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心血管疾患 38分で読める 38回

冠動脈造影検査(CAG)とは|流れ・合併症・費用まとめ

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結論から言うと、冠動脈造影検査(CAG)は、手首や足の付け根の動脈からカテーテルという細い管を心臓の血管(冠動脈)まで進め、造影剤を注入してX線で撮影する検査だと、日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)は説明しています[3]。心臓に血液を送る血管が狭くなっていないかを直接調べる方法です。

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局所麻酔だけで行われ、全身麻酔ではないと、MSDマニュアル家庭版は説明しています[6]。検査自体は通常30〜50分ほどで、体に大きな負担がある処置ではないともされています[6]。同マニュアルによると、重篤な合併症がおこる割合はおよそ1,000人に1人、検査に伴う死亡は1万人に1人未満と報告されており[6]、頻度としては低いといえます。ただし腎機能が低下している方など、事前に注意すべき人がいるため、以下で順に説明します。

要点まとめ

  • 日本循環器学会などのガイドラインによると、冠動脈CT(CCTA)は体への負担が少なく「異常なし」を確認するのに向き、冠動脈造影検査(CAG)はより侵襲的なぶん、狭窄の詳しい評価やそのまま治療に進む判断に向いた検査とされています[1]。
  • CVITの説明では、手首(橈骨動脈)から行う場合は検査後すぐに歩行でき、足の付け根(大腿動脈)からの場合は数時間の安静が必要とされています[3]。
  • 国立循環器病研究センターの報告では、合併症で多いのは穿刺した部分の出血・血腫で、PCI(治療)の合併症の約半数を占めるとされています[4]。造影剤による腎機能の低下(造影剤腎症)にも、腎臓の学会等の合同ガイドラインは注意を促しています[2]。
  • MSDマニュアル家庭版によると、検査だけであれば日帰りで帰宅できることが多いが、その場でカテーテル治療(PCI)に進んだ場合は入院が必要になるとされています[6]。
  • 胸の痛みが引かない、穿刺部が急に腫れる・激しく痛むなどの症状が出たら、様子を見ず病院に連絡することが受診の目安になる。

〈編集方針〉JHO編集部がAIツールの支援を受け、日本循環器学会・日本腎臓学会・日本医学放射線学会などの公的なガイドラインおよび国立循環器病研究センター・日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)の情報と照合しながら作成しました。最終確認は人の目で行っています。医師による個別の診断・説明の代わりにはなりません。数値や基準はガイドラインの改定により変わることがあります(2026年7月時点の情報です)。

冠動脈造影検査を勧められるのはどんな症状のとき?

なぜ自分がこの検査を勧められたのかを知っておくと、当日の不安は少し軽くなります。心臓は、心臓の働きとは?構造・仕組みから心不全・心筋梗塞などの病気、科学的予防法まで徹底解説でも説明しているとおり、冠動脈という血管から酸素と栄養をもらって動いています。日本循環器学会などのガイドラインでは、胸の痛みの性状を次の3つの特徴で評価するとされています[1]。

典型的狭心症の3つの特徴 内容
①痛みの場所・性質 胸骨の下(または首・あご・肩・腕)の絞扼感・締めつけられるような痛み[1]
②誘因 運動や精神的ストレスで悪化する[1]
③軽快の仕方 安静または、ニトログリセリンの使用で5分以内に和らぐ[1]

出典:日本循環器学会/日本心血管インターベンション治療学会/日本心臓病学会「2022年JCSガイドラインフォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療」[1]

同ガイドラインをまとめた日本循環器学会などの学会は、上記の3つの性状をすべて満たす場合を典型的狭心症、「2つのみを満たす」場合を非典型的狭心症、1つ以下しか当てはまらない場合は非狭心症性の胸部症状に分類するとしています[1]。同学会は、この症状の分類に加えて年齢・性別・危険因子(高血圧・糖尿病・喫煙歴など)を組み合わせて、「検査前確率(PTP)」と呼ばれる、その人が実際に冠動脈疾患を持っている見込みの高さを見積もる考え方を紹介しています[1]。英語ではpre-test probabilityと呼ばれるこの考え方は、簡単にいえば、症状や背景から検査をする前の時点でどれくらい疑わしいかを数字で表したものです。このPTPが高いほど、より詳しく調べられる冠動脈造影検査(CAG)が選ばれやすくなり、低ければ心電図や、24時間の心臓の動きを記録するホルター心電図とは?日常生活のパートナーとして心臓を見守る24時間検査のすべてのような、体への負担がより少ない検査から始めることが多いとされています。

なお、日本循環器学会のガイドラインは、この検査前確率の考え方自体も海外の大規模な研究をふまえて更新されてきた経緯を紹介しています[1]。従来使われてきたモデルでは冠動脈疾患の可能性を過大に見積もる傾向があったと、同学会が引用する研究で報告されており[1]、2019年に欧州心臓病学会(ESC)がモデルを下方修正したことを受け、日本循環器学会のガイドラインもこの知見を踏まえて記載を見直したとされています[1]。検査前確率の推定方法は今後も新しい研究によって変わっていく可能性があり、担当医は常に最新の考え方にもとづいて検査を選んでいると考えられます。

症状の性状に加えて、年齢・性別だけでなく、高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙歴・家族歴といった危険因子の有無も、PTPの見積もりに影響すると同ガイドラインの学会は説明しています[1]。危険因子が多いほど、同じ胸の症状でも冠動脈疾患の可能性は高く見積もられる傾向があるとされています[1]。健康診断の心電図で異常を指摘された場合や、運動負荷心電図・心臓超音波検査などの非侵襲的検査で心臓への血流不足が疑われた場合にも、より詳しく調べる目的で冠動脈造影検査が検討されることがあります。すでに冠動脈疾患と診断されている方が、症状の変化や治療方針の見直しのために改めてCAGを受けることもあります。

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冠動脈造影検査(CAG)とは?心臓の血管を映し出す仕組み

心臓は、冠動脈という太さ数ミリの血管から酸素と栄養をもらって動いています。この冠動脈の内側にコレステロールなどのかたまり(プラーク)がたまって狭くなると、心臓の筋肉に十分な血液が届かなくなり、狭心症や心筋梗塞の原因になります。日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)の説明では、冠動脈造影検査(CAG)は、この冠動脈の狭さ・詰まりの有無を、目で見える形で直接確認するための検査とされています[3]。

同学会(CVIT)の説明では、「カテーテル(直径2~3mmの細長い管)を手首、足の付け根、肘から血管に挿入し造影剤を注入してX線で冠動脈を映し出します」とされています[3]。MSDマニュアル家庭版によると、造影剤(X線に映る薬剤)が冠動脈の中を流れていく様子を連続したX線画像として記録することで、血管の内側の形がそのまま画面に映し出されるとされています[6]。

図:JHO編集部が作成

MSDマニュアル家庭版によれば、この検査で得られた画像は、そのままバルーンやステントで血管を広げる治療(PCI)に進むかどうかや、バイパス手術を検討すべきかどうかの判断材料としても使われるとされています[6]。冠動脈の狭くなった部分の前後で圧力の差を測るFFR(冠血流予備量比)という手法も、同じカテーテルの検査の中で追加されることがあります。日本循環器学会のガイドラインによれば、これは血管の狭さが実際に血流をどれくらい妨げているかを数値で確かめる方法で、見た目の狭さと血流への影響が必ずしも一致しないことがあるためだと説明されています[1]。

冠動脈造影検査は、心臓カテーテル検査という、より大きなくくりの検査の一部として行われます。MSDマニュアル家庭版の説明では、心臓カテーテル検査の中でカテーテルを利用して冠動脈内に造影剤を注入し、血管をX線画像に写す処置が冠動脈造影検査にあたるとされ、カテーテルを利用した処置には、このほかにバルーンで血管を広げるPCIや、心臓の弁を広げる弁形成術なども含まれるとされています[6]。同マニュアルによると、冠動脈造影検査は、多くの場合、心臓の左側(左心房・左心室・僧帽弁・大動脈弁)の状態を調べる左心カテーテル検査とほぼ同時に行われるとされています[6]。冠動脈が狭くなっても、狭くなり始めのうちは自覚症状が出ないこともあり、階段を上る・急いで歩くといった、心臓に負担がかかる場面で初めて胸の痛みや息切れとして気づかれることが少なくありません。狭窄がさらに進んで血流が急に途絶えると、心筋梗塞という命に関わる状態につながる可能性があり、これが冠動脈造影検査で血管の状態を直接確認する意味だと考えられます。

MSDマニュアル家庭版によると、検査で使われる造影剤は、ヨードを含み、X線を吸収する性質を利用してX線画像に血管の形を映し出す薬剤とされています[6]。腎臓の学会等の合同ガイドラインによると、体に入った造影剤は、最終的に主に腎臓を通って尿として排出されるため、腎臓の働きと造影剤の使用量は切り離せない関係にあるとされています[2]。この関係が、後述する「造影剤腎症」という合併症につながっています。同ガイドラインの学会によれば、造影剤にはヨード造影剤のほかにガドリニウム造影剤(MRIで使用)などの種類がありますが、冠動脈造影検査で使われるのはヨード造影剤だとされています[2]。

冠動脈CT(CCTA)との違いは?なぜ医師はCAGを選ぶのか

心臓カテーテル検査や冠動脈造影検査を勧められたが、CTではだめなのかという疑問を持つ方は多いはずです。国立循環器病研究センターの解説によると、冠動脈CT(CCTA)は、点滴から造影剤を入れてCTで撮影する検査で、カテーテルを血管の中まで通す必要がないぶん体への負担が小さいという特徴があるとされています[5]。同研究センターの解説では、CCTAは「撮影時間は10分もかからず、入院中でも外来でも検査を受けることができます」ともされています[5]。

一方で、日本循環器学会などによる2022年のガイドラインフォーカスアップデート版では、CCTAは「高い陰性的中率をもって閉塞性CADを除外できる」検査として位置づけられており、狭心症が疑われるものの冠動脈疾患の既往がない、中等度までのリスクの患者を対象に、まず異常が「ない」ことを確認する目的で選ばれやすいと同学会は説明しています[1]。これに対して、症状や他の検査結果から冠動脈に問題がある可能性が高いと判断された場合や、左主幹部という特に重要な血管の狭窄が疑われる場合には、同ガイドラインの学会は「侵襲的冠動脈造影に直接進むことも合理的である」としています[1]。つまりCTはまず除外するための検査、CAGは詳しく確定させて必要ならそのまま治療に移るための検査という役割分担があると考えられます。

では結局どちらが正確なのかと単純に順位をつけたくなりますが、日本循環器学会などのガイドラインが引用する国際的なメタ解析(23の研究・4,131例が対象)を見ると、両者は得意なことが違うと考えたほうが実情に近いようです。FFRで機能的に意味のある狭窄と判定された症例を基準にした場合、CCTAは感度93%・特異度53%であったのに対し、侵襲的な冠動脈造影は感度68%・特異度73%であったと同ガイドラインは報告しています[1]。CCTAは感度の高さのとおり「異常なし」を見抜く力に優れる一方、同学会のガイドラインは「CCTAのLMCA病変以外の陽性適中率は十分とはいえず、器質的狭窄の過大評価も稀ではな」いとも指摘しています[1]。つまりCTで「狭い」と出ても、それがどこまで正確かはCT単独では判断しきれない場合があり、そのときにCAGで血管の形を直接確認したり、FFRで血流への影響を数値化したりすることが、次の判断材料として必要になると考えられます。CAGが担っているのは感度・特異度の数字で勝ることではなく、治療につながる形で血管の状態を直接見て、必要なら機能まで測れることだといえます。

検査法 感度 特異度 備考
冠動脈CT(CCTA) 93% 53% 機能的に有意な狭窄(FFR基準)の検出について[1]
侵襲的冠動脈造影(CAG) 68% 73% 同じ基準による比較[1]

出典:日本循環器学会/日本心血管インターベンション治療学会/日本心臓病学会「2022年JCSガイドラインフォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療」が引用するKnuutiらの23研究・4,131例を対象としたメタ解析[1]

なお、日本循環器学会のガイドラインは、国内の実情として、近年国内で行われたあるレジストリー研究をもとに、負荷心筋シンチグラフィなどの「機能的イメージングが利用可能な施設が限定的である」ことも指摘しています[1]。海外の一部の医療環境と比べて、日本では画像検査の選択肢が施設ごとに異なり、CTや冠動脈造影に相対的に頼る場面が生じやすいという、日本特有の事情も背景にあると考えられます。心臓カテーテル検査そのものの全体像は、心臓カテーテル検査の全貌:安全性と効果を徹底解説でも詳しく解説しています。

検査はどう進む?手首から?足の付け根から?痛みはある?

CVITの説明によると、冠動脈造影検査で使われるアプローチ(カテーテルを入れる血管)には、主に手首の橈骨動脈と、足の付け根の大腿動脈があるとされています[3]。国立循環器病研究センターの報告によると、橈骨動脈アプローチは1993年に報告されて以後、安全性と優位性が示され、現在は標準的な方法になっているとされています[4]。

橈骨動脈から行う場合、CVITの説明では「手首の穿刺の場合、リストバンドのような器具で圧迫止血を行います。これにより、手技終了後すぐに歩行可能です」とされています[3]。一方、大腿動脈から行う場合は、同学会(CVIT)によると「シース抜去後は数時間の安静が必要」で、圧迫による止血のためにベッドの上で過ごす時間が長くなるとされています[3]。国立循環器病研究センターも、大腿動脈アプローチは「治療後の止血のために術後数時間はベッド上で安静を保って圧迫止血する必要がある」と説明しており、患者の負担という点では橈骨動脈のほうが小さいとされています[4]。

両方のアプローチの特徴を並べると、次のようになります。

項目 橈骨動脈(手首) 大腿動脈(足の付け根)
止血の方法 リストバンドのような器具で圧迫止血[3] 用手圧迫または止血デバイスの併用[3]
検査後の安静 手技終了後すぐに歩行可能[3] シース抜去後、数時間の安静が必要[3]
穿刺部の合併症 大腿動脈アプローチより少ないとされる[4] 後腹膜への出血など、体表から気づきにくい出血が起こる場合がある[4]
使えるカテーテルの太さ 血管が細いため制限がある 太いカテーテルを無理なく挿入できる[4]

出典:日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)[3]、国立循環器病研究センターの記事「低侵襲PCI(経皮的冠動脈インターベンション)について」[4]

どちらのアプローチが選ばれるかは、血管の太さや状態、これまでの手術歴、施設の方針などによって医師が判断します。国立循環器病研究センターでは、手首よりもさらに末梢の手の甲側から穿刺する「遠位橈骨動脈アプローチ」も行われており、術後の安静がさらに少なくて済むという特徴があると報告されています[4]。同研究センターの報告では、この遠位橈骨動脈アプローチの実施割合は年々増加傾向にあり、反対に大腿動脈アプローチの割合は減少傾向にあるとされています[4]。

痛みについては、局所麻酔の注射をするときと、血管に管を通す最初の瞬間以外は、強い痛みを感じることはあまりないとされています。MSDマニュアル家庭版では「冠動脈造影検査では不快感が生じることはめったになく、検査時間は通常は30〜50分です」と説明されています[6]。局所麻酔は全身麻酔とは違い、意識ははっきりしたままです。検査中に気になる症状があれば、その場で医療スタッフに伝えることができます。

造影剤を注入する瞬間には、独特の感覚があります。MSDマニュアル家庭版によると、「造影剤を大動脈や心房、心室内に注入すると、造影剤が血流を通して拡散するため、一時的に全身が温かくなったように感じます」とされ、心拍数が上がったり、血圧がわずかに下がったりすることもあると同マニュアルは説明しています[6]。これはほとんどの場合、数十秒でおさまる一時的な感覚であり、事前に熱く感じることがあると知っておくと、当日驚かずに済みます。同マニュアルはさらに、「まれに、造影剤によって心臓の動きが一時的に遅くなったり、停止することさえあります。こうした問題はまれに重篤になることもあり、回復させるために、検査中に勢いよくせきをするよう指示される場合があります」とも説明しています[6]。もし検査中に医療スタッフから強くせきをするよう言われたら、それは想定内の対応であることを知っておくと、落ち着いて従いやすくなります。

検査を受ける前の準備 — 何を伝え、何を持っていくか

検査前の食事や当日の細かい流れは、施設ごとの指示に従うのが基本です。ここでは、多くの施設で共通して確認される準備のポイントを整理します。まず欠かせないのが、服用中の薬をすべて医師に伝えることです。とくに糖尿病の飲み薬や血をさらさらにする薬は、検査前後の扱いが変わることがあるため、お薬手帳や薬の説明書をそのまま持参すると確実です。MSDマニュアル家庭版の解説にもあるとおり、過去に造影剤やヨードでアレルギー症状が出たことがあれば、必ず申告してください[6]。

検査の同意書には、カテーテルを入れる部位・想定される合併症・造影剤の使用について説明が記載されています。わからない言葉があれば、その場で質問して構いません。MSDマニュアル家庭版の説明にあるとおり、局所麻酔で行われるため意識ははっきりしていますが[6]、大腿動脈からの検査では検査後しばらく安静が必要になるため、着替えやすい服装で行くこと、当日の送り迎えを用意しておくことも安心材料になります。検査だけで日帰りになる場合でも、体調の変化に備えて、一人で帰る予定は避け、家族や知人に付き添いを頼んでおくと安心です。

検査前には、血液検査で腎機能(クレアチニン値・eGFR)を確認することが一般的です。腎臓の学会等の合同ガイドラインが示すとおり、腎機能の状態はCINのリスクに直接関わるため[2]、この採血結果が検査の可否やタイミング、点滴による予防策の要否を判断する材料になります。糖尿病でビグアナイド系の薬を飲んでいる方、腎臓の持病がある方、これまでに造影剤で具合が悪くなったことがある方は、同ガイドラインの学会が示すリスクをふまえ、この採血の前後で担当医とより丁寧にすり合わせをすることになると考えられます[2]。妊娠している、またはその可能性がある場合も、X線を使う検査であるため、必ず事前に申告してください。緊急性が高い場合を除き、時期をずらす、被ばくを抑える工夫をするなど、医師と相談したうえで方針が決められます。

合併症とその頻度 — 出血・造影剤腎症・アレルギー

冠動脈造影検査は体に管を入れる侵襲的な検査であるため、頻度は高くないものの合併症の可能性はあります。CVIT(日本心血管インターベンション治療学会)は、考えうる合併症として「血管損傷(穿刺部や冠動脈など)」「血栓塞栓症(脳梗塞など)」「出血(穿刺部、消化管など)」「腎機能障害(造影剤の使用による)」「アレルギーや感染症」「放射線被ばく関連の合併症(皮膚炎など)」を挙げています[3]。なお、この一覧はカテーテルを使った治療(PCI)のページで説明されているもので、CAGはその前段階にあたる検査です。同学会は、これとは別に、バルーンやステントで血管を広げる処置そのものに伴うリスク(末梢塞栓や冠動脈の解離・穿孔など)も挙げていますが[3]、これらは検査だけで治療を行わない場合には基本的に当てはまりません。以下の頻度も、検査のみの場面と治療まで進んだ場面とでは重みが異なることを念頭に読んでください。

頻度としてもっとも多いのは、カテーテルを刺した部分(穿刺部)に関連したものです。国立循環器病研究センターは、カテーテル治療(PCI)について「合併症の約半数は、穿刺部(針を刺した部位)に関連したもので、穿刺部の出血(血腫)、仮性動脈瘤…動脈閉塞などがあります」と説明しています[4]。とくに大腿動脈からの穿刺で止血が不十分だった場合、同研究センターによれば「体表への出血ではなく後腹膜(骨盤内)へ内出血が広がる場合があり、出血量が多くても体表からの観察では出血の存在がわかりにくく、重篤な状態となることがあります」との指摘もあり、注意が必要とされています[4]。

重篤な合併症全体の頻度については、MSDマニュアル家庭版が「心臓カテーテル検査および血管造影検査に伴って、脳卒中や心臓発作、死亡などの重篤な合併症が生じる割合は約1000人に1人です。検査を受けて死亡する人は1万人に1人未満で、その大半はもともと重度の心疾患などを患っていた人です」とまとめています[6]。同マニュアルによれば、合併症や死亡のリスクは高齢者でやや高くなる傾向があるとも述べられています[6]。同マニュアルはこの中身についても触れており、「ショック、けいれん発作、腎臓の異常、突然の心停止など、重篤な合併症が生じることはきわめてまれです」としています[6]。突然の心停止という言葉は驚かれるかもしれませんが、あくまで「きわめてまれ」な事態として挙げられているものであり、検査室では常時モニターと医療スタッフによる監視のもとで検査が行われます。

合併症 頻度・特徴の目安 備考
穿刺部の出血・血腫 カテーテル治療の合併症全体の約半数を占める[4] 大腿動脈アプローチでとくに注意[4]
脳卒中・心臓発作・死亡などの重篤な合併症 約1,000人に1人[6] 検査全体としての頻度
検査に関連した死亡 1万人に1人未満[6] 大半はもともと重い心疾患がある方[6]
造影剤腎症(CIN) 動脈造影を受けた364例の報告で7.1%[2] このうち1.4%は透析が必要になったと報告されている[2]

出典:国立循環器病研究センターの記事「低侵襲PCI(経皮的冠動脈インターベンション)について」[4]、MSDマニュアル家庭版[6]、日本腎臓学会・日本医学放射線学会・日本循環器学会「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018」[2]

アレルギーについては、MSDマニュアル家庭版によると、造影剤の副作用として発疹などの軽いものから、まれに命にかかわるアナフィラキシーまで幅があるとされています[6]。過去に造影剤で具合が悪くなったことがある方は、その経験を必ず担当医に伝えてください。同マニュアルによれば、検査を行うチームは、こうした合併症が起きた場合にすぐ対応できる体制を整えているとされています[6]。

もう一つ知っておきたいのが、カテーテルが心臓の中を通ることによる不整脈です。MSDマニュアル家庭版は「心臓内にカテーテルを挿入すると不整脈が生じる場合があるため、心電図検査で心臓の状態をモニタリングします。通常、カテーテルを別の位置に動かすことで不整脈を消失させることができます」と説明しています[6]。心臓の中を通る電気信号が一時的に乱れるという点では、脈が飛ぶ・途切れる感覚がある不整脈の一種である【房室ブロック】心臓の電気信号が途切れる病気とは?原因・症状・検査・治療と日常生活のポイントとは原因が異なりますが、検査中は同じように心電図で常時見守られていると考えるとイメージしやすいでしょう。同マニュアルはさらに、「非常にまれですが、カテーテルを挿入するときに心臓の壁を傷つけたり穴をあけたりすることがあり、その場合は緊急手術による修復が必要になることもあります」とも述べており、極めてまれな重大合併症の可能性にも触れています[6]。MSDマニュアル家庭版は、こうした事態が起こる頻度自体はきわめて低いとしていますが[6]、ゼロではないことを理解したうえで検査に臨むことが、納得して同意書にサインするための助けになると考えられます。

とくに注意が必要な人 — 腎機能・アレルギー・甲状腺・血をさらさらにする薬

造影剤腎症(CIN)は、ヨード造影剤を使った検査の後に腎機能が一時的に低下する状態です。日本腎臓学会・日本医学放射線学会・日本循環器学会の合同ガイドラインでは、「ヨード造影剤投与後,72時間以内に血清クレアチニン(SCr)値が前値より0.5mg/dL以上または25%以上増加した場合」に造影剤腎症と診断するとされています[2]。

腎臓の学会等の合同ガイドラインが引用する研究によれば、経動脈造影(CAGなど)を受けた364例のコホート研究でCINが全体の7.1%にみられ、うち1.4%は透析が必要になったとされ、そのリスクファクターとして検査前の腎障害・高齢・造影剤使用量・造影検査の方法・糖尿病・合併する心疾患が挙げられています[2]。ただし、腎機能低下(CKD)がCIN発症にどれだけ影響するかは、研究によって結果が分かれています。同ガイドラインが引用する別の大規模研究(PCIを受けた7,230例を対象にした2005年のDangasらの報告)では、CKD(eGFR60未満)の患者1,980例中381例(19.2%)、CKDではない患者5,250例中688例(13.1%)にCINが発症したものの、この研究の結論としては「CKD患者でもCINリスクは高くなかった」とされています[2]。数字だけを見るとCKD群のほうが高く見えますが、この研究ではそれが統計的に意味のある差とは扱われていない点に注意が必要です。

予防のために、腎臓の学会等の合同ガイドラインはCINのリスクが高い慢性腎臓病の患者に対して「生理食塩液を造影検査の前後に経静脈投与をすることを推奨する」としています[2]。検査前に点滴で水分を補うのは、このリスクを下げるための一般的な予防策とされています。CINのリスクをあらかじめ点数化する試みもあり、同ガイドラインが引用するリスクスコアの研究では、点数が高くなるほどCINや透析が必要になるリスクが上がると報告されています[2]。ただし同ガイドライン自身も、このリスクスコアは「現時点で十分な検証がされていないため、その使用を推奨するのは適当ではない」と述べており[2]、あくまで目安の一つとして知っておく数字だと考えられます。

リスクスコアの合計点 造影剤腎症(CIN)のリスク 透析が必要になるリスク
0〜5点 7.5% 0.04%
6〜10点 14.0% 0.12%
11〜15点 26.1% 1.09%
16点以上 57.3% 12.6%

出典:カテーテル治療(PCI)を受けた患者を対象にしたリスクスコア(低血圧・大動脈内バルーンパンピング・うっ血性心不全・75歳以上・貧血・糖尿病・造影剤量・腎機能の点数を合計)。日本腎臓学会・日本医学放射線学会・日本循環器学会の合同ガイドラインが引用[2]

薬を使った予防法も研究されてきましたが、効果がはっきりしないものもあります。腎臓の学会等の合同ガイドラインによれば、ある薬剤(N-アセチルシステイン)については、米国の研究機関などによる大規模なメタ解析でも、造影剤腎症の予防に使うことを推奨するにはエビデンスが不十分と結論づけられているとされ、同ガイドラインも「CIN発症予防としてのNAC投与は推奨しない」としています[2]。ただし同ガイドラインは、腎障害が高度でCINのリスクが高い集団に対するこの薬の効果については、今後の重要な研究課題だとも述べており[2]、この分野では現時点で十分な根拠はまだ確立していない部分があることがうかがえます。

ヨードにアレルギーがある方、糖尿病の飲み薬(ビグアナイド系)を使っている方も、事前の申告が欠かせません。腎臓の学会等の合同ガイドラインは、ビグアナイド系の糖尿病薬を服用中の患者にヨード造影剤を使う場合、「緊急検査時を除きビグアナイド系糖尿病薬を一時的に休薬するなど、適切な処置を行うことを推奨する」としています[2]。休薬するかどうか、いつ再開するかはあくまで医師が患者ごとに判断することであり、自己判断で薬を止めたり続けたりしないようにしてください。血をさらさらにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を服用している方も同様で、穿刺部からの出血のリスクに関わるため、服用中の薬をすべて医師に伝え、検査前の調整が必要かどうかの指示に従うことが大切です。

甲状腺の病気がある方にも注意点があります。日本甲状腺学会・日本内分泌学会の甲状腺クリーゼ診療ガイドライン2017では、甲状腺に直接関連しない誘因の一つとして「ヨード造影剤投与」が挙げられています[7]。同学会のガイドラインによれば、甲状腺クリーゼは、感染症や手術、糖尿病の急激な悪化など複数の誘因が重なって起こることが多いとされていますが[7]、ヨード造影剤の投与もその一つに数えられている以上、甲状腺機能亢進症の治療中、または治療が済んでいない場合は、検査を受ける前に必ずその旨を医師に伝えてください。バセドウ病や甲状腺がんの治療として放射性ヨウ素内用療法(放射性ヨードを飲む治療)の予定がある方も、あわせて申告してください。日本核医学会のガイドラインは、この治療を受ける患者に対して「ヨード造影剤やヨウ素を多く含む含嗽薬の使用は避ける」よう求めており[9]、治療の1~2週間前からヨウ素の摂取を制限する指導が行われるとされています[9]。冠動脈造影検査のヨード造影剤がこの制限に影響することがあるため、放射性ヨウ素の治療や検査の予定がある場合は、どちらを先に行うべきか、担当医同士の連携も含めて確認しておくと安心です。

検査当日から検査後まで — こんな症状はすぐに連絡を

  • 穿刺した部分が急に大きく腫れる、強く痛む、皮膚の色が変わる(国立循環器病研究センターが注意を呼びかける症状)[4]
  • 手や足の先が急にしびれる、冷たくなる、動かしにくい
  • 胸の痛みや締めつけ感が検査後も続く、もしくは新たに出てきた
  • 意識が遠のく、ふらつきが強くて立てない
  • 顔や唇が急に腫れる、息が苦しい(MSDマニュアル家庭版がいうアレルギー反応の可能性)[6]

とくに大腿動脈からの検査を受けた方は、お腹や腰の痛み、顔色が悪くなる・冷や汗が出るといった症状にも注意してください。国立循環器病研究センターの報告によれば、体表からは出血が見えなくても、体の内側(後腹膜)で出血が進んでいる可能性があるとされています[4]。様子を見ようと自己判断せず、指示された連絡先にすぐ電話することが、重症化を防ぐ受診の目安になります。

検査当日から検査後まで — 安静時間・帰宅・入浴・運転

CVITの説明によれば、橈骨動脈からの検査であれば、止血バンドを手首に巻いた状態で、検査後すぐに歩いて病室に戻れることが多いとされています[3]。同学会によると、大腿動脈からの検査では、シースという管を抜いたあと数時間はベッドの上で安静にする必要があります[3]。国立循環器病研究センターの報告では、安静が十分に保てないと、止血が不十分になり、穿刺部の出血や仮性動脈瘤といった合併症のリスクが高まるとされているため、指示された時間はしっかり守ることが大切です[4]。

検査だけで治療の必要がなければ、多くの場合はその日のうちに帰宅できます。MSDマニュアル家庭版でも「患者の状態が非常に悪い場合以外、患者は検査後すぐに帰宅できます」とされています[6]。一方、検査の結果その場でバルーンやステントによる治療(PCI)に進んだ場合は、話が変わります。CVITによると、「慢性冠症候群に対する待機的PCIでは、大きな合併症がなければ、術後1〜2日で退院が可能」とされ、検査のみのときより入院が必要になる場合が多いとされています[3]。

入浴や運転を再開できる時期は、穿刺した場所の状態や、担当医の判断によって変わります。穿刺部に絆創膏や圧迫用のテープが貼られている間は、その部分を強くこすったり、長時間お湯につけたりすることは避けたほうが良いと考えられます。運転についても、めまいやふらつきが残っていないか、担当医に確認してから再開するのが安全です。退院や外来受診の際に、いつから普段の生活に戻ってよいか、具体的に聞いておくことをおすすめします。

仕事への復帰時期も、検査だけだったのか、その場でPCIまで進んだのかによって変わります。検査のみで日帰りだった場合、翌日から普段どおりに過ごせることも多いとされていますが、穿刺部に力がかかる重い荷物を持つ作業や、長時間の立ち仕事は数日控えるよう指示されることがあります。CVITの報告では、PCIに進んだ場合、術後1〜2日での退院が目安とされているとおり[3]、退院後の生活の再開時期についても、より慎重な指示が出されることが多いと考えられます。いずれの場合も、自己判断で活動量を決めず、退院時の説明にしたがってください。

検査でわかること、次のステップ — PCI・FFR・CABGへの流れ

冠動脈造影検査の画像から、冠動脈がどこでどのくらい狭くなっているか、詰まっている場所があるかが分かります。MSDマニュアル家庭版によると、医師はこの画像を使って、「血管形成術(カテーテルで小さなバルーンを挿入して閉塞部を開通させる方法)やステントの留置…が必要かどうかや、血液が閉塞部より先に送られるようにするために冠動脈バイパス術を行うべきかどうかを判断する」とされています[6]。

狭窄が見つかっても、その場ですぐに治療(PCI)に進むとは限りません。日本循環器学会などのガイドラインによれば、狭さが実際に血流にどれくらい影響しているかを確かめるため、カテーテルの先端についたセンサーで血管の前後の圧力差を測るFFR(冠血流予備量比)などの追加検査が行われることがあるとされています[1]。この数値をもとに、薬による治療を続けるか、バルーンやステントで血管を広げるPCIに進むか、あるいは血管が複数箇所で狭くなっている場合などはバイパス手術(CABG)を検討するかが話し合われます。どの選択肢が向いているかは、狭窄の場所・本数・心臓の働き具合など複数の要素で決まるため、一律の答えはなく、担当医との相談が欠かせません。

造影画像だけでは血管の内側の状態がわかりにくい場合、カテーテルの先端に超音波の機器(プローブ)を取り付けて、血管の壁の中まで描出する検査が同時に行われることもあります。MSDマニュアル家庭版では、この手法は血管内超音波検査(IVUS)と呼ばれ、「冠動脈造影検査と同時に行われることが増えてきています」と説明されています[6]。造影剤の影絵のような画像だけでは分かりにくい、プラークの厚みや性質まで確認できるのが特徴で、ステントを入れる位置や大きさを決める際の判断材料としても使われると考えられます。

薬による治療が中心になる場合、動脈硬化の進行を抑える薬や血をさらさらにする薬などが使われることがありますが、種類や量は患者ごとに医師が判断するものです。心臓病の治療薬全般については、心臓病の薬 全解説でも取り上げていますので、あわせてご覧ください。また、胸の痛みの原因は冠動脈の狭窄だけとは限らず、血管が一時的にけいれんする「冠攣縮性狭心症」のようにCAGだけでは見つけにくいタイプもあります。詳しくは夜中の胸痛、原因は心臓のけいれん?日本人に多い冠攣縮性狭心症とはで解説しています。危険因子そのものへの対策として、CVITは「食事療法、運動療法、禁煙といったライフスタイルの改善に加え、薬物治療が大切」であり、とくにコレステロールを下げる治療(脂質低下療法)が重要だと述べています[3]。検査で狭窄が見つからなかった場合でも、この生活習慣の見直しは今後の予防のために引き続き大切とされています。

検査結果がいつ、どのように伝えられるかも気になるところです。検査中に撮影した画像はその場でモニターに映し出されるため、担当医はおおよその結果を検査直後、もしくは当日中に説明できることが多いとされています。ただし、その場でPCIに進むかどうかを含めた最終的な治療方針は、画像だけでなくFFRなどの追加データや患者の全身状態も踏まえて判断されるため、後日あらためて外来で詳しい説明を受ける流れになることもあります。結果の伝え方や次の診察日については、検査前の説明の際に確認しておくと安心です。

目立った狭窄が見つからなかった場合も、それ自体が大切な情報です。日本循環器学会などのガイドラインが、CCTAについて「高い陰性的中率をもって閉塞性CADを除外できる」検査だと位置づけているとおり[1]、より詳しく調べるCAGで狭窄がない、もしくは軽度にとどまると確認できれば、胸の症状の原因が冠動脈以外にある可能性を考える手がかりにもなります。狭心症のように見える症状でも、血管が一時的にけいれんする冠攣縮性狭心症や、食道・筋骨格系など心臓以外が原因のこともあるため、症状が続く場合は結果を担当医とよく話し合い、必要な追加の検査や経過観察の方針を確認することが大切です。

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検査が延期になる・別の方法に変わることがあるのはどんなとき?

予定していた冠動脈造影検査が、当日や事前の診察で延期・変更になることもあります。理由として考えられるのは、たとえば血液検査で腎機能の数値が想定より低いことが判明した場合や、発熱・感染症など体調が万全でない場合、造影剤アレルギーの申告があった場合などです。日本循環器学会などのガイドラインも、冠動脈CT(CCTA)は「高度石灰化(冠動脈カルシウムスコア>1,000)やコントロール不良の高心拍数や心拍不整、また腎機能障害の患者には適さない」と述べており[1]、CTでもCAGでも、患者ごとの状態によって選べる検査が変わってくることがうかがえます。同学会のガイドラインは、CCTAと負荷灌流MRIについて「CKD患者には推奨されない」ともしており(CKDとは慢性腎臓病のことです)、腎機能の状態は検査法の選択そのものに影響する重要な要素だと考えられます[1]。

延期や変更は、検査を受ける方にとって不安が大きいものですが、多くの場合は今のコンディションでより安全に検査を受けるための判断です。指示された採血や体調管理(発熱時の連絡、服薬の申告など)を守ることが、予定どおり安全に検査を受けるための土台になると考えられます。疑問があれば、延期の理由や次の予定について、遠慮せず担当医・看護師に確認してください。

費用と高額療養費制度

冠動脈造影検査は保険適用の検査で、自己負担は年齢や加入している保険の割合(1〜3割)によって決まります。検査だけの日帰りと、その場でPCIに進んで入院した場合とでは、使う材料や入院日数が変わるため、かかる費用も大きく変わります。窓口での支払いが高額になった場合には、ひと月の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」を利用できます。厚生労働省の資料によると、「自己負担限度額は、被保険者の所得に応じて設定される」とされ、年齢や所得の区分によって上限額が変わります[8]。同省の資料では、入院の場合は、窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめる「現物給付化の仕組み」がすでに導入されているとされ、外来についても平成24年4月から同様の仕組みが導入されているとされています[8]。この制度は見直しが行われることがあるため、最新の自己負担額の目安は下記でご確認ください。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

診察に持っていくとよいメモ

次の内容を紙に書いて、検査前の診察に持っていくと説明がスムーズになります。

  • 胸の症状(痛み・圧迫感・息切れなど)がいつから、どんなときに出るか
  • 今飲んでいる薬(糖尿病の薬、血をさらさらにする薬、市販薬・サプリメントも含めて全部)
  • これまでに造影剤やヨードでアレルギー反応が出たことがあるか
  • 腎臓の病気、甲状腺の病気で通院しているか
  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙歴の有無、家族に心臓病になった人がいるか
  • 妊娠している、またはその可能性があるか
  • 医師に聞きたいこと(検査は日帰りか、当日そのまま治療になる可能性はあるか、など)

この記事では、冠動脈造影検査(CAG)と冠動脈CT(CCTA)を比較する際の国際的な診断精度のデータとして、日本循環器学会などのガイドラインが引用する海外のメタ解析を紹介しました。ただし、この数値は特定の基準(FFR)を対照にした研究結果であり、すべての患者や医療機関にそのまま当てはまるとは限りません[1]。また、造影剤アレルギーが起きる正確な頻度や、施設ごとの合併症率のばらつきについては、今回参照した資料に具体的な記載が見当たりませんでした。個々の患者にとってのリスクは、年齢・持病・過去の造影剤の使用歴などによって変わるため、最終的な判断は担当医とよく相談してください。

よくある質問

冠動脈造影検査は痛いですか?
MSDマニュアル家庭版によると、局所麻酔の注射をするときと、カテーテルを入れる最初の瞬間以外は、強い痛みを感じることはあまりないとされています[6]。同マニュアルでは、造影剤を入れる瞬間に体が温かく感じることがあるが、これは正常な反応で、数十秒でおさまることが多いとも説明されています[6]。
冠動脈造影検査は日帰りでできますか?
MSDマニュアル家庭版によれば、検査だけであれば、状態が悪くない限り、検査後すぐに帰宅できるとされています[6]。ただし施設や患者の状態によって日帰りか1泊かの扱いは異なるため、事前に担当医に確認してください。
入院は何日くらいになりますか?
検査のみで治療の必要がなければ日帰りか1泊で退院できることが多いですが、CVITの報告では、その場でPCI(バルーンやステントの治療)に進んだ場合は、大きな合併症がなければ術後1〜2日での退院が目安とされています[3]。
造影剤で腎臓は大丈夫ですか?
腎機能が正常な方でのリスクは高くないと考えられていますが、腎臓の学会等の合同ガイドラインによると、もともと腎機能が低下している方や、腎障害のある糖尿病の方は造影剤腎症(CIN)のリスクが上がるとされています[2]。同ガイドラインによれば、リスクが高いと判断された場合は、点滴による予防策がとられることがあります[2]。
検査後いつから運転・入浴・仕事に戻れますか?
穿刺した場所の状態やめまいの有無によって変わるため、退院時に担当医に個別に確認するのが安全です。穿刺部を強くこすったり長時間お湯につけたりすることは、傷が落ち着くまで避けたほうが良いと考えられます。
冠動脈CT(CCTA)とどちらを受けるべきですか?
どちらが向いているかは、症状の強さやこれまでの検査結果によって医師が判断します。日本循環器学会などのガイドラインによれば、CCTAは体への負担が少なく、まず異常が「ない」ことを確かめる検査として選ばれやすい一方、症状や検査結果から冠動脈の問題が強く疑われる場合は、最初から冠動脈造影(CAG)に進むことが合理的とされる場合もあります[1]。
手首(橈骨動脈)と足の付け根(大腿動脈)、どちらが安心ですか?
国立循環器病研究センターの報告では、橈骨動脈からのアプローチは、穿刺部の合併症の頻度が大腿動脈アプローチより少ないとされ、現在の標準的な方法になっています[4]。ただし、太いカテーテルが必要な場合など、大腿動脈が選ばれる場面もあります。
検査でアレルギー反応が出たらどうなりますか?
MSDマニュアル家庭版によると、発疹などの軽い症状から、まれに命にかかわるアナフィラキシーまで幅があるとされています[6]。同マニュアルでは、検査を行うチームは、こうした反応が起きた場合にすぐ対応できるよう備えているとされています[6]。過去に造影剤で具合が悪くなったことがあれば、検査前に必ず伝えてください。
甲状腺の病気があっても検査を受けられますか?
日本甲状腺学会・日本内分泌学会のガイドラインによると、ヨード造影剤の投与は、甲状腺クリーゼ(急激に症状が悪化する状態)の誘因の一つとして挙げられています[7]。甲状腺機能亢進症の治療中、または未治療の場合は、検査前に必ず医師に申告してください。
血をさらさらにする薬を飲んでいますが検査を受けられますか?
多くの場合は服用したまま検査を受けられますが、穿刺部からの出血リスクに関わるため、薬の種類やタイミングの調整が必要かどうかは医師が個別に判断します。服用中の薬は自己判断で止めず、必ず事前に医師へ伝えてください。
検査結果はいつわかりますか?
画像はその場でモニターに映し出されるため、担当医はおおよその結果を検査直後か当日中に説明できることが多いとされています。ただしPCIに進むかどうかなどの最終的な治療方針は、追加のデータもふまえて後日あらためて説明されることもあります。結果の伝え方は施設によって異なるため、検査前に確認しておくと安心です。
検査費用はどれくらいかかりますか?
保険適用のため自己負担は1〜3割ですが、検査だけの日帰りか、その場でPCI(治療)に進んで入院するかで金額は大きく変わります。厚生労働省の資料によれば、窓口での支払いが高額になる場合は、高額療養費制度で自己負担に上限を設けられます[8]。具体的な目安は本文中の高額療養費の案内をご覧ください。
冠動脈造影検査を受けたら、そのままPCI(治療)に進むのですか?
いいえ、必ずしもそうとは限りません。日本循環器学会などのガイドラインによれば、狭窄が見つかっても、FFRなどで血流への影響を確認したうえで、薬による治療を続ける選択肢もあります[1]。狭窄の場所・本数や心臓の働き具合などを踏まえて、担当医と相談しながら方針を決めていくことになります。
検査当日、それとも前日から準備することはありますか?
当日の食事や服薬の指示は施設によって異なるため、必ず個別の説明に従ってください。MSDマニュアル家庭版の解説にもあるとおり、共通して大切なのは、服用中の薬(とくに糖尿病薬や血をさらさらにする薬)とアレルギー歴を事前に正確に伝えることです[6]。腎臓の学会等の合同ガイドラインが示すとおり、検査前には腎機能を確認する採血が行われることが一般的で、この結果が検査の進め方に影響することがあります[2]。
健康診断で異常がなくても冠動脈造影検査を勧められることはありますか?
あります。日本循環器学会などのガイドラインによれば、安静時の心電図に異常がなくても、典型的な狭心症の症状(運動で悪化する胸の締めつけ感など)や危険因子(高血圧・糖尿病・喫煙・家族歴など)から検査前確率が高いと判断されれば、運動負荷心電図や画像検査、CAGが検討されることがあるとされています[1]。症状の経過を医師にできるだけ具体的に伝えることが、適切な検査選びにつながります。

参考文献

  1. 日本循環器学会/日本心血管インターベンション治療学会/日本心臓病学会「2022年JCSガイドラインフォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療」2022年 https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Nakano.pdf
  2. 日本腎臓学会・日本医学放射線学会・日本循環器学会「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018」日本腎臓学会誌 2019;61(7):933-1081 https://cdn.jsn.or.jp/data/guideline-201911.pdf
  3. 日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)「PCI(心臓の血管のカテーテル治療)」 https://www.cvit.jp/patient/info_p/pci.php
  4. 国立循環器病研究センター「低侵襲PCI(経皮的冠動脈インターベンション)について」 https://www.ncvc.go.jp/coronary2/column/20211209_07.html
  5. 国立循環器病研究センター「冠動脈CTでここまでわかる 一歩進んだ冠動脈CT活用法」 https://www.ncvc.go.jp/coronary2/column/20211213_08.html
  6. MSDマニュアル家庭版「心臓カテーテル検査と冠動脈造影検査」 MSDマニュアル家庭版:心臓カテーテル検査と冠動脈造影検査
  7. 日本甲状腺学会・日本内分泌学会「甲状腺クリーゼ診療ガイドライン2017 Digest版」 https://www.japanthyroid.jp/doctor/img/thyroid_storm_or_crisis.pdf
  8. 厚生労働省「高額療養費制度の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/001707301.pdf
  9. 日本核医学会分科会 腫瘍・免疫核医学研究会 甲状腺RI治療委員会「放射性ヨウ素内用療法に関するガイドライン 第1部 甲状腺癌の放射性ヨウ素内用療法に関するガイドライン」第6版(原本ドメインが本サーバーから到達不可のため、Wayback Machineのアーカイブを掲載) http://web.archive.org/web/20260122224151/https://oncology.jsnm.org/sites/default/files/pdf/thyroid-guideline_2018-06.pdf

更新日:2026年7月25日。この記事の内容に誤りや古い情報があるとお気づきの場合は、編集部までお知らせください。事実関係を確認のうえ、訂正いたします。

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本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。

Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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