多発性骨髄腫の食事|治療中の栄養と腎臓・感染症の注意
この記事でわかること
目次
- Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
- 要点まとめ
- 第1部:多発性骨髄腫と食事の基本と日常生活の見直し
- 1.1. 多発性骨髄腫と栄養の基本 ― なぜ「食べること」が大事なのか
- 1.2. 症状を悪化させてしまうNG習慣と、代わりにできること
- 第2部:身体の内部要因 ― 貧血・便秘・腎機能と食事の工夫
- 2.1. 多発性骨髄腫に多い貧血と、鉄分・たんぱく質のとり方
- 2.2. 便秘と下痢 ― 抗がん剤と薬に合わせた食物繊維の使い分け
- 2.3. 腎機能を守るための食事 ― 塩分・たんぱく質・カリウム・リンの考え方
- 2.4. ウコン(ターメリック)やサプリメントの位置づけと注意点
- 第3部:治療中に注意したい合併症と、食事で気をつけたいこと
- 3.1. 骨のもろさ・高カルシウム血症とカルシウム摂取の考え方
- 3.2. 感染症リスクと食中毒予防 ― 生ものとの付き合い方
- 3.3. 口内炎・味覚障害で食べられないときの工夫
- 第4部:今日から始める食事の改善アクションプラン
- 第5部:専門家への相談 ― いつ・どこで・どのように?
- 5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 5.2. 症状に応じた診療科の選び方
- 5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- よくある質問
- 結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
- この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
- 参考文献
多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)と診断され、抗がん剤治療や自家移植などを受けていると、食欲がわかない、味が変に感じる、すぐおなかがいっぱいになる、という悩みを抱える方は少なくありません。
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。
症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
一方で、「何をどのくらい食べたらいいの?」「腎臓が悪いと言われたけれど、水分やたんぱく質はどれくらいにすべき?」「感染症がこわくて生ものを全部やめるべき?」といった不安もつきまといます。
本記事では、日本の公的機関や専門団体の情報をもとに、多発性骨髄腫の治療中に意識したい食事・栄養のポイントを、日常生活の工夫レベルから腎機能・感染症対策まで、できるだけ具体的に整理します。
「何をどこまで気にすればいいか」を明らかにしつつ、無理なく続けられる食事のコツをお伝えします。気になる症状がある場合や、食事制限の内容について迷う場合は、必ず主治医や管理栄養士に相談しながら読み進めてください。
Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。
本記事の内容は、厚生労働省や自治体、国立がん研究センターの「がんと食事」に関する解説、日本のがん専門病院・学会の資料、さらに多発性骨髄腫に関する国際的なガイドラインやレビュー論文などの一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。
- 厚生労働省・自治体・公的研究機関:がんと栄養、腎機能障害、感染症予防などに関する資料を参照し、日本人向けの公式情報を優先して取り入れています。
- 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:国立がん研究センターがん情報サービス、移植医療関連学会の栄養指針、多発性骨髄腫の合併症(腎障害・骨病変・感染症)に関するレビューなどをもとに要点を整理しています。
- 教育機関・医療機関・NPOによる一次資料:がん治療中の貧血への食事の工夫、白血球減少時の食事衛生など、実際の診療現場に根ざした情報も活用しています。
AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。
私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、 運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。
要点まとめ
- 多発性骨髄腫の治療中は、「完璧な健康食」よりも、体重と筋肉量をできるだけ保ち、治療に耐えられる体力を維持することが第一の目的になります。
- 貧血・便秘・吐き気・口内炎などの副作用に合わせて食べ方を工夫し、少量でもエネルギーとたんぱく質をとれる食品を活用することが大切です。
- 多発性骨髄腫では腎臓が傷みやすく、カリウム・リン・塩分・たんぱく質・水分量などの制限が必要になる場合があります。自己判断ではなく、必ず主治医・腎臓専門医・管理栄養士の指示に従いましょう。
- 抗がん剤治療や移植後は免疫力が低下し、食中毒などの感染症リスクが高くなります。生ものや衛生管理の不十分な食品を控え、「手洗い」と「よく加熱すること」を徹底することが重要です。
- ウコン(ターメリック)や健康食品は、試験管や動物実験レベルの報告にとどまるものも多く、薬との相互作用や肝機能への影響も懸念されます。サプリメントの使用は必ず主治医に相談し、「標準治療の代わり」にはしないようにしましょう。
- 食事で悩んだときは一人で抱え込まず、病院の栄養相談やがん相談支援センターなどに相談することで、自分の状態に合った具体的なメニューや食べ方のアドバイスを受けることができます。
「食欲がないのに無理に食べないといけないの?」「腎臓が悪いと言われたから、肉や魚は全部やめるべき?」「生ものが危ないと聞いて、何を食べていいかわからない……」こうした悩みは、多発性骨髄腫の患者さんとご家族からよく聞かれる声です。
この記事では、まず「栄養の基本」と「日常生活で見直したいポイント」を整理し、そのうえで貧血や便秘、腎機能低下、感染症リスクなど、多発性骨髄腫に特有の問題ごとに、食事でできる工夫を段階的に解説していきます。
必要に応じて、 関連する総合ガイド や、 詳細解説記事 など、JHO内の関連記事に自然な文脈で橋渡しを行います。
記事を読み進めることで、「今の自分の状態に合わせてどんな食べ方を心がければよいか」「いつ医療者に相談すべきか」が具体的にイメージしやすくなることを目指しています。
今の血圧・脈拍を確かめる
数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
身長と体重からBMIも調べる
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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
第1部:多発性骨髄腫と食事の基本と日常生活の見直し
まずは「がんと診断されたら食事はこうあるべき」という思い込みを少し横に置き、日常生活の中で現実的にできることから整理していきましょう。国立がん研究センターは、がんと診断されても「バランスよく食べながら体力を維持することが大切で、あまり神経質になりすぎないことも重要」と述べています。
1.1. 多発性骨髄腫と栄養の基本 ― なぜ「食べること」が大事なのか
多発性骨髄腫は、骨髄中で免疫を担う形質細胞が異常に増える病気で、貧血や骨のもろさ、腎機能障害、感染症などさまざまな合併症を引き起こします。治療そのものも、吐き気や味覚障害、食欲不振などを起こしやすく、「食べたいのに食べられない」「そもそも食べる気がしない」状態になりがちです。
しかし、十分なエネルギーとたんぱく質、ビタミン・ミネラルをとることは、体力・筋力を保ち、治療に伴う副作用から回復する力を高めるうえで欠かせません。国立がん研究センターは「感染を防ぎ体力を維持するためにも、エネルギーやたんぱく質、ビタミン、ミネラル不足にならない食事が大切」としています。
とはいえ、調子が悪いときに「三食きちんと、完璧なバランスで」と考えると、それ自体がストレスになってしまいます。食欲が落ちている時期は、「食べられるものを少しずつ」「一口ごとにエネルギーやたんぱく質をのせていく」イメージで、ヨーグルトにきな粉やはちみつを足す、汁物に卵や豆腐を加えるといった小さな工夫から始めてかまいません。
1.2. 症状を悪化させてしまうNG習慣と、代わりにできること
「体に良さそう」と思って続けている習慣が、結果的に体力低下や腎機能悪化につながってしまうケースもあります。ここでは、多発性骨髄腫の治療中に注意したいNG習慣と、代わりにできる工夫をまとめます。
- 極端な食事制限・無理なダイエット
体重を落としすぎると、筋肉量も減り、治療の副作用に耐える力が弱くなります。糖質や脂質を「ゼロ」にするのではなく、主食の量や脂の質を調整する程度にとどめましょう。 - 塩分のとりすぎ
腎臓に負担がかかりやすい多発性骨髄腫では、濃い味の加工食品(カップ麺、ハム・ソーセージ、漬物など)を頻繁にとると、むくみや血圧上昇につながることがあります。だしやスパイス、レモンなどで味に変化をつけ、塩分を控えめにする工夫が役立ちます。 - 大量のアルコール
アルコールは肝臓や腎臓への負担に加え、脱水を招きやすく、薬との相互作用も問題になります。普段飲酒習慣がある方は、主治医と相談のうえで量を減らすか、いったん中止することを検討しましょう。 - 自己判断でのサプリメント・漢方の多用
高用量のビタミンやミネラル、ハーブサプリ、健康茶の中には、腎機能に負担をかけたり、抗がん剤や新薬の効果に影響したりするものもあります。サプリメントは必ず「飲んでいるものをすべて」主治医・薬剤師に伝えることが重要です。 - 水分不足
骨の破壊や異常タンパクによって腎臓の負担が増えやすい多発性骨髄腫では、「適切な水分」が大切です。ただし、心不全や高度の腎機能障害がある場合は逆に水分制限が必要になることもあるため、自分の目標量は必ず医療者に確認してください。
「してはいけないこと」を完璧にゼロにするのではなく、「頻度を減らす」「量を少し控える」といった現実的な目標から始めると、ストレスなく続けやすくなります。
| こんな症状・状況はありませんか? | 考えられる主な背景・原因カテゴリ |
|---|---|
| ここ1〜2か月で意図せず体重が3kg以上減っている | 摂取エネルギー不足、治療の副作用による食欲低下 |
| 便秘が続き、3日以上排便がないことが多い | 食物繊維不足、水分不足、薬(制吐剤・痛み止め)による影響 |
| 水やお茶をあまり飲まず、尿の回数や量が減った | 脱水、腎機能の変化、利尿剤の影響など |
| 微熱や風邪のような症状が長引き、食欲も落ちている | 感染症、白血球減少、治療による免疫低下 |
| 口内炎や口の痛みで、固いもの・酸っぱいものが食べられない | 抗がん剤や放射線治療の副作用による口腔粘膜障害 |
| 骨の痛みが強く、立ったり歩いたりするのがつらい | 骨病変・骨折リスクの上昇、カルシウムバランスの変化 |
第2部:身体の内部要因 ― 貧血・便秘・腎機能と食事の工夫
生活習慣を整えてもなお続く症状の背景には、多発性骨髄腫そのものや治療に伴う「体の内側の変化」が隠れていることがあります。ここでは、特に影響が大きい貧血・便秘・腎機能障害に注目し、食事面でできるサポートを整理します。
2.1. 多発性骨髄腫に多い貧血と、鉄分・たんぱく質のとり方
多発性骨髄腫では、異常な形質細胞が骨髄のスペースを占拠することで、赤血球がうまくつくられず、貧血になりやすくなります。貧血があると、疲れやすい、息切れがする、立ちくらみがする、体が冷えるといった症状が出やすくなり、日常生活の質(QOL)が大きく下がります。
貧血の原因はさまざまで、鉄不足だけでなく、腎機能低下による造血ホルモン(エリスロポエチン)の不足や、がんそのものによる「慢性炎症性貧血」なども含まれます。そのため、「貧血=鉄サプリをたくさん飲めばよい」というわけではなく、まずは血液検査で原因を確認し、必要に応じて輸血や造血刺激薬などの治療が行われます。
食事面では、赤血球の材料となるたんぱく質と鉄分、そして鉄の吸収や造血を助けるビタミンB12や葉酸、ビタミンCを意識してとることが勧められます。
- たんぱく質が豊富な食品:魚、肉、卵、乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズ)、大豆製品(豆腐、納豆、厚揚げなど)、ナッツ類
- 鉄分が豊富な食品:赤身肉、レバー(腎機能やコレステロール値によっては制限が必要)、貝類(あさりなど)、大豆・小豆、ほうれん草などの青菜、プルーンやレーズンなどのドライフルーツ
- ビタミンCが豊富な食品:ピーマン、ブロッコリー、キャベツ、柑橘類、いちご、キウイなど
- 葉酸・ビタミンB12が豊富な食品:レバー、魚介類、卵、緑黄色野菜、海苔など
具体的には、「朝食のヨーグルトにプルーンを加える」「昼食の味噌汁に豆腐や卵を落とす」「夕食に赤身の肉や魚料理を1品加える」といった、小さな工夫の積み重ねが効果的です。腎機能に制限がある方や、レバー・貝類などの摂取に注意が必要な方は、必ず事前に医療者に相談しましょう。
2.2. 便秘と下痢 ― 抗がん剤と薬に合わせた食物繊維の使い分け
抗がん剤や吐き気止め、痛み止め(オピオイドなど)の影響で、便秘が続きやすくなる方も多くいます。逆に、特定の薬剤や抗生物質の影響で下痢が続くケースもあります。症状に応じて、食物繊維のとり方を工夫しましょう。
便秘がちのときは、腸の動きを助ける不溶性食物繊維と、便に水分を含ませやわらかくする水溶性食物繊維をバランスよくとることが大切です。
- 不溶性食物繊維:玄米や雑穀ご飯、ふすま入りパン、さつまいも、きのこ類、根菜(ごぼう・にんじんなど)、大豆製品
- 水溶性食物繊維:オートミール、果物(りんご・バナナ・柑橘類)、海藻類、里芋や長芋など
ただし、強い腹痛や腸閉塞の可能性がある場合、医師から「食物繊維を控えるように」と指示されることもあります。その際は自己判断で繊維を増やさず、指示に従いましょう。
下痢が続くときは、脂っこいもの、刺激の強い香辛料、冷たい飲み物、アルコールなどを控え、消化のよいお粥・うどん・バナナ・ヨーグルトなどを選ぶとよいとされています。水分と電解質の補給も大切です。
2.3. 腎機能を守るための食事 ― 塩分・たんぱく質・カリウム・リンの考え方
多発性骨髄腫では、骨の破壊によるカルシウムの流出や、Mタンパクと呼ばれる異常タンパクが増えることで、腎臓に負担がかかりやすくなります。進行すると腎機能障害から腎不全に至ることもあるため、食事を含めた腎臓のケアが重要です。
腎機能がどの程度障害されているかによって、必要な食事制限の内容は大きく変わります。一般的には、以下のような点が検討されます。
- 塩分(ナトリウム):むくみや高血圧を防ぐために、1日6g未満を目標にすることが多く、加工食品や外食の利用頻度を下げる、だしや香辛料で味を補うなどの工夫が勧められます。
- たんぱく質:腎機能が比較的保たれている場合は、筋肉量を維持するために一定量のたんぱく質が必要です。一方、中等度〜高度の腎障害では、医師・管理栄養士の指導のもとで「必要最小限」に制限することがあります。
- カリウム:腎機能が低下すると、血中カリウムが上がりやすくなるため、果物・野菜・芋類・海藻などのとり方を調整する場合があります。野菜をゆでてから調理する、水にさらすといった工夫でカリウムを減らせます。
- リン:加工肉、インスタント食品、チーズなどに多く含まれるリンは、腎臓病で問題となることがあります。食品添加物としての「リン酸塩」が多い食品を控えることが勧められる場合があります。
- 水分:腎機能や心機能に応じて、1日の目標水分量が決められます。一般的な目安は「尿量+500〜800mL」とされることが多いですが、個々の状況によって異なるため、必ず自分専用の目標量を確認してください。
多発性骨髄腫と腎障害を併せ持つ方を対象にした国際的な資料では、「腎臓にやさしい食事(腎臓食)」を維持することが、症状の進行を遅らせるうえで重要とされています。具体的な制限内容は必ず主治医・腎臓専門医・管理栄養士と相談し、「よくわからないまま自分だけきつく制限してしまう」ことは避けましょう。
2.4. ウコン(ターメリック)やサプリメントの位置づけと注意点
多発性骨髄腫に関して、「ウコン(ターメリック)に含まれるクルクミンという成分が抗がん作用をもつのではないか」という報告が、細胞実験や動物実験レベルでいくつか存在します。一部の早期研究では、クルクミンが特定の抗がん剤に対するがん細胞の抵抗性を弱める可能性が示されています。
しかし、これらの研究はあくまで基礎研究や小規模な臨床試験にとどまり、「クルクミンを摂取すると多発性骨髄腫が治る」「標準治療の代わりになる」といった結論は出ていません。また、高用量のクルクミンサプリメントは、胆道系の疾患や肝機能への影響、抗凝固薬などとの相互作用が懸念されています。
カレーや煮物などの日常的な料理にスパイスとして少量のターメリックを使う分には、多くの場合大きな問題はないと考えられますが、サプリメントという形で高用量を長期間摂取する場合は、必ず主治医・薬剤師に相談してください。「標準治療の代わり」ではなく、あくまでバランスの良い食事の一部として位置づけることが大切です。
第3部:治療中に注意したい合併症と、食事で気をつけたいこと
自己管理で工夫できる範囲を越えてしまう症状も、多発性骨髄腫では少なくありません。ここでは、医療機関での対応が必要になりやすい合併症と、そのとき食事面で意識したいポイントを解説します。
3.1. 骨のもろさ・高カルシウム血症とカルシウム摂取の考え方
多発性骨髄腫では、骨を壊す細胞(破骨細胞)が過剰に働くことで、骨がもろくなり、背骨の圧迫骨折や長管骨(太ももの骨など)の骨折が起こりやすくなります。このとき、骨からカルシウムが血液中に大量に流れ出し、「高カルシウム血症」と呼ばれる状態になることがあります。
高カルシウム血症になると、吐き気・嘔吐、口の渇き、便秘、意識のぼんやり、腎機能悪化などの症状が出ることがあり、緊急の点滴治療や薬物療法が必要です。このような状態では、カルシウムサプリメントやカルシウム強化食品を追加でとることは基本的に勧められません。
一方で、病状が安定している時期には、骨粗しょう症や骨折予防のために、適切なカルシウムとビタミンDの摂取が重要です。牛乳・ヨーグルト・チーズ、小魚、青菜類などの食品からバランスよく摂ることを心がけつつ、「自分の場合はどの程度意識すべきか」を主治医に確認しましょう。
3.2. 感染症リスクと食中毒予防 ― 生ものとの付き合い方
抗がん剤治療や自家造血幹細胞移植では、白血球が一時的に大きく減少し、免疫力が落ちます。この状態では、普段なら問題にならない程度の菌やウイルスでも、重い感染症を引き起こすことがあります。
国立がん研究センターなどでは、白血球が大きく減少している時期に「食事からの感染症を予防するため、一定期間は生ものを避け、十分に加熱された食品を選ぶこと」が勧められています。具体的には、次のような食品は避けるか、医療者の指示に従って慎重に判断する必要があります。
- 刺身・寿司などの生魚、加熱していない貝類
- 生卵や半熟卵(卵かけご飯、温泉卵など)
- 加熱殺菌されていないナチュラルチーズや生乳製品
- 洗浄が不十分な生野菜・サラダ、バイキング形式の惣菜など
- 消費期限を過ぎた食品、開封後長時間放置された食品
一方で、白血球数が回復し、医師から「通常の食事でよい」と言われた時期には、過度に生ものを恐れる必要はありません。ただし、一般的な食中毒予防のルール(手洗い、十分な加熱、冷蔵保存の徹底など)は、治療中・寛解後を問わず継続することが大切です。
疑問があれば、「今の白血球数だと刺身はどの程度ならよいか」「外食で避けたほうがよいメニューは何か」など、具体的な例を挙げて主治医や看護師、管理栄養士に相談すると安心です。
3.3. 口内炎・味覚障害で食べられないときの工夫
抗がん剤や放射線治療の副作用として、口内炎や口の中の痛み、味覚の変化(何を食べても苦く・金属っぽく感じるなど)が起こることがあります。このようなときは、「栄養バランス」よりも「痛みが少なく、飲み込みやすいこと」を優先した食事選びが大切です。
- 刺激の少ない、柔らかい食事:お粥、うどん、茶碗蒸し、豆腐、ポタージュスープ、卵料理など
- においが少ない・冷やして食べられるもの:冷たいゼリー、ヨーグルト、冷製スープなど
- 酸味や塩分が控えめな味付け:レモンや酢を使いすぎない、唐辛子などの香辛料を減らす
- 口内炎がひどいときは固い野菜やパンの耳などを避け、ミキサー食やとろみをつけた食事にする
病院によっては、がん治療中の症状別レシピ集を公開しているところもあります。通院先の栄養相談窓口やがん相談支援センターで、活用できるレシピ集がないか聞いてみましょう。
第4部:今日から始める食事の改善アクションプラン
ここまでの内容を踏まえ、「今夜から」「今週末から」「少し先の将来に向けて」と、時間軸ごとに具体的なアクションを整理してみましょう。すべてを一度に完璧に行う必要はありません。自分にとって優先度が高いものから、1つずつ試していくことが重要です。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今夜からできること | 少量でもエネルギーとたんぱく質をとれる工夫をする | お粥やうどんに卵・豆腐・チーズを足す/ヨーグルトにきな粉やはちみつ、刻んだドライフルーツを加える/味噌汁に豆腐や肉団子を入れる など |
| Level 1:今夜からできること | 水分をこまめにとる(制限がない場合) | 1回にたくさん飲むのではなく、食事ごと・間食ごとにコップ1杯ずつ水やお茶を飲む/冷たい飲み物がつらいときは常温や温かい飲み物にする |
| Level 2:今週から始めること | 便通に合わせて食物繊維のとり方を見直す | 便秘がちな日は、玄米や雑穀ご飯、野菜スープ、海藻サラダなどを1品増やす/下痢気味の日は、お粥・うどん・バナナなど消化のよいものを中心にし、脂っこいものを控える |
| Level 2:今週から始めること | 塩分・加工食品を少し減らす | カップ麺やコンビニ惣菜の利用回数を週○回までに決める/漬物や塩辛を小皿1回分にする/だしやハーブ、レモンで味を補う |
| Level 3:1か月以内に取り組みたいこと | 栄養相談やがん相談支援センターを利用してみる | 通院先の管理栄養士に「今の食事で気になる点」を相談する/がん相談支援センターや患者会で、同じ病気の人の工夫を聞いてみる |
| Level 3:1か月以内に取り組みたいこと | サプリ・健康食品の「棚卸し」をして、主治医に相談する | 自宅にあるサプリ・市販薬・健康茶を全部メモに書き出す/診察時に持参し、「何を続けてよいか」「やめたほうがよいものは何か」を確認する |
第5部:専門家への相談 ― いつ・どこで・どのように?
食事の工夫だけでは対処しきれない症状や、危険なサインが見られる場合は、早めに医療機関へ相談することが必要です。ここでは、「どんなときにすぐ相談すべきか」「どの診療科にかかればよいか」「診察時に役立つ準備」についてまとめます。
5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 38℃以上の発熱が続く、または悪寒を伴う高熱が出た
- 強い喉の痛み、咳、息苦しさが出てきた
- 急に尿の量が減った、全身のむくみが強くなった
- 吐き気・嘔吐が続き、水分もほとんどとれない
- 便秘が5日以上続き、腹痛や吐き気を伴う
- 下痢が何日も続き、血が混じる、発熱を伴う
- 急に強い骨の痛みが出て、立つ・歩くことが難しくなった
- 意識がぼんやりする、異常な眠気や混乱がある(高カルシウム血症などの可能性)
これらの症状がある場合、「様子を見る」のではなく、できるだけ早く主治医または救急外来に相談してください。夜間や休日で受診先に迷うときは、地域の救急相談窓口や#7119などの電話相談も活用できます。
5.2. 症状に応じた診療科の選び方
- 多発性骨髄腫の治療そのものに関する相談:血液内科・腫瘍内科(現在通っている主治医)
- 腎機能やむくみに関する相談:主治医に加え、必要に応じて腎臓内科
- 強い骨の痛みや骨折が疑われる場合:整形外科+血液内科の連携
- 食欲低下や体重減少(うつ症状を疑う場合を含む):主治医と相談のうえ、心療内科・精神科につなぐこともあります。
- 具体的な食事内容・制限に関する相談:病院の管理栄養士、がん専門病院の栄養サポートチーム
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- 直近1〜2週間分の体温・体重・食事量・便通・水分摂取量などをメモしたノート
- 服用中の薬・サプリメント・健康食品のリスト(現物を持参するとより確実です)
- 質問したいことを簡単に箇条書きにしたメモ(例:「カレーのスパイスはどの程度までよいか?」など)
- 健康保険証・限度額適用認定証(高額療養費制度を利用する場合)
診察や検査の費用は、保険適用の有無や内容によって変わります。腎機能や電解質、貧血の状態をチェックする血液検査は、3割負担で数千円程度となることが多いですが、詳しい金額は医療機関によって異なります。不安な場合は、事前に受付や会計窓口で目安を聞いておくと安心です。
よくある質問
Q1: 多発性骨髄腫でも、刺身や寿司などの生ものは一切食べてはいけませんか?
抗がん剤治療中や白血球が大きく減っている時期は、食中毒や感染症のリスクが高くなるため、基本的には刺身・寿司・生卵・非加熱の貝類などを控えることが勧められます。特に自家造血幹細胞移植前後など、強い免疫抑制がかかる時期は、病院から具体的な「食事制限リスト」が示されることが多いでしょう。
一方、白血球数が回復し、主治医から「通常の食事でよい」と説明された時期には、一般的な食中毒予防(鮮度・保存状態・衛生管理など)を守りながら、生ものを楽しめることもあります。自分の今の血液検査値や治療段階に応じて、「どの程度までならよいか」を必ず主治医・看護師に確認してください。
Q2: 貧血と言われました。レバーや鉄サプリをたくさんとればよいのでしょうか?
多発性骨髄腫の貧血は、骨髄そのものの障害や腎機能低下、炎症の影響など、多くの要因が絡み合って起こります。必ずしも「鉄不足だけ」が原因ではないため、自己判断で高用量の鉄サプリメントをとることは勧められません。
食事として、赤身肉や魚、大豆製品、緑黄色野菜、ドライフルーツなどから鉄分とたんぱく質をバランスよくとることは、多くの場合有益です。ただし、レバーはビタミンAやコレステロールも多く、腎機能や他の病気によっては量を控える必要があります。サプリメントを含め、「鉄をどの程度意識すべきか」は、血液検査の結果をもとに主治医・管理栄養士と相談して決めましょう。
Q3: 腎臓が悪いと言われました。水分はたくさん飲んだほうがよいですか?
腎臓に負担がかかりやすい多発性骨髄腫では、「脱水を避けるためにある程度の水分をとる」ことと、「腎機能や心機能に応じた適切な量を守る」ことの両方が大切です。腎機能が比較的保たれている場合は、尿量を保つためにこまめな水分摂取が勧められますが、進行した腎不全や心不全のある方では、逆に水分を制限しないとむくみや息苦しさを悪化させてしまうことがあります。
一般的には「1日の尿量+500〜800mL」程度が目安と言われることが多いですが、これはあくまで一例です。自分にとっての適切な1日水分量は、必ず主治医・腎臓内科医と相談し、「○○mL〜○○mLまで」と具体的な数字で確認しておくと安心です。
Q4: ウコン(ターメリック)やクルクミンサプリは、多発性骨髄腫の治療に役立ちますか?
ターメリックに含まれるクルクミンについては、試験管内や動物実験の研究で、「がん細胞の増殖を抑えるかもしれない」といった報告がいくつかあります。しかし、これらはあくまで早期の研究であり、「クルクミンをとれば多発性骨髄腫が治る」「標準治療の代わりになる」といった結論は出ていません。
また、高用量のクルクミンサプリは、胆道系の病気や肝機能への影響、抗凝固薬などとの相互作用が懸念されます。日常の食事でカレーや煮物のスパイスとして少量使う程度なら、特別な問題になることは少ないと考えられますが、サプリとして使う場合は必ず主治医・薬剤師に相談してください。標準治療を優先し、サプリメントは「補助的な位置づけ」にとどめることが重要です。
Q5: どうしても食欲がないとき、無理に三食食べるべきでしょうか?
強い吐き気や味覚障害がある時期に、「三食きちんと食べないと」と自分を追い込むと、かえって食事そのものが苦痛になってしまうことがあります。国立がん研究センターは、「医師から特別な指示がない限り、無理をせず、体の調子に合わせて食べられるものから食べることが大切」としています。
一度にたくさん食べるのが難しいときは、「1日3食」にこだわらず、少量の食事や間食を4〜6回に分けてとる方法も有効です。プリン・ヨーグルト・ゼリー・栄養補助飲料など、少量でエネルギーやたんぱく質をとれる食品を上手に活用しましょう。数日以上ほとんど食べられない状態が続く場合は、点滴や経口栄養剤を含め、医療的なサポートが必要になることもあるため、早めに主治医に相談してください。
Q6: 和菓子やケーキなどの甘いものは、全部我慢したほうがよいですか?
血糖値や体重管理の観点から、甘いもののとりすぎには注意が必要ですが、「甘いものを一切禁止」にしてしまうと、食べる楽しみが失われ、かえってストレスになることもあります。がん治療中の栄養管理では、「体重と筋肉量を維持し、治療に耐える体力を保つこと」が最優先です。
食欲がないときに「和菓子なら少し食べられる」という場合、1日1〜2回、少量の和菓子や果物を間食に取り入れることが、結果的にエネルギー補給につながることもあります。ただし、糖尿病やステロイド治療で血糖値が上がりやすい方は、量や頻度の上限を主治医・管理栄養士と相談して決めると安心です。
Q7: 家族として、食事でどんなサポートができますか?
家族の食事サポートは、多発性骨髄腫の患者さんにとって大きな励みになります。ただし、「たくさん食べてほしい」という思いが強すぎると、かえってプレッシャーになってしまうこともあります。
まずは、「量よりも頻度」「完食よりも一口」を目標に、小皿で少しずつ、本人が食べやすい時間に出してみることが大切です。味や香りに敏感な時期は、においの少ない料理や冷やした料理を選ぶなど、本人の「今、これなら食べられそう」という感覚を尊重しましょう。
また、食事の内容や量について悩んだときは、家族だけで抱え込まず、通院先の管理栄養士や看護師、がん相談支援センターなどに相談することも大切です。プロのサポートを受けながら、家族全員が無理なく続けられるスタイルを一緒に探していきましょう。
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
多発性骨髄腫の治療中は、病気そのものと向き合うだけでなく、貧血や腎機能低下、感染症リスク、骨のもろさ、食欲不振など、さまざまな問題に同時に対応していかなければなりません。「何を食べれば正解なのか」と悩み続け、食事そのものがストレスになってしまう方も少なくありません。
本記事でお伝えしたかったのは、「完璧な食事」を目指す必要はなく、「今の自分の状態に合わせてできる小さな工夫」を積み重ねることが何より大切だということです。少量でもエネルギーとたんぱく質をとれる工夫をし、腎機能や感染症リスクに応じたポイントを押さえつつ、食べる楽しみを完全に手放さないこと。それが、長い治療生活を乗り切るうえでの大きな力になります。
そして、食事の悩みを一人で抱え込まないことも重要です。主治医・看護師・管理栄養士、がん相談支援センター、患者会など、多くの専門家や仲間がサポートしてくれます。「こんなこと聞いていいのかな」と遠慮せず、気になることがあれば、ぜひ一度相談してみてください。
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