のどの痛み：原因から治し方まで専門家が徹底解説【症状別・市販薬・病院の選び方】

あなたの喉の痛みはどのタイプ？代表的な症状を知る

一言で「のどの痛み」と言っても、その感じ方は人それぞれです。自分の症状を正確に表現することは、原因を特定し、適切な対処法を見つけるための第一歩です。ここでは、医師が診断の手がかりとすることの多い、代表的な痛みの種類を詳しく解説します。³

どんな痛みを感じますか？

• ヒリヒリ、乾燥感: のどが焼けるような、乾いた感じの痛みです。空気が乾燥している冬場や、水分不足の時によく見られます。³
• イガイガ、ムズムズ: のどに何かが引っかかっているような、むず痒い感覚です。アレルギー反応や、炎症の初期段階で現れることがあります。³
• 唾を飲み込むと痛い: 何もしていなくても痛いですが、特に食べ物や唾液を飲み込む動作で鋭い痛みを感じます。これは扁桃炎など、のどの炎症が強いことを示す典型的な症状です。³
• 声がれ（嗄声）: 声がかすれたり、出にくくなったりする症状です。炎症が声帯にまで及んでいる可能性を示唆します。カラオケなどでの声の使いすぎでも起こります。¹⁰
• 咽喉頭異常感症（ヒステリー球）: のどに球のようなものが詰まっている、圧迫されているような異物感です。検査をしても物理的な原因が見つからない場合が多く、ストレスや自律神経の乱れ、胃食道逆流症などが関連していると考えられています。⁹

これらの感覚の違いは、痛みの原因を探るための重要なヒントになります。自分の症状を観察し、医師に伝える際の参考にしてください。

なぜ喉は痛くなる？主な原因を徹底解剖

のどの痛みに悩む多くの人が「抗生物質が欲しい」と考えがちですが、実はその考えは多くの場合、正しくありません。この章では、のどの痛みを引き起こす真犯人を特定していきます。ウイルス、細菌、そして生活習慣に至るまで、原因を正しく理解することが、適切な治療への最短ルートです。

原因① ウイルス感染：ほとんどの喉の痛みの“犯人”

驚くかもしれませんが、成人ののどの痛みのうち、実に80～90%はウイルス感染が原因です。¹²¹³ これは、抗生物質が全く効かないことを意味します。ウイルスがのどの粘膜細胞に侵入し、細胞を破壊することで炎症反応が引き起こされ、痛みを感じる神経が刺激されるのです。³

のどの痛みを引き起こす主なウイルスには以下のようなものがあります。³

• ライノウイルス（いわゆる「普通のかぜ」の主な原因）
• インフルエンザウイルス
• アデノウイルス
• コロナウイルス（COVID-19を含む）
• RSウイルス

ウイルス性ののどの痛みの特徴は、他の症状を伴うことが多い点です。具体的には、咳、鼻水、鼻づまり、声がれ、結膜炎（目の充血）などが同時に現れることが多くあります。¹² これらの症状があれば、原因はウイルスである可能性が非常に高く、抗生物質は不要と判断する重要な手がかりになります。

原因② 細菌感染：特に注意したい「溶連菌」

ウイルス性が大半を占める一方で、細菌感染が原因となる場合もあり、その中でも特に注意が必要なのが「A群溶血性レンサ球菌（Group A Streptococcus – GAS）」、通称「溶連菌（ようれんきん）」です。¹⁴ 近年、日本では国立感染症研究所（NIID）からも報告があるように、重症化することもある劇症型溶血性レンサ球菌感染症（STSS）への関心が高まっており、その原因菌である溶連菌への正しい知識を持つことは非常に重要です。¹⁹²¹

溶連菌による咽頭炎は、放置すると心臓や腎臓に深刻な合併症（リウマチ熱、急性糸球体腎炎）を引き起こす可能性があるため、抗生物質による適切な治療が不可欠です。¹⁵ 以下の特徴的な症状が見られる場合は、溶連菌感染を疑い、速やかに医療機関を受診すべきです。

• 突然の高熱（$38^{\circ}$C以上）²²
• 扁桃腺が真っ赤に腫れ、白い点々や膜のようなもの（滲出物）が付着している²²
• 首のリンパ節が腫れて痛む
• 体に細かく赤い発疹が出る（猩紅熱）¹⁷
• 舌が赤くブツブツになる（苺舌）¹⁷
• 特記事項: ウイルス性と異なり、咳や鼻水は伴わないことが多い¹²

原因③ 環境と生活習慣

感染症以外にも、私たちの日常生活に潜む要因がのどの痛みを引き起こすことがあります。

• 空気の乾燥: 特に冬場やエアコンの効いた室内では空気が乾燥し、のどの粘膜のバリア機能が低下します。これにより、ウイルスや細菌が侵入しやすくなります。³⁶
• 喫煙・飲酒: タバコの煙やアルコールは、のどの粘膜を直接刺激し、炎症を引き起こす代表的な原因です。⁸
• アレルギー: 日本では非常に多くの人が悩まされている花粉症（スギ、ヒノキなど）や、ハウスダスト、ペットの毛などが原因でアレルギー反応が起こることがあります。²⁵ 鼻水がのどに流れる「後鼻漏（こうびろう）」を引き起こし、のどのイガイガ感や痛みの原因となります。⁶
• 声の酷使: カラオケやスポーツ観戦で大声を出したり、職業柄（教師、歌手など）で長時間話し続けたりすると、声帯やその周辺の筋肉が疲弊し、炎症を起こしてしまいます。⁶
• 胃食道逆流症 (GERD): 胃酸が食道を逆流し、のどまで達することで粘膜が焼けて炎症を起こす病気です。特に朝起きた時ののどの痛みや胸やけ、慢性的な咳がある場合は、この病気を疑う必要があります。⁶

その他に考えられる原因

頻度は低いものの、見逃してはならない重篤な病気が隠れている可能性もあります。

• 扁桃炎・扁桃周囲膿瘍: 扁桃炎が悪化し、扁桃腺の周りに膿が溜まった状態です。激しいのどの痛み、食事もできないほどの嚥下困難、口が開きにくくなるなどの症状が特徴です。¹⁰
• 急性喉頭蓋炎: のどの奥にある喉頭蓋（気管の入り口のフタ）が急激に腫れ、気道を塞いでしまう、命に関わる緊急性の高い病気です。息苦しさや「ヒューヒュー」という呼吸音が特徴です。²⁷
• その他の疾患: 伝染性単核球症（キス病とも呼ばれるウイルス感染症）や、まれに喉頭や咽頭の腫瘍などが原因となることもあります。⁸

ウイルス性 vs 細菌性 症状比較表

原因を判断するための一助として、以下の比較表を参考にしてください。

病院に行くべきタイミング

ほとんどののどの痛みは自宅でのケアで改善しますが、中には専門的な治療や緊急の対応が必要なケースもあります。どのタイミングで、どの診療科を受診すべきかを知っておくことは非常に重要です。

すぐに受診すべき「危険なサイン」（Red Flags）

以下の症状は、命に関わる重篤な病気の可能性を示す「レッドフラッグ」です。一つでも当てはまる場合は、夜間や休日であっても、ためらわずに救急外来を受診するか、救急車を呼んでください。

• 呼吸困難・息を吸う時にヒューヒュー、ゼーゼーという音がする: 気道が狭くなっているサインで、急性喉頭蓋炎などの可能性があります。¹²
• 唾液さえも飲み込めない、よだれが口から垂れる: のどが極度に腫れていることを示唆し、扁桃周囲膿瘍などが疑われます。¹
• 口がほとんど開かない（開口障害）: 扁桃周囲膿瘍の典型的な症状です。¹⁰
• 意識が朦朧とする、ぐったりして動けないなど、全身状態が著しく悪い: 敗血症など、重篤な感染症の可能性があります。²⁹
• 首が硬直して動かせない、または異常に腫れている: 首の深部の感染症が疑われます。²⁹
• 全身に広がる発疹: 溶連菌感染症（猩紅熱）や他の感染症の兆候かもしれません。¹²

内科？耳鼻咽喉科？適切な診療科の選び方

「のどが痛いとき、内科と耳鼻科、どっちに行けばいいの？」これは多くの人が抱く疑問です。² 適切な診療科を選ぶためのガイドラインを以下に示します。³⁰

内科を受診すべき場合:

• のどの痛みに加えて、咳、痰、発熱、頭痛、筋肉痛、腹痛、下痢など、全身の症状が主体の場合。内科医はインフルエンザや肺炎など、全身の疾患を総合的に診断できます。³⁰
• 糖尿病や心臓病、喘息などの持病があり、全身的な管理が必要な方。³⁰
• 全身的な合併症のリスクが高い高齢者の方。³⁰

耳鼻咽喉科（耳鼻科）を受診すべき場合:

• 症状がのどに集中しており、特に痛みが激しい、飲み込むのが非常につらい場合。¹
• 声がれが続く、のどの異物感（魚の骨が刺さったなど）がある、めまいや耳の症状を伴うなど、耳・鼻・のどに特有の症状がある場合。⁹
• 内科で治療しても症状が改善しない場合。
• 耳鼻咽喉科医は、ファイバースコープ（細い内視鏡）などの専門的な器具を用いて、肉眼では見えないのどの奥や声帯の状態を直接観察し、より正確な診断を下すことができます。³⁰

医師が使う判断ツール：マックアイザック・スコアとは

診察室で医師がどのように考えているのか、その一端を知ることで、医療への理解が深まります。医師は溶連菌感染症の可能性を評価するために、「マックアイザック・スコア」という点数付けのツールを使うことがあります。¹⁴ これは、患者さんの症状や年齢から、溶連菌感染の確率を予測するためのものです。³⁴

【マックアイザック・スコアの計算方法】

• $38^{\circ}$C以上の発熱: +1点
• 咳がない: +1点
• 前頸部（首の前側）のリンパ節の腫れと圧痛: +1点
• 扁桃腺の腫大または滲出物（白い膿）: +1点
• 年齢:
  • 3歳～14歳: +1点
  • 15歳～44歳: 0点
  • 45歳以上: -1点

【スコアの解釈】³⁵

• 0～1点: 溶連菌の可能性は非常に低い。通常、検査や抗生物質は不要で、症状を和らげる対症療法が中心となります。
• 2～3点: 可能性は中程度。医師は診断を確定するために、溶連菌迅速検査（綿棒でのどをこする検査）を行うことが多いです。²² 陽性であれば抗生物質が処方されます。
• 4点以上: 溶連菌の可能性が高い。症状が典型的であれば、検査結果を待たずに抗生物質の治療を開始することもあります。

このスコアを知っておくと、なぜ医師が検査を勧めたり、あるいは抗生物質を処方しなかったりするのか、その判断の背景を理解する助けになります。

自宅でできる！喉の痛みを和らげるセルフケア完全ガイド

医療機関を受診するまでの間や、ウイルス性の軽い喉の痛みの場合、適切なセルフケアが回復を大きく左右します。ここでは、すぐに実践できる効果的な方法を網羅的に紹介します。

回復の基本：安静・水分補給・加湿

この3つは、喉の痛みを和らげるための最も重要な基本原則です。

• 安静: 十分な睡眠をとることは、免疫システムがウイルスや細菌と戦うために不可欠です。また、「声の安静」も重要で、話すことを控え、特に大声やささやき声（のどに負担がかかる）を避けることで、声帯や喉の炎症の悪化を防ぎます。¹⁵
• 水分補給: こまめに水分を摂ることで、喉の粘膜を潤し、脱水を防ぎます。白湯や麦茶など、温かい飲み物が喉を落ち着かせるのに効果的です。ただし、カフェインやアルコールを含む飲み物は利尿作用があり、かえって脱水を進めてしまうため避けるべきです。⁷
• 加湿: 乾燥した空気は喉の痛みを悪化させる最大の敵です。加湿器を使用して室内の湿度を40～60%に保つのが理想的です。²⁴ 加湿器がない場合は、濡れタオルを部屋に干したり、入浴時の蒸気を吸い込んだりするのも良い方法です。就寝時にマスクを着用すると、自分の呼気に含まれる湿気で喉の乾燥を防ぐことができます。

何を食べる？喉にやさしい食べ物・飲み物

喉が痛いときは、何を食べるかも重要です。刺激の少ない、栄養のあるものを選びましょう。⁷ 日本の家庭でもおなじみの食材には、痛みを和らげるのに役立つものがたくさんあります。

おすすめの食べ物・飲み物:

• のどごしの良いもの: おかゆ、雑炊、味噌汁、うどん、プリン、ヨーグルト、ゼリー、アイスクリーム、豆腐、茶わん蒸し、すりおろしたりんごなど。
• はちみつ: 天然の抗菌・抗炎症作用があり、喉の痛みを和らげる効果が知られています。お湯や紅茶に溶かして飲むのがおすすめです。
  【重要注意】1歳未満の乳児には、乳児ボツリヌス症のリスクがあるため、絶対にはちみつを与えないでください。⁷
• 生姜（しょうが）: 体を温め、抗炎症作用のある成分を含みます。飲み物やスープに加えると良いでしょう。
• 大根（だいこん）: 大根おろしに含まれる辛味成分イソチオシアネートには、殺菌作用や抗炎症作用があるとされています。はちみつと混ぜて「はちみつ大根」にするのも伝統的な知恵です。
• ネギ: 日本の民間療法で古くから使われてきた食材です。首に巻く方法もありますが、味噌汁などに入れて食べるのが手軽です。

避けるべき食べ物・飲み物:

• 刺激物: 香辛料の効いた辛いもの、酸味の強いもの（柑橘類、酢の物など）。
• 硬いもの、乾燥したもの: ポテトチップス、せんべい、ナッツ類などは、喉の粘膜を物理的に傷つける可能性があります。
• 極端に熱いもの、冷たいもの: 刺激になることがあります。
• アルコールとカフェイン: 前述の通り、脱水を引き起こすため避けるべきです。

うがいの正しい方法：塩水からうがい薬まで

うがいは、喉のウイルスや細菌、ホコリなどを洗い流し、粘膜を潤す効果的な方法です。

• ぬるま湯の塩水うがい: 最も手軽で推奨される方法の一つです。コップ1杯（約240ml）のぬるま湯に、小さじ1/4〜1/2杯（約1.25〜2.5g）の食塩を溶かして作ります。塩水には穏やかな抗炎症作用があり、喉の腫れを和らげるのに役立ちます。¹⁵
• 緑茶うがい: 緑茶に含まれるカテキンには抗菌作用があるため、うがいに使用するのも良いでしょう。³
• 市販のうがい薬: ポビドンヨードやアズレンスルホン酸ナトリウムなどの成分を含む市販のうがい薬も有効です。ポビドンヨードは殺菌作用が強いですが、特有の味があり、甲状腺疾患のある方や妊婦、授乳中の方は使用に注意が必要です。アズレンは抗炎症作用が主体で、刺激が少ないのが特徴です。³

日本の市販薬（OTC）選び方ガイド

薬局には数多くの喉の薬が並んでおり、どれを選べば良いか迷ってしまうものです。ここでは、製品名ではなく「有効成分」に注目して、自分の症状に最適な薬を見つけるための知識を解説します。

喉の痛みに効く主な有効成分を知ろう

市販の風邪薬や喉の薬には、様々な成分が組み合わされています。主な有効成分の働きを理解しましょう。

鎮痛・抗炎症成分

痛みそのものを抑える成分です。

• イブプロフェン: 痛みと炎症を抑える効果が強い非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）です。発熱を伴う中等度〜重度の痛みに効果的です。²⁴
• ロキソプロフェン: イブプロフェンと同様に強力なNSAIDsで、薬剤師による説明が必要な第1類医薬品に分類されます。⁴¹
• アセトアミノフェン: 胃への負担が少なく、比較的安全性が高い解熱鎮痛成分です。子どもや妊婦（医師の指示のもと）にも使われることがあります。抗炎症作用はNSAIDsより穏やかです。¹⁵

抗炎症・抗プラスミン成分

喉の「腫れ」や「赤み」といった炎症反応を直接抑える成分です。

• トラネキサム酸: 日本の市販薬で非常によく見られる特徴的な成分です。炎症を引き起こす物質「プラスミン」の働きを抑え、喉の腫れや赤み、痛みを効果的に鎮めます。³⁸

殺菌・消毒成分

喉の粘膜に付着した細菌などを殺菌する成分で、主にスプレーやトローチに含まれます。

• ポビドンヨード、ヨウ素: 幅広い細菌やウイルスに対する強い殺菌効果があります。³
• 塩化セチルピリジニウム (CPC): トローチやスプレーに広く使われている殺菌成分です。

去痰成分

痰が絡むことで喉の痛みが悪化している場合に有効です。

• アンブロキソール塩酸塩、カルボシステイン: 痰の粘り気を減らし、排出しやすくすることで、咳や喉への刺激を和らげます。²⁴

剤形の選び方：錠剤・スプレー・トローチ

症状やライフスタイルに合わせて、最適な剤形を選びましょう。

• 錠剤・カプセル（飲み薬）: 喉の痛みが強く、発熱や頭痛など全身症状を伴う場合に適しています。体の中から全身に作用します。例：コルゲンコーワIB錠TXα、ルルアタックEXなど。⁴¹
• のどスプレー: 炎症を起こしている患部に直接薬剤を届けることができ、即効性が期待できます。痛みをすぐに和らげたい時や、局所的な殺菌をしたい時に便利です。例：のどぬ～るスプレーなど。³
• トローチ・のど飴: 口の中でゆっくり溶かすことで唾液の分泌を促し、喉を潤す効果があります。殺菌成分や抗炎症成分を含む「医薬品」や「指定医薬部外品」に分類される製品は、より積極的な効果が期待できます。「食品」に分類される一般的なのど飴とは区別して選びましょう。⁷

有効成分早見表

処方薬と漢方薬：専門的な治療の選択肢

セルフケアや市販薬で改善しない場合や、細菌感染が疑われる場合には、医師による専門的な治療が必要になります。日本でよく用いられる処方薬や漢方薬について解説します。

処方薬① 抗菌薬（抗生物質）：医師の診断があった場合のみ

繰り返しになりますが、抗生物質は細菌感染症にのみ有効であり、医師が溶連菌感染症などと診断した場合にのみ処方されます。¹⁵ 自己判断で過去の残り薬を飲むことは、耐性菌を生む原因となり非常に危険ですので絶対にやめてください。

• 第一選択薬: 日本の診療ガイドラインでは、溶連菌咽頭炎に対しては「アモキシシリン」というペニシリン系の抗生物質が第一に推奨されています。これは、効果が高く、耐性菌が少ないためです。¹⁴¹⁸
• 耐性菌の問題: かつてよく使われていたマクロライド系（クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど）の抗生物質は、近年日本で耐性を持つ溶連菌が増えているため、第一選択とはならなくなっています。¹¹
• 服薬遵守の重要性: 症状が数日で良くなっても、処方された抗生物質は必ず最後まで飲み切ることが極めて重要です。途中でやめてしまうと、生き残った細菌が再燃したり、耐性菌になったり、リウマチ熱などの重い合併症を引き起こすリスクが高まります。¹⁵

処方薬② 漢方薬：伝統医学からのアプローチ

日本の医療では、西洋医学と並行して、保険適用で漢方薬が処方されることが一般的です。体質や症状のバランスを整えるという観点から、喉の症状に対して有効な漢方薬がいくつもあります。

• 桔梗湯（ききょうとう）: 喉の痛みや扁桃腺の腫れに対する代表的な漢方薬です。³⁸
• 麦門冬湯（ばくもんどうとう）: 空咳が続き、喉が乾燥してイガイガする、痰が切れにくいといった症状に適しています。³⁸
• 銀翹散（ぎんぎょうさん）: 発熱、頭痛、喉の痛みを伴う風邪のひき始めによく用いられます。⁴⁰
• 小柴胡湯加桔梗石膏（しょうさいことうかききょうせっこう）: 扁桃炎が長引いたり、繰り返したりする場合に使われることがあります。⁴⁰
• 半夏厚朴湯（はんげこうぼくとう）: 喉に何かが詰まったような異物感（梅核気）に特に効果的で、ストレスや不安が関連する場合によく選ばれます。⁹

喉の痛みを予防する：日々の習慣で守りを固める

治療も大切ですが、そもそも喉の痛みを引き起こさないための予防策を日々の生活に取り入れることが最も重要です。

喉を守るための毎日の習慣

• 手洗い: 感染症予防の基本中の基本です。石鹸と流水で20秒以上かけて、指の間や手首まで丁寧に洗いましょう。⁸
• うがい: 外から帰った後や、人混みに行った後にうがいをする習慣は、喉に付着した病原体を洗い流すのに役立ちます。³
• マスクの着用: 感染症の流行期や公共交通機関など、人が密集する場所でのマスク着用は、飛沫感染を防ぐと同時に、吸い込む空気を加湿する効果もあり、喉の保護に繋がります。³⁹
• 顔に触らない: ウイルスや細菌は、手から目、鼻、口の粘膜を介して体内に侵入します。無意識に顔を触る癖をなくすよう心がけましょう。⁸
• 適度な湿度を保つ: 前述の通り、加湿器などを利用して室内の湿度を適切に保つことは、喉の粘膜のバリア機能を維持するために非常に効果的です。⁶
• 健康的な生活習慣: バランスの取れた食事（特に粘膜の健康を保つビタミンAやC）、十分な睡眠、ストレス管理は、免疫力を高め、感染症にかかりにくい体を作るための基礎となります。⁷
• 刺激物を避ける: 喫煙（受動喫煙を含む）や過度な飲酒は、喉の防御機能を低下させます。これらを控えることも重要な予防策です。⁸

よくある質問 (FAQ)

結論

のどの痛みは、ありふれた症状でありながら、その背後には様々な原因が隠されています。この記事を通じて、皆様がご自身の症状を正しく理解し、適切な行動をとるための一助となれたなら幸いです。最後に、重要なポイントを改めてまとめます。

• のどの痛みの多くはウイルス性で自然に治ります。抗生物質の乱用は避けましょう。
• 「安静・水分補給・加湿」は、どんな原因であっても回復を助ける基本です。
• 呼吸困難などの「危険なサイン」を見逃さず、ためらわずに医療機関を受診してください。
• 症状に応じて「内科」と「耳鼻咽喉科」を賢く使い分け、専門的な診断を受けましょう。
• 市販薬は有効成分を理解して選ぶことが、効果的かつ安全なセルフケアの鍵です。

自分の体を大切にし、のどの小さなサインに耳を傾けること。それが、日々の健康を守るための最も確実な一歩です。長引く不調や不安があれば、決して一人で抱え込まず、専門家である医師に相談してください。