コンテンツへスキップ
お問い合わせ
スポンサーリンク
糖尿病 26分で読める 12回

糖尿病網膜症の初期症状|自覚症状がないまま進行する理由と受診時期

スポンサーリンク
文字サイズ





結論から言うと、糖尿病網膜症は、進行してもかなりの段階まで自覚症状がほとんど出ないまま悪化することがある病気です。[3]

受診の目安チェック・無料

この症状、いつ受診すべきか確認しますか?

回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。

症状はいつから続いていますか?

回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます

スポンサーリンク
この症状、放置して大丈夫?次に確認すべきこと 関連記事
この記事では答えていない疑問です — 読み終えたら、続けてご確認ください
合併症で脳への影響は? 記事へ 肥満以外に危険因子は? 記事へ 糖尿病と高血圧は繋がる? 記事へ 数値が改善しない原因 記事へ
この記事で気になったことを、AIにそのまま聞けます
健康アドバイザーオンライン ・ 24時間対応 無料
目のかすみに気づかないまま進行するなんて、不安ですよね。いつ頃から見え方に変化を感じますか?
気になるものを、タップするだけ
厚生労働省・査読論文などの一次情報源をもとに、あなたの状況に合わせてお答えします

1型糖尿病では診断された時点、2型糖尿病では診断された時点で直ちに眼科を受診すべきとされ[1]、その後は病期に応じて1年に1回から1か月に1回まで受診間隔が変わります[1]。「見えているから大丈夫」ではなく、「型」と「病期」で決まる受診スケジュールを守ることが失明を防ぐ唯一の方法です。この記事では、単純糖尿病網膜症・増殖前糖尿病網膜症・増殖糖尿病網膜症という3つの病期でそれぞれ何が起き、何が「見え方」に表れ、いつ眼科に行けばよいのかを、日本と米国のガイドラインの一次資料に基づいて整理します(糖尿病そのものの基礎知識はこちら)。

要点まとめ

  • 日本糖尿病眼学会のガイドラインによれば、単純網膜症の段階では黄斑部(見る中心)に病変が及ばない限り自覚症状はほぼ0です[1]。
  • 同ガイドラインは、急激な視力低下・視野が欠けて感じた時には、すでに増殖網膜症まで進行し硝子体出血や網膜剥離が起きていることが少なくないと述べています[1]。
  • 日本糖尿病眼学会のガイドラインでは、糖尿病黄斑浮腫は網膜症の早期から晩期まで、どの病期でも発症する可能性があるとされています[1]。
  • 日本糖尿病眼学会は、2型糖尿病は診断時に直ちに、1型糖尿病も診断時に眼科検査を受けることを推奨しています[1]。一方、米国眼科学会(AAO)は1型については発症5年後からの検査開始を推奨しており[2]、日本の方がより早い受診を求めている点に注意が必要です。
  • 急な視力低下・急激な視野の欠けは、日本糖尿病眼学会のガイドラインが増殖網膜症や血管新生緑内障のサインとして挙げる症状です[1]。飛蚊症が急に増えた場合も硝子体出血の初期症状として知られており、いずれも様子を見ずすぐに眼科受診が必要です。

編集方針: JHO編集部がAIツールの支援を受け、日本糖尿病眼学会・米国眼科学会(AAO)・日本眼科医会などの公的機関・学会ガイドラインと照合して作成。最終確認は人の目。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年8月時点)。最終更新日:2026年8月10日。内容に誤りや古い情報にお気づきの際は、お問い合わせフォームからお知らせください。事実を確認のうえ訂正します。

糖尿病網膜症とは?自覚症状がないまま進行する仕組み

糖尿病網膜症は、高血糖状態が続くことで網膜(目の奥でカメラのフィルムに当たる組織)の細い血管が傷み、血液の成分が漏れ出したり、血管が詰まったりして起こる病気です[1]。日本糖尿病眼学会の「糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)」では、糖尿病網膜症は糖尿病に起因した特徴的な眼底所見を呈する病態で、基本的には網膜における細小血管障害に起因するさまざまな変化が生じるとされています[1]。網膜は目の奥をおおう薄い膜で、光を電気信号に変えてはじめて「見える」という感覚が生まれる、いわばカメラのフィルムやセンサーにあたる組織です。この網膜を養う細い血管が高血糖によって少しずつ傷むことで、血管から血液の成分が漏れたり(血管透過性亢進)、血管そのものが詰まったり(毛細血管閉塞)し、さらに進むと酸素不足を補おうとして異常な新しい血管(新生血管)が伸びてくる、という順番で病状が進んでいきます[1]。

この病気が怖いのは、痛みがないことです。網膜そのものには痛みを感じる神経がほとんどなく、血管が壊れても本人はまったく気づきません。日本糖尿病眼学会のガイドラインは「糖尿病網膜症はかなり進行しても自覚症状がほとんどない場合があるため、自覚症状の有無にかかわらず、眼科で検診を受ける必要性は広く啓発されるべきである」とはっきり述べています[1]。日本眼科医会も、網膜症は自覚症状が現れないうちに進行し、自覚症状が現れたときにはすでに失明の危機に瀕した状態であることがほとんどだと注意を呼びかけています[3]。

視力に直結する黄斑(網膜の中心、ものを見るときにピントが合う部分)に病変が及ばない限り、原則として視力は下がりません[1]。つまり「今日もよく見える」ことは「網膜症が進んでいない」ことの証明にはならないのです。米国眼科学会(AAO)のガイドラインも同じ趣旨を強く述べており、患者には「視力が良く自覚症状がなくても、治療が必要なほど病状が進んでいることがある」ことを教育すべきだとしたうえで、Joslin糖尿病センターの10年観察研究では軽症の糖尿病網膜症患者の89%、視力を脅かすレベルの網膜症(VTDR)患者でも55%が、自分に眼の病気があることを自覚していなかったと報告されています[2]。「自分は大丈夫」という感覚そのものが、この病気ではあてにならないのです。

どれくらいの人がこの状態にあるのでしょうか。日本人2型糖尿病患者1,221名(平均年齢58.2歳、平均罹病期間9.8年)を8年間追跡したJapan Diabetes Complications Study(JDCS)では、糖尿病網膜症の発症率は年3.83%であったと報告されています[1]。世界35か国22,896名分のデータを集めたメタ解析研究では、世界人口で年齢調整した糖尿病網膜症の有病率は35.4%、視力をおびやかす可能性のある糖尿病網膜症(増殖網膜症または黄斑浮腫)は11.7%と報告されています。このうち日本を含むアジア地域に限ると、糖尿病網膜症の有病率は19.9%、視力をおびやかす可能性のある糖尿病網膜症は5.3%と、世界全体より低い値でした[1]。決して珍しい合併症ではなく、だからこそ「症状が出てから考える」のではなく、あらかじめ受診のリズムを知っておくことに意味があります(糖尿病の合併症全体についてはこちら)。

図:JHO編集部が作成

今の血圧・脈拍を確かめる

数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。

身長と体重からBMIも調べる

これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。

病期別の初期症状と見え方 — 単純・増殖前・増殖の3段階

糖尿病網膜症は、進行の程度によって主に3つの病期に分けられます。日本糖尿病眼学会のガイドラインによれば、日本で臨床現場に広く使われているDavis分類では、単純糖尿病網膜症・増殖前糖尿病網膜症・増殖糖尿病網膜症の3期に分類され、これは国際重症度分類の軽症〜中等症非増殖網膜症・重症非増殖網膜症・増殖網膜症にほぼ対応します[1]。

病期(Davis分類) 眼底の主な所見 見え方・自覚症状
単純糖尿病網膜症
(軽症〜中等症非増殖網膜症)
毛細血管瘤、網膜の点状・斑状・線状出血、硬性白斑[1] 黄斑に及ばなければ自覚症状はほぼなし。健診の眼底写真で偶然見つかることが多い
増殖前糖尿病網膜症
(重症非増殖網膜症)
軟性白斑(綿花様白斑)、静脈の数珠状拡張、網膜内細小血管異常(IRMA)、無灌流領域[1] 網膜が虚血(血流不足)に傾いても、自覚症状は乏しいか、なくても不思議ではない段階
増殖糖尿病網膜症 新生血管(網膜・視神経乳頭上)、硝子体出血、網膜前出血、線維血管膜、牽引性網膜剥離[1] 硝子体出血が起きて急激な視力低下・視野が欠けるとして自覚されることが多く[1]、飛蚊症の急増を伴うこともあります

出典:日本糖尿病眼学会「糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)」表1(糖尿病網膜症重症度分類の対応の目安)を基にJHO編集部が作成[1]

日本糖尿病眼学会のガイドラインで重要なのは、「増殖前」という名前がついていても、増殖前糖尿病網膜症の定義そのものは無灌流領域(血が届かない網膜の領域)が蛍光眼底造影で確認されることで、眼底所見としては軟性白斑の有無が目安の一つになるという点です[1]。この段階までは、本人が「見えづらい」と感じることはむしろ少なく、だからこそ眼科での定期検査でしか見つけられません。

また、同ガイドラインによれば新福田分類という日本独自の分類法もあり、糖尿病網膜症を良性と悪性に区別し、比較的軽症の単純糖尿病網膜症は良性、血管閉塞や新生血管が生じて活動性が高く網膜光凝固の適応となる症例を悪性としています[1]。同ガイドラインによれば、糖尿病連携手帳や糖尿病眼手帳には、これらDavis分類・国際重症度分類・新福田分類の3つが並記されていることがあり、内科と眼科のどちらにかかっても同じ病状を共有できるように工夫されています[1]。自分の手帳やお薬手帳に「A1」「B2」といった記号や「単純網膜症」「PDR」といった表記があれば、この記事の病期分類表と照らし合わせてみてください。

眼科受診のタイミング — 糖尿病の型・病期ごとに違う理由

日本糖尿病眼学会のガイドラインは、原則として糖尿病と診断された時点で全例が眼科医の診察を受け、糖尿病網膜症の評価を受けるべきだとしています[1]。1型・2型で初回受診のタイミングの考え方が少し異なります。

糖尿病の型 初回眼科受診の推奨タイミング(日本)
1型糖尿病 診断されたとき[1]。欧米では発症後6〜7年で網膜症のリスクが上昇するため発症5年をめどに眼科検査を実施することが求められているが、成人発症も多い日本人1型糖尿病患者のデータは不十分で、現段階では診断時の眼科検査が推奨されている[1]
2型糖尿病 診断時点で直ちに[1]。The Wisconsin Epidemiologic Study of Diabetic Retinopathyという疫学研究では、30歳以上で糖尿病と診断された症例で、推定罹病期間5年未満でも28.8%、15年以上では77.8%が何らかの網膜症を有していたと報告されており[1][4]、2型は診断時にすでに網膜症が進んでいることが珍しくない

初回受診の後、次はいつ受診すればよいかという「受診の目安」は、病期に応じて次のように推奨されています[1]。

Davis分類(対応する国際重症度分類) 推奨される眼科受診間隔
糖尿病(網膜症なし) 1回/1年
単純糖尿病網膜症(軽症〜中等症非増殖網膜症) 1回/6か月
増殖前糖尿病網膜症(重症非増殖網膜症) 1回/2か月
増殖糖尿病網膜症 1回/1か月

出典:日本糖尿病眼学会「糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)」表3(推奨される眼科診察間隔)[1]

ただし、これらの間隔はあくまで目安であり、実際の受診間隔は受診した眼科医の指導に従うべきとガイドラインは明記しています。高血糖状態が続く場合には網膜症がなくてもより密な間隔が検討され、視力をおびやかす糖尿病黄斑浮腫を伴う場合はより密な間隔が推奨されます[1]。

特に注意が必要な人 — 罹病期間が長い人・思春期・妊娠中の人

自覚症状に頼れない病気だからこそ、「自分がどれくらいリスクの高い立場にいるか」を知っておくことには意味があります。米国眼科学会(AAO)のガイドラインは、思春期の患者は進行リスクが高まるため、より一層の注意(increased vigilance)が必要だと注記しています[2]。成長期のホルモン変化が血糖コントロールを難しくしやすいことに加え、糖尿病の罹病期間そのものが延びていく時期でもあるためです。

妊娠中の糖尿病(1型・2型とも)についても特別な配慮が必要です。AAOのガイドラインでは、妊娠を計画している段階または妊娠がわかったらできるだけ早く、遅くとも妊娠初期のうちに眼科を受診することが推奨されており、その後の受診間隔は網膜症なし〜中等症非増殖網膜症で3〜12か月ごと、重症非増殖網膜症以上ではより頻回の1〜3か月ごとに設定されています[2]。なお、妊娠中にはじめて診断される妊娠糖尿病(gestational diabetes)の場合は、妊娠中の眼科受診は必須ではなく、網膜症のリスクが増加するともされていません[2]。これは「もともと糖尿病があって妊娠した人」と「妊娠をきっかけに血糖値の異常が見つかった人」とで、必要な対応が異なるということを意味します。ただし、日本糖尿病眼学会のガイドラインは、妊娠糖尿病そのものは眼科検査を要しないとしつつも、妊娠前から高血糖があった可能性を否定できない場合には、問診でその既往を確認したうえで判断すべきだと注記しています[1]。自己判断で「妊娠糖尿病だから受診不要」と決めつけず、妊娠前の血糖値についても医師に伝えることが大切です。

状況 初回受診 その後の受診間隔
妊娠中(1型・2型)・網膜症なし〜中等症非増殖 妊娠を計画した時、または妊娠がわかった直後・妊娠初期[2] 3〜12か月ごと[2]
妊娠中(1型・2型)・重症非増殖以上 同上 1〜3か月ごと[2]
妊娠糖尿病(妊娠中に初めて発見) 必須の眼科受診なし[2](ただし妊娠前の高血糖の既往があれば要問診・受診[1]) ―

出典:American Academy of Ophthalmology「Diabetic Retinopathy Preferred Practice Pattern」Table 2[2]

糖尿病黄斑浮腫 — どの病期でも起こりうる別ルートの視力低下

ここまでの3段階(単純・増殖前・増殖)とは別に、「糖尿病黄斑浮腫」という状態があります。これは黄斑(網膜の中心部)がむくんで層構造が乱れることで視力が低下するもので、日本糖尿病眼学会のガイドラインは「糖尿病網膜症の早期から晩期まで、どの病期においても糖尿病黄斑浮腫は発症する可能性がある」と明記しています[1]。つまり、単純網膜症のごく初期の段階であっても、黄斑にむくみが及べば見え方に影響が出ることがあります。

黄斑浮腫は「中心窩を含む糖尿病黄斑浮腫」と「中心窩を含まない糖尿病黄斑浮腫」に分けられ、黄斑の中でも最も視力に重要な中心窩に浮腫が及ぶまでは、原則として視力は低下しないとされています[1]。逆に言えば、中心窩に浮腫が迫ってくると、物がゆがんで見える「変視症」や視力低下として自覚されるようになります[1]。

これらの警告サインに共通するのは、いずれも「本人がはっきり異変として気づける」段階まで進んでしまっているという点です。逆に言えば、この段階に至る前の単純網膜症・増殖前網膜症の間は、症状という形での警告は基本的に出ません。だからこそ、症状が出るのを待つのではなく、あらかじめ決められた受診間隔を守ること自体が「警告サインの代わり」になります。次のようなサインがあれば、次の定期受診日を待たずに、すぐに眼科を受診してください。

すぐに眼科を受診すべきサイン

  • 日本糖尿病眼学会のガイドラインによれば、急激な視力低下や視野狭窄を自覚したとき — すでに増殖期に入り、硝子体出血や牽引性網膜剥離が起きている場合が少なくありません[1]
  • 同ガイドラインによれば、物がゆがんで見える(変視症)、中心が見えにくい — 糖尿病黄斑浮腫が中心窩に及んでいる可能性があります[1]
  • 同ガイドラインによれば、急な視野の欠け・急速な視野狭窄の進行 — 血管新生緑内障による著しい高眼圧が原因のことがあり、失明に至る可能性が高いため迅速な治療介入が必要です[1]
  • 飛蚊症が急に増えた、視界に黒い影やすすが見える — 硝子体出血のサインである可能性があります。日本糖尿病眼学会のガイドラインも、増殖網膜症に伴う硝子体出血が急激な視力低下や視野の欠けとして自覚されることが多いと指摘しています[1]

眼底所見の用語を知る — 毛細血管瘤・硬性白斑・IRMA・新生血管とは

眼科で「毛細血管瘤がありますね」「軟性白斑が出ています」と言われても、何のことかわからなければ自分の病期を実感しにくいものです。ここでは、日本糖尿病眼学会のガイドラインが病期分類の根拠として挙げている主な所見を整理します[1]。

所見 何が起きているか 主にみられる病期
毛細血管瘤 血管の壁が弱くなり、こぶ状にふくらんだ状態。網膜症で最初期にみられる変化 単純糖尿病網膜症(軽症)[1]
点状・斑状・線状出血、硬性白斑 血管から血液や脂質成分が漏れ出し、網膜内にしみのように沈着した状態 単純糖尿病網膜症[1]
軟性白斑(綿花様白斑) 網膜の神経細胞に酸素や栄養が届かなくなり、神経がむくんで生じる白い斑点 増殖前糖尿病網膜症[1]
網膜内細小血管異常(IRMA) 血管が詰まった領域の周囲にできる、迂回するような異常血管 増殖前糖尿病網膜症[1]
新生血管 酸素不足を補おうとして網膜や視神経乳頭上に伸びてくる、もろく破れやすい異常な血管 増殖糖尿病網膜症[1]
硝子体出血・牽引性網膜剥離 新生血管が破れて眼球内に出血したり、線維血管膜が網膜を引っ張って剥がれたりした状態 増殖糖尿病網膜症[1]

出典:日本糖尿病眼学会「糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)」表1を基にJHO編集部が作成[1]

眼科の検査でわかること — 眼底検査とOCTの役割

自覚症状に頼れない以上、「何をどう検査するか」が命綱になります。日本糖尿病眼学会のガイドラインによれば、散瞳(目薬で瞳孔を広げること)下での倒像鏡もしくは前置レンズによる眼底検査が糖尿病網膜症診療の基本とされ、毛細血管瘤、点状または斑状出血、硬性白斑、軟性白斑、静脈数珠状拡張、網膜内細小血管異常(IRMA)などを念頭に観察します[1]。視力検査だけでは黄斑に及ぶまで異常が出ないため、この眼底検査こそが早期発見の要になります。

近年広く使われているのが光干渉断層計(OCT)です。OCTは非侵襲的(体を傷つけない方法)に網膜の断面を高解像度で描出できる検査機器で、網膜の厚みを測ることで黄斑浮腫のモニタリングや硝子体牽引の有無、滲出性網膜剥離といった形態の観察に有用とされています[1]。糖尿病黄斑浮腫の診断でも、OCTで測定した中心網膜厚が基準値(通常300μm以上)を超えるかどうかが、中心窩を含む糖尿病黄斑浮腫かどうかの判定に用いられます[1]。より詳しい血管の状態を調べる必要がある場合には、蛍光眼底造影(FA)という、造影剤を使って血管の詰まり(無灌流領域)や新生血管からの漏出を確認する検査が行われることもあります[1]。

これらはいずれも、視力検査や本人の自覚症状だけでは絶対にわからない情報です。「見えているから眼底検査は不要」という考え方が、この病気に関しては成り立たない理由がここにあります。

造影剤を使う蛍光眼底造影(FA)は、詳しい情報が得られる一方で副作用のリスクもゼロではありません。日本眼科学会の眼底血管造影実施基準によれば、FAにおける全副作用の発現率は1.1〜11.2%とされ、その多くは軽症(発疹やかゆみなど)ですが、重症例や、まれに死亡例の報告もあるため、検査を受ける際は事前に医師から説明を受け、疑問があれば率直に質問することが勧められます[1]。とはいえ、通常の散瞳眼底検査やOCTだけで病期の評価・受診間隔の判断は十分に行えることがほとんどで、FAは病期の判定や治療方針の決定に特に詳しい情報が必要な場合に選択される検査です。どの検査が必要かは、眼科医がそのときの所見に応じて判断します。糖尿病と診断された直後の眼科スクリーニングそのものについてはこちらの記事で年齢別に整理しています。

進行を防ぐためにできること — 血糖・血圧・脂質のコントロール

眼科での定期検査と並んで重要なのが、全身の管理です。日本糖尿病眼学会のガイドラインが引用するSteno-2研究では、微量アルブミン尿を認める2型糖尿病患者を対象に、血糖・血圧に加えて脂質異常症や生活習慣(食事療法・運動療法・禁煙指導)といった複数の因子に介入する強化療法を行ったところ、標準療法群に比べて糖尿病網膜症の進展リスクが58%まで低下したと報告されています[1]。日本人を対象としたJ-DOIT3研究でも同様の結果が報告されており[1]、「血糖値だけ」ではなく血圧・脂質・生活習慣を含めた総合的な管理が網膜症の予防・進行抑制に重要だと考えられています。

網膜症の進行しやすさは、糖尿病にかかっている期間の長さとも関係します。米国眼科学会(AAO)のガイドラインでは、発症から5年後には1型糖尿病患者の約25%に、10年後には約60%に、15年後には約80%に何らかの網膜症がみられるとするデータが紹介されています[2]。だからこそ、糖尿病にかかっている年数が長い人ほど、たとえ現在自覚症状がなくても、眼科の定期受診をおろそかにしないことが重要になります。

血糖コントロールの目標値についても、日本糖尿病眼学会のガイドラインは日本人2型糖尿病患者を対象としたKumamoto Studyを引用し、HbA1cがおよそ7.0%未満(NGSP値換算)であれば、細小血管合併症(網膜症を含む)の発症・進展が予防できることが示唆されていると紹介しています[1]。血圧についても、The Wisconsin Epidemiologic Study of Diabetic Retinopathyでは収縮期血圧が10mmHg上昇すると初期の糖尿病網膜症のリスクが10%、増殖糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫のリスクが15%上昇するとされ[1]、英国のUKPDS研究では逆に収縮期血圧を10mmHg下降させることで、厳格な血圧管理により網膜症の進展が35%減少し、視力低下も47%減少したと報告されています[1]。血糖値だけでなく血圧のコントロールも、内科の主治医と連携しながら継続する価値があるということです(糖尿病と高血圧の関係についてはこちら)。HbA1cなど血糖の指標を追う検査についてはA1C検査の解説もあわせて参考にしてください。

喫煙については、1型・2型で影響の出方が異なる可能性が指摘されています。日本糖尿病眼学会のガイドラインが引用するメタ解析では、1型糖尿病患者では喫煙が網膜症進展リスクの増大と関連したが、2型糖尿病患者では同様の関連を認めなかったと報告されています[1]。また、血清脂質についてもEarly Treatment Diabetic Retinopathy Study(ETDRS)で高脂血症と硬性白斑の黄斑沈着との関連が報告されており、脂質異常症の適切な治療が網膜症の進行予防に良い影響を示す可能性があるとされています[1]。血糖・血圧・脂質・禁煙という、糖尿病そのものの管理でよく耳にする項目が、そのまま目を守る対策にもなっているわけです。網膜症以外の危険因子を含めた全体像は糖尿病の危険因子5つの記事でも解説しています。

この症状、放置して大丈夫?次に確認すべきこと 関連記事
この記事では答えていない疑問です — 読み終えたら、続けてご確認ください
合併症で脳への影響は? 記事へ 肥満以外に危険因子は? 記事へ 糖尿病と高血圧は繋がる? 記事へ 数値が改善しない原因 記事へ

日本と米国のガイドライン比較 — 受診タイミングはどちらが早いか

日本糖尿病眼学会(JSOD)は自覚症状の有無にかかわらず眼科で検診を受ける必要性を広く啓発すべきだとし[1]、米国眼科学会(AAO)も視力が良く自覚症状がなくても病状が進んでいることがあると患者教育を求めています[2]。両者とも自覚症状に頼らない方針を掲げている一方で、初回受診のタイミングと病期別の受診間隔には具体的な違いがあります。

項目 日本(日本糖尿病眼学会 2020年) 米国(AAO Preferred Practice Pattern)
1型糖尿病の初回受診 診断されたとき[1] 発症から5年後[2]
2型糖尿病の初回受診 診断時点で直ちに[1] 診断時[2]
網膜症なし〜軽症(単純網膜症/Mild NPDR) 1年ごと[1] 12か月ごと[2]
重症非増殖(増殖前網膜症/Severe NPDR) 2か月ごと[1] 3〜4か月ごと[2]
増殖網膜症(PDR) 1か月ごと[1] 2〜4か月ごと[2]

日本のガイドラインの方が、重症の非増殖網膜症・増殖網膜症の段階でより短い受診間隔を推奨しています。1型糖尿病の初回受診についても、日本は「診断時」、米国は「発症5年後」と、日本の方が早い時期の受診を求めています[1][2]。この違いがどちらが医学的に優れているかをJHOが判定することはできません。日本国内で治療を受ける場合は、日本糖尿病眼学会の基準に沿った眼科医の指示に従うことが基本になります。

なぜこうした違いが生まれるのでしょうか。日本糖尿病眼学会のガイドラインは、1型糖尿病の初回受診タイミングについて、欧米では発症後6〜7年で網膜症発症のリスクが上昇するため発症5年をめどに眼科検査を実施することが求められているが、成人発症も多い日本人1型糖尿病患者におけるデータは不十分であり、現段階では診断時の眼科検査が推奨されるとしています[1]。つまり、日本が米国よりあえて早めの受診を求めているのは、日本人特有のデータがまだ十分にそろっていないための「安全側に倒した」判断だと理解できます。海外の情報サイトで「発症5年後でよい」という記述を見かけても、日本で治療を受けているなら日本のガイドラインの基準を優先してください。

まとめ — 「見えているから大丈夫」を手放す

糖尿病網膜症でもっとも危険なのは、進行の速さそのものよりも、「進行していることに本人が気づけない」という構造です。日本糖尿病眼学会のガイドラインによれば、単純網膜症の段階でも増殖前糖尿病網膜症の段階でも、黄斑に及ばない限り視力はほとんど落ちません[1]。同ガイドラインは、急な視力低下や視野の欠けとして自覚したときには、すでに増殖網膜症まで進み、硝子体出血や網膜剥離が起きていることが少なくないと述べています[1]。だからこそ、糖尿病と診断された時点で眼科を受診し、その後は「網膜症なし=1年に1回」「単純網膜症=6か月に1回」「増殖前網膜症=2か月に1回」「増殖網膜症=1か月に1回」という、同ガイドラインが示す病期に応じた受診リズムを、症状の有無にかかわらず守ることが、失明を防ぐもっとも確実な方法です[1]。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

眼科受診時に持参・確認したいメモ
・糖尿病と診断された年月、1型か2型か
・直近のHbA1c・血糖値の記録
・現在使用している薬(インスリン・血糖降下薬など)
・「見え方が変わった」と感じた時期があれば、いつからどう変わったか具体的に
・家族に糖尿病網膜症で治療を受けた人がいるか
・医師に聞きたいこと:今の病期は?次はいつ受診すればよいか?黄斑浮腫はあるか?

糖尿病網膜症の発症・進行には血糖コントロールの状況、罹病期間、血圧、脂質など複数の要因が関わるとされていますが、個人ごとにどの程度のスピードで進行するかを一般論だけから正確に予測することについては、今回参照した資料には確定的な記載が見当たりませんでした。眼科医による定期的な眼底検査でしか、その人固有の進行状況は判断できません。また、日本人1型糖尿病患者における初回眼科受診の最適なタイミング(欧米の「発症5年後」がそのまま当てはまるかどうか)についても、日本糖尿病眼学会のガイドライン自身が「データが不十分」と述べており[1]、今後のデータの蓄積によって基準が更新される可能性があります。

よくある質問

糖尿病網膜症の初期症状はどんな感じですか?
日本糖尿病眼学会のガイドラインによれば、単純網膜症の段階では、黄斑に病変が及ばない限りほとんど自覚症状がありません[1]。眼底には毛細血管瘤や小さな出血、硬性白斑といった変化がすでに起きていても、本人が見え方の違和感として気づくことはほとんどないのが特徴です。「見え方が変わった」と感じる頃には、すでに病期が進んでいる可能性があるため、症状の有無にかかわらず定期受診が重要です。
視力が良いなら眼科に行かなくても大丈夫ですか?
いいえ。日本糖尿病眼学会は、自覚症状の有無にかかわらず眼科で検診を受ける必要性を広く啓発すべきだとしています[1]。視力が良いことは網膜症がないことの証明にはなりません。米国の観察研究でも、軽症の網膜症患者の89%、視力を脅かすレベルの網膜症患者でも55%が自分の眼の病気に気づいていなかったと報告されています[2]。
1型糖尿病と2型糖尿病で、眼科受診のタイミングは違いますか?
はい。日本のガイドラインでは、2型は診断時点で直ちに眼科受診が推奨されます。1型についても、現段階では日本人のデータが不十分なため、診断されたときの眼科検査が推奨されています(欧米では発症5年後からの検査開始が一般的です)[1]。
糖尿病と診断されたばかりで網膜症はないと言われました。次はいつ受診すればいいですか?
日本糖尿病眼学会のガイドラインでは、網膜症がない場合の推奨受診間隔は1年に1回です[1]。ただし高血糖状態が続く場合はより密な間隔が検討されることがあるため[1]、実際の間隔は主治医の指示に従ってください。
糖尿病黄斑浮腫とは何ですか?網膜症とは別の病気ですか?
日本糖尿病眼学会のガイドラインによれば、糖尿病黄斑浮腫は、網膜の中心である黄斑がむくむ状態で、糖尿病網膜症の早期から晩期まで、どの病期でも発症しうるとされています[1]。網膜症の病期分類(単純・増殖前・増殖)とは別の軸で評価される、視力低下の原因の一つです。
飛蚊症が急に増えたのですが、様子を見てもいいですか?
飛蚊症の急な増加は硝子体出血のサインである可能性があり、様子を見るのではなくすぐに眼科を受診すべきサインです。日本糖尿病眼学会のガイドラインも、増殖網膜症に伴う硝子体出血が急激な視力低下として自覚されることが多いと述べています[1]。特に糖尿病がある方は放置しないでください。
物がゆがんで見えるのは網膜症のせいですか?
日本糖尿病眼学会のガイドラインによれば、物がゆがんで見える「変視症」は、糖尿病黄斑浮腫が黄斑の中心(中心窩)に及んでいるサインである可能性があります[1]。自己判断せず、早めに眼科を受診してください。
妊娠中の糖尿病(1型・2型)は網膜症の受診間隔が変わりますか?
米国眼科学会(AAO)のガイドラインでは、妊娠中(1型・2型とも)は網膜症なし〜中等症非増殖網膜症で3〜12か月ごと、重症非増殖以上ではより頻回の1〜3か月ごとの受診が推奨されています[2]。妊娠を計画している場合・妊娠がわかった場合は早めに眼科と内科の両方に相談してください。
健診の視力検査だけで糖尿病網膜症はわかりますか?
わかりません。日本糖尿病眼学会のガイドラインによれば、網膜症は黄斑に及ばない限り視力に影響しないため[1]、視力検査だけでは早期の網膜症を見つけられません。眼底検査(散瞳して行う眼底の直接観察)が必要です。
血糖値やHbA1cをどれくらいに保てば網膜症を防げますか?
日本糖尿病眼学会のガイドラインが引用する、日本人2型糖尿病患者を対象としたKumamoto Studyでは、HbA1cがおよそ7.0%未満(NGSP値換算)であれば細小血管合併症の発症・進展が予防できることが示唆されています[1]。ただし個々の目標値は年齢や他の持病、低血糖のリスクなどによって主治医が調整するため、必ず内科の指示に従ってください。
タバコを吸っていると網膜症は悪化しやすいですか?
日本糖尿病眼学会のガイドラインが引用するメタ解析研究によれば、1型糖尿病では喫煙が網膜症進展リスクの増大と関連したとする報告がある一方、2型糖尿病では同様の関連は認められなかったとされています[1]。糖尿病全体の血管合併症のリスクを考えれば、型にかかわらず禁煙が勧められることに変わりはありません。

参考文献

  1. 日本糖尿病眼学会診療ガイドライン委員会「糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)」日本眼科学会雑誌 124巻12号, 2020年 https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/diabetic_retinopathy.pdf
  2. American Academy of Ophthalmology「Diabetic Retinopathy Preferred Practice Pattern」2024年 https://www.aao.org/Assets/811c9cb7-279d-4b3d-9cca-032191e4891c/638749627918470000/diabetic-retinopathy-ppp-pdf
  3. 公益社団法人 日本眼科医会「糖尿病で失明しないために」https://www.gankaikai.or.jp/health/35/index.html
  4. Klein R, Klein BE, Moss SE, Davis MD, DeMets DL. The Wisconsin epidemiologic study of diabetic retinopathy. III. Prevalence and risk of diabetic retinopathy when age at diagnosis is 30 or more years. Arch Ophthalmol 1984;102:527-532. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6367725/
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ

この記事をシェア

LINE 𝕏
この記事について(運営者情報・免責事項) タップで表示

医療情報に関する重要なお知らせ

本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。

Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

運営者情報を見る →