帯状疱疹後神経痛はいつまで続く?何科で治療・薬の選び方
この記事でわかること
目次
結論からお伝えします。日本皮膚科学会のガイドライン2025によると、帯状疱疹後神経痛(PHN)は、皮膚の症状(水疱・発疹)が治った後も痛みだけが居残る、帯状疱疹の合併症の中でもっとも頻度が高いものです[1]。厚生労働省の帯状疱疹ワクチンのページも、帯状疱疹の合併症の一つとして、皮膚の症状が治った後にも痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」を挙げ、日常生活に支障をきたすこともあるとしています[2]。
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
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症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
日本皮膚科学会のガイドラインによれば、50歳を過ぎると帯状疱疹そのものにかかりやすくなり、あわせてPHNに移行する割合も上がる傾向があります[1]。同ガイドラインが示す、今わかっている防ぎ方は大きく2つ、皮疹が出てから72時間以内に抗ウイルス薬による治療を始めることと、帯状疱疹ワクチンを接種しておくことです[1]。すでに痛みが長引いている場合も、同ガイドラインは薬のグループ(三環系抗うつ薬やCa²⁺チャネルα2δリガンドなど)や神経ブロックといった選択肢を挙げており、皮膚科だけでなくペインクリニック(麻酔科)という受診先もあります[1]。
要点まとめ(日本皮膚科学会のガイドライン2025に基づく5つのポイント[1])
- PHNは「皮膚は治ったのに痛みだけ残る」帯状疱疹の合併症で、頻度がもっとも高い。
- 50歳以上・急性期に強い灼熱痛やしびれ(アロディニア)があった人は、PHNに移行しやすい傾向がある。
- 予防の柱は「発症後72時間以内の抗ウイルス薬」と「帯状疱疹ワクチン」の2つ。
- 治療は市販の痛み止め(NSAIDs・アセトアミノフェン)だけでは効きにくいことが多く、三環系抗うつ薬やCa²⁺チャネルα2δリガンドなどの薬のグループ、神経ブロックが選択肢になる。
- 皮疹が治った後も痛みが続く場合は、皮膚科だけでなくペインクリニック(麻酔科)への相談が選択肢になる。
編集方針:JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会・査読論文と照合して作成。最終確認は人の目。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点)。
受診先の早見表(日本皮膚科学会のガイドライン2025が示す診断治療アルゴリズムをもとに整理[1]。詳しくは本文の表でも解説)
- 皮疹がまだ残っている・出たばかり →「皮膚科」で抗ウイルス薬の治療を
- 目のまわりの皮疹・目の充血がある →「眼科」も受診
- 耳の水疱・顔が動かしにくい →「耳鼻科」も受診
- 排尿しにくい →「泌尿器科」も受診
- 皮疹は治ったのに痛みだけ続く →「ペインクリニック(麻酔科)」への相談を検討
帯状疱疹後神経痛(PHN)とは?皮膚が治っても痛みが残る仕組み
日本皮膚科学会のガイドライン2025によれば、帯状疱疹は、子どものころにかかった水痘(水ぼうそう)のウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)が体の中に潜伏し続け、加齢や体調不良などで免疫の働きが落ちたときに再び暴れ出す病気です[1]。ウイルスは、脊髄のすぐそばにある「後根神経節」という神経の集まりに潜伏しており、再活性化すると神経の通り道(軸索)を伝わって皮膚まで移動し、そこで小さな水疱をつくります[1]。神経の走行に沿って皮膚症状が帯状に出るのは、このためです。1本の神経(デルマトーム)が担当する皮膚の範囲は体の左右どちらか一方に限られているため、帯状疱疹の皮疹も体の正中線を越えず、片側だけに帯状に現れるのが典型的な特徴です[1]。なお、まれに皮疹が神経の支配領域を超えて全身に紅斑・丘疹となって広がることがあり、これを汎発疹と呼びますが、この場合はウイルスが血液に乗って全身に広がった状態(ウイルス血症)を発症していると同ガイドラインは説明しています[1]。これとは別に、顔や頭部を含む三叉神経第一枝の領域に帯状疱疹が起こると眼の合併症を起こしやすいことも同ガイドラインは説明しており、なかでも鼻の付け根から鼻先(鼻背部・鼻尖部)にあたる鼻毛様体神経の支配領域に皮疹が及んだ場合は、結膜炎・角膜炎・ぶどう膜炎などの眼合併症を高い頻度で起こしてくるとされ、これは「Hutchinson徴候」と呼ばれています[1]。外耳のあたりに皮疹が出ると、顔の動きに関わる神経が巻き込まれてHunt症候群(顔面神経麻痺の合併症)を起こしやすいとされ、これらは前述の「今すぐ受診が必要なサイン」につながる知識です[1]。
日本皮膚科学会のガイドライン2025は、この過程を「侵害受容性疼痛」という、通常のケガと同じタイプの痛みとして説明しています[1]。同ガイドラインによると、皮膚病変が軽快・消失したにもかかわらず痛みが重症化したり長引いたりする場合、それは組織の損傷そのものではなく、神経自体の働き方の異常による「神経障害性疼痛」に切り替わっていると考えられており、これがPHNです[1]。同ガイドラインは、PHNの痛みの特徴として「針で刺さるような痛み」「電気が走るような痛み」「焼けるようなひりひりする痛み」「しびれの強い痛み」、そして衣服が擦れたり冷たい風にあたったりするだけで痛みが増す状態(アロディニア)を挙げています[1]。
厚生労働省の帯状疱疹ワクチンのページも、帯状疱疹を「水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化することにより、神経に沿って、典型的には体の左右どちらかに帯状に、時に痛みを伴う水疱(水ぶくれ)が出現する病気」と説明し、合併症の一つとして、皮膚の症状が治った後にも痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」を挙げています[2]。
帯状疱疹は決して珍しい病気ではありません。日本皮膚科学会のガイドラインによると、米国では年間およそ100万人、日本でも年間およそ60万人が帯状疱疹を発症すると推定されています[1]。発症数は年々増える傾向にあり、海外では30年間で64%増加、日本でも1997年から2019年の間に63.8%増加したと報告されています[1]。年齢別にみると、10歳代でいったん小さな山があり20〜30歳代でやや下がったあと、50歳代以降に急激に増えて70歳代で大きな山を迎えるという、2つの山を描く分布が多くの国で観測されています[1]。
「一度なったら二度とならない」というものでもありません。日本皮膚科学会のガイドラインによると、帯状疱疹の再発の危険性は1〜6%とされ、長期の追跡調査ではハイリスクの人で5〜6%を示したとする報告があり、本邦の報告では6.41%だったとされています[1]。単純ヘルペスウイルスによる口唇ヘルペスや性器ヘルペスのように頻回に繰り返すことは通常ないとされていますが[1]、再発しないと言い切れるわけではないため、一度治った後も、目・耳・排尿にかかわる新たな症状が出た場合は同じように注意が必要です。なお入院率は、年間10万人あたり2〜25人で、高齢者ほど高率になるとされています[1]。
痛みの性質は、時期によって変わります。日本皮膚科学会のガイドラインは、皮膚症状が出る前・出た直後・治った後で、痛みの呼び方と表現が変わることを整理しています[1]。
| 痛みの段階 | いつ起こるか | ガイドラインが示す痛みの表現 |
|---|---|---|
| 前駆痛 | 皮膚症状が出現する数日前から | 「ヒリヒリ」「チクチク」「ピリピリ」[1] |
| 帯状疱疹痛(急性期) | 皮膚病変が出ている間 | 「ピリピリ」「ジンジン」「ズキズキ」「チカチカ」「キリキリ」[1] |
| 帯状疱疹後神経痛(PHN) | 皮膚症状が治まった後 | 神経の走行に一致し、針で刺されるような痛み、電気が走るような痛み、焼けるようなひりひりする痛み、しびれの強い痛み。衣服が擦れたり冷たい風にあたったりするだけで痛みが増すこともある[1] |
出典:日本皮膚科学会「帯状疱疹診療ガイドライン2025」をもとにJHO編集部が整理[1]
この段階分けが役立つのは、「今の痛みが治療でどう変わっていくのが自然な経過なのか」を見立てる手がかりになる点です。皮膚症状にあわせて痛みの性質そのものが変わってきた(ズキズキから、刺すような・しびれるような痛みに変わってきた)と感じる場合は、次の見出しで説明する神経障害性疼痛としての治療を検討する時期に近づいている可能性があります。
今の血圧・脈拍を確かめる
数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
身長と体重からBMIも調べる
血圧手帳(この端末に保存)
これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
「いつまで続くのか」——痛みの経過と基準をどう見るか
ここは、正直にお伝えしなければなりません。今回、日本皮膚科学会のガイドライン2025[1]と厚生労働省の資料[2]を実際にダウンロード・閲覧して確認した範囲では、どちらも「発症から何日以上」「皮疹が治ってから何か月以上」という具体的な区切りの日数までは明記していませんでした。両方の資料が説明しているのは、PHNを「皮膚の症状が治った・軽快したにもかかわらず、痛みが重症化あるいは遷延した状態」という性質でとらえる考え方です[1][2]。
解説記事やクリニックのサイトでは「発症からおよそ90日」「皮疹が治ってから3か月」といった目安が使われていることがありますが、本記事が一次資料として直接確認できた範囲ではその具体的な日数を裏づけることができませんでした。数字を確認できない以上、ここで断定的な日数を書くことは避けます。臨床的に大切なのは、正確な日数そのものよりも「皮疹が治った後も痛みが弱まらずに続いている、あるいはむしろ強くなっているか」という経過の向きです。その状態が続く場合は、後述する治療の対象になります。
帯状疱疹後神経痛になりやすい人・関係する要因
日本皮膚科学会のガイドラインによると、50歳以上になると帯状疱疹そのものの発症率が上がり、あわせてPHNの発症率も高くなることが示されています[1]。本邦の調査では、帯状疱疹の平均発症率は1,000人あたり年間4.83人で、50歳未満が2.66〜2.83人であるのに対し、50歳以上では5.45〜8.48人と高くなっています[1]。帯状疱疹の50%以上は60歳以上で起こり、80歳までに約30%の人が帯状疱疹を経験すると推定されています[1]。同ガイドラインの別の箇所では、80歳までにおよそ3人に1人が帯状疱疹を発症すると述べられており[1]、これは引用している調査が異なる推定値です。いずれにしても、80歳までに3割前後の人が帯状疱疹を経験するとみてよいでしょう。50歳以上が国内外で帯状疱疹ワクチンの対象年齢になっているのは、この年齢層で発症率とPHNの発症率がともに高くなることが背景にあります[1]。
もう一つ、同ガイドラインが示しているのが急性期の痛みの性質です。灼熱痛やしびれとともに、アロディニア(軽い刺激でも痛みが増す状態)や痛覚過敏が急性期にみられた場合は、PHNに移行しやすいと報告されています[1]。つまり「最初の痛みが軽い、鈍いだけ」の人よりも「刺すような・焼けるような・衣服が触れるだけでも痛い」といった神経障害性疼痛らしい症状が急性期からある人のほうが、痛みが長引く可能性が高いと考えられています。
やや専門的な指標ですが、同ガイドラインは水痘抗原に対する皮内反応(細胞性免疫の強さを示す検査)が弱い人ほど、帯状疱疹の重症度やPHNの発症リスクが高い傾向があったという国内疫学研究(小豆島での調査、対象者12,522人)も紹介しています[1]。この調査では、皮内反応で紅斑の直径が10mm以上出たグループは10mm未満のグループに比べて帯状疱疹の発症リスク比が0.27と低く、帯状疱疹を発症した人の中でも、皮内反応が強かった人ほど皮疹の重症度・急性期および亜急性期の痛みの重症度・PHNの発症リスクが低かったと報告されています[1]。ただし同検査は2024年3月時点で生産が中断されており、一般的に受けられる検査ではありません[1]。血清中のウイルス抗体価そのものは、帯状疱疹の発症や重症化、PHNの発症リスクとは相関しないことも同ガイドラインで示されており、抗体価の測定だけでリスクを予見することは推奨されていません[1]。
帯状疱疹はなぜ増えているのか——子どもの水痘ワクチンとの関係
「最近、帯状疱疹が増えている気がする」という印象は、データにも表れています。日本皮膚科学会のガイドラインは、2014年10月から子ども向けの水痘(水ぼうそう)ワクチンの定期接種が始まり、2016年以降は水痘そのものが年間を通じて減少したと説明しています[1]。一方で、帯状疱疹の発症数・発症率は、水痘ワクチンの定期接種導入後、10歳未満では低下がみられたものの、それ以外の年齢層では全体的に上昇したとされています[1]。10〜40歳代の発症率上昇にともない、10歳代と70歳代に山がある2峰性の分布も薄らいできているといいます[1]。
同ガイドラインは、水痘ワクチンの定期接種化が特に若年層の帯状疱疹発症率に大きな影響をもたらしているものと考えられるとしたうえで[1]、高齢者人口の増加、がん・自己免疫疾患の治療方法の変化、臓器移植の増加、そしておそらく小児の水痘予防接種の結果として、帯状疱疹の発症率は今後さらに増加すると予測しています[1]。50歳以上への帯状疱疹ワクチン接種は、こうした流れの中で重みを増している対策だといえます。
防ぐことはできるのか——72時間以内の抗ウイルス薬とワクチン
PHNを防ぐ手立てとして、日本皮膚科学会のガイドラインが強く推奨しているのが、急性期帯状疱疹への抗ウイルス薬の全身投与です[1]。同ガイドラインは「ウイルスDNA合成が盛んな発症早期に最も効果を発揮するので、皮疹出現後72時間(3日)以内が最も適した投与開始時期である」としています[1]。添付文書上は皮疹出現後5日以内の開始が望ましいとされていますが、早ければ早いほど、ウイルス排出期間の短縮や新しい皮疹の形成停止、皮膚病変の治癒促進、痛みの軽減につながると報告されています[1]。「様子を見てから病院に行く」という判断が、痛みを長引かせる方向に働く可能性があるということです。
もう一つの柱がワクチンです。2025年度から、65歳の方などへの帯状疱疹ワクチンの接種が、予防接種法に基づく定期接種の対象になりました[2]。厚生労働省によると、対象は65歳を迎える方、そしてHIVによる免疫の機能障害で日常生活がほとんど不可能な60〜64歳の方です[2]。あわせて2025年度から2029年度までの5年間は経過措置として、その年度内に70・75・80・85・90・95・100歳になる方も対象に含まれます(100歳以上の方は2025年度に限り全員が対象です)[2]。ワクチンには生ワクチンと組換えワクチンの2種類があり、いずれか1種類を接種します[2]。
| 項目 | 生ワクチン | 組換えワクチン |
|---|---|---|
| 接種方法・回数 | 皮下に1回[2] | 2か月以上あけて筋肉内に2回[2] |
| 帯状疱疹への効果(接種後1年時点) | 6割程度の予防効果[2] | 9割以上の予防効果[2] |
| 帯状疱疹への効果(接種後5年時点) | 4割程度の予防効果[2] | 9割程度の予防効果[2] |
| 帯状疱疹への効果(接種後10年時点) | データなし[2] | 7割程度の予防効果[2] |
| PHNへの効果(接種後3年時点) | 6割程度[2] | 9割以上[2] |
| 代表的な副反応(頻度が高いもの) | 接種部位のそう痒感・熱感・腫脹・疼痛・硬結など[2] | 疼痛・発赤・筋肉痛・疲労など[2] |
出典:厚生労働省「帯状疱疹ワクチンの定期接種について」[2]
日本皮膚科学会のガイドラインが引用している大規模臨床試験の数字も参考になります。組換えワクチンについて、日本を含む18カ国の50歳以上を対象とした試験と、70歳以上を対象とした試験をあわせて解析(70歳以上・計16,596例)したところ、帯状疱疹に対するワクチンの有効率は91.3%、PHNへの有効率は88.8%で、追跡4年目の有効率も93.1%、長期追跡での接種後10年目の有効率は73.2%と報告されています[1]。生ワクチンについては、米国での60歳以上約4万人を対象とした試験で、平均3.12年の追跡期間中、帯状疱疹の発症頻度がプラセボ群に比べて51.3%減少、PHNは66.5%減少、重症度も61.3%減少したとされています[1]。ただし生ワクチンの効果は接種後8年、疾病負荷に対する効果は10年で統計学的に有意な差が消えることも報告されています[1]。
ここで注意していただきたいのは、厚生労働省のページが示す数字(接種後3年時点でPHNへの効果が生ワクチン6割程度・組換えワクチン9割以上)と、日本皮膚科学会のガイドラインが引用する臨床試験の数字(組換えワクチンのPHN有効率88.8%など)は、対象年齢や追跡期間、算出方法が異なるという点です[1][2]。この2つの数字をそのまま足したり平均したりすることはできません。厚生労働省の数字は定期接種の説明用にまとめられたもの、日本皮膚科学会が引用する数字は特定の臨床試験(ZOE試験)に基づくものと、出どころが違うためです。どちらのワクチンを選ぶかは、接種回数・副反応の出方・費用も含めて、医師と相談のうえで決めることになります[2]。
なお、接種を受けられない・注意が必要な場合もあります。厚生労働省によると、この予防接種の接種液の成分でアナフィラキシーを起こしたことがある方は接種を受けられません。また、発熱している方や重篤な急性疾患にかかっている方は、治ってから接種を受けるようにする必要があります[2]。生ワクチンを希望する場合は、これに加えて病気や治療によって免疫の働きが低下している・低下する可能性がある方は接種できません[2]。厚生労働省はこのほか、心臓血管系疾患・腎臓疾患・肝臓疾患・血液疾患などの基礎疾患がある方や、けいれんを起こしたことがある方なども、あらかじめ医師に相談したうえで接種を検討する対象として挙げています[2]。とくに組換えワクチンを希望する場合は、血小板減少症や凝固障害がある方、抗凝固療法を受けている方は注意が必要だとされています[2]。PHNについて調べている方には、脳梗塞や心房細動などで抗凝固薬・抗血小板薬を服用している高齢の方も少なくないと考えられるため、こうした薬を使っている場合は、接種前に必ずその旨を医師や薬剤師に伝えることをおすすめします。日本皮膚科学会のガイドラインも、生ワクチンについては妊婦、寛解していない血液がんの患者、造血幹細胞移植後の患者、固形がんで3か月以内に化学療法を受けている患者、免疫抑制療法中の患者やHIV感染者など、帯状疱疹の発症リスクが高いと考えられる患者には禁忌であると指摘しています[1]。一方、組換えワクチンは不活化ワクチンであるため、免疫抑制状態の患者を含め50歳以上に接種の適応があり、2023年6月からは、帯状疱疹の発症リスクが高いと考えられる18歳以上にも接種対象が拡大されています[1]。自治体や医療機関によって取り扱うワクチンの種類や費用は異なるため、お住まいの自治体の案内も確認するよう、厚生労働省は呼びかけています[2]。
治療は何がある? 薬のグループと神経ブロック
「市販薬で何とかならないか」と考える方も多いはずですが、ここは率直にお伝えします。日本皮膚科学会のガイドラインは、PHNに対してNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)やアセトアミノフェンは無効であることが多いとしています[1]。PHNは組織の傷そのものではなく神経障害性疼痛であるため、ケガや発熱に使う一般的な痛み止めの効き方とは仕組みが異なるためです[1]。
同ガイドラインは、日本ペインクリニック学会の神経障害性疼痛薬物療法ガイドラインなどに沿った治療を推奨しており、三環系抗うつ薬とCa²⁺チャネルα2δリガンドという2つの薬のグループを、PHNに対する有効性のエビデンスが高い薬として挙げています[1]。日本ペインクリニック学会自身の治療指針でも、Ca²⁺チャネルα2δリガンドという薬のグループはシナプス前の電位依存性カルシウムチャネルに結合して興奮性の神経伝達物質の放出を抑える働きを持ち、神経障害性疼痛の第一選択薬に位置づけられていると説明されています[3]。同学会は、このグループの副作用として眠気・ふらつき・めまいが多くみられ、特に高齢者では転倒につながるおそれがあるため注意が必要だとしています[3]。
三環系抗うつ薬とCa²⁺チャネルα2δリガンドで痛みが十分に和らがない場合、日本皮膚科学会のガイドラインはトラマドールなどのオピオイド系鎮痛薬を選択肢に挙げています[1]。トラマドールはPHNへの有効性やQOL(生活の質)の改善効果が示されている一方、モルヒネや貼付タイプの強いオピオイド系鎮痛薬は有効性が限られる面や注意すべき問題があり、使用する場合は処方に精通した専門家への相談が望ましいとされています[1]。薬による治療に痛みが十分に反応しない場合は、神経ブロックも否定されておらず、硬膜外ブロック・星状神経節ブロック・末梢神経ブロック(三叉神経末梢枝ブロック・浅頸神経叢ブロック・肋間神経ブロックなど、痛みのある場所に応じた神経ブロック)といった選択肢が検討されます[1]。日本皮膚科学会のガイドラインは、こうした神経ブロックが急性期の痛みの緩和だけでなく、PHNへの移行を防ぐ効果も有するとされていると紹介しています[1]。ただし同ガイドラインは、治療の解説とは別に、エビデンスの確からしさを個別に評価する「クリニカルクエスチョン」の項目(CQ20)でも神経ブロックを取り上げており、そこでは「硬膜外ブロックを行うことは、急性期の痛みの緩和、有痛期間の短縮などの中等度以上のエビデンスがある。ただし、硬膜外ブロックがPHNの発生率を軽減できるかについては十分なエビデンスがない」としています[1]。つまり、急性期の痛みをやわらげる効果には比較的しっかりしたエビデンスがある一方、もっとも代表的な硬膜外ブロックに関しては「PHNへの移行そのものを防げるか」はまだ十分な根拠が示されていないという、慎重な評価もあわせて示されているということです。神経ブロックは麻酔科・ペインクリニックが専門的に扱う治療であり、薬物療法と組み合わせて検討されることが多い治療です[1]。
| 位置づけ | 薬・治療のグループ | ポイント |
|---|---|---|
| 効きにくいことが多い | NSAIDs・アセトアミノフェン | PHNに対しては無効であることが多いとされる[1] |
| 有効性のエビデンスが高いとされる | 三環系抗うつ薬 | PHNに対する有効性のエビデンスが高く推奨される[1] |
| 有効性のエビデンスが高いとされる | Ca²⁺チャネルα2δリガンド | 神経障害性疼痛の第一選択に位置づけられる。眠気・ふらつきに注意[3] |
| 上記が無効な場合の選択肢 | トラマドールなどのオピオイド系鎮痛薬 | PHNへの有効性・QOL改善効果が示されている[1] |
| 薬物療法に反応しない場合 | 神経ブロック | 硬膜外・星状神経節・末梢神経ブロックなどが選択肢[1] |
出典:日本皮膚科学会「帯状疱疹診療ガイドライン2025」[1]、日本ペインクリニック学会「ペインクリニック治療指針」第Ⅲ章 薬物療法[3](薬の一般名・具体的な用量はガイドラインごとに異なるため本記事では記載していません。実際の薬の選択・量は医師にご確認ください)
詳しい抗ウイルス薬の使い方や急性期のセルフケアについては、帯状疱疹|抗ウイルス薬治療とセルフケア・痛みの和らげ方で詳しく解説しています。
薬のグループの選び方は日本だけの考え方なのか
三環系抗うつ薬やCa²⁺チャネルα2δリガンドが優先されるのは、日本だけの独自ルールではありません。日本ペインクリニック学会の治療指針は、国際疼痛学会のガイドラインと、日本ペインクリニック学会自身の神経障害性疼痛薬物療法ガイドラインの両方で、三環系抗うつ薬が神経障害性疼痛の第一選択薬に挙げられていると説明しています[3]。同学会は、三環系抗うつ薬が神経障害性疼痛全般に有効なだけでなく、灼けるような・締めつけられるような・しびれるような持続痛やアロディニアに有効とされ、有痛性糖尿病性神経障害と並んで帯状疱疹後神経痛でも強いエビデンスがあるとしています[3]。
もちろん、国によって承認されている薬の種類や保険の適用範囲は異なります。ですが「まず市販の痛み止め(NSAIDs・アセトアミノフェン)ではなく、神経障害性疼痛用の薬のグループから検討する」という骨格そのものは、日本の学会だけが特別に採用しているわけではなく、国際的な指針でも土台として共有されている考え方だといえます[1][3]。どの薬のグループを、どの順番で、どの量から試すかは個々の持病や年齢によって変わるため、最終的な組み合わせは医師の判断によります。
神経ブロックとはどんな治療か
「神経ブロック」という言葉だけを聞くと身構えてしまう方もいるかもしれませんが、これは痛みを伝える特定の神経の近くに麻酔薬などを作用させて、過剰になった痛みの信号の伝わりを一時的に和らげる治療の総称です[1]。日本皮膚科学会のガイドラインは、硬膜外ブロック・星状神経節ブロック・末梢神経ブロックのように、痛みが出ている場所や神経の走行に応じていくつかの種類があると説明しています[1]。薬物療法だけでは痛みが十分に和らがない場合の選択肢として位置づけられており、薬物療法と置き換えるものというより、組み合わせて使うことが多い治療です[1]。神経ブロックを専門的に行うのはペインクリニック(麻酔科)であり、実施にあたっては手技に精通した医師への相談が前提になります[1]。
ここで気をつけたいのは、神経ブロックが「1回受ければ終わり」の治療とは限らない点です。日本皮膚科学会のガイドラインが示す位置づけは、急性期の痛みの緩和とPHNへの移行予防、そしてすでにPHNになった場合の痛みのコントロールという、複数の場面にまたがっています[1]。どのタイミングで、どの神経ブロックを、何回程度検討するかは、痛みの部位や重症度、持病によって個別に判断されるため、この記事で一律の回数や期間をお伝えすることはできません。気になる場合は、ペインクリニックの受診時に直接確認することをおすすめします。
受診の目安と何科に行くべきか
今すぐ受診が必要なサイン(帯状疱疹の合併症)——日本皮膚科学会のガイドライン2025が示す診断治療アルゴリズムより[1]
- 目のまわりに皮疹がある・結膜の充血がある → 眼科を受診
- 外耳道に水疱がある、または顔が動かしにくい(顔面神経麻痺) → 耳鼻科を受診
- お尻や陰部に水疱がある、または排尿しにくい → 泌尿器科を受診
- 水疱が残っている・発症から5日以内なのに未受診 → できるだけ早く皮膚科を受診
日本皮膚科学会のガイドラインが示す診断治療のアルゴリズムでは、これらの合併症の有無を確認したうえで、経過観察や潰瘍の治療、そして痛みが続く場合の「ペインクリニック受診」までを一連の流れとして示しています[1]。つまり、皮疹があるうちは皮膚科が中心ですが、皮膚症状が治まった後も痛みだけが続く場合は、皮膚科に加えてペインクリニック(麻酔科)が受診先の選択肢になるということです。
| 状況 | 受診先の目安 | 根拠 |
|---|---|---|
| 皮疹が出ている急性期 | 皮膚科 | 診断・抗ウイルス薬治療の中心[1] |
| 目のまわりの皮疹・結膜充血 | 眼科 | 眼合併症を起こしやすい部位[1] |
| 外耳道の水疱・顔面神経麻痺 | 耳鼻科 | Hunt症候群などの合併症[1] |
| 排尿しにくい | 泌尿器科 | 神経症状としての排尿障害[1] |
| 皮疹は治ったが痛みが続く | ペインクリニック(麻酔科) | ガイドラインの治療アルゴリズムに沿った受診先[1] |
出典:日本皮膚科学会「帯状疱疹診療ガイドライン2025」の診断治療アルゴリズムをもとにJHO編集部が整理[1]
「治らないのでは」と感じたとき——長引く痛みとの向き合い方
「治らない」という不安で検索する方が多いことも理解しています。ここで誇張はしません。日本皮膚科学会のガイドラインが掲げる治療目標は、「急性期の疼痛を軽減し、なるべくPHNを残存させない」ことであり[1]、PHNになった場合の治療目標も、痛みをゼロにすると約束するものではなく、薬のグループや神経ブロックを組み合わせて痛みを和らげ、生活の質(QOL)を保つことに置かれています[1]。トラマドールについては、痛みへの有効性だけでなくQOLの改善効果も示されていると報告されており[1]、痛みの強さだけでなく「生活にどれだけ支障が出ているか」も治療を見直す目安になります。
一つの薬のグループで十分な効果が出なくても、それで「打つ手がない」ということではありません。三環系抗うつ薬・Ca²⁺チャネルα2δリガンド・オピオイド系鎮痛薬・神経ブロックと、複数の選択肢が段階的に用意されています[1]。皮膚科での治療だけで痛みが十分に和らがない場合、ペインクリニックでは薬の調整と神経ブロックの両方を専門的に扱っているため、選択肢を広げるという意味でも相談する価値があります[1]。
受診時に持参すると役立つメモ
- 皮疹が出た日・治った日(わかる範囲でよい)
- 痛みの性質(刺すような/焼けるような/衣服が触れるだけで痛いか)
- 現在使っている薬・サプリメントの種類(お薬手帳があれば持参)
- 痛みで困っている生活場面(眠れない・服を着るのがつらい等)
- 医師に聞きたいこと(薬のグループを変える余地はあるか/ペインクリニックへの紹介は可能か など)
よくある質問
市販薬で治りますか?
家族にうつることはありますか?
痛みだけでなく生活のつらさも相談していいですか?
今回参照した日本皮膚科学会・厚生労働省・日本ペインクリニック学会の資料には、PHNを定義する具体的な日数(発症後何日、皮疹治癒後何か月など)は見当たりませんでした。この点は本記事内でも繰り返しお伝えした通り、断定を避けています。また、PHNの痛みが数か月・数年のうちにどの程度の割合で軽快していくかという長期の経過(自然経過)についても、本記事が直接確認できた一次資料の範囲では具体的な統計を確認できませんでした。目のまわりの帯状疱疹(眼部帯状疱疹)については、目の帯状疱疹(眼部帯状疱疹)とは?症状と眼科受診の目安で別途詳しく解説しています。神経が原因となる痛みという点では、三叉神経痛や後頭神経痛など、原因の異なる神経痛もあります。痛みの場所や性質によって疑われる病気が変わるため、自己判断せず医師に相談することをおすすめします。
更新日:2026年7月26日。本記事の内容に誤りや古い情報を見つけた場合は、事実を確認のうえ訂正しますので、お問い合わせフォームよりお知らせください。
参考文献
- 日本皮膚科学会「帯状疱疹診療ガイドライン2025」日本皮膚科学会雑誌135巻3号,527-556,2025 https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/Taijouhoushin2025.pdf ↩
- 厚生労働省「帯状疱疹ワクチンの定期接種について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/shingles/index.html ↩
- 日本ペインクリニック学会「ペインクリニック治療指針」第Ⅲ章 薬物療法 https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/pdf/shi-guide06_10.pdf ↩
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