コンテンツへスキップ
お問い合わせ
スポンサーリンク
精神・心理疾患 34分で読める 7回

薬剤性うつ病とは?原因となる薬・見分け方・受診の目安を解説

スポンサーリンク
文字サイズ





結論から言うと、薬剤性うつ病とは、別の病気の治療のために服用した薬が原因でうつ症状が現れる状態のことです。厚生労働省の「重篤副作用疾患別対応マニュアル」は、インターフェロン製剤や副腎皮質ステロイド薬を代表例として挙げており、Peg-IFN/リバビリン併用療法ではうつ病が4.1%の患者にみられたと報告されています[1]

受診の目安チェック・無料

この症状、いつ受診すべきか確認しますか?

回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。

症状はいつから続いていますか?

回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます

スポンサーリンク
この症状、放置して大丈夫?次に確認すべきこと 関連記事
この記事では答えていない疑問です — 読み終えたら、続けてご確認ください
薬の副作用が怖い 記事へ 薬で本当に治るの? 記事へ 薬を減らせば改善する? 記事へ 病院に行くべきサインは? 記事へ
この記事で気になったことを、AIにそのまま聞けます
健康アドバイザーオンライン ・ 24時間対応 無料
お薬の副作用で気分が落ち込むなんて、不安ですよね。いつからその症状は始まりましたか?
気になるものを、タップするだけ
厚生労働省・査読論文などの一次情報源をもとに、あなたの状況に合わせてお答えします

原因薬を服用中に「眠れなくなった」「物事に興味がなくなった」「気分が落ち込んだ」などの変化が出た場合、まず疑うべきはその薬の影響です[1]。ただし、⚠自己判断で服薬をやめることは絶対にしないでください。減量や中止が必要かどうかは、原疾患とのバランスを考慮して主治医が判断すべき事柄であり、症状に気づいたら、まず処方医または薬剤師に連絡することがマニュアルの報告に基づく第一歩です[1]

要点まとめ

  • 薬剤性うつ病は、インターフェロン製剤・副腎皮質ステロイド薬・一部の抗てんかん薬などで報告されている、治療薬が原因で生じるうつ状態です[1]
  • インターフェロン製剤(Peg-IFN/リバビリン併用療法)では、うつ病4.1%・うつ気分2.2%・うつ症状7.1%の頻度が報告されています[1]
  • 副腎皮質ステロイド薬は、プレドニゾロン換算で1日40mgを超えると発症率が上がるとされますが、1日10〜20mg程度の少量でも生じうると報告されています[1]
  • 日本神経学会のガイドラインは、うつ病性障害のある人に対し、フェノバルビタール・プリミドン・ゾニサミド・トピラマート・レベチラセタムの使用を避け、ラモトリギンやラコサミドの使用を考慮するよう示しています[2]
  • 薬を自己判断でやめず、まず処方した医師に相談することが、どの報告資料にも共通する最も重要なポイントです[1]

編集方針: JHO編集部がAIツールの支援を受け、厚生労働省・日本神経学会など公的機関・学会の一次資料と照合して作成。最終確認は人の目。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類は資料改定により変わることがあります(2026年7月時点)。

薬剤性うつ病とは?――なぜ「治療薬」がうつ症状を引き起こすのか

薬剤性うつ病とは、治療を目的として投与された医薬品によって生じたうつ病のことだと厚生労働省の報告資料は定義しています[1]。厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアルは、うつ病を起こしやすい薬物としてインターフェロン製剤や副腎皮質ステロイド薬をよく知られた代表例として挙げ、レセルピン・β遮断薬・カルシウム拮抗薬といった一部の降圧薬、抗ヒスタミン薬、経口避妊薬などのホルモン製剤でも報告があるとしています[1]

発症の仕組みについて、同マニュアルは副腎皮質ステロイド薬を例に、うつ病患者では血中コルチゾール値が高く海馬も萎縮していること、クッシング症候群の患者でも海馬が萎縮しており血中コルチゾールと相関していることを紹介したうえで、ステロイド投与によっても同様の現象が生じ抑うつ状態が発症する可能性が推測されると報告例をもとに説明しています[1]。実際に、プレドニン(国内未承認、平均15.6mg/日)を平均92か月投与された患者群は、対照群に比べて左の海馬が7%、右の海馬が9%有意に小さく、記憶や気分の評価も有意に悪かったという報告が報告されています[1]

図:JHO編集部が作成

インターフェロン製剤については、分子量が2万前後と大きいため、正常な脳では血液脳関門(BBB)を通過しないものの、第三脳室前壁近傍などからわずかに中枢神経内へ移行しうることが確認されていると同マニュアルは説明しています[1]。そのうえで、視床下部・下垂体・副腎皮質系や視床下部・下垂体・甲状腺系を介する作用、オピオイド作用、ドパミンやノルアドレナリン・トリプトファン・セロトニンを介した作用、IL-1・IL-2・IL-6・TNFなどのサイトカインの分泌誘導や抑制作用が関連すると考えられており、IFN自体が海馬の神経新生を抑制するとの報告もあると報告されています[1]。つまり、いずれの薬剤も「気の持ちよう」ではなく、ホルモンや神経伝達物質、免疫系のバランスを介して気分に影響しうるということです。

薬理作用がまったく異なるインターフェロン製剤・副腎皮質ステロイド薬・一部の抗てんかん薬が、いずれも「うつ症状」という共通の結果に行き着きうるのは興味深い点です。厚生労働省のマニュアルが紹介するコルチゾール系・免疫系を介した経路、日本神経学会のガイドラインが示すGABA系や電位依存性チャネルを介した経路など、着地点となる脳内の仕組みは薬剤ごとに異なりますが、いずれも気分の調節に関わる神経回路に影響しうるという点で共通しています[1][2]。この共通点があるからこそ、薬の種類を問わず「服用開始後の気分・睡眠・食欲の変化に注意する」という基本姿勢が、あらゆる薬剤性うつ病に共通する早期発見のポイントになります。

今の血圧・脈拍を確かめる

数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。

身長と体重からBMIも調べる

これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。

報告がある主な薬剤群――厚生労働省マニュアルが挙げる代表例

厚生労働省のマニュアルが薬剤性うつ病の原因として具体的に取り上げている薬剤群を、想定される特徴とあわせて整理すると次のとおりです[1]。⚠この一覧は「使ってはいけない薬」を示すものではなく、担当医が経過観察のうえで判断すべき「留意点」だと報告書は位置づけています。

薬剤群 主な用途 マニュアルが示す留意点
インターフェロン製剤(IFN/Peg-IFN) C型慢性肝炎治療など Peg-IFN/リバビリン併用48週投与でうつ病4.1%、うつ気分2.2%、うつ症状7.1%との報告[1]
副腎皮質ステロイド薬 喘息・アレルギー・膠原病など プレドニゾン40mg/日超で発症率増加との意見があるが、10〜20mg/日でも生じうる[1]
レセルピン・β遮断薬・カルシウム拮抗薬 高血圧治療 抑うつ状態を起こしうる薬物として報告されている[1]
抗ヒスタミン薬 アレルギー治療 同マニュアルが抑うつ状態を起こしうる薬物として言及[1]
経口避妊薬などのホルモン製剤 避妊・ホルモン療法 同マニュアルが抑うつ状態を起こしうる薬物として言及[1]
一部の抗てんかん薬(PB・PRM・ZNS・TPM・LEVなど) てんかん治療 日本神経学会ガイドラインが、うつ病性障害のある人に使用を避けるべき薬剤として整理[2]

出典:厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤惹起性うつ病」(2008年)[1]/日本神経学会「てんかん診療ガイドライン2018」CQ3-5[2]

インターフェロン製剤とうつ病――発現時期と頻度の実データ

厚生労働省のマニュアルによれば、IFNによる精神神経症状のなかで最もよくみられるのは抑うつ状態であり、次いでせん妄が多いと報告されています[1]。我が国でC型慢性肝炎患者85人を前方視的に追跡した研究では、IFN療法中にうつ病エピソードを満たした人が37.3%にのぼり、そのうちIFNを中止したのは9例(10.6%)、中止理由が精神症状によるものは4例(4.7%)だったと報告されています[1]

発現時期について、マニュアルは「IFN投与後1〜3か月は注意が必要である」としたうえで、ある報告ではIFN投与後1か月以内の発症が60%以上で最も多かったとされ、投与中止後も精神症状が1か月以上持続する場合が比較的多く観察されると報告のうえで述べています[1]。危険因子としては、高用量・高齢・脳器質性疾患(脳萎縮、外傷、脳腫瘍)・精神疾患の既往歴や薬物乱用歴・現在の精神疾患・IFN開始前の抑うつや不眠傾向などが報告として挙げられています[1]

頻度に関するデータはほかにも複数紹介されています。Peg-IFNα2a/リバビリン併用療法の国内第III相試験(199例)ではうつ病0.5%、抑うつ気分・抑うつ症状6.0%、Peg-IFNα2a単独治療(178例)ではうつ病5.6%と報告されています[1]。また、精神神経用薬の投与やIFNの中止など何らかの対処が必要な中等症以上の精神症状は5〜10数%、対処を必要としない程度の軽症の精神症状は約30%にみられると報告としてまとめられています[1]。先に紹介した85人の前方視的研究では、積極的な精神科治療かIFNの中止が必要だったのは14.1%だったとも報告されています[1]。海外の報告では、Peg-IFN/リバビリン併用療法を受けた169人のC型肝炎患者のうち39%で治療中に抑うつの悪化がみられ、その程度は体重あたりのリバビリン投与量と有意な相関を示したと報告されています[1]。天然型IFNαはrecombinant IFNαよりも抑うつの惹起が少ないとの報告もあり、患者に合ったIFNの種類を選ぶことの重要性が指摘されていると報告されています[1]

マニュアルが紹介する典型症例では、Peg-IFNα2bとリバビリンの併用療法を開始した50歳代女性が、4週後より食欲不振と不眠が続き、6週後に中等度のうつ状態と診断されたものの、IFN継続を希望したため減量とミルナシプラン投与で経過観察し、10週後には症状が改善して家事が可能になったという経過が記録されていると報告されています[1]。この症例が示すとおり、IFNによるうつ状態は必ずしも投与中止を意味せず、医師の判断のもとで減量や薬物療法と併用しながら治療を継続できる場合があります。

IFNによる精神症状の現れ方――「通過症候群」という考え方

厚生労働省のマニュアルは、IFNによる精神神経症状は極めて多彩で、不眠・不安焦燥状態・攻撃的な性格変化・躁状態・幻覚妄想状態・けいれん・軽度認知障害・傾眠・昏睡などの意識障害(いわゆるIFN脳症)まで報告されていると整理しています[1]。これらの症状は独立して起こるとは限らず、縦断的に見ると不安焦燥状態からうつ状態、せん妄へと移行したり、横断的にも抑うつ状態に軽度の意識混濁や健忘を伴う場合があると報告されています[1]

IFNによる抑うつ状態は、全身倦怠感を伴い意欲・活動性・言葉数・自発性が低下し興味を失う「精神運動制止型」と、強い不安感や焦燥感を前景とし時に攻撃性を伴う「活動型」の2群に大きく分けられ、日常診療で問題になりやすいのは後者の活動型であるとマニュアルの報告は説明しています[1]。近年は、IFNによる抑うつ状態は純粋な抑うつというより、焦燥や敵意、易怒性が加わった抑うつと躁の混合状態が多いとの報告もあると報告されています[1]。興味深いことに、IFNにより抑うつが出現した患者の方が、抑うつがない患者よりも肝炎ウイルスへの治療反応性が良好だったとの報告もあり、抑うつの出現が必ずしも「悪いサイン」だけを意味するわけではない点も報告されています[1]。多くの場合、抑うつ状態そのものより先に不眠や軽い焦燥感が現れるため、寝つきの悪さや日中のいらいらが出現した時点で、早めにベンゾジアゼピン系睡眠薬や抗不安薬を使用することが推奨されると報告されています[1]。まれに明らかな前兆もなく激昂したり、衝動的な行為や自殺企図がみられることがありますが、その場合も注意深く観察すると不眠と焦燥の先行がみられるとマニュアルは述べています[1]

この現れ方は、精神医学で「通過症候群」と呼ばれる概念(正常な精神機能から意識混濁へ、あるいは意識障害から正常状態へ移行する中間段階で、発動性の低下・情動の変化・気分易変性・健忘・幻覚妄想などを生じるという考え方)としてとらえられると同マニュアルの報告は紹介しています[1]。実際、IFN使用中は一見意識清明に見える患者でも、3分の1から半数程度で脳波の徐波化がみられるとの報告があり、活動性・言葉数・自発性の低下や、短期記名力・問題処理能力の軽度低下を伴うことがあると報告されています[1]

薬物療法だけでなく心理面への配慮も――IFNの場合の対応

IFNによる精神症状には、心理・社会的要因も大きく関与していることが多いとマニュアルは指摘しています。その根拠として、IFNの使用期間が延びるほど精神症状が単純に増えるわけではなく、むしろ治療終了が近づくにつれて改善することも多いという観察が報告として挙げられています[1]。C型肝炎の患者は、肝硬変や肝がんへ進行する不安を常に抱えていること自体が、IFNを受けていなくても抑うつや不安を高めるとの報告もあると報告されています[1]。そのため、IFN投与に際しては十分な説明のもと、受容的・支持的な態度で接し、不眠や焦燥感が抑うつに先行して出現しやすいことを踏まえ、患者が気軽に相談できる環境を作ることが重要だとマニュアルは述べています[1]

薬物療法としては、軽症の抑うつ状態に対してパロキセチンやフルボキサミン、セルトラリンなどのSSRI、あるいはミルナシプランなどのSNRIを使用しながらIFN治療を継続することが推奨されており、ミルナシプランは肝臓のミクロゾーム代謝経路を経由しないため、特に肝炎の患者に有用である可能性があると報告されています[1]。不安や焦燥にはロラゼパム、不眠にはロルメタゼパムが、いずれも肝臓への代謝負担が少ないことから推奨されていると報告されています[1]。一方で、希死念慮や幻覚妄想、意識障害を伴う躁状態がみられた場合は、IFNの中止が推奨されるとマニュアルは明記しています[1]

副腎皮質ステロイド薬とうつ病――「少量でも起こりうる」という知見

厚生労働省のマニュアルは、ステロイド薬による精神症状として躁状態・抑うつ状態・幻覚妄想状態・せん妄などを挙げたうえで、そのなかでもうつ病は頻度が比較的高い精神症状であると報告しています[1]。発症時期は「早い患者では投与初日、遅い患者では3か月以降」とされ、多くの症例では数日から1〜2週間後に生じると報告されています[1]

カナダの一般人73,402人を対象とした横断調査では、ステロイド薬を服用していた人の大うつ病有病率は11.1%(95%信頼区間6.6〜15.5)、服用していない人では4.1%(3.8〜4.5)で有意差があったと報告されています[1]。また、性別・年齢で分析した別の調査では、女性でステロイド服用者の大うつ病リスクが服用していない人の3.02倍(1.74〜5.24)、45歳以下では3.61倍(1.92〜7.76)と、女性や若年層で有意なリスク上昇がみられた一方、男性や45歳超では有意差が消えたと報告されています[1]

マニュアルが紹介する症例では、全身性エリテマトーデス(SLE)治療のため1日40mgのプレドニゾロンを開始された40歳代女性が、1か月後に抑うつ状態・自殺念慮・不安感・焦燥感を呈し、SLEの活動性はすでに低下していたためプレドニゾロンの副作用と考えられたと報告されています[1]。30mg/日へ減量しても改善がみられず、マプロチリンやミアンセリンなど四環系抗うつ薬を試したところ、いずれも効果がないばかりか焦燥感や自殺念慮がむしろ悪化し、自殺企図を繰り返したと報告されています[1]。そこでリチウムを600mg/日から開始したところ数日以内に改善したものの、SLEに伴う腎機能障害のため血中リチウム濃度が上昇し手指振戦が悪化、いったん中止すると抑うつ状態と自殺念慮が再燃し、400mg/日で再開したところ血中濃度0.4mEq/Lで改善が得られたと報告されています[1]。退院6か月後にプレドニゾロンが10mg/日へ減量された時点でリチウムを中止しても再燃はなく、退院3年後にはプレドニゾロン5mg/日でリチウムを服用せず精神的に安定していたと報告されています[1]。この症例は、ステロイド薬によるうつ状態には三環系・四環系抗うつ薬がかえって症状を悪化させることがある一方、リチウムや選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が効果を示す場合があることを示しています[1]

ステロイド薬を減量して精神症状が改善すればステロイド薬による可能性が高く、逆に減量して精神症状が悪化する場合は原疾患による精神症状が疑われる、と同マニュアルの報告は判別の考え方を示しています[1]。治療法としては、原疾患の活動性が許す範囲でステロイド薬を減量することが原因治療となりますが、減量できない場合や減量しても改善しない場合には、リチウムやSSRIを試みる報告があるものの、エビデンスとしてはまだ不十分で今後の検討が必要だとマニュアルは述べています[1]

頻度に関する研究も複数紹介されています。比較対照を持たない11の研究(患者数計935名)を重み付け平均した比較的軽度の気分変化の有病率は27.6%(13〜62%)、比較的重度の精神症状を扱った13の研究(患者数計2,555名)では重み付け平均5.7%(1.6〜50%)だったと報告されています[1]。ステロイド薬を投与されていない対照群と比較した研究では、少なくとも7.5mg/日のプレドニゾンを6か月以上投与されていた患者20名のうち、調査時点で抑うつ状態が認められたのは3名、対照群14名では0名、過去の投与中に抑うつ状態が認められた患者は7名(対照群0名)と、有意に患者群で抑うつ状態の頻度が高かったと報告されています[1]。ハミルトンうつ病評価尺度の得点も、患者群の平均16.2点に対し対照群は4.5点と有意差があったとされ、これらの所見はステロイド薬が抑うつ状態を惹起しうることを強く示唆していると同マニュアルは評価しています[1]

レセルピン・降圧薬・抗ヒスタミン薬・経口避妊薬――報告はあるが情報が限られる薬剤群

厚生労働省のマニュアルは、インターフェロン製剤や副腎皮質ステロイド薬ほど詳しくは論じていないものの、レセルピン、β遮断薬、カルシウム拮抗薬といった降圧薬、抗ヒスタミン薬、経口避妊薬などでも抑うつ状態が起こりうるとする報告があると報告のうえで明記しています[1]。マニュアルの「おわりに」の項でも、これらの薬物を身体疾患の治療目的で投与した後に患者が抑うつ的になった場合は、まずその薬物によるうつ病の可能性を疑うことが必要だと同マニュアルの報告で重ねて述べられています[1]

⚠一方で、これらの薬剤群について、マニュアル自体はインターフェロンやステロイド薬のような発現頻度・発現時期の具体的な数値までは示していません[1]。今回参照した資料の範囲では、レセルピンや降圧薬、抗ヒスタミン薬、経口避妊薬それぞれについての詳細な頻度データは見当たりませんでした。これらの薬を服用中に気分の落ち込みなどを感じた場合も、対応の基本は同じで、自己判断で中止せず、処方医に「このお薬を飲み始めてから気分が沈みがちだ」と具体的に伝えることが、マニュアルの報告に沿った第一歩です[1]

抗てんかん薬とうつ症状――日本神経学会ガイドラインの薬剤別リスク

日本神経学会の「てんかん診療ガイドライン2018」CQ3-5は、うつ病性障害・双極性障害・不安障害・精神病性障害のそれぞれについて、使用を避けるべき抗てんかん薬と使用を考慮してよい抗てんかん薬を整理しています[2]。同ガイドラインは、フェノバルビタールによるうつ状態や精神機能低下、エトスクシミド・クロナゼパム・ゾニサミド・トピラマート・レベチラセタムによるうつ状態が報告されていると解説しています[2]

併存する精神症状のリスク 使用を避ける抗てんかん薬 使用を考慮してよい抗てんかん薬
うつ病性障害 フェノバルビタール・プリミドン・ゾニサミド・トピラマート・レベチラセタム ラモトリギン(ラコサミドの使用を考慮するとの解説あり)[2]
双極性障害 (本CQでは明記なし) フェニトイン・カルバマゼピン・ラモトリギン・オクスカルバゼピン[2]
不安障害 ラモトリギン・レベチラセタム クロナゼパム・クロバザム・ガバペンチン[2]
精神病性障害 フェニトイン・エトスクシミド・ゾニサミド・トピラマート・レベチラセタム (本CQでは明記なし)[2]

出典:日本神経学会「てんかん診療ガイドライン2018」CQ3-5 精神症状のリスクを有する患者の選択薬はなにか[2]

同ガイドラインは、難治てんかん・辺縁系発作・精神障害の家族歴や既往のある人では精神症状合併のリスクが高いため、抗てんかん薬の多剤併用・急速増量・高用量投与に注意すべきだとも述べています[2]。抗てんかん薬に起因する精神症状は見過ごされていることがあると同ガイドラインは指摘しており、エトスクシミド・ゾニサミド・プリミドン・高用量のフェニトイン・トピラマート・レベチラセタムなどは急性精神病を惹起することがあるとも述べられています[2]。強力な抗てんかん薬を急激に高用量投与すると交代性精神病が生じたり、ベンゾジアゼピン系薬物の急激な離脱によって急性精神病が生じたりすることがあるともされ、抗てんかん薬に起因する精神症状の予防には、強力な抗てんかん薬の追加投与や変更を時間をかけて行うことが重要だと同ガイドラインは述べています[2]。⚠この表は、てんかんそのものの治療方針を医師が判断する際の参考情報であり、患者さん自身が服薬を変更する根拠にはなりません。

すぐに医師・薬剤師へ連絡が必要なサイン

  • 「いろんなことが面倒になった」「物事に興味がなくなった」「気分が落ち込んだ」など、薬の服用後にうつ病の症状が出てきた場合(厚生労働省の報告に基づく初期症状)[1]
  • 「眠れなくなった」「不安やイライラが出た」「食欲がなくなった」といった変化が薬の服用後に生じた場合(同報告書が示す初期症状)[1]
  • マニュアルが紹介する症例のように、自殺念慮や自殺企図がみられる場合(この場合は救急受診・緊急連絡が必要です、と報告書は述べています)[1]

受診の目安――どのタイミングで連絡すべきか

厚生労働省のマニュアルは、これらの症状が出てきた場合には「まずはその医薬品によるうつ病の可能性を疑うことが必要」としながらも、⚠「勝手に服用を中止することはせずに、まずは担当の医師と相談してください」と報告のうえで明記しています[1]。受診の目安としては、次の3段階で考えると整理しやすくなります。

  • すぐに連絡・受診:希死念慮(死にたい気持ち)、自殺企図、幻覚・妄想、強い錯乱や意識の変化がみられる場合(報告書が示す最優先の受診目安)[1]
  • できるだけ早く相談:不眠・焦燥感・食欲低下・興味の喪失・気分の落ち込みが数日以上続く場合(報告書が示す次の目安)[1]
  • 次回診察時に伝える:軽い気分の落ち込みや一時的なイライラなど、日常生活に大きな支障が出ていない場合。

マニュアル自身も「できればその薬物を減量・中止して、経過を慎重に観察することが重要」「減量や中止が困難な場合には、抗うつ薬などの薬物をさらに服用することがうつ病を治療するために必要となる」と述べており、対応は薬を単純にやめることだけではないと報告書は述べています[1]

うつ病そのものの一般的な症状も知っておく

薬剤性かどうかを考える前提として、うつ病そのものの一般的な症状像を知っておくことが役立ちます。厚生労働省の「こころの耳」は、うつ病の主要な症状である「憂うつ感」の特徴として、①通常なら楽しめることでも楽しみや喜びを感じなくなること、②きっかけとなった出来事が解決したり良いことが起きても気分が晴れない状態が続くことの2点を報告として挙げています[3]

診断の目安として、こうした症状が2週間以上継続し、それによって従来の社会生活が困難になる状態をうつ病というと報告されています[3]。同ページは、自覚しやすい症状として睡眠の変化にも注目しており、寝つきに30分以上かかる、途中で何度も目が覚める、朝いつもより早く目が覚めるといった変化を例として挙げています[3]。薬剤性うつ病でも、不眠や食欲低下といった同じような症状が現れるため、症状だけで「薬のせいか、うつ病そのものか」を見分けるのは難しく、服薬歴とあわせて医師が判断する必要があると各報告資料は共通して述べています[1][3]

同ページは、うつ病の発症には複数の要因が複合的に関係しているとし、人間関係のトラブルや役割の変化といった環境要因、完璧主義や義務感の強さといった性格傾向、遺伝的要因に加えて、がんや糖尿病といった慢性的な身体疾患、妊娠出産や更年期障害に伴う内分泌変化なども関与しうると報告例をもとに説明しています[3]。脳内ではセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の機能低下が関与しているとされており、これは、厚生労働省のマニュアルがIFNの精神症状の機序としてセロトニンやノルアドレナリンを介した作用を挙げていることとも重なる部分です[1][3]。薬剤性うつ病は、こうした複数の要因のひとつに「薬剤」が加わった状態と理解すると位置づけがわかりやすくなります。

薬を飲み始める前・飲んでいる間に確認しておきたいこと

厚生労働省のマニュアルは、IFN治療を例に、投与に際して十分な説明(インフォームドコンセント)のもとで治療を始め、不眠や焦燥感が抑うつに先行して出現しやすいことを踏まえて、患者が気軽に相談できる環境を作ることの重要性を、マニュアルの報告は強調しています[1]。この考え方は、インターフェロンに限らず、副腎皮質ステロイド薬や抗てんかん薬など、薬剤性うつ病が報告されている薬剤全般にも応用できる視点です。

  • 今から始める薬が、厚生労働省のマニュアルや学会ガイドラインでうつ症状との関連が報告されている薬剤群に含まれるかどうかを、処方時に確認しておく[1][2]
  • 過去にうつ病や不安障害、精神疾患の既往がある場合は、その旨を処方医に伝えておく(IFNでは既往歴が重要な危険因子とされています)[1]
  • 服薬開始後の数日〜数週間は、不眠・食欲・気分の変化に自分自身または家族が注意を向けておく(ステロイド薬では数日〜1、2週間後に症状が出やすいと報告されています)[1]
  • 症状に気づいたら、我慢せず早めに連絡する窓口(処方医・薬剤師・かかりつけ医)をあらかじめ確認しておく。

薬剤性うつ病と原発性うつ病(うつ病そのもの)の見分け方

厚生労働省の「こころの耳」は、うつ病の診断の目安として、抑うつ気分や興味・喜びの喪失などの症状が2週間以上継続し、それによって従来の社会生活が困難になる状態をうつ病と定義する調査結果を示しています[3]。この一般的な基準と、薬剤性うつ病に特有の手がかりを比べると、次のような違いが参考になります。

着眼点 薬剤性うつ病の手がかり 原発性うつ病(うつ病そのもの)の一般的特徴
発症とのタイミング 原因薬の開始・増量後、数日〜数か月以内に症状が出現[1] 薬剤とは無関係に、環境要因や身体疾患などが複合して発症[3]
減量・中止との関係 原因薬を医師の判断で減量・中止すると症状が改善することが多い[1] 薬の増減とは関係なく症状が持続・変動する
診断の目安 薬剤との時間的関係から医師が疑い判断する[1] 抑うつ気分・興味喜びの喪失などが2週間以上継続[3]

出典:厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤惹起性うつ病」[1]/厚生労働省「こころの耳」うつ病の主な症状と原因[3]

ただし、マニュアルはSLEのように原疾患自体が精神症状を起こしうる場合について、「その抑うつ状態がSLEによるものか、ステロイド薬によるものか、結局はSLEの活動性の推移とステロイド薬の投与の経過を縦断的に検討して判断することが重要」としており、⚠自己判断で見分けようとせず、医師による経過観察が前提であることを、報告書は強調しています[1]

家族や周囲の人が気づけること

厚生労働省のマニュアルは「患者の皆様へ」の項で、より安全な治療を行うためにも、患者さん自身だけでなく、ご家族が副作用の「黄色信号」としての初期症状を知っておき、気づいたら医師あるいは薬剤師に連絡してほしいと、報告書は呼びかけています[1]。本人は気分の落ち込みや意欲低下を自覚しにくいことがあるため、「眠れなくなった」「物事に興味がなくなった」「いろんなことが面倒になった」「食欲がなくなった」といった変化に、同居する家族が先に気づくケースは少なくないとマニュアルの報告例は示唆しています[1]

マニュアルのIFN症例でも、家事が手につかなくなる、人に当たるようになるといった変化がきっかけとなり、内科から精神科への診察依頼につながったと報告されています[1]。家族が気づいた変化は、本人の自己申告だけに頼らない貴重な情報として、診察の際に医師へ伝えることが早期発見につながります。

危険因子――誰が起こしやすいか

厚生労働省のマニュアルは、IFNとステロイド薬それぞれについて危険因子を整理しています。IFNでは、高用量・高齢・脳器質性疾患(脳萎縮、外傷、脳腫瘍)・精神疾患の既往歴や薬物乱用歴・現在の精神疾患・IFN開始前の抑うつや不眠傾向・疾患に対する不安の強さが報告として挙げられています[1]。一方でステロイド薬については、「女性が罹患しやすいが、年齢や精神疾患の既往の関連は否定的である」とされており、IFNとは異なる危険因子のパターンが示されている点が注目されます[1]

また、精神疾患の既往歴や薬物乱用歴、現在精神疾患に罹患していることは、必ずしもIFNの禁忌とはならないものの、重要な危険因子として考慮すべきであり、場合によっては入院のうえ内科医と精神科医の連携が必要になると、マニュアルの報告は述べています[1]

2つの薬剤群の危険因子を比べると、共通する部分と異なる部分があることが分かります。

危険因子 インターフェロン製剤 副腎皮質ステロイド薬
年齢 高齢が危険因子と報告される[1] 年齢との関連は否定的[1]
性別 特記なし 女性が罹患しやすい[1]
精神疾患の既往 重要な危険因子として考慮[1] 関連は否定的[1]
用量 高用量で危険性が高まる[1] 40mg/日超で発症率増加の意見。10〜20mg/日でも生じうる[1]

出典:厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤惹起性うつ病」[1]

このように、同じ「薬剤性うつ病」という括りでも、薬剤の種類によって注意すべき人の特徴が異なります。⚠自分がどちらの危険因子に当てはまるかを自己判断するのではなく、処方時に医師へ既往歴や年齢、体質を伝えたうえで、経過観察の方針を一緒に確認しておくことが大切です。

実際に報告された副作用件数――厚生労働省の集計から

厚生労働省のマニュアルには、薬事法(当時)に基づく副作用報告のうち「うつ病」として報告された件数の集計が参考資料として掲載されていると報告されています[1]。⚠この件数は医薬品との因果関係が確定したものではなく、疑い例も幅広く含む報告数である点に注意が必要です[1]

年度 推定原因医薬品 報告件数
平成16年度(平成17年7月集計) インターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え) 9件[1]
平成16年度(平成17年7月集計) ペグインターフェロン アルファ-2a(遺伝子組換え) 4件[1]
平成17年度(平成18年10月集計) ペグインターフェロン アルファ-2a(遺伝子組換え) 4件[1]
平成17年度(平成18年10月集計) プレドニゾロン 2件[1]

出典:厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤惹起性うつ病」参考1 薬事法第77条の4の2に基づく副作用報告件数(医薬品別)[1]

マニュアルの注意書きによれば、この報告件数は各医薬品の販売量や使用法、併用薬、原疾患、合併症などが症例ごとに異なるため単純には比較できず、順位をそのまま「危険度の順位」と解釈すべきではないと報告されています[1]。それでもインターフェロン製剤とプレドニゾロンが上位に繰り返し挙がっている点は、両薬剤群が代表例として扱われている理由と同じ結論を裏づけています[1]

この症状、放置して大丈夫?次に確認すべきこと 関連記事
この記事では答えていない疑問です — 読み終えたら、続けてご確認ください
薬の副作用が怖い 記事へ 薬で本当に治るの? 記事へ 薬を減らせば改善する? 記事へ 病院に行くべきサインは? 記事へ

絶対にやってはいけないこと――自己判断で服薬を中止しない

受診前に準備しておきたいメモ

  • いつから、どんな症状が出ているか(例:不眠・食欲低下・気分の落ち込み・イライラ・興味の喪失)
  • 現在服用中の薬(原因薬の可能性がある薬だけでなく、併用薬・市販薬もすべて)と、いつから飲み始めたか
  • 症状が出てから、薬の量や種類に変化があったか(増量・減量・剤形変更の時期)
  • 過去にうつ病や不安障害、精神疾患にかかったことがあるか
  • 家族が気づいた変化(本人が自覚しにくい意欲低下や興味の喪失など)
  • 死にたい気持ちや自分を傷つけたい気持ちがあるか(正直に伝えることが安全につながります)
  • 医師に聞きたいこと(例:「この薬が原因の可能性はありますか」「減量や変更は可能ですか」「併用できる対処薬はありますか」)

厚生労働省のマニュアルが繰り返し強調しているのは、原因が疑われる薬を「勝手に中止することはせず、まずは担当の医師と相談してください」という一点だと報告書は繰り返し述べています[1]。自己判断で急に中止すると、原疾患(C型肝炎、膠原病、てんかんなど)が悪化するおそれがあるだけでなく、薬剤そのものの離脱に伴う症状が新たに生じる可能性もあります。マニュアルの症例でも、IFNの継続を希望した患者に対しては、中止ではなく減量と抗うつ薬の併用という選択肢が取られ、良好な経過をたどったと報告されています[1]

医師にどう相談すればよいか

マニュアルは、症状に気づいたときの対応として「できればその薬物を減量・中止して、経過を慎重に観察することが重要である」「減量または中止してうつ病が改善すれば、その薬物がうつ病の原因であったことがわかる」と報告のうえで述べています[1]。つまり、原因の特定自体が医師による経過観察を必要とするプロセスであり、患者さん側から一方的に「この薬のせいだ」と決めつけることは推奨されていません。

相談の際は、上記の受診前メモを持参したうえで、「薬を続けながら症状を抑える方法があるか」「減量や変更が可能か」を具体的に尋ねるとよいでしょう。マニュアルが紹介する症例のように、SSRIやSNRIといった抗うつ薬を併用しながら原因薬を継続する、あるいは慎重に減量するといった選択肢を医師が検討してくれる場合があると報告例は示しています[1]

具体的な伝え方の例としては、次のような聞き方が参考になります。「このお薬を飲み始めてから、〇〇のような症状が出ています。この薬が原因という可能性はありますか」「薬を急にやめると原疾患が悪化すると聞きましたが、少しずつ減らす方法はありますか」「気分の症状を抑える薬を併用しながら、今の治療を続けることはできますか」。マニュアルの症例が示すように、こうした相談を経て、減量・薬剤変更・抗うつ薬併用のいずれか、あるいはその組み合わせが選択されることがあると報告例は示しています[1]

なぜ「治療ガイドライン」でなく「副作用対応マニュアル」を主な情報源にしているのか

この記事は、日本うつ病学会などのうつ病そのものの治療ガイドラインではなく、厚生労働省が2008年に作成した「重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤惹起性うつ病」を主な情報源としています[1]。このマニュアルは、医薬品の副作用によって生じる疾患に着目し、早期発見・早期対応を目的として、関係学会(日本臨床精神神経薬理学会・日本肝臓学会)と日本病院薬剤師会が委員会を組織し、厚生労働省の重篤副作用総合対策検討会で検討・とりまとめられたものです[1]。てんかんに関しては、日本神経学会が発行する「てんかん診療ガイドライン2018」のCQ3-5が、精神症状のリスクを持つ人向けの抗てんかん薬の選び方を具体的に整理しているため、あわせて参照しています[2]。どちらも、個々の薬の添付文書だけでは分かりにくい「薬剤と精神症状の関連」を、複数の研究や症例をもとに整理した資料である点が共通しています。

経過観察が必要な期間の目安――薬剤による違い

厚生労働省のマニュアルに示された発現時期のデータを薬剤群ごとに整理すると、注意が必要な期間の長さにも違いがあることがわかります。インターフェロン製剤では投与後1〜3か月が特に注意すべき時期とされ、中止後も精神症状が1か月以上持続する場合が比較的多く観察されると報告されています[1]。副腎皮質ステロイド薬では、早い患者で投与初日、遅い患者で3か月以降と幅がありますが、多くの症例では数日から1〜2週間後に症状が出現すると報告されています[1]

この違いは、それぞれの薬剤が体内で作用する仕組みの違いを反映していると考えられます。IFNは免疫系・内分泌系を介してゆるやかに作用が蓄積していくのに対し、ステロイド薬は投与量に応じて比較的早期にコルチゾール系のバランスへ影響を与えると研究報告で考えられているためです[1]。いずれの薬剤でも、投与開始直後だけでなく、増量時や長期投与の途中でも症状が現れうるため、「最初の数日だけ気をつければよい」というものではない点に、報告資料は注意を促しています[1]

まとめ――薬剤性うつ病と向き合うための考え方

薬剤性うつ病は、まれではあるものの、インターフェロン製剤や副腎皮質ステロイド薬、一部の抗てんかん薬など、身近に使われる治療薬でも報告されているものです[1][2]。厚生労働省のマニュアルが繰り返し伝えているのは、①原因薬の服用中に気分や睡眠、食欲の変化に気づいたら、まずその薬の影響を疑うこと、②しかし自己判断で服薬を中止せず、必ず処方医・薬剤師に相談すること、③対応は中止だけでなく、減量・薬剤変更・抗うつ薬の併用など複数の選択肢があることの3点だと報告書はまとめています[1]

薬剤性うつ病か、うつ病そのものか、あるいは原疾患による症状かを見分けるには、症状の内容だけでなく、服薬歴・発症のタイミング・減量や中止による変化を、時間をかけて医師とともに確認していく必要があると報告書は述べています[1]。特に希死念慮や自殺企図がみられる場合は、原因の特定を待たず、直ちに医療機関につながることが最優先だと報告書は強調しています[1]

個々の薬剤の添付文書に記載されている用法・用量や、うつ症状発現時の具体的な休薬・変更基準については、今回参照した資料には網羅的な記載が見当たりませんでした。実際の対応は、処方されている薬剤の添付文書と主治医の判断によって個別に決まります。

よくある質問

薬剤性うつ病は薬をやめれば確実に良くなりますか?
厚生労働省のマニュアルの症例では、原因薬を減量したうえで抗うつ薬を併用し改善した例、リチウムの投与で改善した例などが紹介されており、対応は中止だけとは限らないと報告例は示しています[1]。減量・中止が可能かどうかは原疾患の状態によって異なるため、医師との相談が前提です。
インターフェロン治療中にうつ症状が出たら、治療は中断しなければいけませんか?
必ずしもそうとは限りません。マニュアルが紹介する症例では、Peg-IFNを減量しつつミルナシプランを併用することで治療を継続できたと報告されています[1]。ただし、希死念慮や幻覚妄想、意識障害を伴う場合は中止が必要と報告されています[1]
ステロイド薬は少量でもうつ病を起こしますか?
はい。厚生労働省のマニュアルは、プレドニゾン40mg/日を超えると発症率が増加するという意見を紹介する一方、10〜20mg/日程度でもうつ病を生じる可能性があると報告のうえで明記しています[1]
てんかんの薬でうつになりやすいものはありますか?
日本神経学会のガイドラインは、うつ病性障害のある人に対し、フェノバルビタール・プリミドン・ゾニサミド・トピラマート・レベチラセタムの使用を避け、ラモトリギンなどの使用を考慮するとしています[2]。ただし、てんかん治療薬の選択は主治医の総合判断によります。
薬剤性うつ病かどうかは自分で判断できますか?
難しい場合が多いです。マニュアルもSLEの症例のように、原疾患自体が精神症状を起こす場合との判別には縦断的な経過観察が必要だと報告しています[1]。自己判断せず、症状と服薬歴を医師に伝えることが重要です。
うつ症状が出たら、すぐに薬をやめてもいいですか?
いいえ。厚生労働省のマニュアルは「勝手に服用を中止することはせずに、まずは担当の医師と相談してください」と報告のうえで明記しています[1]。自己中断は原疾患の悪化につながるおそれがあります。
どのくらいの期間で薬剤性うつ病の症状は出ますか?
薬剤によって異なります。ステロイド薬では投与初日から3か月以降まで幅がありますが、多くは数日〜1、2週間後です[1]。IFNでは投与後1〜3か月が特に注意すべき時期とされ、中止後も症状が1か月以上持続することがあると報告されています[1]
家族が薬を飲み始めてから元気がなくなった場合、何に注意すればいいですか?
「眠れなくなった」「物事に興味がなくなった」「気分が落ち込んだ」などの変化に気づいたら、本人任せにせず、処方医や薬剤師に早めに連絡するよう、マニュアルの報告は勧めています[1]。希死念慮や自殺企図がみられる場合は、緊急の対応が必要です[1]
抗うつ薬と原因薬を一緒に飲んでも大丈夫ですか?
マニュアルの症例では、SSRIやSNRI、リチウムなどを原因薬と併用して症状が改善した例が報告されています[1]。ただし、薬の組み合わせによる相互作用があるため、必ず処方医の判断のもとで行う必要があります。
薬剤性うつ病の一般的なうつ病との症状の違いはありますか?
症状そのものは、抑うつ気分・不眠・食欲低下・興味の喪失など、厚生労働省の「こころの耳」が示す一般的なうつ病の症状と重なる部分が多いと報告されています[3]。違いの手がかりになるのは症状そのものよりも、原因薬の開始・増量とのタイミング、そして減量・中止による改善の有無です[1]。原発性うつ病は薬剤とは無関係に環境要因・性格傾向・身体疾患・内分泌変化などが複合して生じるとされており、この点も判別の手がかりになると報告資料は示しています[3]
ステロイド薬による精神症状は、うつ状態だけですか?
いいえ。厚生労働省のマニュアルは、ステロイド薬による精神症状として、うつ状態のほかに躁状態、幻覚・妄想状態、せん妄などさまざまなものがあると報告のうえで述べています[1]。1983年の総説では、精神症状の内訳として躁状態28%、抑うつ状態40%、混合状態8%、せん妄10%という報告も報告されています[1]

参考文献

  1. 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤惹起性うつ病」平成20年6月 https://www.pmda.go.jp/files/000144134.pdf
  2. 日本神経学会「てんかん診療ガイドライン2018」CQ3-5 精神症状のリスクを有する患者の選択薬はなにか https://www.neurology-jp.org/guidelinem/epgl/tenkan_2018_tuiho_cq3-5.pdf
  3. 厚生労働省「こころの耳」うつ病の主な症状と原因 https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad002/

更新日:2026年7月21日。本記事の内容に誤りや古い情報があれば、お気づきの点をお知らせください。

関連記事

この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ

この記事をシェア

LINE 𝕏
この記事について(運営者情報・免責事項) タップで表示

医療情報に関する重要なお知らせ

本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。

Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

運営者情報を見る →