞がんは毎年700〜800人が診断されているとされています[12]。まれではあっても、痛みがないからと見過ごさず、片側だけの症状が数週間続くようなら早めに耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診することが勧められています。同学会の情報によれば、実際の検査では、鼻の入り口から中ほどまでは肉眼で観察し、奥の方は内視鏡で調べ、腫瘍が見つかった場合には5ミリ程度組織を採取して顕微鏡でがん細胞の有無を確認し、2〜3週間ほどで結果が判明するとされています[12]。がんであることが分かった場合は、CTやMRIで広がりを、PET-CTで首のリンパ節や離れた部位への転移がないかを調べるとされており、いきなり大がかりな治療に進むわけではなく、段階を踏んで診断が確定していく流れになっています[12]。
| 項目 | 数字 | 時期 |
|---|---|---|
| 「鼻腔および中耳」のがんの新規患者数 | 778人 | 2018年 |
| 副鼻腔がんの新規患者数 | 1,193人 | 2018年 |
| うち上顎洞がん(副鼻腔がんの大部分を占める) | 毎年700〜800人 | – |
| 同時期のがん患者数全体(参考) | 約113万人 | 2018年 |
出典:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「鼻腔がん・副鼻腔がんの特徴を知ろう」(国立がん研究センター・全国がん登録データ、日本頭頸部外科学会HPを引用)[12]
より詳しく副鼻腔炎そのものについて知りたい方は、当サイトの副鼻腔炎のページもあわせてご覧ください。アレルギー性鼻炎や中耳炎など耳鼻咽喉科領域の病気を横断的に知りたい方には、よくある耳鼻咽喉科の病気トップ4|その予防法とはもあわせて参考になります。血管運動性鼻炎のように寒暖差や空調が引き金になるタイプについては、エアコンで鼻づまり・咳?原因と対策を徹底解説で詳しく触れています。黄色っぽい鼻水が続いて副鼻腔炎が心配な方は、黄色い鼻水は副鼻腔炎のサイン?原因・治し方・市販薬の選び方も参考にしてください。治りにくい慢性副鼻腔炎や好酸球性副鼻腔炎について詳しく知りたい方には、治らない慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の最新治療のページもあわせてご覧ください。
健康な人が日常的にどの程度の量の鼻水をのどへ流し込んでいるかについて、具体的な数値を示した公的資料は今回参照した範囲では見当たりませんでした。本記事の「健康な人でも少量の後鼻漏がある」という説明は、後鼻漏を訴える患者と健康な人を対比するための編集部による一般的な整理であり、特定の学会・論文の数値にもとづくものではありません。また、胃食道逆流と後鼻漏の関係についても、直接「後鼻漏を引き起こす」と明記した学会ガイドラインは見当たらず、本記事では咽喉頭症状全般に関するガイドラインの記載をもとに、慎重な言い回しで紹介しています。
よくある質問
咳が止まらないのも後鼻漏が原因ですか?
後鼻漏は口臭の原因になりますか?
後鼻漏に市販薬でいいですか?
子どもの後鼻漏も耳鼻咽喉科を受診すべきですか?
参考文献
- 国際医療福祉大学市川総合病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科「鼻副鼻腔専門外来のご案内」 http://igh.iuhw.ac.jp/clinic/jibiinko/sinonasal.html
- 公益社団法人鳥取県医師会 健康なんでも相談室「後鼻漏(こうびろう)」(回答者:鳥取県東部医師会員 杉本勇二) https://www.tottori.med.or.jp/nandemo/後鼻漏(こうびろう)
- 一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「鼻の病気」(副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎)2023年1月11日更新 https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=21
- 兵庫医科大学病院 みんなの医療ガイド「好酸球性副鼻腔炎」 https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/60
- MSDマニュアル家庭版「鼻炎」(著:Marvin P. Fried、査読:Lawrence R. Lustig、2025年7月9日更新) https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/19-耳-鼻-のどの病気/鼻と副鼻腔の病気/鼻炎
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会誌(日耳鼻)122巻7号 松根彰志「加齢性鼻炎の診断と治療」2019年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/122/7/122_992/_pdf
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 128巻3号 原渕保明「慢性上咽頭炎に対する上咽頭擦過療法」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkotokeibu/128/3/128_205/_article/-char/ja/
- 日本消化器病学会「GERD診療ガイドライン2021」(改訂第3版)BQ7-3 http://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/gerd2021r_.pdf
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「成人における咳嗽」2023年11月改訂 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/05-肺疾患/肺疾患の症状/成人における咳嗽
- 一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「初期症状が出にくい点に要注意 鼻腔がん・副鼻腔がんの特徴を知ろう」 https://www.jibika.or.jp/owned/toukeibu/topics/nose-alart.html
- 米国疾病予防管理センター(CDC)「Sinus Rinsing for Nasal Hygiene」 https://www.cdc.gov/naegleria/prevention/sinus-rinsing.html
- Cochrane「急性上気道感染症の症状に対する生理食塩水による鼻洗浄」 https://www.cochrane.org/ja/evidence/CD006821_nasal-saline-irrigation-acute-upper-airway-infection-symptoms
- MSDマニュアル家庭版「小児のせき」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/23-小児の健康上の問題/乳児と幼児の症状/小児のせき
更新日:2026年7月25日。本記事の内容について、事実誤認や古くなった情報にお気づきの場合は、編集部までご連絡いただければ確認のうえ修正いたします。
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