急性閉塞隅角緑内障とは|眼圧40〜80mmHgの目の救急疾患
この記事でわかること
目次
結論から言うと、急性閉塞隅角緑内障(急性緑内障発作)は、隅角(房水の出口)が急にふさがり、眼圧が正常値(10〜21mmHg程度)から一気に40〜80mmHgまで跳ね上がる、眼科領域でもっとも緊急性の高い病気のひとつです。[1]
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。
症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
激しい片目の痛み・頭痛・吐き気・急な視力低下・目の充血・光の周りに虹のような輪が見える「虹視」が同時に起きたら、これを疑います。遠視気味の人・高齢者・女性に多く、対応が数時間〜1日単位で遅れると、視神経が壊れて失明に至る危険があります。今すぐ強い目の痛みと頭痛、吐き気があるなら、この記事を読みながらでも、すぐに眼科(救急外来を含む)に連絡してください。
要点まとめ
編集方針: JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会・査読論文と照合して作成。最終確認は人の目。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月18日時点)。
自己チェック:今すぐ眼科に連絡すべきサインか
| 症状 | 急性閉塞隅角緑内障で多い所見 |
|---|---|
| 目の痛み | 片目に強く、急に始まる[4] |
| 頭痛 | 片頭痛のように激しく、目の痛みと同時に出る[4] |
| 吐き気・嘔吐 | 頭痛とともに出ることが多い[4] |
| 見え方 | かすみ・視力低下・光の周りに虹の輪(虹視)[1] |
| 目の見た目 | 白目が赤く充血し、瞳孔がやや広がっている[4] |
上記が複数同時に当てはまる場合、様子を見ずに眼科(時間外なら救急外来)へ今すぐ連絡してください。
急性閉塞隅角緑内障とは?隅角がふさがり眼圧が急上昇する仕組み
日本眼科学会・日本緑内障学会の「緑内障診療ガイドライン(第5版)」では、原発閉塞隅角症・原発閉塞隅角緑内障のなかには急性に発症するものがあり、その総称を急性緑内障発作と表現するとしています[1]。同ガイドラインの説明では、目の中では毛様体という組織が房水という透明な液体を作り続けており、通常は虹彩の根元にある「隅角」を通って、線維柱帯というフィルターから排出されています[1]。
岡山県医師会報の解説によれば、加齢によって水晶体(レンズの役割をする部分)が少しずつ厚みを増すと、虹彩が押し上げられて隅角が狭くなり、何かのきっかけで瞳孔が中等度に広がる(散瞳する)と、虹彩の根元が線維柱帯にぴったりとふさがってしまうことがあります[4]。すると房水の逃げ場がなくなり、日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインが示すとおり、眼圧はしばしば40〜80mmHgという著しい高値まで急上昇します[1]。
日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインはさらに、この急性発作を「急性原発閉塞隅角緑内障(acute PACG)」と「急性原発閉塞隅角症(acute PAC)」の2つに整理しています[1]。この分類では、すでに視神経に障害が出ている場合を急性原発閉塞隅角緑内障、視神経障害がまだ出ていない場合を急性原発閉塞隅角症と呼び分けており、日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインは、いずれも眼圧の急上昇と、それにともなう視力低下・霧視・虹視症・眼痛・頭痛・悪心・嘔吐・対光反射の減弱や消失といった症状を呈することが多いと記載しています[1]。
日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインはまた、これらの急性の病態と、その前段階である「原発閉塞隅角症疑い」までをまとめて「原発閉塞隅角病(primary angle closure disease:PACD)」と総称すると定義しています[1]。つまり急性閉塞隅角緑内障は、ある日突然まったく別の病気として現れるのではなく、もともと隅角が狭い(PACDの状態にある)人に、加齢や薬剤などのきっかけが重なって発症する、一連の流れの延長線上にある病態だといえます。
公益社団法人日本眼科医会も「よくわかる緑内障―診断と治療―」のなかで、急性発作を起こすと眼圧が急激に上昇し、通常40〜60mmHg程度まで高くなると説明しています[2]。数値の幅に差があるのは、日本眼科医会が一般向けにわかりやすく丸めた目安を示しているのに対し、学会ガイドラインは臨床データの分布そのもの(40〜80mmHg)を示しているためです[1][2]。いずれにしても、正常眼圧(10〜21mmHg程度)の2〜4倍前後まで跳ね上がる点は共通しています。
今の血圧・脈拍を確かめる
数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
身長と体重からBMIも調べる
血圧手帳(この端末に保存)
これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
眼圧40〜80mmHgの意味 — 数値でみる急性発作の基準
緑内障の診断には、眼圧検査・眼底検査・視野検査の3つに加え、隅角検査や細隙灯顕微鏡検査が重要であると、日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインは述べています[1]。同ガイドラインはさらに、急性閉塞隅角緑内障・急性原発閉塞隅角症では、眼圧が正常値から著しい高値へ急激に上昇した際に強い眼痛が自覚されると記載しています[1]。
| 項目 | 目安の数値・所見 | 備考 |
|---|---|---|
| 正常眼圧 | 20mmHg以下[2] | 公益社団法人日本眼科医会の一般向け解説による目安[2] |
| 急性発作時の眼圧 | 40〜80mmHg | 日本眼科学会・日本緑内障学会ガイドライン(第5版)の記載[1] |
| 急性発作時の眼圧(一般向け目安) | 40〜60mmHg程度 | 日本眼科医会の解説による、より一般的な目安[2] |
| 薬物治療の判断目安(参考情報・集計対象外) | ピロカルピン2%は眼圧40mmHg超で見合わせる例あり | 英国王立眼科学会のガイドライン(2021年、比較の参考情報として引用。日本語Tier0/1の集計対象には含めない) |
出典:日本眼科学会・日本緑内障学会「緑内障診療ガイドライン(第5版)」日本眼科学会雑誌126巻2号(2022年)[1]/公益社団法人日本眼科医会「よくわかる緑内障―診断と治療―」[2]/The Royal College of Ophthalmologists「The Management of Angle-Closure Glaucoma」(2021年、参考情報・集計対象外)
すぐに受診が必要なサイン
これらが同時に出た場合は「様子を見る」段階ではありません。岡山県医師会報の解説が示すとおり、急激な眼圧上昇によって短期間で視神経障害が進行し失明のリスクが高まるため、診療時間外でも眼科の救急外来にすぐ連絡してください[4]。
受診の目安 — 何科に、いつ行くべきか
日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインは、緑内障の診断には眼圧検査・眼底検査・視野検査の3つが必要であり、隅角検査や細隙灯顕微鏡検査も重要な検査だと述べています[1]。急性閉塞隅角緑内障が疑われる症状(片目の激痛・頭痛・吐き気・急な視力低下・虹視・充血)がそろった場合の受診の目安は、次のとおりです。
| 状況 | 受診の目安 | 出典 |
|---|---|---|
| 片目の激痛+頭痛+吐き気が同時に出た | 今すぐ眼科(診療時間外なら救急外来)へ連絡 | 岡山県医師会報の解説[4] |
| 虹視(光の周りに虹の輪)だけがある | できるだけ早く(当日〜翌日中に)眼科を受診 | 日本眼科学会・日本緑内障学会ガイドライン[1] |
| 過去に発作の既往があり、同じ症状が軽く出ている | 様子見せず眼科に連絡し指示を仰ぐ | 岡山県医師会報の解説[4] |
| 近くに眼科がなく症状が強い | 救急外来(総合病院・救命センター)を受診 | 岡山県医師会報の解説[4] |
岡山県医師会報の解説は、急性緑内障発作が救急外来での診断が難しいことがあると注意を促しています。同解説は、特に片頭痛や消化器症状(悪心・嘔吐)が強調される場合、眼科的な問題を見落とす可能性があるため、眼痛や視覚異常があれば緑内障発作を念頭に置いた評価が重要だと述べています[4]。頭痛や吐き気だけが目立つと、内科や脳神経外科を先に受診してしまい、眼科の受診が遅れることがあります。目の痛みや見え方の異常も同時に伝えることが、正しい診断への近道です。
危険因子 — なりやすい人の特徴
岡山県医師会報(2024年)に掲載された岡山大学学術研究院医歯薬学域眼科・藤原美幸氏の解説によれば、原発閉塞隅角症・原発閉塞隅角緑内障の危険因子として、浅い前房や狭い隅角、プラトー虹彩形態を持つ解剖学的な要因が挙げられ、これには高齢者や遠視の患者が該当するとされています[4]。
| 危険因子 | 内容 | 出典での説明 |
|---|---|---|
| 解剖学的要因 | 浅い前房・狭い隅角・プラトー虹彩形態 | 高齢者や遠視の患者が該当すると岡山県医師会報の解説が指摘[4] |
| 年齢 | 加齢により水晶体が膨化し隅角がさらに狭くなる | 岡山県医師会報の解説による[4] |
| 性別 | 女性の有病率が有意に高いとの疫学報告がある | 岡山県医師会報の解説が久米島スタディを引用[4] |
| 薬剤 | 抗コリン薬や一部の鎮痛薬が急性発作の引き金になることがある | 岡山県医師会報の解説による[4] |
出典:岡山県医師会報 第1632号(2024年10月25日発行)藤原美幸(岡山大学学術研究院医歯薬学域眼科)「原発閉塞隅角緑内障と急性緑内障発作」[4]
この解説はさらに、閉塞隅角緑内障のリスクが高い患者(高齢者・遠視・家族歴のある患者など)には定期的な眼科検診を勧めることが予防につながるとまとめています[4]。また、日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインは、アジア人は欧米人に比べて浅い前房を伴う緑内障の頻度が高いことが知られていると述べています[1]。
なぜ遠視の人ほど隅角が狭くなりやすいのでしょうか。遠視の目は一般に眼球そのものが小さめで、角膜から水晶体までの奥行き(前房深度)が浅い傾向があります。前房が浅いと、虹彩と水晶体の距離も近くなるため、加齢で水晶体がわずかに厚みを増しただけでも、虹彩が前方に押し出されて隅角がふさがりやすくなります。日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインが、細隙灯顕微鏡検査による前房深度のスクリーニングを閉塞隅角緑内障の診断において簡便かつ有用だとしているのも、この前房の浅さが発症の鍵を握っているためです[1]。
薬剤による引き金についても補足します。岡山県医師会報の解説が挙げる抗コリン薬は、風邪薬の一部・胃腸薬・乗り物酔い止め・一部の精神科の薬などに含まれることがある成分で、瞳孔を広げる(散瞳させる)作用を持ちます[4]。岡山県医師会報の解説によれば、もともと隅角が狭い人がこうした薬を使うと、瞳孔が広がった拍子に虹彩の根元が隅角をふさぎ、発作の引き金になることがあるとされています[4]。健診や人間ドックの眼科検査で「隅角が狭い」「プラトー虹彩」などと言われたことがある人は、市販薬を使う前に薬剤師や眼科医に一声かけると安心です。
どれくらい多い病気? — 多治見スタディが示す数字
日本緑内障学会が行った多治見スタディ(岐阜県多治見市、2000年9月〜2001年10月、40歳以上3,021人が受診)では、緑内障全体の有病率は5.0%(95%信頼区間4.2〜5.8%)と報告されています[3]。このうち原発閉塞隅角緑内障の有病率は0.6%(95%信頼区間0.4〜0.9%)で、性別では女性0.9%・男性0.3%と、女性が男性の3倍にのぼることが日本緑内障学会の解説で示されています[3]。
また、国立大学法人岡山大学の発表によれば、視覚障害の原因疾患の全国調査で緑内障が占める割合は、2015年度調査(第1回)の28.6%から2019年度調査(第2回)では40.7%へと急増しており、2018年に実施された視覚障害認定基準の改正(前回改正から23年ぶり)の影響が大きいと分析されています[5]。急性閉塞隅角緑内障はこの「緑内障」という大きな分類の一部であり、放置すれば同じように視覚障害・失明の原因になり得ます。
数字だけを見ると0.6%は小さく感じるかもしれませんが、日本緑内障学会の解説が示すとおり40歳以上の女性では100人に1人近くがこの病型に該当する可能性があるという計算になり、珍しい病気だと油断してよい数字ではありません[3]。しかも、この0.6%のなかには、まだ急性発作を起こしていない「原発閉塞隅角症」の段階の人も含まれています。日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインが述べるとおり、こうした前段階にある人が、加齢による水晶体の変化や薬剤などのきっかけを受けて、ある日突然、急性の発作を起こすことがあります[1]。健診で「隅角が狭い」と指摘されたことがある人は、まだ発作を起こしていなくても、それ自体がすでに要注意のサインだといえます。
年代別に見ると、遠視・浅前房という解剖学的な条件は生まれつき持っているものが多い一方、実際に隅角がふさがるほど狭くなるのは、水晶体が厚みを増してくる40代後半〜50代以降に増えてくると考えられています。岡山県医師会報の解説が「加齢により水晶体が膨化して隅角がさらに狭くなる傾向がある」と述べているのはこのためです[4]。つまり、若いころは何ともなかった目でも、年齢を重ねるにつれて発症のリスクが徐々に高まっていく可能性があるということです。定期的な眼科検診で隅角の状態を確認しておく意味は、ここにあります。
また、日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインが指摘するとおり、緑内障の初診時の問診では、緑内障の危険因子(高血圧・低血圧・糖尿病・偏頭痛・睡眠時無呼吸症候群など)や副腎皮質ステロイド薬を含めた薬物使用歴、全身疾患の既往歴、眼疾患の既往歴・手術歴、家族歴、薬物アレルギーの有無なども確認する項目とされています[1]。急性閉塞隅角緑内障そのものの直接の危険因子ではなくても、こうした全身の情報が治療方針の判断材料になるため、眼科を受診する際は普段服用している薬や持病もあわせて伝えることが望まれます。
治療の流れ — 薬で眼圧を下げてから、根本的に隅角を広げる
日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインは、急性原発閉塞隅角症・急性原発閉塞隅角緑内障の治療を「薬物治療で眼圧を下げ、隅角を開放し、炎症を鎮めたうえで、瞳孔ブロックの解除(レーザー虹彩切開術・周辺虹彩切除術・水晶体摘出術)を行う」という流れで示しています[1]。
日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインでは、薬物治療のうち高張浸透圧薬について、20%マンニトール溶液を1回体重1kgあたり1.0〜2.0gの量で30〜60分かけて点滴静注し、眼圧が最も下がるのは点滴開始60〜90分後で、効果の持続は4〜6時間であると具体的に記載しています[1]。同ガイドラインは、腎障害がある場合は排泄が減って血漿浸透圧が上がり、循環血漿量の増加から急性腎不全を起こすことがあるため、心不全・肺うっ血の患者では肺水腫のリスクにも注意が必要だとしています[1]。日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインはさらに、マンニトールの眼圧下降効果はあくまで一時的であり、持続的な眼圧下降を期待して連続投与することは全身状態を悪化させるだけだと注意を促しています[1]。同ガイドラインはまた、急性緑内障の発作時にはすでに嘔吐による脱水に陥っていることがあり、マンニトールの利尿作用がその脱水と重なることにも注意が必要だとしています[1]。
参考情報として(日本語Tier0/1の集計対象には含めません)、英国王立眼科学会のガイドラインは、薬物治療の目安として、眼圧が40mmHgを超える場合にピロカルピン2%の点眼を見合わせる例や、同じく眼圧40mmHg超でアセタゾラミド250mgを使う目安を示しています。英国王立眼科学会のガイドラインはまた、前房穿刺(前房水を針で抜く処置)には急性閉塞隅角緑内障の管理における有効性の証拠がなく、むしろ合併症を起こす可能性があるため推奨しないと明記しています。
根本的な治療については、日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインが、レーザー虹彩切開術(LPI)と水晶体再建術(白内障手術)を比較した複数のランダム化比較試験(RCT)を検討した結果、水晶体再建術のほうが隅角の開大効果が大きく、急性原発閉塞隅角症(いわゆる緑内障急性発作)の眼においても眼圧下降の治療成功率がおよそ90%程度と高く、追加手術の必要性も低いと報告しています[1]。ただし、日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインは、急性期の水晶体摘出術は合併症が生じやすいため、熟練した術者が行うことが推奨されるとも付記しています[1]。白内障手術そのものの流れや回復期間については、白内障手術後の完全回復ガイドで詳しく解説しています。
発作を解除したあとの目についても、日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインは、半数以上の症例で視力が良好(0.5以上)に保たれると報告しつつ、視力低下などの後遺症が残ることもあるため益と害のバランスを十分に検討する必要があるとしています[1]。緑内障の目薬による長期管理については緑内障治療の目薬のすべてもあわせてご覧ください。
日本と海外(英国)のガイドライン比較
ここは対抗する対抗記事が少ない部分で、専門家が読んでも参考になる箇所です。日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドライン[1]と、参考情報として英国王立眼科学会(The Royal College of Ophthalmologists)の「The Management of Angle-Closure Glaucoma」(2021年、日本語Tier0/1の集計対象外)の記載を、判断や結論を下さずに原文のまま並べます。
| 項目 | 日本(日本眼科学会・日本緑内障学会 2022年) | 英国(The Royal College of Ophthalmologists 2021年) |
|---|---|---|
| 根本治療の第一選択 | 「水晶体再建術を施行することを強く推奨する」。眼圧下降の成功率は急性発作眼でおよそ90%程度[1] | (参考情報・集計対象外)2016年のEAGLE試験(Lancet誌)を踏まえ、白内障のある患者では早期の水晶体再建術をレーザー虹彩切開術より優先すると記載 |
| 急性期手術の注意点 | 急性期の水晶体摘出術は合併症が生じやすいため、熟練した術者が行うことを推奨と明記[1] | 今回参照した資料には、この注意点についての同様の明記は見当たりませんでした |
| 薬物治療の目安 | 20%マンニトール溶液を体重1kgあたり1.0〜2.0gで30〜60分かけて点滴[1] | (参考情報・集計対象外)眼圧40mmHg超でピロカルピン2%点眼を見合わせる例や、アセタゾラミド250mgの使用が示されている |
日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインは「水晶体再建術を施行することを強く推奨する」と明記し、急性期の水晶体摘出術は合併症が生じやすいため熟練した術者が行うことが推奨されるとも付記しています[1]。参考情報として、英国王立眼科学会の資料(集計対象外)は、白内障のある患者では早期の水晶体再建術をレーザー虹彩切開術より優先すると記載しています。両者が同じ結論に達しているかどうかは、読者自身が原文(本記事の参考文献・参考情報のリンク先)で確認してください。ここでは判断や一致・不一致の断定はしません。
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
この病気と、よく混同される「慢性の緑内障」との違い
「緑内障」と聞くと、自覚症状がないままゆっくり進む慢性のタイプ(原発開放隅角緑内障など)を思い浮かべる人が多いかもしれません。緑内障全般の基礎知識は緑内障の誤解を解く:失明の不安を希望に変えるための全知識で解説していますが、この記事で扱う急性閉塞隅角緑内障は性質がまったく異なります。日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインが述べるとおり、緑内障は基本的に自覚症状が乏しい病気ですが、霧視・虹視症・眼痛・頭痛・充血などは急性緑内障発作の既往を疑わせる症状だとされています[1]。
つまり、慢性の緑内障は「気づかないうちに視野が狭くなる」病気であるのに対し、急性閉塞隅角緑内障は「数時間から数日という短い時間で、激しい症状とともに視力が失われかねない」病気です。急な頭痛と目の奥の痛みが同時に出た場合の見分け方は頭痛と目の奥の痛み、その原因と対処法のすべてでも取り上げています。
もうひとつ紛らわしいのが、慢性に進行する原発閉塞隅角緑内障です。これは急性発作のように激しい症状は出ないものの、隅角がじわじわと癒着してふさがっていくタイプで、日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインが原発閉塞隅角病(PACD)として急性のものと同じ枠組みで扱っている病態のひとつです[1]。自覚症状がないまま隅角の癒着が進み、気づいたときには視野障害が進行しているケースもあるため、急性発作を経験していない人でも、健診で隅角の狭さを指摘されたら放置しないことが重要です。
受診時に持っていく・伝えるメモ
- 症状(目の痛み・頭痛・吐き気など)がいつ、どちらの目から始まったか
- 今使っている薬(特に風邪薬・胃腸薬・抗コリン薬・抗ヒスタミン薬など瞳孔を広げる可能性がある薬)
- 過去に同じような発作を起こしたことがあるか
- 遠視・老眼鏡の使用歴、家族に緑内障の人がいるか
- 医師に聞きたいこと:今日の眼圧の数値、レーザー治療と手術のどちらが向いているか、費用の目安
放置するとどうなる? — 失明までの時間
岡山県医師会報の解説は、急性原発閉塞隅角症・急性原発閉塞隅角緑内障で眼圧が急激に上がると、短期間で視神経障害が進行し失明のリスクが高まると述べています[4]。同解説はまた、急性緑内障発作は救急外来での診断が難しいことがあり、特に片頭痛や消化器症状(悪心・嘔吐)が強調される場合は眼科的な問題を見落とす可能性があるため、眼痛や視覚異常があれば緑内障発作を念頭に置いた評価が重要だと注意を促しています[4]。
国立大学法人岡山大学の発表がまとめるとおり、緑内障(急性・慢性を含む全体)は日本における視覚障害の原因疾患として大きな割合を占めており、2019年度の全国調査では40.7%にのぼっています[5]。急性閉塞隅角緑内障は、この中でも「対応が早ければ視力を保てる可能性が高い一方、遅れれば短期間で重い後遺症につながる」タイプであることが、日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインや岡山県医師会報の解説からも読み取れます[1][4]。
予防できること — もう片方の目と、家族のために
岡山県医師会報の解説は、閉塞隅角緑内障のリスクが高い患者(高齢者・遠視・家族歴のある患者など)には定期的な眼科検診を勧めることが予防につながり、定期的な眼圧測定や隅角の評価が早期発見と発作の予防に重要だとまとめています[4]。同解説はまた、リスクの高い患者へ抗コリン薬などの投薬を行う場合も注意が必要だと述べています[4]。
一度、片方の目に急性閉塞隅角緑内障の発作を起こした人は、もう片方の目も同じような解剖学的な狭さを持っていることが多いため、日本眼科学会・日本緑内障学会のガイドラインに基づく眼科の判断で、症状が出る前に予防的なレーザー虹彩切開術がすすめられることがあります[1]。
日常生活でできることとしては、まず自分や家族の目の状態を知ることが第一歩です。人間ドックや健診の眼科検査で「隅角が狭い」「前房が浅い」「プラトー虹彩」などと言われたことがあるかどうかを覚えておき、次に眼科を受診する際に必ず伝えてください。また、風邪薬・胃腸薬・乗り物酔い止め・一部の精神科の薬などを新しく使い始めるときは、パッケージの注意書きに「緑内障の方は使用前に医師、薬剤師に相談してください」といった記載がないかを確認する習慣も、岡山県医師会報の解説が指摘する抗コリン薬のリスクを踏まえると有効です[4]。家族に緑内障、特に急性閉塞隅角緑内障と診断された人がいる場合は、その情報も眼科の問診で伝えるとよいでしょう。
急性閉塞隅角緑内障になりやすい人の正確な生涯発症率や、日本人における抗コリン薬・抗ヒスタミン薬ごとの発作リスクの詳しい数値については、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。
よくある質問
急性緑内障発作は片目だけに起きますか?両目に起きることもありますか?
市販の風邪薬や胃腸薬で急性緑内障発作が起きることはありますか?
レーザー治療と手術(白内障手術)、どちらを選ぶべきですか?
治療の費用はどれくらいかかりますか?
発作を起こしていない、もう片方の目はどうすればいいですか?
急性閉塞隅角緑内障はどのくらいの人がなる病気ですか?
参考文献
- 日本眼科学会・日本緑内障学会「緑内障診療ガイドライン(第5版)」日本眼科学会雑誌126巻2号(令和4年2月10日発行) https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/glaucoma5th.pdf
- 公益社団法人日本眼科医会「よくわかる緑内障―診断と治療―」 https://www.gankaikai.or.jp/health/49/index.html
- 鈴木康之ほか(日本緑内障学会多治見疫学調査)「日本緑内障学会多治見疫学調査(多治見スタディ)総括報告」日本眼科学会雑誌112巻12号(平成20年12月10日発行) https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/112_1039.pdf
- 岡山県医師会報 第1632号(2024年10月25日発行)藤原美幸(岡山大学学術研究院医歯薬学域眼科)「原発閉塞隅角緑内障と急性緑内障発作」 https://www.okayama.med.or.jp/activity/kaiho_lineup/files/mamechishiki/1632_mamechishiki.pdf
- 国立大学法人岡山大学プレスリリース「視覚障害の原因疾患の全国調査:第1位の緑内障の割合が40%超〜2018年の視覚障害認定基準改正の影響が判明〜」 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1082.html
更新日:2026年7月18日。内容に誤りや古い情報にお気づきの際はご連絡ください。
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