目の奥の痛み:原因、危険なサイン、そして日本の専門医による対処法
眼の病気

目の奥の痛み:原因、危険なサイン、そして日本の専門医による対処法

目の奥に感じる痛みは、多くの人が一度は経験するかもしれない不快な症状です。 デジタルデバイスの長時間利用による疲れ目から、視力や生命を脅かす可能性のある深刻な病気まで、その原因は多岐にわたります。 この症状は単なる不快感ではなく、体からの重要な警告サインである可能性があります。 この記事では、JAPANESEHEALTH.ORG編集部が、日本の医学的知見と臨床ガイドラインに基づき、「目の奥の痛み」の考えられる原因、見過ごしてはならない危険な兆候、そして日本の医療現場で行われる診断と治療法について、深く、そして分かりやすく解説します。 正確な情報を知ることは、ご自身の健康を守り、適切なタイミングで専門家の助けを求めるための第一歩です。

要点まとめ

  • 目の奥の痛みは、単なる目の疲れ(眼精疲労)から、緊急治療を要する緑内障発作や脳の病気まで、非常に幅広い原因によって引き起こされます。
  • 突然の激しい痛み、急激な視力低下、吐き気や嘔吐、稲妻のような激しい頭痛を伴う場合は、失明や生命に関わる危険な兆候(レッドフラグサイン)であり、直ちに救急医療機関を受診する必要があります。
  • 診断は、原因に応じて眼科、脳神経外科、神経内科などの専門医によって行われます。 日本では、各学会が発行する診療ガイドラインに基づいた標準的な検査と治療が行われており、これが高い医療水準を保証しています。
  • 定期的な眼科検診、デジタル機器使用の管理、適切な生活習慣は、目の奥の痛みを引き起こす多くの一般的な原因を予防し、深刻な眼疾患の早期発見に繋がる最も効果的な対策です。

なぜ目の奥が痛むのか?考えられる原因の徹底解説

「目の奥が痛い」(目の奥の痛み)とは、眼球の裏側あたりに感じられる不快感や痛みの総称です。 この痛みは、鈍い圧迫感から鋭い痛みまで様々で、人によっては痛みの正確な場所を特定するのが難しいこともあります。 この症状は独立した病気ではなく、様々な健康問題のサインとして現れるため、その背後にある原因を理解することが極めて重要です。 原因は、眼そのものの疾患、眼の周辺器官の問題、さらには全身や脳の疾患にまで及びます。

1. 眼科疾患 (Ganka Shikkan) – 目に由来する原因

目の奥の痛みの原因として最も一般的なのは、目そのものに関連する疾患です。 これらは比較的よく見られるものから、緊急の対応を要する深刻なものまで様々です。

1.1. よくある原因(一般的に頻度が高いもの)

  • 眼精疲労 (Gansei Hirou) / VDT症候群 (VDT Syndrome): 現代社会で最も一般的な原因の一つです。 パソコンやスマートフォンなどのデジタル画面を長時間見続けることで、目のピントを合わせる筋肉(毛様体筋)が絶えず緊張し、目の奥に鈍く重い痛みが生じます2。 視界のかすみ、目の乾燥、頭痛、首や肩のこりなども伴うことがあります2。 この状態が慢性化し、休息だけでは回復しにくくなったものを「眼精疲労」と呼びます2
  • ドライアイ (Dry Eye): 涙の量が不足したり、涙の質が低下したりすると、目の表面が十分に潤滑・保護されなくなり、乾燥感、刺激感とともに目の奥の痛みを引き起こすことがあります2。 エアコンの効いた乾燥した環境や長時間のスクリーン使用は、ドライアイのリスクを高めます2
  • 不適切な眼鏡・コンタクトレンズ (Futekisetsu na Gankyo/Contact Lens): ご自身の近視、遠視、乱視の度数に合っていない眼鏡やコンタクトレンズを使用していると、目は無理にピントを合わせようと過剰に働き、眼精疲労や目の奥の痛みに繋がります2

1.2. 注意が必要な目の病気(失明などのリスクがあるもの)

以下の疾患は、永続的な視力障害やその他の深刻な合併症を避けるため、迅速な診断と治療が不可欠です。

  • 急性緑内障発作 (Kyusei Ryokunaisho Hossa): これは眼科における緊急事態です。 眼圧(眼球内の圧力)が急激かつ大幅に上昇し、片方の目に激しい痛み、頭痛、吐き気、嘔吐、霧がかかったような視界のかすみ、光の周りに虹のような輪が見える(虹視症)、目の充血といった症状を引き起こします1。 緊急治療が行われなければ、数時間から数日で永久的な失明に至る可能性があります2。 日本では緑内障が中高年における失明原因の第1位であり、40歳以上の20人に1人が罹患していると推定されています6, 7。 慢性の緑内障は末期まで自覚症状がないことが多いですが、この急性発作は非常に激しい症状を呈します。
  • 視神経炎 (Shishinkeien): 目から脳へ視覚情報を伝達する視神経に炎症が起こる疾患です。 典型的な症状として、目を動かしたときに悪化する目の奥の痛み、急激な視力低下(通常は片目)、色の識別能力の低下、視野の中心が見えにくくなる中心暗点などが挙げられます1。 多発性硬化症の初期症状として現れることもあります1
  • ぶどう膜炎 (Budomakuen): 虹彩、毛様体、脈絡膜からなる、血管が豊富な眼の中間層(ぶどう膜)の炎症です。 目の痛み、かすみ目、飛蚊症(ひぶんしょう)、光に対する過敏さを引き起こします4。 合併症を避けるために早期の治療が必要です4
  • 強膜炎 (Scleritis): 眼球の白目部分である強膜に起こる重篤な炎症で、激しい痛みを伴い、組織を損傷する可能性があります9。 関節リウマチなどの自己免疫疾患に関連することが多いです9。 あるメタアナリシスの報告によると、眼科専門施設における有病率は10万人あたり2.67人で、患者の多くは女性(67.24%)、平均年齢は48.3歳でした9
  • 角膜の病気(角膜上皮障害、角膜異物など): 目の表面にある角膜は知覚神経が非常に豊富なため、擦り傷やゴミ(埃、金属片など)が入ると、強い痛み、異物感、涙、充血を引き起こします3
  • 眼窩蜂窩織炎 (Ganka Hokashikien): 眼球が収まっている頭蓋骨の窪み(眼窩)内の軟部組織における細菌感染症です。 目を開けられないほどの激しい痛み、まぶたの腫れと赤み、眼球突出、視力低下、発熱などを伴います1
  • その他: 逆さまつげ(眼瞼内反)3、眼内異物(金属片などが眼球内部に突き刺さる)3、感染性眼内炎(眼球内部の感染)1なども目の奥の痛みを引き起こす深刻な状態です。

2. 目以外の疾患 (Me Igai no Shikkan) – 全身や脳に由来する原因

目の奥の痛みは、必ずしも目の問題だけが原因とは限りません。

  • 片頭痛 (Henzutsu): 一般的な血管性の頭痛で、通常は頭の片側に拍動性の痛みが起こりますが、目の周辺や奥に痛みを感じることも多いです1。 吐き気や、光・音への過敏さを伴うことがあります。 日本における片頭痛の有病率は15歳以上で約8.4%と報告されており、特に女性(13%)は男性(3.6%)の約3倍です10。 多くの人が片頭痛であると気づかずに受診していないケースも少なくありません10
  • 副鼻腔炎 (Fukubikuen): 鼻の周囲にある空洞(副鼻腔)の炎症で、顔面や額に圧迫感や痛みを生じさせ、それが目の奥にまで広がることがあります1。 頭を下げると痛みが増すのが特徴です。
  • 緊急性の高い脳疾患 (Urgent Brain Diseases):
    • くも膜下出血 (Kumomaku Shukketsu): これは生命を脅かす極めて危険な救急疾患です。 脳を覆う膜の下で出血が起こり、「ハンマーで殴られたような」「これまでに経験したことのない」と表現される、突発的で激烈な頭痛が特徴です1。 目の奥の痛み、吐き気、意識障害などを伴うことがあり、直ちに救急車を呼ぶ必要があります。
    • 脳腫瘍 (Noshuyo) / 脳梗塞 (Nokosoku): 脳の腫瘍や梗塞も、その発生部位によっては頭痛や目の奥の痛みを引き起こすことがあります1。 他の神経症状(手足の麻痺、ろれつが回らないなど)を伴うことが多いです。

3. 生活習慣と環境要因

日常生活の中にも、目の奥の痛みを誘発または悪化させる要因が潜んでいます。

  • デジタル機器の長時間使用: 前述の通り、眼精疲労やドライアイの最大の誘因です2
  • ストレスと睡眠不足: ストレスは痛みを増幅させ、筋肉の緊張を引き起こします1。 睡眠不足は目の回復を妨げます。
  • 乾燥した環境: エアコンや暖房による空気の乾燥は、ドライアイを悪化させます2
表1:目の奥の痛みの原因鑑別診断
原因グループ 具体的な原因 主な随伴症状 緊急度
眼科疾患(一般的) 眼精疲労 / VDT症候群 鈍痛、目の重さ、かすみ目、ドライアイ、頭痛 低(生活習慣の改善。長引くなら受診)2
ドライアイ 乾燥感、ヒリヒリ感、異物感、軽度の充血 低~中(症状が強ければ受診)2
不適切な眼鏡・コンタクト 集中時の目の疲れ、頭痛、かすみ目 低(眼鏡の調整のため受診)2
眼科疾患(重篤) 急性緑内障発作 激しい眼痛(片側)、吐き気、嘔吐、かすみ目、虹視症、充血 極めて高い(救急医療)1
視神経炎 目を動かすと痛む、急激な視力低下、色覚異常 高(早期の受診が必要)1
ぶどう膜炎 眼痛、かすみ目、飛蚊症、羞明(まぶしさ) 高(早期の受診が必要)4
強膜炎 激しい眼痛、局所的または広範な充血 高(早期の受診が必要)9
角膜疾患(傷、異物) 鋭い痛み、異物感、流涙、充血 中~高(特に異物がある場合は早期受診)3
眼窩蜂窩織炎 激痛、まぶたの腫れ、眼球突出、視力低下、発熱 極めて高い(救急医療)1
目以外の原因 片頭痛 片側性の頭痛(目に放散)、吐き気、光・音への過敏さ 中(診断と治療のため受診)1
副鼻腔炎 顔面・額の圧迫痛、鼻づまり、鼻水 低~中(長引く、または重度なら受診)1
くも膜下出血 突発的で激烈な頭痛(「雷鳴頭痛」)、吐き気、項部硬直 極めて高い(直ちに救急医療)1

これが出たら要注意!目の奥の痛みに伴う危険なサイン(レッドフラグ)

目の奥の痛みが、時に深刻な医療状態の兆候である可能性を認識することは、自分や家族の健康を守る上で非常に重要です。 以下の「レッドフラグサイン(危険な兆候)」が一つでも現れた場合は、決して自己判断で様子を見ず、迅速に医療機関を受診してください。

主なレッドフラグ症状

  • 突然発症の激しい痛み: これまでに経験したことのないような激しい痛みが突然、特に片方の目に現れた場合。 急性緑内障発作2や、激しい頭痛を伴う場合はくも膜下出血1の可能性があります。
  • 急激な視力低下・視野の変化: 視界が急にぼやける、一部が見えなくなる、暗くなるなどの変化は、視神経炎、緑内障発作、網膜の血管閉塞など、緊急を要する状態を示唆します1
  • 吐き気・嘔吐: 激しい目の痛みや頭痛に伴う吐き気・嘔吐は、急性緑内障発作1や、くも膜下出血などの脳圧上昇が原因である可能性があります1
  • 「雷鳴のような」激しい頭痛: 「バットで殴られたような」と表現される突発的で激烈な頭痛は、くも膜下出血の典型的な兆候であり、命に関わるサインです1
  • 強い充血: 特に片方の目だけで、激しい痛みや視力低下を伴う強い充血は、急性緑内障発作や強膜炎の可能性があります2
  • 瞳孔の変化: 左右の瞳孔の大きさが違う、形が歪んでいる、光への反応が鈍いといった変化は、緑内障発作や神経系の異常を示していることがあります4
  • 発熱: 目の痛みと同時に発熱がある場合は、眼窩蜂窩織炎などの重篤な感染症が疑われます1
  • 目を動かすと痛みが強まる: 視神経炎に非常に特徴的な症状です4
表2:目の奥の痛みにおける危険な兆候(レッドフラグ)と推奨される行動
危険な兆候(レッドフラグ) 重症度 推奨される行動(日本国内) 考えられる重篤な原因
「雷鳴のような」突発的で激烈な頭痛・眼痛 極めて高い 直ちに救急車(119番)を呼ぶか救急病院へ くも膜下出血、急性緑内障発作1
急激な視力低下・視野欠損 極めて高い 直ちに眼科救急または専門病院へ 急性緑内障発作、視神経炎、網膜血管閉塞症1
激しい眼痛・頭痛に伴う吐き気・嘔吐 高い 救急病院または眼科・脳神経外科を緊急受診 急性緑内障発作、脳圧亢進、くも膜下出血1
強い痛みと視力低下を伴う片目の充血 高い 眼科を緊急受診 急性緑内障発作、強膜炎、眼内炎2
目を動かすと悪化する痛みと視力低下 高い 早期に眼科を受診 視神経炎4
発熱を伴う眼痛、まぶたの腫れ、視力低下 高い 眼科または救急病院を受診 眼窩蜂窩織炎、眼内炎1

目の奥が痛い時、いつ、どの専門医に相談すべきか?

適切なタイミングで適切な専門科を受診することは、効果的な治療への第一歩です。 日本の医療システムでは、多くの場合、紹介状なしで直接専門のクリニックを受診できますが、状況に応じた判断が重要です。

いつ、どこへ行くべきか

  • 眼科 (Ganka) を受診すべき場合:
    • 目の奥の痛みが主な症状で、視力の変化、充血、光への過敏さ、異物感などを伴う場合2
    • 痛みは軽度でも、数日以上続く、または繰り返し起こる場合。
    • 急性緑内障発作、視神経炎、ぶどう膜炎、角膜疾患が疑われる症状がある場合2
  • 脳神経外科・神経内科 (Noshinkeigeka / Shinkeinaika) を受診すべき場合:
    • 目の奥の痛みに加え、激しい頭痛(特に「雷鳴頭痛」)、手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、けいれん、意識の混濁などの神経症状を伴う場合1。 これらは脳の病気が強く疑われるサインです。
    • 眼科で診察を受けた結果、目の病気が否定され、脳の検査を勧められた場合3
  • 救急受診 (Kyukyu Jushin) または救急車を呼ぶべき場合:
    • 「雷鳴のような」突発的で激烈な頭痛(くも膜下出血の疑い)1
    • 激しい目の痛みと吐き気、急激な視力低下(急性緑内障発作の疑い)2
    • 突然の視力喪失。
    • 意識障害、けいれん、突然の麻痺を伴う場合。

日本の医療現場における診断プロセス

日本の医療機関では、目の奥の痛みを訴える患者に対して、科学的根拠に基づいた体系的な診断プロセスが実施されます。 このプロセスは、日本眼科学会13や日本頭痛学会15などの専門学会が定める診療ガイドラインに準拠しており、質の高い医療を保証するものです。

  1. 問診と診察: 医師はまず、痛みの性質(いつから、どこが、どんなふうに痛むか)、伴う症状、既往歴、生活習慣などを詳しく尋ねます1
  2. 基本的な眼科検査:
    • 視力検査 (Shiryoku Kensa): 目の基本的な機能を評価します12
    • 眼圧検査 (Gan’atsu Kensa): 緑内障の発見に不可欠な、眼球内の圧力を測定します12
    • 細隙灯顕微鏡検査 (Saigekito Kenbikyo Kensa): 顕微鏡を用いて角膜、水晶体、網膜、視神経などを詳細に観察し、異常がないかを確認します12
    • 眼底検査 (Gantei Kensa): 網膜やその血管、視神経の状態を直接観察し、様々な眼疾患の兆候を探します12
  3. 専門的な追加検査(必要に応じて):
    • 視野検査 (Shiya Kensa): 見える範囲を測定し、緑内障や神経疾患による視野の欠損を検出します12
    • 光干渉断層計 (OCT): 網膜や視神経の断層画像を撮影し、ごく初期の構造的変化を捉えることができます12
    • 脳の画像検査 (CT/MRI): くも膜下出血、脳腫瘍、脳梗塞、副鼻腔炎などが疑われる場合に実施されます1

原因別・目の奥の痛みの治療法:日本の診療ガイドラインに基づくアプローチ

目の奥の痛みの治療は、その原因によって全く異なります。 ここでは、日本の診療ガイドラインで推奨される標準的な治療法の一部を紹介します。

  • 眼精疲労 / VDT症候群: 生活習慣の改善が中心となります。 具体的には、20分ごとに20フィート(約6m)先を20秒間見る「20-20-20ルール」の実践、適切なモニター距離の確保、ビタミンB配合の点眼薬や人工涙液の使用などです2
  • ドライアイ: 人工涙液の点眼が基本です。 症状に応じて、涙の分泌を促進するジクアホソルやレバミピド、炎症を抑えるシクロスポリンなどの処方薬が用いられます2。 重症例では涙点プラグという選択肢もあります。
  • 急性緑内障発作: 緊急の眼圧降下が必要です。 点眼薬、内服薬、点滴による薬物治療でまず眼圧を下げた後、レーザー虹彩切開術(レーザーで虹彩に小さな穴を開け、房水の流れを改善する)を行うのが標準的です5。 これは日本緑内障学会のガイドラインでも推奨される治療法です18
  • 視神経炎: 原因や重症度に応じて、ステロイド薬の大量点滴療法が行われることがあります。 これにより炎症を強力に抑え、視力回復を早める効果が期待できます4
  • 片頭痛: 痛みが起きた時に使用するトリプタン製剤などの頓挫薬と、発作を予防するために日常的に使用する予防薬(CGRP関連抗体薬など)があります。 治療方針は日本頭痛学会のガイドライン15に基づいて決定されます。
  • くも膜下出血などの脳疾患: これらは生命に関わるため、外科手術や血管内治療など、専門的な医療機関での高度な集中治療が必須となります1

日常でできる目のケアと予防策

多くの目の奥の痛みは、日々の生活習慣を見直すことで予防・軽減が可能です。 専門的な治療が必要な病気の早期発見にも繋がるため、積極的なセルフケアを心がけましょう。

表4:日本での生活に合わせた目の健康のための予防戦略
予防策 具体的なアドバイス 目的・効果 日本の生活様式への配慮
定期的な眼科検診 40歳を過ぎたら年に一度は検診を。緑内障の家族歴などリスク因子があればより早期から。 自覚症状のない緑内障などの早期発見。 緑内障有病率が高い日本において極めて重要6
デジタル機器使用の管理 20-20-20ルールを実践。意識的に休憩を取る。 眼精疲労、ドライアイ、VDT症候群の予防2 長時間のデスクワーク文化21において特に重要。
適切な作業環境 モニターは目線よりやや下へ。 部屋の照明を適切に調整。 目、首、肩への負担を軽減2
乾燥防止 意識的にまばたきを増やす。加湿器を使用する。十分な水分補給。 目の潤いを保ち、ドライアイを軽減2 冬の暖房や夏の冷房が多用される環境で重要。
十分な睡眠とストレス管理 7-8時間の睡眠を目標に。リラックスできる時間を作る。 目の回復を促し、痛みの感受性を下げる1
コンタクトレンズの適切な管理 装用時間や洗浄方法の指示を守る。 目の化粧は毎日しっかり落とす2 感染症やアレルギーのリスクを低減。

健康に関する注意事項

  • この記事は、専門的な医学的診断や治療に代わるものではありません。目の奥の痛みが続く、または悪化する場合、あるいはこの記事で述べた危険な兆候(レッドフラグサイン)が見られる場合は、自己判断せず、必ず速やかに医療機関を受診してください。
  • 特に、突然の激しい痛みや視力低下は、失明や生命に関わる重篤な疾患の可能性があります。ためらわずに救急車を呼ぶか、救急外来を受診することが極めて重要です。

よくある質問

片方の目の奥だけが痛む場合、どのような原因が考えられますか?

片方の目の奥だけが痛む場合、様々な原因が考えられます。比較的多いのは、左右の視力差が大きい場合や乱視がある場合の眼精疲労です。しかし、急性緑内障発作、視神経炎、強膜炎、片頭痛など、片側だけに強い症状が現れる重篤な疾患の可能性も否定できません1, 2。特に、痛みが激しい、視力が低下する、充血するなどの症状を伴う場合は、速やかに眼科を受診することが重要です。

目の奥の痛みと頭痛が同時にある場合、何科を受診すればよいですか?

目の奥の痛みと頭痛が併発する場合、原因によって受診すべき科が異なります。まず、目の充血、視力低下、光がまぶしいといった目の症状が強い場合は、眼科を受診して急性緑内障発作などの眼疾患がないかを確認するのが第一選択です2。一方で、頭痛がメインで「これまでに経験したことのない激しい頭痛」である場合や、手足の麻痺・しびれなどの神経症状を伴う場合は、くも膜下出血などの脳の病気を疑い、直ちに脳神経外科のある救急病院を受診する必要があります1。片頭痛が疑われる場合は、神経内科や頭痛専門外来が適切な相談先となります。

40歳を過ぎたら、なぜ定期的な眼科検診が特に重要になるのですか?

40歳は、多くの眼疾患の発症リスクが高まり始める節目の年齢です。特に緑内障は、初期にはほとんど自覚症状がないまま進行し、視野が欠けていく病気です7。日本での疫学調査では、40歳以上の20人に1人が緑内障であると報告されており、これは決して他人事ではありません6。定期的な検診を受けていれば、自覚症状が出る前に眼圧の上昇や視神経の異常を早期に発見し、進行を遅らせる治療を開始できます。目の奥の痛みとは直接関係ない場合でも、定期検診は目の健康を守るために不可欠です2

ストレスは本当に目の奥の痛みの原因になりますか?

はい、ストレスは目の奥の痛みの直接的および間接的な原因となり得ます1。 精神的なストレスは自律神経のバランスを乱し、血流を悪化させたり、筋肉を過剰に緊張させたりします。これにより、眼精疲労が悪化したり、頭痛が誘発されたりして、目の奥の痛みとして感じられることがあります。また、ストレスは痛みの閾値を下げ、普段なら気にならない程度の不快感を「痛み」として認識させてしまうこともあります。ストレスが多いと感じる時に目の奥が痛む場合は、十分な休息やリラクゼーションを試みることが有効な場合があります。

市販の目薬を使用しても良いですか?

眼精疲労や軽度のドライアイが原因である場合、市販の人工涙液やビタミン配合の点眼薬を使用することで症状が和らぐことがあります2。 ただし、血管収縮剤が含まれている一部の目薬は、一時的に充血を解消しますが、長期的に使用するとかえって症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。もし市販薬を数日間使用しても症状が改善しない場合や、痛みが強い、視力が落ちるなどの他の症状がある場合は、自己判断を続けずに眼科を受診してください。その症状の裏には、市販薬では対応できない病気が隠れている可能性があります。

結論

目の奥の痛みは、ありふれた症状であると同時に、私たちの体が発する重要な警告サインでもあります。 その原因は、デジタル時代の生活習慣病ともいえる眼精疲労から、迅速な対応が求められる急性緑内障発作、さらには生命を脅かすくも膜下出血まで、極めて多岐にわたります。 この記事を通じて、私たちは日本の読者の皆様が、ご自身の症状を客観的に理解し、特に危険な兆候(レッドフラグサイン)を見逃さず、適切なタイミングで専門医に相談するための一助となることを目指しました。 日本の信頼できる診療ガイドラインに基づいた診断・治療法、そして日常生活で実践できる予防策を知ることは、皆様の貴重な視力と健康を守るための力となります。 目の奥の痛みに賢く対処し、健やかな毎日を送るために、この記事で得た知識をぜひお役立てください。

免責事項この記事は医学的アドバイスに代わるものではなく、症状がある場合は専門家にご相談ください。

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