糖尿病が引き起こす視力低下とは?網膜症の進行と治療法を解説
この記事でわかること
目次
- 糖尿病網膜症とは?視力低下が起きる仕組み
- 視覚障害の原因、糖尿病網膜症は今「第3位」——基準となる数字
- 網膜症のリスクを高める要因 — 数字で見る危険因子
- 糖尿病黄斑浮腫とは — 網膜症とは別に注意したい合併症
- すぐに医療機関に相談すべきサイン(受診の目安)
- 眼科での検査は何をするのか
- 治療法 — 病期によって選択肢が変わる
- 日本と海外(米国)のガイドラインの違い
- 運動療法と脂質管理 — 網膜症がある場合に気をつけたいこと
- 網膜症だけでなく、他の合併症も一緒に考える理由
- 仕事・運転・日常生活への影響をどう考えるか
- かかりつけ眼科と専門施設、どちらを受診すべきか
- よくある誤解 — 「順位が下がった」の受け取り方
- 誤解1:「順位が下がった=自分は網膜症にならない」ではない
- 誤解2:「視力が落ちていない=網膜症になっていない」ではない
- よくある質問
- 今日からできること — 3つのポイントに整理する
- あわせて読みたい — 糖尿病の合併症について、さらに詳しく
- 参考文献
結論から言うと、糖尿病による視力低下の代表的な原因は糖尿病網膜症であり、今も視覚障害の主要な原因の一つだが、「失明原因の第1位」という情報は古い。2015年度の全国調査では、視覚障害の原因の第1位は緑内障(28.6%)、第3位が糖尿病網膜症(12.8%)である。[2]
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1989年度の調査では糖尿病網膜症が第1位(約18%)だったため、今もそのイメージが残っている可能性がある[2]。順位が下がった背景には血糖管理や治療法の進歩があると考えられるが、糖尿病患者の約4割に網膜症の所見があるとされ[3]、自覚症状がないまま進行することが多いため、年1回の眼科受診は今も重要である。
要点まとめ
- 視覚障害の原因の順位(2015年度全国調査):①緑内障28.6% ②網膜色素変性14.0% ③糖尿病網膜症12.8% ④黄斑変性8.0%[2]。
- 糖尿病網膜症は「単純網膜症→増殖前網膜症→増殖網膜症」の順に進行し、視力低下などの自覚症状は重症化するまで出にくいとされる[3]。
- 治療法にはレーザーによる網膜光凝固・抗VEGF薬の硝子体注射・硝子体手術があり、病期によって使い分けられる[1]。
- 糖尿病と診断されたら、目の見え方に異常を感じなくても年1回は眼科を受診することが推奨されている[3]。
- 急激な視力低下・視野が欠ける・飛蚊症が急に増えるなどの症状は、緊急性が高いサインであり、早期の眼科受診が必要である。
編集方針: JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会の一次資料と照合して作成。最終確認は人の目。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点)。
💡 覚えておきたい基準:糖尿病=年1回の眼科受診
糖尿病情報センターは、糖尿病の患者は目の見え方が正常だと思っても、年1回は眼科を受診するように推奨している[3]。視力低下の自覚症状は網膜症が重症になるまで出てこないことが多いため[3]、「見え方に問題がないから大丈夫」という自己判断は基準にならない。
糖尿病網膜症とは?視力低下が起きる仕組み
糖尿病網膜症は、血糖値が高い状態が続くことで、目の奥にある網膜の細い血管が傷つくことで起こる合併症である。日本糖尿病眼学会・日本眼科学会のガイドラインでは、糖尿病網膜症を病期によって「単純網膜症」「増殖前網膜症」「増殖網膜症」の3段階に分類している[1]。
糖尿病情報センターの解説によれば、単純網膜症の段階では毛細血管がもろくなり、血管が瘤のようになったり、血液成分が漏れて網膜に脂質が沈着したりする[3]。進行すると増殖前網膜症となり、毛細血管が閉塞して網膜の一部に酸素や栄養が行き渡らなくなり、血管が拡張・蛇行し、神経が浮腫んだ状態になるとされる[3]。さらに進行すると増殖網膜症に至り、酸素不足を補おうとして新生血管という異常な血管ができるが、この血管はもろく、大きな出血を起こしやすいと説明されている[3]。網膜剥離も起こりやすくなり、この段階まで進むと失明の危険が高まるとされる[3]。3つの病期は連続した一つの流れであり、多くの場合は単純網膜症から増殖前網膜症、そして増殖網膜症へと段階的に進行していくと考えられている。ただし進行の速さには個人差があり、血糖コントロールの状態や罹病期間、後述する血圧などの要因によって、進み方が速い人もいればゆっくりな人もいるとされる。
上図は岡山大学の発表資料(2015年度全国調査結果)の数値をもとにJHO編集部が作図した模式図である[2]。
厄介なのは、糖尿病情報センターも指摘するとおり、視力低下などの自覚症状は網膜症がかなり進行するまで出てこないことが多い点である[3]。「見え方に変化がない=目は大丈夫」とは限らず、自覚症状に頼らず定期的な眼科検査で早期に見つけることが、視力を守るうえで重要だと考えられている。
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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
視覚障害の原因、糖尿病網膜症は今「第3位」——基準となる数字
岡山大学が発表した全国調査(2015年度、新規に視覚障害の認定を受けた人が対象)によれば、視覚障害の原因疾患の第1位は緑内障(28.6%)、第2位は網膜色素変性(14.0%)、第3位が糖尿病網膜症(12.8%)、第4位が黄斑変性(8.0%)である[2]。同発表は、1989年度の調査では糖尿病網膜症が視覚障害原因の第1位(約18%)だったことにも触れており[2]、現在でも「糖尿病網膜症=失明原因の1位」という情報が広まっている一因になっていると考えられる。
出典:岡山大学プレスリリース「視覚障害の原因疾患の全国調査:第1位は緑内障」2018年(2015年度調査結果)[2]
順位が下がったこと自体は良い変化と考えられるが、油断してよい理由にはならない。糖尿病情報センターによれば、糖尿病患者の約4割に網膜症の所見があるとされ、国内の患者数は約300万人と推定されている[3]。日本眼科医会の資料(2005年公表、平成3年の調査に基づく)でも、年間約3,000人が糖尿病網膜症を原因として失明していると報告されている[4]。この人数の調査自体は少し古いが、同じ資料でも治療技術の進歩により失明を回避できるケースが増えてきているとされており[4]、実際の失明者数は現在ではさらに変化している可能性がある。順位という「割合」の数字だけでなく、実際の患者数・失明者数という「実数」でも、糖尿病網膜症は今も向き合うべき合併症である。
網膜症のリスクを高める要因 — 数字で見る危険因子
日本眼科学会・日本糖尿病眼学会のガイドラインは、糖尿病網膜症のリスクを高める要因として、罹病期間・血糖コントロール・血圧・低血糖の4つを中心に整理している[1]。それぞれ具体的にどの程度影響するのか、ガイドラインが引用する研究データをもとに見ていく。
| リスク要因 | 報告されている影響 | 出典となる研究 |
|---|---|---|
| 罹病期間 | 糖尿病の罹病期間が5年以上になると、糖尿病網膜症の発症リスクが高くなると報告されている | Japan Diabetes Complications Study(JDCS)[1] |
| 血糖コントロール(HbA1c) | HbA1cがNGSP値でおよそ7.0%未満であれば、細小血管合併症(網膜症を含む)の発症・進展を予防できる可能性が示唆されている | Kumamoto Study[1] |
| 血圧 | 収縮期血圧を10mmHg下げることで網膜症発症のリスクを約10%軽減でき、厳格な血圧管理により網膜症の進展が35%、視力低下が47%それぞれ減少したと報告されている | UKPDS[1] |
| 重症の低血糖 | 他人の介助を要するような重症低血糖は、糖尿病網膜症の発生率を約4倍に増加させると、国内の報告にある | 国内報告[1] |
出典:日本眼科学会・日本糖尿病眼学会「糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)」2020年、第6章 全身管理と眼科受診[1]
ここで注目したいのは、血圧管理という「内科的な管理」が、目の合併症の進み方にもはっきり関わっているとガイドラインが示している点である[1]。網膜症は「眼科だけの問題」ではなく、血糖・血圧・低血糖対策を含めた全身管理の結果として現れると考えられており、内科主治医と眼科医の連携が重視される理由もここにある。また、発症年齢が若いほど網膜症は重症化しやすいともされており[1]、若年で糖尿病と診断された人ほど、長期にわたる定期受診の習慣がより重要になると考えられる。逆に言えば、罹病期間が長くなっても、血糖・血圧・脂質といった管理できる要因をきちんとコントロールし続けることで、網膜症の発症・進展のリスクを下げられる可能性があるということでもある。「罹病期間が長いから諦める」のではなく、「罹病期間が長い分、管理できる要因により注意を払う」という向き合い方が、ガイドラインが示すデータからは現実的だと考えられる。
糖尿病黄斑浮腫とは — 網膜症とは別に注意したい合併症
糖尿病による視力低下の原因は、網膜症の病期分類だけでは説明しきれない部分もある。糖尿病黄斑浮腫は、網膜の中でもものを見るために重要な「黄斑」という部分に水分がたまってむくむ状態で、単純網膜症の段階でも起こりうるとされ、網膜症の病期とは別に評価される合併症である[1]。ガイドラインでは、糖尿病黄斑浮腫の合併も糖尿病の罹病期間が長くなるほど増える傾向があるとされている[1]。治療には抗VEGF療法や網膜光凝固が用いられ、後述の治療法の章で詳しく扱う。
すぐに医療機関に相談すべきサイン(受診の目安)
受診の目安:この症状はできるだけ早く眼科を受診すること
- 急に視力が落ちた、ものがゆがんで見える。
- 視野の一部が欠ける、見えない部分がある。
- 飛蚊症(視界に虫のような黒い点が飛んで見える症状)が急に増えた、大きな黒い影が見えるようになった。
- 片目だけ急に見えにくくなった。
これらは増殖網膜症による硝子体出血や網膜剥離など、緊急性の高い状態のサインである可能性があると考えられる[3]。自己判断で様子を見ず、できるだけ早く眼科(可能であれば糖尿病網膜症の診療経験がある施設)を受診することが望ましい。
眼科での検査は何をするのか
「眼科を受診する」と言われても、具体的に何をするのか分からず不安に思う人もいるだろう。日本眼科学会・日本糖尿病眼学会のガイドラインで扱われている主な検査には、次のようなものがある[1]。
| 検査 | 何がわかるか | 備考 |
|---|---|---|
| 眼底検査 | 網膜の血管の状態、出血・浮腫の有無を医師が直接観察する | 散瞳薬で瞳孔を広げてから行うことが多い[1] |
| 光干渉断層計(OCT) | 網膜の断面を撮影し、黄斑のむくみ(黄斑浮腫)の程度を二次元マップで評価する | 糖尿病黄斑浮腫の診断・経過観察に使われる[1] |
| 蛍光眼底造影 | 造影剤を使って血管からの漏れ・血流が乏しい部分(無灌流領域)を調べる | 網膜光凝固の範囲を決める際などに用いられるとされる[1] |
出典:日本眼科学会・日本糖尿病眼学会「糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)」2020年[1]
散瞳薬を使う検査では、検査後数時間はまぶしさを感じやすく、ピントが合いにくくなることがあるため、車の運転を予定している日は避けたほうがよいとされることが多い。受診前に眼科・クリニックに確認しておくと安心である。
治療法 — 病期によって選択肢が変わる
日本眼科学会・日本糖尿病眼学会のガイドラインでは、糖尿病網膜症の治療法として、レーザーによる網膜光凝固、抗VEGF薬の硝子体注射、硝子体手術という主に3つの選択肢が示されている[1]。
| 治療法 | 主に使われる場面 | 備考 |
|---|---|---|
| 網膜光凝固(レーザー) | 増殖前網膜症〜増殖網膜症、糖尿病黄斑浮腫 | 新生血管の発生を抑える目的で行われるとされる[1] |
| 抗VEGF薬の硝子体注射 | 糖尿病黄斑浮腫など | 新生血管や浮腫の原因物質を抑える薬を目に注射する治療法[1] |
| 硝子体手術 | 増殖網膜症で硝子体出血・網膜剥離がある場合など | 出血や増殖組織を取り除く手術[1] |
出典:日本眼科学会・日本糖尿病眼学会「糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)」2020年[1]
ガイドラインでは、糖尿病黄斑浮腫に対する治療として、抗VEGF療法と、直接/格子状という方式の網膜光凝固の両方が選択肢として挙げられており、経済的な負担の違いも踏まえて選択されることが多いとされている[1]。どの治療法が適しているかは、網膜症の病期・黄斑浮腫の有無・全身状態によって異なるため、必ず眼科専門医の診察を受けたうえで判断する必要がある。
日本と海外(米国)のガイドラインの違い
糖尿病網膜症の管理方針は、日本と海外の学会でも共通する部分が多いが、強調点にはやや違いがある。
| 項目 | 日本(日本眼科学会・日本糖尿病眼学会 2020) | 米国(NEI・米国眼科学会 系統) |
|---|---|---|
| 基本方針 | 内科と眼科の連携を重視し、糖尿病と診断されたら速やかに眼科を受診・定期検査を推奨[1] | 糖尿病と診断された時点での眼科受診と、その後の定期的な網膜検査(dilated eye exam)を推奨[5] |
| 黄斑浮腫の治療 | 抗VEGF療法・網膜光凝固の両方を選択肢として提示し、経済的負担も判断材料とする[1] | 抗VEGF療法を中心に位置づける報告が多いとされる[5] |
両者に共通しているのは、「症状が出る前の定期検査」を治療より前段階の柱として位置づけている点である。糖尿病網膜症は自覚症状が出にくいという性質上、日本・海外を問わず「見え方に異常がなくても検査を受ける」という考え方が土台になっていると考えられる[1][5]。
運動療法と脂質管理 — 網膜症がある場合に気をつけたいこと
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動、筋力トレーニングなどのレジスタンス運動は、いずれも血糖コントロールに有効とされている[1]。ただし、ガイドラインは、網膜症がある患者・網膜症になる可能性が高い患者については、運動療法を始める前に網膜症の程度と、行ってよい運動の強度を評価する必要があるとしている[1]。これは、増殖網膜症などで新生血管がもろくなっている場合、強い運動によって眼内出血のリスクが高まる可能性があるためと考えられる。糖尿病と診断されている人が新しく運動を始める際は、自己判断で強度の高い運動に取り組む前に、眼科での評価を受けておくと安心である。
脂質管理についても、網膜症との関連を示すデータがある。フェノフィブラートという脂質異常症治療薬の効果を検討したFIELD試験では、投与群でレーザー治療(光凝固)の導入がプラセボ群より31%減少し、増殖網膜症・黄斑浮腫の発症リスクもそれぞれ30%・31%減少したと報告されている[1]。また、ACCORD Eye Studyでは、スタチン単独と比較して、スタチンにフェノフィブラートを併用した群で網膜症の進展リスクが40%減少したとされている[1]。血糖・血圧だけでなく、脂質の管理も網膜症の進展抑制に関わる可能性があると考えられており、内科主治医と相談しながら総合的に管理することが望ましい。
喫煙については、メタ解析で1型糖尿病患者では喫煙が網膜症の進展リスク増大と関連していた一方、2型糖尿病患者では同様の関連は認められなかったと報告されている[1]。喫煙は網膜症以外にも心血管疾患や腎症のリスクを高めるとされており[1]、網膜症のリスクに直結するかどうかにかかわらず、糖尿病全体の合併症予防という観点では禁煙が推奨される。
網膜症だけでなく、他の合併症も一緒に考える理由
糖尿病の合併症は、網膜症・腎症・神経障害の3つが「三大合併症」として知られており、これらは血糖・血圧といった共通の要因の影響を受けると考えられている[1]。ガイドラインでも、網膜症のリスク要因として挙げられる血糖コントロールや血圧管理は、腎症・神経障害の管理とも重なる部分が大きい。つまり、「目だけ」「腎臓だけ」と個別に対策するより、血糖・血圧・脂質など全身の管理を続けることが、結果的に複数の合併症の予防・進展抑制につながると考えられている。
眼科での定期検査は、目の状態を確認するだけでなく、糖尿病全体の管理がうまくいっているかを映す「鏡」のような役割も持つと言える。網膜症の進行が確認された場合は、目の治療と並行して、内科での血糖・血圧管理を見直すきっかけとして捉えることも重要である。眼科の受診結果を内科の主治医にも共有し、逆に内科での検査結果(HbA1c・血圧・脂質など)を眼科医にも伝えるという、双方向の情報共有を意識すると、より一貫した管理につながりやすいと考えられる。
仕事・運転・日常生活への影響をどう考えるか
網膜症の進行段階によっては、車の運転や細かい作業を伴う仕事に影響が出る可能性がある。視野の欠けや急激な視力低下がある場合、自己判断で運転や危険を伴う作業を継続するのは避け、眼科医に運転の可否や生活上の注意点を確認することが望ましいと考えられる。特に増殖網膜症の段階で硝子体出血などが起きている場合、見え方が急激に変動することがあるため、症状が不安定なうちは特に慎重な判断が必要になる。
一方、単純網膜症の早期段階であれば、多くの場合、生活上の制限は少なく、血糖・血圧の管理を続けながら定期検査を継続することが基本になる。「網膜症と診断された=生活が大きく変わる」と早合点せず、まず自分がどの病期にあるのかを眼科医に確認し、その病期に応じた注意点を具体的に聞くことが、不安を減らす一番の近道になると考えられる。
かかりつけ眼科と専門施設、どちらを受診すべきか
糖尿病と診断されて初めて眼科を受診する場合、まずは近くの眼科(かかりつけ眼科)で構わないことが多い。単純網膜症の早期段階であれば、一般的な眼科での定期検査・経過観察で十分なことが多いと考えられる。一方で、増殖前網膜症・増殖網膜症まで進んでいる場合や、レーザー治療・硝子体手術が必要と判断された場合は、糖尿病網膜症の治療経験が豊富な専門施設(大学病院や網膜硝子体専門のクリニックなど)への紹介が行われることがある。
「かかりつけ眼科から専門施設に紹介された」ことは、必ずしも悪い知らせとは限らない。専門施設は治療の選択肢(レーザーの種類・注射・手術など)が多く、病期に応じたより詳細な評価ができる場合が多いためである。逆に、治療が一段落した後は、経過観察を再びかかりつけ眼科に戻して継続する、という連携が行われることもある。どちらを受診すべきか迷った場合は、まずかかりつけの眼科医・内科医に相談することが確実である。内科の主治医から眼科への紹介状を書いてもらう形が一般的だが、糖尿病と診断されてまだ眼科を受診していない場合は、内科の診察時に「そろそろ眼科を紹介してほしい」と自分から伝えることも、受診のきっかけとして有効である。
よくある誤解 — 「順位が下がった」の受け取り方
この記事の冒頭で紹介した「糖尿病網膜症は視覚障害原因の第3位」という情報は、正しく使えば安心材料になるが、誤った受け取り方をすると危険である。次の2つの誤解に注意したい。
誤解1:「順位が下がった=自分は網膜症にならない」ではない
順位はあくまで全国の集団データであり、個人が網膜症になるかどうかとは別の話である。糖尿病情報センターによれば、糖尿病患者の約4割に網膜症の所見があるとされており[3]、個人レベルで見れば決して低いリスクとは言えない。
誤解2:「視力が落ちていない=網膜症になっていない」ではない
すでに述べたとおり、視力低下などの自覚症状は網膜症が重症になるまで出てこないことが多いとされている[3]。自覚症状の有無は、網膜症の有無を判断する基準にはならない。眼科での眼底検査を受けて初めて分かることが多い。
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
📋 眼科受診時にチェックしておくメモ
・糖尿病と診断されてからの年数、直近のHbA1c値
・視力の変化(いつから、どちらの目か、ゆがみ・暗い部分の有無)
・飛蚊症の有無・急な変化
・血圧・脂質など他の全身状態のコントロール状況
・現在使用中の糖尿病治療薬・インスリンの種類
糖尿病網膜症の順位が下がった具体的な要因(血糖管理の改善なのか、治療法の進歩なのか、検診体制の変化なのか)については、今回参照した資料には明確な内訳の記載は見当たりませんでした。複数の要因が重なっていると考えられるが、断定的な結論は出ていません[2]。また、糖尿病網膜症の進行速度には個人差があり、血糖コントロールの状態や罹病期間によって進み方が異なるとされており、この記事の病期分類はあくまで一般的な経過を示したものである。個々の患者がどのくらいの速さで進行するか、次の眼科受診をいつにすべきかといった判断は、この記事の一般論だけでは決められず、必ず担当の眼科医による個別の評価が必要になる。
更新日:2026年7月19日。ガイドラインは改定されることがあるため、最新の情報は必ず眼科専門医にご確認ください。本記事の内容に誤り・古い情報にお気づきの場合は、お問い合わせフォームよりご指摘いただければ確認のうえ速やかに修正いたします。
よくある質問
糖尿病網膜症は治りますか?
網膜光凝固(レーザー治療)とはどのような治療ですか?
糖尿病と診断されたら、すぐに眼科に行くべきですか?
飛蚊症が増えたら、すぐに受診すべきですか?
血糖コントロールを良くすれば、網膜症は防げますか?
妊娠中に糖尿病網膜症は悪化しやすいですか?
高齢者の場合、目の合併症の管理で何か違いはありますか?
糖尿病網膜症の治療費はどのくらいかかりますか?
網膜症が進んでいても、糖尿病の薬を飲んでいれば大丈夫ですか?
血圧が高いことと、目の合併症は関係ありますか?
低血糖を繰り返すと、目にも悪いのですか?
糖尿病黄斑浮腫と糖尿病網膜症は同じものですか?
今日からできること — 3つのポイントに整理する
ここまでの内容を、実際に今日から取り組める行動レベルに整理すると、次の3つのポイントになる。
- 視力に異常がなくても、年1回は眼科を受診する — 糖尿病情報センターが推奨する基本の頻度である[3]。すでに網膜症の所見がある場合は、眼科医の指示に従い、より短い間隔での受診が必要になることもある。
- 血糖・血圧・脂質を、目の合併症予防としても意識する — HbA1cをおよそ7.0%未満に近づける、血圧を管理する、脂質異常症があれば治療するといった内科的な管理が、網膜症のリスクにも関わるとガイドラインが示すデータから考えられる[1]。
- 危険なサインが出たら、次の受診日を待たずに眼科へ — 急な視力低下・視野の欠け・飛蚊症の急増などは、増殖網膜症による出血や網膜剥離のサインである可能性がある。「次の定期受診まで様子を見る」のではなく、できるだけ早い受診が望ましい。
糖尿病網膜症は、順位だけを見れば「以前より優先度が下がった合併症」に見えるかもしれない。しかし、糖尿病患者の約4割に所見があるとされる身近な合併症であり[3]、自覚症状に頼れないという性質は今も変わっていない。数字の順位に安心しすぎず、かといって過度に恐れすぎず、年1回の眼科受診という基本を淡々と続けることが、視力を守るうえで最も現実的な対策だと考えられる。
あわせて読みたい — 糖尿病の合併症について、さらに詳しく
この記事は視力・網膜症に絞って解説したが、糖尿病の合併症は網膜症だけではなく、腎症・神経障害など複数の臓器に及ぶことがある。以下の記事もあわせて参考にしてほしい。
- 糖尿病 完全ガイド(ハブページ) — 診断基準・食事療法・運動療法・薬物治療まで、糖尿病について知っておきたいことの全体像
- 糖尿病の「進行段階」とは?|腎症・網膜症・神経障害の病期分類と管理のすべて
- 日本の糖尿病患者向け間食完全ガイド:コンビニ商品から専門店のスイーツまで徹底解説
参考文献
- 日本眼科学会・日本糖尿病眼学会「糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)」2020年 https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/diabetic_retinopathy.pdf
- 岡山大学プレスリリース「視覚障害の原因疾患の全国調査:第1位は緑内障」2018年(2015年度調査結果) https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press30/press-180927-6.pdf
- 糖尿病情報センター「網膜症」 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/060/050/01.html
- 公益社団法人 日本眼科医会「糖尿病網膜症 働き盛りの約300万人が発症 毎年約3,000人が失明」2005年 https://www.gankaikai.or.jp/press/pdf/2005.pdf
- National Eye Institute「Diabetic Retinopathy」 https://www.nei.nih.gov/eye-health-information/eye-conditions-and-diseases/diabetic-retinopathy
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医療情報に関する重要なお知らせ
本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。
