糖尿病の合併症一覧|しめじ・えのきで覚える順番と初期症状
この記事でわかること
目次
- 糖尿病の合併症とは?高血糖が血管を傷つける仕組み
- 糖尿病腎症の病期分類 — 尿検査とeGFRでわかる5段階
- 網膜症・神経障害の進行段階 — 早期発見のカギは自覚症状のなさ
- 大血管症(えのき)— 心筋梗塞・脳梗塞・末梢動脈疾患の見分け方
- 冠動脈の病気(心筋虚血)
- 脳血管障害
- 末梢動脈の病気(足の血管)
- 足の毎日チェックで見るべきポイント
- 糖尿病足病変 — 気づかないうちに進む理由
- 合併症を起こさない・悪くしないためにできること
- 合併症に共通するリスク因子一覧
- 合併症の進み方はなぜ人によって違うのか — 罹病期間という要因
- 透析療法について知っておきたいこと
- 日本と国際的な位置づけの違い — 「糖尿病性腎臓病」という新しい概念
- 合併症ごとの定期検査の目安 — いつ・どの科を受診するか
- 生活習慣の見直し — 血糖・血圧・脂質・体重・禁煙の5本柱
- 合併症ごとにさらに詳しく知りたい方へ
- よくある質問
- 参考文献
糖尿病の合併症は、高血糖の状態が数年〜数十年続くことで血管が傷つき、細い血管が壊れる「神経障害・網膜症・腎症(しめじ)」と、太い血管が硬く狭くなる「壊疽・脳梗塞・心筋梗塞(えのき)」の2系統に分かれます。[1]
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。
症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
神経障害がもっとも早く、次いで網膜症・腎症の順で症状が出やすいとされていますが、進み方には個人差があり、症状が出る前から静かに進行することも珍しくありません。血糖・血圧・脂質のコントロールと、年1回以上の定期検査が、合併症を「起こさない・悪くしない」ための土台になります[1]。この記事では、糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター)の解説と、その根拠となる日本糖尿病学会のガイドラインをもとに、3大合併症(しめじ)と大血管症(えのき)を横断的に整理し、検査・治療・受診の目安をひとつのページで確認できるようにまとめました。網膜症そのものの詳しい進行段階・治療法は、別記事「糖尿病網膜症とは」でさらに詳しく解説しています。
要点まとめ
- 同センターによると、糖尿病の慢性合併症は「細小血管症(しめじ=神経・眼・腎臓)」と「大血管症(えのき=壊疽・脳梗塞・心筋梗塞)」の2つに大別される[1]
- 同センターの解説では、糖尿病腎症は尿アルブミン値とeGFRの2つの数値で第1期〜第5期(透析療法期)まで5段階に分類される[2]
- 同センターによると、末梢動脈疾患(足の血管の動脈硬化)はFontaine分類で1(冷感・しびれ)〜4(潰瘍・壊疽)の4段階に分けられる[3]
- 同センターの解説では、この病気のある方はない方と比べて心筋梗塞の危険度が数倍高く、胸痛が出ないまま進行することもある[3]
- 同センターの解説では、手足の血だらけの傷に気づかない、突然の息切れ・むくみ、片側の手足の麻痺・ろれつが回らないは、すぐに医療機関を受診すべきサイン[4][3]
編集方針:この記事はJHO編集部がAIツールの支援を受けながら、同センター(国立国際医療研究センター)が公開する一般向け解説ページと、その根拠となる日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン」の内容と照合して作成しました。最終確認は人の目で行っています。医師による個別の診断・治療方針の代わりにはなりません。数値や分類はガイドラインの改定により変わることがあります(2026年8月時点の情報)。
🔧 「しめじ・えのき」自己チェック早見表(受診の基準の目安)
| グループ | 語呂 | 合併症 | 主な初期サイン |
|---|---|---|---|
| 細小血管症 | し | 神経障害 | 足先のしびれ・痛み、感覚が鈍くなる[4] |
| め | 網膜症 | 自覚症状はほぼ無し(進行するまで気づきにくい)[5] | |
| じ | 腎症 | 無症状(尿検査でアルブミンが出て初めてわかる)[2] | |
| 大血管症 | え | 壊疽(足病変) | 足の潰瘍・傷が治りにくい[6] |
| の | 脳梗塞 | 片側の手足の麻痺、ろれつが回らない[3] | |
| き | 虚血性心疾患 | 胸痛が出ないことも多い(無痛性心筋梗塞)[3] |
出典:同センター「糖尿病の慢性合併症について知っておきましょう」(2024年10月24日更新)[1]ほか、各合併症の個別ページ[2][3][4][5][6]をもとにJHO編集部が作成。
糖尿病の合併症とは?高血糖が血管を傷つける仕組み
同センターの解説では、血管は、からだのすみずみに酸素や栄養を運ぶ通路のような役割を果たしています。血液中の糖の濃度(血糖値)が何年間も高いままでいると、この血管が傷ついたり詰まったりして血流が滞り、血管とそれにつながる臓器が障害されます。これが糖尿病の慢性合併症です[1]。
同センター(国立国際医療研究センター)は、慢性合併症は数年から数十年の経過でゆっくり生じ、かなり進行するまで症状が出ないこともあると説明しています。気が付かないうちに合併症が進むと、時として命にかかわる重い状態になることもあるため、どのような合併症があるのかを知り、定期的に検査を受けることが大切だとしています[1]。
慢性合併症は血管の太さによって大きく2つに分類されます[1]。
- 細小血管症:同センターによると、糖尿病に特有な合併症で、細い血管が傷つけられて生じます。神経障害・網膜症・腎症の頭文字を取って「しんけい・め・じんぞう=しめじ」と覚えます[1]。
- 大血管症:同センターによると、高血糖が動脈硬化症(血管の老化)を進める原因となり、比較的大きな血管とそれにつながる臓器を障害します。壊疽・脳梗塞・虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)の頭文字を取って「えそ・のうこうそく・きょけつせいしんしっかん=えのき」と覚えます[1]。
同センターは、大血管症は、高血糖のほかに高血圧・脂質異常症(LDLコレステロールや中性脂肪が高い状態)・肥満・喫煙・加齢も進行の原因になります[1]。
今の血圧・脈拍を確かめる
数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
身長と体重からBMIも調べる
血圧手帳(この端末に保存)
これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
糖尿病腎症の病期分類 — 尿検査とeGFRでわかる5段階
同センターの解説では、腎臓は、からだの水分量やミネラルのバランスを保ち、老廃物を尿として排泄する臓器です。高血糖の状態が長く続くと腎臓の細い血管が傷み、糸球体ろ過量(GFR)が低下していきます[2]。腎症は無症状のまま進行することが多いため、尿検査と血液検査の結果から病期を判定します。
| 病期 | 尿アルブミン値(mg/gCr)/尿タンパク値(g/gCr) | GFR(eGFR)(mL/分/1.73m²) |
|---|---|---|
| 第1期(腎症前期) | 正常アルブミン尿(30未満) | 30以上 |
| 第2期(早期腎症期) | 微量アルブミン尿(30〜299) | 30以上 |
| 第3期(顕性腎症期) | 顕性アルブミン尿(300以上)あるいは持続的タンパク尿(0.5以上) | 30以上 |
| 第4期(腎不全期) | 問わない | 30未満 |
| 第5期(透析療法期) | 透析療法中 | — |
出典:糖尿病性腎症合同委員会「糖尿病性腎症病期分類2014の策定(糖尿病性腎症病期分類改訂)について」日腎会誌56: 547, 2014/同センター「腎症」(2020年12月4日改定版掲載)[2]
2018年末の時点で、透析導入となった患者の原因疾患のうち腎症が最も多く、国をあげて重症化予防に取り組んでいます[7]。腎機能が低下すると使えなくなる薬や、用法・用量の調整が必要な薬があるため、市販薬を使う場合も事前に主治医へ相談することが勧められています[2]。
網膜症・神経障害の進行段階 — 早期発見のカギは自覚症状のなさ
同センターによると、網膜症は、日本では改変Davis分類という方法で「単純網膜症→増殖前網膜症→増殖網膜症」の3段階に分類されます。視力低下などの自覚症状は網膜症が重症になるまで出てこないと言われているため、網膜症の診断を受けていない場合でも年に1回は眼科を受診して検査を受けることが推奨されています[5]。この網膜症は日本における失明原因の第3位(1位は緑内障)とされています[5]。網膜症そのものの進行段階・治療法の詳しい解説は、別記事「糖尿病網膜症とは」にまとめています。
同センターの解説では、神経障害は糖尿病の方に最も多い合併症のひとつです。高血糖が続くと末梢神経の代謝に異常をきたしたり、神経に栄養を与える血管が傷ついて血流が低下したりすることで、神経の働きが障害されます[4]。感覚神経・運動神経・自律神経のどれが障害されるかによって症状は多彩で、次のような例があります[4]。
| 障害される神経 | 症状の例 |
|---|---|
| 感覚神経 | 両側の足先のしびれ・痛み・冷感、ガラスの破片を踏んでも気づかないほどの感覚低下 |
| 自律神経(胃腸) | 胃不全麻痺(胸焼け・吐き気・食欲低下)、便秘や下痢 |
| 自律神経(心臓・血圧) | 無痛性心筋梗塞、起立性低血圧、頻脈や徐脈 |
| 運動神経(四肢) | 太ももやお尻の筋力低下・筋萎縮、足の変形 |
| 自律神経(血糖) | 無自覚性低血糖(低血糖の症状を自覚しづらくなる) |
出典:同センター「神経障害」(2024年12月19日更新)[4]
神経障害そのものが命に関わることは少ないとされていますが、痛みを感じにくくなることで足の傷や心筋梗塞に気づきにくくなり、結果として重症化するケースがあると指摘されています[4]。
🚦 すぐに受診が必要なサイン
大血管症(えのき)— 心筋梗塞・脳梗塞・末梢動脈疾患の見分け方
同センターによると、大血管症とは、心臓の血管・脳の血管・足の血管など比較的太い血管の動脈硬化によって起こる合併症の総称です[3]。
冠動脈の病気(心筋虚血)
同センターの解説では、冠動脈とは心臓に酸素や栄養を運んでいる血管です。血管が細くなり酸素が行き渡らなくなると狭心症、詰まって心臓の組織が死んでしまうと心筋梗塞が起こります。この病気のある方はない方と比べて心筋梗塞の危険度が数倍高いとされています[3]。合併した冠動脈の病気には、狭心症や心筋梗塞を発症しても胸痛などの痛みが出ないことがある、心臓の血管が同時に複数傷ついていることが多い、心筋梗塞後の死亡率も高いという特徴があります[3]。冠動脈の病気を早い時期に発見した場合は、血液をさらさらにする薬やコレステロール値を下げる薬を新たに始めたり増量したりして、動脈硬化をこれ以上進めないようにします。あらかじめカテーテルで心臓の血管を広げる治療や、外科的に別の血管とつなぎ合わせる治療を行い、血液の流れを改善させる場合もあります[3]。冠動脈疾患が原因で胸の痛みや息苦しさが急に現れた場合は命に関わることがあるため、救急車を呼ぶなど迅速な対応が必要です[3]。
脳血管障害
同センターの解説では、脳血管障害とは脳に栄養を送る血管に生じた障害で、血管が詰まる脳梗塞と、血管が破れる脳出血があります。この病気のある方では脳出血よりも脳梗塞が多いと言われており、脳血管障害後に死亡する危険が高いことも指摘されています[3]。片麻痺やろれつが回らない症状が出た場合、詰まった血栓を溶かす治療は発症から3〜6時間以内の開始が重要とされ、疑ったらすぐに救急車を呼ぶことが勧められています[3]。
末梢動脈の病気(足の血管)
同センターの解説では、手足、特に足の血管の動脈硬化が進行し、血管が狭く細くなった状態です。一般的な症状の分類にFontaine分類があります[3]。
| 段階 | 症状 | 重症度 |
|---|---|---|
| 1 | 冷感・しびれ(足が冷たい、しびれる) | 軽度虚血 |
| 2 | 間欠性跛行(しばらく歩くと足が重くなる・痛む) | 中等度虚血 |
| 3 | 安静時疼痛(じっとしていても足に痛みを感じる) | 高度虚血 |
| 4 | 潰瘍・壊疽(足に潰瘍ができる、組織が死ぬ) | 重症虚血 |
出典:同センター「大血管症」(Fontaine分類)[3]
同センターによると、足の血管が細くなっているかどうかを調べる検査としては、手と足の血圧の比を測る下腿―上腕血圧比(ABI)が簡便な方法として使われています[3]。症状がある場合は血液をさらさらにする薬や血行を良くする薬で症状が軽くなることがあり、さらに重症の場合は足の血管を広げる治療が行われることもあります。足が壊疽になり、傷が広がったり細菌感染を招いたりする場合は、傷口を削ったり、やむを得ず足の一部を切断したりすることもあるとされています[3]。
大血管症を予防するには、心臓・脳・足のいずれについても「糖尿病・血圧・脂質のコントロール、減量、禁煙」という共通の対策が重要だとされています[3]。
足の毎日チェックで見るべきポイント
足病変を早めに発見するために、同センターは「足を毎日よく観察すること」が最も大事だとしています[6]。特に、血糖コントロールが悪い方・以前に足の潰瘍や壊疽の経験がある方・神経障害のある方・末梢動脈疾患のある方は、リスクが高い患者として注意が必要とされています[6]。次の項目に当てはまるものがないか、入浴時などに確認する習慣をつけることが勧められています[6]。
| チェック項目 | 当てはまる場合の対応 |
|---|---|
| 水虫や細菌に感染している可能性がある(爪の変形・変色、赤く腫れる、膿が出るなど) | 放置せず、糖尿病の主治医または皮膚科を受診[6] |
| 足に傷がある | 体重をかけないようにし、早めに受診[6] |
| 足が赤く腫れている | 感染の兆候の可能性があり、早めに受診[6] |
| 足の感覚が低下している(ガラスの破片を踏んでも気づかないなど) | 低温やけどのリスクにも注意し、あんか・湯たんぽ・使い捨てカイロの直接使用を避ける[4][6] |
糖尿病足病変 — 気づかないうちに進む理由
同センターによると、足病変とは、糖尿病のある方に生じる足のトラブルの総称です。水虫や細菌の感染、足の変形やタコ、ひどい状態になると組織が死んでしまう壊疽まで幅広く含まれます[6]。足の血管が狭く細くなっていること(末梢動脈疾患)に加え、足の感覚が低下する神経障害を合併していることも多いため、痛みなどの症状が出にくく、重篤な状態になるまで気づかれないことがあります[6]。
足病変を早めに発見するために、糖尿病の方は足を毎日よく観察することが最も大事だとされています。特に、血糖コントロールが悪い方・以前に足の潰瘍や壊疽の経験がある方・神経障害のある方・末梢動脈疾患のある方は、リスクの高い患者として注意が必要です[6]。
合併症を起こさない・悪くしないためにできること
同センターは、合併症を起こさない・悪くしないためのポイントとして次を挙げています[1]。
- 血糖値を適切な値にする
- 治療を中断しない
- 血圧・コレステロールの値を望ましい範囲にする
- 喫煙をしない
- 体重を望ましい範囲にする
合併症を早く見つけるには、定期的に合併症を発見するための診察や検査を受けることが必要です。もし合併症が見つかった場合には、早めに詳しい検査や治療を受け、合併症の段階によって網膜症では眼科、腎症であれば腎臓内科、脳血管や心臓の合併症であれば神経内科・循環器科・血管外科など、それぞれの分野の専門医との連携が必要になります[1]。
合併症に共通するリスク因子一覧
「しめじ」と「えのき」は起こる場所も症状も異なりますが、進行に関わる要因には重なりが多くあります。同センターの各解説ページが挙げているリスク因子を、合併症ごとに一覧にしました[1][2][3][4][5]。
| リスク因子 | 神経障害 | 網膜症 | 腎症 | 大血管症 |
|---|---|---|---|---|
| 血糖コントロール不良 | 関連あり[4] | 関連あり[5] | 関連あり[2] | 関連あり[1] |
| 高血圧 | 関連あり[4] | 関連あり(ACE阻害薬・ARBが予防に有効との報告)[5] | 関連あり[2] | 関連あり[1] |
| 脂質異常症 | 関連あり[4] | 関連あり(フィブラート系薬に重症化抑制効果の報告)[5] | 関連あり[2] | 関連あり[1] |
| 喫煙 | 関連あり[4] | (個別の記載なし) | 関連あり[2] | 関連あり[1] |
| 糖尿病罹病期間 | 関連あり[4] | 関連あり(診断年齢が若いほど罹病期間が長くなりやすい)[5] | (個別の記載なし) | (個別の記載なし) |
出典:同センターの各合併症別ページ[1][2][3][4][5]をもとにJHO編集部が整理。「(個別の記載なし)」は、参照したページにその因子への言及が見当たらなかったことを示すもので、関連が否定されているという意味ではありません。
合併症の進み方はなぜ人によって違うのか — 罹病期間という要因
「しめじ」も「えのき」も、発症・進行のスピードには大きな個人差があります。同センターは網膜症について、発症からの期間(罹病期間)が長ければ長いほど網膜症になりやすいと説明しており、「同じ70歳の患者さんでも、40歳のときに診断された人と69歳のときに診断された人とでは、網膜症のあるリスクは異なり、前者の方が高い」という具体例を示しています[5]。これは網膜症に限った説明ですが、細小血管症全般に共通する「高血糖にさらされた年数」という考え方の一例として参考になります。
同センターの解説では、神経障害についても、糖尿病罹病期間は発症と関連があるとされており、発症していない方にとっては、発症しない・発症時期を遅らせることそのものが、将来の神経障害の発症予防につながると説明されています[4]。罹病期間に加えて、血糖コントロールの状態・高血圧・脂質異常・喫煙・飲酒といった生活習慣要因が、しめじ・えのきいずれの発症・進展とも関連するとされています[4]。
同センターの解説では、血糖を厳格に下げるほど網膜症の発症リスクは下がる一方で、そのために薬(特にインスリン)を強化すると低血糖のリスクが上がるというトレードオフも指摘されています。どちらが本人にとってよい治療かは、年齢や低血糖リスクなどを踏まえて本人と主治医が相談して決める必要があるとされ、一律の正解があるわけではありません[5]。特に高齢の方の場合は、低血糖による危険を避けるため血糖の目標値を緩めに設定することがある点も、腎症の治療方針の中で触れられています[2]。
透析療法について知っておきたいこと
同センターの解説では、腎症が進行し、腎臓の機能が著しく低下した場合には、人工的に腎臓の機能を補う透析療法が必要になります。透析療法には「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があります[2]。
| 項目 | 血液透析 | 腹膜透析 |
|---|---|---|
| 方法 | 血液ポンプで血液を体外に出し、機械を通して老廃物と余分な水を取り除いてから体内に戻す。腕に血管(シャント)を作製する[2] | お腹の中の腹膜を利用し、透析液を注入・一定時間ためてから体外に出すことで老廃物を取り除く。カテーテルをお腹に埋め込む手術が必要[2] |
| 頻度 | 週に3回、1回3〜5時間、そのつど通院[2] | 自宅などで自分や家族が毎日行う(就寝中など)。通院は1ヵ月に1回程度[2] |
| 主な注意点 | シャントトラブル(閉塞や感染症など)、不均衡症候群、低血圧など[2] | 腹膜炎やカテーテルのトラブルによる細菌感染症など[2] |
出典:同センター「腎症」[2]
透析療法を行っている方の医療費や介護サービスに関する公的支援には、特定疾病療養受療証・身体障害者手帳・高額療養費制度・介護保険制度などがあり、病院の看護相談窓口や自治体の相談窓口で確認できるとされています[2]。2018年末時点で、透析導入となった患者の原因疾患のうち腎症が最も多く、この状況を受けて国をあげた重症化予防の取り組みが行われています[7]。
日本と国際的な位置づけの違い — 「糖尿病性腎臓病」という新しい概念
| 項目 | 従来の「糖尿病腎症」(日本) | 「糖尿病性腎臓病」という広い概念 |
|---|---|---|
| 定義 | 糖尿病のみが直接的な原因である腎障害[2] | 糖尿病が腎機能悪化の一因ではあるが、糖尿病以外の要因(肥満症・高血圧・脂質異常症・高尿酸血症など)が主原因の場合も含む、より広い疾患概念[2] |
| アルブミン尿 | 典型的には尿アルブミンの増加を伴って進行する[2] | アルブミン尿の増加を伴わずに腎機能が低下するケースも含む[2] |
同センターは、典型的な腎症の典型的な特徴を持たない腎症を含めたこの広い概念を「糖尿病性腎臓病」と呼ぶと説明しており、腎臓の合併症の捉え方が従来の「腎症」の捉え方だけでは足りなくなってきていることを示しています[2]。この点は、合併症を血糖コントロールだけでなく血圧・脂質・体重など複数の要因から総合的に管理する必要があるという、本記事の中心テーマとも重なります。肥満症・高血圧・脂質異常症・高尿酸血症といった、この病気そのもの以外の要因が重なっている方ほど、この広い概念があてはまりやすいとされています[2]。
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
合併症ごとの定期検査の目安 — いつ・どの科を受診するか
同センターの解説を踏まえると、「症状が出てから受診すればよい」という考え方は、細小血管症(しめじ)には当てはまりません。神経障害・網膜症・腎症のいずれも、自覚症状が出た時点ではすでに一定程度進行していることが多いためです[1]。同センターの各解説ページの記載をもとに、検査の目安を診療科別に整理しました。
| 合併症 | 主な検査 | 目安となる頻度 | 受診する科 |
|---|---|---|---|
| 神経障害 | アキレス腱反射、モノフィラメント検査、振動覚検査、心拍変動検査、神経伝導検査[4] | 糖尿病の定期診察の中で確認(症状がなくても) | 主治医(内科) |
| 網膜症 | 眼底検査、蛍光眼底造影、光干渉断層計(OCT)[5] | 年1回以上(網膜症の診断を受けていない場合も)[5] | 眼科 |
| 腎症 | 尿アルブミン検査、尿タンパク検査、血清クレアチニン(eGFR)[2] | 糖尿病の定期診察の中で確認(症状のあるなしにかかわらず)[2] | 主治医・腎臓内科 |
| 冠動脈疾患 | 安静時心電図、トレッドミル運動負荷試験、心臓超音波、冠動脈CT[3] | 症状がなくても合併症が進んでいる方・心電図異常のある方は注意[3] | 循環器科 |
| 脳血管障害 | 頸動脈超音波、頭部MRI・MRA、頭部CT[3] | 動脈硬化リスクに応じて主治医と相談 | 神経内科・脳神経外科 |
| 末梢動脈疾患・足病変 | 足の診察、下腿―上腕血圧比(ABI)、下肢動脈エコー[3][6] | 毎日の自己観察+定期診察 | 主治医・血管外科・皮膚科 |
出典:同センター「神経障害」[4]「網膜症」[5]「腎症」[2]「大血管症」[3]「糖尿病足病変」[6]の記載をもとにJHO編集部が一覧表として整理。
生活習慣の見直し — 血糖・血圧・脂質・体重・禁煙の5本柱
同センターの各解説ページが共通して挙げている、予防・進行抑制のための生活習慣の柱は次の5つです[1][2][3][4]。
同センターの解説では、もし血糖コントロールが目標値より高い状態が続いているなら、まず主治医と相談のうえで食事療法・運動療法・薬物療法の見直しを行うことが、しめじ・えのきいずれの進行抑制にも共通して重要だとされています[1]。
もし血圧・コレステロールが高い状態が続いているなら、大血管症だけでなく、網膜症や腎症の進行にも影響することが指摘されています。特にACE阻害薬やARBと呼ばれる降圧薬は、網膜症や腎症の発症・進行を抑える効果が高いと報告されています[5]。
もし喫煙をしているなら、動脈硬化症を進める要因のひとつであり、神経障害・腎症・大血管症のいずれの発症・進展とも関連があるとされています[4]。禁煙は合併症全体のリスクを下げる数少ない「今日から始められる対策」です。
同センターの解説では、もし足に感覚の低下や変形があるなら、低温やけどを起こしやすいため、あんかや湯たんぽの使用時は注意し、就寝時はスイッチを切る、使い捨てカイロを皮膚に直接つけないなどの工夫が必要です[6]。
🖨️ 受診時に医師へ伝えるためのチェックリスト
- 発症してからの年数
- 直近のHbA1c・血圧・コレステロールの数値(お薬手帳や検査結果を持参)
- 足のしびれ・痛み・傷の有無(いつから、どこに)
- 視力の変化の有無、直近の眼科受診日
- むくみ・息切れ・胸の違和感の有無
- 医師に聞きたいこと(例:次にどの合併症検査を受けるべきか、現在の病期はどの段階か)
合併症が発症・進行するまでの正確な期間には個人差が大きく、血糖コントロールの状態や遺伝的要因、合併する他の病気によっても変わるため、「何年で必ずこの段階に進む」という一律の結論は、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。合併症の進み方が気になる場合は、自己判断で経過を待たず、主治医に定期検査の頻度を相談することをおすすめします。
最終更新日:2026年8月11日(確認日)。数値やガイドラインの改定により、記載内容が変わることがあります。本文の誤りや古い情報にお気づきの際は、サイト運営者へお知らせいただけますと、事実を確認のうえ訂正いたします。
合併症ごとにさらに詳しく知りたい方へ
本記事は3大合併症と大血管症を横断的に整理した総論です。個別の合併症についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
- 糖尿病性自律神経障害とは?知られざる合併症の正体を解説(神経障害の中でも見逃されやすい自律神経障害を詳しく解説)
- 糖尿病とEDの関係は?血管の仕組みとガイドラインの基準(自律神経障害・血管障害が関わる代表的な合併症)
- 糖尿病が引き起こす視力低下とは?網膜症の進行と治療法を解説(網膜症の進行段階・治療法をさらに詳しく)
- 糖尿病性腎症のメカニズムとは?腎臓が壊れる仕組みを解説(腎症が進むメカニズムをさらに詳しく)
- 糖尿病合併症があっても運動していい?専門医の基準でわかる安全な運動法(合併症がある方の運動の目安)
- 糖尿病性皮膚トラブルの原因と対策|今日からできるフットケア(足病変につながる皮膚トラブルとフットケア)
なお、各合併症の受診の目安や日常生活での注意点をより詳しく知りたい方は、糖尿病の合併症とは?体への深刻な影響と受診の目安もあわせてご覧ください。
よくある質問
糖尿病の合併症「しめじ」「えのき」とは何ですか?
糖尿病の合併症で目はどうなりますか?
糖尿病腎症の病期はどうやって決まりますか?
足の壊疽はなぜ糖尿病で起きやすいのですか?
糖尿病合併症管理料とは何ですか?
糖尿病腎症になったら食事はどう変えればよいですか?
参考文献
- 糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター)「糖尿病の慢性合併症について知っておきましょう」(2024年10月24日更新・確認)https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/060/020/02.html
- 糖尿病情報センター「腎症」(2020年12月4日改定版掲載)https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/060/070/01.html
- 糖尿病情報センター「大血管症」https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/060/030/01.html
- 糖尿病情報センター「神経障害」(2024年12月19日更新・確認)https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/060/060/01.html
- 糖尿病情報センター「網膜症」(2018年1月17日掲載)https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/060/050/01.html
- 糖尿病情報センター「糖尿病足病変」https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/060/040/01.html
- 日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」https://docs.jsdt.or.jp/overview/index.html
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