喪失感を乗り越えるための完全ガイド:悲嘆の仕組みから心の回復、専門的ケアのすべて
この記事でわかること
目次
- あなたの心と体に何が起きているのか?- 悲嘆(グリーフ)の科学的理解
- 「正常な悲嘆」と「遷延性悲嘆症(複雑性悲嘆)」の境界線 — APAの診断目安
- あらかじめ「心の準備」ができていると、複雑性悲嘆は軽くなるか
- 医療機関との「つながり」を保つ工夫 — グリーフカードという取り組み
- 精神科・心療内科の受診に抵抗を感じるときは — 精神保健福祉センターという選択肢
- 「頑張って」は逆効果? — 言ってはいけない言葉、支えになる接し方
- 医療機関独自の取り組み — 手紙や家族会という形
- そもそも「グリーフケア」とは何を指す言葉か
- 「なぜ」という問いと、自分を責める気持ちについて
- 専門家による支援 - グリーフケアと心理療法(受診の目安)
- 遷延性悲嘆症になりやすいのはどんな人か — APAが示すリスク要因
- 脳科学から見た悲嘆 — なぜ「わかっているのに」つらいのか
- 複雑性悲嘆への対処 — 薬より認知行動療法(CGT)が中心
- 自分自身で心をケアする - 科学的根拠に基づくセルフケアと対処法
- ステップ1:感情と向き合う — 抑圧せず、安全に表現する
- ステップ2:思考を整理する — 「新しい生活」に目を向ける
- ステップ3:身体をいたわる — 心と体は繋がっている
- ステップ4:故人との「新しい絆」を築く
- あなたは一人ではない - 社会的サポートの活用法
- どこに相談すればいい? — 診療科と全国の相談窓口
- 子ども(きょうだい)に「死」をどう伝えるか — 厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きより
- 周囲はどう寄り添えばいいか — 「そのままを受けとめる」という基本(家族や友人との関わり方)
- 喪失からの成長 - 悲嘆の経験がもたらすもの(グリーフワークを経た変化の可能性)
- よくある質問
- 結論
- 参考文献
大切な人を失った後の強い悲しみ・怒り・罪悪感は「悲嘆(グリーフ)」と呼ばれ、ほとんどの人にとって自然で正常な反応です。深い悲しみ、怒り、罪悪感、そして空虚感——これらの感情は、大切な人を失った喪失感に対するごく自然な反応であり、多くの場合、時間とともに少しずつ形を変えていきます。米国精神医学会(APA)によると、死別から時間が経っても日常生活に支障が出るほどの強い苦痛が続く場合は「遷延性悲嘆症(Prolonged Grief Disorder, PGD)」という診断名がつくことがあり、成人でおよそ4〜15%がこの状態に該当すると推定されています[1]。
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米国精神医学会(APA)が示す目安は、成人で死別から少なくとも12か月(子どもは6か月)経っても、ほぼ毎日のように強い苦痛が続き、日常生活が回らない状態です[1]。この状態が疑われるときは、一人で抱え込まず精神科・心療内科や下記の相談窓口に連絡することが勧められています。
- 喪失感を伴う悲嘆は「異常」ではなく、喪失に対する全人的な自然な反応(感情・思考・身体・行動に現れる)[2]
- 米国精神医学会(APA)の遷延性悲嘆症の基準では、成人は死別から12か月・子どもは6か月以上、ほぼ毎日強い苦痛が続く場合に遷延性悲嘆症(PGD)が疑われる[1]
- 米国精神医学会(APA)によるとPGD該当は成人の約4〜15%と推定される(Prigerson et al. 2021; Doering et al. 2022)[1]
- 複雑性悲嘆を抱える人の75.2%がうつ病やPTSDを併発しているとの報告があり、まずそちらの治療が必要な場合もある[3]
- 薬物療法より、複雑性悲嘆に焦点化した認知行動療法(CGT)が有効とされている[3]。強い自責感・希死念慮があるときはすぐに相談窓口・医療機関へ
編集方針:JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関(厚生労働省・こども家庭庁)・学会(米国精神医学会、日本サイコオンコロジー学会)・査読論文と照合して作成し、最終確認は人の目で行っています。本記事は医師による個別診断・治療の代わりにはなりません。悲嘆の基準や治療法はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点の情報)。
簡易セルフチェック:その悲しみは「専門的ケア」を考えるサインかもしれません
以下は米国精神医学会(APA)が示す遷延性悲嘆症(PGD)の目安を踏まえた確認項目です[1]。診断ではなく、相談を検討する目安としてご利用ください。
- □ 死別から成人は12か月、子どもは6か月以上が経過している
- □ ほぼ毎日、強い苦痛(アイデンティティの混乱・強い自責感・現実感のなさ・故人を思い出させるものを避ける・情緒的な麻痺・生きる意味を感じられない・強い孤独感など)が1か月以上続いている
- □ 仕事・家事・人付き合いなど日常生活に明らかな支障が出ている
- □ 周囲の文化・宗教的な服喪の慣習と比べても、悲嘆の程度や長さが見合わない
複数当てはまる場合は、精神科・心療内科、または後述の相談窓口に一度連絡することが勧められます。当てはまる項目がたとえ少なくても、「消えたい」という考えが浮かぶ場合は、期間にかかわらずすぐに相談窓口へ連絡してください。このチェックはあくまで相談を考えるきっかけであり、確定診断は必ず医療機関で行われます。一人だけで判断せず、周囲の人や専門家と一緒に、いまの状況をゆっくりと確認することも大切です。
あなたの心と体に何が起きているのか?- 悲嘆(グリーフ)の科学的理解
悲嘆(グリーフ)とは、厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きにおいて「喪失に対する全人的な反応(精神的、行動的、社会的、身体的、スピリチュアル)であり、その経験のプロセスである」と定義されています[2]。同調査研究の手引き(厚生労働省調査研究)によると、大切な人を失った経験は、他者と比較できない個人的なものであり、時間をかけて経験していくプロセスとされます[2]。
厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きでは、悲嘆反応を「心理的・感情的反応」「認知的反応」「行動的反応」「生理的・身体的反応」という4つの側面に整理しています(下表)。同調査研究の手引きによると、表れ方や強さ、続く期間は一人ひとり異なるとされています[2]。
| 反応の種類 | 具体的な現れ方 |
|---|---|
| 心理的・感情的反応 | 悲しみ、ショック、怒り、罪悪感や自責の念、思慕、後悔の念や心残り、不安や恐怖、孤独感 など[2] |
| 認知的反応 | 非現実感、否認、記憶力・集中力の低下、混乱、論理的な思考が困難になる など[2] |
| 行動的反応 | 涙が止まらない、引きこもる、故人を探す、落ち着かない、過活動、探索行動 など[2] |
| 生理的・身体的反応 | 睡眠障害、食欲不振、頭痛、めまい、疲労、息切れ、震え など[2] |
出典:こども家庭庁「子どもを亡くした家族への支援の手引き」表1(一般的な悲嘆反応)[2]
また、同調査研究の手引きによると、亡くなった人の誕生日やクリスマスなど、家族が特別な時間を過ごした記念日に悲嘆が強く再燃する「記念日反応」が起こりやすいことも知られています[2]。同調査研究の手引きは、多くの場合、悲嘆は波を打ちながらも、時間とともにその振れ幅が少しずつ小さくなっていく経過をたどるとしています[2]。
厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きは、悲嘆の感じ方やプロセスは一人ひとり異なり、これからどのような感情が生じても、その気持ちを否定しなくてよいことをあらかじめ伝えておくことが、家族への支援の一つになるとしています[2]。同調査研究の手引きは、家族であっても悲しみの表れ方や対処方法はそれぞれ異なるため、こうした情報は両親だけでなく祖父母など家族の誰に対しても伝えることが望ましいとしています[2]。
出典:American Psychiatric Association「Prolonged Grief Disorder」/日本サイコオンコロジー学会 遺族ケアガイドライン(2022)をもとにJHO編集部が作図[1][5]
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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
「正常な悲嘆」と「遷延性悲嘆症(複雑性悲嘆)」の境界線 — APAの診断目安
米国精神医学会(APA)は、悲嘆の強さそのものではなく「どのくらいの期間、どの程度の頻度と強さで続いているか」を遷延性悲嘆症(PGD)の目安としています[1]。APAによると、診断のためには喪失から少なくとも成人で1年、子ども・青年で6か月が経過していることに加え、同学会は、下表の症状のうち少なくとも3つが、診断の直前1か月間ほぼ毎日みられることが必要としています[1]。
| 基準の項目 | APAが示す目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 期間 | 成人:死別から12か月以上 子ども・青年:6か月以上 |
社会・文化・宗教的な服喪期間と比べても長いことが前提[1] |
| 頻度・強さ | 該当症状のうち3つ以上が、診断直前の1か月間ほぼ毎日 | アイデンティティの混乱・強い自責感・現実感のなさ・回避・情緒麻痺・無意味感・強い孤独感 など[1] |
| 成人での推定該当率 | 4〜15% | Prigerson et al. 2021; Doering et al. 2022 の推計に基づく[1] |
出典:American Psychiatric Association「Prolonged Grief Disorder」[1]
米国精神医学会(APA)はさらに、突然の死や不自然な状況下での死別、社会的な支えの乏しさ、精神疾患の既往などがPGDのリスク要因になりうるとしています[1]。米国心理学会(APA〈心理学会側〉)も、悲嘆は誰にでも起こりうる自然な反応であり、時間の経過とともに和らぐのが一般的だとした上で、長引く場合には専門家への相談を勧めています[8]。米国精神医学会(APA)によれば、DSM-5-TRに遷延性悲嘆症の診断基準が盛り込まれたことにより、臨床家が正常な悲嘆と、持続的で生活に支障をきたす悲嘆とを区別するための共通の基準を使えるようになったとされています[1]。
あらかじめ「心の準備」ができていると、複雑性悲嘆は軽くなるか
日本サイコオンコロジー学会 遺族ケアガイドライン作成委員会の手引きは、突然の事故や自死とは異なり、がんなど闘病期間を経て亡くなる場合には、死別の前から家族に予防的に関われる機会があるとしています[5]。同手引きによれば、死別の前に大切な人が亡くなることへの心の準備ができていると、死別後の複雑性悲嘆が軽減されるといわれています[5]。
同手引きは、家族に受容を一律に強いることは負担になりうるとしたうえで、最期の療養場所や会っておきたい人など患者の意向を家族が確認できるよう促すこと、死が近づく際のサインや対処法といった実用的な情報を提供することが、遺族の後悔を減らす支援になるとしています[5]。同手引きはまた、大切な人が亡くなった状況について家族がどう理解しているかを確認することも、死別後の複雑性悲嘆に関連する支援の一つだとしています[5]。
同手引きは、複雑性悲嘆・うつ病・希死念慮や自殺企図のリスクがありそうな遺族に対しては、継続的な支援や精神保健の専門家への紹介を行うことを勧めています[5]。うつ病を伴う場合には、抗うつ薬が悲しみそのものを解消するわけではないものの、生活への支障の程度を小さくすることに役立つ場合があるともされています[5]。
医療機関との「つながり」を保つ工夫 — グリーフカードという取り組み
厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きは、子どもを亡くした家族を支援するツールとして「グリーフカード」を紹介しています[2]。同手引きによると、これは子どもの死に立ち会った医療者と、遺された家族とをつなぐためのカードで、平成21年に厚生労働科学研究費補助金による研究班が作成したものです[2]。
同手引きは、子どもを亡くした直後には、家族が医療者からの支援を受け入れる準備ができていないことも多いとした上で、「困ったときにはいつでも来院してほしい」というメッセージと連絡窓口を記したグリーフカードを渡すことで、家族が「もう一度病院に行っていいのだ」「病院に受け入れられている」と感じ、安心して相談に訪れられるようになるとしています[2]。同手引きによれば、グリーフカードを受け取った家族から、死別後1〜3か月ほどで実際に連絡が来る例が報告されています[2]。子どもを亡くした場合に限らず、「困ったときに頼れる窓口がある」と分かっていること自体が、遺族の安心につながる考え方だといえます。同手引きは、こうしたカードは元々インフルエンザ脳症で亡くなった子どもの家族に向けて作られたものだとしつつ、他の原因で亡くなった子どもの家族に対しても、十分にその役割を果たすとしています[2]。
精神科・心療内科の受診に抵抗を感じるときは — 精神保健福祉センターという選択肢
厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きは、悲嘆はある範囲を超えると、うつ病・心的外傷後ストレス障害(PTSD)・不安障害など精神疾患につながることがあり、過去に既往歴がある場合には再発・悪化する可能性もあるとしています[2]。同手引きは、精神疾患の症状とまではいえなくても、悲嘆の反応が非常に大きく不安を感じている場合には、都道府県ごとに精神保健福祉法で設置が定められている「精神保健福祉センター」を頼る選択肢もあるとしています[2]。精神保健福祉センターは、こころの健康の保持と向上を目的とした精神保健福祉相談を受け付けているとされます[2]。
同手引きは、日本では精神科・心療内科の受診や心理カウンセリングに対して「自分の心の安寧のために誰もが利用する身近なもの」という意識が薄く、心理的な抵抗感を感じる人が多い現状があるとした上で、これらは特別なものではなく、気持ちを整理するために誰もが利用しうる身近な手段の一つであることを伝えることが大切だとしています[2]。同手引きはまた、「もっと詳しく相談したいと伝えたら、心療内科を紹介すると言われて見捨てられた気持ちになった」という当事者の声も紹介しており、まず家族の気持ちを受け止めた上で紹介することの大切さを述べています[2]。
「頑張って」は逆効果? — 言ってはいけない言葉、支えになる接し方
厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きは、悲しむ人を前にすると「頑張って」「しっかりしなさい」「若いのだから、また次が」といった励ましの言葉をかけたくなるものの、そうした言葉が逆に遺族を傷つけてしまうことがあると述べています[2]。同手引きによれば、遺族は周囲の心ない言葉に傷つきながらも反発する気力がなく、逆に、言われた通りにできない自分を弱い人間だと感じて自分を責めてしまうことすらあるとされています[2]。
同手引きは、「新しい人生に進まないとだめ」といったアドバイス、「あなたが頑張らないとだめ」といった適応の鼓舞、「見た目より元気そう」といった過小評価、「あなたの気持ちはわかります」と安易に理解したような態度は、「役に立たない援助」とされていると紹介しています[2]。反対に、安心感を与える援助としては「関心をもって受け止める」「そばにいる」ことが挙げられており、遺族が「わかってもらえている」「そのままを受け入れられている」と実感できるように接することが大切だとされています[2]。
同手引きが示す「グリーフケアのポイント」は次のとおりです[2]。
- その人にとっての真実を尊重して聴く姿勢をもつ(受容と共感)
- 今の状態(悲嘆反応)は自然な反応であることを伝える
- 感情表出を支える(語ること・泣くことを支える、怒りを受け止める)
- 感情を語ることに抵抗感をもっている人には、語ることを強要しない
- 「いま」という言葉を使いながら対話し、いまを生きられるように支援する
- 身体および精神症状を把握する
同手引きは、悲嘆への反応には個人差があり、ショックが強くて言語化できない場合や、沈黙の時間が必要な場合もあるため、無理に話させようとせず、その人なりのペースで話すのを待つ対応が求められるとしています[2]。また、他者の強い悲嘆に寄り添い続ける経験は、支える側にも心の負担が生じることがあるとし、支える人自身のケアにも留意する必要があるとしています[2]。これは、遺族を支える家族・友人にも当てはまる視点です。
医療機関独自の取り組み — 手紙や家族会という形
厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きは、病院によっては、家族が亡くなった子どもへの手紙を書く機会を設けたり、当事者同士が語り合える家族会を運営したりするなど、独自の家族ケアを行っているところもあると紹介しています[2]。同手引きによれば、家族にとっては、子どもを見送った医療機関で信頼できるスタッフがこうした活動に携わってくれること自体が心強く、「頑張った子どもと自分を知る存在がここにある」と感じられることが、大きな心の支えになる場合もあるとされています[2]。子どもを亡くした場合に限らず、通院・入院していた医療機関に、遺族向けの取り組みがあるかどうかを尋ねてみることも、一つの選択肢になりえます。
そもそも「グリーフケア」とは何を指す言葉か
厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きは、グリーフケアという言葉が「死後における支援」と受け取られがちだとしつつ、広い意味では「家族への直接的・意図的な支援だけでなく、患者の死の前後を問わず、結果として家族の適応過程にとって何らかの助けになる行い」を指すとしています(坂口幸弘『死生学入門 死別の悲しみを学ぶ』からの引用として紹介)[2]。
同手引きは、遺族の多くが、死後の直接的な支援はグリーフケアの一部にすぎず、むしろ患者の生前・闘病中に医療者が患者と家族のために手を尽くした診療行為そのものや、関わった医療者の人間的な配慮こそが、死別後の悲嘆を根底で支えると感じていると紹介しています[2]。つまりグリーフケアとは、死後の特別な家族ケアに限られたものではなく、患者や家族とどのように向き合っていくかという、より広い問題だといえます[2]。
「なぜ」という問いと、自分を責める気持ちについて
厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きは、大切な人を亡くした家族が抱く「なぜ」という問いには、実は2つの種類があると整理しています[2]。一つは「なぜ、この人は亡くなったのか」という、医学的な説明によって答えが得られうる問いです[2]。もう一つは「なぜ、自分の大切な人が」という、医学的には答えられず、本人自身が納得できる着地点を見つけていく必要がある問いだとされています[2]。
同調査研究の手引きは、「もっと早く気づいていれば」「もっとこうしていれば」と自分を責め、罪悪感に苛まれる遺族が多いとした上で、罪悪感の多くは不合理な思考であり、実際に何が起きたのかという現実を理解することで心の負担が軽くなることがあるとしています[2]。医学的な説明や事実確認は、そのための大きな支えになるとされています[2]。同調査研究の手引きはまた、死の原因が明確でない場合には、原因究明そのものが遺族支援(グリーフケア)の一環になりうるとも述べています[2]。
専門家による支援 – グリーフケアと心理療法(受診の目安)
すぐに相談・受診を考えたほうがよいサイン
遷延性悲嘆症になりやすいのはどんな人か — APAが示すリスク要因
米国精神医学会(APA)は、遷延性悲嘆症(PGD)のリスク要因として、社会人口統計学的・社会経済的な特徴、精神疾患の既往歴、死の状況、社会的支えの乏しさ、トラウマ体験などを挙げています[1]。同学会によると、特に、突然の死や不自然な状況下での死別ではPGDのリスクが高まるとされています(Lenferink and Boelen 2023; Buur et al. 2024)[1]。
また、高齢であること、女性であること、不安型の愛着スタイル、社会経済的地位の低さ、希死念慮があることも、PGDの重症度と有意に関連することが報告されています(Buur et al. 2024; Musetti et al. 2025)[1]。うつ病の既往がある人や、死別前から強い悲嘆を抱えていた人、故人と非常に親密・情緒的に依存する関係にあった人も、PGDを発症するリスクが高い可能性があるとされています(Sekowski and Prigerson 2022)[1]。同学会はまた、故人との続柄によってもリスクが異なり、子どもや配偶者・パートナーを亡くした場合には他の続柄に比べてPGDのリスクが高い傾向があるとしています[1]。こうしたリスク要因はあくまで「なりやすさ」を示すものであり、当てはまるからといって必ずPGDになるわけではなく、逆に当てはまらない人が長引く悲嘆に苦しむこともあります。大切なのは、リスク要因の有無にかかわらず、日常生活に支障が出るほどの苦痛が続く場合には専門家に相談することです。ご自身やご家族の状況をリスト上のどれかに当てはめて安心しすぎたり、逆に不安になりすぎたりせず、あくまで一つの参考情報として受け止めてください。さらに同学会は、子どもや配偶者・パートナーを亡くした場合、殺人など暴力的な死因の場合、自宅ではなく集中治療室(ICU)での死別の場合なども、リスクに影響しうると述べています[1]。同学会によれば、社会的な支えの乏しさも、それ自体が独立したリスク要因になるとされています(Rodriguez-Villar et al. 2024)[1]。
APAは治療についても触れており、ほとんどの人では死別に伴う症状は時間とともに軽減し日常生活への影響も少ないため専門的な治療は必要ないとしつつ、米国精神医学会(APA)は、遷延性悲嘆症まで強まった場合には認知行動療法(CBT)の要素を用いた治療が症状の軽減に有効であることが確認されているとしています[1]。同学会が挙げる具体例として、喪失の現実を受け入れることと、故人のいない世界で目標や満足感を取り戻すことに焦点を当てる「Prolonged Grief Therapy」(Szuhany et al. 2021)や、故人へのオンラインでのメッセージ表現を用いる手法が紹介されています[1]。また、CBTは遷延性悲嘆症に伴う不眠などの症状の改善にも有効であることが研究で示されているとAPAは述べています[1]。同学会は、CBTが子どもや青年の遷延性悲嘆の症状にも有効である可能性が研究で示されているとしています(Melhem et al. 2013; Boelen et al. 2021)[1]。さらに、死別を経験した人同士の支援グループやピアサポートも、孤立を防ぎ社会的なつながりを保つうえで役立ち、それ自体が遷延性悲嘆症のリスクを下げる可能性があるとされています(Rodriguez-Villar et al. 2024)[1]。なお、APAは、悲嘆特有の症状を対象とした治療薬は現時点では存在しないが、遷延性悲嘆症の症状緩和に役立つ薬剤の研究が進行中だとしています[1]。
APAによると、遷延性悲嘆症は米国精神医学会が発行する診断基準マニュアルDSM-5-TR(2022年3月発行)に新たに加えられた診断名で、数十年にわたる複数の研究により、社会・文化・宗教的に想定される範囲を超えた死別の困難を抱える人が多いことが示唆され、2年間の審査・意見公募のプロセスを経て追加されたと説明されています[1]。
脳科学から見た悲嘆 — なぜ「わかっているのに」つらいのか
米国心理学会(APA)が紹介する、アリゾナ大学のメアリー=フランシス・オコナー博士による研究では、愛着の対象を失った後も脳が長年の「習慣」としてその人の存在を予測し続けるため、頭では死を理解していても、感情や体が追いつくまでに時間がかかると説明されています[9]。米国精神医学会(APA)が紹介する記事によれば、オコナー博士は、この脳の学習プロセスゆえに、悲嘆は「乗り越えて終わりにする」ものというより、故人のいない世界に少しずつ適応していくプロセスに近いと述べています[9]。
今回参照した資料には、日本人特有の悲嘆の脳内メカニズムを扱った大規模研究は見当たりませんでした。上記は主に欧米での研究知見であり、文化差についてはさらなる検証が必要です。
複雑性悲嘆への対処 — 薬より認知行動療法(CGT)が中心
日本サイコオンコロジー学会のガイドラインによると、複雑性悲嘆(死別後の激しい悲嘆が長期化し、強い心理的苦痛や社会機能の障害をきたしている状態)は、ICD-11(2019年)やDSM-5-TR(2022年)で「遷延性悲嘆症」として精神障害に位置づけられました[3]。同ガイドラインは、複雑性悲嘆の治療について現時点で薬物療法の有効性は十分に示されておらず、複雑性悲嘆に焦点化した認知行動療法が中心になるとしています[3]。
日本サイコオンコロジー学会のガイドラインが挙げる代表的なプログラムは、米国のキャサリン・シア博士らが開発した「複雑性悲嘆治療(Complicated Grief Treatment, CGT)」です[3]。同ガイドラインは、複雑性悲嘆を有する人の75.2%がうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)を併発しているというデータを示し、自殺行動を伴う重度のうつ病や侵入症状が著しいPTSDがある場合には、まずこれらの精神疾患の治療を優先する必要があるとしています[3]。
同ガイドラインの解説によると、CGTは対人関係療法・曝露療法・動機づけ面接の要素を含み、「悲しみに向き合うこと(喪失過程)」と「新しい生活に取り組むこと(回復過程)」の2つを行き来しながら生活することを重視する二重過程モデルに基づいています[3]。実施形式は週1回・計16回のセッション(1回50〜90分)で、同ガイドラインによれば、序盤のセッション1〜3では治療者と患者の信頼関係づくりと悲嘆についての心理教育を行い、セッション4〜9では死別の現実に段階的に向き合う「再訪問(revisiting)」という中核的な作業が行われます[3]。同ガイドラインは、重症度の評価にはPrigersonらが作成した自記式尺度Inventory of Complicated Grief(ICG、19項目)の日本語版が使われ、シア博士らは30点以上を治療対象の目安としていると紹介しています[3]。
同ガイドラインによると、CGTの中核である「再訪問」には、亡くなったことを知った時のことを視覚的に想起して語る「想像の再訪問(imaginal revisiting)」に加え、故人のアルバムや遺品に触れる、お墓参りに行くなど、避けている行動に段階的に取り組む「状況再訪問(situational revisiting)」があります[3]。同ガイドラインは、悲嘆が統合された形になるためには故人との永続的な絆を形成することが重要だと考えられており、それを促す方法として、故人に伝えたいことを話し、故人だったらどう答えるかを想像する「想像上の会話(imaginal conversation)」を紹介しています[3]。同ガイドラインによれば、このエクササイズは、遺族が抱えやすい「助けられなくて申し訳ない」という罪悪感を考え直すうえでも有用とされ、故人になって考えることで、故人は自分を責めていないと気づける場合があるとされています[3]。セッション10では治療の経過や変化を振り返り、後半のプログラム内容を決めていくとされています[3]。
同ガイドラインは、CGTが悲嘆のプロセスを進める助けとなるものであるため、治療終了時には、それまで回避していた悲しみをより強く感じることもあるとしつつ、悲しむこと自体は病的なことではなく、故人だけでなく周囲の大切な人とのつながりを回復し、自分の人生の意味を見出すことで、悲しみと共に前に進めるようになるとしています[3]。回数が限定され構造化されたプログラムだからこそ、遺族は非常につらい死別の現実に段階的に向き合うことができるとも述べられています[3]。
自分自身で心をケアする – 科学的根拠に基づくセルフケアと対処法
厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きは、悲嘆に対応する家族支援において、感情を表出できること(語ること・泣くことを支え、怒りも受け止める)が重要だとしています[2]。日本サイコオンコロジー学会が示す遺族の心理的サポートに関する手引き(一般医療者用)も、遺族の話を評価や助言を挟まず聴くこと、遺族自身のペースを尊重することの大切さを述べています[5]。
日本サイコオンコロジー学会の同調査研究の手引きは、大切な人との思い出をただ話すこと自体が、死を受け入れていく過程の一つになりうるとし、遺族の悲しみに思いやりをもって傾聴することの大切さを強調しています[5]。同調査研究の手引きは、無理に悲嘆を表出させる必要はなく、遺族が話したいと思っている内容をじっくり聞くことが基本だとしています[5]。また、同調査研究の手引きは、「悲嘆で苦しんでいるのはおかしいのではないか」「自分だけ心が弱いのではないか」と悩む遺族も少なくないため、大切な人を失った悲しみは当然のことであり、「正しい悲嘆のプロセス」というものはなく個人差があることを伝えることも遺族の安心につながるとしています[5]。
今回参照した資料の範囲では、セルフケアの具体的な手順を一つのプログラムとして示した公的な日本語資料は見当たりませんでした。この点は、こども家庭庁・厚生労働省の手引きが医療者・支援者向けの記載を中心としているためと考えられ、本人向けの体系的なセルフケア指針については今後の公的資料の充実が待たれます。ただし、専門的な治療の枠組みであるCGT(複雑性悲嘆治療)が重視する4つの視点は、自分自身の心のケアを考えるうえでも参考になります。
ステップ1:感情と向き合う — 抑圧せず、安全に表現する
日本サイコオンコロジー学会のガイドラインは、悲嘆の苦痛を回避せず段階的に向き合うことで、苦痛が徐々に和らいでいくとしています[3]。同ガイドラインが紹介する「想像上の会話」のように、故人に伝えたいことを言葉にする作業は、抑え込んでいた感情に安全に向き合う一つの方法とされています[3]。
ステップ2:思考を整理する — 「新しい生活」に目を向ける
同ガイドラインが基づく二重過程モデルは、悲しみに向き合うこと(喪失過程)と、新しい生活に取り組むこと(回復過程)の2つを行き来しながら生活することが重要だとしています[3]。自分を責める考えに偏りすぎず、日常の目標や、故人のいない生活の中でできることにも目を向けるバランスが大切だとされています[3]。
ステップ3:身体をいたわる — 心と体は繋がっている
厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きが示すとおり、悲嘆は睡眠障害・食欲不振・頭痛・めまい・疲労・息切れ・震えなど、身体面にも現れます[2]。同ガイドラインは、自分をいたわったり、楽しい感情を味わったりすることを避けている遺族も多いとした上で、好きな場所に出かけるなど、喜びや楽しみを味わう小さな行動に取り組むことも治療の一部としています[3]。
ステップ4:故人との「新しい絆」を築く
同ガイドラインは、悲嘆が統合された形になるためには故人との永続的な絆を形成することが重要だとしており、お墓参りや遺品に触れることなど、避けていた行動に一つずつ取り組んでいくことで、大切な人の思い出に触れられるようになるとしています[3]。こうした絆は、故人を忘れることとは正反対のものであり、故人を心の中に大切に位置づけながら、新しい生活を歩んでいくための支えになるとされています。
なお、悲嘆をきっかけに気分の落ち込みが長引き、うつ病の症状に当てはまるかどうか気になる場合は、うつ病とは何か?症状、原因、治療法もあわせてご確認ください。
あなたは一人ではない – 社会的サポートの活用法
特定非営利活動法人 全国自死遺族総合支援センター(グリーフサポートリンク)は、遺族同士が経験を語り合う「わかちあいの会」を各地で案内しています[7]。同センターは、「互いを尊重し合いながら、ありのままの思いを語り合い、聴き合う」場だとこの集いを説明しており、地域の状況や主催者の考え方によって一定のルールを定め、参加者が安心して語り合えるよう努めているとしています[7]。同センターは、遺族が孤立せず、同じような経験をした人と気持ちを共有できる場を提供することを目的として活動しています[6]。
日本サイコオンコロジー学会のガイドラインでも、遺族が孤立しないよう、家族や友人、地域のサポートに加えて、こうした自助グループやピアサポートを活用することの意義が示されています[5]。子どもを亡くした親のグリーフについては、子供を亡くした悲しみと共に生きる:魂の再生へでも詳しく取り上げています。
厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きは、悲嘆への適応には長い時間がかかるため、ピア・サポートグループや自治体の相談窓口など、複数の支援を組み合わせて活用することが大切だとしています[2]。同手引きは、同じ経験をした当事者同士で感情や気持ちを語り合う時間を持つことで、共感が得られたり孤立感が軽減されたりすることがあるとする一方、グループごとに理念や特徴が異なるため、自分に合わない場合には無理をして参加を続ける必要はないとも述べています[2]。
どこに相談すればいい? — 診療科と全国の相談窓口
強い悲嘆が続き、専門的ケアを検討する場合の相談先としては、精神科・心療内科のほか、臨床心理士・公認心理師によるカウンセリングがあります。医師とカウンセラーの役割や選び方の詳細は、日本における心の専門家 完全ガイドで解説しています。
すぐに話を聞いてほしいときは、厚生労働省「まもろうよ こころ」が案内する電話相談窓口が利用できます[4]。悲嘆以外の心の不調について幅広く知りたい場合は、精神疾患・心の病気 完全ガイドもあわせてご覧ください。
| 窓口 | 電話番号 | 受付時間 |
|---|---|---|
| よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター) | 0120-279-338(フリーダイヤル) | 24時間対応[4] |
| いのちの電話(一般社団法人 日本いのちの電話連盟) | 0120-783-556(フリーダイヤル) | 毎日16時〜21時/毎月10日は8時〜翌日8時[4] |
| #いのちSOS(特定非営利活動法人 自殺対策支援センターライフリンク) | 0120-061-338(フリーダイヤル) | 24時間365日対応[4] |
| こころの健康相談統一ダイヤル(厚生労働省) | 0570-064-556(ナビダイヤル・通話料あり) | 電話をかけた所在地の都道府県・政令指定都市の相談窓口へ接続。曜日・時間は地域により異なる[4] |
出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」電話相談窓口[4](掲載の電話番号・受付時間は変更されることがあるため、利用前に上記出典ページで最新情報をご確認ください)
このほか、厚生労働省「まもろうよ こころ」では、状況や年代に応じて選べる窓口として、#いのちSOS(特定非営利活動法人 自殺対策支援センターライフリンク)とこころの健康相談統一ダイヤルも紹介されています[4]。#いのちSOSは電話番号0120-061-338(フリーダイヤル・無料)で24時間365日相談を受け付けており、「死にたい」「消えたい」というつらい気持ちも含めて相談員が状況を一緒に整理してくれます[4]。こころの健康相談統一ダイヤルは電話番号0570-064-556(ナビダイヤル、通話料がかかります)で、電話をかけた所在地の都道府県・政令指定都市が実施する公的な相談窓口に接続する仕組みで、対応の曜日・時間は地域によって異なるとされています[4]。いずれの窓口も匿名で利用でき、フリーダイヤル(無料)またはナビダイヤル(通話料が発生)かがあらかじめ案内されているため、家計への負担を心配せずに選べる点も特徴です[4]。
電話をかけるのがためらわれる場合、厚生労働省「まもろうよ こころ」は、LINEなどのSNSやチャットで相談できる団体も案内しています[4]。年齢や性別を問わず利用でき、年代やよく使うSNSに合わせて団体を選べるとされています[4]。また同サイトは、電話をかけた所在地の都道府県・政令指定都市が実施する「こころの健康電話相談」等の公的な相談窓口につながる「こころの健康相談統一ダイヤル」も案内しており、対応の曜日・時間は都道府県によって異なるとされています[4]。
子どもを亡くした親のための自助グループとしては、全国自死遺族連絡会が案内する「つむぎの会」や、NPO法人SIDS家族の会などの活動があります。詳しい活動内容は各団体の公式サイトでご確認ください。
| 相談先の種類 | 具体例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 医療機関 | 精神科・心療内科 | 診断・薬物療法・専門的な心理療法(CGTなど)が受けられる[3] |
| カウンセリング | 臨床心理士・公認心理師 | 医師の診断は行わないが、継続的な対話によるサポートが受けられる |
| 電話相談 | よりそいホットライン・いのちの電話 | 匿名・無料で今すぐ話を聞いてもらえる[4] |
| 自助グループ | わかちあいの会・つむぎの会・SIDS家族の会 など | 同じ経験をした遺族同士で気持ちを共有できる[7] |
出典:日本サイコオンコロジー学会ガイドライン[3]/厚生労働省「まもろうよ こころ」[4]/全国自死遺族総合支援センター[7]をもとにJHO編集部が整理
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
受診・相談前に整理しておきたいこと(印刷してお使いください)
- いつ、誰を亡くしたか(続柄・時期)
- 死別から何か月・何年が経過しているか
- ほぼ毎日感じる苦痛や症状(例:強い自責感、現実感のなさ、故人を思い出させるものを避ける など)
- 仕事・家事・人付き合いにどのような支障が出ているか
- すでに服用している薬、他にかかっている診療科があれば
- 「消えたい」といった考えが浮かぶことがあるか(あれば必ず伝える)
子ども(きょうだい)に「死」をどう伝えるか — 厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きより
家族の中で誰かが亡くなったとき、遺された子ども(きょうだい)にどう伝えればよいか悩む家族は少なくありません。厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きは、小さな子どもに死の話をするのをためらう家族が多いことを認めつつ、言語でのコミュニケーションができる年齢であれば「死」の事実を率直に伝えることを勧めています[2]。同調査研究の手引きでは、「天使になった」「眠っている」といった曖昧な言葉でごまかさないことがポイントとされています[2]。
同調査研究の手引きが挙げる伝え方の要点は次のとおりです[2]。
- 死の事実を、その年代に合わせて分かりやすく伝える
- きょうだい自身が「自分のせいで亡くなった」と思い込んでいる場合は、そうではないとはっきり伝える
- きょうだい自身も同じように死んでしまうのではと心配している場合は、その心配が不要であることを伝える
- 亡くなった子と同じように、きょうだいのことも大切に思っていることを言葉で伝える
- 心的外傷などによる変調が見られたら、外部の相談窓口につながれることを家族に伝えておく
厚生労働省の調査研究事業としてまとめられたこども家庭庁の手引きは、こうした伝え方の助言や、必要に応じて医療者からきょうだいに直接説明する場を設ける提案も、家族の負担を軽くする支援の一つだとしています[2]。
同手引きはまた、子どもを亡くした夫婦がすぐに次の妊娠・出産を考えることは珍しくない一方、逆に慎重になりすぎて、次の妊娠を考えること自体が気持ちの負担になる場合もあるとしています[2]。次の妊娠を望みながらも、亡くなった子どもへの申し訳なさから葛藤する家族もいるとされ、次の妊娠・出産への希望や姿勢は人によって、また時期によっても変わるものだとされています[2]。同手引きは、両親から次の妊娠について相談されたときには、その時の心理状態を踏まえて丁寧に対応し、必要に応じて遺伝カウンセリングや生殖心理カウンセリング、グリーフカウンセリングといった専門家を紹介することも支援の一つだとしています[2]。
周囲はどう寄り添えばいいか — 「そのままを受けとめる」という基本(家族や友人との関わり方)
全国自死遺族総合支援センター(グリーフサポートリンク)は、遺族支援において大切なのは「評価しない、説得しない、教えないこと」であり、その時々の気持ちや状況をそのまま聴き、受けとめ、寄り添うことだとしています[6]。同センターは、周囲が先取りして助言することが、かえって遺族の気持ちを傷つけてしまうことがあるため、「そのままを受けとめる → 耳を傾ける → 見守る・寄り添う → 生活上の困難への対処を支援する」という順序が大切だとしています[6]。
同センターはまた、悲嘆(グリーフ)の基本理解として、次のような考え方を挙げています[6]。
- グリーフは、喪失に対する人間としての自然な反応である
- 自然な反応として「よい悲しみ方」「正しい悲しみ方」も「悪い悲しみ方」「間違った悲しみ方」もない
- 死因・故人との関係・年齢・性格・生活環境・成育歴など、さまざまな要素が悲嘆の表れ方に関係する
- 悲嘆の表し方、強さ、期間には、それぞれのペースがある
- 故人が記憶にある限り、グリーフに終わりはない
喪失からの成長 – 悲嘆の経験がもたらすもの(グリーフワークを経た変化の可能性)
全国自死遺族総合支援センターは、喪失感を含む様々な苦悩や葛藤を経て人生の再構築をはかる道のりを「グリーフワーク」と呼び、生活面の困難が解決に向かい、理解し合える仲間や安心して感情を表せる場があるとき、グリーフは変化する可能性があるとしています[6]。同センターが示す「グリーフの変容の可能性」は次のとおりです[6]。
| 側面 | 変化の例 |
|---|---|
| 感情面 | 感情が揺れることがあっても、安定した状態に戻ることができる/大きな苦痛を伴わずに故人を思い出し、偲ぶことができる[6] |
| 身体面 | 健康の維持や回復に前向きになる/他者の健康にも気を配るようになる[6] |
| 行動面 | 新しい人間関係の構築を目指す/停止していた活動を再開したり、新しい活動に取り組む[6] |
| 思考面 | 社会とのつながりを再認識し、自分にできることを模索する/未来についてのビジョンを持つこともある[6] |
出典:特定非営利活動法人 全国自死遺族総合支援センター(グリーフサポートリンク)「遺族支援とは」[6]
同センターは、「過去」に起きた事実は誰も変えられないが、「今」と「未来」の生活や考え方、それに伴う気持ちは変わり得るとし、苦しい道のりを一人で歩むのではなく、傍らに寄り添う人がいることの意義を伝えています[6]。
本記事は、こども家庭庁・厚生労働省・米国精神医学会(APA)・日本サイコオンコロジー学会などの公的機関・学会資料に基づいて作成しています。悲嘆に対する心理療法の効果には個人差があり、また文化的背景による違いについて、今回参照した資料には十分な記載が見当たりませんでした。本記事で紹介した基準・数値・治療法は、いずれも参照時点(2026年7月)の公表情報に基づくものであり、今後のガイドライン改定によって変わる可能性があります。診断や治療方針は、必ず精神科・心療内科の医師にご相談ください。
よくある質問
悲嘆はいつまで続くのが「正常」なのでしょうか?
「複雑性悲嘆」と「遷延性悲嘆症」は同じものですか?
複雑性悲嘆は薬で治りますか?
複雑性悲嘆の人はうつ病も併発しやすいのですか?
相談できる電話窓口を教えてください
「記念日反応」とは何ですか?
子どもを亡くした場合、悲嘆の期間の基準は同じですか?
家族や友人にどう接してもらえばよいですか?
同じ経験をした人と話せる場はありますか?
遷延性悲嘆症になりやすい人の特徴はありますか?
結論
大切な人を失った悲しみ、すなわち喪失感は、決して完全になくなることはないかもしれません。しかし、その悲しみとの付き合い方は、時間と共に変化していきます。悲嘆は心と体に様々な反応を引き起こす自然なプロセスであり、その回復への道のりは一人ひとり異なります[2]。全国自死遺族総合支援センターが述べるとおり、悲しみの表し方・強さ・期間には一人ひとりのペースがあり、「よい悲しみ方」も「悪い悲しみ方」もありません[6]。
一方で米国精神医学会(APA)によれば、死別から成人は12か月、子どもは6か月以上経っても、ほぼ毎日、生活が回らないほどの強い苦痛が続く場合は、遷延性悲嘆症(複雑性悲嘆)として専門的なケアが助けになることがあります[1]。日本サイコオンコロジー学会のガイドラインによれば治療の中心は薬より認知行動療法とされます[3]。何よりも、「あなたは一人ではない」ということを覚えておいてください。家族、友人、同じ経験をした仲間たち、そして専門家など、支えてくれる手は周りにあります。助けを求めることは、弱さではなく、自分自身を大切にする強さの表れです。一人で抱え込まず、厚生労働省の電話相談窓口や、グリーフサポートリンクのわかちあいの会などを頼ってよいということを、覚えておいていただければと思います[4][7]。
参考文献
- American Psychiatric Association. “Prolonged Grief Disorder.” [インターネット] [引用日: 2026年7月19日]. Available from: https://www.psychiatry.org/patients-families/prolonged-grief-disorder
- こども家庭庁「子どもを亡くした家族への支援の手引き」[インターネット]. [引用日: 2026年7月19日]. Available from: https://sukoyaka21.cfa.go.jp/media/tools/s01_huni_tebi006.pdf
- 日本サイコオンコロジー学会「6 複雑性悲嘆の認知行動療法」(がん患者の家族ケアに関する診療ガイドライン)2023. [引用日: 2026年7月19日]. Available from: https://jpos-society.org/pdf/gl/2023family/3-6_20231208-guideline-family.pdf
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」電話相談窓口. [引用日: 2026年7月19日]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/tel/
- 日本サイコオンコロジー学会・日本がんサポーティブケア学会(編)「遺族ケアガイドライン―がん等の身体疾患によって重要他者を失った遺族が経験する精神心理的苦痛の診療とケアに関するガイドライン」2022年版. [引用日: 2026年7月19日]. Available from: https://jpos-society.org/pdf/gl/2023family/all_2023-guideline-family.pdf
- 特定非営利活動法人 全国自死遺族総合支援センター(グリーフサポートリンク). [引用日: 2026年7月19日]. Available from: https://izoku-center.or.jp/about/
- 各地の遺族のつどい〜わかち合いの会〜 – 特定非営利活動法人 全国自死遺族総合支援センター(グリーフサポートリンク). [引用日: 2026年7月19日]. Available from: https://izoku-center.or.jp/wakachiai/
- American Psychological Association. “Grief.” [インターネット] [引用日: 2026年7月19日]. Available from: https://www.apa.org/topics/grief
- American Psychological Association. “How grieving changes the brain, with Mary-Frances O’Connor, PhD.” 2022. [引用日: 2026年7月19日]. Available from: https://www.apa.org/news/podcasts/speaking-of-psychology/grieving-changes-brain
更新日:2026年7月19日(初回公開時)/本記事の内容に誤りや古い情報を見つけた場合は、サイトのお問い合わせ窓口までご連絡ください。皆様からのご指摘をもとに、公的機関・学会の一次資料をあらためて確認しながら随時見直しを行っています。特に、遷延性悲嘆症の診断基準や複雑性悲嘆の治療法に関するガイドラインは今後も改定される可能性があるため、定期的に見直しを予定しています。
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本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。
