フォルニエ壊疽とは?原因・症状・死亡率を学会データで解説
この記事でわかること
目次
フォルニエ壊疽(Fournier壊疽)は、会陰部・陰部の皮下組織が数時間から1日単位で急速に壊死していく緊急疾患で、帝京大学医学部のグループが日本泌尿器科学会雑誌に報告した15例の検討では死亡率20%(3例)にのぼりました[1]。
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。
症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
糖尿病や高齢、免疫低下がある人に多く、痛みの急激な悪化・腫れ・皮膚の黒色変化・発熱がみられたら、様子を見ずにすぐ救急外来(泌尿器科・皮膚科・救急科のいずれでも可)を受診してください。治療の中心は緊急の外科的デブリードマン(壊死組織の切除)と広域抗菌薬の投与で、診断・治療が早いほど生存率が上がります。
要点まとめ
編集方針:JHO編集部がAIツールの支援を受け、日本泌尿器科学会・日本腹部救急医学会・日本創傷外科学会・日本臨床救急医学会などの学会誌に掲載された症例報告、および日本集中治療医学会・日本救急医学会の合同ガイドラインと照合して作成しました。最終確認は人の目で行っています。医師による個別の診断・治療の代わりにはなりません。数値は各学会誌・ガイドラインの改定により変わることがあります(2026年7月時点の情報です)。
危険因子セルフチェック(何個あてはまるか数えてください)
- 糖尿病がある、または血糖値が高いと言われたことがある
- 肛門周囲膿瘍・痔ろうがある、または治療中である
- 最近、尿道カテーテル留置・尿道処置・前立腺生検を受けた
- お酒を習慣的に多量に飲む
- 肝硬変・腎不全・がん化学療法中など、免疫が下がる病気がある
- 会陰部・陰部に外傷や褥瘡がある
2個以上あてはまり、かつ会陰部の急な痛み・腫れ・発熱がある場合は、危険因子が重なっている状態です。様子を見ず当日中に受診してください(該当する危険因子は日本泌尿器科学会雑誌・日本腹部救急医学会雑誌の症例検討でも繰り返し報告されています[1][2])。
フォルニエ壊疽とは?会陰部が壊死していく仕組み
フォルニエ壊疽は、陰嚢・陰茎・会陰部(肛門と外陰部の間)・外陰部の皮下組織と筋膜が、複数菌の混合感染によって急速に壊死していく病気です。帝京大学医学部のグループが日本泌尿器科学会雑誌に報告した検討では、感染は皮膚・肛門直腸部・尿道などから始まり、会陰部の毛嚢炎や外傷、痔核や肛門周囲膿瘍、さまざまな尿路感染症に加え、尿道カテーテル留置や尿道ブジー、前立腺生検などの泌尿器科的な処置がきっかけになることもあると報告されています[1]。
感染が広がる経路は皮膚表面ではなく、その下にある筋膜(Colles筋膜・深会陰筋膜など)です。この筋膜に沿って感染が横方向に急速に広がり、途中の血管が血栓で詰まって血流が途絶えることで、皮下脂肪組織が壊死していきます。そのため、皮膚の見た目の赤みや腫れの範囲よりも、実際に壊死している内部の範囲のほうがはるかに広いことが少なくありません。一方で、筋肉そのものは保たれることが多く、これが「壊死性筋膜炎」という呼び方の由来にもなっています。
この病名は、19世紀にフランスの皮膚科医ジャン・アルフレッド・フルニエが報告したことに由来しますが、現在では原因を問わず会陰部・陰部に生じた壊死性軟部組織感染症全般を指す言葉として使われています。会陰部は解剖学的に肛門・尿道・陰嚢という複数の感染源になりうる部位が近接しているため、いったん感染が筋膜に入り込むと、腹壁や太もも方向にまで急速に広がることがある点も、この病気が緊急疾患とされる理由の一つです。
今の血圧・脈拍を確かめる
数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
身長と体重からBMIも調べる
血圧手帳(この端末に保存)
これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
原因菌・危険因子 — 国内の症例検討にみる数字
フォルニエ壊疽は単一の細菌ではなく、複数の細菌が混ざり合って起こる「混合感染」であることが特徴です。鹿児島大学のグループが日本腹部救急医学会雑誌に報告した107例(自験例6例+文献検索101例)の検討では、嫌気性菌の関与が35%にみられ、混合感染も多く認められたとされています[2]。同じ日本腹部救急医学会雑誌の報告では、84%の患者に基礎疾患があり、糖尿病が最も多かったと述べられています[2]。
| 症例集積 | 症例数・期間 | 平均/中央値年齢 | 糖尿病合併 | 死亡率 |
|---|---|---|---|---|
| 日本泌尿器科学会雑誌(帝京大学、2021年)[1] | 15例(2009年5月〜2019年4月の10年間) | 中央値67歳(全例男性) | 9例(60%) | 3例(20%) |
| 日本腹部救急医学会雑誌(鹿児島大学、2014年)[2] | 107例(自験6例+文献101例) | 平均59.3歳 | 基礎疾患84%中で最多 | 周術期死亡10% |
出典:日本泌尿器科学会雑誌112巻2号(2021年)[1]/日本腹部救急医学会雑誌34巻6号(2014年)[2]
2つの国内報告で症例数・対象期間・平均年齢が異なるため、死亡率は「10%」から「20%」まで幅があります。これは日本全国を対象にした一つの大規模な登録データではなく、それぞれ単一の大学病院やその周辺での症例集積であるためです(この点は本記事の最後でも改めて触れます)。
糖尿病以外の危険因子についても、帝京大学医学部のグループの報告では、習慣性の飲酒歴、抗がん化学療法、肝硬変、腎不全、HIV感染症、栄養失調など、免疫が抑制された状態が背景にあることが多いと述べられています[1]。これらに共通するのは「感染と戦う力が普段より弱っている」という点で、健康な人であれば軽い皮膚のトラブルで済むような小さなきっかけが、重篤な壊死に進んでしまう土台になっていると考えられます。年齢についても、帝京大学医学部のグループの報告における中央値は67歳、鹿児島大学のグループの報告における平均は59.3歳と[1][2]、いずれも中高年以降に多い傾向がうかがえます。
症状・危険信号 — このサインが出たらすぐ受診
受診の目安 — 今日中にすぐ受診が必要なサイン
- 会陰部・陰嚢・肛門周囲の急激な痛みの悪化(見た目の腫れ以上に痛みが強い)
- 皮膚の色が赤紫色〜黒色に変わってきた、または水疱ができている
- 38℃以上の発熱、または悪寒・ふるえがある
- 皮膚を押しても痛みを感じにくくなってきた(神経が壊死しているサイン)
- 皮膚の下を押すと「パチパチ」と空気が入っているような感触(皮下気腫)がある
上記いずれかがあれば、様子を見ずに救急外来を受診してください。何科か迷う場合は、泌尿器科・皮膚科・救急科のどこでも構いません。まず「会陰部の急激な痛みと皮膚の変化がある」と伝えることが重要です。
診断 — LRINECスコアなど検査の基準でわかること
フォルニエ壊疽を含む壊死性筋膜炎は、初期には見た目が重症の蜂窩織炎(皮膚の細菌感染)と区別しづらいことがあります。市立函館病院形成外科のグループが「創傷」誌に報告した検討では、壊死性筋膜炎11例と重症蜂窩織炎110例を比較し、血液検査値から算出するLRINEC(Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis)スコアの有用性を調べています[3]。
| 項目 | 壊死性筋膜炎群 | 重症蜂窩織炎群 |
|---|---|---|
| LRINECスコアの範囲 | 6〜12(平均9.2) | 0〜10(平均2.7) |
| スコア6以上を陽性とした場合の感度 | 100% | |
| 同・特異度 | 85.5% | |
| 同・陽性的中率 | 40.7% | |
| 同・陰性的中率 | 100% | |
出典:日本創傷外科学会が発行する学会誌「創傷」5巻1号(2014年)[3]
この報告では、LRINECスコアは臨床所見や画像検査に加えた補助的な診断ツールとして有用と考えられると結論づけられています[3]。陽性的中率が40.7%にとどまる点、つまりスコアが高くても実際には壊死性筋膜炎でない場合が半数以上あるため、スコア単独ではなく医師による身体診察・CT検査などと組み合わせて判断されるべき数値である点には注意が必要です。
重症の蜂窩織炎との見分け方 — なぜ判断が難しいのか
フォルニエ壊疽の診断が難しい理由の一つは、発症してすぐの段階では、赤み・腫れ・熱感といった見た目が、抗菌薬の飲み薬で治る「重症の蜂窩織炎」とよく似ていることです。市立函館病院形成外科のグループの報告でも、比較対象として重症蜂窩織炎110例を並べて検討する必要があったこと自体が、両者の見分けにくさを裏づけています[3]。
医師が壊死性筋膜炎・フォルニエ壊疽を疑う手がかりとして重視するのは、①見た目の腫れの範囲に比べて痛みが強すぎること、②発熱や頻脈など全身状態の悪化が早いこと、③皮膚の色が急速に変化すること、④触診で皮膚の感覚が鈍くなっている部分があること、の4点です。日本創傷外科学会誌「創傷」の報告によれば、前述のLRINECスコアは、こうした身体診察の所見に、血液検査(白血球数・CRP・ナトリウム・クレアチニン・血糖値など)を組み合わせて数値化したものです[3]。ただし市立函館病院形成外科のグループも述べているとおり、あくまで「補助的」な位置づけであり、医師の視診・触診に代わるものではありません[3]。
治療 — 緊急デブリードマンと広域抗菌薬
治療の柱は、①緊急手術による壊死組織の外科的処置(切開洗浄・デブリードマン)と、②複数菌をカバーする広域抗菌薬の投与、③基礎疾患を含めた全身管理の3つです。帝京大学医学部のグループの報告では、15例中14例(93%)に外科的デブリードマンが施行され、精巣摘出術を要したのが5例(33%)、膀胱瘻造設術が3例(20%)、人工肛門造設術が3例(20%)だったとされています[1]。
手術のタイミングについて、日本臨床救急医学会雑誌に掲載された高橋哲也ほかのグループの報告(壊死性軟部組織感染症33例、2006年4月〜2018年9月の後方視的検討)では、来院から切開までの時間は1時間以内が18例(54.5%)と最多だったとされています[5]。日本臨床救急医学会雑誌の同報告では、初回手術を壊死組織の完全除去を目的とした「debridement」ではなく、感染部位を切開して洗浄する方法にとどめ、翌日以降にあらためてdebridementを行う治療方針を採っており、この方針のもとでの院内死亡率は24.2%(8例)であったと報告されています[5]。日本臨床救急医学会雑誌の同報告は、切開法は手技が煩雑でなく侵襲も少ないため、施行までの時間短縮や施行率の上昇につながり、早期の壊死組織確認と創部培養の採取が可能になる利点があると述べています[5]。
日本臨床救急医学会雑誌の高橋哲也ほかのグループの報告は、初回にdebridementを施行した別の海外報告(65例、来院から手術までの平均時間は生存群25時間・死亡群90時間、死亡率29.2%)と比較し、単純比較はできないとしながらも、完全な壊死組織除去にこだわらない迅速な早期切開洗浄が重要な意味を持つ可能性があると述べています[5]。ただしこれは1施設・33例の後方視的検討であり、全国的に確立された治療方針として一般化できるかどうかは、今回参照した資料の中には示されていませんでした。
手術は1回で終わらないことも多く、壊死組織が残っていないか確認するために数日おきに複数回の処置を行うのが一般的です。帝京大学医学部のグループの報告でも、精巣摘出術・膀胱瘻造設術・人工肛門造設術といった複数の外科的処置が組み合わされていたことが示されています[1]。手術後は集中治療室(ICU)での全身管理が必要になることも多く、血圧・呼吸・腎機能の管理に加えて、傷が大きく開いたままになるため栄養管理(高たんぱく・高カロリーの補給)や痛みのコントロールも治療の重要な柱になります。傷が治癒するまでの間、創部の処置(ドレッシング交換)を繰り返し行う必要があり、入院期間が数週間に及ぶことも珍しくありません。抗菌薬については、複数菌をカバーする広域抗菌薬(グラム陽性菌・陰性菌・嫌気性菌をカバーする組み合わせ)が用いられますが、具体的な薬剤名・投与量は培養結果や患者の腎機能・体重に応じて主治医が決定するものであり、自己判断での薬剤選択・服用には使わないでください。
日常生活での予防 — 再発・重症化を防ぐためにできること
フォルニエ壊疽そのものを完全に予防する方法は確立されていませんが、危険因子への対策で重症化のリスクを下げることはできます。日本泌尿器科学会雑誌・日本腹部救急医学会雑誌の症例報告で繰り返し指摘されている糖尿病は、血糖コントロールが不十分なほど感染に対する抵抗力が落ちるため、日頃からの血糖管理が基本になります[1][2]。
そのほか、肛門周囲膿瘍や痔ろうがある場合はそれ自体の治療を先延ばしにしないこと、会陰部を清潔に保ち擦れやすい部位の皮膚トラブルを早めにケアすること、習慣的な多量飲酒を控えること、尿道カテーテル留置中は違和感や発赤がないか気にかけることなどが、日常生活でできる対策として挙げられます。何より重要なのは、会陰部に急な痛み・腫れ・発熱を感じたときに「そのうち治るだろう」と様子を見すぎず、早めに医療機関を受診することです。フォルニエ壊疽は進行が数時間から1日単位と非常に速いため、様子見の期間そのものが命取りになりうる病気です。
糖尿病がある人は、血糖コントロールの状態を示すHbA1c(ヘモグロビンA1c)の値をかかりつけ医と定期的に確認し、目標値から大きく外れている期間が続かないようにすることも、感染に対する抵抗力を保つうえで役立ちます。持病があり免疫が下がりやすい状態にある人は、会陰部に限らず皮膚のちょっとした傷や腫れを軽視せず、いつもと違う痛みの強さや広がり方を感じたら早めに相談する習慣を持つことが、結果的に重症化を防ぐことにつながります。
予後・死亡率 — なぜ幅があるのか
「フォルニエ壊疽の死亡率は何%か」という問いに一つの正解はありません。帝京大学医学部のグループの15例の検討では死亡率20%(3例)[1]、鹿児島大学のグループの107例の検討では周術期死亡10%[2]と、対象とした症例集団によって数字が異なります。
帝京大学医学部のグループの報告では、生存例と比較して死亡例は有意に高齢であり(統計的に意味のある差、p=0.043)、BMI(体格指数)が低値であったとされています(p=0.038)[1]。同じ日本泌尿器科学会雑誌の報告では、Fournier Gangrene Severity Index(FGSI)などの予後予測指標が死亡例で高い傾向にあったとも述べられています[1]。鹿児島大学のグループの報告でも、FGSIおよびUldag Fournier’s gangrene severity index(UFGSI)が高値だった症例が周術期に死亡しており、これらの指標は重症度判定と予後予測に有用であったと結論づけられています[2]。
つまり、年齢が高いこと・低栄養(低BMI)であること・重症度スコアが高いことが、悪い経過と関連する傾向にあると、複数の国内報告が独立に示しています。逆に言えば、若く栄養状態が保たれ、重症度スコアが低いうちに治療が始められれば、経過は比較的良好であることが多いとも言えます。
入院から退院までの流れ(目安)
治療の流れは症例ごとに大きく異なりますが、国内・海外の報告を総合すると、おおむね以下のような経過をたどることが多いとされています。あくまで一般的な目安であり、壊死の範囲や全身状態によって前後します。
| 時期 | 主な対応 |
|---|---|
| 受診当日 | 身体診察・血液検査(LRINECスコアの算出を含む)・CT検査などで診断。診断がつき次第、緊急でデブリードマンの手術[3][5] |
| 受診〜数時間以内 | 日本臨床救急医学会雑誌の高橋哲也ほかのグループの報告では、来院から切開までの時間が1時間以内だった症例が最多(54.5%)とされています。広域抗菌薬の点滴もあわせて開始[5] |
| 数日〜1週間程度 | 壊死組織が残っていないか確認するための追加のデブリードマンを複数回実施。ICUでの全身管理、培養結果に応じた抗菌薬の見直し |
| 状態が落ち着いた後 | 創部の処置(ドレッシング交換)を継続。必要に応じて皮膚移植や再建手術を検討。リハビリテーション |
出典:日本臨床救急医学会雑誌22巻3号の報告[5]/日本創傷外科学会誌「創傷」の報告[3]をもとにJHO編集部が整理
敗血症との関係 — なぜ「命に関わる」と言われるのか
フォルニエ壊疽で命に関わるのは、壊死そのものよりも、そこから細菌や毒素が全身の血流に入り込んで起こる敗血症(感染症をきっかけに全身の臓器がダメージを受ける状態)です。日本集中治療医学会と日本救急医学会が合同で作成した「日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG2024)」は2024年12月に正式版が公開され、感染源のコントロール・抗菌薬治療・初期蘇生と循環作動薬・急性血液浄化など9領域、78個の重要臨床課題(CQ)を扱っています[4]。
フォルニエ壊疽のように感染源(壊死組織)がはっきりしている敗血症では、抗菌薬だけでなく「感染源のコントロール」、つまり壊死組織を外科的に取り除くこと自体が治療の柱になります。日本集中治療医学会・日本救急医学会のガイドラインが感染源コントロールを重要臨床課題の一つに位置づけていることは、フォルニエ壊疽の治療で緊急デブリードマンが必須とされている理由とも重なります[4]。抗菌薬だけでは壊死した組織の中にとどまった細菌まで十分に排除できないため、外科的デブリードマンは「補助的」ではなく「必須」の処置として位置づけられています。敗血症そのものの症状(意識がぼんやりする、血圧が下がる、呼吸が速くなるなど)についてより詳しく知りたい方は、関連記事もあわせてご覧ください。
施設によって手術方針に幅がある — 国内2つの報告を比較
フォルニエ壊疽を含む壊死性軟部組織感染症は、症例数が少ない疾患のため、日本国内で単一の学会診療ガイドラインという形にはまだなっておらず、今回確認できた資料は個々の病院・大学の症例集積(後ろ向き研究)が中心です。同じ「緊急手術が必要」という方向性でも、初回手術の内容には施設によって幅があることが、2つの国内報告を並べるとわかります。
| 項目 | 帝京大学医学部のグループ(日本泌尿器科学会雑誌、2021年) | 高橋哲也ほかのグループ(日本臨床救急医学会雑誌、2019年) |
|---|---|---|
| 対象 | フォルニエ壊疽15例[1] | 壊死性軟部組織感染症33例(会陰部以外の部位も含む)[5] |
| 初回手術の内容 | 93%(14例)に外科的デブリードマン(壊死組織の完全除去)を施行[1] | 壊死組織の完全除去を目的とした「debridement」ではなく、感染部位の切開・洗浄にとどめる方針[5] |
| 院内死亡率 | 20%(3例)[1] | 24.2%(8例)[5] |
高橋哲也ほかのグループは、初回にdebridementを行った海外の別の報告(65例、来院から手術までの平均時間が生存群25時間・死亡群90時間、死亡率29.2%)と自施設のデータを並べたうえで、患者背景の違いから単純な比較はできないと断ったうえで、完全な壊死組織除去にこだわらない迅速な早期切開洗浄が重要な意味を持つ可能性があると述べています[5]。一方、帝京大学医学部のグループの報告では、初回から外科的デブリードマンを施行した症例が93%を占めています[1]。
この2つの報告は「どちらの手術方針が優れているか」を直接比較したものではなく、対象疾患の範囲(フォルニエ壊疽のみか、壊死性軟部組織感染症全般か)や症例数、施設も異なります。ここから確実に言えるのは、フォルニエ壊疽・壊死性軟部組織感染症の初回手術の具体的なやり方は、日本国内でも施設によって幅があり、「緊急手術が必要」という大枠は共通していても、その中身は担当医と患者の状態によって判断される部分が大きいということです。
費用の目安 — 高額療養費制度で自己負担には上限がある
フォルニエ壊疽の治療は、緊急手術・複数回のデブリードマン・ICUでの全身管理・場合によっては皮膚移植など、入院が長期化しやすく医療費も高額になりがちです。ただし日本の公的医療保険には「高額療養費制度」があり、1か月あたりの自己負担額には年齢・所得に応じた上限があります。上限を超えた分は後から払い戻されるか、事前に「限度額適用認定証」を提示すれば窓口での支払い自体を上限額までに抑えられます。具体的な上限額の早見表は以下のとおりです。
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
受診前にメモして持参するとよいこと
- 症状(痛み・腫れ・皮膚の色の変化)にいつ気づいたか、具体的な日時
- 糖尿病・肝硬変・腎不全など、現在治療中の病気とその薬
- 直近1〜2週間以内に受けた処置(尿道カテーテル・前立腺生検・肛門の手術など)の有無
- お酒を飲む習慣(頻度・量)
- 医師に聞きたいこと:手術は緊急で必要か/人工肛門・人工膀胱になる可能性はあるか/入院期間の見込み
フォルニエ壊疽は症例数が少ない疾患のため、日本国内全体を対象にした大規模な統計(発症率や年間患者数など)は、今回参照した資料の中には見当たりませんでした。本記事で示した死亡率10〜20%、糖尿病合併率60〜84%などの数字は、いずれも単一施設または限られた文献レビューに基づくものであり、日本全国の平均値として確定しているわけではない点にご留意ください。
よくある質問
フォルニエ壊疽とはどんな病気ですか?
フォルニエ壊疽は何科を受診すればいいですか?
フォルニエ壊疽の初期症状は?
フォルニエ壊疽と壊死性筋膜炎は同じ病気ですか?
フォルニエ壊疽は女性でもなりますか?
フォルニエ壊疽の治療費はどのくらいかかりますか?
フォルニエ壊疽は再発しますか?
参考文献
- 坂本昭彦, 金子智之, 金谷淳志, 木村将貴, 高橋さゆり, 山田幸央, 三宅康史, 坂本哲也, 中川徹「フルニエ壊疽15例の臨床的検討」日本泌尿器科学会雑誌 112巻2号 p.65-69(2021年) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjurol/112/2/112_65/_article/-char/ja/ ↩
- 野田昌宏, 盛真一郎, 出先亮介, 馬場研二, 喜多芳昭, 柳田茂寛, 柳政行, 奥村浩, 石神純也, 夏越祥次「フルニエ壊疽の重症度評価法と治療法に関する検討」日本腹部救急医学会雑誌 34巻6号 p.1107-1112(2014年) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaem/34/6/34_1107/_article/-char/ja/ ↩
- 石川耕資, 南本俊之, 一村公人, 本田進, 蕨雄大, 古川洋志「壊死性筋膜炎と重症蜂窩織炎の鑑別診断におけるLRINEC scoreの有用性の検討」創傷(日本創傷外科学会)5巻1号 p.22(2014年) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsswc/5/1/5_22/_article/-char/ja/ ↩
- 志馬伸朗ほか(日本集中治療医学会・日本救急医学会 日本版敗血症診療ガイドライン2024作成委員会)「日本版敗血症診療ガイドライン2024」日本集中治療医学会雑誌 31巻Supplement号(2024年) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/31/Supplement/31_2400001/_article/-char/ja/ ↩
- 高橋哲也, 永田功, 藤澤美智子, 土井賢治, 中山祐介, 武居哲洋「壊死性軟部組織感染症の臨床的特徴の検討」日本臨床救急医学会雑誌 22巻3号 p.475-480(2019年) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/22/3/22_475/_article/-char/ja/ ↩
- 厚生労働省「身体障害者手帳」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/shougaishatechou/index.html
更新日:2026年7月18日。内容に誤りや古い情報にお気づきの際はご連絡ください。事実を確認のうえ訂正します。
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