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耳鼻咽喉科疾患 34分で読める 35回

外耳道真菌症の症状・原因・治し方|耳のかゆみが続くときの目安

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外耳道真菌症(耳のカビ)は、外耳道に真菌(カビ)が繁殖して起こる病気で、世界的には外耳道の感染症のうち9〜30%を占めるとされています[7]

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もっとも目立つ症状は強い「耳のかゆみ」で、耳だれや耳の詰まった感じを伴うことが多く、綿棒や耳かきによる耳掃除のしすぎが最大の原因の一つとされています[1][7]。市販薬を自己判断で使うと悪化することがあり、耳鼻咽喉科での耳内の清掃(デブリードマン)と抗真菌薬による治療が基本です[7]。強い痛みや難聴、めまい、顔面神経麻痺(顔の動かしにくさ・口が閉じにくい・目が閉じにくいなど)が出た場合は、まれに命に関わる状態のサインのことがあるため、すぐに耳鼻咽喉科を受診してください[4]。

要点まとめ

  • 外耳道真菌症は外耳道感染症の9〜30%を占め、原因菌はアスペルギルス属とカンジダ属が中心とされています[7]
  • 最大の原因は耳掃除のしすぎ(綿棒・耳かき)によって外耳道の皮膚バリアが壊れることです[1][7]
  • 主な症状は強いかゆみ、耳だれ、耳の詰まった感じで、痛みは細菌性外耳炎ほど強くないことが多いとされています[3]
  • 市販の点耳薬・軟膏を自己判断で使うと、悪化や鼓膜損傷につながることがあります[3]
  • 強い痛み・難聴・めまい・顔面神経麻痺(顔の動かしにくさなど)が出たら、悪性外耳道炎の可能性もあるためすぐ受診してください[4]

編集方針: JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会・査読論文と照合して作成。最終確認は人の目。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点)。

セルフチェック — こんな症状はありませんか?

  • 耳の中が強くかゆく、綿棒でこすっても治まらない
  • 耳だれが綿くず状・黒い粒状・白っぽくネバネバしている
  • 耳の詰まった感じや軽い難聴がある
  • 最近、耳掃除の頻度が増えた、または点耳薬・軟膏を長く使っている
  • プールや入浴のあと、耳の中が湿ったままになりやすい

2つ以上当てはまる場合は、外耳道真菌症を含む外耳道の感染症が疑われます。市販薬で様子を見る前に、耳鼻咽喉科での耳鏡検査を受けることをおすすめします[7]。強い痛み・難聴・めまい・顔面神経麻痺(顔の動かしにくさなど)がある場合は、先に下の「危険なサイン」を確認してください。

外耳道真菌症とは?耳の中でカビが繁殖する仕組み

外耳道真菌症は、耳の入り口から鼓膜までの管状の部分である外耳道に、真菌(カビ)が異常に増えてしまう状態です。原因となる真菌は主にAspergillus(アスペルギルス)属とCandida(カンジダ)属で、とくにAspergillus niger複合種とCandida albicansが中心とされています[7]。アスペルギルスは「環境中に遍在する糸状菌である」と説明されており[5]、カンジダも「皮膚および粘膜に常在する普遍的な酵母様真菌」とされています[6]。つまり、どちらの真菌も特別な場所にだけいる珍しいカビではなく、もともと環境中や体の表面にありふれた存在です。カンジダは水虫の原因菌である白癬菌とは別のグループの真菌で、白癬菌(水虫)とカンジダ症の違いについてまとめた記事もあわせて読むと、体のどの部位にどんな真菌が起こりやすいかを整理しやすくなります。

図:JHO編集部が作成

問題は「外耳道という場所」にあります。外耳道は暗く、体温で温められ、皮脂や汗で湿りやすいという、真菌にとって都合のよい条件がそろっています。日本医学文献のレビューでも、高温多湿の環境が主要な素因の一つとして挙げられています[7]。本来この環境で真菌が繁殖しすぎないよう働いているのが耳垢です。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、耳垢について「細菌やカビが外耳道に繁殖するのを防いだり、敏感な外耳道皮膚を保護する役割があります」と説明しています[1]。さらに「ヒトには耳垢を自然に排泄する機能(自浄作用)が備わっているため、多少の耳垢であれば家庭で無理に取る必要はまったくありません」とも述べています[1]。この自浄作用と耳垢の保護膜が保たれている間は、真菌が触れても簡単には増殖できません。ところが、耳掃除のしすぎなどで皮膚が傷つき、この保護のしくみが壊れると、真菌が定着しやすい状態に変わってしまいます。

なお、外耳道真菌症は英語の医学文献では「otomycosis(オトマイコーシス)」と呼ばれます。海外の文献レビューでも、高温多湿な気候そのものが「もっとも大きな危険因子(the most significant risk factor)」として挙げられており[7]、高温多湿な日本の気候は、この病気が起こりやすい環境的な条件をもともと満たしていると考えられます。

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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。

主な原因は「耳のさわりすぎ」——綿棒・耳かきが真菌を呼び込む

外耳道真菌症の最大の原因は、実は「耳掃除のしすぎ」です。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、耳のかゆみについて「耳のかゆみが起こる原因としてはほとんどの場合が外耳炎によるものです。外耳道の皮膚は皮下組織が非常に薄く、刺激に弱いため、耳掃除などでも容易に炎症を起こしてしまい、かゆみを生じる原因となります」と説明しています[2]。また耳垢についての解説でも、耳掃除の危険性として「奥までいじりすぎると、逆に耳垢を押し込んで『耳垢栓塞』となります。強く拭ったりすると外耳道を傷つけて『外耳炎』を起こすことがあります」と述べています[1]。綿棒や耳かきで外耳道の薄い皮膚をこすると、目に見えない小さな傷ができ、そこから耳垢の保護作用が失われた皮膚に真菌が入り込みやすくなります。

海外の文献レビューでも、耳かき・綿棒などの硬いもので耳をこする行為が外耳道真菌症の代表的な素因の一つとされ、そのほかに補聴器の使用(密閉性のあるイヤーモールドを含む)、頻繁な水泳やサウナの利用、糖尿病などの基礎疾患、免疫抑制状態、抗菌薬点耳薬の使用などが素因として挙げられています[7]。とくに抗菌薬を含む点耳薬を続けて使うと、外耳道に元々いる細菌のバランスが崩れることがあると説明されており[7]、細菌性の外耳炎の治療で使った点耳薬が、結果的に真菌の増殖を後押ししてしまう場合があることを示しています。イヤホンや補聴器を長時間つけたままにすることも、外耳道を密閉して湿気や熱がこもりやすくする点で、同じ素因の一つに数えられています[7]。

これは、たとえば細菌性の外耳炎で処方された抗菌薬入りの点耳薬を、症状が良くなったあとも自己判断で長く使い続けてしまうと、細菌は減っても外耳道のバランスが崩れ、今度は真菌が増えやすい環境ができてしまう、という流れで起こりえます。処方された薬は、指示された期間・回数を守り、自己判断で延長したり、別の症状に転用したりしないことが、この病気を防ぐうえでも重要です。

症状の特徴——耳のかゆみ・耳だれ・におい・聞こえの変化

外耳道真菌症の症状として代表的なのは、強い「耳のかゆみ」です。MSDマニュアル プロフェッショナル版は「外耳道真菌症は疼痛よりもそう痒が強く、患者は耳の閉塞感も訴える」と説明しており[3]、痛みよりもかゆみと詰まった感じが前面に出やすいことが特徴とされています。海外の文献レビューでも、代表的な症状として「かゆみ、耳漏、および外耳道が塞がった感覚」が挙げられ、痛みや頭痛、耳鳴りを伴うこともあるとされています[7]。この「詰まった感じ」は、真菌のかたまりや耳だれ、それに伴う外耳道の腫れが管の内側を狭くすることで起こると考えられます。管が狭くなるほど、音の通り道がふさがれて軽い難聴のように感じられたり、自分の声が耳の中で響くように感じたりすることもあります。

耳だれ(耳漏)の見た目や色は、原因となる真菌の種類によって違いがあります。次の見出しで詳しく説明しますが、綿くず状のもの、黒っぽい粒、白くねばついたものなど、色や質感の違いは見分けの手がかりになります。かゆみが強くて眠れない、耳の中を触らずにいられないというほどの症状が出ることも珍しくありません。片耳だけに起こることが多い一方で、免疫の働きが落ちている場合には両耳に起こる形が比較的多いとされています[7]。かゆみが治まらず悪化して痛みが生じる場合や、耳だれが続く場合には、耳鼻咽喉科での治療が必要になります[2]。耳だれそのものの原因や色ごとの見分け方をさらに詳しく知りたい場合は、耳だれ(耳漏)が止まらないときの原因と対処法を解説した記事も参考になります。

「耳がかゆい」の原因になる病気を切り分ける

「耳のかゆみ」で検索する方の多くは、まだ「外耳道真菌症」という病名にたどり着く前の段階だと思います。実は耳のかゆみを起こす病気は真菌症だけではありません。ここでは、外耳道真菌症とまぎらわしい代表的な原因を、公的資料に基づいて整理します。

項目 外耳道真菌症 接触皮膚炎・外耳道湿疹 耳垢栓塞 外耳道異物(虫の迷入など)
きっかけ・原因 耳掃除のしすぎによる皮膚の傷、湿気、点耳薬の長期使用など[1][7] ニッケルを含むイヤリング、ヘアスプレーやローション、毛染め、補聴器のイヤーモールドなどへのアレルギー反応、または脂漏性皮膚炎・乾癬・アトピー素因のある人に自然に起こる[10] 耳掃除で耳垢を奥に押し込んでしまうこと[1] 「ゴキブリやガなどの虫が外耳道に入ることが多い」[11]
かゆみ・痛みの特徴 痛みよりかゆみが強い[3] 「そう痒、発赤」が中心だが、細菌の二次感染が起こると「そう痒より疼痛を引き起こしやすい傾向がある」[10] 今回参照した資料に、かゆみそのものについての詳しい記載は多くありません 虫が動くことで「虫の移動によって耳に痛みが生じることもあります」[11]
耳だれ・分泌物 綿くず状・黒い点・白くねばつくものなど[3] 「透明(漿液性)の分泌物漏出、落屑、色素沈着を引き起こし、ときに裂創」[10] 耳だれとしてではなく、耳垢そのものが奥に詰まった状態[1] 通常、耳だれは主症状ではありません
聞こえ・詰まった感じ 耳の閉塞感を伴うことがある[3] 今回参照した資料に明確な記載は見当たりません 耳垢が外耳道をふさぐことで聞こえに影響しうると考えられます 「耳閉感(耳が詰まった感じ)や難聴を自覚することが多い」(成人)[11]
始まり方 数日かけて徐々にかゆみが強まることが多いと考えられます 誘因(金属・薬剤・シャンプーなど)に触れた後に起こる[10] 徐々に耳垢がたまって起こる 虫が入った瞬間に突然自覚することが多いとされます[11]

出典:MSDマニュアル プロフェッショナル版「外耳炎(急性)」[3]/同「外耳道の皮膚炎(慢性外耳炎)」[10]/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳垢」[1]/済生会「外耳道異物」[11]

とくに見分けにくいのは「接触皮膚炎・外耳道湿疹」です。イヤホンや補聴器、ピアス、シャンプーなど身の回りのものへの反応で起こる湿疹は、外耳道真菌症と同じように強いかゆみを起こしますが、原因が真菌ではないためアレルゲンを避けることや外用のステロイド薬が治療の中心になります[10]。市販の抗真菌薬が存在しない以上、どちらのタイプかを自己判断で決めつけず、耳鼻咽喉科で診てもらうことが結局もっとも近道です。虫が耳に入ったと感じる場合は、無理に自分で取り出そうとせず、そのまま耳鼻咽喉科を受診してください[11]。

【比較表】外耳道真菌症・細菌性外耳炎・中耳炎の見分け方

耳のトラブルは、外耳道真菌症のほかにも細菌性の外耳炎や中耳炎など似た症状の病気があり、自己判断での区別は簡単ではありません。それぞれについて公的資料に書かれている特徴を、項目ごとに並べて比較します。

項目 外耳道真菌症 細菌性外耳炎(急性びまん性外耳炎) 中耳炎(急性)
痛みとかゆみのどちらが強いか かゆみが優位。「疼痛よりもそう痒が強く」[3] 痛みが主体。「疼痛および耳漏がみられる」[3] 痛みが主症状。「通常の初発症状は耳痛」[9]
耳を引っ張ったときの痛み 今回参照した資料に明確な記載は見当たりません あり。「耳介の牽引や耳珠の圧迫に伴う鋭い圧痛がある」[3] 今回参照した資料に明確な記載は見当たりません
耳だれの性状 綿くず状・黒い点・白くねばつくなど、原因菌により異なる(次の見出しで詳述)[3] 膿性で、「悪臭を伴う耳漏および難聴が生じることがある」[3] 鼓膜が破れない限り目立った耳だれは少なく、耳鏡検査で「膨隆および発赤した鼓膜」が確認される[9]
聞こえへの影響 耳の閉塞感を伴うことがある[3] 難聴が生じることがある[3] 「しばしば難聴を伴う」[9]
発熱などの全身症状 今回参照した資料に発熱の記載は見当たりません 今回参照した資料に発熱の記載は見当たりません 幼児では「発熱、悪心、嘔吐、および下痢がしばしば起こる」[9]

出典:MSDマニュアル プロフェッショナル版「外耳炎(急性)」[3]/同「中耳炎(急性)」[9]

この表からわかる大きな目安は、「かゆみが強く痛みは弱め」なら外耳道真菌症、「引っ張ると響くように痛い」なら細菌性の外耳炎、「耳の奥がズキズキ痛み熱も出る」なら中耳炎を疑う、という方向性です。ただし実際には複数の状態が混ざって起こることもあるため、この表はあくまで受診前の目安とし、最終的な診断は耳鏡検査で判断してください。中耳炎や副鼻腔炎など耳鼻咽喉科の急性疾患全体の見分け方を体系的に知りたい場合は、耳鼻咽喉科三大急性疾患(副鼻腔炎・中耳炎・咽頭炎)の解説記事も役に立ちます。

見た目の特徴——耳鏡でわかる菌糸・黒い点・綿くず状の耳だれ

外耳道真菌症は、原因となる真菌の種類によって耳だれの見た目が異なることが知られています。MSDマニュアル プロフェッショナル版は、Aspergillus niger感染時の所見として「綿状の物質(真菌菌糸)に囲まれた灰黒色点または黄点(分生子柄)」が見られると説明しています[3]。耳かきや綿棒に黒っぽい粒や綿ぼこりのようなものが付着する場合、この所見に近い状態である可能性があります。一方、Candida albicans感染時には「乳白色の粘稠な滲出液がみられ、ビロード状の外観を呈する」とされ[3]、白っぽくねばついた耳だれが特徴になります。

これらはあくまで一般的な傾向であり、自分の耳の中を鏡だけで正確に判断することは困難です。耳鼻咽喉科では耳鏡や顕微鏡を使って外耳道の中を直接観察し、必要であれば培養検査も行って原因菌を確認します。海外の文献レビューでも、真菌の分離・培養による確認が診断のもっとも確実な方法(ゴールドスタンダード)とされています[7]。自分で見た目だけから「これはカビだ」「これは耳垢だ」と決めつけず、迷ったら耳鼻咽喉科で見てもらうことが安全です。

見た目の違いは、単なる興味の対象ではありません。耳鏡での所見や培養検査の結果は、抗真菌薬(ゲンチアナバイオレット、クレジルアセテート、ナイスタチン、クロトリマゾールなど)の中からどれを選ぶかを医師が判断するための材料になります[3]。どの薬が適しているかは原因菌の種類や重症度によって変わりうるため、自己判断で市販の薬を選ぶことにはリスクが伴うと考えられます。

受診までの間、自宅でできること

予約が取れるまでの数日間、何もせず我慢するのは辛いものです。悪化させずに受診まで過ごすためのポイントを整理します。

  • 綿棒や指で耳の中をこすらない。かゆくても、外側から軽く押さえる程度にとどめる
  • 耳だれが出ているときは、清潔なガーゼやティッシュで耳の入り口だけを優しく拭き取る
  • 入浴・シャワーの際は、耳の中に直接お湯や石けん液が入らないよう注意する[3]
  • 市販の点耳薬・軟膏を新しく使い始めない。すでに使っているものがあれば、受診時に名前を伝えられるようにしておく
  • 痛みが我慢できないほど強い、発熱がある、顔面神経麻痺(顔の動きがおかしい)などの症状がある場合は、次の見出しで説明する危険なサインにあたるため、予約を待たずに早めの受診先を探す

診断はどのように行われるのか——耳鏡検査から培養検査まで

耳鼻咽喉科での外耳道真菌症の診断は、いくつかの段階を踏んで行われます。まず耳鏡(拡大鏡や内視鏡がついた耳を見るための器具)で外耳道の中と鼓膜を直接観察します。海外の文献レビューは、診断のための検査法について「培養による真菌の分離・同定がゴールドスタンダードとして残っている」と述べており[7]、見た目の観察だけでなく、必要に応じて顕微鏡での鏡検や培養検査を組み合わせて原因菌を確認することが推奨されています[7]。培養の結果が出るまでの時間は原因菌によって異なり、同レビューは酵母(カンジダなど)で「48〜72時間」、糸状菌(アスペルギルスなど)では「7〜14日間」ほどかかるとしています[7]。結果が出るまでの間、見た目や症状から暫定的に治療を始めることもありますが、これも自己判断ではなく耳鼻咽喉科の医師の判断で行われるものです。

この耳鏡検査で重要な確認事項の一つが「鼓膜に穴が開いていないか(鼓膜穿孔の有無)」です。鼓膜の状態が確認できないままだと、使える点耳薬の種類が限られてしまいます。MSDマニュアル プロフェッショナル版が「鼓膜が穿孔している場合は、これらの溶液は重度の疼痛や内耳の損傷を引き起こす可能性があるため、使用すべきでない」と警告している通り[3]、鼓膜の状態を確かめないまま治療を始めることは避けるべきとされています。自分の耳を鏡で見ただけでは鼓膜の状態まで正確に確認することはできないため、「見た目がカビっぽいから」と自己判断で市販薬を使い始めることには、この観点からもリスクがあります。

市販薬で自己判断して治そうとしてはいけない理由

「耳のかゆみ・耳だれに効く市販薬」を先に試したくなる気持ちはわかりますが、外耳道真菌症では自己判断での市販薬使用がかえって悪化を招くことがあります。

  • 市販の抗菌薬入り点耳薬やステロイド点耳薬は、真菌そのものには効かず、外耳道の細菌バランスをさらに崩して真菌を増やしてしまう可能性があります[7]
  • 鼓膜に穴が開いている(鼓膜穿孔)場合に使えない薬があります。MSDマニュアル プロフェッショナル版は「鼓膜が穿孔している場合は、これらの溶液は重度の疼痛や内耳の損傷を引き起こす可能性があるため、使用すべきでない」と警告しています[3]
  • 自分では鼓膜に穴が開いているかどうかを確認できません。耳鏡検査なしに点耳薬を使うことにはリスクが伴います

そもそも日本国内では、抗真菌薬の点耳薬・軟膏は医師の処方が必要な薬であり、薬局で自由に買える市販の抗真菌点耳薬は基本的にありません。市販で買えるのは、軽い炎症やかゆみを一時的にやわらげる程度の一般用医薬品にとどまります。痛みやかゆみが一時的に和らいでも、原因となっている真菌そのものが減っているとは限らず、見た目だけ落ち着いて受診を先延ばしにしてしまうと、かえって症状の悪化や治療の長期化につながりかねません。

真菌感染の治療でもっとも重要なのは、実は薬そのものよりも「外耳道の中を物理的にきれいにすること」です。海外の文献レビューは、非侵襲性の外耳道真菌症に対しては「徹底した外耳道の清掃(デブリードマン)に続いて局所抗真菌薬を使用することが推奨される」と述べています[7]。つまり、薬を塗る・垂らすという行為だけでは不十分で、耳鼻咽喉科で真菌のかたまりや耳だれ、剥がれた皮膚(落屑)を丁寧に取り除いたうえで薬を使うことが治療の中心になります。この「清掃」は自宅では安全に行えないため、市販薬だけで自己完結させようとすること自体が、この病気の治療の本質からずれてしまう行為だといえます。

あわせて、次のような自己流の対処も避けてください。

  • 綿棒や耳かき、こよりなどで耳だれやカビらしきものを自分でこすり出そうとすること(外耳道の傷を悪化させます[1][7])
  • 消毒液などを自己判断で耳の中に入れて洗浄すること(耳の中で使うことを想定して作られた点耳薬とは条件が異なり、専門家の指導なしに行うべきではありません)
  • ニンニクオイルなど民間療法を試すこと。耳の不調に対する民間療法の効果と危険性については、耳の不調にニンニクは効くのかを専門家が解説した記事でも取り上げられています
  • 補聴器やイヤホンをつけたまま長時間過ごすこと(外耳道真菌症の素因の一つとされています[7])
  • プールや入浴のあと、耳に水が入ったまま放置すること(湿った環境は真菌が繁殖しやすい素因の一つです[7])

水虫やカンジダ症など他の真菌感染症でも、市販薬と処方薬の使い分けは同じように重要な論点です。水虫・カンジダ症の市販薬と処方薬について解説した記事もあわせて読むと、体の部位が違っても考え方の共通点があることがわかります。

治療の実際——耳鼻咽喉科での処置と治療期間の目安

耳鼻咽喉科での外耳道真菌症の治療は、大きく分けて「清掃」と「薬物治療」の2本柱です。MSDマニュアル プロフェッショナル版は治療法について「外耳道を完全に清拭するとともに、抗真菌薬(例、ゲンチアナバイオレット、クレジルアセテート、ナイスタチン、クロトリマゾールのほか)」の溶液を用いると説明しています[3]。前の見出しで述べた通り、清掃(デブリードマン)を徹底したうえで局所抗真菌薬を使うことが基本方針とされています[7]。ここに挙げた薬剤名は国際的な医学文献に基づくものであり、日本国内でどの薬をどう使うかは、耳鼻咽喉科の医師が症状や鼓膜の状態を見て個別に判断します。抗真菌薬の中には、日本では耳の治療として承認された用法ではない「適応外使用」にあたるものが含まれる可能性もあるため、薬の名前だけを見て自分で入手しようとしないでください。

段階 内容
診断 耳鏡検査での観察に加え、必要に応じて顕微鏡による鏡検や培養検査で原因菌を確認する[7]
清掃(デブリードマン) 外耳道にたまった真菌のかたまり・耳だれ・剥がれた皮膚を丁寧に除去する。この清掃自体が治療の中心とされる[7]
薬物治療 抗真菌薬を含む点耳薬・軟膏を用いる。鼓膜穿孔がある場合は使用できない製剤があるため耳鏡検査での確認が前提となる[3]
生活面の注意 「耳の乾燥を保つ予防策(例、シャワーキャップの着用、水泳の回避)が強く推奨される」[3]

出典:MSDマニュアル プロフェッショナル版「外耳炎(急性)」[3]/Journal of Fungi掲載レビュー論文[7]

治療期間については、皮膚の状態や真菌の種類、重症度によって個人差が大きいものの、海外の文献レビューは局所抗真菌薬による治療について「少なくとも3〜4週間、継続的な観察のもとで行うべきである」としています[7]。1回の通院と処置だけで完全に治りきるとは限らず、この期間、清掃と経過観察を目的に複数回の通院が必要になることも珍しくないと考えられます。自己判断で通院をやめてしまうと、目に見える症状が軽くなっただけで真菌そのものは残っていることもあるため、耳鼻咽喉科の医師から「治療終了」の判断が出るまでは、指示された間隔で通院を続けることが大切です。

初めて受診したときの流れをイメージしておくと、通院への不安が少し減ります。まず問診でいつからかゆいか、耳掃除の習慣、既往症などを聞かれ、次に耳鏡での観察が行われます。そのうえで、たまっている真菌のかたまりや耳だれ、剥がれた皮膚を器具で丁寧に取り除く清掃が行われ、必要であれば培養検査のためのサンプルが採取されることもあります[7]。清掃時の痛みの強さは炎症の程度によって個人差があり、公的資料に一律の記載はありませんが、外耳道が大きく傷ついている場合は処置中に痛みを感じることもあります。清掃が終わったあとに、抗真菌薬の点耳薬や軟膏が処方されます。

点耳薬を自宅で使うときは、自己流で量や差し方を変えず、処方時に医師や薬剤師から説明された使い方(体位の保ち方や、しばらく同じ姿勢を保つことなど)を守ることが基本です。差し方が不十分だと薬液が患部まで行き渡らず、清掃で改善しかけた状態が長引く原因になりかねません。

再発を防ぐための生活習慣

外耳道真菌症は、治療で症状が落ち着いたあとも、同じ生活習慣を続けていると繰り返しやすい病気です。もっとも重要な予防策は、原因の見出しで述べた「耳のさわりすぎ」をやめることです。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は「入浴後にぬれた耳を軽く拭う程度が無難です。耳掃除は医学的には不必要かつ危険な行為であることを認識してください」と述べています[1]。

予防のポイント 具体的な内容
耳掃除の頻度・方法 綿棒や耳かきで奥までいじらない。入浴後にぬれた耳の入り口を軽く拭う程度にとどめる[1]
補聴器・イヤホン 密閉性のあるイヤーモールドの使用は素因の一つとされる。長時間つけたままにしない[7]
水泳・入浴後の耳 頻繁な水泳やサウナの利用は素因とされる。耳の中を過度に湿った状態にしない[7]
基礎疾患の管理 糖尿病や免疫を抑える治療を受けている場合は素因になりうるため、主治医と体調管理を続ける[7]
点耳薬の使い方 抗菌薬・ステロイドを含む点耳薬の自己判断での長期使用を避ける[7]

出典:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳垢」[1]/Journal of Fungi掲載レビュー論文[7]

「かゆいから触ってしまう→傷つく→さらにかゆくなる」という悪循環に陥りやすいのがこの病気の特徴です。治療中・治療後にかゆみが残っていても、指示された範囲を超えて耳の中を触らないようにし、どうしても気になる場合は自己流の対処ではなく耳鼻咽喉科に相談してください。

長年の習慣で耳掃除がやめられないという方も少なくありません。その場合は、綿棒や耳かきを「耳の中に入れる道具」ではなく「耳の外側だけを拭う道具」だと考え方を切り替えるとよいでしょう。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が示す「入浴後にぬれた耳を軽く拭う程度」という基準は[1]、耳掃除そのものをゼロにしなくても、外耳道の奥に道具を入れない範囲であれば大きな問題にはなりにくいという考え方に基づいています。家族に耳かきをしてもらう習慣がある場合も、同じように奥まで入れない範囲にとどめることが望ましいと考えられます。

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受診の目安——自宅で様子を見てよいか、すぐ受診すべきか

ここまでの症状・原因・危険なサインを、行動の指針として3段階に整理します。

状態 目安となる症状 とるべき行動
軽度・様子見の範囲 軽いかゆみのみで、耳だれや痛みがない 耳の中を触らず、まずは触らないで数日様子を見てもよいと考えられます
耳鼻咽喉科を予約して受診 かゆみが続く、耳だれが出る、詰まった感じがある[2] 「かゆみが治まらない場合や悪化して痛みが生じる場合、耳だれが生じる場合には耳鼻咽喉科での治療が必要」[2]。数日以内の受診を目安にしてください
すぐに受診・救急も検討 持続する強い耳痛(とくに夜間に悪化)、難聴、めまい、顔面神経麻痺(顔の動かしにくさ・口が閉じにくい・目が閉じにくいなど)、高齢者・糖尿病のある方の改善しない耳痛[4] 悪性外耳道炎の可能性があるため、様子を見続けずすぐに耳鼻咽喉科(対応できなければ救急外来)を受診してください

出典:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の症状」[2]/MSDマニュアル プロフェッショナル版「悪性外耳道炎」[4]

まれに、外耳道の感染が周囲の骨にまで広がる「悪性外耳道炎」という、命に関わりうる状態に進むことがあります。

MSDマニュアル プロフェッショナル版によると、悪性外耳道炎は「主として、高齢の糖尿病患者または易感染性患者に生じる」とされ[4]、原因菌はPseudomonas属細菌が中心ですが、外耳道の感染症をきっかけに広がることが多いとされています[4]。次のような症状がある場合は、単なる外耳道真菌症や外耳炎ではなく、この状態を疑って早めに耳鼻咽喉科(高齢者・糖尿病のある方は救急外来も検討)を受診してください。

  • 「持続性で重度かつ深部の耳痛(しばしば夜間に悪化する)」[4]
  • 「悪臭を伴う膿性耳漏」[4]
  • 外耳道に「肉芽組織または露出した骨」が見える[4]
  • 「様々な程度の伝音難聴」[4]
  • 「顔面神経麻痺、およびさらに下位の脳神経麻痺」を伴う場合(顔の動きがおかしい、ものが飲み込みにくいなど)[4]

MSDマニュアル プロフェッショナル版は、この状態を「生命を脅かす可能性があるこの感染」と表現しており[4]、治療には「培養結果に基づくフルオロキノロン系薬剤(例、シプロフロキサシン)の6週間の静脈内投与」や、糖尿病がある場合はその厳格な管理が不可欠とされています[4]。高齢の方・糖尿病のある方で、耳の痛みが夜になるほど強くなる、市販薬や通常の点耳薬を使っても数日で改善しない、という場合には、様子を見続けずに医療機関を受診してください。

ここまでの内容を踏まえると、とくに注意して経過を見たほうがよい人がいます。糖尿病のある方、免疫を抑える治療を受けている方、補聴器やイヤホンを毎日長時間使う方、耳掃除の頻度が高い方、水泳やサウナの習慣がある方です[4][7]。これらに当てはまる人は、症状が軽いうちから自己判断で様子を見すぎず、早めに耳鼻咽喉科で相談することをおすすめします。

日本と米国のガイドライン比較——耳掃除・綿棒の扱い

「耳掃除はしすぎないほうがよい」という考え方は、日本国内だけの独自のものではありません。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会と、米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会財団(AAO-HNSF)による耳垢に関するガイドラインを比較すると、大枠では同じ方向を向いていることがわかります。

項目 日本(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会) 米国(AAO-HNSF、2017年アップデート版)
綿棒での耳掃除に対する姿勢 「耳掃除は医学的には不必要かつ危険な行為である」[1] “Patients should be advised against using cotton swabs or small objects to clean the ear.”(綿棒や小さな器具を耳の中に入れて掃除しないよう助言すべきである)[8]
耳掃除前に確認すべき基礎疾患・状態 今回参照した解説ページには、個別の基礎疾患チェック項目の明記は見当たりません 評価の際に確認すべき事項として、抗凝固薬の使用・免疫不全・糖尿病・頭頸部への放射線治療歴・外耳道狭窄・骨腫・鼓膜穿孔などを挙げている[8]

出典:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳垢」[1]/American Academy of Family Physicians「Cerumen Impaction: An Updated Guideline from the AAO-HNSF」[8]

両者に共通しているのは「綿棒などを耳の中に入れて掃除すること自体を推奨しない」という結論です。違いが見えるのは踏み込みの深さで、米国側のガイドラインは糖尿病や免疫不全、鼓膜穿孔の有無などを事前に確認すべき項目として明文化しているのに対し、今回参照した日本の一般向けページではそこまで細かい基礎疾患のチェックリストは示されていません。これは日本の医療現場が基礎疾患を考慮していないという意味ではなく、参照したページが一般向けの解説であることによる書き方の違いである可能性がある点に注意してください。

治療にかかる費用の目安

外耳道真菌症の診察・清掃・投薬は、通常の耳鼻咽喉科での保険診療の対象となります。通院回数が増えると自己負担額も積み重なるため、目安を事前に確認しておくと安心です。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

耳鼻咽喉科の受診時に伝えたいことチェックリスト

  • いつから耳がかゆい・耳だれがあるか(発症時期)
  • 症状が片耳か両耳か
  • 直前に耳掃除・耳かき・綿棒を使ったか、その頻度
  • 補聴器やイヤホンを長時間使用しているか
  • プールや温泉、シャワーのあと耳に水が入りやすいか
  • 糖尿病など基礎疾患があるか、免疫を下げる薬を使っているか
  • すでに使った市販薬・処方薬(点耳薬・軟膏)の名前
  • 過去に同じ症状を繰り返しているか

外耳道真菌症は人にうつるのか

結論から言うと、外耳道真菌症が人から人へ直接うつる感染症であるという明確な記載は、今回参照した公的資料には見当たりませんでした。ここで重要なのは、原因となる真菌がどのような性質を持つかです。MSDマニュアル プロフェッショナル版は、アスペルギルスについて「環境中に遍在する糸状菌である」と説明しており[5]、カンジダについては「皮膚および粘膜に常在する普遍的な酵母様真菌であり」「湿気や熱、局所および全身の感染防御機能の障害などによって増殖に適した環境が成立しない限り害を及ぼすことはない」と説明しています[6]。

つまり、これらの真菌はもともと空気中や皮膚の上にありふれて存在しており、特定の誰かからうつしてもらわなくても、身の回りに普通に存在しているということです。発症するかどうかを左右するのは、他人との接触の有無ではなく、耳掃除のしすぎによる皮膚の傷、湿気がこもりやすい環境、免疫の状態など、その人自身の外耳道の条件だと考えられます。タオルやイヤホンを他人と共用すること自体が感染経路として明記された公的資料は見当たりませんでしたが、清潔でないものを耳に入れる行為は皮膚を傷つける可能性がある点で、他の原因と同様に注意しておくとよいでしょう。

外耳道真菌症が日本国内でどの程度の頻度で起きているかについて、今回参照した資料には全国規模の統一的な統計は見当たりませんでした。本記事で示した9〜30%という数値は世界的な報告の範囲であり[7]、調査対象や地域によって差があります。また、症状や耳だれの色だけで細菌性外耳炎や外耳道湿疹と確実に区別することは難しく、最終的には耳鏡検査や顕微鏡検査、培養検査による確認が必要です[7]。治療にかかる標準的な日数についても、公的資料に一律の基準は示されていないため、本記事では具体的な日数を断定していません。

最後に、ここまでの内容を短くまとめます。強い耳のかゆみと耳だれが続くとき、まず疑うべきは「耳掃除のしすぎ」による皮膚の傷と、そこに繁殖した真菌です。市販薬や自己流の耳掃除で様子を見るのではなく、耳鼻咽喉科での耳鏡検査と、必要な清掃・投薬を受けることが遠回りに見えて実は一番の近道です。治療後は、綿棒や耳かきを耳の奥まで入れる習慣そのものを見直すことが、再発を防ぐ一番の対策になります。

よくある質問

外耳道真菌症とはどんな病気ですか?
外耳道(耳の入り口から鼓膜までの管)にアスペルギルスやカンジダなどの真菌(カビ)が繁殖する病気です。世界的には外耳道の感染症の9〜30%を占めるとされています[7]。強いかゆみと耳だれ、耳の詰まった感じが代表的な症状です[3]。
外耳道真菌症の症状にはどのようなものがありますか?
もっとも目立つのは強い耳のかゆみで、耳だれ、耳の詰まった感じ、時に耳の痛みや耳鳴りを伴います[7]。MSDマニュアル プロフェッショナル版は「疼痛よりもそう痒が強い」と説明しています[3]。
初期症状にはどのような特徴がありますか?
初期は軽い耳のかゆみや耳の詰まった感じから始まることが多く、進行すると耳だれが増え、綿くず状や黒い粒、白くねばついた分泌物が目立つようになります[3]。かゆみが治まらず悪化する場合は早めの受診が推奨されます[2]。
外耳道真菌症の主な原因は何ですか?
最大の原因は綿棒や耳かきによる「耳のさわりすぎ」で、外耳道の薄い皮膚が傷つき、耳垢の保護作用が失われることです[1]。そのほか補聴器・イヤホンの長時間使用、水泳やサウナによる湿気、糖尿病や免疫抑制状態、抗菌薬点耳薬の使用も素因とされています[7]。
治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
重症度や真菌の種類、皮膚の回復力によって個人差が大きく、公的資料に一律の日数は示されていません。1回の処置で終わるとは限らず、外耳道の清掃と経過観察のために複数回の通院が必要になることも珍しくないと考えられます。医師から治療終了の判断が出るまで通院を続けることが大切です。
市販薬で治すことはできますか?
推奨されません。日本では抗真菌薬の点耳薬・軟膏は医師の処方が必要で、市販の抗真菌点耳薬は基本的にありません。市販の抗菌薬・ステロイド入り点耳薬は真菌には効かず、かえって外耳道の細菌バランスを崩す可能性があります[7]。鼓膜に穴が開いている場合に使えない薬もあります[3]。
どんな点耳薬が使われますか?
MSDマニュアル プロフェッショナル版は、抗真菌薬として「ゲンチアナバイオレット、クレジルアセテート、ナイスタチン、クロトリマゾール」などの溶液を挙げています[3]。どれを使うかは鼓膜穿孔の有無や真菌の種類によって医師が判断します。
耳垢と外耳道真菌症にはどんな関係がありますか?
耳垢には本来「細菌やカビが外耳道に繁殖するのを防いだり、敏感な外耳道皮膚を保護する役割」があります[1]。耳掃除のしすぎで耳垢を取りすぎたり皮膚を傷つけたりすると、この保護作用が失われ、真菌が繁殖しやすくなります。
外耳道真菌症は人にうつりますか?
人から人へ直接うつる感染症であるという明確な記載は、今回参照した公的資料には見当たりませんでした。原因となる真菌はもともと環境中や皮膚に普通に存在しており、耳掃除のしすぎなど自分自身の外耳道の状態が発症の主な要因と考えられます[5][6]。
耳かきは何日に1回すればよいですか?
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は「入浴後にぬれた耳を軽く拭う程度が無難です。耳掃除は医学的には不必要かつ危険な行為であることを認識してください」と述べています[1]。奥までの耳掃除自体を頻繁に行う必要はないという立場です。
耳がかゆく、汁が出て臭いもする場合はどうすればいいですか?
かゆみに加えて耳だれや臭いがある場合は、外耳道真菌症や細菌性外耳炎の可能性があります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も「かゆみが治まらない場合や悪化して痛みが生じる場合、耳だれが生じる場合には耳鼻咽喉科での治療が必要」としています[2]。自己判断で市販薬を使い続けず、早めに受診してください。
イヤホンをよく使うのですが関係ありますか?
関係がある可能性があります。補聴器や密閉性のあるイヤホンを長時間使用することは、外耳道真菌症の素因の一つとして挙げられています[7]。耳の中の湿気や熱がこもりやすくなるためと考えられます。長時間の使用を避け、蒸れを感じたら外して耳を休ませることをおすすめします。
耳がかゆいのですが、外耳道真菌症以外の可能性もありますか?
あります。イヤリングや補聴器の部品、ヘアスプレーなどへの接触皮膚炎・外耳道湿疹でも「そう痒、発赤」などかゆみの強い症状が起こります[10]。そのほか耳垢がたまりすぎる耳垢栓塞や、虫が耳に入る外耳道異物でも、かゆみや詰まった感じが出ることがあります[1][11]。見た目だけで区別するのは難しいため、耳鼻咽喉科での確認をおすすめします。
外耳道真菌症の診断はどうやって行われますか?
耳鼻咽喉科で耳鏡を使って外耳道と鼓膜を観察し、必要に応じて顕微鏡での鏡検や培養検査を行って原因菌を確認します。培養による確認が診断のもっとも確実な方法とされています[7]。鼓膜に穴が開いていないかの確認も、使える薬を判断するうえで重要です[3]。
外耳道真菌症は市販薬を使わずに放っておけば自然に治りますか?
自然に軽快することもあり得ますが、公的資料では清掃(デブリードマン)と抗真菌薬による治療が基本とされており[7]、様子を見ている間に症状が悪化したり、まれに悪性外耳道炎のような重い状態に進むこともあります[4]。かゆみや耳だれが数日続く場合は、放置せず耳鼻咽喉科を受診してください。
耳鼻咽喉科で耳垢を全部取ってもらったほうがいいですか?
必ずしも「全部取る」ことが目的ではありません。耳垢には「細菌やカビが外耳道に繁殖するのを防いだり、敏感な外耳道皮膚を保護する役割」があるため[1]、治療で真菌や耳だれを丁寧に除去したあとは、耳垢そのものを不要に取りすぎないようにすることも、再発を防ぐうえで大切です。
耳栓をすれば水泳をしても大丈夫ですか?
治療後の生活面の注意として、耳の乾燥を保つために「シャワーキャップの着用、水泳の回避」が強く推奨されています[3]。耳栓が絶対に安全とは言い切れないため、治療中や治りかけの時期は、まずは水泳自体を控えることを優先し、再開の時期は担当医に確認してください。
何科を受診すればいいですか?内科でもいいですか?
耳の中の状態を耳鏡で直接観察し、必要であれば顕微鏡検査や培養検査、耳内の清掃までを行えるのは耳鼻咽喉科です。強い痛みや高熱、めまい、顔面神経麻痺(顔の動かしにくさなど)といった緊急性が疑われるサインがある場合は、耳鼻咽喉科がすぐに受診できないときの選択肢として救急外来も検討してください[4]。

参考文献

  1. 一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳垢」 https://www.jibika.or.jp/modules/disease_kids/index.php?content_id=2 ↩
  2. 一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の症状」 https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=15 ↩
  3. MSDマニュアル プロフェッショナル版「外耳炎(急性)」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/16-耳鼻咽喉疾患/外耳疾患/外耳炎-急性 ↩
  4. MSDマニュアル プロフェッショナル版「悪性外耳道炎」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/16-耳鼻咽喉疾患/外耳疾患/悪性外耳道炎 ↩
  5. MSDマニュアル プロフェッショナル版「アスペルギルス症」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/13-感染性疾患/真菌/アスペルギルス症 ↩
  6. MSDマニュアル プロフェッショナル版「カンジダ症(粘膜皮膚)」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/14-皮膚疾患/皮膚真菌感染症/カンジダ症-粘膜皮膚 ↩
  7. Iordache A. et al.「Etiology, Predisposing Factors, Clinical Features and Diagnostic Procedure of Otomycosis: A Literature Review」Journal of Fungi, 2023(PMC) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10302809/ ↩
  8. American Academy of Family Physicians「Cerumen Impaction: An Updated Guideline from the AAO-HNSF」2017(AAO-HNSFガイドラインの要約記事) https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2017/0815/p263.html ↩
  9. MSDマニュアル プロフェッショナル版「中耳炎(急性)」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/16-耳鼻咽喉疾患/中耳および鼓膜疾患/中耳炎-急性 ↩
  10. MSDマニュアル プロフェッショナル版「外耳道の皮膚炎(慢性外耳炎)」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/16-耳鼻咽喉疾患/外耳疾患/外耳道の皮膚炎-慢性外耳炎 ↩
  11. 社会福祉法人恩賜財団済生会「外耳道異物」 https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/foreign_body_in_external_auditory_canal/ ↩

更新日:2026年7月25日。本記事の内容について誤りや古い情報にお気づきの際は、編集部までお知らせください。事実を確認のうえ訂正いたします。

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Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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