慢性疲労症候群(ME/CFS)とは?診断基準と何科を受診すべきか
この記事でわかること
目次
- 慢性疲労症候群(ME/CFS)とは? 「疲れ」と何が違うのか
- 労作後倦怠感(PEM)の仕組み——なぜ「動くと悪化する」のか
- 体の中で何が起きていると考えられているか——免疫と炎症の視点から
- 診断基準の変遷と2015年IOM基準の中身
- 受診の目安——どんな症状で、何科に相談すべきか
- 治療・向き合い方——運動療法(GET)はなぜ慎重に扱われるのか
- 結論——強い疲労が続くなら、まず医療機関へ
- 起立性調節障害(立つとつらくなる)はどう調べるのか
- 他の病気との見分け方——除外が必要な代表的な病気
- 「エネルギーが作れない」——ミトコンドリア機能の視点から
- 「疲労が何ヶ月続いたら」対象になるか——期間の考え方
- 新型コロナ後遺症(罹患後症状)との関係
- 日本と国際的な議論のズレ——「気の持ちよう」ではない
- よくある質問
- 参考文献
慢性疲労症候群(ME/CFS)は、単なる「疲れ」ではなく、休んでも改善しない疲労が6ヶ月以上続き、わずかな活動のあとに症状が遅れて悪化する「労作後倦怠感(PEM)」を中心症状とする病気です。[1]
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国際的に広く使われる2015年米国医学アカデミー(IOM)基準では、①活動量の大幅な低下が6ヶ月以上・②労作後倦怠感(PEM)・③休んでも回復しない睡眠、の3つに加え、④認知機能の障害か⑤起立性調節障害のどちらか一方が必須と報告されています[1]。強い疲労が長引く場合は、まず内科・総合診療科で他の病気を除外したうえで相談することが出発点になります。この病気は「気力の問題」でも「単なる怠け」でもなく、免疫や代謝など体の中の仕組みに関わる研究が進められている、れっきとした医学的な状態です。
編集方針:JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会・査読を経た医学論文と照合して作成。最終確認は人の目によって行っています。医師による個別診断の代わりにはなりません。診断基準や治療方針はガイドライン改定により変わることがあります(2026年8月時点の情報)。
慢性疲労症候群(ME/CFS)は、日本の「指定難病」制度における医療費助成の対象疾病一覧には含まれていません(今回参照した資料の範囲内では確認できませんでした)。医療費助成の可否や自己負担については、通っている医療機関や自治体の窓口に個別に確認することをおすすめします。
🔧 2015年IOM基準・5つの症状セルフチェック(診断そのものではなく、受診の必要性を考えるための目安です)
| 区分 | 症状 | 要件 |
|---|---|---|
| 必須① | 活動レベルの著しい低下が6ヶ月以上続く疲労 | 必須 |
| 必須② | 労作後倦怠感(PEM)——活動後に遅れて症状が悪化する | 必須 |
| 必須③ | 休んでも回復しない睡眠 | 必須 |
| いずれか一方④ | 認知機能の障害(思考力・記憶力の低下など) | ④⑤のうち1つ以上 |
| いずれか一方⑤ | 起立性調節障害(立つとめまい・動悸などが悪化) | ④⑤のうち1つ以上 |
出典:Fan J, et al. J Transl Med. 2026(PMC12801797)Table 1 をもとにJHO編集部が作成[1]。①〜③すべてに当てはまり、かつ④⑤のどちらか一方が6ヶ月以上続く場合は、医療機関への相談を検討する目安になります。確定診断には、他の病気の除外を含めた医師の評価が必要です。
慢性疲労症候群(ME/CFS)とは? 「疲れ」と何が違うのか
慢性疲労症候群(Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome、以下ME/CFS)は、原因不明の持続的な疲労が特徴で、休息をとっても改善せず、わずかな身体的・精神的活動によってしばしば悪化する病気です[1]。6ヶ月以上続く著しい疲労がこの病気の目印と報告されています[1]。
ME/CFSの患者は、疲労以外にも労作後倦怠感(PEM)、起立性調節障害、睡眠障害、筋肉痛、頭痛、認知機能の困難など、さまざまな症状を経験します[1]。特に認知機能の障害は、学業や仕事のパフォーマンスに影響し、心理的な負担を増やすことも指摘されていると報告されています[1]。
英国での調査では、ME/CFSの女性対男性の有病率は3.88対1で、40〜50歳代でその差が約6対1まで広がるという報告があります[1]。米国では、ME/CFSによる経済的損失は年間およそ180億〜510億ドルと推計されており、臨床的・社会的にも大きな課題と報告されています[1]。
興味深いことに、ME/CFSの推定有病率は、どの診断基準を採用するかによって大きく変わります。参照した総説によれば、比較的症状の範囲が広いオックスフォード基準では1.41%、1994年CDC基準(フクダ基準)では0.89%、オーストラリア基準では0.79%、より厳格なホームズ基準では0.17%と、基準ごとに最大8倍以上の開きがあると報告されています[1]。「どの基準で診断されたか」によって、同じ患者集団でも該当する人数が大きく変わりうるという点は、この病気を理解するうえで見落とされがちな重要なポイントです。
本記事が主に参照した情報源は、PubMed・Web of Science・Embase・Cochrane Libraryの4つの医学データベースを対象に、各データベースの登録開始時点から2025年8月までを検索期間として実施された、2026年公表のナラティブレビュー(総説論文)です[1]。単発の研究ではなく、複数の一次研究を横断的にまとめた総説を軸にすることで、特定の研究だけに偏らない情報提供を心がけています。
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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
労作後倦怠感(PEM)の仕組み——なぜ「動くと悪化する」のか
PEMは、通常の疲労とは質的に異なります。健康な人であれば、運動や活動のあとの疲労感はその日のうちか翌日には回復します。一方ME/CFSでは、家事や短い外出のようなわずかな負荷でも、症状の悪化が遅れて(目安として活動から約24時間以上経ってから)現れ、回復までに数日以上を要することがあるという報告があります[1]。この「遅れて悪化する」性質のため、患者自身も何がきっかけだったのか気づきにくく、悪化と改善を繰り返しながら活動量がじわじわ削られていくことがあります。
ME/CFSの病態生理はまだ完全には解明されていませんが、免疫の調節異常、酸化ストレス、ミトコンドリア機能の異常、神経炎症などが病態の中心にあると報告されています[1]。ただし、これらはあくまで研究段階の知見であり、確定的な単一の原因やメカニズムが特定されているわけではありません。
体の中で何が起きていると考えられているか——免疫と炎症の視点から
研究段階の知見として、ME/CFSでは炎症を促すサイトカインと抑えるサイトカインのバランスが崩れる「慢性的な低レベルの炎症」が中心的なメカニズムの一つとして繰り返し報告されています[1]。具体的には、IL-1β(インターロイキン1ベータ)、IL-6(インターロイキン6)、TNF-α(腫瘍壊死因子アルファ)、IFN-γ(インターフェロンガンマ)といった炎症を促す物質の上昇が、ME/CFS患者で一貫して観察されているとまとめられています[1]。IL-1βは視床下部・下垂体・副腎系(HPA系)や中枢神経系の炎症シグナルを刺激することで、疲労感やだるさを直接引き起こすとされ[1]、TNF-αは慢性的な炎症を通じて筋肉痛や疲労を促し[1]、IL-6の上昇は疲労や認知機能低下の重症度と相関する、と報告されています[1]。
こうした炎症性サイトカインは互いに増幅し合う関係にあり、IL-1βがIL-6の産生を促し、TNF-αがさらにIL-1βとIL-6の産生を後押しするという悪循環(正のフィードバックループ)を形成することが報告されています[1]。さらにIFN-γは血液脳関門(BBB)を乱すことで、末梢の炎症性物質が中枢神経系に入り込みやすくなり、神経炎症や神経学的な症状に関与すると考えられています[1]。一方でIL-13やTGF-β1のような炎症を抑える側のサイトカインの働きが乱れることで、炎症を促す側との均衡が崩れ、炎症が収束しにくくなるとも報告されています[1]。
免疫細胞そのものの機能異常も報告されており、特にT細胞・B細胞の働きに顕著な調節異常が見られると報告されています[1]。細胞性免疫を担うTh1細胞の働きが低下する一方、Th1とTh2のバランスが崩れることが異常な免疫反応を促し、病態に関与しているという報告があります[1]。これらはいずれも研究段階の知見であり、「炎症の数値を測れば診断できる」という単純な話ではない点に注意が必要です——現時点でME/CFSを確定できる血液検査などのバイオマーカーは確立されていません[1]。
診断基準の変遷と2015年IOM基準の中身
| 基準(発表年) | 中心となる症状 | 判定の考え方 |
|---|---|---|
| 1994年 CDC基準 | 慢性疲労 | 短期記憶・集中力の障害、咽頭痛、リンパ節の圧痛、筋肉痛・関節痛、頭痛、睡眠後も回復しない、労作後倦怠感——のうち4つ以上[1] |
| 2003年 カナダ基準 | 疲労・労作後倦怠感・睡眠障害・痛み | 神経・認知症状2つ以上+自律神経・神経内分泌・免疫のうち2領域から1つ以上の症状[1] |
| 2007年 NICE基準 | 新規発症・持続性・原因不明の疲労で活動量が著しく低下 | 労作後倦怠感(典型的には24時間以上遅れ、回復に数日)を特徴とする[1] |
| 2015年 IOM基準 | 疲労・労作後倦怠感(PEM)・休んでも回復しない睡眠 | 上記3つに加え、認知機能障害または起立性調節障害のどちらか一方が必須[1] |
出典:Fan J, et al.「Myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome (ME/CFS): diagnosis and management」J Transl Med. 2026, Table 1(各診断基準の比較表)をもとにJHO編集部が作成[1]
2015年に米国医学アカデミー(Institute of Medicine, IOM)が報告書「Beyond Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome: Redefining an Illness」として公表した基準は[2]、それまでの複数の基準(1988年CDC基準・1991年オックスフォード基準・1994年CDC基準・2003年カナダ基準・2007年NICE基準)を踏まえて整理されたもので、次の3つの症状を核としていると報告されています[1]。
- ①疲労:仕事・学業・社会生活・私生活の活動レベルが著しく低下し、それが6ヶ月以上続いている
- ②労作後倦怠感(PEM):身体的・認知的な負荷のあとに症状が悪化する
- ③休んでも回復しない睡眠(unrefreshing sleep)
この3つに加え、④認知機能の障害または⑤起立性調節障害(立ち上がると症状が悪化するなど)のどちらか一方が見られることが、IOM基準での判定の要件です[1]。うつ病や不安障害などのメンタルヘルスの問題があっても、それだけでME/CFSの診断が除外されるわけではないと報告されています[1]。うつ病を伴う場合の家族・周囲の関わり方はうつ病の人への接し方|家族と職場が知っておきたいことも参考にしてください。
受診の目安——どんな症状で、何科に相談すべきか
まず医療機関への相談を検討したいサイン
ME/CFSには確立された単一の検査(バイオマーカー)がなく、現在の診断は主に症状の経過をもとにした臨床的な判断に頼っていると報告されています[1]。そのため、まず疲労を引き起こす他の病気(甲状腺機能の異常、貧血、睡眠時無呼吸、うつ病など)がないかを調べる必要があり、最初の相談先は内科・総合診療科が現実的な選択肢になります。症状の内容によっては、循環器内科(起立性調節障害が疑われる場合)や心療内科・精神科(睡眠や気分の症状が強い場合)と連携しながら診療が進むこともあります。ただし、どの診療科がME/CFSを専門的に診ているかは地域や医療機関によって差が大きく、この点についてJHO編集部が確認できた全国共通の公的な案内は見つかりませんでした。
診断基準がいくつも存在し、単一の検査で確定できないという性質は、診断そのものを難しくしている大きな要因です。実際、参照した総説では、米国では患者の最大91%、欧州でも約60%が未診断のまま残っていると推定されており、診断を受けた患者であっても不適切な治療を受けていることが少なくないと指摘されていると報告されています[1]。診断がつかないまま「気のせい」「怠けている」という誤解にさらされる患者も多いとされ、症状を丁寧に記録して医療機関に伝えることが、診断への近道になります。日々の疲労の強さやPEMが出たタイミングを簡単な記録として残しておくと、診察の際に医師へ経過を正確に伝える助けになります。
ME/CFSを専門的に診療している医療機関の一覧や、日本国内における標準治療のプロトコルについては、今回参照した資料の範囲内では確認できませんでした。かかりつけの内科で相談したうえで、必要に応じて紹介を受けることをおすすめします。
治療・向き合い方——運動療法(GET)はなぜ慎重に扱われるのか
ME/CFSには、根本的な原因を取り除く「治療法」として確立されたものは、今回参照した資料の範囲では存在しません。管理の中心は、免疫調整・抗酸化療法・ミトコンドリア機能のサポート・神経炎症へのアプローチといった薬物療法と、認知行動療法(CBT)・運動療法(GET)・活動のペース配分(ペーシング)・伝統中国医学などの非薬物療法を組み合わせ、症状を和らげ、エネルギーを温存することと報告されています[1]。
ここで注意が必要なのは運動療法(GET)です。参照した総説では、認知行動療法(CBT)は症状管理の補助的な手段であって根治的なものではない一方、運動療法(GET)はその有害性の可能性から禁忌とされる、とまとめられています[1]。ME/CFSの中心症状が「動くと遅れて悪化する」PEMである以上、症状を無視した段階的な運動負荷はかえって状態を悪くしうる、という考え方です。運動量を増やす前に、必ず主治医と相談することが重要です。英国NICE(国立医療技術評価機構)が2021年10月に公表したガイドライン(NG206)でも、健常者向けに作られた汎用的な運動プログラムや、決まった量ずつ運動時間を増やしていく「固定的な段階的運動療法」をME/CFS患者に提供しないよう明記されており[3]、「動けないのは運動不足のせい」という考え方に基づく画一的な運動指導は行うべきではない、という方向に国際的な議論が転換してきています[3]。
「活動のペース配分(ペーシング)」は、症状が悪化しない範囲で活動と休息のバランスを管理する考え方で、非薬物療法の一つとして位置づけられていると報告されています[1]。参照した総説では、これらの非薬物療法(CBT・GET・ペーシング・伝統中国医学など)は、免疫調整や抗酸化療法などの薬物療法を補う形で、症状の重症度を和らげエネルギーを温存することを目的とすると整理されていると報告されています[1]。ただし、どの治療法にも「これをすれば必ず良くなる」というエビデンスの確立した標準治療は今回の資料の範囲では示されておらず、症状に応じた個別対応の必要性が強調されていると報告されています[1]。
結論——強い疲労が続くなら、まず医療機関へ
受診の際は、症状を思い出しながら口頭で説明しようとすると、疲労や思考力の低下(いわゆる「ブレインフォグ」)のために伝えたいことが抜け落ちてしまうことも少なくありません。あらかじめメモを用意しておくことで、限られた診察時間の中でも必要な情報を医師に伝えやすくなります。以下の項目は、参照した診断基準や管理方針の考え方をもとに、JHO編集部が受診準備用に整理したものです[1]。
- 強い疲労がいつから続いているか(〇年〇月頃〜)
- 活動したあと、どのくらい時間が経ってから症状が悪化するか(当日/翌日/数日後)
- 悪化したときの症状の内容(疲労感・頭痛・思考力の低下・立ちくらみなど)と、回復までにかかる日数
- 睡眠時間と、寝ても疲れが取れるかどうか
- 現在服用している薬・サプリメント
- すでに受けた検査(血液検査・甲状腺検査など)とその結果
起立性調節障害(立つとつらくなる)はどう調べるのか
2015年IOM基準で必須の一つとされる「起立性調節障害」は、立ったり座ったりする姿勢の変化によって、めまい・動悸・ふらつきなどの症状が悪化する状態です[1]。これを客観的に評価する方法として、心拍変動(HRV)、ヘッドアップティルト試験(HUTT)、アクティブスタンドテスト(起立試験)などが報告されています[1]。自律神経の異常は糖尿病など他の病気でも起こりうることが知られており、糖尿病性自律神経障害とは?知られざる合併症の正体を解説も自律神経症状を理解するうえで参考になります。HRVは自律神経の働きを非侵襲的に測る方法ですが外部要因の影響を受けやすく、HUTTは起立性調節障害の診断における「ゴールドスタンダード」とされる一方で専門的な設備が必要という制約があり、アクティブスタンドテストは簡便で低コストな検査方法である一方、軽微な自律神経の異常を検出する感度には限界があると報告されています[1]。
自律神経の異常に対する管理は、水分・塩分の摂取、弾性ストッキングなどの着圧衣、運動療法、薬物療法を組み合わせた多面的なアプローチが取られると報告されています[1]。水分・塩分摂取は血液量を増やして起立性低血圧を軽減することが目的ですが、重度の自律神経障害には不十分な場合があり、高血圧を招かないよう注意深い経過観察が必要と報告されています[1]。着圧衣は循環をサポートしますが、着け心地の面で負担になることもあるという報告があります[1]。ここでも、運動を用いる場合はPEMを悪化させないよう、量とペースの調整が欠かせません。なお、起立性の症状そのものについては起立性調節障害とは?怠けと違う仕組みと学校への伝え方でも詳しく取り上げています。
他の病気との見分け方——除外が必要な代表的な病気
疲労を主症状とする病気は多く、ME/CFSと診断する前に、まず他の病気の可能性を確認することが診断の出発点になります。参照した総説がまとめた診断基準の比較では、悪性腫瘍・自己免疫疾患・限局性の感染症のほか、統合失調症・躁うつ病(双極性障害)・物質乱用・摂食障害・器質性脳疾患の現在の診断がある場合は、除外の対象として評価が必要と報告されています[1]。一方で、うつ病や不安障害などのメンタルヘルスの問題があっても、それだけでME/CFSの診断が除外されるわけではなく、両者が併存しうると報告されています[1]。つまり「精神的な要因があるかどうか」と「ME/CFSかどうか」は、必ずしも二者択一ではありません。うつ病そのものとの違いや見分け方については適応障害とは?うつ病との違い・症状・休職や家族の対応までも参考になります。
また、痛みを主症状とする線維筋痛症など、ME/CFSと症状が重なる病気との関係についても研究が続けられていると報告されています[1]。どの病気が原因か、あるいは複数の病気が併存しているかどうかは自己判断がむずかしいため、医療機関での評価が必要です。
「エネルギーが作れない」——ミトコンドリア機能の視点から
もう一つ研究段階で注目されているのが、細胞内でエネルギー(ATP)を作り出す小器官「ミトコンドリア」の機能異常です。ME/CFS患者の末梢血単核球(PBMC)を調べた研究では、ミトコンドリアの中でATPを合成する最終段階を担う「複合体V」の働きが有意に低下していたと報告されています[1]。さらに、ミトコンドリア内膜のプロトン勾配(エネルギーを作るための電位差)が漏れやすくなっており、本来ATP合成に使われるはずのエネルギーが失われている可能性も指摘されていると報告されています[1]。運動や活動によってエネルギー消費が増えると、この「作れるエネルギーの少なさ」がより顕著になり、わずかな活動でも限られたエネルギー備蓄が大きく損なわれる、という説明がなされていると報告されています[1]。
また、免疫細胞(NK細胞・CD4陽性T細胞・CD8陽性T細胞)における脂肪酸代謝を調べた比較研究では、ME/CFS患者は健常者と比べて、特にエネルギー需要が高い状況下で脂質代謝が高まっていたと報告されています[1]。こうした代謝面の異常は、「なぜわずかな活動で強い倦怠感が出るのか」というPEMのメカニズムを理解するための手がかりとして研究が続けられている段階であり、診断や治療にすぐ応用できる確立した指標ではない点に留意してください。
「疲労が何ヶ月続いたら」対象になるか——期間の考え方
診断基準の比較で見た総説によれば、疲労の持続期間は基準によって「3ヶ月」「4ヶ月」「6ヶ月」と幅があり、多くの基準で成人は6ヶ月以上、子どもはより短い期間(3ヶ月程度)が目安と報告されています[1]。またME/CFSの診断にあたっては、悪性腫瘍・自己免疫疾患・限局性の感染症など、同じような疲労症状を引き起こしうる他の病気を十分に評価して除外することが、多くの基準で要件と報告されています[1]。つまりME/CFSは「他の病気ではないことを確認したうえで残る診断」という性質が強く、この除外のプロセスに時間がかかることも少なくありません。
日本国内の小児例における疲労の持続期間の目安や、小児科での標準的な評価手順について、今回JHO編集部が参照した資料の範囲内では確認できませんでした。お子さんの疲労が長引く場合は、まず小児科にご相談ください。
新型コロナ後遺症(罹患後症状)との関係
新型コロナウイルス感染症の後遺症(post-acute COVID-19 syndrome)とME/CFSは、疲労・PEM・休んでも回復しない睡眠・思考力の低下(いわゆる「ブレインフォグ」)など、症状の面で重なりが報告されています[1]。新型コロナウイルス感染から6ヶ月後の時点で、罹患後症状を持つ患者のおよそ半数が2003年カナダ基準によるME/CFSの診断基準を満たしていた、という報告があります[1]。軽症〜中等症のコロナ感染後、6ヶ月を超えて症状が続く人は感染者の10〜20%程度と推定されています[1]。コロナ後遺症のブレインフォグや倦怠感そのものについては新型コロナ後遺症のブレインフォグ・倦怠感は治るのか?原因と最新治療、仕事の悩みを専門家が徹底解説で詳しく解説しています。
日本と国際的な議論のズレ——「気の持ちよう」ではない
| 論点 | 研究・国際的な議論の到達点 | 日本国内での一般的な認知 |
|---|---|---|
| 病気としての位置づけ | 免疫・酸化ストレス・ミトコンドリア機能・神経炎症など、生物学的な機序の研究が進められている[1] | 「気の持ちよう」「心因性の疲れ」と誤解されやすい(JHO編集部の見解であり、定量的な国内調査は今回確認できていません) |
| 運動の扱い | PEMを悪化させうるとして、段階的な運動療法(GET)は禁忌とする報告がある[1] | 「体力をつければ改善する」という助言が今も一般的に見られる(JHO編集部の見解) |
| 未診断率 | 米国で最大91%、欧州で約60%が未診断と推定[1] | 国内の未診断率を示す全国調査は、今回参照した資料の範囲内では確認できませんでした |
この表の「日本国内での一般的な認知」欄は、公的な統計や学会の一次資料に基づくものではなく、JHO編集部が日々の情報発信の中で感じている傾向を記したものです。断定的な事実として受け取らず、あくまで参考としてお読みください。
今回まとめた内容の要点は次の3つです。第一に、ME/CFSの核心は「疲労」そのものよりも、活動後に遅れて症状が悪化する労作後倦怠感(PEM)にあること。第二に、診断は単一の検査ではなく、6ヶ月以上の経過と複数の症状の組み合わせ、そして他の病気の除外によって総合的に判断されること。第三に、免疫・炎症・ミトコンドリア機能など複数の生物学的な仕組みが研究段階で関与を指摘されている一方、確立した根治療法はまだ存在しないことです[1]。強い疲労が長引く場合は、自己判断で「気のせい」と片づけず、まず医療機関に相談することが、遠回りに見えて一番確実な一歩になります。
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
よくある質問
慢性疲労症候群とは、簡単に言うとどんな病気ですか?
慢性疲労症候群の原因は何ですか?
慢性疲労症候群は何科を受診すればいいですか?
慢性疲労症候群の診断基準にはどんなものがありますか?
慢性疲労症候群のチェック方法はありますか?
運動をすれば慢性疲労症候群は改善しますか?
労作後倦怠感(PEM)とはどういう症状ですか?
新型コロナの後遺症と慢性疲労症候群は関係がありますか?
慢性疲労症候群は難病指定されていますか?
慢性疲労症候群は治りますか?
慢性疲労症候群と診断されるまでどのくらいかかりますか?
慢性疲労症候群の患者は男性と女性どちらが多いですか?
更新日:2026年8月11日。本記事は公表から時間の経過とともに研究や診断基準が更新される可能性があります。内容に誤りや古い情報があるとお気づきの際は、事実関係を確認のうえ訂正いたしますので、サイトのお問い合わせ窓口までお知らせください。
参考文献
- Fan J, Jiao J, Chang HQ, Zhong DL, Liu XB, Li J, et al.「Myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome (ME/CFS): diagnosis and management」Journal of Translational Medicine, 2026 (PMC12801797) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC12801797/
- Institute of Medicine (US)「Beyond Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome: Redefining an Illness」The National Academies Press, 2015(NCBI Bookshelf収載) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK274235/
- NICE(英国国立医療技術評価機構)「Myalgic encephalomyelitis (or encephalopathy)/chronic fatigue syndrome: diagnosis and management」NICE guideline NG206, 2021年10月29日公表 https://www.nice.org.uk/guidance/ng206
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医療情報に関する重要なお知らせ
本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。
