肝疾患のすべて:症状から治療法まで徹底解説
この記事でわかること
目次
- 要点まとめ
- 編集方針・この記事の根拠について
- 🔧 「自分の肝疾患はどのタイプ?」早見チェック
- 第1章:肝臓入門:「沈黙の臓器」の重要性と病気のサイン
- 肝臓はどのような臓器か
- 第2章:肝疾患の主な原因と種類
- 2.1 ウイルス性肝炎(B型・C型)
- 2.1b B型・C型肝炎、どちらも「気づかないまま進行する」のが最大の共通点
- 2.2 脂肪肝(NAFLD・NASH)
- 2.2b 脂肪肝と肝硬変・肝がんとの関わり
- 2.3 肝硬変
- 2.3b 肝硬変になっても悲観しすぎないために
- 2.4 肝がん
- 2.4b 肝がんの種類 — 「肝がん」は1つではない
- 2.5 自己免疫性肝疾患(参考:頻度は低いが知っておきたい原因)
- 2.5b 肝疾患のリスクを高める要因のまとめ
- 2.5c 指定難病としての支援制度
- 2.6 4つのタイプの違いを一覧で比較
- 第3章:見逃してはいけない肝疾患の症状
- 第4章:肝疾患の診断:最新の検査方法
- 原因を調べる基本の血液検査
- 肝臓の硬さ・線維化を調べるそのほかの検査
- なぜ慢性肝疾患のある人は繰り返し検査を受けるのか
- 肝がんの早期発見に使われる検査
- 第5章:肝疾患の治療法:生活習慣の改善から最新医療まで
- 第6章:日本の肝疾患対策:知っておきたい公的支援と相談窓口
- 肝炎対策における国と学会の役割分担
- B型肝炎「既往感染」でも油断できない理由 — ウイルスの再活性化
- 肝がんの治療後の経過観察
- 治療費の負担が心配な方へ
- 第7章:未来へ向けて:肝疾患の予防と共生
- 🖨️ 受診時に持参したいメモ(印刷してお使いください)
- 肝疾患でよく出てくる用語集
- よくある質問
- 結論
- 参考文献
「最近、肝臓の数値が高いと言われた」「肝疾患について詳しく知りたい」——そんな検索でこの記事にたどり着いた方も多いかもしれません。「肝疾患」とひとくくりに呼ばれますが、実は中身はまったく違う4つの病気を指していることをご存じでしょうか。ウイルスが原因の「ウイルス性肝炎(B型・C型)」、生活習慣が関わる「脂肪肝(NAFLD・NASH)」、それらが進行した「肝硬変」、そして「肝がん」——原因も検査も治療も異なるのに、症状がほとんど出ないまま進行するという共通点があるため、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています(学会)1。日本肝臓学会は、こうしたウイルス性肝炎の頻度の高さや、肝硬変・肝がんへの進展のしやすさから、肝疾患のことを「日本の国民病」であると表現しています1。この記事では、日本肝臓学会・厚生労働省・国立がん研究センター・肝炎情報センターの公的資料をもとに、この4つの病気を正確に区別しながら、原因・症状・検査・治療・公的支援までを、できるだけわかりやすい言葉で整理します。
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。
症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
結論から言うと、「肝疾患」は単一の病気ではなく、①ウイルス性肝炎(B型・C型)、②脂肪肝(NAFLD/NASH)、③肝硬変、④肝がんという性質の異なる病気の総称です。日本肝臓学会の市民向け資料では、これらはいずれも初期にはほとんど自覚症状がなく、血液検査の異常で偶然見つかることが多いとされています1。
C型肝炎ウイルスに感染すると約70%が持続感染(慢性化)し1、日本のNAFLD(脂肪肝)患者は1,000万人以上と推定されています1。厚生労働省は「すべての国民が少なくとも一回は肝炎ウイルス検査を受けること」を推奨しています4。倦怠感やむくみ、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)などの症状が出た場合は、進行したサインである可能性があるため、早めに消化器内科・肝臓内科を受診してください。
要点まとめ
- 「肝疾患」はウイルス性肝炎(B型・C型)・脂肪肝(NAFLD/NASH)・肝硬変・肝がんの総称で、原因も検査も治療もそれぞれ異なります(学会)1。
- C型肝炎ウイルスに感染すると約30%は自然にウイルスが排除されますが、残り約70%は持続感染(慢性C型肝炎)となります1。
- 日本のNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)患者は1,000万人以上と推定され、そのうち約10%が肝硬変に進みやすい「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」とされています(学会)1。
- 肝硬変になっても初期(代償性)は無症状のことが多く、進行して「非代償性」になると、むくみ・腹水・黄疸・意識障害(肝性脳症)などが現れます1。
- 2023年に肝臓がんと診断された人は32,673例、2024年の死亡数は22,465人と報告されています。倦怠感・体重減少・右上腹部の張りが続く場合や、黄疸・吐血がみられる場合は、すぐに医療機関を受診してください3。
編集方針・この記事の根拠について
Japanese Health(JHO)編集部は、AIツールの支援を受けつつ、日本肝臓学会「肝臓病の理解のために」「NAFLD/NASH診療ガイドライン」、厚生労働省の肝炎対策資料、肝炎情報センター(国立国際医療研究センター)、国立がん研究センターの統計と照合しながら本記事を作成しています。最終的な内容確認・掲載判断はJHO編集部が行っています。数値・分類はガイドライン改定により変更される可能性があります(2026年7月時点の情報)。本記事は医師による個別の診断・治療の代わりにはなりません。当編集部には医師は在籍しておらず、公的機関・学会の一次資料との照合をもって正確性を担保する方針をとっています。掲載している数値や分類に相違があるとお気づきの場合は、記事末尾の「更新日」の案内に沿ってご連絡ください。
🔧 「自分の肝疾患はどのタイプ?」早見チェック
| 当てはまる状況 | 考えられるタイプ | 次にすべきこと |
|---|---|---|
| 輸血歴(1990年以前)、注射針の使い回し、母子感染の可能性がある | B型・C型ウイルス性肝炎の可能性 | 肝炎ウイルス検査(HBs抗原・HCV抗体)1 |
| 肥満・糖尿病・脂質異常症があり、健診で「脂肪肝」を指摘された | NAFLD/NASHの可能性 | 腹部超音波検査、体重・血糖のコントロール1 |
| 倦怠感、足のむくみ、お腹が張る(腹水)がある | 肝硬変(進行した状態)の可能性 | 肝臓専門医の受診を急ぐ1 |
| 体重減少、右上腹部の痛みや張りが続く、黄疸がある | 肝がんを含む進行した肝疾患の可能性 | 速やかに消化器内科・肝臓内科を受診3 |
| これから抗がん剤治療・免疫抑制療法を受ける予定がある | B型肝炎ウイルスの再活性化リスク | 治療開始前にHBs抗原・HBc抗体などの検査を担当医に相談1 |
| 特に症状はないが、まだ肝炎ウイルス検査を受けたことがない | ウイルス性肝炎に気づいていない可能性 | 医療機関・保健所での肝炎ウイルス検査を検討4 |
出典:日本肝臓学会「肝臓病の理解のために」1、国立がん研究センター がん統計3、厚生労働省「肝炎対策」4を基にJHO編集部が整理。この表は診断を確定するものではありません。複数の項目に当てはまる場合は、まとめて一度の受診で相談することも可能です。
今の血圧・脈拍を確かめる
数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
身長と体重からBMIも調べる
血圧手帳(この端末に保存)
これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
第1章:肝臓入門:「沈黙の臓器」の重要性と病気のサイン
日本肝臓学会は、B型肝炎・C型肝炎などのウイルス性肝炎の頻度が高く、肝硬変や肝がんの大きな原因になってきたことから、「肝疾患は日本の国民病」と言われていると説明しています1。
肝臓はどのような臓器か
肝臓は腹部の右上、肋骨の下に収まっている臓器で、身体に必要なさまざまな物質を作り、不要になったり有害であったりする物質を解毒・排泄するなど、多彩な働きをするいわゆる「化学工場」です。重さは1kg以上の大きな臓器で、病気でその働きが損なわれても症状が現れにくいため「沈黙の臓器」と呼ばれています。また、一部を摘出しても元の大きさに戻る「再生能力」が強いことも特徴です(学会)1。
肝臓は代謝・解毒・胆汁の産生など多くの働きを担う臓器ですが、痛みを感じる神経が少ないため、障害を受けても自覚症状が出にくいという特徴があります。日本肝臓学会はこれを踏まえ、B型・C型肝炎のようなウイルス性の肝臓病は、ウイルス検査によって確実に診断できることを強調しています1。
「化学工場」としての肝臓は、体に必要なたんぱく質(アルブミンなど)を合成する働き、糖・脂質・薬剤などを代謝する働き、アンモニアなどの有害物質を解毒する働き、消化を助ける胆汁を作って腸に送り出す働きなど、実に多くの役割を同時にこなしています(学会)1。これらの働きのどこが障害されているかによって、血液検査で異常が出る項目も変わってきます。
慢性肝炎は、血液中の「リンパ球」が肝臓に集まって「炎症」を起こし、これが原因で肝臓の主な働きを担う「肝細胞」が長期間にわたって壊れ続ける病気です。慢性肝炎には特有の症状はなく、多くの場合、血液検査の異常で発見されます(学会)1。慢性肝炎が持続すると、肝細胞が壊れた跡に線維が沈着して肝臓が硬くなる「肝線維化」が進み、これが肝硬変につながります。肝硬変が進行すると、むくみ(浮腫)・腹水・黄疸などの症状がみられるようになり、食道胃静脈瘤などの消化管病変を併発すると吐血を生じることもあります。また、肝線維化が進むにつれて肝がんを発生しやすくなります1。
肝臓に炎症が起こる原因はウイルス感染だけではありません。お酒は飲まないのに栄養の摂り過ぎや糖尿病などによって脂肪肝になり、ゆっくりと肝硬変や肝がんに進む「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」も、近年もっとも頻度の高い肝疾患の一つになっています(学会)1。原因が何であれ、肝臓の炎症が長く続くと、傷ついた細胞のあとを埋めるように「線維(せんい)」が蓄積していきます。これが「肝線維化」で、進行すると肝臓が硬く凸凹になった「肝硬変」に至ります1。
日本肝臓学会「肝臓病の理解のために」の解説をもとにJHO編集部が作図。線維化が進むほど、肝臓は硬く凸凹になり、血流が妨げられていきます1。
肝硬変が進行すると、年率6~8%の頻度で肝がんが発生するとされています1。ただし高齢の患者では、肝硬変になる前の段階で肝がんができることも珍しくないとわかってきており、原因を問わず定期的な検査を続けることが重要です(学会)1。「沈黙の臓器」だからこそ、症状が出るのを待つのではなく、次の章で説明する4つのタイプを理解したうえで、検査を受ける行動そのものが重要になります。
第2章:肝疾患の主な原因と種類
ここからは「肝疾患」を構成する4つのタイプを、原因・頻度・経過の違いに注目して一つずつ整理します。同じ「肝疾患」という言葉でも、原因がウイルス感染なのか、生活習慣なのか、それとも自己免疫なのかによって、必要な検査も治療の考え方もまったく異なります。まずはご自身やご家族がどのタイプに当てはまりそうか、大まかなイメージをつかむことを目指してください。
日本における肝疾患の患者数を概観すると、C型肝炎ウイルスのキャリアが150~200万人(うち80万人は感染を自覚していない)(学会)1、B型肝炎ウイルスのキャリアが約100万人1、NAFLD(脂肪肝)の患者が1,000万人以上1と、いずれも決して少なくない規模であることがわかります。これらの多くが自覚症状のないまま経過するからこそ、原因ごとの正しい理解と、定期的な検査が重要になります。
2.1 ウイルス性肝炎(B型・C型)
B型・C型肝炎はいずれもウイルスの血液・体液感染で起こりますが、感染経路や自然な経過は異なります。どちらも「急性肝炎」として一時的に発症した後にウイルスが体内から排除されて治る場合と、「慢性肝炎」としてウイルスが体内に居座り続ける場合があり、その分かれ道は感染した年齢やウイルスのタイプによって左右されます1。
B型肝炎ウイルス(HBV)の主な感染経路は、出生時の母子感染(垂直感染)と、家族内感染・性交渉・注射器の共用などの水平感染です1。日本肝臓学会の資料では、日本国内には約100万人のB型肝炎ウイルスキャリアがいると推計されています1。感染経路の大部分はキャリアの母親から出生時に感染する母子感染ですが、現在は母子感染の予防対策が取られているため、新たに母親から子へ感染することはほとんどなくなったとされています1。成人の感染経路は、大部分がキャリアのパートナーとの性交渉などによる水平感染です。成人で感染した場合は多くが一過性感染で、血中からウイルスが排除されるケースがほとんどですが、近年は海外由来のタイプの異なるB型肝炎ウイルス(欧米型A)の感染例が増えており、この場合は成人で感染しても約10%がキャリアになることが課題として指摘されています(学会)1。成人になってからの水平感染は大部分が一過性感染で、急性肝炎を発症しても多くはウイルスが排除されて治癒(既往感染)しますが、乳幼児期に感染してキャリアになった場合は、慢性肝炎を発症する頻度が10~20%程度とされ、肝硬変や肝がんに進展することがあります1。抗ウイルス薬(インターフェロン・核酸アナログ製剤)で血中ウイルス量を減らすことはできますが、現在の治療でウイルスを完全に排除することはできないとされています(学会)1。
母子感染などで乳児期に感染した場合、若年のうちはウイルスを体外に排除する「免疫」の働きが弱く、肝炎を発症しない「無症候性キャリア」の状態が続きます。この時期は血清ALT値が正常で、ウイルスは免疫の影響を受けずに増殖するため、HBV-DNA量は高値、HBe抗原は陽性となります。しかし成人になると免疫の働きが強まり、肝炎を発症して血清ALT値が高値になります。この状態が長く続くのが慢性肝炎です(学会)1。その後、免疫の働きでウイルスの増殖が抑えられ、ウイルスの性質が変化するとHBe抗原が陰性化してHBe抗体が出現するようになります。これが前述の「セロコンバージョン」で、ウイルスの増殖力がさらに低下してHBV-DNA量が低値になると、血清ALT値も正常化し肝炎が鎮静化した「非活動性キャリア」の状態になります(学会)1。ただし非活動性キャリアは臨床的には治ったとみなせる状態であっても、ウイルスは完全に排除されたわけではなく肝細胞内には残存しているため、セロコンバージョン後も油断せず、継続して定期検査を受ける必要があるとされています1。
| マーカー | 臨床的意義 |
|---|---|
| HBs抗原 | B型肝炎ウイルス感染状態のスクリーニング検査、抗ウイルス療法の効果・予後判定1 |
| HBs抗体 | 過去の感染(既往感染)や感染防御の目安、再活性化のスクリーニング検査1 |
| HBe抗原・HBe抗体 | HBe抗原陽性はウイルス量が多い状態、HBe抗体陽性はウイルス量が少ない状態が一般的1 |
| HBV-DNA量 | 血液中のウイルス量を正確に測定する検査1 |
| IgM型HBc抗体 | 高値であればB型急性肝炎を示唆1 |
| HBコア関連抗原(HBcrAg) | 血中HBV量と相関するウイルス蛋白量。抗ウイルス療法の効果判定や治療中止の目安に用いられる1 |
| HBVゲノタイプ(遺伝子型) | 治療効果・予後の予測に利用。地域差がある1 |
出典:日本肝臓学会「肝臓病の理解のために」1。これらのマーカーは複数を組み合わせて総合的に判断されます。
次に、もう一つのウイルス性肝炎であるC型肝炎について見ていきます。C型肝炎ウイルス(HCV)は、日本では150~200万人が感染しているキャリアと推計されており、そのうち感染を知らずに過ごしている人が80万人にのぼるとされています(学会)1。主な原因は1990年以前の輸血・血液製剤の投与や、注射針・注射器の共用、不十分な消毒を伴う医療行為で、現在は輸血用血液の検査体制が整っているため新たな感染はまれになっていますが、ピアスの穴あけや入れ墨、不適切な薬物の回し打ちなどでの感染は今も存在します1。感染すると約30%は自然にウイルスが排除されますが、残り約70%は持続感染(キャリア)となり、C型慢性肝炎に移行します。慢性化するといったん自然治癒することはほとんどなく、肝硬変への進行には年齢が関係し、男性は60歳以降、女性は70歳以降に肝硬変へ至ることが多いとされています(学会)1。
2.1b B型・C型肝炎、どちらも「気づかないまま進行する」のが最大の共通点
B型肝炎とC型肝炎は感染経路や自然経過に違いがありますが、どちらも感染初期には自覚症状がほとんどなく、慢性化していることに何十年も気づかないケースが少なくないという点で共通しています1。実際、C型肝炎ウイルスのキャリア150~200万人のうち80万人が感染に気づいていないという推計は(学会)1、この「静かな進行」を象徴する数字といえます。だからこそ、厚生労働省は自覚症状の有無にかかわらず、少なくとも一回の肝炎ウイルス検査を全国民に推奨しています4。
2.2 脂肪肝(NAFLD・NASH)
ウイルス性肝炎とは対照的に、こちらは日々の生活習慣が主な原因となるタイプです。お酒をほとんど飲まない人でも、肥満・糖尿病・脂質異常症などのメタボリックシンドロームによって肝臓に脂肪が溜まる「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」が増えています。日本肝臓学会は、NAFLDの患者数は1,000万人以上と推定されるとしています1。このうち約10%程度が、肝硬変に進展するリスクの高い「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」とされています1。
日本肝臓学会のガイドライン追補資料では、国内の検診受診者を対象とした調査として、2001年の調査でNAFLDの頻度が18%であったのに対し、2009~2010年の調査では25.5〜29.7%に増加したと紹介されています2。また、41万人超(416,066人)を対象とした単施設からの長期の検診データでは、NAFLDの罹患率は1990年代(1990~2000年)の21.3%から2000年代(2000~2010年)には38.3%へと大きく増加した一方、2010年代(2011~2019年)は36.2%とほぼ横ばいであったと報告されています2。国際的なメタ解析でも、NAFLDの世界的な有病率は2016年時点で約25%、2019年には30%を超えたとする報告があり、日本を含むアジア地域では約30.8%とする報告もあります6。
国際的には2023年以降、「NAFLD/NASH」という呼び方を、代謝異常を重視した「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」に切り替える動きが進んでいます。日本の肝炎情報センターのサイトでも、脂肪肝の分類項目として「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」という名称が用いられており、呼称の切り替えが国内でも進みつつあることがうかがえます5。一方、本記事が参照した日本肝臓学会のガイドライン追補(2022年12月更新)では、近縁の概念である「MAFLD」への言及はあるものの、引き続き「NAFLD/NASH」という表記が使われています2。このように、資料によって使われている呼称が異なる過渡期にあるため、本記事では読者に馴染みのある「NAFLD/NASH(脂肪肝)」という表記を主に使用しています。どの呼称が使われていても指している病態はおおむね共通していますが、正確な位置づけは受診時に主治医に確認することをおすすめします。
2.2b 脂肪肝と肝硬変・肝がんとの関わり
ウイルス以外による肝臓病の中でも、脂肪性肝疾患(肥満・アルコールによるもの)は、肝臓の主な構成細胞である肝細胞に脂肪が溜まり、脂肪肝から脂肪性肝炎、そして肝硬変へと進行することがあります(学会)1。ウイルス性の肝臓病と同様に、障害された肝細胞の跡を埋めるように線維が肝臓内に溜まる「肝線維化」が起こり、進展すると肝臓が硬くなる肝硬変に至ります。肝硬変が進行すると、むくみ・腹水・黄疸などの症状がみられるようになり、食道胃静脈瘤などの消化管病変を併発すると吐血する場合もあります。ただし、ウイルス以外の原因による肝臓病は、肝炎ウイルスによる肝臓病と比較すると肝がんを併発する頻度は低いとされる一方、高齢の患者では原因を問わず肝がん発症に注意が必要とされています1。近年は特に、肥満によるNASHの患者の肝がんが増加していることが問題となっています(学会)1。
2.3 肝硬変
ウイルス性肝炎であれ脂肪肝であれ、治療されずに進行が続いた先に共通して待ち受けているのが肝硬変です。原因(ウイルス・脂肪肝・アルコール・自己免疫など)を問わず、肝臓の線維化が進行した状態が肝硬変です。初期の肝硬変は慢性肝炎と同様にほとんど症状がみられない「代償性肝硬変」の時期があり、その後、肝臓の働きが低下すると「非代償性肝硬変」に進みます(学会)1。日本肝臓学会が引用する国内データ(肝硬変の成因別実態2014、対象26,293例)によると、肝硬変の原因はC型が53%と最も多く、非B非C型(脂肪肝・アルコール性・自己免疫性など)が34%、B型が12%、B型とC型の重複が1%と報告されています1。近年は、肥満によるNASHを背景とした肝がんの増加が課題として指摘されています1。
2.3b 肝硬変になっても悲観しすぎないために
肝硬変の原因や統計を確認したところで、実際に診断を受けた方やご家族が抱きやすい不安についても触れておきます。「肝硬変」と聞くと重い病気というイメージが先に立ちますが、代償性の段階であれば無症状のまま生活の質を保てることも少なくありません。日本肝臓学会の資料でも、抗ウイルス薬などによって肝臓の炎症を抑え線維化の進行を止めることができれば、時間はかかるものの硬くなった肝臓が元に戻ることもあるとされています1。大切なのは、診断名だけで一喜一憂するのではなく、「代償性か非代償性か」「原因は何か」「今できる治療は何か」を主治医と一緒に確認していくことです。
2.4 肝がん
肝がんには、肝臓の主たる細胞である肝細胞ががん化する「肝細胞がん」、胆汁が流れる管の細胞ががん化する「肝内胆管がん」、両者が混在する「混合型肝がん」、そして他の臓器のがんが肝臓に転移した「転移性肝がん」があります。このうち最も多いのは肝細胞がんです(学会)1。日本肝臓学会の資料によると、肝細胞がんの患者の70~80%は肝炎ウイルスの持続感染(キャリア)が原因で、内訳はC型肝炎ウイルスによるものが約60.7%、B型肝炎ウイルスによるものが約15.2%、それ以外(アルコール性肝疾患・NASH・自己免疫性肝炎など)が約24.1%と報告されています(2006~2007年、肝細胞がん19,669例を対象とした全国調査)1。近年はC型肝炎ウイルスが原因の肝がんが減少する一方、NASHなど非ウイルス性の肝臓病に起因する肝がんが増加する傾向にあるとされています1。肝がんは一般に、背景の肝臓病が肝硬変にまで進展してから発生しますが、高齢の患者では肝硬変に進む前に発症することもあるため注意が必要です(学会)1。詳しい統計は第4章で紹介します。
2.4b 肝がんの種類 — 「肝がん」は1つではない
そして4つ目のタイプが、これまで説明してきた病気の多くが最終的につながりうる肝がんです。ひとくちに「肝がん」と言っても、実は複数の種類があります。肝臓の主たる細胞である肝細胞ががん化する「肝細胞がん」、胆汁が流れる管を構成する胆管細胞ががん化する「肝内胆管がん」、両者が混じっている「混合型肝がん」、そして他の臓器にできたがんが肝臓に転移して大きくなる「転移性肝がん」があります。このうち最も多いのは肝細胞がんであり、一般に「肝がん」という場合はこの肝細胞がんを指すことがほとんどです(学会)1。健診結果や医師の説明で「肝がん」という言葉が出てきたときは、どの種類を指しているのかを確認すると、その後の説明がより理解しやすくなります。
2.5 自己免疫性肝疾患(参考:頻度は低いが知っておきたい原因)
ウイルス・生活習慣以外にも、自分自身の免疫が誤って肝臓を攻撃する「自己免疫性肝疾患」があります。肝細胞が障害される「自己免疫性肝炎(AIH)」、肝臓内の微細な胆管が障害される「原発性胆汁性胆管炎(PBC)」、比較的太い胆管も障害される「原発性硬化性胆管炎(PSC)」の3つに分類されます(学会)1。これらは厚生労働省が指定する指定難病であり、診断書の提出により重症度に応じた医療費補助を受けられる場合があります1。頻度としては前述の肝硬変の原因のうち「非B非C型」34%の一部に含まれ、ウイルス性肝炎や脂肪肝と比べると頻度は高くありませんが、放置すると同様に肝硬変・肝がんに進むことがあるため、血液検査(抗核抗体・IgG・抗ミトコンドリア抗体・IgMなど)による鑑別が重要とされています(学会)1。
2.5b 肝疾患のリスクを高める要因のまとめ
4つのタイプそれぞれの詳しい説明を終えたところで、自分や家族が該当するリスク要因がないかを確認できるよう、まとめを掲載します。ここまで見てきた4つのタイプに共通する、あるいは特有のリスク要因を整理すると次のようになります。ウイルス性肝炎(B型・C型)では、1990年以前の輸血歴、注射針・注射器の共用、母子感染、ピアスの穴あけや入れ墨、不適切な薬物の回し打ちなどが主なリスク要因です(学会)1。脂肪肝(NAFLD・NASH)では、肥満・糖尿病・脂質異常症などのメタボリックシンドロームが主なリスク要因とされています1。肝硬変・肝がんについては、これらウイルス性肝炎・脂肪肝の進行に加えて、過度の飲酒、加齢(特にC型肝炎では男性60歳以降・女性70歳以降)、そして原因治療をしていても体重が増加して脂肪肝を併発することが、リスクをさらに高める要因として挙げられています(学会)1。これらの要因の多くは、生活習慣の見直しや早期の検査・治療によってコントロールできる可能性があります。
2.5c 指定難病としての支援制度
頻度は高くない自己免疫性肝疾患ですが、経済的な負担を軽減する制度があることも知っておきたい情報です。自己免疫性肝炎・原発性胆汁性胆管炎・原発性硬化性胆管炎は、いずれも厚生労働省が指定する指定難病に含まれています1。指定難病に認定されると、重症度に応じて医療費の助成を受けられる制度があり、対象となるかどうかや申請方法については、診断書を作成した主治医、またはお住まいの自治体の窓口に相談することで確認できます1。頻度は高くない病気ですが、長期の通院・治療が必要になることが多いため、こうした制度の存在を知っておくことには大きな意味があります。
2.6 4つのタイプの違いを一覧で比較
ウイルス性肝炎、脂肪肝、肝硬変、肝がん、そして頻度は低いものの重要な自己免疫性肝疾患——ここまで説明してきた内容を一度整理します。「肝疾患」という言葉を聞いたときに、まずはこの4つのうちどれに近い状況なのかを意識するだけでも、その後に必要な検査や心構えが変わってきます。特に、ウイルス性肝炎と脂肪肝は原因も対処法もまったく異なるため、健診結果や医師からの説明を聞くときに、この違いを意識しておくと理解しやすくなります。
| 項目 | ウイルス性肝炎(B型・C型) | 脂肪肝(NAFLD/NASH) | 肝硬変 | 肝がん |
|---|---|---|---|---|
| 主な原因 | B型・C型肝炎ウイルスの感染1 | 肥満・糖尿病・脂質異常症などの代謝異常1 | ウイルス性肝炎・脂肪肝・アルコール・自己免疫などの終末像1 | 多くは慢性肝疾患・肝硬変を背景に発生1 |
| 確定に使う主な検査 | HBs抗原・HCV抗体・HCV-RNA1 | 腹部超音波検査(ブライトリバー等)1 | 血液検査(FIB-4など)+画像検査1 | 腹部超音波・CT・MRI+腫瘍マーカー(AFP・PIVKA-II)1 |
| 治療の柱 | 抗ウイルス療法(核酸アナログ・DAAなど)1 | 体重管理・食事療法・運動療法1 | 原因治療+合併症(腹水・肝性脳症)の管理1 | 肝機能・進行度に応じた外科的/内科的治療1 |
| 初期の自覚症状 | ほとんどなし(血液検査で偶然発見されることが多い)1 | ほとんどなし1 | 代償性の間はほとんどなし1 | ほとんどなし(進行後に体重減少・腹部の張りなど)1 |
出典:日本肝臓学会「肝臓病の理解のために」1を基にJHO編集部が作成。個々の状態は必ず医師の診断に基づいて判断してください。
第3章:見逃してはいけない肝疾患の症状
ここまで4つのタイプそれぞれの原因を見てきましたが、実際に生活の中でどのようなサインに気をつければよいのか、症状という切り口であらためて整理します。ウイルス性肝炎も脂肪肝も、初期はほとんど無症状です。症状が出始めるのは、多くの場合すでに病気が進行してからです。
受診の目安 — こんなサインが出たら早めに肝臓専門医へ
これらは、肝臓の働きが低下した「非代償性肝硬変」で現れやすい症状です1。非代償性肝硬変では、むくみや腹水に対して利尿薬、肝性脳症の予防・治療には便通を整える薬などが使われます。原因がB型肝炎ウイルスや自己免疫性肝炎であれば、非代償性肝硬変であっても抑制療法を行い、最近ではC型肝炎の非代償性肝硬変でも抗ウイルス療法が可能になってきています(学会)1。
症状の現れ方には個人差があり、必ずしもすべての人にすべての症状が同時に出るわけではありません。1つでも当てはまる症状が続く場合は、他の症状がなくても受診を検討する価値があります。これらの症状が起こる仕組みも押さえておくと理解が深まります。黄疸は、肝臓で処理しきれなくなった「ビリルビン」という黄色い色素が血中に増え、皮膚や白目に沈着することで起こります。腹水は、肝硬変で門脈という血管の圧力が高まる(門脈圧亢進)ことに加え、肝臓で作られるたんぱく質「アルブミン」が減少することで、血管内に水分を保持できなくなり、お腹の中に水分が漏れ出すことで起こるとされています。肝性脳症は、本来は肝臓で解毒されるはずのアンモニアなどの物質が処理しきれずに脳に影響し、便秘や脱水がきっかけとなって、ボーっとする・つじつまの合わない言動などの意識障害を引き起こすとされています(学会)1。これらはいずれも、肝臓が「化学工場」としての働きを果たせなくなったサインです。
肝がんについても、初期は無症状のことが多く、体重減少・右上腹部の張りや痛み・黄疸などが現れた時点で、すでに進行していることがあります。こうした症状の有無にかかわらず、慢性肝疾患のある人は定期検査を続けることが早期発見の鍵になります(学会)1。
B型肝炎の急性感染では、黄疸・全身倦怠感・食欲不振などの症状が出現することがありますが、症状が全くない場合や、まれに重篤で致死的な経過をとる「劇症肝炎」に移行する場合もあります1。いずれのタイプの肝疾患でも、「症状がないから大丈夫」とは言い切れない点が共通しており、これが定期検査の重要性につながっています。逆に言えば、倦怠感・食欲不振・黄疸・むくみ・腹水・体重減少といった症状が実際に現れた場合は、多くのケースで既に何らかの進行が起きているサインと考え、自己判断で様子を見るのではなく、早めに消化器内科・肝臓内科を受診することが推奨されます(学会)1。
第4章:肝疾患の診断:最新の検査方法
症状のサインに気づいたら、あるいは症状がなくても検査のタイミングが来たら、次に必要になるのが正確な診断です。肝疾患のタイプによって、診断の中心となる検査は異なります。
| 検査項目 | 目的・判定の目安 |
|---|---|
| HCV抗体 | 陽性ならキャリアまたは既往感染(過去の感染)を疑う1 |
| HCV-RNA定量(リアルタイムPCR法) | 血液中にウイルスが存在するかを確定。5.0 Log IU/mL以上を高ウイルス量、未満を低ウイルス量として区分1 |
| ウイルスの型(ゲノタイプ/セログループ) | 治療方針の判断材料。日本では1型が約70%、2型が約30%を占める1 |
出典:日本肝臓学会「肝臓病の理解のために」1。これらの検査は医療機関のほか、保健所でも受けられます。
C型肝炎ウイルスが体内に存在することが確認された場合は、そのタイプ(遺伝子型:ゲノタイプ、血清型:セログループ)を判定します。ウイルスの遺伝子型は、肝臓専門医が治療法を決定する際の重要な情報になります1。このように、C型肝炎の診断は「感染しているかどうか」だけでなく、「どのタイプのウイルスか」までを調べることで、その後の治療方針が具体的に決まっていく流れになっています。
脂肪肝(NAFLD)の診断には、腹部超音波検査が重要な役割を果たします。肝臓が白く写る(ブライトリバー)、深部が写りにくくなる(深部減衰)、腎臓との色調の差(肝腎コントラスト)などの所見から、肝臓への脂肪沈着を診断します(学会)1。アルコール性の肝臓病でも同様の画像所見がみられますが、血清γGTP値が特に高値で、断酒によって改善することから区別されます1。
線維化の進み具合を推測する非侵襲的な指標として、AST・ALT・血小板数・年齢から計算する「FIB-4 index」があります。日本肝臓学会の資料では、C型肝炎では3.25以上、脂肪肝炎(NASH)では2.67以上で、肝臓に高度の線維化が起きている可能性が高いとされています1。ただしこれはあくまで線維化の可能性を推測するスクリーニング指標であり、確定診断ではありません。
原因を調べる基本の血液検査
脂肪肝の診断方法を見てきたところで、今度はウイルス性肝炎や自己免疫性肝疾患など、他の原因を調べる基本的な血液検査についても確認します。肝臓の障害の原因を調べるには、肝炎ウイルスの検査が最も重要とされています。まず血液中のB型肝炎ウイルスの抗原(HBs抗原)とC型肝炎ウイルスの抗体(HCV抗体)を測定し、HBs抗原が陽性であればB型肝炎、HCV抗体が陽性であればC型肝炎の可能性がきわめて高いとされます(学会)1。自己免疫性肝炎の診断には、リンパ球が作るγグロブリンやその一種であるIgG、抗核抗体などの自己抗体を測定します1。このように、同じ「肝機能の異常」からスタートしても、追加で調べる検査項目はタイプによって大きく異なります。
肝臓の硬さ・線維化を調べるそのほかの検査
FIB-4 indexに加え、より直接的に肝臓の状態を確認する検査もあります。肝機能を反映する血中の物質(肝細胞が合成するアルブミン、解毒・排泄されるビリルビンなど)の測定に加えて、超音波装置を用いた肝硬度測定(フィブロスキャンなど)やMRIで、肝臓の硬さを直接調べることも可能になっています(学会)1。採血で肝臓の線維化の程度を推測する「肝線維化マーカー」として、ヒアルロン酸、IV型コラーゲン7s、近年ではM2BPGiやオートタキシンなどが測定されることもあります1。これらの非侵襲的な方法を組み合わせても正確な診断ができない場合には、肝臓に針を刺して組織の一部を採取し、顕微鏡で観察する「肝生検」が行われることがあります(学会)1。
| 項目 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 診断される数(2023年) | 32,673例(男性22,325例、女性10,348例) | 全国がん登録データ3 |
| 死亡数(2024年) | 22,465人(男性15,133人、女性7,332人) | 人口動態統計3 |
| 5年相対生存率(2009~2011年診断例) | 35.8%(男性36.2%、女性35.1%) | 地域がん登録生存率データ3 |
| 罹患率(人口10万人あたり) | 26.3例(男性36.9例、女性16.2例) | 全国がん登録罹患データ3 |
| 死亡率(人口10万人あたり) | 18.7人(男性25.9人、女性11.9人) | 人口動態統計3 |
出典:国立がん研究センター がん統計「肝臓」3(2026年7月時点で確認できる最新公表値)。5年相対生存率は診断からの経過年数が長い指標のため、直近の治療成績とは時点が異なります。
なぜ慢性肝疾患のある人は繰り返し検査を受けるのか
ウイルス性肝炎・脂肪肝・肝硬変のいずれであっても、これらの病気を背景に持つ人は、そうでない人に比べて肝がんが発生するリスクが高いことが知られています(学会)1。しかも肝がんは、早期の段階では自覚症状がほとんど出ません。だからこそ「調子が悪くなったら検査すればいい」ではなく、症状がない段階から背景疾患の種類・進展度に応じた間隔で画像検査を繰り返すことが、命を守るうえで重要になります。
肝がんの早期発見に使われる検査
統計データからも肝がんの規模の大きさがわかったところで、実際にどのように早期発見するのかを見ていきます。肝がんの診断は、腫瘍を見つける「スクリーニング検査」と、見つかった腫瘍が肝がんであることを確定する「精密検査」に分かれます。スクリーニングでは腹部超音波検査が最も重要とされ、肝臓病の種類と進展度に応じた間隔で繰り返し実施されます(学会)1。
| 背景の肝臓病 | 検査間隔の目安 |
|---|---|
| B型・C型慢性肝炎(初期例) | 6~12ヶ月ごと1 |
| B型・C型慢性肝炎(進展例) | 4~6ヶ月ごと1 |
| B型・C型肝硬変 | 3~4ヶ月ごと1 |
| 非ウイルス性肝疾患(非硬変肝) | 12ヶ月ごと1 |
| 非ウイルス性肝疾患(肝硬変) | 6ヶ月ごと1 |
出典:日本肝臓学会編「肝癌診療ガイドライン」を基に作成された市民向け資料より1。実際の間隔は主治医が個々の状態に応じて判断します。
超音波検査に加え、見落としを防ぐために定期的な腹部CT検査・MRI検査も行われます。CT検査はX線を使い、造影剤を用いることで病変を詳しく調べられますが、腎機能が低下している人・喘息のある人・造影剤アレルギーのある人には使用できない場合があります(学会)1。MRI検査は磁場を利用するためX線被ばくがない一方、体内に金属やペースメーカーが入っている人は検査できない場合があります1。腫瘍マーカーとしては血中のAFP(アルファ・フェト・プロテイン)とPIVKA-II(ピブカ・トゥー)を測定し、肝硬変の患者では1~3ヶ月ごとに両者を同時測定するのが一般的です。ただしAFPは肝がんがなくても慢性肝炎・肝硬変で上昇することがあり、PIVKA-IIはビタミンK欠乏や抗凝固薬(ワーファリン)の内服でも高値になることがあるため、腫瘍マーカーの数値だけで判断せず、画像検査と合わせて総合的に評価されます(学会)1。
ステージ別の生存率や、肝がんに使われる個々の薬剤の詳しい効果については、今回参照した公的統計ページの範囲では確認できませんでした。ステージ別・治療法別の詳しい見通しは、担当医または国立がん研究センターの院内がん登録生存率集計システムで確認することをおすすめします。
このように、肝がんの診断は一つの検査だけで完結するものではなく、超音波検査によるスクリーニングから、CT・MRIなどの精密検査、必要に応じた腫瘍生検まで、段階を踏んで確定させていく流れになっています。慢性肝疾患のある人にとっては、こうした検査を「症状がないから受けなくていい」と考えるのではなく、決められた間隔で淡々と受け続けることこそが、早期発見・早期治療につながる最も確実な方法だといえます(学会)1。
第5章:肝疾患の治療法:生活習慣の改善から最新医療まで
診断がついたあと、実際にどのような治療が行われるのかを見ていきます。タイプによって治療の考え方は大きく異なります。日本肝臓学会の資料では、B型・C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎・肝硬変の治療では、抗ウイルス薬によってウイルスを排除したり増殖を抑えたりすることで肝臓の炎症が収まり、その結果、肝線維化の進行が止まり、肝がんが発生するリスクも低下するとされています。さらに、肝臓に溜まった線維が溶けて、時間はかかりますが硬くなった肝臓が元に戻ることもあるとされています(学会)1。抗ウイルス薬が効かない場合や使えない場合には、肝細胞が壊れるのを抑える薬を内服・注射する肝庇護療法や、体内の鉄の量を減らす瀉血療法が、肝細胞の破壊を抑えるのに有用とされています1。
B型肝炎の抗ウイルス薬は、血中と肝細胞内のウイルス量を減らす効果がありますが、ウイルスを完全に排除することはできないとされています。HBe抗原陽性からHBe抗体陽性への「セロコンバージョン」が起こると、ウイルス量が減少して肝炎が鎮静化する可能性が高くなり、注射薬のインターフェロン製剤と、飲み薬の核酸アナログ製剤(ラミブジン・アデフォビル・エンテカビル・テノホビルなど)が治療に使われます(学会)1。ペグインターフェロンを48週間続けて投与すると、20~40%の患者で肝炎が抑えられ、治療を中止してもこの効果が持続するとされています。効きやすさには年齢やウイルスの遺伝型(ゲノタイプ)による差があるため、肝臓専門医との相談が推奨されます1。核酸アナログ製剤は1日1回の内服でHBV-DNA量が低下しAST・ALT値が正常化しますが、自己判断で服薬を中止すると、ウイルスが急に増えて重篤な肝炎を発症する場合があるため注意が必要です(学会)1。
C型肝炎の治療目標は、肝臓病が肝硬変や肝がんに進まないようにウイルスを排除することです。近年は直接作用型抗ウイルス薬(飲み薬)が中心で、より有効で副作用の少ない薬が複数あり、重度の肝硬変患者でも治療可能になっています1。以前用いられていたインターフェロンは、有効性や副作用の面から最近では用いられなくなってきています。どの薬剤を用いるかは、患者の年齢、これまでの治療歴、肝硬変の有無、他の病気の有無や種類、C型肝炎ウイルスの型(ゲノタイプ・セロタイプ)などによって決まり、専門性の高い治療のため肝臓専門医との相談が重要とされています(学会)1。ウイルス排除がうまくいかなかった場合や、副作用で抗ウイルス療法を中止・実施できない場合には、肝臓の炎症を抑える「肝庇護療法」(ウルソデオキシコール酸の内服、グリチルリチン製剤の静脈注射など)で病気の進行を遅らせることもあります1。ウイルス排除に成功すると肝がんが発生する頻度は低下しますが、高齢者や既に肝硬変まで進行した患者では、ウイルス排除後も肝がんができる可能性が低くないため、定期検査の継続が必要です(学会)1。C型肝炎は肥満・糖尿病・飲酒などで肝臓に脂肪が溜まると肝硬変への進行が早まり、肝がんのリスクも高まるとされるため、適度な運動や体重管理も治療と並行して重要とされています1。
脂肪肝(NAFLD/NASH)とアルコール性肝疾患は、生活習慣の改善が治療の基本です。日本肝臓学会の資料では、肥満に対しては標準体重を目標に、食事療法では事務職の場合「標準体重×25~30kcal」、重労働の場合「標準体重×35kcal」を目安にエネルギー量を設定し、脂肪摂取を減らすことが勧められています1。運動療法としては、速歩などの有酸素運動を1日20分以上行うことが目安とされています(学会)1。飲酒については、純アルコール量(飲酒量[mL]×濃度[%]×0.8÷100で計算)で1日20~30gまでであれば通常は肝障害をきたさないとされ、これは日本酒1合、ビール中瓶1本、ウイスキーダブル1杯、ワイングラス2杯に相当します1。
自己免疫性肝疾患のうち自己免疫性肝炎は、免疫を抑える副腎皮質ステロイドの内服で治療します。ステロイドには肥満・糖尿病・易感染性・消化性潰瘍・骨粗鬆症などの副作用があるため、医師の服薬指導に従うことが重要です。原発性胆汁性胆管炎にはウルソデオキシコール酸の内服が使われます(学会)1。
肝硬変が非代償性まで進行した場合、むくみ・腹水には利尿薬、肝性脳症には便通を整える薬などが使われ、原因治療(抗ウイルス療法や免疫抑制療法など)も併せて行われます。肝硬変の進展が高度な場合は、肝移植が治療の選択肢になることもあります1。
肝がんの治療は外科的治療と内科的治療に大別され、腫瘍の数・大きさ、血管への浸潤の有無、他臓器への転移の有無、そして残された肝機能を総合的に評価して治療法が選ばれます(学会)1。肝がんの治療法選びは、単純に「新しい治療ほど良い」という話ではなく、患者一人ひとりの状態に合わせて選択されるため、同じ「肝がん」という診断名でも治療の選択肢は人によって大きく異なることを理解しておくと、担当医からの説明を受け止めやすくなります。
| 治療法 | 概要 |
|---|---|
| 肝切除(外科的治療) | 手術でがんを切除する方法。がんが肝臓の一部分に限局し、肝外転移がなく、肝機能が良好な場合に行われる1 |
| 肝移植(外科的治療) | 肝臓を全摘出し、ドナーの肝臓の一部を移植する方法。肝機能が低下している場合に肝硬変の治療も兼ねて行われる。がんが大きい・個数が多い・肝外転移がある場合は適応外1 |
| ラジオ波焼灼療法(RFA) | 電極針を刺して高熱を発生させ、がん細胞を焼灼する方法。一般に最大径3cm以下、個数3個以内が目安1 |
| マイクロ波凝固療法(MWA) | マイクロ波による摩擦熱でがん細胞を焼灼する方法。手順・経過はRFAとほぼ同様1 |
| 肝動脈化学塞栓療法(TACE) | カテーテルでがんを養う肝動脈に抗がん薬を流したのち血管を塞ぎ、がんへの血流を絶つ治療。肝切除やRFAが行えない場合に選択されることがある1 |
| 分子標的薬による薬物治療 | がん細胞やがんを養う血管が増えるのを抑える飲み薬・点滴薬1 |
出典:日本肝臓学会編「肝癌診療ガイドライン」を基にした市民向け資料1。どの治療法が適するかは、肝機能・転移の有無・血管浸潤・腫瘍の個数と大きさを総合して専門医が判断します。
どの病気であっても、禁酒と定期検査の継続は肝疾患の進行を抑えるうえで共通して重要とされています1。治療法は日進月歩で進化しており、特にB型・C型肝炎の抗ウイルス療法や肝がんの薬物療法は、この10年ほどで大きく進歩したとされています(学会)1。「昔聞いた治療のイメージ」のまま自己判断せず、現在の状況を肝臓専門医に確認することが大切です。
第6章:日本の肝疾患対策:知っておきたい公的支援と相談窓口
診断・治療の流れを理解したところで、次は「どこに相談すればよいか」「費用はどうなるか」という、実際に行動を起こすうえで気になる公的な仕組みについて整理します。厚生労働省は、肝炎ウイルスに感染していても自覚症状がほとんどないことを踏まえ、「すべての国民が、少なくとも一回は肝炎ウイルス検査を受検する必要がある」との考えを示しています4。肝炎ウイルス検査は医療機関のほか、多くの保健所や自治体の健診でも受けられます1。
肝炎情報センターによると、検査を受けてウイルス性肝炎と診断されても病院を受診しない人が全国で約50万人と推計されており、この中には既に肝がんリスクの高い人も含まれると考えられることから、専門医療機関の受診が呼びかけられています5。全国47都道府県に、肝疾患診療の拠点となる「肝疾患診療連携拠点病院」が整備されています5。肝炎情報センターは、この拠点病院間の連携を基盤として、①肝炎診療に関する情報提供、②拠点病院間の情報共有支援、③肝炎診療に携わる医療従事者・コーディネーター・相談員向けの研修という3つのミッションを担っているとされています5。「どこの病院に相談すればよいかわからない」という場合は、まずお住まいの都道府県の拠点病院、または肝炎情報センターのサイトで最寄りの相談窓口を確認することをおすすめします。「検査を受けて終わり」ではなく「陽性であれば専門医療機関につながる」ところまでを含めて、肝疾患対策の重要なステップとされています。
健康診断や人間ドックの血液検査でAST・ALT・γGTPなどの数値の異常を指摘された場合も、肝炎ウイルス検査や腹部超音波検査を受ける良いきっかけになります。特に脂肪肝は自覚症状がないまま健診で偶然発見されることが多いため、「去年より数値が上がった」「脂肪肝の指摘を受けた」といった健診結果を放置せず、医療機関で相談することが早期発見につながります(学会)1。健診の結果は1回だけでなく、数年分を並べて「上がり続けていないか」を確認する視点も大切です。
肝炎対策における国と学会の役割分担
再活性化のリスクを見てきたところで、そもそも日本の肝疾患対策がどのような体制で支えられているのかを整理します。肝疾患対策は、厚生労働省が全国的な検査推奨と医療費助成の枠組みを定め、日本肝臓学会が診療ガイドラインと市民向け情報を提供し、肝炎情報センターが拠点病院network を通じた地域の診療体制を支え、国立がん研究センターが肝がんの統計とがん登録データを集約するという、複数の公的機関の役割分担のもとで進められています1345。この記事も、これら複数の機関の一次資料を照合しながら作成しています。
B型肝炎「既往感染」でも油断できない理由 — ウイルスの再活性化
治療で肝炎が鎮静化した後も注意が必要なケースについて、B型肝炎を例に説明します。過去にB型肝炎ウイルスに一過性感染して治癒した「既往感染」の人(HBs抗原は陰性だがHBc抗体またはHBs抗体が陽性)でも、肝臓の細胞内にはウイルスが残存しています(学会)1。通常は肝炎を発症しませんが、臓器移植後の免疫抑制療法、造血幹細胞移植、白血病・悪性リンパ腫の化学療法、がんの全身化学療法、関節リウマチなど自己免疫疾患の免疫抑制療法、副腎皮質ステロイドの全身投与などを受けると、免疫のバランスが崩れてウイルスが再増殖し、肝炎を起こすことがあります。これを「B型肝炎ウイルスの再活性化」(de novo B型肝炎)といい、重症化しやすいことが知られています(学会)1。上記のような治療を受ける予定がある場合は、B型肝炎ウイルスのキャリアかどうかだけでなく、既往感染かどうかも事前に調べる必要があるため、主治医や肝臓専門医に必ず申し出てください1。がん治療や膠原病治療を担当する医師は肝臓の専門医ではないこともあるため、この点は患者自身が意識しておく価値があります。
肝がんの治療後の経過観察
治療方法を確認したところで、治療を終えた後の経過観察についても押さえておきましょう。肝がんは治療後の再発率が比較的高いことが知られており、治療後も定期的な画像検査(超音波・CT・MRI)と腫瘍マーカー(AFP・PIVKA-II)の測定を継続することが重要とされています(学会)1。これは、治療が成功した後も「もう安心」ではなく、背景にある慢性肝疾患(ウイルス性肝炎・脂肪肝・肝硬変)そのものが続いている限り、新たな肝がんが発生するリスクが残っているためです。担当医から指示された検査間隔を守り、自己判断で通院を中断しないことが勧められます。
治療費の負担が心配な方へ
肝疾患の治療は長期にわたることも多く、費用面の不安を感じる方も少なくありません。以下の制度をご確認ください。
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
これに加えて、B型・C型肝炎の治療については、自己負担限度額をさらに軽減する「肝炎治療医療費助成制度」があり、都道府県ごとに窓口が設けられています4。詳しい対象条件・申請方法は、お住まいの都道府県の担当窓口または肝炎情報センターのサイトでご確認ください5。また、肝がん・重度肝硬変の患者を対象とした入院医療費助成制度も設けられています1。
制度は大きく分けて、①医療費全般に使える一般的な高額療養費制度と、②B型・C型肝炎の治療に特化した肝炎治療医療費助成制度、③肝がん・重度肝硬変患者向けの入院医療費助成制度、という重なり合う複数の仕組みがあります(学会)14。また、自己免疫性肝炎・原発性胆汁性胆管炎・原発性硬化性胆管炎は厚生労働省が指定する指定難病であり、診断書の提出により重症度に応じた医療費補助を受けられる場合があります1。どの制度が使えるかは病名・重症度・所得などによって異なるため、まずは主治医またはお住まいの自治体の窓口、肝炎情報センターに相談することをおすすめします。
第7章:未来へ向けて:肝疾患の予防と共生
最後に、これまで見てきた4つのタイプを踏まえたうえで、これからどう向き合っていけばよいかを考えます。肝疾患は、種類ごとに「予防できること」「一生付き合っていく必要があること」が異なります。B型肝炎はワクチンで予防できるウイルス感染症であり、母子感染防止事業などを通じて日本国内の新規感染は大きく減少してきました。C型肝炎は現在、輸血用血液の検査体制が整い、新規感染はまれになっていますが、既に感染している約150~200万人のキャリアのうち、自分の感染に気づいていない人が80万人にのぼるとされ(学会)1、この「気づいていない層」への検査の呼びかけが今も続く課題です4。
脂肪肝(NAFLD/NASH)は生活習慣病としての側面が強く、体重管理・食事・運動によって進行を抑えられる可能性がある一方、放置すれば肝硬変・肝がんに至ることもあります1。肝硬変・肝がんの患者であっても、原因治療と定期検査を続けることで、病気と付き合いながら生活の質を保つことを目指せます。
ウイルス性肝炎ではないC型肝炎の患者の日常生活についても触れておきます。C型肝炎ウイルスは血液を介して感染しますが、通常はその感染性は高くないため、日常生活で家族に感染することは基本的にありません。ただし、歯ブラシやひげそりなど血液に触れる可能性がある日用品は共有しないようにすることが推奨されています(学会)1。こうした「正しく知って、正しく怖がる」姿勢は、患者本人だけでなく、家族や周囲の人が肝疾患と向き合ううえでも大切な考え方です。
国際的には、世界保健機関(WHO)を含む各国の学術団体が肝炎対策の重要性を発信しており、国内でも日本肝臓学会・厚生労働省・肝炎情報センター・国立がん研究センターが連携して、検査の普及と治療環境の整備を進めています145。日本肝臓学会は、学会活動の最重要事項の一つとして「わが国の肝がん撲滅」を掲げているとされています1。
4つのタイプは別々の病気に見えて、実は互いに関連しています。日本肝臓学会の資料でも、ウイルス性肝炎がうまくコントロールされている患者であっても、体重が増加して脂肪肝を併発すると、肝がんの発生リスクが増すと指摘されています1。つまり、B型・C型肝炎の治療がうまくいった後も、生活習慣による脂肪肝という「別のタイプ」のリスクに切り替わって注意し続ける必要があるということです。一人ひとりが「肝疾患は種類によって原因も見通しも違うが、互いに関連もしている」という基本を理解し、症状がなくても検査を受ける行動につなげることが、この「国民病」に立ち向かう第一歩です(学会)1。
🖨️ 受診時に持参したいメモ(印刷してお使いください)
- 症状がいつから、どのように出ているか(倦怠感・むくみ・黄疸・お腹の張りなど)
- 過去の輸血歴(特に1990年以前)、注射針を共用した経験の有無、ピアス・入れ墨の経験、家族に肝疾患の人がいるか
- 健診で「脂肪肝」「肝機能異常」「AST・ALT・γGTPが高い」などを指摘されたことがあるか、いつ・どの数値だったか
- 現在服用している薬・サプリメント(肝臓に影響するものがあるため)、これから免疫抑制療法や抗がん剤治療を受ける予定があるか
- お酒を飲む頻度・量(純アルコール量に換算するとどのくらいか)
- 体重の変化(急な体重減少・増加はないか)
- 医師に聞きたいこと(診断名、進行度、今後受けるべき検査の種類と頻度、治療の選択肢、公的な医療費助成制度の対象になるか)
肝疾患でよく出てくる用語集
肝疾患についての説明を医師や資料で読むと、聞き慣れないカタカナ・アルファベットの略語が次々に出てくることがあります。ここでは、この記事や病院での説明でよく登場する用語をまとめました。すべてを暗記する必要はありませんが、「聞いたことがある」状態にしておくだけでも、診察室での説明が格段に理解しやすくなります。特にウイルス性肝炎の分野は、抗原・抗体・遺伝子といった専門用語が集中しており、初めて聞く人にとってはハードルが高く感じられがちです。次の表を、診察前後の振り返りや、ご家族への説明の際にも活用してください。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| キャリア | 肝炎ウイルスに持続感染している状態の人1 |
| 既往感染 | 過去に感染したがウイルスは排除された状態。ただし肝細胞内にはウイルスが残存している1 |
| セロコンバージョン | B型肝炎でHBe抗原陽性からHBe抗体陽性に変わる現象。肝炎が鎮静化するサインの一つ1 |
| 肝線維化 | 炎症で壊れた肝細胞のあとに線維(せんい)が蓄積すること。進行すると肝硬変になる1 |
| 代償性肝硬変/非代償性肝硬変 | 代償性は無症状が多い初期の肝硬変、非代償性はむくみ・腹水・黄疸などが出る進行した肝硬変1 |
| 肝性脳症 | 肝機能低下により、便秘や脱水をきっかけに意識障害が起こる状態1 |
| FIB-4 index | AST・ALT・血小板数・年齢から計算する肝線維化の非侵襲的な指標1 |
| AFP・PIVKA-II | 肝がんの腫瘍マーカー。血液検査で測定する1 |
出典:日本肝臓学会「肝臓病の理解のために」1を基にJHO編集部が作成。
よくある質問
健康診断で「肝機能異常」とだけ言われました。何をすればいいですか?
肝疾患の診療は何科を受診すればいいですか?
肝疾患は遺伝しますか?
肝硬変になったら、もう治らないのですか?
肝がんと診断された場合、必ず手術になりますか?
肝機能の数値(AST・ALTなど)が高いと言われました。すぐに肝がんの心配がありますか?
お酒はどれくらいなら肝臓に負担をかけませんか?
肝がんの腫瘍マーカー(AFP・PIVKA-II)が高いと必ずがんですか?
結論
「肝疾患」は一つの病気ではなく、原因も経過も異なる複数の病気の総称です。ウイルス性肝炎(B型・C型)は検査で確実に診断でき、脂肪肝(NAFLD・NASH)は生活習慣の見直しで改善が期待でき、肝硬変・肝がんは早期発見が経過を大きく左右します。共通するのは「自覚症状がとても出にくい」という点であり、厚生労働省が推奨する肝炎ウイルス検査と、定期的な血液検査・画像検査こそが、進行を防ぐ最も確実な方法です14。気になる症状がある方、まだ肝炎ウイルス検査を受けたことがない方は、ぜひこの記事をきっかけとして、医療機関や保健所への相談を検討してください。
この記事で紹介した内容は、日本肝臓学会・厚生労働省・国立がん研究センター・肝炎情報センターという公的機関の資料に基づいています。肝疾患は種類が多く、症状も原因もさまざまですが、いずれも早期発見・早期対応によって進行を防げる可能性がある病気です。ご自身や大切な家族の健康のために、この記事の内容を今後の受診や生活習慣の見直しに、ぜひ役立てていただければ幸いです。改めて要点を振り返ると、①ウイルス性肝炎(B型・C型)は検査(HBs抗原・HCV抗体)で確実に診断できる、②脂肪肝(NAFLD・NASH)は日本で1,000万人以上と推定される国民的な課題で生活習慣の改善が中心、③肝硬変は代償性か非代償性かで症状が大きく異なる、④肝がんは早期発見のための定期的な画像検査が鍵、という4点です(学会)1。この記事が、肝疾患について「なんとなく怖い」という漠然とした不安から、「正しく理解して備える」という具体的な行動への一歩になれば幸いです。
本記事の内容をより深く理解したい方、特定のタイプについてさらに詳しく知りたい方のために、関連記事もあわせてご覧ください:ウイルス性肝炎とは?種類・症状・最新の治療法、肝臓がんのすべて:原因・症状から最新治療法まで、肝硬変による腹水のすべて、肝臓の検査:B型肝炎や脂肪肝を早期に見つける。
更新日:2026年7月19日。本記事の内容や参考文献に誤りや古い情報にお気づきの際は、お問い合わせフォームよりお知らせください。事実関係を確認のうえ、訂正いたします。読者の皆様からのご指摘が、この記事の正確性を保つ重要な支えになっています。
参考文献
- 日本肝臓学会「肝臓病の理解のために」(市民向け冊子) https://www.jsh.or.jp/lib/files/citizens/booklet/understanding_liver_disease.pdf
- 日本肝臓学会「NAFLD/NASH診療ガイドライン」追補内容のお知らせ(最終更新2022年12月16日) https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/nafldnash2020_add.pdf
- 国立がん研究センター がん統計「肝臓」 https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/8_liver.html
- 厚生労働省「肝炎対策」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kanen/index.html
- 肝炎情報センター(国立国際医療研究センター)「センターについて」 https://www.kanen.jihs.go.jp/about/index.html
- Review article: the epidemiologic burden of non-alcoholic fatty liver disease across the world(Europe PMC) https://europepmc.org/article/MED/35880713
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の症状に対する医学的な診断・治療の代わりにはなりません。症状がある場合は医療機関を受診してください。掲載している数値・分類・制度の内容は、公表時点の公的資料に基づいていますが、ガイドラインの改定や制度変更により内容が変わる場合があります。最新の情報は、必ず主治医または各公的機関の公式サイトでご確認ください。本記事の内容についてご不明な点があれば、遠慮なくお問い合わせください。
この記事について(運営者情報・免責事項) タップで表示
医療情報に関する重要なお知らせ
本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。
