うつ病の人への接し方|家族と職場が知っておきたいこと
この記事でわかること
目次
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うつ病の人への接し方で最も大切なのは「治そうとしない」ことです。厚生労働省 こころの耳は、励ますより聴く、原因を探すより今できることを一緒に考えるという2つの姿勢を挙げています。[1]
家族や職場が過度に励ましたり、大きな決断を急がせたりすると、本人はかえって「もうこれ以上頑張れない」と追い詰められることがあります。特に「死にたい」というサインが出ている場合は様子見をせず、すぐに専門の相談窓口につなぐ必要があります。この記事では、うつ病の人への接し方の基本原則から、自殺のサインへの対処、家族自身が共倒れしないためのケア、職場での産業医・ストレスチェック・休職復職の支援まで、厚生労働省の公開情報にもとづいて整理しました。
要点まとめ
- 厚生労働省こころの耳によれば、基本姿勢は「励まさない・原因探しをしない・大きな決断を先延ばしにする」の3つ[1]
- NCNP(国立精神・神経医療研究センター)によれば、周囲から見える初期サインは「表情が暗い」「涙もろくなった」「飲酒量が増える」など[3]
- 厚生労働省こころの耳によれば、「死にたい」「自分は迷惑をかけている」という発言が増えたら自殺のサインとして受け止める[1]
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」によれば、相談は24時間対応の「#いのちSOS」(0120-061-338)など無料電話窓口がある[2]
- 厚生労働省こころの耳によれば、職場では産業医・ストレスチェック制度・休職復職支援の仕組みを頼ってよい[4]
編集基準
編集方針: JHO編集部がAIツールの支援を受け、厚生労働省・国立精神・神経医療研究センター(NCNP)などの公的機関の一次情報と照合して作成。最終確認は人の目。医師による個別診断の代わりにはなりません。相談窓口の電話番号・受付時間は変更されることがあります(2026年7月21日時点)。
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うつ病の人への接し方の基本原則 — なぜ「頑張って」が逆効果になるのか
身近な人がうつ病になったとき、家族や同僚がまず戸惑うのは「何と声をかければいいか」です。厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」は、家族の対応について「治療にはご家族の協力が重要などといわれますと、大きな責務を感じて、ついつい力が入りがちですが、あまり特別なことを考える必要はありません」としたうえで、具体的に気をつけるポイントを挙げています[1]。
1つ目は「原因探しをしない」ことです。「なぜこの人は病気になってしまったのだろう」と考えたくなりますが、厚生労働省こころの耳は「実際は様々なことが関与して特定できないことがよくあります」「今できることを中心に考えるようにしてみましょう」と説明しています[1]。
2つ目は「励まさない」ことです。すでに頑張りすぎてこころの病になった人を励ますと、「もうこれ以上頑張れない」「まわりの人が気をつかってくれるのに、何もできない自分は情けない」と症状を悪化させることがあると、厚生労働省こころの耳は説明しています[1]。ただし励ますこと自体が常に悪いわけではなく、対応の時期については主治医に相談するよう案内されています[1]。
3つ目は「無理に特別なことをしないでおく」ことです。元気がない本人を気分転換に連れ出そうとしても、こころのエネルギーが消耗している状態では「普段楽しめることは楽しめず、むしろ疲労感を増し、悪化してしまうこともある」と厚生労働省こころの耳は説明しており、こうした気遣いに応えられない自分への嫌悪感から自殺のリスクが高まる場合もあると同サイトは明記しています[1]。
4つ目は「大きな決断は先延ばしにする」ことです。「職場でみんなに迷惑をかけている」といった自責的な思いから退職や離婚を口にすることがありますが、こころの病では心理的な視野狭窄が起き、悲観的な発想しか浮かばなくなっていることがあります。「今はまず健康に留意することを最優先しましょう。その問題は、もう少し良くなったら一緒に考えましょう」と伝える対応が、厚生労働省こころの耳では案内されています[1]。
この4つの原則は、家族に限らず職場の同僚や上司が接するときにも共通します。うつ病そのものについては、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所の「こころの情報サイト」が「精神的ストレスや身体的ストレスなどを背景に、脳がうまく働かなくなっている状態」で「ものの見方や考え方が否定的になります」と説明しており、日本では100人に約6人が生涯のうちにうつ病を経験しているという調査結果があります[3]。女性は男性よりも1.6倍くらい多いことも知られています[3]。うつ病と対応が大きく異なる双極性障害(躁うつ病)との鑑別も専門家による判断が必要とされています[3]。
うつ病とは — 発症の原因と治療の考え方
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所の「こころの情報サイト」によると、うつ病の発症の原因は正確にはよくわかっていませんが、「感情や意欲を司る脳の働きに何らかの不調が生じているものと考えられています」とされています[3]。うつ病の背景には精神的ストレスや身体的ストレスが指摘されることが多い一方で、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は「結婚や進学、就職、引越しなどといった嬉しい出来事の後にも発症することがある」と説明しており、家族が「何か悪いことをしたから」と原因を家庭内に求める必要はありません[3]。身体の病気や内科治療薬が原因となってうつ状態が生じることもあるため、注意が必要だと同センターは案内しています[3]。
治療を考える前に、同センターによれば、まず心身の休養がしっかりとれるように環境を整えることが大事で、職場や学校から離れ自宅で過ごす、場合によっては入院環境へ身を委ねることで、大きく症状が軽減することもあるとされています[3]。治療には、抗うつ薬を中心とする薬物療法と、専門家との対話を通して進める精神療法があり、同センターによれば散歩などの軽い有酸素運動(運動療法)がうつ症状を軽減させることが知られているとされています[3]。薬物療法について、同センターは「継続して服用する必要があり、服用を開始してもすぐに効果が現れません」としており、自分の判断で薬の量を増やしたり減らしたり中断したりせず、焦らずに服薬を継続することが案内されています[3]。精神療法には支持的精神療法という基本的な治療法に加えて、同センターによれば認知行動療法や対人関係療法などのより専門的な治療法があるとされています[3]。
同センターによれば、治療を進めるうえで不安や悩みを持ったら主治医に相談することが第一歩とされ、場合によっては主治医以外の専門家の意見を聞くセカンドオピニオンも選択肢になると同センターは案内しています[3]。家族としては、通院や服薬が「本人の甘え」ではなく治療の一部であることを理解し、服薬の中断を家族の判断で促さないことが、支える側にできる具体的な行動になります。うつ病の人への接し方は、こうした病気の基礎知識を知ることから始まります。
いつもと違う様子に気づく — 気づきのサイン一覧
こころの不調のサインは、本人も家族も気づきにくいものです。厚生労働省こころの耳は「中には、気づいても、職場や家族に心配をかけたくないという思いから、自分自身で抱え込み、誰にも相談できずにいるケースもあります」としたうえで、「いつも」と違う状態が10日から2週間以上続く場合はサインの可能性があると説明しています[1]。
| 分類 | 気づきのポイント | 出典 |
|---|---|---|
| からだの面 | 朝早く目が覚めてしまう、夜中に何度も目が覚める、食欲がない・食べても美味しくない、体重の急な増減、朝からぐったり疲れきっている | こころの耳[1] |
| こころの面 | 気分が落ち込んでいる、何事にも悲観的になる、何事にも興味がもてない、イライラして落ち着きがない | こころの耳[1] |
| 行動の面 | 遅刻・欠勤が増える、会社に行きたがらない、口数が減る、「自分はだめな人間だ」など否定的な発言が増える | こころの耳[1] |
| 周囲から見える変化 | 表情が暗い、自分を責めてばかりいる、涙もろくなった、反応が遅い、落ち着かない、飲酒量が増える | NCNP[3] |
出典:厚生労働省 こころの耳「ご家族にできること」[1]/国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所「こころの情報サイト」[3]
同センターは、うつ病の精神症状に気づく前に身体の不調が現れることもあるとして、食欲がない、性欲がない、眠れない・過度に寝てしまう、体がだるい、頭痛や肩こり、動悸、胃の不快感、めまいといった身体サインも挙げています[3]。うつ状態の人と向き合うための9つのポイントもあわせて参考にしてください。
してほしい対応・避けたい対応 — 「頑張って」は逆効果になることも
ここからは、うつ病の人への接し方として具体的に何をすればよいかを見ていきます。いつもと違う様子に気づいたら、まずは本人の話にゆっくり耳を傾けます。厚生労働省こころの耳は「そんなことはないなど否定せず、まずはご本人が一番言いたいことは何かを理解しようという姿勢が大切」とし、本人があまり語りたがらない様子が強いときは無理に聞き出さず「そっと見守っている、というスタンスがちょうどいいことがある」と案内しています[1]。
本人が相談できそうなときは、会社の産業医や社内の相談窓口に相談するよう促してみます。本人が相談することにハードルを感じているときや、あまり語らないときは、まず家族が相談してみるのも一つの方法だと、厚生労働省こころの耳は案内しています[1]。家庭内の不和がうつ病リスクに関わるという報告もあり、家庭の環境調整そのものがケアの一部になり得ます。
職場のハラスメントが疑われる場合、そのままの状況が続くとメンタルヘルス不調のリスクがあるため早めの対応が望まれるとされ、厚生労働省こころの耳では総合労働相談コーナーへの相談も案内されています[1]。長時間労働のおそれがある場合も同様に、家族からの相談が可能な窓口があると同サイトは案内しています[1]。
療養を支える段階では、身体の病気のときと同様に「安心して休息する」ことが一番大事な基本になります。食欲が減った、元気がなくなった、趣味に興味を示さなくなった、ため息が多いといった変化に対し、言葉だけでなくさりげない気遣いが本人に安心感を与え、回復力を促すことにつながると、厚生労働省こころの耳は説明しています[1]。うつ病の治療そのものについては、うつ病の治療薬に関する解説記事もあわせて確認しておくと、通院への協力がしやすくなります。
公的資料の趣旨を踏まえた言い換え例(JHO編集部作成・特定の公的機関の発言ではありません)を挙げると、「原因探しをしない」は「何が悪かったんだろうね、ではなく、今日はこれだけ休めたね、と声をかける」、「励まさない」は「頑張れ、ではなく、頑張らなくていいよ、と伝える」、「大きな決断は先延ばしにする」は「今すぐ決めなくていい、少し良くなってから一緒に考えよう、と伝える」といった形になります。これらはあくまで一例であり、実際の言葉選びは本人との関係性や状況によって変わるため、迷ったときは主治医や産業医に相談してください。
受診の目安と付き添い方
様子を見ていても本人がいつもと違う状態が続くようであれば、病院に行くことを勧めます。厚生労働省こころの耳は、早期に対応することで回復も良好になるとし、その際「うつ病」という言葉を使わずに「疲れが抜けない状態がずっと続いているのが心配」など気持ちを伝え、初めての受診には付き添って行けることが望ましいと案内しています[1]。厚生労働省の「医療情報ネット(ナビイ)」では、精神科・心療内科などの診療科や地域から医療機関を検索できます[1]。
受診の付き添いについて、厚生労働省こころの耳は「毎回の受診に付き添う必要はありませんが、一緒に主治医のお話を聞くことで、ご本人のどんな点に気をつけてサポートするといいのか分かることがあります」とし、主治医に面会しておけば、本人が調子を崩して通院できないときに代理で相談することもできると説明しています。注意点として厚生労働省こころの耳は「あくまで付き添いということです。ご本人と主治医の貴重な接点の場ですので、ご家族がしゃべりすぎないようにしましょう」と案内しています[1]。
職場復帰の段階でも急がないことが重要です。厚生労働省こころの耳は「メンタルヘルス不調もまた、他の病気と同じように再発の防止が大切です」としたうえで、「うつ病の再発率は60%もあり、その後再発を繰り返すとさらに再発率が高くなるとされています」という報告を紹介し、「もう働ける」と感じても主治医の意見と家族の意見を参考にゆとりのある職場復帰を勧めています[5]。回復途上の見通しについてはうつ病は自然に治るのかを解説した記事も参考になります。
すぐに相談窓口へつなぐ必要があるサイン(厚生労働省こころの耳「自殺予防の十箇条」より)
⚠ 自殺のサインと緊急時の対応 — 相談窓口一覧
厚生労働省は自殺対策について「自殺はその多くが追い込まれた末の死であり、その多くが防ぐことができる社会的な問題です」という基本認識を示しています[6]。うつ病の家族への対応で最も大切なのは、原因を家族の誰かの責任に帰さず、本人を責めないことです。
厚生労働省こころの耳は「自殺から救うために、ご家族など身近にいる人が、自殺のサインに気がついてあげることが大変重要です」とし、「自殺予防の十箇条」として、次のようなサインを数多く認める場合は自殺の危険が迫っているとして早い段階での受診を勧めています(出典:中央労働災害防止協会 健康確保推進部 メンタルヘルス推進センター、2008年9月)[1]。
- うつ病の症状に気をつける
- 原因不明の身体の不調が長引く
- 酒量が増す
- 安全や健康が保てない
- 仕事の負担が急に増える、大きな失敗をする、職を失う
- 職場や家庭でサポートが得られない
- 本人にとって価値あるものを失う
- 重症の身体の病気にかかる
- 自殺を口にする
- 自殺未遂に及ぶ
特に「自分は不甲斐ない、駄目な奴だ、責任を果たせずつらい、みんなに迷惑をかけている」といった自責感が強いときはリスクが高まっていると考えてよいとされ、主治医がいる場合は家族が連絡して対応を相談してもよいと、厚生労働省こころの耳は説明しています[1]。まだ受診していない場合は、前の見出しで説明した受診の勧め方を参考にしてください。詳しい対応の実例は重度のうつ病と自殺のサインを解説した記事にまとめています。
| 相談窓口 | 電話番号 | 受付時間 |
|---|---|---|
| #いのちSOS | 0120-061-338(フリーダイヤル・無料) | 月曜日~日曜日 00:00~24:00(毎日24時間) |
| よりそいホットライン | 0120-279-338(フリーダイヤル・無料)/福島県から:0120-279-226 | 24時間対応(外国語含むガイダンスあり) |
| よりそいホットライン(IP電話) | 050-3655-0279 | 24時間対応 |
| いのちの電話 | 0120-783-556(フリーダイヤル・無料) | 毎日16時~21時、毎月10日午前8時~翌日午前8時 |
| いのちの電話(IP電話) | 03-6634-7830(通話料有料) | いのちの電話と同様 |
| いのちの電話(ナビダイヤル) | 0570-783-556 | 通話料がかかります |
| こころの健康相談統一ダイヤル | 0570-064-556(ナビダイヤル) | 都道府県によって異なる |
| 働く人の「こころの耳電話相談」 | 0120-565-455(フリーダイヤル) | 平日17:00~22:00(受付21:50まで)・土日10:00~16:00(受付15:50まで) |
出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」相談窓口一覧[2]/厚生労働省こころの耳「働く人の『こころの耳電話相談』」[10](2026年7月21日確認・電話番号は変更されることがあります)
厚生労働省こころの耳「働く人の『こころの耳電話相談』」は、働く方だけでなく「そのご家族、企業の人事労務担当者の方」も対象としており、こころの悩み・人間関係の悩み・仕事の悩み・過重労働による心の健康への影響などについて相談できるとされています[10]。ただし病名の診断や治療方法の提示など医療行為にあたる相談、ストレスチェック制度そのものについての問い合わせには対応しておらず、後者は前述の「ストレスチェック制度サポートダイヤル」を案内するとこころの耳(厚生労働省)は説明しています[10]。1回の相談時間は最大20分が目安とされ、混雑時は初めて利用する人が優先されることがあるとも厚生労働省こころの耳は案内しています[10]。「本人はまだ電話しづらそうだが、家族の自分がまず話を聞いてほしい」というときに使える窓口です。
緊急に命の危険がある場合は、これらの相談窓口に加えて119番(救急)や110番(警察)への連絡も選択肢になります。まずは本人のそばを離れず、一人にしないことが優先されます。
厚生労働省は自殺対策の取り組みの一つとして「ゲートキーパーになろう!」というページを公開しており、相談窓口や自殺対策の取り組みなどの情報をわかりやすくまとめたサイト「まもろうよ こころ」とあわせて案内しています[6]。ゲートキーパーとは一般に、身近な人の悩みのサインに気づき、話を聴き、必要な支援先につなぎ、見守る人を指す言葉として使われています。家族は、本人にとって最も身近なゲートキーパーになり得る存在です。特別な資格がなくても、いつもと違う様子に気づき、話を聴き、上記の相談窓口につなぎ、その後も見守り続けるという行動そのものが、家族にできる支援の土台になります。
厚生労働省こころの耳の「相談窓口案内」ページでは、こころの健康に関する相談先として、こころの健康相談統一ダイヤルに加えて「全国の精神保健福祉センター」「全国の保健所」への相談も案内されています[11]。また、万が一のことが起きてしまった場合に備え、「自死遺族相談ダイヤル(自死遺族のための電話相談)」(厚生労働省自殺防止対策事業)という、遺された家族のための専門窓口も同ページで案内されています[11]。うつ病の人を支える家族自身が、いざというときに頼れる先を事前に知っておくことも、備えの一つです。
家族自身のケア — 共倒れを防ぐために
うつ病の人への接し方を考えるとき、支える家族自身のケアを忘れてはいけません。厚生労働省こころの耳は、家族向けのコンテンツとして「疲労蓄積度セルフチェック(家族支援用)」を用意しており、支える側の家族自身がどれだけ疲労をためているかを点数で確認できるとしています[1]。原因探しをしない、励まさない、大きな決断を急がせないという対応は、いずれも厚生労働省こころの耳が「特別なことを考える必要はない」という前提のもとで案内していますが、それでも日々そばで支える家族の負担は軽くありません[1]。
本人と主治医の面会に付き添う際、厚生労働省こころの耳が「ご家族がしゃべりすぎないようにしましょう」と注意を促しているのも、家族が本人の代わりに問題を抱え込みすぎないようにするための一線引きだと理解できます[1]。家族の役割はあくまで「付き添い」であり、本人の治療を家族が代行することではありません。
また、家庭内の不和そのものがストレス要因になり、症状に影響することも指摘されています。家族の不和とうつ病リスクを扱った記事で紹介されているように、支える側が精神的に追い詰められると、家庭全体の環境がかえって本人の回復を妨げてしまうことがあります。家族自身が「話したくなったら」というスタンスを保てるよう、厚生労働省こころの耳の相談窓口や地域の精神保健福祉センターなど、家族だけで抱え込まない相談先を早めに確保しておくことが、共倒れを防ぐ具体的な一歩になります[1]。
ご本人の症状の程度によっては、精神病性の症状を伴う重いうつ病など、家族だけでは対応が難しいケースもあります。精神病性うつ病の治療ガイドラインを解説した記事も、家族が抱え込みすぎず専門家につなぐ判断材料として役立ちます。
家族自身のセルフケアについて、NCNP(国立精神・神経医療研究センター)精神保健研究所の「こころの情報サイト」は、ストレスと上手に付き合うための工夫を紹介しています。同研究所によれば、まず「毎日の生活習慣を整えることが大切」で、バランスの取れた食事や良質の睡眠、適度な運動の習慣を維持することがこころの健康の基礎固めになるとされ、腹式呼吸やストレッチ、好きな音楽を聴くなど、気軽にできるリラックス方法が挙げられています[8]。ただし同研究所は「お酒を飲んでつらさを紛らわせようとすると、睡眠の質が低下し、こころも不安定になることがあるので気をつけましょう」とも注意しています[8]。
考え方の面では、同研究所によれば「必ず、〇〇をしなければならない」といった固定的な考え方がストレスを強めることがあるとされ、「良くないことばかりではなく、実際にできていること、うまくいっていることに注意を向ける」ことで気持ちが楽になることがあると同研究所は案内しています[8]。そして、困ったときやつらいときに話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になるとして、「友人、家族、同僚、地域や趣味の仲間など、日頃から気軽に話せる人を増やしておきましょう」と勧められています。こころと体の不調が続くときには、医師や公認心理師などの専門家、地域の精神保健福祉センター、保健所、職場の健康管理センターなど、相談できる場所がたくさんあるとされています[8]。支える家族自身が、このセルフケアを後回しにしないことが、結果的に本人を長く支える力になります。
職場での支援 — 産業医・ストレスチェック・休職と復職
職場でも、本人が一人で抱え込まない仕組みが用意されています。ただしストレスチェックの実施義務には事業場の規模による違いがあります。厚生労働省 東京労働局は「労働安全衛生法が改正され、平成27年12月1日から、ストレスチェックの実施が事業者に義務付けられました」としたうえで、「労働者数50人未満の事業場は当分の間努力義務ですが、50人以上の事業場は業種などにかかわりなくすべての事業場で実施しなければなりません」と厚生労働省東京労働局は説明しています[12]。50人未満の事業場についても、厚生労働省こころの耳は「令和7年の労働安全衛生法の改正により、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場(「小規模事業場」)におけるストレスチェックの実施が義務とされました」としており、施行は令和10年4月1日と案内しています[13]。この改正法(労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律、令和7年法律第33号)について、厚生労働省は「第217回国会で成立し、令和7年5月14日に公布されました」と案内しています[14]。事業場の規模にかかわらず、高ストレスと判定された労働者からの申し出に基づく医師の面接指導などが求められる点は共通です[4]。時間外・休日労働時間が1か月あたり45時間を超えて長くなるほど健康障害のリスクが高まるとされ、80時間を超えて疲労の蓄積が認められる労働者から申し出があった場合、事業者は医師による面接指導を行わなければならないと、厚生労働省こころの耳は説明しています[1]。
ストレスチェックの実施方法や結果の扱いに迷う産業医・衛生管理者向けには、厚生労働省こころの耳が「ストレスチェック制度サポートダイヤル」(0570-031050、全国統一ナビダイヤル、平日10時~17時、土曜・日曜・祝日・12月29日~1月3日を除く)を案内しており、独立行政法人労働者健康安全機構が実施する専門的な相談を無料で受けられるとされています[4]。実施に使う調査票としては、厚生労働省が公表している「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」などが案内されており、事業場ごとの結果は個人が特定されない形で集団分析にも活用できるとされています[4]。家族としては、本人が「ストレスチェックで高ストレスと出たが会社に言いにくい」と悩んでいる場合、こうした社外の専門ダイヤルがあることを伝えるだけでも、相談へのハードルを下げる助けになります。
休職から職場復帰までの支援については、厚生労働省と独立行政法人労働者健康安全機構が「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」をまとめており、厚生労働省こころの耳はこの手引きの基本的なステップに沿ったeラーニングや、事業者・上司向けのコンテンツを紹介しています[7]。産業医は、本人が相談しやすいときに相談を促す最初の窓口として、厚生労働省こころの耳の「ご家族にできること」でも案内されている役割です[1]。
| 段階 | 主な内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 気づき・相談 | 本人が相談できそうなら産業医や社内相談窓口を促す。本人が語らないときはまず家族・上司が相談する | こころの耳[1] |
| ストレスチェック | 年1回以上の実施(50人以上の事業場は義務・平成27年12月1日〜/50人未満は努力義務、令和10年4月1日から義務化予定)。高ストレスと判定され申し出た労働者に医師の面接指導 | 東京労働局[12]/こころの耳[13] |
| 休業・療養 | 安心して休息できる環境を確保。再発防止のため職場復帰を焦らない | こころの耳[5] |
| 職場復帰支援 | 「職場復帰支援の手引き」の基本ステップに沿って、主治医・産業医の意見をもとにゆとりある復帰を計画 | こころの耳[7] |
出典:厚生労働省 こころの耳「ストレスチェック制度について」[4]/「職場復帰のガイダンス(働く方へ)」[5]/「職場復帰支援に役立つコンテンツ」[7]
職場のハラスメントが疑われる場合も、そのままの状況が続くとメンタルヘルス不調のリスクがあるため早めの対応が望まれ、厚生労働省こころの耳では総合労働相談コーナーへの相談が案内されています[1]。家族からの相談も可能とされているため、本人が動けない状態でも周囲から支援につなげる道が用意されています[1]。
本人や上司が事業所の中だけで抱え込む必要もありません。独立行政法人労働者健康安全機構が運営する全国47都道府県の産業保健総合支援センター(さんぽセンター)では、経験豊富な専門スタッフが、産業医、衛生管理者、産業看護職、人事労務担当者などの産業保健関係者へ、メンタルヘルス対策をはじめとする相談・研修・情報提供を「原則として無料」で行っていると厚生労働省こころの耳は案内しています[9]。事業主からの相談内容や要望に応じて、専門スタッフが直接事業場を訪問し、メンタルヘルス対策や労働衛生管理の総合的な助言・指導を行う仕組みもあります[9]。50人未満の小規模事業場向けには、地域の産業保健総合支援センター(地さんぽ)が、事業主や労働者への相談対応、健康診断の事後対応、面接指導などを実施しています[9]。「うちの職場には産業医がいないから」とあきらめず、こうした無料の外部窓口を家族や本人から案内するのも支援の一つの形です。
相談先の使い分け — うつ病の人への接し方に迷ったときの窓口早見表
ここまで紹介した窓口は目的によって使い分けます。厚生労働省「まもろうよ こころ」によれば、「死にたい」という言葉が出るなど命の危険がある場合は、#いのちSOS(0120-061-338)やよりそいホットライン(0120-279-338)など24時間対応の窓口にすぐつなぎます[2]。仕事のストレスや職場での人間関係が背景にあり、本人もしくは家族が話を整理したい場合は、厚生労働省こころの耳「働く人の『こころの耳電話相談』」(0120-565-455、平日17:00~22:00・土日10:00~16:00)が使えます[10]。ストレスチェックの実施方法や職場の制度面で産業医・衛生管理者が迷う場合は、厚生労働省こころの耳が案内する「ストレスチェック制度サポートダイヤル」(0570-031050、平日10時~17時)が窓口になります[4]。事業主や人事労務担当者が職場全体のメンタルヘルス対策や職場復帰支援について相談したい場合は、全国47都道府県の産業保健総合支援センター(さんぽセンター)が原則無料で対応しています[9]。うつ病の人への接し方に迷ったときは、まずこの4種類のどれに近い悩みかを整理すると、適切な窓口にたどり着きやすくなります。
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
「頑張って」という声かけそのものを名指しで禁止する公的な文章は、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。ただし励まし全般が逆効果になり得るという注意は、厚生労働省こころの耳の「励まさない」という項目に明記されています[1]。個々の家庭・職場の状況によって適切な声かけは異なるため、迷ったときは主治医や産業医など専門家に相談することをお勧めします。
よくある質問
うつ病の人に「頑張って」と言ってはいけないのですか?
家族はどこまで付き添うべきですか?
自殺のサインにはどのようなものがありますか?
「死にたい」と言われたらどこに相談すればいいですか?
家族が疲れてしまったときはどうすればいいですか?
職場に相談する場合、まず誰に話せばいいですか?
休職から復職を急いでも大丈夫ですか?
うつ病と双極性障害(躁うつ病)はどう違いますか?
長時間労働が続いている家族が心配なときはどこに相談できますか?
会社に産業医がいない場合はどうすればいいですか?
家族自身が電話で相談できる窓口はありますか?
薬をやめたがっているときはどうすればいいですか?
万が一のことがあったとき、遺された家族はどこに相談できますか?
参考文献
- 厚生労働省 こころの耳「ご家族にできること」2026年7月21日確認 https://kokoro.mhlw.go.jp/families/
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」相談窓口(2026年7月時点) https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
- 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所「こころの情報サイト」うつ病 2026年7月21日確認 https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL
- 厚生労働省 こころの耳「ストレスチェック制度について」2026年7月21日確認 https://kokoro.mhlw.go.jp/etc/kaiseianeihou/
- 厚生労働省 こころの耳「職場復帰のガイダンス(働く方へ)」2026年7月21日確認 https://kokoro.mhlw.go.jp/return/return-worker/
- 厚生労働省「自殺対策」2026年7月21日確認 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/index.html
- 厚生労働省 こころの耳「職場復帰支援に役立つコンテンツ(事業者の方・部下を持つ方へ)」2026年7月21日確認 https://kokoro.mhlw.go.jp/return/return-employer/
- 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所「こころの情報サイト」ストレスとセルフケア 2026年7月21日確認 https://kokoro.ncnp.go.jp/health_howtocare.php
- 厚生労働省 こころの耳「産業保健総合支援センター(さんぽセンター)」2026年7月21日確認 https://kokoro.mhlw.go.jp/center/
- 厚生労働省 こころの耳「働く人の『こころの耳電話相談』」2026年7月21日確認 https://kokoro.mhlw.go.jp/tel-soudan/
- 厚生労働省 こころの耳「相談窓口案内」2026年7月21日確認 https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/
- 厚生労働省 東京労働局「ストレスチェック制度について」2026年7月21日確認 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_mental_0003.html
- 厚生労働省 こころの耳「ストレスチェック制度について(労働者数50人未満の事業場)」2026年7月21日確認 https://kokoro.mhlw.go.jp/etc/small-sc/
- 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)」2026年7月21日確認 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/an-eihou/index_00001.html
うつ病の人への接し方に「完璧な正解」はありませんが、聴く・励まさない・急がせない・専門家につなぐという基本を押さえておけば、家族も職場も落ち着いて向き合えます。最終更新日:2026年7月21日。内容に誤りやより新しい情報にお気づきの場合は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。関連する基礎知識はうつ病の総合ガイドにまとめています。
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