アイゼンメンジャー症候群とは|原因・症状・治療を解説
この記事でわかること
目次
- 結論
- 要点まとめ
- アイゼンメンジャー症候群とは?心臓の穴が「肺高血圧」を招くしくみ
- 原因となる先天性心疾患と、なりやすい条件
- 血をサラサラにする薬・血圧を下げる薬は使えるか
- 肺高血圧の数値基準 — 日本循環器学会・難病情報センターの目安
- 受診の目安
- 予後を左右する数値 — 肺高血圧症の「低リスクの目安」5項目
- 全身に出やすい合併症 — 血液・腎臓・関節にも影響
- 治療の考え方 — 肺血管拡張薬・在宅酸素・移植
- 指定難病の医療費助成 — 対象になる場合の目安
- 妊娠・出産に関する強い警告 — 国際的な報告が示す高い危険率
- 日常生活での注意点 — 飛行機・手術・感染予防
- 診断の流れ — 心エコーと心臓カテーテル検査
- アイゼンメンジャー症候群になる前に見つける — 定期的な心エコーの大切さ
- 診断で見きわめること — 似た症状を起こす他の病気との違い
- よくある質問
- 参考文献
- まとめ — 今日からできること
結論
アイゼンメンジャー症候群とは、心室中隔欠損(VSD)など生まれつきの心臓の穴(先天性心疾患)を治療しないまま経過した結果、肺の血管が狭く・硬くなって肺高血圧が進み、血液の流れる向きが逆転してチアノーゼ(皮膚や唇が青紫になる状態)が現れる状態です。[1][3]
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。
症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、先天性心疾患のある人すべてに起こるわけではなく、穴が大きく、かつ早期に修復手術を受けなかった場合に起こりやすいと考えられています[3]。NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、一度この状態になると外科的に穴をふさぐ手術はかえって危険であり、一般的に禁忌と考えられています[3]。息切れや疲れやすさが強まった時、唇や爪が急に紫色を帯びた時、意識が遠のくような症状(失神)が出た時は、循環器を専門とする医療機関を早めに受診してください[1]。
今の血圧・脈拍を確かめる
数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
身長と体重からBMIも調べる
血圧手帳(この端末に保存)
これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
要点まとめ
- 原因は生まれつきの心臓の穴(心室中隔欠損・心房中隔欠損・動脈管開存など)を放置したこと。肺の血管が変化し、血液が右→左に逆流する[3]
- 日本循環器学会の最新の考え方では、平均肺動脈圧(mPAP)が20mmHgを超えると肺高血圧と診断される[2]
- 難病情報センターによれば、先天性心疾患に伴う肺動脈性肺高血圧症は「指定難病86」の原因区分の一つに数えられている[1]
- 米国国立医学図書館(NCBI)に掲載された論文によれば、アイゼンメンジャー症候群の妊娠では母体死亡率が30〜50%、帝王切開ではさらに高くなる場合があると報告されており、妊娠は避けるべきとされている[5]
- 唇や爪の紫色が急に濃くなる・喀血(血を吐く・血の混じった痰)・意識を失う、のいずれかがあれば、その日のうちに循環器専門医を受診してください[3]
編集方針: JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会・査読論文と照合して作成。最終確認は人の目。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月18日時点)。
アイゼンメンジャー症候群とは?心臓の穴が「肺高血圧」を招くしくみ
心臓には本来、右側(右心室)が酸素の少ない血液を肺へ送り、左側(左心室)が肺で酸素を受け取った血液を全身へ送る、という役割分担があります[3]。ところが心室中隔欠損症(VSD)のように心臓の壁に穴が開いていると、圧力の高い左心室側から圧力の低い右心室側へ血液が流れ込みます。NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献はこれを左→右シャントと呼んでいます[3]。
この状態が長く続くと、肺に送られる血液量が過剰になり続けるため、肺の細い血管の壁が徐々に厚く・硬くなっていきます[1]。難病情報センターの解説では、肺動脈の圧力が上昇する理由について「肺の細い血管が異常に狭くなり、また硬くなるために、血液の流れが悪くなる」と説明されています[1]。米国国立医学図書館(NCBI)に掲載された医学参考文献によれば、肺血管抵抗の上昇にともなって左→右シャントは右→左シャントへと逆転し、著しい低酸素血症とチアノーゼをもたらすと説明されています[3]。これがNCBI Bookshelfの説明する、アイゼンメンジャー症候群と呼ばれる状態です[3]。
右→左に逆転すると、本来は肺で酸素を受け取ってから全身に送られるはずの血液の一部が、肺を経由せずに直接全身へ流れてしまいます。NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、その結果、全身に送られる血液の酸素濃度が下がり、チアノーゼ(唇・爪・皮膚が青紫色になる状態)が現れます[3]。この段階まで進行すると、シャント(短絡路)を外科的に閉じる手術は成人ではおおむね禁忌と考えられていると、NCBIに掲載された医学参考文献は説明しています[3]。
原因となる先天性心疾患と、なりやすい条件
難病情報センターの分類では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の原因の一つとして「先天性心疾患に伴うPAH」が挙げられており、アイゼンメンジャー症候群はこの区分に含まれる病態です[1]。NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、先天性心疾患のうち、心室中隔欠損、心房中隔欠損、動脈管開存、単心室など、左右の心室・血管の間に大きな交通がある病気であれば、同じしくみでアイゼンメンジャー化が起こりうると考えられています[3]。NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、穴が大きい、複数の欠損が合併している、乳幼児期に修復手術を受けられなかった、といった場合にアイゼンメンジャー化が起こりやすいとされています[3]。
NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、先天性心疾患の早期発見と外科治療が進歩したことにより、今後アイゼンメンジャー症候群になる患者数は減少していくと考えられていますが、すでに進行してしまった患者は一定数残ると考えられています[3]。
ここで注意したいのは、同じ「先天性心疾患」でも、肺への血流が少なくなるタイプの病気(肺動脈狭窄を伴う病気など)では、そもそも肺高血圧の原因になりにくいという点です。NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、アイゼンメンジャー症候群の原因になりやすいのは、あくまで肺への血流が過剰になる左→右シャントを長期間放置した場合です[3]。難病情報センターの分類では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)全体は8つのタイプに大きく分けられており、①特発性PAH(原因が全く不明)、②遺伝性PAH、③薬物または毒物誘発性PAH、④膠原病に伴うPAH、⑤HIV感染症に伴うPAH、⑥肝臓に関係する門脈圧の上昇に伴うPAH、⑦先天性心疾患に伴うPAH、⑧住血吸虫症に伴うPAHという分類が示されています[1]。アイゼンメンジャー症候群は、この分類のうち「先天性心疾患に伴うPAH」が進行した状態にあたります[1]。日本循環器学会のガイドラインも同様に、先天性心疾患を、膠原病やHIV感染症、肝臓の病気に関連する門脈圧亢進などと並ぶ、PAH(第1群)の中の「各種疾患にともなうPAH」の一つに位置づけています[2]。日本循環器学会のガイドラインは、PAH(第1群)が肺高血圧の原因を大きく5つの群(第1群〜第5群)に分ける「臨床分類」の一つであり、同じ息切れでもどの群に属するかによって治療の方向性が大きく変わるため、この分類が重要だと説明しています[2]。
血をサラサラにする薬・血圧を下げる薬は使えるか
アイゼンメンジャー症候群では出血傾向と血栓傾向の両方がみられることがあるため、抗血小板薬や抗凝固薬の扱いには注意が必要です。NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献は、アイゼンメンジャー症候群の患者では、血管内での血栓形成と反応性の赤血球増多の両方の影響により、出血しやすい状態と血が固まりやすい状態の両方の所見がみられうると説明しています[3]。NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献は、抗凝固薬としてワルファリンが伝統的に用いられてきたが、その根拠の多くは観察研究にとどまっており、抗凝固療法が生命予後を改善するという明確な証拠は確立していないと述べています[3]。そのため、抗血小板薬・抗凝固薬を使うかどうかは自己判断せず、必ず専門医と相談してください。
血管を拡げる降圧薬についても、NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献は、肺血管抵抗が固定してしまったアイゼンメンジャー症候群では、体血管抵抗だけが低下して血圧低下やチアノーゼの増強を招く恐れがあるため、使用には十分な注意が必要だと述べています[3]。移植の適応についても、NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、アイゼンメンジャー症候群であるというだけで直ちに適応となるわけではなく、症状や心不全の程度など総合的な評価に基づいて判断されます[3]。
肺高血圧の数値基準 — 日本循環器学会・難病情報センターの目安
アイゼンメンジャー症候群の背景にある肺高血圧そのものの診断基準は、近年国際的に見直されました。難病情報センターは、肺動脈性肺高血圧症(PAH)について「右心カテーテル検査で平均肺動脈圧25mmHg以上、肺動脈楔入圧15mmHg以下(左房の圧が正常なことを意味します)、肺血管抵抗3Wood単位超という基準」で確認するとしたうえで、「ガイドラインでは、平均肺動脈圧20mmHg超、肺動脈楔入圧15mmHg以下、肺血管抵抗2Wood単位超という基準が用いられます」と註記しています[1]。日本循環器学会の2025年改訂版ガイドラインの解説(Lay Summary)も、「安静時の平均肺動脈圧(mPAP)が20mmHgを超える(>20mmHg)場合」を肺高血圧の定義としています[2]。
| 指標 | 従来の基準 | 現在のガイドライン基準 |
|---|---|---|
| 平均肺動脈圧(mPAP) | 25mmHg超 | 20mmHg超[1][2] |
| 肺動脈楔入圧 | 15mmHg以下 | 15mmHg以下(変更なし)[1] |
| 肺血管抵抗(PVR) | 3 Wood単位超 | 2 Wood単位超[1] |
出典:難病情報センター「肺動脈性肺高血圧症(指定難病86)」[1]/日本循環器学会 JCS2025ガイドライン Lay Summary[2]
日本循環器学会のLay Summaryでは、以前は「mPAPが25mmHg以上」を定義とする時期が長く続いていたが、健康な人のmPAPの分布などの研究が進み、国際標準に合わせて20mmHg超へ見直す流れになったと説明されています[2]。日本循環器学会のガイドラインによれば、通常のmPAPはおおよそ8〜15mmHg程度とされています[2]。
受診の目安
すぐに受診が必要なサイン
難病情報センターは、肺動脈性肺高血圧症について「体を動かす時に息苦しく感じる、すぐに疲れる、体がだるい、意識がなくなる(失神)などの症状が現れます」と述べ、病気が進むと「足がむくむ、少し体を動かしただけでも息苦しい」といった症状が出現するとしています[1]。NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、風邪などの感染症をきっかけに症状が悪化することがあるため、感染予防と早期の治療が大切です[3]。
予後を左右する数値 — 肺高血圧症の「低リスクの目安」5項目
アイゼンメンジャー症候群そのものの専用リスク評価表ではありませんが、背景にある肺高血圧の重症度を見立てる考え方として、日本循環器学会のガイドラインは5つの項目のうちいくつを満たすかで低・中・高リスクを判定する方法を紹介しています[2]。
| 項目 | 低リスクの目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 症状の程度(WHO機能分類) | I〜II | 普通の生活でほとんど困らない、または少し息切れがあるが日常生活はできている状態[2] |
| 6分間歩行距離 | 440メートル超 | 体力・心肺機能が比較的保たれているサイン[2] |
| 右心房圧(RAP) | 8mmHg未満 | 心臓の右側への負担がそれほど強くない目安[2] |
| 心係数(CI) | 2.5 L/分/m²以上 | 心臓のポンプ機能が比較的保たれている目安[2] |
| 平均肺動脈圧(mPAP) | 40mmHg以下 | 重症化のリスクが比較的低いとされる目安[2] |
出典:日本循環器学会 JCS2025ガイドライン Lay Summary[2]
日本循環器学会のLay Summaryでは、この5項目のうち4〜5項目を満たせば低リスク(安定している可能性が高い)、3項目で中リスク、0〜2項目で高リスクと評価できるとされています[2]。同ガイドラインは、低リスクに分類されても一定割合で悪化が起こりうるため、到達後も定期的な再評価が必要だと述べています[2]。
全身に出やすい合併症 — 血液・腎臓・関節にも影響
アイゼンメンジャー症候群は心臓や肺だけの病気ではなく、全身にさまざまな合併症を伴う多系統の病態であると、NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献は説明しています[3]。
| 合併症の分類 | 具体的な症状・所見 | 備考 |
|---|---|---|
| 血液学的異常 | 赤血球増多症、頭痛・めまい・視力の変化などの過粘稠度症状 | 慢性的な低酸素状態により赤血球量が増えることで起こる[3] |
| 出血・血栓の両面 | 出血しやすい状態と血が固まりやすい状態が同時にみられうる | 血管内での血栓形成と反応性の赤血球増多の両方が関与すると考えられている[3] |
| 神経系合併症 | 奇異性塞栓症による重篤な脳血管障害のリスク | 右→左シャントを通じて血栓が全身に流れることに関連する[3] |
| 四肢の異常 | ばち状指 | チアノーゼ型先天性心疾患でしばしばみられる所見[3] |
| 腎機能異常 | 高尿酸血症、タンパク尿など | 難病情報センターの資料でも肺高血圧全般で腎機能への影響が触れられている[1] |
出典:NCBI Bookshelf「Eisenmenger Syndrome」[3]/難病情報センター「肺動脈性肺高血圧症(指定難病86)」[1]
赤血球増多に伴い血液の粘り気が増すと、頭痛やめまい、視力の変化といった症状が現れることがあるとされています[3]。NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、ヘマトクリット値などの血液検査値をどう扱うか、瀉血(血を抜く治療)が必要かどうかは、脱水や鉄欠乏の有無を含めて専門医が総合的に判断する事柄であり、自己判断は避けてください[3]。
治療の考え方 — 肺血管拡張薬・在宅酸素・移植
難病情報センターによれば、肺動脈性肺高血圧症の治療の中心はこれまで「肺血管拡張療法」であり、エンドセリン受容体拮抗薬、PDE-5阻害薬、プロスタサイクリン(PGI₂)やその誘導体といった薬を組み合わせて使用します[1]。難病情報センターは、2025年6月に承認されたアクチビンシグナル阻害薬(ソタテルセプト)についても、血管を拡げる作用ではなく肺の血管の異常な変化(リモデリング)そのものの改善を目的とした新しいタイプの薬だと紹介しています[1]。
在宅酸素療法については、NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、成人期のアイゼンメンジャー症候群において持続的な酸素投与が生命予後を明確に改善するという強い証拠は確立していないとされ、主に自覚症状を和らげる目的で使われることがあります[3]。酸素の持続投与は鼻腔内を乾燥させることがあるため、注意が必要です。
外科的にシャント(穴)を閉じる手術については、NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献が、成人患者における原因心疾患の外科的修復は一般に禁忌と考えられていると説明しています[3]。内科治療を十分に行っても病状が悪化する場合には、肺移植または心肺同時移植が選択肢となります。NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献は、心肺同時移植はアイゼンメンジャー症候群にとって根治的な治療となりうるものの、実施できる施設や体制が限られているため、多くの場合は実務的でないとも述べています[3]。難病情報センターは、日本国内の肺高血圧症患者の肺移植待機期間がおよそ2年半であるため、内科治療で改善が乏しい場合は早めの移植登録の検討が必要になると述べています[1]。日本心臓財団も、アイゼンメンジャー症候群について心肺同時移植以外に確立した根治療法がないとしたうえで、日常生活の中では在宅酸素療法が現実的な選択肢の一つになりうると説明しています[4]。日本心臓財団は、診断や経過観察には心エコー検査などの非侵襲的な方法が中心的な役割を果たすとも述べています[4]。
指定難病の医療費助成 — 対象になる場合の目安
難病情報センターは、肺動脈性肺高血圧症(PAH)が原因の解明と治療法の研究開発を目的として「難治性呼吸器疾患(指定難病)」に認定されていると説明しています[1]。難病情報センターの調査では、PAHの患者数は4,682名(2023年度)と報告されています[1]。医療費助成の対象となるかどうかや自己負担の上限額は、重症度や世帯の所得状況によって異なるため、下記の早見表とあわせて、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
妊娠・出産に関する強い警告 — 国際的な報告が示す高い危険率
アイゼンメンジャー症候群における妊娠・出産のリスクは、国際的な報告で一貫して極めて高いと位置づけられています。米国国立医学図書館(NCBI)が公開する論文「Eisenmenger Syndrome in Pregnancy」は、アイゼンメンジャー症候群の妊娠における母体死亡率は30〜50%と報告されており、帝王切開ではさらに高く最大65%に達するとの報告もあると述べています[5]。NCBIに掲載された論文が引用するGleicherらによる1979年の報告では、経腟分娩で34%、帝王切開で75%、人工妊娠中絶では7%の死亡率であったとされています[5]。
| 項目 | NCBI掲載論文が引用する報告 | 備考 |
|---|---|---|
| 母体死亡率(分娩方法別・Gleicherら1979年) | 経腟分娩34%/帝王切開75%/中絶7% | NCBI「Eisenmenger Syndrome in Pregnancy」より[5] |
| 母体死亡率(Yentisらの報告) | 40% | 胎児死亡は8%、満期産は15%にとどまったと報告[5] |
| 早産・胎児発育不全 | 早産86%/子宮内発育不全24% | NCBI「Eisenmenger Syndrome in Pregnancy」より[5] |
出典:NCBI「Eisenmenger Syndrome in Pregnancy」(Brazilian Journal of Cardiovascular Surgery, 2016年)[5]
NCBIに掲載された論文は、死亡の多くが出産後2〜30日目、または分娩のタイミングそのもので生じており、主な死因は循環血液量減少(低血圧性ショック)、血栓塞栓症、妊娠高血圧症候群であるとしています[5]。NCBIに掲載された論文が示すように、母体・胎児ともに危険率が非常に高いため、アイゼンメンジャー症候群では妊娠・出産を避けることが強く勧められています[5]。日本循環器学会のガイドラインも、肺高血圧、特に肺動脈性肺高血圧症(第1群)では妊娠・出産が大きな負担となり病状に悪影響を及ぼすことがあるとし、妊娠可能年齢の方には早期の情報提供が推奨されるとしています[2]。日本循環器学会のガイドラインは、妊娠が判明した場合や妊娠中に肺高血圧と診断された場合は、早急に肺高血圧の専門施設へ相談することを勧めています[2]。
日常生活での注意点 — 飛行機・手術・感染予防
チアノーゼ性の先天性心疾患がある患者は、飛行機の利用によって機内の気圧低下にともない酸素飽和度がさらに下がる可能性があるため、搭乗の可否や酸素の準備について事前に主治医へ相談することが勧められます。長時間のフライトでは脱水や血液濃縮を招きやすいため、十分な水分補給も大切です。
心臓以外の手術についても、NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、周術期のリスク管理が重要であり、体血管抵抗への影響が比較的少ない麻酔法を選び、先天性心疾患の病態に習熟した麻酔科医による厳重な管理が必要だとされています[3]。日本循環器学会のガイドラインも、全身麻酔をともなう手術はリスクが高くなることがあるため、肺高血圧の重症度や手術の大きさを踏まえて肺高血圧専門医と外科・麻酔科が連携して評価・準備することを勧めています[2]。同ガイドラインはまた、肺高血圧の患者にインフルエンザ・肺炎球菌・COVID-19の予防接種が推奨されているとも述べています[2]。
診断の流れ — 心エコーと心臓カテーテル検査
難病情報センターによれば、肺動脈性肺高血圧症の最初の認定のためには右心カテーテル検査を受ける必要があり、平均肺動脈圧・肺動脈楔入圧・肺血管抵抗の基準値で確認するとされています[1]。NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、アイゼンメンジャー症候群が疑われる場合は、心エコーなどの非侵襲的な方法によって心臓の穴の位置や血流の向きを評価することが多いとされています[3]。NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、出血傾向がある患者では、カテーテル検査などの侵襲的な検査を行う際に注意が必要とされています[3]。難病情報センターは、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)という同様に肺高血圧を起こす別の病気の可能性を確認するため、V/Qスキャンという検査も行う必要があるとしています[1]。
アイゼンメンジャー症候群になる前に見つける — 定期的な心エコーの大切さ
NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、アイゼンメンジャー症候群は、ある日突然起こるものではなく、多くの場合は生まれつきの心臓の穴が長年放置された結果として、時間をかけて進行します[3]。そのため、最も確実な対策は、心室中隔欠損などの先天性心疾患が見つかった時点で、肺の血管が不可逆的に変化してしまう前に、専門施設で修復手術の必要性を評価してもらうことです。NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、先天性心疾患の早期発見と外科治療の進歩によって、今後アイゼンメンジャー症候群になる患者数は減少していくと考えられています[3]。
すでに成人になってからアイゼンメンジャー症候群と診断された場合でも、難病情報センターは、専門医による適切な治療によって自覚症状が改善する場合があるとしています[1]。診断が成人になってからだったとしても治療をあきらめず、まずは肺高血圧を専門とする循環器内科を受診することが勧められます。特に、乳幼児期に心臓の穴を指摘されたものの、その後の通院が途切れてしまっている方は、症状の有無にかかわらず一度専門施設で評価を受けることが望ましいと考えられます。
診断で見きわめること — 似た症状を起こす他の病気との違い
息切れやチアノーゼは、アイゼンメンジャー症候群以外の多くの病気でも起こりうる症状です。難病情報センターは、肺動脈性肺高血圧症の診断にあたって、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)という肺高血圧を起こす別の病気の可能性を確認するため、V/Qスキャンという検査を行う必要があると説明しています[1]。日本循環器学会のガイドラインも、肺高血圧の診断では、右心カテーテル検査で平均肺動脈圧の基準を満たしているかを確認するだけでなく、左心系の病気(第2群)や肺の病気(第3群)など、他の原因を除外したうえで確定診断を行うとしています[2]。NCBI Bookshelfに掲載された医学参考文献によれば、アイゼンメンジャー症候群の場合は、心エコーやカテーテル検査で心臓の穴とその血流の向きを直接確認できることが、他の原因による肺高血圧との大きな違いです[3]。
アイゼンメンジャー症候群の患者さんごとの余命や、個々の薬の効果がどの程度続くかについては、今回参照した資料には確定的な数値の記載が見当たりませんでした。生存率や合併症の頻度は報告された年代・国・施設によって幅があり、現時点で一つの数字に決められるものではないとされています。
よくある質問
アイゼンメンジャー症候群でも手術で穴をふさげば改善しますか?
指定難病の医療費助成は誰でも受けられますか?
在宅酸素をすれば長生きできますか?
飛行機に乗ることはできますか?
喀血(血を吐く)が起きたらどうすればいいですか?
子どもの頃に手術を受けなかった場合、大人になってからでも治療できますか?
血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)は飲んだほうがいいのですか?
参考文献
- 難病情報センター「肺動脈性肺高血圧症(指定難病86)」2026年 https://www.nanbyou.or.jp/entry/171
- 日本循環器学会・日本肺高血圧・肺循環学会合同ガイドライン「2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン Lay Summary」2026年 https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2026/05/JCS2025_Tamura_Lay-Summary.pdf
- NCBI Bookshelf(StatPearls)「Eisenmenger Syndrome」米国国立医学図書館 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK507800/
- 公益財団法人 日本心臓財団「アイゼンメンジャー症候群」2003年 https://www.jhf.or.jp/check/opinion/3-4/1802s.html
- Yuan SM.「Eisenmenger Syndrome in Pregnancy」Brazilian Journal of Cardiovascular Surgery 2016年 NCBI/PMC掲載 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5094422/
まとめ — 今日からできること
アイゼンメンジャー症候群は、生まれつきの心臓の穴を放置した結果として肺の血管が変化し、血液の流れが逆転してチアノーゼが現れる状態です[1][3]。難病情報センターとNCBIの資料が示すように、この状態そのものを外科手術で元に戻すことは一般に難しいとされていますが[3]、肺血管拡張薬や在宅酸素などの治療によって症状を和らげ、進行をゆるやかにすることは可能です[1]。妊娠・出産は母体の危険率が非常に高いとされているため[5]、妊娠を考える場合は必ず事前に専門施設へ相談してください[2]。唇や爪の色が急に変わった、喀血があった、意識が遠のいた、というときは、迷わずその日のうちに循環器・肺高血圧の専門医療機関を受診してください[1]。
更新日:2026年7月18日。本記事の内容に誤りやお気づきの点がありましたら、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
この記事について(運営者情報・免責事項) タップで表示
医療情報に関する重要なお知らせ
本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。
