【自傷行為】自分を傷つけてしまう気持ちの理由と支援の受け方
この記事でわかること
目次
- Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
- 要点まとめ
- 第1部:自傷行為とは何か — 基本と日常生活の見直し
- 1.1. 自傷行為の定義と、自殺との違い・共通点
- 1.2. 自傷行為を悪化させてしまうNGな習慣・関わり方
- 第2部:こころとからだの背景要因 — メンタルヘルス・発達・トラウマ
- 2.1. 思春期・若年層に多い理由と日本の現状
- 2.2. うつ病・不安症・パーソナリティ特性・発達特性との関連
- 2.3. 家庭・学校・職場のプレッシャーと「生きづらさ」
- 第3部:専門的な診断・治療が必要になるケース
- 3.1. 自傷行為が習慣化・依存的になっているとき
- 3.2. 自傷行為と自殺念慮・自殺企図が重なっているとき
- 3.3. 子ども・思春期の自傷行為を見つけたとき
- 第4部:今日から始めるセルフケアと支援につながるアクションプラン
- 第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?
- 5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 5.2. 症状に応じた診療科・相談先の選び方
- 5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- よくある質問
- 結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
- この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
- 参考文献
気づいたら腕に傷が増えている、痛みで頭の中がいっぱいになっている気持ちを一瞬だけ止められる——。そんな「自分でも説明しづらい自傷行為」に悩んでいる方は、日本でも少なくありません。周りに知られたくなくて隠しているうちに、「やめたいのにやめられない」「どうして自分はこんなことをしてしまうのだろう」と自分を責めてしまう人も多いです。
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。
症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
自傷行為は、多くの場合「死にたい」からではなく、「どうしようもないつらさを一瞬でも和らげたい」「言葉にならない気持ちを形にしたい」という思いから行われます。しかし、くり返すうちに傷が深くなってしまったり、自殺リスクが高まったりすることもわかっています136。自分を守るためにも、「自傷行為とは何か」「なぜやめにくいのか」「どんな助け方・助けられ方があるのか」を知ることはとても大切です。
この記事では、日本と海外の研究・ガイドラインをもとに、自傷行為の基本的な考え方、背景にあるこころの状態、日常生活でできること、そして専門家や相談窓口へのつながり方まで、段階的に解説します。今、まさに自分を傷つけてしまいそうなほどつらい方も、大切な人の自傷行為を前に戸惑っている方も、「一人ではない」と感じられるような情報とヒントをまとめました。
なお、今まさに命の危険があるほど強い希死念慮や自殺を考えている場合は、この記事を読み進める前に、迷わず119番(救急)やお住まいの地域の救急相談・電話相談窓口に連絡してください。電話相談では「死にたい」「消えたい」といった言葉をそのまま伝えて構いません1011。
Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。
本記事の内容は、以下のような一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。
- 厚生労働省・自治体・公的研究機関:自殺実態調査、精神保健・自殺対策関連の統計資料、相談窓口情報など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています3410。
- 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:日本の精神医学領域の解説や、自傷行為(NSSI)に関するレビュー論文・治療ガイド、若年者のメンタルヘルスに関する研究など、科学的に検証されたエビデンスをもとに要点を整理しています126781314。
- 医療機関・専門支援機関・教育機関による一次資料:自傷行為に直面する人や支援者に向けた実務的な解説、相談の受け方・関わり方のポイントなどを参考にしています9。
AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。
私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。
要点まとめ
- 自傷行為は、多くの場合「死にたい」からではなく、「つらい気持ちに耐えきれない」「気持ちを外に出したい」といった感情への対処として行われますが、くり返すことで自殺リスクが高まることが分かっています13613。
- 「刃物で皮膚を傷つける」「火であぶる」「壁に頭や手を打ちつける」など、さまざまな形の自傷行為があり、腕や太ももなど衣服で隠しやすい部位に集中することがよくあります57。
- 背景には、いじめ・家庭内不和・虐待・トラウマ、うつ病や不安症、発達特性、対人関係の苦しさなど、複数の要因が重なっていることが多く、単純に「意志が弱い」「かまってほしい」だけと決めつけることはできません1269。
- 自傷行為をしてしまう本人にとっても、それを目の当たりにする家族や友人にとっても大きなショックですが、「責める」「止めさせようとする」よりも、「話を聴き、気持ちを言葉にできる場」をつくることが回復への第一歩になります189。
- 日本には、こころの健康相談統一ダイヤル、#いのちSOS、いのちの電話、よりそいホットライン、「あなたのいばしょ」など、24時間利用できる相談窓口もあります。強い希死念慮があるときは、ためらわずに119番や地域の救急・精神科救急に連絡しましょう101112。
- 自傷行為そのものを急にゼロにすることよりも、「自傷行為をせざるを得ないほど追い詰められている状況」を少しずつ変えていくことが大事です。専門家の力を借りながら、より安全な感情の扱い方を一緒に探していくことができます689。
「やめたいのにやめられない」「誰にも言えずに一人で抱え込んでいる」という自傷行為は、本人にとっても周囲にとっても、とても説明しづらく、誤解されやすいテーマです。この記事では、怒りや虚しさ、孤独感などの感情がどうやって自傷行為につながっていくのか、そのメカニズムをできるだけ分かりやすく言葉にしていきます156。
まずは「自傷行為とは何か」「なぜ多くの場合は自殺とは違うが、自殺リスクとも深く関わるのか」を押さえたうえで、日常生活・学校・職場・家庭で起こりやすい背景要因を整理します。そのうえで、セルフケアとしてできること、家族や友人としてできる関わり方、医療・相談機関へのつながり方を、段階的に紹介します。
必要に応じて、関連する総合ガイドや、詳細解説記事など、JHO内の関連記事に自然な文脈で橋渡しを行います。
この記事を読み進めることで、「自分の状態をどう理解したらいいのか」「誰に、どのタイミングで相談すべきか」「相手の自傷行為を目にしたとき、どんな言葉をかけたらよいか」が、少し具体的にイメージできるようになることを目指します。
今の血圧・脈拍を確かめる
数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
身長と体重からBMIも調べる
血圧手帳(この端末に保存)
これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
第1部:自傷行為とは何か — 基本と日常生活の見直し
このセクションでは、まず「自傷行為とは何か」「自殺とどのように違うのか」といった基本から、日常生活の中で気付きやすいサインまでを整理します。専門用語をできるだけ避けながら、「自分や身近な人に当てはまるかどうか」をイメージしやすいように説明していきます。
1.1. 自傷行為の定義と、自殺との違い・共通点
専門的には、自殺の意図を持たずに、自分の身体組織を故意に傷つける行為を「自殺企図を伴わない自傷行為(nonsuicidal self-injury: NSSI)」と呼びます57。たとえば、
- 刃物などで皮膚を繰り返し傷つける
- 皮膚を火であぶく・焦がす
- 壁や固いものに自分の頭や腕を繰り返しぶつける
といった行為が含まれます。多くの人は、「死にたい」というよりも、「どうしようもない不安や怒り、虚しさを静めたい」「自分の感情を形にしたい」という気持ちから自傷行為に至ります568。
一方で、自傷行為をくり返す人は、そうでない人に比べて自殺企図のリスクが高いことも多数の研究で示されています3613。日本の自殺統計でも、自殺に至った人のうち約1割が過去の自傷行為歴を持ち、特に10代女性ではその割合が非常に高いことが報告されています3。つまり、「自傷行為=必ず自殺したいわけではない」が、「自傷行為がある人は、自殺リスクが高まりやすい」行動でもあるのです。
そのため、自傷行為を単に「構ってほしいだけ」「甘え」と見なして否定するのではなく、「そのくらい追い詰められているサイン」として受け止め、背景にあるつらさに目を向けることが大切だとされています129。
1.2. 自傷行為を悪化させてしまうNGな習慣・関わり方
自傷行為そのものよりも、「何がきっかけで衝動が強くなるのか」「どんなときに傷つけずにいられたのか」を振り返ることが、回復のヒントになります。逆に、次のような習慣や関わり方は、自傷行為を悪化させてしまうことがあります189。
- 一人きりで長時間、同じ悩みをぐるぐる考え続ける(夜中にスマホを見ながらネガティブな情報を延々と追いかける など)
- 「絶対にやめなきゃダメ」「やったら自分は最低だ」と、自分を厳しく責めることで、かえって罪悪感や自己否定が強まる
- アルコールや薬物に頼って気持ちを麻痺させようとする(自制が効きづらくなり、思いがけず重い傷や事故につながる危険があります)
- 周囲が「なんでそんなことするの」「恥ずかしいからやめて」と責め立てる(本人はすでに自分を責めていることが多く、孤立を深めてしまう)
- 傷跡だけを問題視し、「そこを見せろ」「監視する」といった対応に偏る(本当に助けが必要なのは、傷跡ではなく、その背景にある感情や状況です)
もちろん、家族や周囲の人がショックを受けて怒りや戸惑いを感じるのは自然なことです。ただ、その感情をそのままぶつけてしまうと、「もう二度と誰にも話さない」という気持ちを強めてしまう場合があります。後述するように、「責める」よりも「話を聴く」、「禁止する」よりも「一緒に安全な方法を探す」姿勢が、長期的には自傷行為の減少につながりやすいとされています18。
| こんな症状・状況はありませんか? | 考えられる背景・サイン |
|---|---|
| 理由をはっきり説明しない傷やかさぶたが、腕・太もも・お腹などに繰り返しできる | 自分でも説明しづらい感情を、自傷行為という形で表している可能性 |
| 暑い季節でも長袖・長ズボンを手放さない、人前で着替えを極端に避ける | 傷跡を見られるのが怖い・恥ずかしいという気持ちから、隠そうとしている可能性 |
| 部屋や持ち物の中に、刃物や先の尖った道具などが不自然に多く、手放せない | 「いつでも自傷行為ができる状態」でないと落ち着かないほど、追い詰められている可能性 |
| 失敗・叱責・人間関係のトラブルがあると、急に部屋にこもる・連絡が途絶える | 強いストレスの後に自傷行為の衝動が高まりやすいパターンがあるかもしれません |
| 「生きている意味がわからない」「いなくなりたい」といった言葉が増えている | 希死念慮やうつ状態が背景にある可能性。自傷行為だけでなく、自殺リスクの評価も重要になります |
第2部:こころとからだの背景要因 — メンタルヘルス・発達・トラウマ
生活環境を整えても自傷行為がなかなか減らない場合、その背景にはメンタルヘルスや過去の経験、性格・発達特性など、身体の内側・こころの構造に関わる要因が隠れていることがあります。ここでは、とくに研究で注目されているポイントを整理します。
2.1. 思春期・若年層に多い理由と日本の現状
自傷行為は、世界的にも10代〜20代前半に多い行動であることが多くの調査で示されています6713。日本の若者を対象にした調査でも、「自分を傷つけた経験がある」と答えた人は一定数おり、とくに女子高校生・女子大学生などでは割合が高くなる傾向が報告されています1214。
厚生労働省の自殺統計によると、自殺に至った人のうち、自傷行為歴があった人の割合は全体で約1割ですが、10代女性では「過去に自傷行為歴あり」の割合が4割を超えていることが示されています3。このことからも、若年層の自傷行為を早期に理解し、支えることが、自殺予防の観点から非常に重要であると考えられています1313。
思春期は、ホルモンバランスの変化に加え、進学・進路、友人関係、恋愛、家庭環境の変化など、多くのストレスが重なる時期です。まだ感情をことばにまとめる力が発達途中であるため、「言葉にできない苦しさ」が身体への行為として現れやすいことも指摘されています127。
2.2. うつ病・不安症・パーソナリティ特性・発達特性との関連
自傷行為をする人のすべてが精神疾患を持っているわけではありませんが、うつ病や不安症、摂食障害、境界性パーソナリティ障害、発達障害スペクトラムなどとの関連が報告されています67。
- うつ病・不安症:絶望感・無価値感・強い不安・焦燥感が高まると、「この苦しさをなんとかしたい」という思いから自傷行為に至ることがあります。
- パーソナリティ特性(とくに境界性パーソナリティ特性):対人関係の不安定さ・見捨てられ不安・感情の波の大きさと自傷行為の関連が指摘されていますが、「病名」そのものよりも、「感情のコントロールが難しい」という特徴として理解することが大切です6。
- 発達特性(自閉スペクトラム、ADHDなど):感覚の過敏さ・鈍感さ、ストレスへの耐性の違い、コミュニケーションのすれ違いなどが重なり、自傷行為が一種の自己刺激・感情調整の手段になることがあります7。
また、幼少期の虐待やいじめ、性暴力などのトラウマ体験がある場合、フラッシュバックや強い自己否定感から自傷行為に至るケースも多く報告されています6714。こうした背景があるとき、自傷行為は「生き延びるために身につけたサバイバルスキル」として機能していることもあり、単純に「やめなさい」と言うだけでは解決しません。
2.3. 家庭・学校・職場のプレッシャーと「生きづらさ」
自傷行為の背景には、メンタルヘルスだけでなく、日本特有の「我慢する文化」「失敗を許されにくい風土」が関わっているという指摘もあります114。たとえば、
- 成績や仕事のノルマが常に高く求められ、「頑張って当たり前」と言われ続ける環境
- 「迷惑をかけてはいけない」「弱音を吐いてはいけない」と教えられ、助けを求めることに強い抵抗がある
- 家庭内で感情を話し合う習慣が少なく、「怒り」「悲しみ」を表現する場がない
- 性別役割やLGBTQ+に対する偏見などから、「自分らしさ」を否定され続ける
こうした環境では、「つらい」と感じても誰にも相談できず、行き場を失った感情が自分の身体に向かいやすくなります。本人の「性格の弱さ」ではなく、「弱音を出しづらい社会的な背景」があることを理解することが、支援の第一歩になります1914。
第3部:専門的な診断・治療が必要になるケース
自傷行為は、それ自体が病名というより「こころのSOSの表れ」です。しかし、背景にうつ病やPTSDなど専門的な治療が必要な状態が隠れていることも少なくありません。ここでは、とくに注意が必要なサインと受診の目安をまとめます。
3.1. 自傷行為が習慣化・依存的になっているとき
自傷行為のあと、一時的に「少し落ち着いた」「何も感じなくなった」と感じる人は多いですが、その感覚は長く続かず、しだいに頻度や強度が増していくケースが少なくありません568。次のような状態が続いている場合は、専門家への相談を強く検討しましょう。
- 数週間〜数か月のあいだに、自傷行為の頻度や傷の深さが明らかに増えている
- 「やらないと落ち着かない」「やめるともっとおかしくなりそう」と感じる
- 止血が難しいほど深い傷になってしまうことが増えている
- 傷のために生活(学校・仕事・家事など)に支障が出ている
これは、脳が「痛み」や「出血」といった強い刺激を、つらい感情からの一時的な逃げ場所として学習してしまっている状態ともいえます。心理療法や薬物療法などを組み合わせることで、「別の方法で感情を扱う力」を育てていくことが、長期的には自傷行為を減らす近道になります68。
3.2. 自傷行為と自殺念慮・自殺企図が重なっているとき
もともとは「死ぬつもりではなかった」自傷行為でも、つらさが長期間続くと「いっそ死んでしまったほうが楽かもしれない」という考えが強くなることがあります。また、激しい感情の波の中で、衝動的に自殺を図ってしまうケースも報告されています3613。
次のような場合は、すぐに専門家・相談窓口につながることが重要です。
- 「死にたい」「消えたい」という気持ちが、ほぼ毎日のように続いている
- 自殺の具体的な方法や場所を考えてしまう、準備をしてしまう
- 以前に自殺企図をしたことがあり、最近また強いつらさや自傷行為が増えている
こうした状態は、一人で抱え込むにはあまりに危険です。後述する電話相談やチャット相談は、夜間や休日でもつながるものがあります。「こんなことで電話していいのかな」と迷う必要はありません101112。
3.3. 子ども・思春期の自傷行為を見つけたとき
学校や家庭で、子ども・思春期の人の自傷行為に気づいたとき、周囲の大人はショックと怒り、心配の入り混じった感情に襲われます。文部科学省の資料でも、「叱るより先に、話を聴き、背景にあるつらさや困難を理解しようとする姿勢」が重要だとされています2。
- まずは「見つけてしまった自分のショック」を誰かに相談し、少し落ち着いてから本人と向き合う
- 「なんでこんなことを!」と否定する前に、「ここまでつらかったんだね」と気持ちに寄り添う言葉をかける
- 学校の養護教諭・スクールカウンセラー・児童精神科・思春期外来など、専門的な支援先と連携する
家庭だけで抱え込むのではなく、学校・医療・相談機関と一緒にサポート体制をつくることで、子どもの安全と将来を守りやすくなります129。
第4部:今日から始めるセルフケアと支援につながるアクションプラン
自傷行為は、「一度話を聞いてもらったから完全にやめられる」といった単純なものではなく、波を描きながら少しずつ変化していくことが多い行動です。そのため、「ゼロか100か」で考えるのではなく、「少しでも安全な方向に」「少しでも気持ちを言葉にできるように」という視点が大切です68。
ここでは、今夜からできる小さな工夫から、数週間〜数か月単位で取り組めることまで、レベル別のアクションプランの例を紹介します。すべてを完璧にやる必要はありません。できそうなものを一つだけ選ぶところから始めてみてください。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今から数分〜今夜からできること | 「自傷したい衝動」が高まったときに、少し時間をかせぐ | ・まずは深呼吸を数回して、「今ここ」に意識を戻す ・5分〜10分だけ、好きな音楽を聴く・温かい飲み物を飲むなど、からだを落ち着かせる行動を試す ・ノートやスマホに「今の気持ち」を言葉や絵で書き出す(誰にも見せなくて構いません) |
| Level 2:今週から試したいこと | 「自傷行為をせざるを得ないほどつらくなるパターン」を見つける | ・自傷したくなった前後の出来事・時間帯・体調をメモしておき、共通点を探す ・信頼できる相手(家族・友人・カウンセラーなど)と一緒に、そのメモを振り返ってみる ・週に1回だけでも、誰かと「本音の話」をする時間を意識的に作る |
| Level 3:長期的に取り組みたいこと | 専門家と一緒に、より安全で自分らしい感情の扱い方を学ぶ | ・精神科・心療内科・カウンセリングなどに相談し、自分に合った治療・支援プランを立てる ・認知行動療法や弁証法的行動療法など、感情調整を学ぶための心理療法を検討する68 ・学校・職場の環境調整(勉強量・勤務時間・人間関係)について、一人で抱え込まず相談する |
自傷行為そのものを「完全にしない」と決めることが、必ずしも最初のゴールである必要はありません。「回数を少し減らす」「より傷が浅くなる状況を目指す」「衝動を誰かに言葉で伝えられるようになる」など、小さなステップを積み重ねることが、長い目で見れば大きな変化につながります689。
第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?
「こころの問題で医療機関にかかるのはハードルが高い」と感じる人は多いですが、自傷行為が続いているときは専門的な支援を検討する価値があります。ここでは、受診の目安と、日本で利用できる相談窓口についてまとめます。
5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 出血が止まらない、しびれや強い痛みが続くなど、身体的に明らかに危険な状態になっている
- 「死んでしまっても構わない」と思いながら行動している、あるいは具体的な自殺の方法を考えている
- 自傷行為の頻度が急に増えた、傷が深くなった、他の危険な行動(大量の飲酒・薬の乱用など)が目立つようになってきた
- うつ状態(眠れない・食欲がない・涙が止まらない・何をしても楽しくない)が2週間以上続いている
これらのサインがある場合は、すぐに医療機関や相談窓口に連絡することが推奨されます36813。夜間や休日であれば、119番通報や救急外来、地域の精神科救急窓口に相談することも選択肢になります。
5.2. 症状に応じた診療科・相談先の選び方
- 自傷行為の傷が深い・感染が心配なとき:まずは救急外来や外科・形成外科などで、身体の安全を確保します。
- 落ち込み・不安・睡眠の問題など、こころの症状が強いとき:精神科・心療内科・メンタルクリニックなどへの受診を検討します。
- 子ども・思春期の場合:児童精神科や思春期外来、学校のスクールカウンセラー・養護教諭、地域の児童相談所などと連携すると安心です2。
また、すぐに医療機関に行くのが難しいときは、厚生労働省が案内する
・こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)
・#いのちSOS(0120-061-338)
・いのちの電話(0120-783-556 など)
といった電話相談窓口を利用することができます10。
さらに、どんな悩みでも話してよい「よりそいホットライン(0120-279-338)」や、24時間匿名でチャット相談ができる「あなたのいばしょ」といった民間の相談窓口もあります1112。外国語で相談できる窓口も整備されています11。
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- 症状・自傷行為の経過メモ:いつ頃から・どのくらいの頻度で・どんなときに衝動が強くなるのか。思い出せる範囲でメモしておくと、診察がスムーズになります。
- 現在服用している薬やサプリの一覧:飲み合わせの確認や、副作用のチェックに役立ちます。
- 保険証・医療証など:日本の公的医療保険に加入している場合、多くの精神科診療は保険適用となり、自己負担は原則3割です。初診時の支払いは、検査内容にもよりますが、数千円程度から始まることが多いとされています。
診察で「何から話していいか分からない」ときは、「最近、自分を傷つけてしまう行動があって不安です」と一文だけ伝えるだけでも構いません。その一言から、医療者と一緒に少しずつ背景を整理していくことができます19。
よくある質問
Q1: 自傷行為は「かまってほしい」だけなのでしょうか?
A1: 研究や臨床報告では、多くの人が「誰にも言えないつらさを抱えていて、むしろ隠したい」と感じながら自傷行為を行っていることが示されています1569。たしかに、一部には「助けを求めるサイン」としての側面もありますが、それは「周囲を操作したい」というより、「言葉にできない不安や孤独を分かってほしい」という切実な気持ちの表れです。
自傷行為を単に「かまってほしいだけ」と決めつけてしまうと、本人はますます孤立し、危険な行動を深めてしまうことがあります。まずは「ここまでつらかったんだね」と、気持ちの部分に目を向けることが大切です。
Q2: 自傷行為をしてしまったあとの傷は、どうケアすればよいですか?
A2: 傷が深い・出血が多い・しびれや強い痛みがある場合は、迷わず救急外来や外科などの医療機関を受診してください。自分で処置しようとして消毒や縫合が遅れると、感染や機能障害のリスクが高まることがあります。
軽い傷に見えても、同じ場所に繰り返し傷をつけていると、跡が目立ちやすくなったり、感覚が変化したりすることがあります。気になる場合は、皮膚科や形成外科で相談することもできます。医療機関では、傷の治療だけでなく、「なぜ自傷行為に至ってしまったのか」を一緒に考えるメンタルヘルスの支援につなげることもあります69。
Q3: 自傷行為をやめられない自分は弱いのでしょうか?
A3: 自傷行為は、「弱いからやってしまう」のではなく、「あまりに強い感情やストレスにさらされたときに、たまたま身につけてしまった対処法」であると考えられています567。多くの人は、最初から自傷行為を選んだわけではなく、「なんとかこの苦しさに耐えようとして」行動した結果です。
一度「痛みで気持ちが楽になる」という経験をすると、脳はそれを「効く方法」として学習してしまいます。その意味では、「意思の弱さ」ではなく、「学習されたパターン」として理解したほうが、回復の道筋を立てやすくなります。心理療法などを通じて、「別の対処法」を少しずつ身につけていくことで、自傷行為の頻度を減らしていくことが可能だと報告されています68。
Q4: 家族や友人の自傷行為を見つけたとき、どう声をかければいいですか?
A4: まずは自分自身のショックを自覚し、「すぐに説得しなきゃ」「やめさせなきゃ」と焦らないことが大切です。専門家は、「なぜそんなことをするの!」と叱るよりも、「ここまでつらかったんだね」「話してくれてありがとう」といった言葉で、気持ちに寄り添うことを勧めています129。
具体的には、
- 「驚いたけれど、あなたの話をちゃんと聞きたいと思っているよ」
- 「どうしてもやめろとは今は言わないから、まずは何がつらいのか教えてもらえる?」
など、「話しても大丈夫」と感じてもらえる雰囲気づくりが大切です。そのうえで、一人で抱え込まず、医療・相談機関や学校と連携していきましょう。
Q5: 自傷行為は一度良くなっても再発しますか?
A5: 多くの研究で、自傷行為は波を描くように増えたり減ったりしながら、長期的に変化していくことが示されています67。一時期まったくしなくなっても、強いストレスやトラウマ体験をきっかけに再発することは珍しくありません。
再発を「失敗」ととらえるのではなく、「まだ自分を守るための別の方法が必要だ」というサインと理解することが大切です。以前に効果があったセルフケアや支援を思い出し、必要であれば再度専門家に相談することで、再び安全を取り戻すことができます。
Q6: 子どもが自傷行為をしていると分かったとき、親としてどうしたらよいですか?
A6: 文部科学省や専門家は、「叱る・責める」よりも、「理由を聞き、子どもの味方であることを伝える」対応を勧めています2。親としてショックや怒りを感じるのは自然ですが、その感情をそのまま子どもにぶつけると、「もう二度と話さない」という気持ちを強めてしまうことがあります。
まずは、「傷を見つけて驚いたこと」「でも何より、ここまでつらかったことを知りたいと思っていること」を、落ち着いた言葉で伝えましょう。そのうえで、学校の先生・養護教諭・スクールカウンセラー・児童精神科などと連携し、家庭だけで抱え込まない支援体制をつくることが重要です12。
Q7: 自傷行為をしていなくても、「自分を傷つけるイメージ」が頭から離れません。これも相談してよいのでしょうか?
A7: はい、「実際に行動していないから大したことはない」とガマンする必要はありません。頭の中で何度も自分を傷つけるイメージが浮かぶのは、それだけ強いストレスや感情を抱えているサインです6713。
自傷行為をしていなくても、「最近、危ないイメージが頭から離れない」「何度も同じ考えが浮かんで怖い」といったことは、医療機関や電話相談で十分に相談する価値があります。早めに支援につながることで、自傷行為や自殺リスクを下げられる可能性があります。
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
自傷行為は、「弱さ」や「甘え」の問題ではなく、言葉にならないつらさが身体に向かった結果として現れる、こころのSOSです。多くの場合、本人も「やめたい」と感じながら、ほかの対処法が見つからずにくり返してしまっています。
この記事で見てきたように、自傷行為の背景には、うつ病・不安症・パーソナリティ特性・発達特性・トラウマ体験・家庭や学校・職場のプレッシャーなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っています126714。だからこそ、「やめなさい」と一言で解決できる問題ではありません。
一方で、自傷行為をくり返す人の多くが、心理療法や周囲の理解、環境調整などを通じて、「少しずつ頻度が減る」「衝動を言葉で伝えられるようになる」「自分を大切にする感覚を取り戻していく」といった変化を経験していることも研究から分かっています689。
もしあなた自身が自傷行為に悩んでいるなら、「今すぐ完全にやめる」ことをゴールにするのではなく、まずは「誰かに話す」「安全な方法で気持ちを表現する」「専門家や相談窓口につながる」といった、小さな一歩を検討してみてください。大切な人の自傷行為に気づいた方は、「責める」のではなく、「ここまで生きていてくれてありがとう」という気持ちから対話を始めることが、回復への大切な支えになります。
あなたがどれほどつらくても、「相談していい」「助けを求めてもいい」と感じられる場が日本にも少しずつ増えています。この記事が、その一歩を踏み出すための手がかりになれば幸いです。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。
本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。
ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。
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参考文献
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松本俊彦. 自傷行為の理解と援助. 日本精神神経学会誌. 国立精神・神経医療研究センター. https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1140080983.pdf(最終アクセス日:2025-11-26)
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