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感染症 34分で読める 31回

デング熱のすべて:症状の段階から命を脅かす「警告サイン」の見分け方まで

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世界保健機関(WHO)と国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインによれば、デング熱で最も危険なのは「解熱後24~48時間」で、この間に7つの「警告サイン」が1つでも出れば直ちに受診が必要です3616。さらに、呼吸困難や吐血・血便がある場合は、国立感染症研究所・日本小児科学会の基準では警告サインの段階を越えた「重症型デング」にあたり、救急受診が必要です6。

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2014年には東京・代々木公園を中心に約70年ぶりに国内感染108例が確認されました。海外渡航歴がなくても、5~10月の蚊媒介感染症としてリスクはゼロではありません。解熱剤は原則アセトアミノフェンのみを使い、NSAIDs(イブプロフェン等)は出血リスクを高めるため使用を避けてください。

デング熱は、一般的に「熱帯病」として認識されていますが、その脅威は決して遠い国の話ではありません。国立保健医療科学院(H-CRISIS)と国立健康危機管理研究機構(JIHS)の記録によれば、2014年、東京の代々木公園を中心に国内での感染が約70年ぶりに確認され、日本国内においても身近な感染症となり得るという事実を我々に突きつけました12。海外渡航が活発化する現代において、国立感染症研究所(NIID、現:国立健康危機管理研究機構/JIHS)の報告によれば、毎年数百例の輸入感染症例が報告されており、特に東南アジアなどの流行地域からの帰国者を中心にリスクは常に存在します14。厚生労働省検疫所(FORTH)も、流行地域への渡航前後の注意喚起を継続的に発信しています15。本記事は、世界保健機関(WHO)、米国疾病予防管理センター(CDC)、そして日本の厚生労働省(MHLW)や国立感染症研究所(NIID)といった専門機関の最新の科学的根拠に基づき、デング熱の正確な知識、症状の全段階、そして最も重要な「命を脅かす警告サイン」をいかに見分けるかについて、包括的かつ詳細に解説します。

JHO編集部が作成(出典:WHO・CDC・厚生労働省・国立健康危機管理研究機構の公開情報)

編集方針|この記事の科学的根拠

この記事は、本文中で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的指針との直接的な関連性を示したリストです。

  • 世界保健機関(WHO)および米国疾病予防管理センター(CDC): この記事におけるデング熱の臨床的病期(発熱期、重症期、回復期)、重症デングの定義、および警告サインに関する指針は、WHOとCDCが公表した国際的な診療ガイドラインに基づいています34。
  • 日本の厚生労働省(MHLW)および国立感染症研究所(NIID): 日本国内での予防策、国内の感染リスク、および日本の医療従事者向けの具体的な診療指針に関する記述は、MHLWの公式見解およびNIIDが発行した「蚊媒介感染症の診療ガイドライン」に基づいています56。
  • 査読済み学術論文(PubMed掲載): 各警告サインの危険度を定量的に示すため、複数の臨床研究を統合・分析した系統的レビューやメタアナリシス研究(例:Sangka et al., Lee et al.)の結果を引用しています78。

要点まとめ

  • 国立健康危機管理研究機構(JIHS)の記録によれば、デング熱は日本国内でも感染リスクがあり、特に海外渡航者は注意が必要です。2014年には東京で国内感染が発生しました1。
  • CDCのガイドラインによれば、症状は「発熱期」「重症期」「回復期」の3つの段階で進行します。最も危険なのは、熱が下がった後の24~48時間である「重症期」です4。
  • 世界保健機関(WHO)の2009年ガイドラインと国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドライン(表3)は、激しい腹痛、持続する嘔吐、粘膜出血などを含む7つの「警告サイン」を挙げており、1つでも認めれば厳重な観察と入院の検討が必要とされています616。
  • 呼吸困難(呼吸不全)や吐血・血便などの消化管出血は、国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドライン(表4)では警告サインではなく「重症型デング」の診断基準に位置づけられており、すでに救急対応が必要な段階です616。
  • 国立健康危機管理研究機構(JIHS)と愛知県の注意喚起によれば、自己判断での解熱鎮痛剤の使用は非常に危険です。特にイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は出血傾向を助長するため絶対に使用してはなりません910。安全なのはアセトアミノフェンのみです。
  • 最善の対策は予防です。蚊に刺されない工夫(長袖・長ズボンの着用、虫除け剤の使用)が極めて重要です5。

🔧 警告サイン セルフチェックツール

【A】警告サイン(表3):発熱が下がり始めてから24~48時間、以下のうち1つでも当てはまれば、様子を見ずに直ちに医療機関を受診してください。国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインでは、警告サインを認める場合は入院が必要とされています616。

  • □ 強い腹痛・押すと痛む
  • □ 嘔吐を繰り返す(持続的な嘔吐)
  • □ 歯ぐき・鼻からの出血
  • □ ぐったりして元気がない/逆に落ち着かない
  • □ お腹の張り(腹水)・胸の苦しさ(胸水)

【B】重症型デングを示す危険な兆候(表4):以下は警告サインより一段進んだ段階です。国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインでは1つでも認めれば重症型デングと診断されるため、迷わず救急受診してください616。

  • □ 呼吸が速い・息苦しい(呼吸不全)
  • □ 吐血・黒い便(消化管出血)
  • □ 手足が冷たい・血圧低下・意識がもうろうとする(ショック)

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デング熱とは?日本の現状と基本的な知識

デング熱は、デングウイルスを持つ蚊(主にネッタイシマカやヒトスジシマカ)に刺されることによって感染する疾患です。デングウイルスには4つの異なる血清型(1型、2型、3型、4型)が存在し、一度感染しても別の型のウイルスに感染する可能性があります。厚生労働省の感染症発生動向調査の届出基準では、デング熱は四類感染症として掲げられ、診断した医師にただちに届け出ることが求められています17。日本のほとんどの地域(青森県以南)には、媒介蚊であるヒトスジシマカが生息しており、活動時期である5月から10月頃にかけては、輸入症例を発端とした国内での感染拡大のリスクが理論上存在します511。国立感染症研究所のデータによると、海外渡航者による輸入症例は毎年報告されており、その多くは東南アジアや南アジアといった流行地域からの帰国者です14。このため、海外旅行者は特に高い意識を持つ必要があります。

デング熱の3つの病期:症状はどのように進行するのか?

世界保健機関(WHO)および米国疾病予防管理センター(CDC)は、デング熱の臨床経過を3つの段階に分類しています。この時間の流れを理解することは、いつ、何を警戒すべきかを把握するために不可欠です346。

病期 目安期間 主な状態
①発熱期 2~7日間 突然の高熱39~40℃、頭痛・関節痛、数日後に発疹3
②重症期 解熱後24~48時間 血漿漏出が進行、ショックや臓器障害のリスクが最大4
③回復期 重症期を過ぎた後 血漿の再吸収、食欲・全身状態が改善3

出典:世界保健機関(WHO)「WHO guidelines for clinical management of arboviral diseases」(2024年)3/米国疾病予防管理センター(CDC)「Dengue Case Management Pocket Guide」(2024年)4


1. 発熱期(Febrile Phase):2~7日間

感染した蚊に刺されてから2~14日(通常4~10日)の潜伏期間を経て、突然40℃近い高熱で発症します15。この時期の主な症状は以下の通りです。

  • 突然の高熱:39℃から40℃の熱が急激に出ます。
  • 激しい頭痛:特に目の奥の痛みが特徴的です。
  • 関節痛・筋肉痛:「骨折熱(break-bone fever)」と形容されるほどの強い痛みを伴うことがあります。
  • 発疹:熱が出てから数日後に、胸部や体幹から始まり、全身に広がる麻疹様の発疹が見られることがあります。

WHOとCDCによれば、この段階では、他の多くの熱性疾患との区別が難しい場合があります34。


2. 重症期(Critical Phase):解熱後、最も注意すべき24~48時間

ここがデング熱の経過において最も重要な分岐点です。多くの患者は発熱期を終えるとそのまま回復に向かいますが、CDCの報告によれば、一部の患者は熱が37.5℃程度に下がり始めた後、24~48時間の「重症期」に移行します412。これは一見、快方に向かっていると誤解されがちですが、実は最も危険な期間の始まりです。

この時期の病態の核心は「血漿漏出(plasma leakage)」です。血管の透過性が異常に高まり、血液中の液体成分(血漿)が血管の外に漏れ出します。WHOのガイドラインによれば、血漿漏出によって血液が濃縮され(ヘマトクリット値の上昇)、循環血液量が減少し、ショック状態や臓器不全を引き起こす可能性があります36。この血漿漏出が、後述する「警告サイン」の根本的な原因となります。


3. 回復期(Recovery Phase)

重症期を乗り越えると、回復期に入ります。漏れ出ていた血漿が再び血管内に吸収され、全身状態が徐々に改善していきます。食欲が戻り、安定した状態になります。WHOとCDCによれば、この時期に「回復期発疹」と呼ばれる、白い斑点が散在する特徴的な発疹やかゆみが出ることがあります34。

【最重要】重症化を示す7つの「警告サイン」と重症型デングの診断基準

すぐに受診が必要なサイン

世界保健機関(WHO)の2009年ガイドラインは、デング熱を「警告サインを伴わない/伴うデング熱」と「重症デング」に分類しており、警告サイン(warning signs)として7項目を挙げ、これらは厳重な観察と医学的介入を要する(requiring strict observation and medical intervention)と注記しています16。国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインも、表3「重症化サイン」として同じ7項目を示し、「デング熱患者で以下の症状や検査所見を1つでも認めた場合は、重症化のサイン有りと診断する」としています6。厚生労働省もデング熱では重症化しうることを注意喚起しています5。以下の一つでも現れた場合は、直ちに医療機関を受診してください。自己判断で様子を見ることは絶対に避けるべきです。

  • 国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドライン(表3):腹痛・腹部圧痛6
  • 世界保健機関(WHO)の2009年ガイドライン:持続的な嘔吐16
  • 世界保健機関(WHO)の2009年ガイドライン:歯ぐき・鼻からの粘膜出血16
  • 国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドライン(表3):無気力・不穏6
  • 国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドライン(表3):腹水・胸水6
警告サイン(表3・7項目) 何が起きているか 出典
①腹痛・腹部圧痛 血漿漏出による腹水・肝腫大の兆候 68
②持続的な嘔吐 経口摂取ができず脱水を招く 616
③腹水・胸水(体液の貯留) 血漿漏出による腹部膨満・胸の苦しさ 616
④粘膜出血 歯ぐき・鼻血、血小板減少の兆候 68
⑤無気力・不穏 意識状態の変化、循環不良の懸念 616
⑥肝腫大(2 cm以上) メタアナリシスで重症化リスク約5.9倍 78
⑦ヘマトクリット値の増加(20%以上)+急速な血小板減少 血液濃縮+出血を止める血小板が減少 616

出典:国立感染症研究所・日本小児科学会「蚊媒介感染症の診療ガイドライン」表36/世界保健機関(WHO)「Dengue guidelines for diagnosis, treatment, prevention and control」(2009年)16/Sangka et al. Infect Dis Poverty. 20217/Lee et al. Emerg Microbes Infect. 20218

「警告サイン」と「重症型デング」は別の物差し

ここで誤解しやすいのが、呼吸困難や吐血・血便の扱いです。国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインでは、これらは表3の警告サインではなく、表4「重症型デングの診断基準」に置かれています6。同ガイドラインの表4は「デング熱患者で以下の病態を1つでも認めた場合、重症型デングと診断する」として、①重症の血漿漏出症状(ショック、呼吸不全など)、②重症の出血症状(消化管出血、性器出血など)、③重症の臓器障害(肝臓、中枢神経系、心臓など)の3つを挙げています6。世界保健機関(WHO)の2009年ガイドラインも重症デングの基準として、ショック(DSS)や呼吸障害を伴う体液貯留につながる重症の血漿漏出(severe plasma leakage)、重症の出血(severe bleeding)、そして重症の臓器障害(severe organ involvement:肝臓はAST または ALT が1000以上、中枢神経系は意識障害、心臓その他)を挙げています16。

つまり、警告サインは「入院して厳重に観察すべき入り口」であり、重症型デングは「すでに命に直結する段階」です。国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインは、警告サインが認められる場合は入院が必要であるとし、重症型デングと診断された患者は集中治療が可能な体制での対応を求めています6。したがって、息苦しさ・頻呼吸や吐血・黒い便がある場合は「警告サインの1つ」と受け止めて待つのではなく、救急受診が必要だと理解してください。

重症型デングの診断基準(表4・3項目) 具体的な現れ方 出典
①重症の血漿漏出症状 ショック(デングショック症候群)、体液貯留による呼吸不全・頻呼吸・息苦しさ 616
②重症の出血症状 消化管出血(吐血・黒い便)、性器出血など 616
③重症の臓器障害 肝臓(AST/ALTが1000以上)、中枢神経系(意識障害)、心臓など 616

出典:国立感染症研究所・日本小児科学会「蚊媒介感染症の診療ガイドライン」表46/世界保健機関(WHO)「Dengue guidelines for diagnosis, treatment, prevention and control」(2009年)16

それぞれのサインについて、なぜ危険なのかを詳しく見ていきます。

1. 腹痛・腹部圧痛(Abdominal pain or tenderness)

国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインによれば、持続的で強い腹痛や、お腹を押したときの痛みは、血漿漏出によって腹水が溜まったり、肝臓が腫れたりしている兆候である可能性があります。これは重症化の重要なサインの一つです68。

2. 持続的な嘔吐(Persistent vomiting)

世界保健機関(WHO)の2009年ガイドラインおよび国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインは、いずれも「持続的な嘔吐」を警告サインとして挙げています。嘔吐を繰り返すと経口での水分補給ができなくなり、脱水を引き起こして全身状態を急激に悪化させる可能性があります616。

3. 腹水・胸水(Clinical fluid accumulation)

世界保健機関(WHO)と国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインによれば、血漿漏出が進行すると、胸部(胸水)や腹部(腹水)に体液が溜まります。これにより腹部膨満感や胸の苦しさが見られることがあります。なお、体液の貯留に「呼吸障害」が加わった段階は、世界保健機関(WHO)の2009年ガイドラインでは重症デングに分類されます616。

4. 粘膜からの出血(Mucosal bleed)

世界保健機関(WHO)の2009年ガイドラインの分類では、歯茎からの出血、鼻血など、軽微な粘膜出血が見られます。これは血小板の減少と凝固機能の異常を示唆しています816。

5. 無気力・不穏(Lethargy, restlessness)

世界保健機関(WHO)と国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインでは、ぐったりして元気がない(無気力)、あるいは逆に落ち着きがなく興奮状態になる(不穏)などの変化が警告サインとされています。国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインによれば、デングショック症候群となった場合、患者は不安・興奮状態となり、発汗や四肢の冷感、血圧低下がみられます616。

6. 肝腫大(Liver enlargement >2cm)

右の肋骨の下あたりで肝臓が2cm以上に腫れている状態です。これは医師の診察によって確認されますが、腹部の張りや不快感として自覚されることもあります。複数の研究を統合した大規模なメタアナリシスによれば、肝臓の腫大は重症デング熱に進展するリスクを約5.9倍に高めるという強力な予測因子であることが示されています78。

7. ヘマトクリット値の増加と血小板の急激な減少

国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインでは、これは血液検査で判断される所見です。血漿漏出により血液が濃縮されるとヘマトクリット値(血液に占める赤血球の割合)が20%以上増加し、同時に出血を止める役割を持つ血小板が急激に減少します616。

【重症型デング】頻呼吸・呼吸困難(呼吸不全)

国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインでは、呼吸不全は表4の「重症の血漿漏出症状」に含まれ、警告サインではなく重症型デングの診断基準です6。世界保健機関(WHO)の2009年ガイドラインも、呼吸障害を伴う体液貯留を重症デングとしています16。呼吸が速くなったり息苦しさを感じたりする場合、胸水の貯留などにより酸素の取り込みが妨げられている可能性があり、様子を見る段階ではありません。直ちに救急対応が必要です。

【重症型デング】吐血・血便(消化管出血)

国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインでは、消化管出血は表4の「重症の出血症状」にあたり、重症型デングと診断される病態です6。世界保健機関(WHO)の2009年ガイドラインも重症の出血を重症デングの基準に含めています16。血を吐く、黒い便が出るといった明らかな出血は生命を脅かす所見であり、緊急の医療介入が必要です。なお国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインによれば、デングショック症候群ではしばしば鼻出血や消化管出血などの出血傾向を伴います6。

どのような人が重症化しやすい?ハイリスク群について

デング熱は誰でも重症化する可能性がありますが、特に注意が必要なハイリスク群が存在します。複数のガイドラインによれば、以下の人々は重症化のリスクが高いとされています。

  • 乳幼児および高齢者46
  • 妊婦:妊娠中は重症化しやすいハイリスク群の一つとされています。具体的なリスク倍率については、今回参照した資料には明確な記載が見当たりませんでした。
  • 糖尿病、腎不全、肥満などの基礎疾患を持つ人613
  • 過去にデング熱に感染したことがある人(二次感染):異なる血清型のウイルスに再度感染すると、抗体依存性増強(ADE)という免疫反応により、重症化するリスクが著しく高まることが知られています7。

WHOの重症度分類:旧分類(1997年)と新分類(2009年)のガイドラインの比較

世界保健機関(WHO)は、デング熱の重症度分類を1997年版から2009年版へと改訂しました。日本国内の診療ガイドラインは主に2009年の新分類(デング熱/警告徴候を伴うデング熱/重症デング)に準拠しています3。この改訂の経緯を知っておくと、古い文献や海外の一部資料と現在の分類が食い違って見える理由が理解できます。

区分 WHO旧分類(1997年) WHO新分類(2009年・現行)
カテゴリー数 3区分:DF/DHF/DSS3 3区分:デング熱/警告徴候を伴うデング熱/重症デング3
重症判定の考え方 出血傾向+血漿漏出の検査所見を厳密に要求3 「警告サイン」という臨床所見を重視し早期介入を優先4
臨床現場での課題 軽症の重症化を見逃しやすいと指摘された3 WHO・CDCとも現行基準として広く採用4

WHOのガイドラインに照らすと、新旧分類でもっとも実務的に重要な違いは、新分類が「警告サイン」という患者の症状ベースの指標を重視し、検査結果を待たずに早期受診・早期介入を促す設計になっている点です3。

自宅での対処法と絶対にしてはいけないこと

デング熱と診断されても、警告サインがなければ自宅での療養が可能です。その際の注意点は以下の通りです。

安全な解熱剤の選び方:アセトアミノフェン

発熱や頭痛、関節痛に対して使用できる解熱鎮痛剤は、原則としてアセトアミノフェンのみです。これは日本医師会を含む世界中の医療機関で一致した見解です91011。

【厳禁】使用してはいけない薬:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

イブプロフェン、ロキソプロフェン、アスピリン、ジクロフェナクなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、血小板の機能を抑制し、出血のリスクを著しく高めるため、絶対に使用してはなりません。国立健康危機管理研究機構(JIHS)のガイドラインによれば、これらの薬剤は胃腸障害を悪化させる可能性もあります。市販の風邪薬や鎮痛剤にはこれらの成分が含まれていることが多いため、購入の際は必ず薬剤師に確認し、自己判断での服用は絶対に避けてください6910。

水分補給と安静

脱水を防ぐために、経口補水液やスポーツドリンク、果汁、スープなどで十分な水分補給を心がけてください。また、体力の消耗を避けるため、安静が第一です。

日本におけるデング熱の予防と対策

デング熱には特異的な治療薬や広く承認されたワクチンが存在しないため、予防が最も重要です。厚生労働省は以下の対策を推奨しています5。デング熱以外にも蚊が媒介する感染症は複数あり、あわせて知っておくことでリスクをより広く把握できます(蚊が媒介する感染症:命に関わる危険な病気トップ10と統合的予防戦略)。また、刺された後どのくらいで発症するか不安な方は蚊に刺されたらどのくらいでデング熱に?潜伏期間・症状・対処法も参考にしてください。

  • 蚊に刺されない工夫:流行地域に渡航する際や、日本国内でも蚊の多い場所(公園、墓地など)では、長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を避ける。
  • 虫除け剤の使用:ディート(DEET)やイカリジンを含む虫除け剤を適切に使用する。
  • 発生源対策:自宅周辺の植木鉢の受け皿や古タイヤ、空き缶などに溜まった水をなくし、蚊(ヒトスジシマカ)の繁殖を防ぐ。

🖨️ 受診の目安チェックシート(印刷して持参)

・発症からの経過日数と最高体温 ・解熱した日時 ・現在服用中の薬(解熱剤の成分名) ・海外渡航歴の有無と渡航先 ・上記「警告サイン」に当てはまる項目

受診の目安:WHOガイドラインでは、警告サインが1つでもある場合は当日中の受診を推奨しています。無い場合も、解熱後24~48時間は自宅で体調変化を注意深く観察してください3。

デング熱ワクチンの日本国内での将来的な承認時期や、個々の基礎疾患ごとの詳細な重症化リスク倍率については、今回参照した公的資料には明確な記載が見当たりませんでした。持病がある方のリスクは主治医に個別に確認することをおすすめします。

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よくある質問

Q1: デング熱は人から人にうつりますか?

いいえ、人から人へ直接感染することはありません。デング熱はウイルスを持つ蚊に刺されることでのみ感染します。ただし、発症初期の患者の血液中にはウイルスが存在するため、その患者を刺した蚊が別の人を刺すことで感染が広がる可能性があります。厚生労働省の注意喚起によれば、感染者は発熱期に蚊に刺されないように注意することが地域社会への感染拡大を防ぐ上で重要です11。

Q2: 日本で利用できるワクチンはありますか?

2025年7月現在、日本国内で一般向けに承認され、広く使用されているデング熱ワクチンはありません。研究開発は世界中で進められていますが、現時点では蚊に刺されないための予防策が唯一の防御手段です。

Q3: 日本国内で蚊に刺されました。心配すべきですか?

日本国内で蚊に刺されてデング熱に感染するリスクは、海外の流行地域に比べれば非常に低いですが、ゼロではありません。特にヒトスジシマカが活動する5月から10月にかけては注意が必要です。厚生労働省は、万が一、蚊に刺された数日後に高熱や頭痛、関節痛などの症状が出た場合は、デング熱の可能性も念頭に置き、速やかに医療機関を受診することを呼びかけています511。

Q4: デング熱の潜伏期間はどのくらいですか?

厚生労働省検疫所(FORTH)によれば、蚊に刺されてから発症するまでの潜伏期間は2~14日、通常は4~10日とされています15。この期間を過ぎても症状が出なければ、その渡航によるデング熱感染の可能性は低いと考えられます。

Q5: デング熱と診断されたら入院が必要ですか?

警告サインがなく、水分摂取ができ全身状態が安定していれば、自宅療養が可能な場合が多いです。ただし、7つの警告サイン(表3)のいずれか、または妊娠中・乳幼児・高齢者・基礎疾患があるなどハイリスク群に該当する場合は入院での経過観察が検討されます。国立感染症研究所・日本小児科学会の診療ガイドラインは「重症化サイン(表3)が認められる場合は入院が必要である」と明記しています6。さらに呼吸不全や消化管出血など表4の病態があれば、重症型デングとして集中治療が可能な体制での対応が必要です616。

Q6: デング熱は一度かかったら二度とかかりませんか?

いいえ、再感染する可能性があります。デングウイルスには4つの血清型があり、一度感染しても別の型に感染することがあります。メタアナリシス研究によれば、特に二次感染では、抗体依存性増強(ADE)という免疫反応により重症化リスクが著しく高まることが知られています7。

Q7: デング熱とインフルエンザやCOVID-19はどう見分ければよいですか?

WHOとCDCのガイドラインでも、発熱期の症状(高熱・頭痛・関節痛)だけでは、他の熱性疾患と区別することは困難です34。海外渡航歴の有無や、目の奥の痛み・「骨折熱」と呼ばれるほどの強い関節痛、数日後に出る発疹の有無が手がかりになりますが、確定には医療機関での検査が必要です。海外から帰国後に発症した場合は、必ず渡航歴を医師に申告してください。

Q8: 妊娠中にデング熱にかかると赤ちゃんに影響がありますか?

妊娠中は重症化しやすいハイリスク群の一つとされていますが、具体的なリスク倍率については今回参照した資料には明確な記載が見当たりませんでした。発熱や関節痛などの症状が出た場合は自己判断せず、早めに産科・内科を受診し、渡航歴や蚊刺されの状況を正確に伝えてください。

結論

デング熱は、適切な知識があれば重症化を防ぎ、安全に回復することが可能な疾患です。最も重要なことは、「熱が下がってからが危険な場合がある」という事実を認識し、本記事で解説した7つの「警告サイン」と、それより一段危険な重症型デングの診断基準を見逃さないことです。これらのサインは、自分や家族の命を守るための重要なシグナルです。少しでも疑わしい症状があれば、決して自己判断せず、直ちに専門の医療機関に相談してください。特に海外から帰国後に発症した場合は、検疫所または最寄りの保健所に連絡し、医療機関を受診する際には必ず渡航歴を申告してください。正しい知識と迅速な行動が、最悪の事態を回避する鍵となります。

最終更新日:2026年7月30日。本記事は厚生労働省・WHO・国立健康危機管理研究機構(JIHS)等の最新公開情報に基づき定期的に見直しています。内容に誤りや古い情報にお気づきの場合は、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康上の懸念がある場合や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. H-CRISIS. No.15020 都内公園が感染地と推定されたデング熱事例. [インターネット]. [引用日: 2025年7月25日]. Available from: https://h-crisis.niph.go.jp/archives/84317/
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Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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